JPH08276842A - アンチロックブレーキ装置 - Google Patents

アンチロックブレーキ装置

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JPH08276842A
JPH08276842A JP7076999A JP7699995A JPH08276842A JP H08276842 A JPH08276842 A JP H08276842A JP 7076999 A JP7076999 A JP 7076999A JP 7699995 A JP7699995 A JP 7699995A JP H08276842 A JPH08276842 A JP H08276842A
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control
time
antilock
start condition
lock
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JP7076999A
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English (en)
Inventor
Masaya Shobu
昌也 菖蒲
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Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 1制動の途中でも不要になればアンチロック
制御を終了し、必要になれば再開し、かつ、第2回以降
のアンチロック制御開始条件を路面の摩擦係数に応じて
変更可能なアンチロックブレーキ装置を得る。 【構成】 緩増圧モードを設定時間以上実行しても減圧
モードや保持モードを実行する必要がない場合は、1制
動の途中でも連続増圧モードとすることによりアンチロ
ック制御を終了させる。そして、S303で連続増圧モ
ード実行中と判定し、S305で推定車体速度が設定車
体速度より大きい判定した場合、S306でカウンタを
インクリメントさせ、カウンタ値が設定カウント値に等
しいか否かを判定する。カウンタ値が設定カウント値以
下であれば、S309,S310のカウンタクリアと制
御中フラグのOFFは行わず、制御中フラグをONに保
ち、次回のアンチロック制御の開始が早期に行われるよ
うにする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、車両用のアンチロック
ブレーキ装置に関するものであり、特にアンチロック制
御中の車両の走行安定性向上に関するものである。
【0002】
【従来の技術】車両の走行安定性を損なうことなく、か
つ、できる限り短い距離で制動するためにアンチロック
ブレーキ装置が用いられている。これは、液圧により作
動して車輪の回転を抑制するブレーキと、そのブレーキ
シリンダの液圧(ブレーキシリンダ圧と称する)を増減
させるアクチュエータと、車輪の回転速度を検出する回
転センサと、その回転センサによって検出された回転速
度に基づいて車輪のスリップ状態を推定し、アクチュエ
ータを制御するコントローラとを含むように構成される
のが普通である。ブレーキシリンダの液圧の制御は、ア
クチュエータとして比例制御弁を用いて連続的な液圧制
御が行われることもあるが、電磁開閉弁,電磁方向切換
弁などの電磁切換弁の切換制御によって液圧制御が行わ
れることが多い。ブレーキシリンダ圧の増圧,減圧の切
り換えにより必要とする液圧を得るのであり、保持が行
われることもある。このアンチロック制御は、1制動中
(操縦者がブレーキペダルを踏み込み始めてから解放す
るまでであり、ストップランプが連続して点灯している
期間)において、一旦開始されれば、車体速度(車両の
走行速度)が設定値以下まで低下し、あるいは操縦者が
ブレーキペダルを解放する等の終了条件が成立するまで
継続して行われる。この際、不要なアンチロック制御の
実行を回避しつつ液圧制御の安定性も確保するために、
第2回の減圧開始は、第1回の減圧開始に比して浅いス
リップ状態で開始されるように減圧開始条件が設定され
るのが普通である。また、特開昭60─22548号公
報に記載のアンチスキッド制御装置のように、路面状況
の良否を推定し、路面状態に合った、より適切な減圧開
始条件に変更することも行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来のアンチロックブ
レーキ装置では、制動中に一旦アンチロック制御が開始
されれば、そのアンチロック制御は最後まで継続され
る。アンチロック制御が終了させられるのは、操縦者が
ブレーキペダルを解放した場合や、車体速度が設定値以
下になった場合のように、制動自体の必要がなくなる
か、アンチロック制御が不可能になった場合のみであ
る。アンチロック制御が開始された後に、路面の摩擦係
数が増大し、あるいは制動操作力が低下させられる等に
より、アンチロック制御の必要がなくなっても、制御が
継続されるようになっていたのである。これは無駄なこ
とである。例えば、アンチロック制御装置がアンチロッ
ク制御中は励磁が継続される電磁弁を含むものである場
合には、実際にはその必要がなくなったにもかかわらず
アンチロック制御が終了させられないために、励磁電流
の供給が継続され、エネルギが無駄になる。また、アン
チロック制御装置が、減圧のためにブレーキシリンダか
らリザーバに排出されたブレーキ液がポンプによりマス
タシリンダ側へ還流させられる還流式である場合には、
アンチロック制御中はポンプが継続して回転させられる
ため、もはや減圧が行われないためリザーバから汲み上
げるべきブレーキ液がないのにポンプの回転が継続され
ることとなり、エネルギの無駄であるばかりでなく無用
の騒音が生じる。
【0004】そこで、本願の第1発明の課題は、1回の
制動の途中であってもアンチロック制御の必要がなくな
れば制御が終了され、必要になれば再開されるアンチロ
ックブレーキ装置を得ることである。また、第2発明の
課題は、第1発明に係るアンチロックブレーキ装置にお
いて複数回のアンチロック制御を路面状態に応じて適正
に行い得るようにすることであり、第3発明の課題は第
2発明の課題をできる限り簡単な手段で解決することで
ある。第4発明の課題は、第2発明または第3発明に係
るアンチロックブレーキ装置において、路面の摩擦係数
が低い場合には高い場合に比較してより安定性を重視し
た制御が行われるようにすることであり、第5発明の課
題は第2ないし第4発明に係るアンチロックブレーキ装
置において、路面の凹凸が大きい場合に見かけ上スリッ
プが大きくなることに基づく無用なアンチロック制御の
実行をできる限り回避することである。第6発明の課題
は、第1ないし第5発明に係るアンチロックブレーキ装
置において、路面の摩擦係数が特に低い場合の走行安定
性の確保を容易にすることである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、第1発明に係るアンチロックブレーキ装置は、ア
ンチロック制御開始条件が満たされればアンチロック制
御を開始し、アンチロック制御終了条件が満たされれば
アンチロック制御を終了し、1制動中にアンチロック制
御開始条件およびアンチロック制御終了条件が複数回満
たされればアンチロック制御を複数回実行する前記アン
チロック制御手段と、1回のアンチロック制御中にお
ける第2回以降の減圧開始条件を第1回の減圧開始条件
より浅いスリップ状態に対応する条件に変更するととも
に各回のアンチロック制御終了毎に減圧開始条件を前記
第1回の減圧開始条件に復帰させる減圧開始条件変更手
段とを含むように構成される。第2回以降の減圧開始条
件は一定であっても、減圧回数の増加等に応じて変更さ
れてもよい。
【0006】また、第2発明に係るアンチロックブレー
キ装置は、さらに、アンチロック制御終了時点から減圧
開始条件変更手段による減圧開始条件の復帰時点までの
時間である復帰時間を路面状態の変化に応じて変更する
復帰時間変更手段を含むように構成される。復帰時間変
更手段は、復帰時間を段階的に変更するものでも、連続
的に変更するものでもよい。
【0007】第3発明に係るアンチロックブレーキ装置
は、さらに、アンチロック制御中であるか否かを表す制
御状態表示手段を含むものとされ、かつ、減圧開始条件
変更手段が、制御状態表示手段がアンチロック制御中で
あることを表す状態からアンチロック制御中ではないこ
とを表す状態に変わる毎に減圧開始条件の復帰を実行す
るものとされるとともに、復帰時間変更手段が、制御状
態表示手段のアンチロック制御中ではないことを表す状
態への変化を1回のアンチロック制御の事実上の終了時
点から遅延させる制御状態表示手段変化遅延手段を含む
ものとされる。遅延時間は、第2発明における復帰時間
に相当するものであり、段階的に変更されても、連続的
に変更されてもよい。
【0008】第4発明に係るアンチロックブレーキ装置
においては、復帰時間変更手段が、制動中の路面の摩擦
係数の値が小さい場合に、路面の摩擦係数の値が大きい
場合に比して長い時間減圧開始条件の復帰を遅らせる摩
擦係数対応復帰時間変更手段を含むものとされる。第5
発明に係るアンチロックブレーキ装置においては、復帰
時間変更手段が、制動中の路面の凹凸の大きさが大きい
場合に、路面の凹凸の大きさが小さい場合に比して短い
時間減圧開始条件の復帰を遅らせる凹凸対応復帰時間変
更手段を含むものとされる。復帰時間の値は、摩擦係数
の大きさや凹凸の大きさに対応して段階的に変更されて
も連続的に変更されてもよい。また、復帰時間は車体速
度の大きさにも対応して変更されてもよい。
【0009】第6発明に係るアンチロックブレーキ装置
においては、復帰時間変更手段が、路面の摩擦係数が設
定値より小さい場合に、1制動中におけるアンチロック
制御の終了を禁止する摩擦係数対応アンチロック制御終
了禁止手段を含むものとされる。
【0010】
【作用】第1発明のアンチロックブレーキ装置において
は、1制動の途中でも、路面の摩擦係数や操縦者の制動
操作力の変換等により、アンチロック制御の必要がなく
なったと判定された場合には終了させられる。例えば、
アンチロック制御中に緩増圧を比較的長い設定時間以上
継続して行っても減圧が必要にならない場合に、アンチ
ロック制御の必要がなくなったと判定される。この場合
には、ブレーキシリンダ圧が操縦者によるブレーキ操作
力に相当する高さまで高くなっても過大なスリップが生
じないことを意味し、これはアンチロック制御の必要が
なくなったことを意味するからである。ただし、一旦ア
ンチロック制御が終了させられても、再び必要になれば
アンチロック制御が再開される。しかも、各回のアンチ
ロック制御中における第2回以降の減圧開始条件が、第
1回の減圧開始条件に比して浅いスリップ状態で減圧を
開始するように設定されることにより、制動中の車両の
走行安定性が確保される。
【0011】第2発明のアンチロックブレーキ装置にお
いては、第2回以降の減圧開始条件の第1回の減圧開始
条件への復帰が、1回のアンチロック制御の終了後、復
帰時間が経過した時点に行われる。そして、この復帰時
間は、復帰時間変更手段により、摩擦係数や凹凸の大き
さ等の路面状態に応じて変更される。路面状態によって
は復帰時間が0に設定されることもあり得る。復帰時間
の経過前に次のアンチロック制御が開始される場合に
は、減圧開始条件が未だ第1回用の条件に復帰させられ
ていないため、そのアンチロック制御の第1回の減圧は
第2回以降用の減圧開始条件で開始される。比較的浅い
スリップ状態で第1回の減圧が開始されるのであり、走
行安定性を重視したアンチロック制御が行われることと
なる。それに対して、復帰時間の経過後に次のアンチロ
ック制御が開始される場合には、減圧開始条件が既に第
1回減圧用の条件に復帰しているため、スリップ状態が
深くなるまで減圧が開始されず、無用なアンチロック制
御の開始が回避される。第2発明においては、この復帰
時間が路面状態に応じて変更されるため、車両の走行安
定性と制動力との両立が容易になる。路面状態が車両の
走行状態を不安定にさせ易い場合には復帰時間を比較的
長くし、そうでなければ比較的短くするのであり、それ
によって、それぞれの路面状態に適した制御が可能とな
るのである。
【0012】第3発明のアンチロックブレーキ装置にお
いては、アンチロック制御フラグ等制御状態表示手段の
状態がアンチロック制御中であることを表す状態からア
ンチロック制御中ではないことを表す状態に変化する毎
に、減圧開始条件変更手段が、減圧開始条件を第1回の
減圧開始条件に復帰させる。そして、制御状態表示手段
の状態の変化が生じる時点を、制御状態表示手段変化遅
延手段がアンチロック制御の終了時点から遅延させる。
制御状態表示手段は通常、アンチロック制御開始時にア
ンチロック制御中であることを表す状態とされ、アンチ
ロック制御終了時にアンチロック制御中ではないことを
表す状態とされる。それに対して、本発明に係るアンチ
ロックブレーキ装置においては、アンチロック制御中で
はないことを表す状態への変化が、アンチロック制御の
終了時点から遅延時間だけ遅延させられるのであり、そ
れによって、減圧開始条件の復帰時点が遅延させられる
こととなる。なお、アンチロック制御が終了した時点に
セットされ、遅延時間の経過時点にリセットされる遅延
中表示フラグ等の遅延中表示手段を設け、遅延中表示手
段が遅延中ではないことを表す状態に復帰した時点に、
減圧開始条件変更手段が減圧開始条件を第1回用の減圧
開始条件に復帰させるようにしても、同様に目的を達成
することができる。
【0013】第4発明のアンチロックブレーキ装置にお
いては、路面の摩擦係数が小さい場合には大きい場合よ
りも長い時間減圧開始条件の復帰が遅らされる。制動中
に路面の摩擦係数が小さい場合には、スリップ状態が深
い状態になるまで待って減圧を開始したのでは車両の走
行状態が不安定になりがちであるからである。減圧開始
条件復帰の遅延時間が長くされれば、比較的浅いスリッ
プ状態に対応する第2回以降の減圧開始条件に保たれる
時間が長くなり、減圧が早期に行われる可能性が高ま
り、走行状態が不安定になることを防止できる。
【0014】第5発明のアンチロックブレーキ装置にお
いては、路面の凹凸が大きい場合に小さい場合よりも短
い時間減圧開始条件の復帰が遅らされる。制動中の路面
の凹凸が大きい場合には、車輪の空転によって実際の値
よりもスリップ率が大きく推定され、アンチロック制御
が開始しやすくなりがちであるので、早期にアンチロッ
ク制御が開始されにくくされるのである。換言すれば、
減圧開始条件が、比較的浅いスリップ状態に対応する第
2回以降の減圧開始条件である時間が短くなり、不必要
な減圧が行われる可能性が低くなり、制動距離の増加が
良好に回避される。
【0015】第6発明のアンチロックブレーキ装置にお
いては、路面の摩擦係数が設定値より小さい場合に、ア
ンチロック制御の終了が禁止される。1回のアンチロッ
ク制御中における減圧開始条件は、第1回が比較的深い
スリップ状態に対応し、第2回以降は比較的浅いスリッ
プ状態に対応している。したがって、比較的深いスリッ
プ状態に対応した減圧条件で減圧が開始されるのは、1
制動中1回のみであり、それ以外の減圧はすべて比較的
浅いスリップ状態に対応する減圧開始条件で開始され
る。例えば、摩擦係数が特に低い路面上においては操縦
者がブレーキ操作力を小さくするのが普通であるため、
ブレーキシリンダ圧が路面の摩擦係数に対応した大きさ
に近くなる。この場合に、第1発明に従って、必要がな
くなればアンチロック制御が終了させられるものとすれ
ば、アンチロック制御の終了,開始が頻繁に行われる可
能性があり、各アンチロック制御の開始時における減圧
開始条件が深いスリップ状態に対応したものであれば、
車両の走行状態が不安定になる。それに対して、第6発
明に従えば、摩擦係数が設定値より小さい場合にはアン
チロック制御の終了が禁止されるため、アンチロック制
御の途中で深いスリップ状態に対応した減圧開始条件が
使用されることはなくなり、走行安定性を確保すること
ができる。摩擦係数の設定値は車両の種類,構造等の車
両条件、路面の凹凸等摩擦係数以外の路面条件、操縦者
の技量,好み等の操縦者条件、車体速度,旋回半径,積
載量等の走行条件等に合わせて適宜設定されるべきもの
である。走行が不安定になり易いほど、あるいは万一不
安定になった場合の影響が大きいほど、高い値に設定す
るのであるが、一般的には、例えば0.4,0.3,
0.25等に設定することができる。
【0016】
【発明の効果】このように、第1発明によれば、1回の
制動の途中であってもアンチロック制御の必要がなくな
れば制御が終了され、必要になれば再開されるアンチロ
ックブレーキ装置を得ることができ、無用なアンチロッ
ク制御の継続による無駄なエネルギ消費や騒音の発生を
回避することができる。また、1回のアンチロック制御
中における第2回以降の減圧の開始条件が第1回の減圧
の開始条件に比して浅いスリップ状態に対応するものと
されるため、無用なアンチロック制御の実行を回避しつ
つアンチロック制御の安定性の要求も満たすことができ
る。
【0017】また、第2発明のアンチロックブレーキ装
置においては、第2回以降用の減圧開始条件を第1回用
の減圧開始条件に復帰させる復帰時間が路面状況の変化
に対応して変更可能であるため、浅いスリップ状態に対
応する減圧開始条件が用いられる時間を路面状況の変化
に対応して調整することができる。したがって、第1発
明に係るアンチロックブレーキ装置において複数回のア
ンチロック制御を路面状態に応じて適正に行うことが可
能となり、車両の走行安定性向上と制動距離の短縮との
両立を図ることが容易となる。
【0018】第3発明のアンチロックブレーキ装置にお
いては、制御状態表示手段のアンチロック制御中である
ことを表す状態からアンチロック制御中でないことを表
す状態への変化時点を、実際のアンチロック制御終了時
点から遅延させることによって、減圧開始条件の復帰を
遅らせることができる。制御状態表示手段としては、例
えばアンチロック制御手段に従来から設けられているア
ンチロック制御フラグ等を使用することができ、復帰時
間変更手段を安価に構成することができる。
【0019】第4発明のアンチロックブレーキ装置にお
いては、路面の摩擦係数が小さいときに摩擦係数が大き
いときよりも、減圧開始条件の復帰時間が比較的長くさ
れるため、車両の走行安定性が向上する効果が得られ
る。第5発明のアンチロックブレーキ装置においては、
路面の凹凸が大きいときに凹凸が小さいときよりも、減
圧開始条件の復帰時間が比較的短くされるため、無用な
アンチロック制御の実行が良好に回避される。
【0020】第6発明のアンチロックブレーキ装置にお
いては、路面の摩擦係数が設定値より小さい場合にアン
チロック制御の終了が禁止され、1制動中の第1回の減
圧以外は比較的浅いスリップ状態に対応する減圧開始条
件が設定されるため、摩擦係数が低い路面上において車
両の走行安定性を確保がきる効果がある。
【0021】
【発明の望ましい態様】
(1)前記アンチロック制御手段が、アンチロック制御
開始条件が満たされたことを判定するアンチロック制御
開始条件判定手段と、アンチロック制御終了条件が満た
されたことを判定するアンチロック制御終了条件判定手
段とを含む請求項1に記載のアンチロックブレーキ装
置。 (2)前記復帰時間変更手段が、制動中の車体速度が大
きい場合に、車体速度が小さい場合に比して長い時間前
記減圧開始条件の復帰を遅らせる車体速度対応復帰時間
変更手段を含む請求項1ないし5のいずれか1つに記載
のアンチロックブレーキ装置。車体速度が大きい場合、
すなわち車両が高速で走行している場合には、走行安定
性の悪さの影響が顕著に現れる。同じ程度の走行不安定
に対して、高速走行時には単位時間当たりのコース逸れ
量(実際の走行軌跡の操縦者が意図している走行軌跡か
らの外れ量)が低速走行時より大きくなるのである。し
たがって、車体速度が大きい場合には減圧開始条件の復
帰を遅らせ、安定性重視の制御が行われるようにするこ
とが望ましい。 (3)前記摩擦係数対応復帰時間変更手段が、前記復帰
時間の長さを、少なくとも一つの摩擦係数基準値と制動
時の摩擦係数との大小関係に対応して、段階的に変更す
る段階的摩擦係数対応復帰時間決定手段を含む請求項1
ないし5,態様1,2のいずれか1つに記載のアンチロ
ックブレーキ装置。 (4)前記摩擦係数対応復帰時間変更手段が、前記復帰
時間の長さを制動時の摩擦係数の大きさに応じて連続的
に変更する、連続的摩擦係数対応復帰時間決定手段を含
む請求項1ないし5,態様1ないし3のいずれか1つに
記載のアンチロックブレーキ装置。態様3と態様4と
は、例えば摩擦係数の大きさの領域によって切り換えて
用いることにより、併用することも可能である。 (5)前記凹凸対応復帰時間変更手段が、前記復帰時間
の長さを、少なくとも一つの凹凸基準値と制動時の凹凸
の大きさとの大小関係に対応して段階的に変更する段階
的凹凸対応復帰時間決定手段を含む請求項1ないし5,
態様1ないし4のいずれか1つに記載のアンチロックブ
レーキ装置。 (6)前記凹凸対応復帰時間変更手段が、前記復帰時間
の長さを、制動時の凹凸の大きさに応じて連続的に変更
する連続的凹凸対応復帰時間決定手段を含む請求項1な
いし5,態様1ないし5のいずれか1つに記載のアンチ
ロックブレーキ装置。態様5と態様6とは、例えば凹凸
の大きさの領域によって切り換えて用いることにより、
併用することも可能である。 (7)前記車体速度対応復帰時間変更手段が、前記復帰
時間の長さを、少なくとも一つの車体速度基準値と制動
時の車体速度の大きさとの大小関係に対応して段階的に
変更する段階的車体速度対応復帰時間決定手段を含む請
求項1ないし5,態様1ないし6のいずれか1つに記載
のアンチロックブレーキ装置。 (8)前記車体速度対応復帰時間変更手段が、前記復帰
時間の長さを、制動時の車体速度の大きさに応じて連続
的に変更する連続的車体速度対応復帰時間決定手段を含
む請求項1ないし4,態様1ないし6のいずれか1つに
記載のアンチロックブレーキ装置。態様7と態様8と
は、例えば車体速度の大きさの領域によって切り換えて
用いることにより、併用することも可能である。 (9)さらに、アンチロック制御の終了時点後であって
設定時間の経過前であることを表す設定時間中表示手段
を含み、かつ、前記減圧開始条件変更手段が前記設定時
間中表示手段が設定時間中であることを表す状態から設
定時間中ではないことを表す状態に変わる毎に前記減圧
開始条件の復帰を実行するものである請求項1,2,4
ないし6,態様1ないし8のいずれか1つに記載のアン
チロックブレーキ装置。設定時間中表示手段は請求項3
の制御状態表示手段変化遅延手段の代替手段として使用
し得る。制御状態表示手段のアンチロック制御中ではな
いことを表す状態への変化を、請求項3の発明における
ようにアンチロック制御の事実上の終了時点から遅延さ
せることが適当ではない場合、例えば、制御状態表示手
段が減圧開始条件の復帰以外の目的にも使用されてお
り、アンチロック制御の事実上の終了時点にアンチロッ
ク制御中ではないことを表す状態へ変化することが不可
欠である場合に、本態様の設定時間中表示手段を使用す
れば同様の目的を達成することができるのである。 (10)前記アンチロック制御終了禁止手段が、車体速
度が大きい場合に、1制動中におけるアンチロック制御
の終了を禁止する車体速度対応アンチロック制御終了禁
止手段を含む請求項6に記載のアンチロックブレーキ装
置。車体速度が大きい場合には前述のように走行不安定
の影響が顕著に現れるため、1制動の途中におけるアン
チロック制御の終了を禁止して、制御特性を安全側に寄
せることが望ましい。さらに、旋回中の制動時には、車
両の走行安定性が損なわれる可能性が高いとして、前記
制御状態表示手段変化遅延手段による遅延時間をさらに
延長したり、前記アンチロック制御終了禁止手段による
アンチロック制御の終了禁止を行うなど、安全側の対策
を行ってもよい。また、下り坂での制動時には、後輪に
かかる負荷が平らな路面上での制動時に比較して小さく
なるため、後輪に対して特に安全側の対策を行ってもよ
い。
【0022】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明
する。本実施例のアンチロックブレーキ装置のハードウ
エア構成を図1および2に示す。このハードウエア構成
は以下に述べるすべての実施例に共通に使用される。図
1において符号10はブレーキペダルであり、ブースタ
12を介してマスタシリンダ14に連携させられてい
る。マスタシリンダ14は2個の加圧室が互いに直列に
並んで成るタンデム型であり、それら加圧室に互いに等
しい高さのブレーキ圧をそれぞれ発生させる。本ブレー
キ回路は互いに独立した2個のブレーキ系統がX字状に
配置されたX配管式である。第1のブレーキ系統は、マ
スタシリンダ14の一方の加圧室が液通路20,ノーマ
ルオープン型の電磁開閉弁22および液通路24を経て
左後輪RLのブレーキシリンダ26に接続されるととも
に、液通路20,30,ノーマルオープン型の電磁開閉
弁32および液通路34を経て右前輪FRのブレーキシ
リンダ36に接続されることによって構成されている。
一方、第2のブレーキ系統は、他方の加圧室が液通路4
0,ノーマルオープン型の電磁開閉弁42および液通路
44を経て左前輪FLのブレーキシリンダ46に接続さ
れるとともに、液通路40,48,ノーマルオープン型
の電磁開閉弁50および液通路52を経て右後輪RRの
ブレーキシリンダ54に接続されることによって構成さ
れている。
【0023】また、第1のブレーキ系統においては、前
記液通路24がノーマルクローズド型の電磁開閉弁60
を経て、前記液通路34がノーマルクローズド型の電磁
開閉弁62を経てそれぞれリザーバ64に接続されてい
る。このリザーバ64はポンプ66の吸込み口に接続さ
れ、それの吐出し口は前記液通路20に接続されてい
る。一方、第2のブレーキ系統においては、前記液通路
44がノーマルクローズド型の電磁開閉弁68を経て、
前記液通路52がノーマルクローズド型の電磁開閉弁7
0を経てそれぞれリザーバ72に接続されている。この
リザーバ72はポンプ74の吸込み口に接続され、それ
の吐出し口は前記液通路40に接続されている。そし
て、それら2個のポンプ66,74は共通のモータ76
により駆動される。したがって、例えば、左後輪RLの
ブレーキ圧については、電磁開閉弁22,60をいずれ
も非通電状態とすることによって増圧状態が実現され、
電磁開閉弁22のみを通電状態とすることによって保持
状態が実現され、電磁開閉弁22,60をいずれも通電
状態とすることによって減圧状態が実現される。他の車
輪のブレーキ圧についても同様である。すなわち、各車
輪のブレーキ圧は2個の電磁開閉弁の組合せによって、
増圧状態,保持状態および減圧状態が択一的に実現され
るのである。増圧状態,保持状態および減圧状態をそれ
ぞれ実現するために各電磁開閉弁に供給される信号を、
それぞれ増圧信号,保持信号および減圧信号と称する。
【0024】それら電磁開閉弁22等は電子制御装置8
0により制御される。この電子制御装置80は図2に示
すように、コンピュータ82を主体として構成されてお
り、CPU84,ROM86,RAM88,タイマ9
0,入力インターフェース回路92および出力インター
フェース回路94を含んでいる。この出力インターフェ
ース回路94には各ドライバ96を介して前記モータ7
6および電磁開閉弁22等がそれぞれ接続されている。
一方、入力インターフェース回路92には各バッファア
ンプ98を介して4個の車輪速度センサ100,10
2,104,106およびストップランプスイッチ11
0(図1参照)がそれぞれ接続されている。各車輪速度
センサ100,102,104,106は各車輪と共に
回転するロータの回転を検出するものである。また、ス
トップランプスイッチ110はドライバによるブレーキ
ペダル10の踏込みを検出するものである。
【0025】次に、第1実施例のソフトウエア構成につ
いて説明する。ROM86には図3に示すように、本実
施例のアンチロック制御に必要な種々のプログラムが予
め記憶されている。以下、そのうち代表的なものを説明
する。 (1)車輪速度演算ルーチン このルーチンは、一定の周期t´(例えば、1ms)ご
とに、各車輪の車輪速度センサ100,102,10
4,106からの出力信号に基づき、各車輪の車輪速度
W を逐次演算する。演算結果は各車輪に関連付けてR
AM88に記憶される。 (2)車輪加速度演算ルーチン このルーチンは、一定の周期t´(例えば、1ms)ご
とに、各車輪の車輪速度センサ100,102,10
4,106からの出力信号に基づき、各車輪の加速度V
W ´を逐次演算する。演算結果は各車輪に関連付けてR
AM88に記憶される。
【0026】(3)推定車体速度演算ルーチン このルーチンは、一定の演算周期t(例えば、10m
s)ごとに繰り返し実行されるルーチンであって、各回
の実行時において、4個の車輪のうち車輪速度V W が最
大である最速車輪の車輪速度VW max と、前回の推定車
体速度VS0が上限車体加速度αup(例えば、+0.5
G)で変化した場合の上限車速VS upと、前回の推定車
体速度VS0が下限車体加速度αdown(例えば、−1.5
G)で変化した場合の下限車速VS downとの中間値を今
回の推定車体速度VS0に決定するルーチンである。具体
的には、図4にフローチャートで表されるように、ま
ず、ステップS101(以下、単にS101という。他
のステップについても同じとする)で、上限車体加速度
αupと演算周期tとの積と前回の推定車体速度VS0との
和として上限車速VS upが演算され、続いて、S102
において、下限車体加速度αdownと演算周期tとの積と
前回の推定車体速度VS0との和として下限車速VS down
が演算される。その後、S103において、4個の車輪
のうち車輪速度VW が最大である最速車輪の車輪速度V
W max が取得されるとともに、その最大車輪速度VW ma
x と前記上限車速VS upおよび下限車速VS downとのう
ち中間のものが今回の推定車体速度VS0に決定される。
決定結果はRAM88に記憶される。
【0027】(4)推定車体減速度演算ルーチン このルーチンは、推定車体速度演算ルーチンにより演算
された推定車体速度V S0の時間に関する変化率である推
定車体減速度VS0´を逐次演算する。演算結果はRAM
88に記憶される。 (5)車輪速度偏差演算ルーチン このルーチンにおいては、各車輪について個々に、推定
車体速度VS0から車輪速度VW を差し引いて車輪速度偏
差ΔVが逐次演算される。また、各車輪の車輪加速度V
W ´が負の基準加速度G1に減少したときの車輪速度偏
差ΔVの値が特定車輪速度偏差ΔVSNに決定される。ま
た、このときの車輪速度VW の値が、第1特定車輪速度
SNとされる。演算結果は各車輪に関連付けてRAM8
8に記憶される。
【0028】(6)液圧制御モード決定ルーチン このルーチンは、アンチロック制御を行うのに適当な液
圧制御モードを各車輪について順次決定するルーチンで
ある。決定結果は各車輪に関連付けてRAM88に記憶
される。なお、左右前輪については、左右独立にアンチ
ロック制御が行われ、一方、左右後輪については、左右
同時制御であるローセレクト制御が行われる。このルー
チンにおけるモード決定の基本的な手法は一般的なもの
であるため詳細な説明を省略し、後に図6に関連して簡
単に説明する。 (7)基準車輪速度低下量演算ルーチン このルーチンは、推定車体速度VS0に関連した値として
基準車輪速度低下量ΔVR を逐次算出するルーチンであ
る。具体的な計算手法は一般的なものであるため詳細な
説明は省略し、後に図5に関連して簡単に説明する。
【0029】(8)アンチロック制御実行ルーチン このルーチンは、液圧制御モード決定ルーチンの結果に
応じて、減圧モード,保持モード,急増圧モードおよび
緩増圧モードのいずれかを、各輪独立に実行するルーチ
ンである。減圧モードにおいては、各車輪に対応する電
磁開閉弁の減圧信号のデューティ比が、推定車体減速度
S0´と減圧モード開始時における車輪加速度VW ´と
に基づいて決定され、そのデューティ比に従って各電磁
開閉弁に減圧信号が出力される。保持モードにおいて
は、各車輪に対応する電磁開閉弁に保持信号が出力され
る。急増圧モードにおいては、各車輪に対応する電磁開
閉弁に増圧信号が出力される。緩増圧モードにおいて
は、各車輪に対応する電磁開閉弁に増圧信号が、急増圧
モードにおけるより長い保持時間T1 (図5参照)をお
いて出力される。
【0030】(9)異常状態検出ルーチン 異常状態とは、ポンプや電磁開閉弁など、アンチロック
ブレーキ装置の各構成要素の動作に異常がある状態のこ
とである。このルーチンは、このような異常をイグニッ
ションスイッチON時に検出し、結果をRAM88に記
憶させるものである。イグニッションON時にブレーキ
システムの各構成要素を動作させ、正常に動作するか否
かを検出するのである。しかし、イグニッションON時
に正常であって運転中に異常が発生することもあり得る
ので、アンチロックブレーキ装置の動作状態が常時ある
いは定期的に監視され、異常であるか否かの判定が行わ
れるようにしてもよい。
【0031】以上のルーチンによるアンチロック制御の
一例を説明する。図5は制動中に生じたスリップによる
車輪速度VW 、車輪加速度VW ´の変化と、そのスリッ
プを減少させようとするアンチロック制御の出力である
ソレノイド駆動出力およびブレーキシリンダ圧の変化を
示している。ソレノイド駆動出力は、各輪のブレーキシ
リンダ圧を制御する電磁開閉弁が、増圧,保持,減圧の
いずれの状態であるかを示したものである。図5に示す
ように、制動開始時には連続増圧モードにあるが、車輪
がロック傾向になり、車輪加速度VW ´が基準加速度G
1にまで低下したとする。このときの車輪速度VW の値
が第1特定車輪速度VSNとされ、そのときの推定車体速
度VS0と第1特定車輪速度VSNとの差(スリップ量と称
する)が特定車輪速度偏差ΔVSNとされる。ロック傾向
がさらに進んだとして、車輪速度VW がさらに基準車輪
速度低下量ΔVR だけ小さくなったとき、減圧モードと
される。その時の車輪速度が第2特定車輪速度VSHとさ
れる(VSH≡VS0−ΔVSN−ΔVR =VW )。基準車輪
速度低下量ΔVR は例えば、ΔVR =A×VS0+Bで決
定される(A,Bは定数)。つまり、車輪加速度が基準
加速度G1まで低下した時点から、さらにスリップ量が
基準車輪速度低下量ΔVR だけ低下した時にアンチロッ
ク制御が開始される。
【0032】このような相対スリップ量(ある時点での
スリップ量からの増加量)が設定値よりも大きくなった
ことをもってアンチロック制御が開始されることで、絶
対スリップ量(車速と車輪速度との差)が設定値よりも
大きくなったことをもってアンチロック制御が開始され
るよりも、タイヤ径のバラツキや旋回時の内外輪差の影
響を受けにくく、安定なアンチロック制御が可能とな
る。なお、詳細は省略するが、イ)路面摩擦係数が小さ
い場合に基準車輪速度低下量ΔVR の値を小さくして安
定性を確保する、ロ)悪路走行中は大きくして誤制御開
始を防止する、ハ)旋回時には大きくして誤制御開始を
防止するなどの処理が行われるようにしてもよい。
【0033】減圧開始後、車輪のスリップに回復傾向が
生じ、車輪加速度VW ´が増加して基準加速度G2に等
しくなった時点で、保持モードとされる。保持開始後、
車輪のスリップが減少し、車輪速度VW がVSHまで増加
した時点でパルス増モードとされる。パルス増モードに
は緩,急の2種類があり、パルス増モードの開始時に、
車輪加速度VW ´が基準加速度G3よりも大きい場合に
は、緩増圧モードの前に急増圧モードが挿入される。パ
ルス増開始後、スリップが設定時間T以上増加せず、減
圧モードおよび保持モードとされない場合には連続増圧
モードとされ、アンチロック制御が事実上終了させられ
る。
【0034】なお、詳細は省略するが、基準加速度G
1,G2およびG3は、少なくとも推定車体減速度VS0
´に応じて値が変更される可変値であり、以下に述べる
ような傾向を考慮して値が決定される。基準加速度G1
(負の値)の絶対値を大きくすれば、アンチロック制御
はより深いスリップ状態で開始されるが、絶対値をあま
り大きくすると減圧を開始するまでに走行状態が不安定
になる可能性がある。基準加速度G2(負の値)の絶対
値を大きくすれば、減圧モードから保持モードへの移行
開始が早まるが、十分な減圧が行われるようにするため
にはあまり絶対値を大きくできず、また、基準加速度G
1よりも絶対値を大幅に大きくすると、減圧モードから
保持モードへの遷移のための条件が満たされない状況も
あり得、アンチロック制御が破綻する可能性がある。基
準加速度G3(正の値)を小さくすれば、パルス増モー
ドの初期に急増圧モードを挿入する機会が増加するの
で、減圧後、制動力を早期に確保するには望ましいが、
あまり小さくすると本来不必要な場合にも急増圧を行
い、スリップ量が増してアンチロック制御の回数が増加
し、制動距離が長くなる恐れがある。
【0035】図6は、連続増圧モード,減圧モード,保
持モードおよびパルス増モードの各モード間の遷移図で
ある。各モード間の遷移は矢印で示す方向で可能であ
る。a〜iの記号で示した矢印の遷移が起こる条件は、
以下の通りである。なお、ある遷移に対応する遷移条件
を表すときは、例えば〔遷移a〕のように括弧付きで表
し、遷移そのものを指すときは、例えば遷移aと表す。 〔遷移a〕車輪加速度VW ´が減少中で、かつ車輪加速
度VW ´が基準加速度G1以下となった後、車輪速度V
W がVSH以下となること。 〔遷移bおよびf〕車輪加速度VW ´が増加中で、かつ
車輪加速度VW ´が基準加速度G2以上となること。 〔遷移c〕車輪速度VW が増加中で、かつ車輪速度VW
がVSH以上となること。 〔遷移dおよびe〕車輪速度VW が減少中で、かつ、車
輪速度VW がVSN以下となること。 〔遷移hおよびi〕操縦者がブレーキを解除して制動を
中止したこと。 〔遷移g〕操縦者がブレーキを解除して制動を中止した
ことと、パルス増モード状態の継続時間が設定値T以上
となったこととのいずれか。
【0036】本実施例では、基準加速度G2の値は負で
ある。これは、減圧モードから保持モードへの遷移の際
に、不必要に長く減圧を行って、制動力を小さくしてし
まうことを避けるために、保持モードへの移行を早める
ためである。減圧モードからパルス増モードへ遷移する
ときには、車輪加速度VW ´は正となる必要があるの
で、〔遷移b〕が必ず成立する。従って図6において、
パルス増モードから減圧モードへの直接遷移に対応する
矢印は存在しない。なお、図6に示したように、減圧モ
ード,保持モードおよびパルス増モードのいずれかのモ
ードにあることを、アンチロック制御中であると称す
る。図5に示した例では、遷移a,遷移b,遷移c,遷
移gが順次行われているのである。
【0037】本実施例では、1制動中の第1回のアンチ
ロック制御の開始条件から第2回以降のアンチロック制
御の開始条件への変更、および1回のアンチロック制御
中における第1回の減圧の開始条件から第2回の減圧の
開始条件への変更が、共に前記基準車輪速度低下量ΔV
R の変更により実現される。第1回のアンチロック制御
の第1回の減圧の開始条件の場合は基準車輪速度低下量
ΔVR の絶対値が比較的大きな値とされ、第1回のアン
チロック制御の第2回以降の減圧開始条件の場合は比較
的小さな値とされる。第2回以降のアンチロック制御に
おいても、第2回以降の減圧の開始条件で基準車輪速度
低下量ΔVR の絶対値が比較的小さな値とされることは
同じであるが、第2回以降のアンチロック制御における
第1回の減圧の開始条件は場合によって基準車輪速度低
下量ΔVR の絶対値が比較的大きな値とされたり、小さ
な値とされたりする。基準車輪速度低下量ΔVR の絶対
値が比較的大きな値とされれば減圧が比較的深いスリッ
プ状態で開始され、比較的小さな値とされれば比較的浅
いスリップ状態で開始される。以下、図7および図8を
用いて基準車輪速度低下量ΔVR の変更を説明する。な
お、路面摩擦係数μg を路面μと略記する。また、路面
μが比較的大きい路面を高μ路、小さい路面を低μ路、
路面μの大きさが中間である路面を中μ路と称する。
【0038】図7は液圧制御モード決定ルーチン中にお
いて、連続増圧モードから減圧モードへ遷移aによる遷
移を行うか否かの判定を行う部分のみをフローチャート
化したものであり、この処理を減圧開始判定処理と称す
る。まず、S201で、異常状態であるか否かがRAM
88の状態に基づいて判定される。異常状態であれば直
ちに減圧開始判定処理が終了され、減圧は開始されな
い。異常状態でなければ、S202で、車輪加速度VW
´が基準加速度G1以下であるか否かが判定され、結果
がNOであれば減圧が開始されずに減圧開始判定処理が
終了される。S202の結果がYESであれば、S20
3で、後述する制御中フラグがONであるか否かが判定
され、結果がNOであれば、S204で基準車輪速度低
下量ΔVR として基準スリップ量S1 が設定される。S
204の結果がYESであれば、S205で基準スリッ
プ量S2 が設定される。基準スリップ量S1 と基準スリ
ップ量S2 とは、基準スリップ量S1 の方が大きな値で
予め設定されている。つぎに、S206で車輪速度VW
が第2特定車輪速度VSH以下であるか否かが判定され、
車輪速度VW が第2特定車輪速度VSHより大ならば、減
圧が行われずに減圧開始判定処理が終了される。S20
6の結果がYESであれば、S207で制御中フラグが
ONとされ、S208で減圧モードへの遷移が行われる
(遷移aによるアンチロック制御の開始)。第2特定車
輪速度VSH(VSN─ΔVR )は、S203で制御中フラ
グがONであると判定されればより大きな値とされるの
で、S206の判定がより小さいスリップ量でYESと
なるため、減圧開始時期が早められる。したがって、こ
の減圧開始判定処理によれば、制御中フラグの状態に応
じて減圧開始時期の変更が可能となる。
【0039】図8は液圧制御モード決定ルーチン中にお
いてアンチロック制御終了判定を行う部分のフローチャ
ートであり、この処理を制御終了判定処理と称するが、
この処理中において制御中フラグを連続増圧モードの開
始時点から設定時間TC だけONの状態に保持した後に
OFFにする処理が行われる。制御中フラグはRAM8
8内に設けられ、ON/OFF状態を記憶可能なレジス
タである。また、カウンタは、RAM88内に設けら
れ、CPU84によって値を変更可能で、かつ十分大き
な整数値を記憶できるレジスタである。
【0040】まず、S301で異常状態であるか否かが
判定される。異常状態であればS307以降の処理が実
行される。S307,S308で、連続増圧モードでな
くても強制的に連続増圧モードに遷移させられる。その
後、S309でカウンタがクリアされ、S310で制御
中フラグがOFF状態とされる。S309,S310を
経た後は、カウンタと制御中フラグの状態は制動前の状
態と同じであり、この状態を初期状態と称する。S30
1において異常状態でなければ、S302でストップラ
ンプスイッチ110がONであるか否かが判定される。
結果がOFFであれば制動中でないので、前述の異常状
態と同様、いかなる状態であっても連続増圧モード状態
となる(遷移h,遷移i,遷移gのいずれか)。したが
って、直前までストップランプスイッチがOFFであっ
た制動開始時には、カウンタはクリアされ、制御中フラ
グはOFF状態とされている。
【0041】制動中であれば、S303で連続増圧モー
ドであるか否かが判定される。連続増圧モードでなけれ
ば、S304でカウンタがクリアされ、制御終了判定処
理が終了する。連続増圧モードであれば、S305で推
定車体速度VS0が予め設定された一定値(例えば3km
/h)以下であるか否かが判定され、結果がYESであ
れば、すでに車体速度が遅く、アンチロック制御開始条
件は初期状態と同じでよいと見なして、S309,S3
10で初期状態とされ、制御終了判定処理が終了する。
S305の結果がNOであれば、S306でカウンタの
値がインクリメントされ、カウント値が予め設定された
設定カウント値Cと等しいか否かが判定される。この設
定カウント値Cは前記設定時間TC との間に、Tc=
(Cの値)×(図8のフローの実行インターバル、例え
ば10ms)の関係が成り立つ大きさに定められてい
る。したがって、カウント値が設定カウント値Cに達す
るか否かの判定は、前回のアンチロック制御の終了から
の経過時間が設定時間TC に達するか否かの判定であ
る。S306の判定結果がYESであれば、カウントア
ップ状態であり、S309,S310が順次実行されて
初期状態とされ、制御終了判定が終了する。S306の
結果がNOであれば、直ちに制御終了判定処理が終了す
る。
【0042】以上説明した図7および図8のフローによ
って、実際の制動中にどのような作用,効果が得られる
かを説明する。図9に、1制動中における車輪速度
W ,ソレノイド駆動出力,カウンタの状態および制御
中フラグの状態の一例を示す。図9では説明を簡潔にす
るため、制動は継続され(ストップランプスイッチは常
にON)、異常状態は発生せず、推定車体速度VS0は図
8のS305の判定がNOとなるに十分な大きな速度で
あり、1回ずつの減圧モード,保持モード,パルス増圧
モードの実行により終了する場合(遷移a,遷移b,遷
移c,遷移gが順次行われる場合)が示されている。し
たがって、以下においては1制動中に実行される複数回
のアンチロック制御における第1回の減圧についてのみ
説明するが、液圧制御モード決定ルーチンの図7および
図8に示すフロー以外のフローの実行により、1回のア
ンチロック制御中に複数回の減圧が実行されることも勿
論ある。この場合にも減圧開始条件の変更が制御中フラ
グの状態に基づいて行われ、第2回以降の減圧は、制御
中フラグが必ずON状態にあるため、常に基準車輪速度
低下量ΔVR の絶対値が比較的小さい値とされた減圧開
始条件で開始され、比較的浅いスリップ状態で開始され
る。
【0043】制動開始時は、連続増圧モードにあり、カ
ウンタはクリアされ、制御中フラグはOFF状態にあ
る。ブレーキシリンダ圧が過大となり、の時点で第1
回のアンチロック制御が開始されたとする。この時、制
御中フラグはOFF状態であるため、図7のS203に
よってΔVR は比較的大きなスリップ量S1 に設定さ
れ、S205の判定によって、アンチロック制御は比較
的大きいスリップ量で開始される。1制動中、連続して
行われる複数回のアンチロック制御の第1回は無条件に
比較的大きいスリップ量で開始されるのである。続いて
S206において制御中フラグがON状態にされ、S2
07において減圧が開始される。本実施例においてはカ
ウンタのカウント値は、前記説明から明らかなように、
制動中の第1回のアンチロック制御の開始以降であり、
かつ連続増圧モードにある場合にのみ、S306におい
てインクリメントされる。したがって、図9にt 1 で示
した期間中は、図8のフローが実行される一定時間(た
とえば10ms)ごとにインクリメントされる。期間t
1 は第2回のアンチロック制御の開始を以て終了する。
この例では期間t1 が短いため、カウンタはカウントア
ップには至らず、連続増圧モードが終了した時点でS3
04においてクリアされる。また、制御中フラグがON
状態に保たれる。
【0044】第2回のアンチロック制御の開始条件は、
制御中フラグがON状態にあるため、S204で比較的
小さいスリップ量に設定される。それに対して、第2回
のアンチロック制御の終了時から始まるt2 で示した連
続増圧モードの期間は、カウンタがカウントアップする
に足る長さであるため、すなわち設定時間TC より長い
ため、S306の判定結果がYESとなる。その結果、
S309においてカウンタがクリアされ、S310にお
いて制御中フラグがOFF状態とされ、初期状態に戻さ
れる。したがって、第3回のアンチロック制御の開始条
件は、S203で比較的大きいスリップ量S1 に設定さ
れる。また、t3 で示した連続増圧モードの期間は、カ
ウンタがカウントアップするに足りない長さであるの
で、第4回のアンチロック制御開始判定時の制御中フラ
グはON状態にあり、第4回のアンチロック制御の減圧
開始条件は、比較的小さいスリップ量S2 で減圧が開始
されるように設定される。以下同様に、制御中フラグの
状態に応じてアンチロック制御が繰り返される。
【0045】このように、1制動中に行われる複数回の
アンチロック制御のうちの第1回は、減圧が無条件に比
較的大きいスリップ量で開始するように減圧開始条件が
設定される。したがって、第1回のアンチロック制御は
比較的大きいスリップ量で開始され、無用なアンチロッ
ク制御の開始が良好に回避される。しかし、第2回以降
のアンチロック制御時には、前回のアンチロック制御終
了時からの経過時間が設定時間Tc以下であれば、比較
的小さいスリップ量でアンチロック制御が開始され、低
μ路上での走行安定性が向上させられる一方、前回のア
ンチロック制御終了時からの経過時間が設定時間Tc以
上であれば、比較的大きいスリップ量になるまでアンチ
ロック制御の開始が遅らせられ、無用なアンチロック制
御の実行が回避される。
【0046】本発明の別の実施例を説明する。本実施例
は、路面μの大小,良路/悪路および段差の有無に応じ
て、Tc を適切な値に変更するものである。図10は、
図8のS305とS306の間に、破線で囲ったS40
1〜S407を挿入したものである。また、図8のS3
06の設定カウント値Cは、以下に述べるように、設定
カウント値C0 〜C3 のいずれかに設定される。図8と
同様の処理によってS303で連続増圧モードであると
判定された後、S401で低μ路であるか否かが判定さ
れる。低μ路である場合は、S402で設定カウント値
がC3 に設定された後、S306以降の処理が、図9と
同様に実行される。低μ路でない場合は、S403で良
路か否かが判定される。良路の場合は、S404で設定
カウント値がC2 に設定された後、S306以降の処理
が行われる。良路でなければ、S405で段差の有無が
判定される。段差がなければ、S406で設定カウント
値がC1 に設定された後、S306以降が実行される。
段差があれば、S407で設定カウント値がC0 に設定
された後、S306以降が行われる。ここで、設定カウ
ント値C0 〜C3 の関係は、C0 <C1 <C2 <C3
されている。設定カウント値C0 は0とすることも可能
であり、この場合には毎回のアンチロック制御の終了と
同時に減圧開始条件が初期状態に戻されることとなる。
【0047】したがって、低μ路である場合には、設定
カウント値が最も大きな値C3 とされ、良路であるか否
かおよび段差の有無にかかわらず、制御中フラグOFF
のタイミングが最も遅らされる。つぎに、低μ路でな
く、かつ良路の場合は、設定カウント値が2番目に大き
な値C2 とされる。つまり、路面μが大きい場合は、路
面μが小さい場合の設定カウント値C3 よりも小さい値
2 とされるので、制御中フラグOFFのタイミングが
路面μが小さい場合よりも早められ、大きいスリップ量
でアンチロック制御が開始される機会がより多くなり、
制動力が確保できる。なお、図10では、路面μの値が
2段階に分割されているが、さらに多くの段階に分割し
てもよい。この場合には、より小さな路面μにより大き
な設定カウント値を設定する。
【0048】低μ路でなく良路でなく、かつ段差がない
場合は悪路と判定される。悪路においては、見かけ上ス
リップ量が変動し易く、アンチロック制御の開始条件が
満たされることが多くなり、実際には必要がないのにア
ンチロック制御が行われて制動力が低下する。しかし、
もともと低μ路でない上に、路面の凹凸によって一時的
に大きくなったスリップ量も、早期に減少することが期
待できる。故に、設定カウント値は良路で路面μが大き
い場合の設定カウント値C2 よりも小さい値C 1 に設定
され、制動中フラグOFFのタイミングがさらに早めら
れるため、スリップ量が大きくなるまでアンチロック制
御の開始が遅らされる機会がさらに多くなり、無用なア
ンチロック制御の実行が回避される。
【0049】低μ路でなく良路でもなく、段差がある場
合、段差によって車輪速度が急激に減少し、見かけ上ス
リップ量が増加するので、不必要なアンチロック制御が
開始される可能性がさらに高くなる。しかし、実際には
低μ路でない上に、段差によって生じたスリップ量の増
加は一時的なもので、早期に減少することが期待でき
る。したがって、設定カウント値は最も小さい値C0
され、制動中フラグOFFのタイミングが最も早めら
れ、スリップ量が大きくなるまでアンチロック制御の開
始が遅らされる機会が最も多くなり、無用なアンチロッ
ク制御の実行が回避される。
【0050】前記S401の判定は、路面μの推定によ
り行われる。推定方法には、例えば、アンチロック制御
中の車体減速度に基づく方法や、アンチロック制御中の
ブレーキシリンダ圧に基づく方法がある。まず、車体減
速度に基づく方法について説明する。アンチロック制御
中における車体減速度aと路面μとの間には、車体質量
をm、重力加速度をgとして、制動力=ma=μmgの
関係が成り立つ。よって、車体減速度aの代わりに推定
車体減速度VS0´を用いれば、路面μ=VS0´/gによ
り推定できる。ただし、ある時刻に計算されたそれぞれ
の推定車体減速度VS0´の計算値には誤差が含まれてい
るので、過去の計算結果も用いた移動平均処理や低域通
過フィルタリングなどの統計的な処理を行なって、誤差
による変動を低減させることが望ましい。このような処
理は、各輪の車輪速度VW の計測値に対して行ってもよ
い。さらに、上記推定値は制動中に時々刻々変化する。
そこで、図11に示すような極大点(μピーク点)での
路面μの値を、推定値として採用することが望ましい。
【0051】次に、アンチロック制御中におけるブレー
キシリンダ圧に基づく方法を説明する。ブレーキシリン
ダ圧と制動力とはほぼ比例関係にあり、上記のように、
アンチロック制御中における路面μと制動力との間にも
比例関係があるため、アンチロック制御中のブレーキシ
リンダ圧から路面μを推定することができる。この場合
も、上記μピーク点でのブレーキシリンダ圧に基づいて
路面μを推定することが望ましい。以上、2つの方法の
他、送信器から送信される超音波や光などの送信信号の
路面による乱反射に基づく受信器の受信信号が少ない場
合に多い場合より摩擦係数が小さいと推定する方法等の
採用も可能である。
【0052】S403の判定は、良路であるか否かの推
定により行われるが、本実施例では、車輪加速度VW ´
が設定時間内に正の基準加速度を一時的に超える回数が
計数され、その回数が多いほど路面の凹凸が大きいと推
定される。この場合、段差の存在によっても上記計数回
数が増加する場合があり、段差が多ければ当然良路と判
定されにくくなる。上記回数の計数を、減圧モード以外
のモードの実行中に限って行い、減圧による車輪加速度
変動が計数値にノイズとして影響しないようにする方法
など、上記以外の方法を用いてもよい。
【0053】S405の判定は、段差の有無の推定によ
り行われる。段差が存在すれば、図12に例示したよう
に、段差への落ち込みおよび乗り上げの際に、車体速
度,段差の高さh,車体重量とサスペンションとの関
係,タイヤの特性など、様々の要因に依存した大きさ
で、タイヤの跳躍が生じる。図12には、高さhの段差
を通過した車輪の着地点がそれぞれp,q,rである3
つの例が、車輪速度VW と車輪加速度VW ´の変化とと
もに例示されている。段差通過直後(k点)から着地点
までの期間、車輪は慣性で回転するが、ブレーキ力によ
って車輪加速度VW ´が急激に落ち込み、車輪速度VW
が減少する。着地直後からは、路面との摩擦による回転
力が回復するので、車輪加速度VW ´が急激に増加す
る。したがって、本実施例では、車輪速度VW または車
輪加速度VW ´の少なくとも一方の急激な減少と急激な
増加とが、比較的短い設定時間TD 以上の間隔で生じた
場合に、段差を通過したと判定されるようにされてい
る。設定時間TD は、段差の高さに対応する値であり、
設定時間TD を大きくすれば、より大きな高さh以上の
ものが段差として検出されることとなる。設定時間TD
と段差の高さhとの関係は、車体速度,車体重量とサス
ペンションとの関係,タイヤの特性などの要因によって
も変わり、それらの状況に応じて、逐次修正されること
が望ましい。
【0054】車輪速度Vw の急激な減少を検知したk時
点からの経過時間が設定時間TD 以上の時点に急激な増
加を検知した場合に、段差を通過したと判定される。車
輪加速度Vw ´は、車輪が跳躍を開始するk時点に急激
に減少し、跳躍中はほぼ一定の値となる。ただし、着地
点がrの場合として例示されているように車輪が回転を
完全に停止する場合もある。車輪加速度Vw ´は、着地
後、急激に増加する。図示の3例のそれぞれにおける
l,m,n時点がこの急増時点である。そして、3例の
それぞれl´,m´,n´時点において車輪速度VW
十分回復し、車輪加速度Vw ´が段差以前の値に戻る。
k時点からそれぞれl,m,n時点までの時間間隔が設
定時間TD 以上である場合に、段差を通過したと判定さ
れるのである。
【0055】なお、上記のように車輪加速度Vw ´に基
づいて段差判定を行う代わりに、車輪速度Vw に基づい
て、あるいは車輪加速度Vw ´と車輪速度Vw との両方
に基づいて段差判定を行うことも可能である。車輪速度
w に基づいて段差判定を行う場合は、例えば、車輪速
度Vw の減少量が設定減少量以上に達するのに要した時
間が第1設定時間以下であり、車輪速度Vw の減少開始
から増加開始までの時間が第2設定時間以上であり、か
つ、車輪速度Vw の増加量が設定増加量に達するのに要
した時間が第3設定時間以下であった場合に、段差を通
過したと判定されるようにすることが可能である。車輪
加速度Vw ´と車輪速度Vw との両方に基づいて段差判
定を行う場合には、例えば、上記車輪加速度Vw ´に基
づく段差判定と車輪速度Vw に基づく段差判定とを組み
合わせて行えばよい。その場合、両方の判定結果がいず
れも段差通過となった場合にのみ段差通過としても、い
ずれか一方の結果が段差通過となった場合に段差通過と
してもよい。また、S405の判定は、距離センサを用
いて路面と車体との相対距離を逐次計測し、距離の急激
な変化をもって段差とするなどの他の方法を用いて行っ
てもよい。
【0056】本発明のさらに別の実施例を図13に示
す。本実施例は、高μ路であっても、高速走行中の制動
時には走行不安定が生じ易く、また、小さい走行不安定
でも影響が大きいことに対処するものである。図13
は、図8のS303とS305の間に、破線で囲んだS
501,S502を挿入したものである。図8と同様の
処理によってS303で連続増圧モードであると判定さ
れた後、S501で低μ路であるか否かが判定される。
低μ路である場合は、S305以降の処理が実行され
る。低μ路でなければ、S502で推定車体速度VS0
設定車体速度VS1を超えているか否かが判定される。設
定車体速度VS1を超えていれば、S305以降の処理が
実行される。超えていなければ、S309以降の処理が
実行される。したがって、路面μが、設定路面μで2段
階に分けられ、低μ路側では無条件に、また、高μ路側
であっても車体速度が設定車体速度VS1を越えている場
合には、制御中フラグOFFのタイミングを遅らせる処
理が行われるので、走行不安定が軽減される。
【0057】図13では、路面μを2段階に分け、それ
ぞれの段階に応じた処理を行っているが、路面μを3段
階(低μ路,中μ路および高μ路)に分け、それぞれの
段階に応じた処理を行ってもよい。例えば、図14に示
すように、図8のS303とS305の間に、破線で囲
んだS601〜S604を挿入するのである。図8と同
様の処理によってS303で連続増圧モードであると判
定された後、S601で高μ路であるか否かが判定され
る。高μ路の場合はS602が、低μ路であればS60
3が実行される。S602では、推定車体速度VS0が設
定車体速度VS1よりも大きいか否かが判定される。この
設定車体速度VS1は、高μ路の場合の車体速度のしきい
値である。大きい場合は、図8と同様のS305以降の
処理が、小さい場合は、S309以降の処理がそれぞれ
行われる。S603では、低μ路であるか否かが判定さ
れる。低μ路である場合は、S305以降の処理が行わ
れる。低μ路でなければ、S604が実行される。S6
04では、推定車体速度VS0が設定車体速度VS2よりも
大きいか否かが判定される。この設定車体速度VS2は、
中μ路の場合の車体速度のしきい値である。大きい場合
は、S305以降の処理が、小さい場合はS309以降
の処理がそれぞれ実行される。したがって、低μ路では
無条件に、また、高μ路で推定車体速度VS0が設定車体
速度VS1を越えている場合と、中μ路で推定車体速度V
S0が設定車体速度VS2を越えている場合とに、制御中フ
ラグOFFのタイミングを遅らせる処理が行われるの
で、走行不安定が軽減される。
【0058】図14のフローによれば、設定車体速度V
S1およびVS2が適当な値に調整されることによって、中
μ路と高μ路とのそれぞれに対して、制御フラグOFF
のタイミングを遅らせる処理を実行するか否かを選択す
ることもできる。つまり、設定車体速度VS1またはVS2
を、それぞれ事実上推定車体速度VS0が超えられないほ
ど大きな値とすれば、それらに対応する高μ路または低
μ路では、制御中フラグOFFのタイミングを遅らせる
処理が実行されない。これによって例えば、設定車体速
度VS2を事実上推定車体速度VS0が超えられない程度に
大きくして、S604の判定結果が、必ずNOとなるよ
うにすれば、低μ路の時と、中μ路でかつ高速走行時の
みに、制御中フラグOFFのタイミングを遅らせる処理
が行われるようになり、高μ路の場合には無用なアンチ
ロック制御の実行が良好に回避される。
【0059】本発明のさらに別の実施例を図15に基づ
いて説明する。本実施例は、低μ路での制動時に、第1
回のアンチロック制御の終了条件が成立しても終了させ
ず、1制動中はアンチロック制御を継続して行うことに
より減圧開始条件変更の機会を限定し、車体の走行安定
性を確保するものである。本実施例においては、低μ路
のアンチロック制御終了の禁止が、〔遷移g〕が次の条
件〔遷移g´〕に変更されることにより行われる。 〔遷移g´〕操縦者がブレーキを解除して制動を中止し
たこと、または、路面μが小さくなく、かつ、パルス増
モードの継続時間が設定時間T以上となったことのいず
れか。図15は〔遷移g〕を〔遷移g´〕に変更したア
ンチロック制御の一例を示したものである。図15は、
説明を簡略にするために制動中の路面μが常に小さい場
合を示している。
【0060】制動開始後、〔遷移a〕によってアンチロ
ック制御が開始される。路面μが小さいため、アンチロ
ック制御から連続増圧モードへの遷移は、制動を中止し
ないかぎり起こらず、アンチロック制御が継続される。
減圧モード,保持モード,パルス増モードの各モードを
経て、図15にαで示す時点に〔遷移d〕が成立すれば
再び減圧モードにされる。〔遷移d〕は車輪速度VW
第1特定車輪速度VSN以下となる時点で成立するため、
遷移dは遷移aよりも早期に起こる。その後、βで示す
時点で車輪加速度Vw ´が減少から増加に転じ、〔遷移
b〕が成立して、保持モードとされる。さらに、γで示
す時点で〔遷移c〕が成立するため、再びパルス増モー
ドへ遷移する。ただし、γ時点では車輪加速度VW ´が
基準加速度G3未満であるため、急増圧モードの挿入は
行われない。このように、低μ路上では制動途中でのア
ンチロック制御の終了を禁止することで、アンチロック
制御の開始,終了が複数回行われ、各回のアンチロック
制御の終了ごとに減圧開始条件が深いスリップ状態に対
応する条件に復帰させられる場合の走行不安定性を減少
させることができる。また、アンチロック制御終了の禁
止は上述のように低μ路に限って行われ、高μ路ではア
ンチロック制御の終了が許容されるため、無用なアンチ
ロック制御実行の回避と走行安定性の確保との両方の目
的を良好に達成することができる。
【0061】以上、いくつかの実施例について詳細に説
明したが、これら複数の実施例の各一部を互いに組み合
わせて実施することも可能であり、その他、当業者の知
識に基づいて種々の変形,改良を施した態様で本発明を
実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1ないし6の発明に共通の実施例である
アンチロックブレーキ装置のハード構成を示す系統図で
ある。
【図2】図1における電子制御装置の構成を概念的に示
す図である。
【図3】図2におけるROMの構成を概念的に示す図で
ある。
【図4】図3における推定車体速度演算ルーチンを示す
フローチャートである。
【図5】上記アンチロックブレーキ装置における一制御
例を示すタイムチャートである。
【図6】上記アンチロックブレーキ装置における制御モ
ードの遷移図である。
【図7】上記アンチロックブレーキ装置の電子制御装置
のROMに格納されている液圧制御モード決定ルーチン
中の、連続増圧モードから減圧モードへの遷移を行うか
否かの判定を行う減圧開始判定処理プログラムを示すフ
ローチャートである。
【図8】上記液圧制御モード決定ルーチン中の、制御中
フラグを、連続増圧モードの開始時点から一定時間だけ
ON状態に保持した後にOFF状態にする制御終了判定
処理プログラムを示すフローチャートである。
【図9】上記制御中フラグを用いたアンチロックブレー
キ装置の一制御例を示すタイムチャートである。
【図10】請求項1ないし6の発明に共通の実施例であ
るアンチロックブレーキ装置における図8に相当する図
である。
【図11】車両制動中のスリップ率と制動力係数との関
係を示すグラフである。
【図12】車輪の段差への落ち込みおよび乗り上げ発生
時の車輪回転速度と車輪回転加速度の変化の様子を概念
的に示すグラフである。
【図13】請求項1ないし6の発明に共通の実施例であ
るアンチロックブレーキ装置における図8に相当する図
である。
【図14】請求項1ないし6の発明に共通の実施例であ
るアンチロックブレーキ装置における図8に相当する図
である。
【図15】請求項6の発明の実施例であるアンチロック
ブレーキ装置における図8に相当する図である。
【符号の説明】
22,32,42,50,60,62,68,70 電
磁弁 26,36,46,54 ブレーキシリンダ 80 電子制御装置 100,102,104,106 車輪速度センサ

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アンチロック制御開始条件が満たされれ
    ばアンチロック制御を開始し、アンチロック制御終了条
    件が満たされればアンチロック制御を終了し、1制動中
    にアンチロック制御開始条件およびアンチロック制御終
    了条件が複数回満たされればアンチロック制御を複数回
    実行するアンチロック制御手段と、 1回のアンチロック制御中における第2回以降の減圧開
    始条件を第1回の減圧開始条件より浅いスリップ状態に
    対応する条件に変更するとともに各回のアンチロック制
    御終了毎に減圧開始条件を前記第1回の減圧開始条件に
    復帰させる減圧開始条件変更手段とを含むことを特徴と
    するアンチロックブレーキ装置。
  2. 【請求項2】 さらに、前記アンチロック制御終了時点
    から前記減圧開始条件変更手段による減圧開始条件の復
    帰時点までの時間である復帰時間を路面状態の変化に応
    じて変更する復帰時間変更手段を含むことを特徴とする
    請求項1に記載のアンチロックブレーキ装置。
  3. 【請求項3】 さらに、当該アンチロックブレーキ装置
    がアンチロック制御中であるか否かを表す制御状態表示
    手段を含み、かつ、前記減圧開始条件変更手段が前記制
    御状態表示手段がアンチロック制御中であることを表す
    状態からアンチロック制御中ではないことを表す状態に
    変わる毎に前記減圧開始条件の復帰を実行するものであ
    るとともに、前記復帰時間変更手段が前記制御状態表示
    手段のアンチロック制御中ではないことを表す状態への
    変化を1回のアンチロック制御の事実上の終了時点から
    遅延させる制御状態表示手段変化遅延手段を含むことを
    特徴とする請求項1または2に記載のアンチロックブレ
    ーキ装置。
  4. 【請求項4】 前記復帰時間変更手段が、制動中の路面
    の摩擦係数の値が小さい場合に、路面の摩擦係数の値が
    大きい場合に比して長い時間前記減圧開始条件の復帰を
    遅らせる摩擦係数対応復帰時間変更手段を含む請求項2
    または3に記載のアンチロックブレーキ装置。
  5. 【請求項5】 前記復帰時間変更手段が、制動中の路面
    の凹凸の大きさが大きい場合に、路面の凹凸の大きさが
    小さい場合に比して短い時間前記減圧開始条件の復帰を
    遅らせる凹凸対応復帰時間変更手段を含む請求項2ない
    し4のいずれか1つに記載のアンチロックブレーキ装
    置。
  6. 【請求項6】 前記復帰時間変更手段が、路面の摩擦係
    数が設定値より小さい場合に、1制動中におけるアンチ
    ロック制御の終了を禁止する摩擦係数対応アンチロック
    制御終了禁止手段を含む請求項1ないし5のいずれか1
    つに記載のアンチロックブレーキ装置。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002211372A (ja) * 2001-01-12 2002-07-31 Sumitomo Rubber Ind Ltd 路面状態推定方法および装置
JP2002274357A (ja) * 2001-01-09 2002-09-25 Sumitomo Rubber Ind Ltd 路面状態判別装置および方法、ならびに路面状態の判別プログラム
JP2015199412A (ja) * 2014-04-07 2015-11-12 株式会社アドヴィックス 車両の運転支援装置

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2002274357A (ja) * 2001-01-09 2002-09-25 Sumitomo Rubber Ind Ltd 路面状態判別装置および方法、ならびに路面状態の判別プログラム
JP2002211372A (ja) * 2001-01-12 2002-07-31 Sumitomo Rubber Ind Ltd 路面状態推定方法および装置
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