JPH06286595A - 車輪過大スリップ防止装置 - Google Patents

車輪過大スリップ防止装置

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JPH06286595A
JPH06286595A JP5098926A JP9892693A JPH06286595A JP H06286595 A JPH06286595 A JP H06286595A JP 5098926 A JP5098926 A JP 5098926A JP 9892693 A JP9892693 A JP 9892693A JP H06286595 A JPH06286595 A JP H06286595A
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wheel
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speed
change amount
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JP5098926A
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Masao Watanabe
正雄 渡辺
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Toyota Motor Corp
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Publication date
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    • B60TVEHICLE BRAKE CONTROL SYSTEMS OR PARTS THEREOF; BRAKE CONTROL SYSTEMS OR PARTS THEREOF, IN GENERAL; ARRANGEMENT OF BRAKING ELEMENTS ON VEHICLES IN GENERAL; PORTABLE DEVICES FOR PREVENTING UNWANTED MOVEMENT OF VEHICLES; VEHICLE MODIFICATIONS TO FACILITATE COOLING OF BRAKES
    • B60T8/00Arrangements for adjusting wheel-braking force to meet varying vehicular or ground-surface conditions, e.g. limiting or varying distribution of braking force
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    • B60VEHICLES IN GENERAL
    • B60TVEHICLE BRAKE CONTROL SYSTEMS OR PARTS THEREOF; BRAKE CONTROL SYSTEMS OR PARTS THEREOF, IN GENERAL; ARRANGEMENT OF BRAKING ELEMENTS ON VEHICLES IN GENERAL; PORTABLE DEVICES FOR PREVENTING UNWANTED MOVEMENT OF VEHICLES; VEHICLE MODIFICATIONS TO FACILITATE COOLING OF BRAKES
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 車輪のアンチロック制御の精度を向上させ
る。 【構成】 車輪速度センサ100,102,104,1
06と車輪速度・車輪速度変化量演算手段120の一部
分とが車輪速度を取得し、最高車輪速度決定手段126
および推定車両速度作成手段131が車両速度Vveを
取得する。そして、車輪速度・車輪速度変化量演算手段
120の別の一部分が車輪速度第一変化量ΔVw1およ
び車輪速度第二変化量ΔVw2を演算し、車輪速度偏差
作成手段122,増減圧時期決定手段136およびAB
Sアクチュエータ78が車輪速度変化量ΔVw1,ΔV
w2に基づいて車輪FL,FR,RL,RRに対する制
動力を制御する。車輪速度変化量ΔVw1,ΔVw2が
車両速度変化量を含まず、スリップ率の変化状態を正確
に表すため、アンチロック制御精度が向上する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は車両の加速時や制動時に
車輪に過大なスリップが発生することを防止する車輪過
大スリップ防止装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】車両の加速時に車輪に加えられる駆動力
が車輪と路面との摩擦力との関係において過大である場
合や、車両の制動時に車輪に加えられる制動力が車輪と
路面との摩擦力との関係で過大である場合には、車輪の
スリップが過大となる。車両の加速,制動等は路面と車
輪との摩擦力に依存して行われるものであるが、この摩
擦力は車輪と路面とのスリップ率(スリップ量を車両速
度で除した値)が適正値であるときに最大となるもので
あるため、車両を良好に加速しあるいは制動するために
は、スリップ率またはスリップ量を適正値に保ちつつ加
速,制動を行うことが必要である。
【0003】そのため、従来から、加速時のスリップが
過大になることを防止するために車輪に制動力を加えて
過大な駆動力を打ち消すトラクション制御、制動時のス
リップが過大になることを防止するために車輪の制動力
を低減するアンチロック制御が行われている。この制動
力の制御は種々の形態で行われるが、その中に、例えば
特開平2−310161号公報に記載されているよう
に、車輪速度変化量に基づいて行われるものがある。車
輪速度変化量のみに基づいて、あるいは車輪速度変化量
と車輪速度,車両速度等他の量とに基づいて制動力の制
御が行われるのである。なお、単位時間当たりの車輪速
度変化量である車輪加速度は車輪速度変化量の一種であ
るが、本発明においては車輪速度変化量は必ずしも単位
時間当たりの変化量ではなく、任意の時間内における車
輪速度の変化量として扱うため、車輪加速度とは称しな
いで車輪速度変化量と称することにしたものである。ス
リップ量およびスリップ率は車両速度と車輪速度とから
求められるものであるが、スリップ量やスリップ率の増
減状態は車輪速度変化量から判るため、車輪速度および
車両速度と車輪速度変化量とに基づいて制動力を制御す
る場合は勿論、車輪速度変化量のみに基づいて制動力を
制御しても車輪のスリップ量やスリップ率を適正な値に
保つことができるのである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来は、車輪速度変化
量として車輪速度センサ等で検出した実際の車輪速度の
変化量が使用されていたが、この車輪速度変化量はスリ
ップに起因する車輪速度の変化量のみならず、車体速度
変化量をも含んでいる。スリップ量やスリップ率の増減
状態を正確に表すのは車両速度変化量を除いた車輪速度
変化量であるのに、車両速度変化量を含んだ車輪速度変
化量が制動力の制御に使用されていたのである。本発明
は、この事実に着目し、車輪速度変化量としてスリップ
量やスリップ率の増減状態を正確に表すものを使用する
ことにより、車輪過大スリップ防止制御の精度を向上さ
せることを課題としてなされたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】この課題を解決するため
に、本発明に係る車輪過大スリップ防止装置は、図1に
示すように、車輪速度を取得する車輪速度取得手段と、
車両速度を取得する車両速度取得手段と、それら車輪速
度取得手段と車両速度取得手段とによりそれぞれ取得さ
れた車輪速度と車両速度との差の変化量を前記車輪速度
変化量として取得する車輪速度変化量取得手段と、少な
くともその車輪速度変化量取得手段により取得された車
輪速度変化量に基づいて車輪に対する制動力を制御する
制動力制御手段とを含むように構成される。
【0006】
【作用】本発明に係る車輪過大スリップ防止制御装置に
おいては、車輪速度変化量取得手段が、車輪速度取得手
段と車両速度取得手段とによりそれぞれ取得された車輪
速度と車両速度との差の変化量を車輪速度変化量として
取得する。実際の車輪速度変化量から車両速度変化量を
除いたものを車輪速度変化量として取得するのである。
そして、制動力制御手段が、少なくとも取得された車輪
速度変化量に基づいて車輪に対する制動力を制御する。
なお、車輪速度取得手段,車両速度取得手段および車輪
速度変化量取得手段等がぞれぞれ車輪速度,車両速度お
よび車輪速度変化量を取得する段階の少なくとも一つに
おいて、ノイズを除去するための平滑化処理が行われる
ことが望ましく、これら手段が平滑化手段を包含し、あ
るいは平滑化手段と一体不可分に構成される場合があ
る。
【0007】
【発明の効果】この車両速度変化量を除いた車輪速度変
化量は、前述のように、車輪のスリップ量やスリップ率
の変化状態を正確に表すものであり、本発明に係る車輪
過大スリップ防止装置はこの車輪速度変化量に基づいて
制動力の制御を行うため、車輪のスリップ量やスリップ
率が正確に適正値に保たれ、車両の加速や制動が良好に
行われる。
【0008】
【実施例】以下、本発明の一実施例であるアンチロック
制御装置を含むアンチロック型ブレーキシステムを図面
に基づいて詳細に説明する。図2において符号10はブ
レーキペダルであり、ブースタ12を介してマスタシリ
ンダ14に接続されている。マスタシリンダ14は2個
の加圧室を直列に備えたタンデム型であり、それら加圧
室に互いに等しい高さのブレーキ圧をそれぞれ発生させ
る。
【0009】本ブレーキシステムは互いに独立した2系
統の配管がX字状に配設されたX配管式である。第1の
ブレーキ系統は、マスタシリンダ14の一方の加圧室が
液通路20,ノーマルオープン型の電磁弁22および液
通路24を経て左後輪RLのブレーキのホイールシリン
ダ26に接続されるとともに、液通路20,30,ノー
マルオープン型の電磁弁32および液通路34を経て右
前輪FRのブレーキのホイールシリンダ36に接続され
ることによって構成されている。一方、第2のブレーキ
系統は、他方の加圧室が液通路40,ノーマルオープン
型の電磁弁42および液通路44を経て左前輪FLのブ
レーキのホイールシリンダ46に接続されるとともに、
液通路40,48,ノーマルオープン型の電磁弁50お
よび液通路52を経て右後輪RRのブレーキのホイール
シリンダ54に接続されることによって構成されてい
る。
【0010】また、第1のブレーキ系統においては、前
記液通路24がノーマルクローズド型の電磁弁60を経
て、前記液通路34がノーマルクローズド型の電磁弁6
2を経てそれぞれリザーバ64に接続されている。この
リザーバ64はポンプ66の吸込み口に接続され、それ
の吐出し口は前記液通路20に接続されている。一方、
第2のブレーキ系統においては、前記液通路44がノー
マルクローズド型の電磁弁68を経て、前記液通路52
がノーマルクローズド型の電磁弁70を経てそれぞれリ
ザーバ72に接続されている。このリザーバ72はポン
プ74の吸込み口に接続され、それの吐出し口は前記液
通路40に接続されている。そして、それら2個のポン
プ66,74は共通のモータ76により駆動される。
【0011】したがって、例えば、左後輪RLのブレー
キ圧については、電磁弁22,60をいずれも非通電状
態とすることによって増圧状態が実現され、電磁弁22
のみを通電状態とすることによって保持状態が実現さ
れ、電磁弁22,60をいずれも通電状態とすることに
よって減圧状態が実現される。他の車輪のブレーキ圧に
ついても同様である。すなわち、各車輪のブレーキ圧は
2個の電磁弁の状態の組合せによって、増圧状態,保持
状態および減圧状態が択一的に実現されるのである。以
上説明した電磁弁22,32,42,50,60,6
2,68,70,リザーバ64,72,ポンプ66,7
4,モータ76等によってアンチロックブレーキシステ
ムアクチュエータ(以下、ABSアクチュエータと略称
する)78が構成されている。なお、本ブレーキシステ
ムはFF車(フロントエンジン・フロントドライブ車)
に設置されており、前輪FR,FLが駆動輪、後輪R
R、RLが従動輪である。
【0012】上記ABSアクチュエータ78は電子制御
装置80により制御される。この電子制御装置80は図
3に示すように、コンピュータ82を主体として構成さ
れており、CPU84,ROM86,RAM88,入力
インターフェース回路92および出力インターフェース
回路94を含んでいる。この出力インターフェース回路
94には各ドライバ96を介して前記モータ76および
電磁弁22等がそれぞれ接続されている。一方、入力イ
ンターフェース回路92には各アンプ98を介して4個
の車輪速度センサ100,102,104,106およ
びストップランプスイッチ110がそれぞれ接続されて
いる。ストップランプスイッチ110は運転者によるブ
レーキペダル10の踏込みを検出するものである。
【0013】ROM86にはアンチロック制御に必要な
種々のプログラムが格納されており、その結果コンピュ
ータ82は図4のブロック線図で表される各手段の機能
を果たす。この図においては、ABSアクチュエータ7
8によってそれぞれブレーキ圧が制御される左右前輪F
L,FRおよび左右後輪RL,RRが小円によって表示
されている。また、4個の車輪のうち何個の車輪につい
てのデータが供給されるかを明らかにするために、車輪
の個数に応じた本数の線によって各ブロックが結ばれて
いる。
【0014】上記各車輪に対応する車輪速度センサ10
4,102,100,106からの信号が車輪速度・車
輪速度変化量演算手段120に供給される。車輪速度・
車輪速度変化量演算手段120はこれら信号から各車輪
の車輪速度Vwおよびその変化量(正確には後述の車輪
速度第一変化量ΔVw1および車輪速度第二変化量ΔV
w2)を演算し、左右前輪FL,FRの車輪速度Vwお
よび車輪速度変化量ΔVw1,ΔVw2を車輪速度偏差
作成手段122に供給する一方、左右後輪RL,RRの
車輪速度Vwおよび車輪速度変化量ΔVw1,ΔVw2
を選択後輪決定手段124に供給する。選択後輪決定手
段124は左右後輪RL,RRのうち車輪速度Vwの小
さい方を選択後輪に決定し、その選択後輪の車輪速度V
wおよび車輪速度変化量ΔVw1,ΔVw2を車輪速度
偏差作成手段122に供給する。
【0015】また、最高車輪速度決定手段126が車輪
速度・車輪速度変化量演算手段120によって演算され
た左右前輪FL,FRおよび左右後輪RL,RRの車輪
速度Vwのうち最高のものを最高車輪速度Vwmaxに
決定し、共通外乱量演算手段128および各輪外乱量演
算手段130が車輪速度第二変化量ΔVw2から共通外
乱量Vn0および各輪外乱量Vn1をそれぞれ演算す
る。
【0016】上記最高車輪速度Vwmaxおよび共通外
乱量Vn0に基づいて推定車両速度作成手段131が推
定車両速度Vveを作成し、その推定車両速度Vveに
基づいて車輪速度基準値作成手段132が左右前輪F
L,FR用と選択後輪用との車輪速度基準値Vsnを作
成して前記車輪速度偏差作成手段122に供給する。車
輪速度偏差作成手段122にはまた上記各輪外乱量演算
手段130によって演算された各輪外乱量Vn1が供給
され、さらに車輪速度回復量予測値演算手段134によ
って演算された車輪速度回復量予測値Vprevも供給
される。
【0017】車輪速度偏差作成手段122は以上のデー
タ、すなわち左右前輪FL,FRおよび選択後輪RLま
たはRRの車輪速度Vw,車輪速度変化量ΔVw1,Δ
Vw2,車輪速度基準値Vsn,各輪外乱量Vn1,車
輪速度回復量予測値Vprev等に基づいて左右前輪F
L,FRおよび選択後輪RLまたはRRの車輪速度偏差
Hensaおよび近未来車輪速度偏差Hensafを演
算し、増減圧時期決定手段136に供給する。増減圧時
期決定手段136は供給された車輪速度偏差Hensa
および近未来車輪速度偏差Hensafに基づいて、左
右前輪FL,FRおよび左右後輪RL,RRのブレーキ
圧の増圧および減圧の時期を決定し、ABSアクチュエ
ータ78に増減圧指令を出す。
【0018】左右後輪RL,RRに関しては、概して選
択後輪RLまたはRRに対して作成された指令が非選択
後輪にも適用され、所謂セレクトロー制御が行われる
が、減圧の終了時期は選択後輪と非選択後輪とで異なる
ようにされる。後に詳述するように、車輪速度が大きい
側の非選択後輪のスリップ量を意図的に小さくして、そ
れの車輪速度を実際の車両速度に近づけるために、非選
択後輪の減圧終了時期が選択後輪より遅らされるのであ
る。この意味において非選択後輪を車両速度を監視する
ための車両速度監視輪と称することとする。
【0019】以下、車輪速度・速度変化量演算手段12
0を始め、各手段の機能の詳細を順次説明する。車輪速
度・速度変化量演算手段120においては図5のフロー
チャートで表されるプログラムが左右前輪FL,FRお
よび左右後輪RL,RRの各々についてサイクルタイム
CYCT(例えば5msec)毎に実行される。このサイク
ルタイムCYCT毎の時点をサンプリング時点と称す
る。まずステップS1(以下、S1と略称し、他のステ
ップも同様とする)において、今回、エッジが存在した
か否かの判定が行われる。前記車輪速度センサ100等
は、一定ピッチの歯を有して車輪と共に回転するロータ
と、そのロータの歯に対向する位置に静止して設けられ
て歯の通過を電磁的に検知する電磁ピックアップとを備
えたものであり、電磁ピックアップの出力電圧のゼロク
ロス(一般的には出力電圧が一定値になる時期)を境に
してハイレベルとローレベルとに交互に変わるパルス信
号が作成され、さらにそのパルス信号の立上がり時と立
下がり時とにそれぞれエッジ信号が発せられるのである
が、これらのエッジ信号が今回のサンプリング時点と前
回のサンプリング時点との間に発せられたか否かが判定
されるのである。
【0020】通常はこの判定結果はYESであり、S2
においてエッジ異常が発生しているか否かが判定され
る。車輪の回転に伴って上記ロータが回転している間は
エッジ信号の発生間隔が急激に変わることはないはずで
あるが、ロータの偏心等で電磁ピックアップが歯の通過
を検知しなくなってエッジ信号が脱落(エッジ飛びと称
する)したり、機械的あるいは電気的ノイズにより疑似
的なエッジ信号が発生(エッジ増しと称する)したりす
ることがあり、これらの場合にはエッジ信号の発生間隔
が急激に変わる。また、車輪速度が低速度になったと
き、電磁ピックアップの出力電圧が低下して、エッジ信
号が発せられたり発せられなかったりすることによりエ
ッジ飛びが発生することもあり、やはりエッジ信号の発
生間隔が急激に変わる。したがって、エッジ間隔が急激
に変化したか否かにより、エッジ異常が発生したか否か
が判定されるのである。
【0021】通常はこの判定結果はNOとなり、S3の
生車輪速度の演算が行われる。図6に示すように、現時
点PRTIM直前の2個のエッジ信号の発生時点、すな
わち1個ずつの立上がりのエッジ信号発生時点DTPお
よび立下がりのエッジ信号発生時点DTNから現時点P
RTIMまでの経過時間DTNRELおよびDTPRE
Lとの平均経過時間TECと、現時点PRTIMより前
にS1の判定結果がYESとなった(エッジが存在し
た)最後のサンプリング時点である過去時点OLDTI
Mに今回と同様にして演算された平均経過時間TECL
と、過去時点OLDTIMから現時点PRTIMまでの
経過時間CN×CYCT(CNは自然数であり、図6の
場合は1である)とから次式によって生車輪速度VXA
が演算されるのである。 DVT=TECL−TEC+CN×CYCT Vxa=VCNV×EN/DVT ここにおいてVCNVは、ロータと車輪との直径比と、
ロータ直径と、ロータの歯のピッチとから決まる定数で
あり、ENは過去時点OLDTIMから現時点PRTI
Mまでに発せられたエッジ信号の数である。
【0022】なお、通常は毎回のサンプリング時点にエ
ッジ信号が存在するためCN=1となるのであるが、今
回の直前のn−1回のサンプリング時点にエッジ信号が
存在しなかった場合にはCNが2以上の自然数となる。
また、記号TECLのLはLastの頭文字であり、図
5のフローチャートで表されるプログラムが前回すなわ
ち1サイクルタイム前に実行された時点(前回サンプリ
ング時点)における平均経過時間TECを意味する。他
の記号についても同様の意味でLを使用する。さらに付
言すれば、上記演算は4個の車輪の各々について行われ
るため、実際には上式は次式で表され、 DVT(I)=TECL(I)−TEC(I)+CN
(I)×CYCT Vxa(I)=VCNV×EN(I)/DVT(I) I=1,2の場合はそれぞれ左右の前輪、I=3,4の
場合はそれぞれ左右の後輪についての演算となる。しか
し、複雑さ避けるために(I)は省略する。
【0023】本実施例においては、上記のように、現時
点PRTIM直前の連続する2個のエッジ信号の中間時
点と過去時点OLDTIM直前の連続する2個のエッジ
信号の中間時点との時間間隔DVTに基づいて生車輪速
度Vxaが演算されるため、ロータが一定速度で回転す
る場合の立上がりのエッジ信号から立下がりのエッジ信
号までの時間間隔と立下がりのエッジ信号から立上がり
のエッジ信号までの時間間隔とが等しくなくても支障な
く生車輪速度Vxaが演算される。
【0024】S3に続いてS4の生車輪加速度DVAの
演算が次式によって行われる。 DTA=(DTVL+DVT)/2 DVA=GCNV×(Vxa−VxaL)/DTA なお、GCNVは車輪加速度の単位をkm/hr2 にするた
めの定数である。
【0025】その後、S5において現時点PRTIMの
車輪速度の外挿演算が行われ、S6において車輪速度第
一変化量ΔVw1が演算される。車輪速度の外挿演算と
は、図6に示すように、エッジが存在したサンプリング
時点毎に、過去の適数個の生車輪速度(図示の例では2
個の生車輪速度Vxa,VxaL)から現時点の生車輪
速度Vext(外挿生車輪速度と称する)を比例計算に
よって推定することであり、次式によって演算される。 Vext=Vxa+(Vxa−VxaL)×(DVT/
2+TEC)/DTA
【0026】従来は、エッジ信号に基づいて演算された
生車輪速度Vxaに相当するもの自体が現時点の生車輪
速度として使用されていた。生車輪速度の演算に時間
(TEC+DVT/2)の遅れがあったのであり、この
時間は毎回変動するため、ブレーキ圧の制御誤差発生の
一因となっていた。また、遅れ時間は車両速度が低くな
るほど大きくなるため、不適正なブレーキ圧制御を回避
するために一定車両速度(例えば7km/hr)以下ではア
ンチロック制御を停止させることが行われていた。それ
に対し、本実施例においては遅れのない外挿生車輪速度
Vextが1サイクルタイム毎に演算されるため、減圧
開始,終了時期等の遅れが少なくなって精度の良いブレ
ーキ圧制御が可能になり、後述の種々の対策の採用と相
まって、7km/hr以下の低速でもアンチロック制御を適
正に行うことが可能になった。
【0027】S6における車輪速度第一変化量ΔVw1
の演算は、前回S14において演算された平滑化車輪速
度Vw、今回の外挿生車輪速度Vext、前回の推定車
両速度変化量ΔVveおよび前回の圧縮された車輪速度
第一変化量ΔVw1から次のように行われる。「圧縮」
の意味は以下の説明から明らかになる。
【0028】まず、次式によって圧縮前の車輪速度第一
変化量ΔVwx1が演算される。 Vtmp=Vwn-1 +ΔVve ΔVwx1n =ΔVw1n-1 ×C1+(Vext−Vt
mp)×C2 定数C1とC2との間にはC1=1−2×C2の関係が
あり、本実施例においてはC1=0.5,C2=0.2
5とされている。なお、今回の値と前回の値とが同時に
式中に現れるために特に区別する必要がある場合にのみ
添字n−1,nを付し、必要がない場合には省略する。
上記推定車両速度変化量ΔVveは後に説明する推定車
両速度Vveの1サイクルタイム分の変化量である。上
記Vext−Vtmpは(Vext−Vwn-1 )−ΔV
veであり、推定車両速度Vveに対する車輪の相対速
度(相対車輪速度Vwvと称する)の前回からの変化量
に相当し、車輪速度第一変化量ΔVwx1はこの変化量
の不完全積分である。この不完全積分を後述の第二積分
と区別するために第一積分と称する。
【0029】続いて下式の演算により車輪速度第一変化
量ΔVwx1の圧縮が行われる。図7に示すように、車
輪速度第一変化量ΔVwx1が一定値C3を超える部分
と、一定値C4より下回る部分とが圧縮されて、車輪速
度の実際にはあり得ない急激な変化がノイズであるとし
て除去されるのである。ただし、過剰な圧縮は行われな
いようになっている。すなわち、車輪速度第一変化量Δ
Vwx1が一定値C4+C6より下回る時は、低μ路面
で制動開始した時や路面摩擦係数μが急減した時に減圧
の遅れが生じることを回避するするために、圧縮されな
いようになっているのである。 ただし、C3=0.525,C4=−0.35,C5=
0.125,C6=−2.1 最終的に得られたΔVw1が圧縮後の車輪速度第一変化
量であり、以後の処理においてはこれが車輪速度第一変
化量として使用される。以下、特に断らない限り車輪速
度第一変化量とは圧縮後の車輪速度第一変化量のことで
ある。上記係数C3,C4,C6の単位はkm/hr/5ms
ecであり,重力加速度Gで表現すれば3G,−2G,−
12Gとなる。すなわち、車輪速度の回復加速度3G、
低下加速度−2G以内が良路としての許容加速度とされ
ており、また、車輪速度の減速度が−14G(=−2G
−12G)以下となるときは、低μ状態であるとして圧
縮が行われず、車輪のロック状態が早く解消されるよう
になっているのである。以上により、良路にも悪路にも
低μ路にも好都合な特性を与えることができる。
【0030】なお付言すれば、上記相対車輪速度Vwv
は次式 Vwv=Vw−Vve で表され、車輪速度偏差作成手段122により後に詳述
するようにして作成される車輪速度偏差Hensaは次
式 Hensa=Vw−Vsn で表される。そして、推定車両速度Vveと車輪速度基
準値作成手段132によって後に詳述するように作成さ
れる車輪速度基準値Vsnとの1サイクルタイム間の変
化量はほぼ等しいので、2つの変化量ΔVwv,ΔHe
nsaはほぼ同一となる。 ΔVw1n =ΔVwvn =(Vw−Vve)n −(Vw
−Vve)n-1 =(Vw−Vsn)n −(Vw−Vs
n)n-1 なる式で定義されるΔVw1は相対車輪速度差Vwvの
変化量であり、車輪速度偏差Hensaの変化量でもあ
る。
【0031】また、上記相対車輪速度Vwvは車輪速度
の誤差と考えることができ、この誤差成分のみを取り出
してフィルタ処理することにより、推定車両速度Vve
の絶対量に誤差があっても勾配さえ正しければ、正しい
車輪速度第一変化量ΔVw1を取り出すことができる。
さらに、外挿生車輪速度Vextをフィルタの入力とす
ることにより車輪加速度(車輪速度第一変化量ΔVw
1)の量子化誤差をなくすことができるため、従来、車
輪速度用とは別に必要であった車輪加速度用(車輪速度
変化量用)のフィルタを、以下の説明から明らかなよう
に車輪速度用フィルタと一体化することができる。
【0032】ステップS1において、今回、エッジが存
在したと判定された場合には以上の処理が行われるので
あるが、エッジが存在しなかったと判定された場合に
は、S7において車輪がロックしているか否かの判定が
行われる。最後に正常なエッジ信号が発せられてからの
経過時間が時間T1(例えば55msec)未満であれば車
輪がロックしていないと判定され、時間T1以上であれ
ばロックしていると判定されるのである。
【0033】ロックしていないと判定された場合にはS
5における車輪速度Vwの外挿演算やS6の車輪速度第
一変化量ΔVw1の更新が行われず、最後に演算された
第一車輪速度変化量ΔVw1の値に保たれる。ただし、
エッジが無い場合にも、サイクルタイムCYCTを用い
て次式で表される外挿演算により現時点の外挿生車輪速
度が求められ、かつ第一車輪速度変化量ΔVw1の更新
が行われるようにしても良い。 Vext=Vext+(Vxa−VxaL)×CYCT
/DTA
【0034】一方、ロックしていると判定された場合に
はS9において外挿生車輪速度Vextと車輪速度第一
変化量ΔVw1とが共に0とされる。
【0035】また、S2においてエッジ異常が発生して
いると判定された場合には、S10においてそのエッジ
異常が単純なエッジ異常、すなわち、飛んだエッジまた
は増したエッジに対応するエッジ信号を単純に追加しあ
るいは無視すれば解消されるエッジ異常であるか否かが
判定される。判定結果がYESであればS11において
エッジ信号の追加あるいは無視によりエッジ異常が解消
された上で、S3なししS5において車輪速度の外挿演
算等が行われるが、判定結果がNOであればS12にお
いて補正エッジ数が演算される。今回の車輪速度が前回
の車輪速度にできるかぎり近く、かつ、最高車輪速度V
wmax(後に詳述するように、最高車輪速度決定手段
126において前回決定された最高車輪速度である)よ
り低い車輪速度になるエッジ数が期待値として演算さ
れ、そのエッジ数の期待値から実際のエッジ数が差し引
かれて補正エッジ数が演算されるのである。
【0036】そして、S13において、補正エッジ数が
奇数であるか否かが判定される。エッジ信号は前述のよ
うに、電磁ピックアップの出力電圧のゼロクロス毎に発
生させられるものであるので、立上がりのエッジ信号と
立下がりのエッジ信号とが必ず対になって生じるもので
ある。したがって、演算された補正エッジ数が偶数であ
る場合には、その補正エッジ数だけ補正されたエッジ数
でS3ないしS5が実行されるが、補正エッジ数が奇数
である場合は、エッジ飛びが発生中でエッジ数の補正が
不可能であるとしてS3ないしS5がスキップされ、車
輪速度の外挿演算等が行われない。補正エッジ数が奇数
であるか否かの判定は、例えば2m−1<補正エッジ数
<2m+1(mは整数)が成立するか否かで行うことが
できる。
【0037】以上の処理に続いてS14において平滑化
車輪速度Vwの演算が行われる。この演算は、今回の車
輪速度第一変化量ΔVw1n と前回の平滑化車輪速度V
n-1 および推定車両速度変化量ΔVveとから次式に
より行われる。 Vwn =Vwn-1 +ΔVve+ΔVw1n =Vtmp+
ΔVw1n つまり、平滑化車輪速度Vwは車輪速度第一変化量ΔV
w1と推定車両速度変化量ΔVveとの積分によって求
められるのであり、この積分を第二積分と称する。この
ように、平滑化車輪速度Vwを二重積分によって求め、
かつ車輪速度第一変化量ΔVwx1の圧縮を行うことに
よってノイズが良好に除去された平滑化車輪速度Vwが
得られるのであり、これらの演算を行う部分が車輪速度
用兼車輪加速度用(車輪速度変化量用)フィルタであ
る。
【0038】次に、S15において、車輪速度第一変化
量ΔVw1から、40msec間の車輪速度変化量である車
輪速度第二変化量ΔVw2が次式によって演算される。 ΔVw2n =ΔVw2n-1 ×7/8+ΔVw1n 車輪速度第二変化量ΔVw2は40msec、つまり8サイ
クルタイム分の車輪速度第一変化量ΔVw1の積分であ
り、現実に8個ずつの車輪速度第一変化量ΔVw1を加
算して求めることも可能であるが、その場合には常に最
新の8個の車輪速度第一変化量ΔVw1を記憶しておく
必要があり、記憶容量の節減のために、代替手段として
上記式による演算が行われるのである。
【0039】なお、車輪速度第二変化量ΔVw2は、圧
縮前の車輪速度第一変化量ΔVwx1と圧縮後の車輪速
度第一変化量ΔVw1との加重平均から次のように演算
されるようにしてもよい。 Tmp=ΔVwx1n ×0.25+ΔVw1n ×0.7
5 ΔVw2n =ΔVw2n-1 ×7/8+Tmp
【0040】車輪速度・車輪速度変化量演算手段120
においては、4個の車輪FL,FR,RL,RRの各々
について上記の処理が行われ、その結果、4個ずつの平
滑化車輪速度Vwおよび車輪速度変化量ΔVw1,ΔV
w2が得られる。なお、以下特に必要がない限り平滑化
車輪速度Vwを単に車輪速度Vwと称し、かつ必要に応
じて左右前輪FL,FRの車輪速度をVwfl,Vwf
rで表し、左右後輪RL,RRの車輪速度をVwrl,
Vwrrで表す。
【0041】上記4個の車輪速度Vwfl,Vwfr,
Vwrl,Vwrrが最高車輪速度決定手段126に供
給され、これらのうちで最も大きい速度が最高車輪速度
Vwmaxに決定される。ただし、本ブレーキシステム
は路面の摩擦係数が均一である限り、制動時における後
輪RR,RLのスリップが必ず前輪FR,FLのそれよ
り小さくなるように設計されており、4つの車輪のうち
車輪速度が最高になるのは後輪RR,RLのいずれかで
あるため、通常は両後輪の車輪速度Vwrl,Vwrr
のうち大きいものが最高車輪速度Vwmaxに決定され
る。
【0042】車輪速度・車輪速度変化量演算手段120
において演算された4個の車輪の車輪速度第二変化量Δ
Vw2が共通外乱量演算手段128および各輪外乱量演
算手段130に供給され、これらにおいて共通外乱量V
n0および各輪外乱量Vn1が演算される。前述の通
り、相対車輪速度Vwvは車輪速度の誤差と考えること
ができ、その相対車輪速度Vwvの変化量である車輪速
度第一変化量ΔVw1は相対車輪速度の変化量であるた
め、それらが積分された車輪速度第二変化量ΔVw2も
相対車輪速度の変化量である。この相対車輪速度の変化
量は路面の凹凸,車輪の振動等に起因する外乱の大きさ
が大きいほど大きくなるものであり、したがって相対車
輪速度の変化量から外乱の大きさを推定することができ
る。
【0043】共通外乱量演算手段128においては、ブ
レーキ圧制御開始当初(最初の減圧開始直後)の一定時
間(例えば40msec)を除き、4個の車輪中の増圧モー
ドにあるものの中から、車輪速度第二変化量ΔVw2の
負の最低値ΔVw2minが選択され(そのために、図
示は省略するが増減圧時期決定手段136から4個の車
輪の各々について、ブレーキ圧制御開始直後の一定時間
を過ぎ、かつ、増圧中である旨の情報が共通外乱量演算
手段128に供給される)、それに基づいて共通外乱量
Vn0が次式により演算される。 Tmp=0 IF(増圧中かつΔVw2min<Tmp)Tmp=Δ
Vw2min Vn0=MAX(Vn0−C7,−Tmp×C8) C8は1/2の平方根である。共通外乱量Vn0は4個
の車輪の車輪速度第二変化量ΔVw2の負値の最低値か
ら演算されるので、ゲインC8を小さくしないと制御が
不安定になる。
【0044】なお、式Vn0=MAX(Vn0−C7,
−Tmp×C8)による処理は、最低値ΔVw2min
の絶対値が増大するときは共通外乱量Vn0がそれに追
従して増大し、最低値ΔVw2minの絶対値が減少す
るときは共通外乱量Vn0がC7/CYCT(サイクル
タイム)以上の勾配では低下しないようにするための処
理である。共通外乱量Vn0は4個の車輪に共通的な外
乱の大きさを表すものであるが、上記処理により良路か
ら悪路への変化には速く、悪路から良路への変化には緩
やかに追従させられる。どちらかというと、比較的大き
く、比較的長周期の凹凸の悪路等に起因する外乱によく
対応する。
【0045】各輪外乱量演算手段130においては、各
輪外乱量Vn1が左右前輪FL,FRと選択後輪RLま
たはRRの各々の車輪速度第二変化量ΔVw2の正値を
平滑化して次式により演算される。 Vn1=Vn1+(MAX(0,ΔVw2×C9−Vn
1))/20 各輪外乱量Vn1は各車輪に固有の外乱量であり、変化
の早い外乱量であって、どちらかというと、比較的大き
く、比較的短周期の外乱、特に、車輪の振動に起因する
外乱によく対応するものである。
【0046】上記共通外乱量演算手段128からの共通
外乱量Vn0と前記最高車輪速度決定手段126からの
最高車輪速度Vwmaxとから推定車両速度作成手段1
31が推定車両速度Vveを作成する。推定車両速度作
成手段131は図8に示す各手段の機能を果たす。これ
ら手段の根幹は推定車両速度演算手段140である。
【0047】推定車両速度演算手段140には、最高車
輪速度決定手段126から最高車輪速度Vwmaxが、
また共通外乱量演算手段128から共通外乱量Vn0
が、絶対値化後輪速度差演算手段144から絶対値化さ
れた左右後輪の輪速度差Vwrdif(絶対値化後輪速
度差と称する)が、さらに車両旋回量推定手段146か
ら車両旋回量推定量としての絶対値化された左右前輪の
車輪速度差Vwfdif(絶対値化前輪速度差と称す
る)がそれぞれ供給される。
【0048】本実施例においては、以下に詳述するよう
に、4個の車輪速度の変動状態から作成される共通外乱
量Vn0が大きいほど推定車両速度Vveが引き下げら
れて悪路走行時のブレーキ圧力が高くされ、悪路特性の
改善が図られる。また、前述のように左右後輪RL,R
Rのうち車輪速度が大きいものについてブレーキ圧力が
意図的に低めにされて車両速度監視輪とされるのである
が、この場合には左右後輪の車輪速度差が路面μが小さ
いほど大きくなる。したがって、左右後輪RL,RRの
車輪速度差(絶対値化後輪速度差Vwrdif)が大き
いほど推定車両速度Vveが持ち上げられて低μ特性の
改善が図られる。しかし、車両速度監視輪を設けると、
車両旋回時に早期減圧を引き起こし、制動力の低下をき
たす。これを回避するために、左右前輪FL,FRの車
輪速度差(絶対値化前輪速度差Vwfdif)から車両
旋回状況が検出され、旋回状況に応じて推定車両速度V
veが引き下げられる。
【0049】絶対値化後輪速度差演算手段144による
絶対値化後輪速度差Vwrdifの演算は、平滑化後輪
速度差演算手段148から供給される左右後輪の平滑化
された後輪速度差Vwrdif1(平滑化後輪速度差と
称する)と、後輪速度差基準値作成手段150から供給
される左右後輪の後輪速度差基準値Vwrdif0とに
基づいて行われる。平滑化後輪速度差演算手段148は
次の処理によって平滑化後輪速度差Vwrdif1を作
成する。 Tmp=Vwrr−Vwrl−Vwrdif1n-1 IF Tmp>0 THEN Vwrdif1n =Vwrdif1n-1 +MIN(Tmp, Eps1) ELSE Vwrdif1n =Vwrdif1n-1 +MAX(Tmp, −Eps1) END IF 上式中の誤差値Tmpは後輪速度差(Vwrr−Vwr
l)の前回の平滑化後輪速度差Vwrdif1n-1 から
の誤差を表す値であり、上式は、誤差値Tmpが正の場
合は今回の平滑化後輪速度差Vwrdif1n が前回の
平滑化後輪速度差Vwrdif1n-1 に誤差値Tmpと
制限値Eps1とのうちの小さい方のものを加えて求め
られ、誤差値Tmpが0または負の場合は今回の平滑化
後輪速度差Vwrdif1n が前回の平滑化後輪速度差
Vwrdif1n-1 に誤差値Tmpと制限値−Eps1
とのうち大きいものを加えて求められることを意味す
る。すなわち、平滑化後輪速度差Vwrdif1は右後
輪RRと左後輪RLとの車輪速度差を表す値であるが、
増大するときも減少するときも制限値Eps1以上は変
化しないように変化勾配が制限されることによって平滑
化されるのであり、制限値Eps1は例えば0.07km
/hrとされる。
【0050】また、後輪速度差基準値作成手段150に
よる左右後輪の後輪速度差基準値Vwrdif0の作成
は次の演算によって行われる。 Vwrdif0=Vve×0.02+0.5 ただし、Vveは推定車両速度演算手段140によって
前回作成された推定車両速度である。
【0051】絶対値化後輪速度差作成手段144は上記
のようにして作成された平滑化後輪速度差Vwrdif
1および後輪速度差基準値Vwrdif0から次の処理
によって絶対値化後輪速度差Vwrdifを作成する。 Tmp=ABS(Vwrdif1)−Vwrdif0−Vwrdifn-1 IF Tmp>0 THEN Vwrdifn =Vwrdifn-1 +MIN(Tmp, Eps2) ELSE Vwrdifn =Vwrdifn-1 +MAX(Tmp, −Eps2) END IF 上式中のABS(Vwrdif1)は平滑化後輪速度差
Vwrdif1の絶対値を意味し、右後輪RRと左後輪
RLとのいずれの車輪速度が大きい場合でも正の値で平
滑化後輪速度差の大きさを示す。また、誤差値Tmp
は、平滑化後輪速度差Vwrdif1の絶対値の後輪速
度差基準値Vwrdif0からの外れ量の、前回の絶対
値化後輪速度差Vwrdifn-1 からの誤差を表す値で
ある。絶対値化後輪速度差Vwrdifは平滑化後輪速
度差Vwrdif1の絶対値の後輪速度差基準値Vwr
dif0からの外れ量を表す値であるが、これも平滑化
後輪速度差Vwrdif1と同様に制限値Eps2以上
は変化しないように変化勾配に制限が加えられているの
である。制限値Eps2は例えば0.07km/hrとされ
る。
【0052】車両旋回量推定手段146による絶対値化
前輪速度差Vwfdifの作成は、平滑化前輪速度差演
算手段152から供給される左右前輪の平滑化された前
輪速度差Vwfdif1(平滑化前輪速度差と称する)
と、最大前輪速度差演算手段154から供給される左右
前輪の速度差の最大値Vwfdifmax(最大前輪速
度差と称する)とに基づいて行われる。平滑化前輪速度
差作成手段152が次の処理によって平滑化前輪速度差
Vwrdif1を演算し、 Tmp=Vwfr−Vwfl−Vwfdif1n-1 IF Tmp>0 THEN Vwfdif1n =Vwfdif1n-1 +MIN(Tmp, Eps3) ELSE Vwfdif1n =Vwfdif1n-1 +MAX(Tmp, −Eps3) END IF 車両旋回量推定手段146は次式によって絶対値化前輪
速度差Vwfdifを演算する。 Vwfdif=ABS(Vwfdif1)×K2 Vwfdif=MAX(Vwfdif,Vwfdifm
ax) ただし、K2は修正係数で0.5〜0.75の範囲から
選定され、本実施例においては0.75に選定されてい
る。この修正係数K2の意味は後に説明する。車両旋回
量推定手段146は推定した絶対値化前輪速度差Vwf
difが最大前輪速度差作演算段154によって作成さ
れた最大前輪速度差Vwfdifmaxを超える場合
は、最大前輪速度差Vwfdifmaxを絶対値化前輪
速度差Vwfdifとして採用する。
【0053】上記最大前輪速度差Vwfdifmax
は、理論的にそれより前輪速度差が大きくなるはずがな
いと考えられる値であって、次式により演算される。 Vwfdifmax=1.3×0.5×9.8×3.6
2 /Vve この式は次のことを考慮して作成されたものである。車
両の横加速度Gyと旋回半径Rと車両速度Vveとの間
にはGy=Vve2 /Rの関係があり、車両の旋回半径
R,車両速度Vve,左右前輪間隔Wwと左右前輪の速
度差Vwfdifとの間にはVwfdif=Vve×W
w/Rの関係があるため、Vwfdif=Ww×Gy/
Vveが成立する。そして、最も大きい横加速度Gyが
得られる摩擦係数の高い路面上を走行中における最大横
加速度Gyが0.5〜0.6Gであることが経験上判っ
ているため、上式Vwfdif=Ww×Gy/Vveの
横加速度Gyに0.5G代入し、左右前輪間隔Wwに
1.3m を代入して、単位をkm/hrとしたのがVwfd
ifmax=1.3×0.5×9.8×3.62 /Vv
eである。
【0054】推定車両速度演算手段140においては、
まず最高車輪速度決定手段126から供給される最高車
輪速度(これを生最高車輪速度Vwxmaxと称する)
を次のように勾配制限処理して最高車輪速度Vwmax
が作成られる。 Vwxmax=Max(Vwfr,Vwfl,Vwr
r,Vwrl) Tmp=Min(Vwmaxn-1 +0.175,Vwx
max) Vwmaxn =Min(Vwmaxn-1 −0.35,T
mp) 最高車輪速度Vwmaxの増加量が5msec当たり0.1
75km/hrに、減少量が−0.35km/hrにそれぞれ制
限されるのであり、5msec当たり0.175km/hr,−
0.35km/hrはそれぞれ1G,−2Gに相当する。
【0055】その後、次式により補正後の最高車輪速度
Vwmaxcが演算される。ただし、絶対値化前輪速度
差Vwfdifによる補正は、絶対値化前輪速度差Vw
fdifがしきい値以上である状態が設定時間以上継続
し、車両が旋回中であると判定された場合にのみ行われ
る。 Vwmaxc=Vwmax−Vn0+Vwrdif×K
1−Vwfdif×K2 Vn0は前記共通外乱量演算手段128によって演算さ
れた共通外乱量(正の値)であり、共通外乱量Vn0が
大きいほど補正後の最高車輪速度Vwmaxcの引き下
げ量が多くなって、悪路における減圧過多が回避される
ようになっている。
【0056】K1は平滑化後輪左右速度差Vwrdif
1の修正係数で、路面の摩擦係数μが小さい場合には、
左右後輪のうち最大車輪速度となるもののスリップ量も
大きくなって、実際にはスリップ量が大きいにもかかわ
らずそれが検出されず、全体としてブレーキ圧が高めに
制御されてしまうことを回避するためのものであって、
0.125〜0.25の範囲から選定されるが、本実施
例ではK1=0.25とされている。
【0057】一方、修正係数K2は車両の旋回に起因す
る左右輪の速度差を修正するための係数である。車両の
旋回に伴う角速度が大きいほど左右前輪の車輪速度差が
大きくなることに着目して、絶対値化前輪速度差Vwf
difが大きいほど、修正後の最大車輪速度Vwmax
cの引下げ量が大きくなるようにされているのである。
旋回に起因する左右前輪の車輪速度差の修正係数K2は
本来0.5とすべきである。しかし、旋回に起因する左
右車輪速度差は後輪にも存在するので、この左右後輪の
車輪速度差に基づくVwrdif×K1の修正を打ち消
すために、修正係数K2は修正係数K1に0.5を加算
してK2=0.75とされている。
【0058】なお、各輪外乱量Vn1が車輪速度第二変
化量ΔVw2の正値に基づいて演算され、共通外乱量V
n0が車輪速度第二変化量ΔVw2の負値に基づいて演
算されるため、正帰還による補正後の最高車輪速度Vw
maxcの発振が防止されて、高速追従性と安定性の両
方の確保が可能になる。
【0059】さらに付言すれば、車両の旋回時には上記
のように左右後輪にも速度差が生じるため、絶対値化後
輪速度差Vwrdifに基づいて旋回時の修正を行うこ
とも考えらえるが、旋回時には4つの車輪のうち内側後
輪の荷重が最も小さくなるため、内側後輪のスリップが
大きくなり、左右後輪の車輪速度差よりは左右前輪の車
輪速度差の方が車両の角速度に正確に対応すると考え
て、左右前輪の車輪速度差に基づいて修正を行うことと
したものである。
【0060】上記のようにして補正された最高車輪速度
Vwmaxcから推定車両速度Vveが演算される。補
正後の最高車輪速度Vwmaxcと推定車両速度Vve
との誤差Errorを積分する第一積分で推定車両速度
の変化量ΔVveが演算され、第二積分で推定車両速度
Vveが演算されるのである。なお、第一積分値(1サ
イクルタイム間の推定車両速度の変化量)ΔVveはブ
レーキ圧が良好に制御されると路面μ(路面とタイヤと
の摩擦係数μ)に比例した値となる。一様路面では、ほ
ぼ一定値となることが期待されるので、緩やかに修正さ
れるようにすることが望ましい。また、制動初期や高μ
路から低μ路への移行時にはやや早く修正されるように
することが車輪ロックを防止する上で望ましい。
【0061】そのため、第一積分値ΔVveは、高μ路
から低μ路への移行が0.25〜0.5sec 、低μから
高μへの移行が0.5〜0.75sec で行われるよう
に、補正後の最高車輪速度Vwmaxcと推定車両速度
Vveとの誤差Errorの多少に影響されない次の方
法で演算される。 Vvex =Vven-1 +ΔVven-1 Error =Vwmaxc−Vvex IF Error>0 THEN Tmp=Eps4u IF Vwrdif>1.5 THEN Tmp=Tmp×4 IF JIKAN<0 THEN JIKAN=0 JIKAN=JIKAN+1 IF JIKAN>20 THEN Tmp=Tmp×2 ELSE Tmp=Eps4d IF Vwrdif<−0.75 THEN Tmp=Tmp×2 IF JIKAN>0 THEN JIKAN=0 JIKAN=JIKAN−1 IF JIKAN<ー20 THEN Tmp=Tmp×4 END IF ΔVven =ΔVven-1 +Tmp/200 Vven =Vvex+Tmp/16 ただし、 Eps4u=0.4、 Eps4d=−0.2 この演算を行う部分が推定車両速度フィルタである。
【0062】上記演算法は下記の基本的な2次遅れ式平
滑化演算法を改良したものである。 Eps4u=0.4、Eps4d=−0.2であり、高
μ路から低μ路への移行の方が、低μ路から高μ路への
移行より速やかに行われる。
【0063】この基本的な2次遅れ式平滑化演算法によ
れば、アンチロック制御開始時点の推定車両速度変化量
ΔVveを高μ路に対応した値に教示しておくことによ
って、高μ時の推定車両速度Vveの遅れを解消し得
る。しかし、逆に低μ時の進みの問題、すなわちアンチ
ロック制御開始時点に高スリップが発生する問題が発生
したため、低μ路情報を取り出すべく、前述のように絶
対値化後輪速度差Vwrdifを導入してこの問題を解
消した。
【0064】通常の場合にはそれで適正な推定車両速度
Vveが得られるのであるが、絶対値化後輪速度差Vw
rdifが著しく大きく、あるいは著しく小さい場合に
は早期に適正な推定車両速度Vveが得られず、アンチ
ロック制御の精度が悪くなることが判明したため、その
ような場合には、次のように学習量をTmp×4,Tm
p×2として推定車両速度Vveの変化を助長するよう
に改良した。 Vvex =Vven-1 +ΔVven-1 Error =Vwmaxc−Vvex IF Error>0 THEN Tmp=Eps4u IF Vwrdif>1.5 THEN Tmp=Tmp×4 ELSE Tmp=Eps4d IF Vwrdif<−0.75 THEN Tmp=Tmp×2 END IF ΔVven =ΔVven-1 +Tmp/200 Vven =Vvex+Tmp/16 ただし、Eps4u=0.4、Eps4d=−0.2
【0065】しかし、その後の研究によって、上記のよ
うにしてもなお推定車両速度Vveの変化が不足し、同
一方向のErrorが相当長時間継続して生じ、そのた
めにアンチロック制御の精度が悪くなる場合があること
が判明した。そこで、同一方向のErrorが一定時間
100msec(=20×5msec)より長く続く場合には、
高μ路から低μ路への移行時にも逆方向の移行時にも学
習量をTmp×8と大きくし、推定車両速度Vveが速
やかに適正な値となるように改良して、前記の最終的な
演算方法に到達したのである。
【0066】上記のようにして得られた推定車両速度V
veを使用し、車輪速度基準値作成手段132が次式に
よって車輪速度基準値Vsnを演算する。 Vsn=Vve−Ssn ただし、Ssnはスリップ量基準値であり、式Ssn=
A×Vve+Bによって推定車両速度Vveに比例する
大きさに決定される。旋回外側の前輪(旋回外側の後輪
は非選択後輪であるため車輪速度基準値Vsnが必要な
い)についてはこの車輪速度基準値Vsnがそのまま使
用されるが、旋回内側の前,後輪についてはさらに、次
式の追加修正が行われる。 Vsn=Vsn−Vwfdif×K3 ただし、K3は修正係数(例えば0.25) なお、修正係数K3は理論的には0.5とすべきもので
あるが、0.5とすると発振的になるためK3=0.2
5〜0.375とするのがよい。
【0067】以上の説明から明らかなように、本実施例
においては、修正係数K1,K2およびK3がそれぞれ
0.25,0.75および0.25とされており、旋回
外側の前輪が最高車輪速度Vwmaxに対して左右車輪
間隔Wwの1/2、旋回内側の前,後輪輪が3/4だけ
修正されるようになっている。しかし、修正係数K1,
K2およびK3をそれぞれ0.25,0.625および
0.5として、旋回外側の前輪を最高車輪速度Vwma
xに対して左右車輪間隔Wwの3/8、旋回内側の前,
後輪を7/8だけ修正するなど、修正の仕方を変えるこ
とも可能である。なお、旋回外側の車輪については理論
上修正の必要がないはずであるが、本実施例において
は、それを修正することにより推定車両速度を実際より
低めに演算して前輪を増圧過剰気味にするとともに、後
輪に関してはセレクトロー制御を行うことにより旋回時
には旋回外側の後輪について旋回内側の後輪に従った制
御を行って減圧過剰気味にする制御が行われることとな
る。
【0068】このように、修正係数K1,K2,K3を
導入し、これらの値を適宜選定すれば、低μ路対策と旋
回時対策とを両立させることができ、従来、低μ判定お
よび旋回判定を行って制御条件を変更することが行われ
ていたのを廃止することができる。低μ判定や旋回判定
に応じて制御条件が変更される場合には、制御ロジック
が複雑になる上、制御条件の変更時に制御の乱れが生じ
るのであるが、これらを回避することができるのであ
る。
【0069】また、従来、生の最高車輪速度を勾配制限
処理して得た推定車両速度Vveから車輪速度基準値V
snを演算するとき、別に求めた外乱量(車輪加速度の
異常値の出現頻度から決定した悪路水準)を段階的なし
きい値と比較して階段的にスリップ量を修正することが
行われていたが、本実施例においては共通外乱量Vn0
と絶対値化後輪速度差Vwrdifと絶対値化前輪速度
差Vwfdifとによる修正が推定車両速度のフィルタ
処理前に行われ(以上が4個の車輪の車輪速度基準値の
共用部分であり、旋回内側の前後輪についてのみ推定車
両速度のフィルタ処理後の車輪速度基準値演算時に修正
されるようになっている)、推定車両速度フィルタで十
分遅延されるので修正量を多くしても制御が振動的にな
り難い効果がある。
【0070】なお、以上は4個の車輪のタイヤ径が同一
であるとして説明したが、実際には異なることもあるた
め、非制動時における車輪相互の速度差の関係等からタ
イヤ径のデータが取得され、そのデータに基づいて各車
輪の車輪速度基準値Vsnが修正されるようにすること
が望ましい。
【0071】次に車輪速度回復量予測値演算手段134
における車輪速度回復量予測値Vprevの演算を説明
する。車輪速度回復量予測値Vprevの演算は、減圧
開始時点に、車輪速度回復量予測値Vprevをブレー
キ圧と減圧時間、または路面μ、または路面μと外乱量
等、路面の性状に関連した量に基づいて決定し、その後
漸減させる演算である。本実施例においては、路面μと
して乾燥アスファルト路面の路面μが想定され、その路
面μと共通外乱量Vn0とに基づいて次式により車輪速
度回復量予測値Vprevが演算される。 減圧開始時および再減圧開始時 Vprevn =Vprevn-1 ×0.5+2.5+Vn
0×0.25 それ以外 Vprevn =Vprevn-1 ×(1−1/16)−
0.1 図示は省略するが車輪速度回復量演算手段134にも共
通外乱量演算手段128から共通外乱量Vn0が供給さ
れるのであり、車輪速度回復量予測値Vprevは外乱
が大きいほど大きい値に設定されることになる。
【0072】後述のように、概略的には車輪速度Vwが
車輪速度基準値Vsnより小さくなった時ブレーキ圧の
減圧が開始されるのであるが、車輪速度Vwは減圧開始
後も低下を続け、遅れて回復する。そして、減圧開始後
の車輪速度低下量、すなわち車輪速度Vwの下方へのオ
ーバシュートの大きさは種々に変化する。従来はこれに
対処するために、増減圧の制御に車輪加速度が考慮され
ていたのであるが、車輪加速度は外乱の影響を顕著に受
けるため外乱量の大きい場合のブレーキ圧制御精度が悪
くなることを避け得ず、また、車輪速度と車輪加速度と
の両方に基づいく場合には制御ロジックが複雑となって
好ましくない。
【0073】そこで、車輪加速度に代えて車輪速度回復
量Vprevを導入し、減圧時には車輪速度回復量Vp
revだけ車輪速度基準値Vsnを引き下げることにし
たのである。車輪速度回復量Vprevは図9に示すよ
うに減圧開始時に所定値に設定し、その後漸減させる。
車輪速度回復量Vprevは本来、減圧開始後の車輪速
度の回復状況を予測するものであるので、実際の車輪速
度の変化を示す曲線に近い曲線を描くように演算される
ことが望ましいのであるが、実際上は、想定されている
車輪速度Vwのオーバシュート部(車輪速度Vwの車輪
速度基準値Vsnより下がる部分)を車輪速度回復量V
prevを示す曲線が下側から覆う状態になるようにす
れば十分である。そのため、本実施例においては、単純
化のために、車輪速度回復量Vprevを減圧開始と同
時に設定値まで急増させ、その後漸減させることとした
のであるが、漸減のさせ方は本実施例のものに限定され
るわけではなく、また、車輪速度回復量Vprevを漸
増させた後漸減させるようにすることも可能である。
【0074】減圧は一定時間T0行うこととし、一定時
間T0の終了時に、引き下げた車輪速度基準値(Vsn
−Vprev)より車輪速度Vw(正確には後に詳述す
るように近未来車輪速度Vwfであるが)が実線で示す
ように大きければ増圧を開始する。また、減圧中に引き
下げた車輪速度基準値(Vsn−Vprev)より車輪
速度Vwが破線で示すように小さくなれば、車輪速度回
復量Vprevの再設定を行う。この車輪速度回復量V
prevの再設定に伴う減圧を再減圧と称することとす
るが、再減圧が適数回行われることにより種々の場合に
適した量の減圧が行われる。例えば、ブレーキ圧制御中
に路面μが急減した場合には、車輪速度Vwのオーバシ
ュートが大きくなるため、図10に示すように再減圧の
回数が多くなってブレーキ圧が低μ路に適した大きさに
制御される。なお、減圧と再減圧との間に適当なブレー
キ圧保持を挿入する良く知られた圧力制御方法とこの車
輪速度回復量Vprevとを併用すると、高μ悪路で非
常に良い結果が得られる。
【0075】以上は外乱量が0である理想的な場合の説
明であるが、実際には外乱が存在し、この外乱を伴う車
輪速度Vwが、引き下げられた車輪速度基準値Vsnよ
り小さくなれば不必要な再減圧が行われてしまう。そこ
で、上式においては共通外乱量Vn0の大きさに応じて
車輪速度回復量Vprevが大きくなるようにされてい
る。
【0076】以上のようにして求められた各車輪の車輪
速度基準値Vsn,車輪速度回復量予測値Vprevお
よび各輪外乱量Vn1と、前記車輪速度・車輪速度変化
量演算手段120において演算された左右前輪FL,F
Rおよび選択後輪RLまたはRRの車輪速度Vwおよび
車輪速度変化量ΔVw1,ΔVw2とから、車輪速度偏
差作成手段122が上記3個の車輪の車輪速度偏差He
nsaを演算する。
【0077】車輪速度偏差Hensaは、理論的には各
輪外乱量Vn1で補正した車輪速度Vwから車輪速度回
復量予測値Vprevで補正した車輪速度基準値Vsn
を引くことによって求めることができるが、本実施例で
は次のようにして演算される。
【0078】まず、第一偏差Hensa1が車輪速度V
w,各輪外乱量Vn1および引き下げられた車輪速度基
準値(Vsn−Vprev)から、また第二偏差Hen
sa2が第一偏差Hensa1と車輪速度第一変化量Δ
Vw1および各輪外乱量Vn1とからそれぞれ次式によ
り演算される。 Hensa1=(Vw+Vn1)−(Vsn−Vprev) Hensa1=MIN(Hensa1,Limit) Hensa2=Hensa1+ΔVw1×4 IF ΔVw1>0 AND ΔVw2>0 THEN Hensa2=Hensa2+ΔVw2 Hensa2=Max(Hensa2,0) そして、これら第一および第二偏差Hensa1,He
nsa2を用いて車輪速度偏差Hensaが次式によっ
て演算される。 Hensa=MAX(Hensa1,(Hensa1+
Hensa2)/2)
【0079】車輪速度偏差Hensaが以上のようにし
て演算されることによって、減圧開始直前の車輪速度偏
差Hensaが車輪速度の第一変化量ΔVw1により低
めにされて減圧が早く行われ、減圧後は車輪速度回復量
予測値Vprevで持ち上げられて再減圧が起き難くな
り、車輪速度の回復時には車輪速度の第二変化量ΔVw
2により減圧禁止が確実に行われる。
【0080】なお、増圧,保持および減圧の3状態によ
ってブレーキ圧を制御する形式のABSアクチュエータ
(『増保減タイプアクチュエータと称する)や、ブレー
キ圧の増圧を緩,急の両態様で行い得るABSアクチュ
エータ(緩急増圧タイプアクチュエータと称する)を備
え、増圧勾配を制御し得るアンチロック制御装置におい
ては、車輪速度偏差Hensaの正方向の値を、その値
が大きいほど増圧勾配を強めるように用いることができ
る。
【0081】従来は、車輪速度に車輪加速度成分を加算
すると悪路に弱くなるとされていたが、悪路になるほど
圧縮される車輪加速度成分(車輪速度第一,二変化量Δ
Vw1,ΔVw2)を利用すると、良路にも、悪路にも
良好に対応できることが判明した。車輪速度第二変化量
ΔVw2は車輪速度第一変化量ΔVw1の過去8データ
の積分量に相当するのでΔVw1×4をΔVw2/2と
置き換えると悪路に対して強くなるが、良路で粗い制御
となることが判った。そこで、両車輪速度変化量ΔVw
1,ΔVw2を適宜重み付けするのがよい。このよう
に、車輪速度変化量ΔVw1,ΔVw2で未来の車輪速
度偏差を求め、それを制御変数として用いると良好なA
BS制御が可能となる。この車輪速度偏差を近未来車輪
速度偏差と呼ぶことにする。
【0082】本実施例においては、近未来車輪速度偏差
Hensafは各輪外乱量Vn1と車輪速度第二変化量
ΔVw2とから次式によって演算される。 Hensaf=Hensa+(ΔVw2+Vn1)×2
0msec/40msec なお、車輪速度第二変化量ΔVw2は、前述のように車
輪速度基準値Vsnに対する相対的な車輪速度Vvwの
変化量であるため、近未来車輪速度偏差Hensaf
は、図11に示すように、車輪速度基準値Vsnに平行
な方向における車輪速度Vwの20msec間における推定
変化量を車輪速度偏差Hensaに加えたものとなる。
【0083】近未来車輪速度偏差Hensafの演算に
引き続いて次の処理が行われる。 Hensaf=MAX(Hensa,Hensaf) 演算された近未来車輪速度偏差Hensafが車輪速度
偏差Hensaより小さい場合には車輪速度偏差Hen
saが近未来車輪速度偏差Hensafとして採用され
るのであり、再減圧開始または増圧開始時の時期はこの
近未来車輪速度偏差Hensafに基づいて決定され
る。これにより、減圧開始時期を遅らせるとともに増圧
開始時期を早めて制動力を確保し、制動距離の短縮を図
ることができる。
【0084】上記車輪速度偏差Hensaおよび近未来
車輪速度偏差Hensafと、選択後輪決定手段124
から供給される選択後輪の情報とに基づいて、増減圧時
期決定手段136が各車輪の増減圧時期を決定する。原
則的には、車輪速度偏差Hensaが負になった時減圧
が開始され、一定時間T0の減圧の後、近未来車輪速度
偏差Hensafが未だ負であれば再減圧が行われ、正
になっておれば増圧が開始される。
【0085】上記一定の減圧時間T0は高μ路を想定し
て定められているため、高μ路では1回の減圧で車輪速
度が十分に回復し、車輪速度偏差が正になるが、もし減
圧が不足である場合には近未来車輪速度偏差Hensa
fが負になり、再減圧が行われる。つまり、低μ路上で
は所定時間ずつの減圧が繰り返し実行され、結果として
路面μに適した量の減圧が行われることになるのであ
る。
【0086】左右前輪FL,FRについてはそれぞれ独
立に増減圧時期が決定されるが、左右後輪RL,RRに
ついては概してセレクトロー制御が行われる。左右後輪
RR,RLのうち車輪速度が小さい側、すなわちスリッ
プが大きいと推定される側の選択後輪を基準に増減圧時
期が決定されるのである。ただし、減圧終了時期のみは
左右後輪RL,RRにおいて異ならされる。減圧終了時
期が車輪速度が大きい側の後輪(つまり前述の車両速度
監視輪)について一定微小時間(例えば、1〜2msec)
ずつ遅らされ、車両速度監視輪のブレーキ液圧が他方の
後輪のブレーキ圧より低く制御されることにより、実際
の車両速度に近い最高車輪速度Vwmaxが意図的に作
られるのである。
【0087】このように、左右後輪RL,RRの一方が
減圧,増圧開始時期決定用の選択後輪とされ、他方が推
定車両速度演算用の車両速度監視輪とされることによ
り、車両速度監視輪については図12の閉曲線H1に沿
っての制御が行われ、選択後輪については閉曲線H2に
沿っての制御が行われる。また、左右前輪FL,FRに
おいては共に図13の閉曲線H3に沿っての制御が行わ
れるが、ブレーキ圧制御精度の向上によりスリップ率の
変動範囲が狭くなり、制動距離の短縮効果が得られる。
【0088】以上の説明から明らかなように、本実施例
においては、車輪速度センサ100,102,104,
106と車輪速度・車輪速度変化量演算手段120の外
挿生車輪速度Vextを演算する部分とが車輪速度取得
手段を構成し、最高車輪速度決定手段126および推定
車両速度作成手段131とが車両速度取得手段を構成し
ている。そして、車輪速度・車輪速度変化量演算手段1
20の車輪速度第一変化量ΔVw1(またはΔVwx
1)および車輪速度第二変化量ΔVw2(またはΔVw
x2)を演算する部分が車輪速度変化量取得手段を構成
し、車輪速度偏差作成手段122,増減圧時期決定手段
136およびABSアクチュエータ78が制動力制御手
段を構成している。
【0089】本実施例においては、共通外乱量Vn0,
各輪外乱量Vn1,絶対値化前輪速度差Vwfdif,
絶対値化後輪速度差Vwrdif等が車輪速度偏差He
nsa,近未来車輪速度偏差Hensaf等の演算に使
用され、路面μ,路面凹凸等の路面状況や旋回等の車両
走行状況に応じた適正なブレーキ圧制御が行われるので
あるが、そのために使用される共通外乱量Vn0等はす
べて連続的な量とされており、従来のように、低μ判
定,悪路判定,旋回判定等の判定に基づいて制御条件が
段階的に変えられるわけではないので、条件変更に伴う
大きな制御誤差の発生が回避され、この点からもアンチ
ロック制御制度が向上する。
【0090】なお、例えば共通外乱量Vn0を使用する
際、最高車輪速度Vwmax,推定車両速度Vve,車
輪速度基準値Vsn,車輪速度偏差Hensaのいずれ
を補正しても結果はほぼ同じであることからも明らかな
ように、上記諸量を演算のどの段階で使用するかには大
きな自由度があり、各量の使用の機会は上記実施例に限
定されるものではない。
【0091】また、本実施例においては、上記左右後輪
RL,RRの役割分担および連続量に基づく車輪速度基
準値の決定の他、前述の車輪速度および推定車両速度の
適正な平滑化、車輪速度の外挿演算、車輪速度回復量予
測値Vprevの導入、近未来車輪速度の導入等によっ
て、従来難しいとされていた低μ路上あるいは低速走行
時における三角制御、すなわち急減圧,緩増圧によるブ
レーキ圧制御を精度良く行うことが可能になった。しか
し、上記対策を単独で採用し、あるいは2個以上を適宜
組み合わせて採用することも可能であり、それぞれ相応
の効果が得られる。
【0092】ブレーキ圧制御用の電磁弁も、各車輪に対
して増圧用電磁開閉弁および減圧用電磁開閉弁をそれぞ
れ1個ずつ設ける実施例の態様の他に、増圧,保持およ
び減圧の3位置を備えている3位置の電磁方向切換弁、
増圧および減圧の2位置を備えた電磁方向切換弁と流量
制御弁との組合わせ等、種々の電磁弁を使用することが
可能である。
【0093】さらに付言すれば、前記実施例はFF車に
本発明を適用した場合の一例であるが、本発明はFR車
(フロントエンジン・リヤドライブ車)や4WD車(四
輪駆動車)にも適用可能である。ただし、前者には、後
輪に駆動力が加えられる点、後者には、4輪全てに駆動
力が加えられる上、4輪の回転が差動装置により互いに
拘束を受ける点等の特殊事情があるため、これら特殊事
情を考慮して本発明を適用することが必要である。
【0094】また、前記実施例においては、車輪速度セ
ンサが、多数の歯が一円周上に等間隔に形成されたロー
タと、そのロータの歯に対向する位置に設けられて磁気
的に歯の通過を検出する磁気ピックアップとを含むもの
であるが、磁気ピックアップの交流信号が設定値に等し
くなる多数の時点(具体例においてはゼロクロス時点)
のうち、歯を間に挟む2時点間の中間時点もしくは歯溝
を間に挟む2時点間の中間時点の時間間隔に基づいて平
均車輪速度としての生車輪速度Vxaが演算され、複数
の生車輪速度Vxaから現時点の生車輪速度Vextが
演算されるため、現時点の車輪速度が高精度で得られ
る。
【0095】多数の歯を備えたロータと電磁ピックアッ
プとを含む車輪速度センサは広く使用されているが、磁
気ピックアップの交流信号が設定値に等しくなる多数の
時点のうち互いに隣接する2時点間の時間間隔が全て一
定になるとは限らない。歯を間に挟む2時点間の時間間
隔と歯溝を間に挟む2時点間の時間間隔とは等しくなら
ないのがむしろ普通であり、また、両者の時間間隔はロ
ータの偏心等によっても変わる。しかし、前記実施例に
おけるように、歯または歯溝を間に挟む2時点間の中間
時点を作成すれば、それら中間時点間の時間間隔は、車
輪速度が一定である限り、歯を間に挟む2時点間の時間
間隔と歯溝を間に挟む2時点間の時間間隔とが等しくな
くても一定になる。したがって、前記実施例においては
平均車輪速度としての生車輪速度Vxaおよび現時点の
生車輪速度Vextが高精度で得られるのである。
【0096】ただし、車輪が一定速度で回転していると
き、車輪速度センサの交流信号が設定値になる多数の時
点のうち互いに隣接する2時点の間の時間間隔が全て一
定であると見なし得る場合には、それら2時点間の時間
間隔から平均車輪速度を演算することも可能である。こ
の場合、実際の車輪速度が直線的に変化していれば、演
算された平均車輪速度は2時点の中央の車輪速度を表す
ことになる。これら2時点は現時点の直前のものを選択
し、それらに基づいて平均車輪速度を演算させることが
望ましいが、現時点直前の3時点以上の時間間隔からそ
れらの間の平均車輪速度を演算させることも可能であ
る。
【0097】現時点車輪速度は、複数の平均車輪速度か
ら外挿演算により推定される。最も単純な外挿演算は、
前記実施例におけるように、今回の演算によって得られ
た平均車輪速度と前回の演算によって得られた平均車輪
速度との2個の平均車輪速度から一次式によって現時点
の車輪速度を求めるものであるが、3個以上の平均車輪
速度から決まる一次式もしくは2次以上の式によって演
算することも可能である。
【0098】また、前記実施例においては、現時点車輪
速度が一定のサイクルタイム毎に演算され、得られた複
数の現時点車輪速度に基づいてサイクルタイムの整数倍
の時間内における車輪速度変化量が演算されるため、こ
の車輪速度変化量には遅れが少ない上、一定サイクルタ
イム毎に得られる。そして、このサイクルタイムがアン
チロック制御のサイクルタイムと一致させられているた
め、アンチロック制御に好適な車輪速度変化量が得られ
る。しかし、車輪速度変化量の演算のサイクルタイムと
アンチロック制御のサイクルタイムとを一致させること
は不可欠ではない。
【0099】また、前記実施例においては、エッジ信号
が一定時間以上発生しないときに車輪がロックしたと判
定されて、車輪速度Vwおよび車輪速度第一変化量ΔV
w1が0とされることにより車輪ロックが解消されるよ
うになっているが、後輪速度差が設定値以上に大きくな
ったときロック傾向にあると判定されて、車輪速度基準
値Vsnが引き上げられ、車輪ロックが回避されるよう
にすることも可能である。これら2つの対策は択一的に
採用することも両方を共に採用することも可能である。
【0100】車輪速度第二変化量ΔVw2は、前記実施
例においてはΔVw2n =ΔVw2 n-1 ×7/8+ΔV
w1n で求められたが、悪路になるほど減圧開始時の車
輪速度第二変化量ΔVw2が大きくなると考えられるの
で、車輪速度第一変化量ΔVw1および車輪速度第二変
化量ΔVw2が、車輪速度第二変化量ΔVw2から求め
られる各輪外乱量Vn1により次式によって、補正車輪
速度第一変化量ΔVw1cおよび補正車輪速度第二変化
量ΔVw2cとされるようにすることも可能である。 ΔVw1c=ΔVw1+Vn1/8 ΔVw2c=ΔVw2+Vn1
【0101】また、車輪速度回復量予測値Vprevは
常に同じように漸減させられるようになっていたが、こ
の場合には車両速度が非常に低くなった場合に車輪ロッ
クが発生し易くなることがある。これを回避するために
は、推定車両速度Vveが低くなるほど漸減率が大きく
なるようにし、あるいは推定車両速度Vveが一定値以
下の領域で漸減率をそれ以外の領域におけるより大きく
することが有効である。
【0102】減圧開始時期は現時点の車輪速度Vw、減
圧再開あるいは増圧開始時期は近未来車輪速度Vwfに
それぞれ基づいて決定されるようになっていたが、アン
チロック制御開始直後の減圧開始のみ車輪速度Vw(車
輪速度偏差Hensa)に基づいて行われ、それ以外の
減圧開始はすべて近未来車輪速度Vwf(近未来車輪速
度偏差Hensaf)に基づいて行われるようにするこ
とも可能である。
【0103】さらに、減圧開始指令から実際に減圧の効
果が現れるまでに遅れがあるため、すべての減圧開始も
近未来車輪速度Vwfに基づいて決定されるようにして
もよい。具体的には、制御の中心となる車輪速度として
現在の車輪速度Vwが使用されていたのを、近未来の車
輪速度、例えば20msec未来の車輪速度Vwf(以下、
Vwf20と表すこととする)を制御の中心として使用
するのである。例えば、制御の中心となる車輪速度をV
wf20とし、現在の車輪速度Vwや、より遠い未来の
車輪速度Vwf40を用いて増,減圧の制御を行うので
ある。 Tmp=MAX(Vw,Vwf20) Vwf=MIN(Tmp,Vw+ΔV,Vwf40+Δ
V) これにより、現在時刻の車輪速度Vwまたは40msec未
来の車輪速度Vwf40が単独でΔV(例えば1km/h
r)以上低下したときに減圧が開始されるようにするこ
とができる。
【0104】また、減圧開始時期は比較的近い近未来
の、再減圧あるいは増圧開始時期はそれより後の近未来
の車輪速度に基づいて決定し、あるいは緩増圧,緩減
圧,保持等の開始,終了時期等を急減圧や急増圧の開
始,終了時期とは異なる近未来速度に基づいて決定する
等種々の近未来車輪速度Vwf(近未来車輪速度偏差H
ensaf)を使用することも可能である。この場合に
は、5msec, 10msec未来の近未来偏差Hensaf
(以下、Hensaf05,Hensaf10で表すこ
ととする)等は次式で演算される。 Hensaf05=Hensa+(ΔVw1+Vn1×
5msec/40msec) Hensaf10=Hensa+(ΔVw1+Vn1×
5msec/40msec)×2
【0105】前記実施例においては、減圧の途中におい
て近未来車輪速度偏差Hensafが負にならない限
り、一定時間減圧の後には増圧が開始されるようになっ
ており、減圧時間の決定に路面状況や車両走行状況を考
慮する必要がないため、制御ロジックが簡単になる効果
が得られるのであるが、この一定時間の減圧に代えて路
面状況や車両走行状況に応じた減圧時間を採用すること
も可能である。例えば、推定車両速度変化量ΔVveの
絶対値が小さいほど、ブレーキ圧および路面μが小さい
ものであるため、減圧時間を長くするのである。
【0106】車輪速度偏差Hensaおよび近未来車輪
速度偏差Hensafが負の場合に減圧が行われるよう
になっていたが、これは不可欠ではない。一般的には、
車輪速度偏差Hensaおよび近未来車輪速度偏差He
nsafがそれぞれに対して設定されている設定値より
小さくなったときに減圧が行われるようにすればよいの
である。ただ、設定値が正の値に設定される場合には、
減圧が早期に開始されることとなるため、減圧時間を短
くすることが望ましい。
【0107】アンチロック制御開始当初の減圧開始判定
も中期以降の減圧開始判定も同じスリップ量Ssnの車
輪速度基準値Vsnに基づいて行われるようになってい
たが、スリップ量が変えられるようにしてもよい。例え
ば、アンチロック制御開始から一定時間(例えば630
msec)内は大きいスリップ量、それ以降には小さいスリ
ップ量というようにスリップ量を段階的に減少させた車
輪速度基準値Vsn、あるいはアンチロック制御開始か
ら時間が経過するに従ってスリップ量を漸減させた車輪
速度基準値Vsnに基づいて減圧開始時期が決定される
ようにするのである。この場合、スリップ量の減少に応
じて1回の減圧時間を短くすることが望ましい。このよ
うにすれば、アンチロック制御の中期以降はスリップ
量、つまり車輪速度の変化が小さくなり、安定したブレ
ーキ圧制御が可能になる。車輪速度偏差Hensaの演
算に外乱量Vn0,Vn1の学習結果を用いているた
め、アンチロック制御開始当初は車輪速度基準値Vsn
を十分低くするためにスリップ量Ssnを比較的大きく
せざるを得ないのであるが、外乱量の学習が進んでから
はスリップ量を小さくしても差し支えないのである。
【0108】車両速度監視輪を積極的に作るためには、
結果的に非選択後輪のブレーキ圧が選択後輪のそれより
低くなるようにすればよく、非選択後輪(車輪速度が小
さい後輪)の減圧時間を予め定められている適正値もし
くは路面状況,車両走行状況等に基づいて決定された値
より長くするとともに、あるいはそれに代えて増圧時間
を短くしてもよい。逆に、選択後輪の減圧時間あるいは
増圧時間を修正してもよく、両者の減圧時間,増圧時間
を修正してもよい。それによって、選択後輪と非選択後
輪とのいずれかのブレーキ圧が適正値となり、他方のブ
レーキ圧が適正値より低めあるいは高めになるか、選択
後輪と非選択後輪とのブレーキ圧が適正値の両側に外れ
ることになる。
【0109】その他、いちいち例示はしないが、種々の
変形,改良を施した態様で本発明を実施することが可能
である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の構成を概念的に示すブロック図であ
る。
【図2】本発明の一実施例であるアンチロック型液圧ブ
レーキ装置を示す系統図である。
【図3】上記ブレーキ装置の電子制御装置のハード的構
成を概念的に示すブロック図である。
【図4】上記電子制御装置の構成を機能に着目して概念
的に示すブロック図である。
【図5】図4における車輪速度・車輪速度変化量演算手
段の機能を示すフローチャートである。
【図6】上記車輪速度・車輪速度変化量演算手段による
車輪速度の外挿演算を説明するための図である。
【図7】上記車輪速度・車輪速度変化量演算手段による
車輪速度第一変化量の圧縮を説明するための図である。
【図8】図4における推定車両速度作成手段の構成を概
念的に示すブロック図である。
【図9】図4における車輪速度回復量予測値演算手段に
よる車輪速度回復量予測値の演算を説明するための図で
ある。
【図10】ブレーキ圧制御の途中で路面μが急変した場
合における車輪速度,車輪速度基準値および車輪速度回
復量予測値の変化を示す図である。
【図11】図4の車輪速度偏差作成手段において作成さ
れる近未来車輪速度偏差を説明するための図である。
【図12】上記アンチロック型液圧ブレーキ装置におけ
る後輪のスリップ率の制御状況を示す図である。
【図13】上記アンチロック型液圧ブレーキ装置におけ
る前輪のスリップ率の制御状況を示す図である。
【符号の説明】
78 ABSアクチュータ 100,102,104,106 車輪速度センサ 120 車輪速度・車輪速度変化量演算手段 122 車輪速度偏差作成手段 126 最高車輪速度決定手段 131 推定車両速度作成手段 136 増減圧時期決定手段

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも車輪速度変化量に基づいて、
    車輪に対する制動力を制御する制動力制御手段を備え、
    車輪の過大スリップを防止する装置であって、 車輪速度を取得する車輪速度取得手段と、車両速度を取
    得する車両速度取得手段と、それら車輪速度取得手段と
    車両速度取得手段とによりそれぞれ取得された車輪速度
    と車両速度との差の変化量を前記車輪速度変化量として
    取得する車輪速度変化量取得手段とを含むことを特徴と
    する車輪過大スリップ防止装置。
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EP0618115A2 (en) 1994-10-05
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CA2120209C (en) 1999-01-12

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