JP3913994B2 - 自動二輪車のアンチロックブレーキ制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブレーキ液圧の増減により前輪用および後輪用車輪ブレーキのアンチロック制御を独立して実行可能な自動二輪車のアンチロックブレーキ制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
このような自動二輪車のアンチロックブレーキ制御方法は、たとえば特開平9−328065号公報等で既に良く知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、自動二輪車において前輪用車輪ブレーキをアンチロック制御するにあたっては、車体安定性の向上のために低摩擦係数の路面を考慮して、前輪用車輪ブレーキの減圧制御時の減圧量を多めに設定するのが一般的である。ところが、高摩擦係数の路面では過減圧状態となりがちであり、特に前輪の単独制動時には必要以上の減圧により、制動に伴なう減速度の「抜け感」が生じ、制動フィーリングの悪化を招くことがある。
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、前輪の単独制動時における制動フィーリングを向上した自動二輪車のアンチロックブレーキ制御方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、ブレーキ液圧の増減により前輪用および後輪用車輪ブレーキのアンチロック制御を独立して実行可能な自動二輪車のアンチロックブレーキ制御方法であって、前輪単独制動時の前輪用車輪ブレーキのアンチロック制御を実行するにあたり、前輪および後輪の車輪速度をそれぞれ検出する車輪速度センサの検出値に基づいて前輪のスリップ率を算出し、その算出したスリップ率を該アンチロック制御に用いるようにした制御方法において、前輪単独制動時の前輪用車輪ブレーキのアンチロック制御を実行するにあたり、前記スリップ率が第1の閾値から第1の閾値よりも小さな第2の閾値以下に変化するまでの時間を計測し、またその計測時間が予め設定した第1の設定時間以下のときには、前記スリップ率が第2の閾値以下となった時点で前輪用車輪ブレーキの増圧制御を開始し、前記計測時間が第1の設定時間を超えるときには、前輪の車輪速度が加速状態から減速状態に転じたことを少なくとも1つの要件として前輪用車輪ブレーキの増圧制御開始のタイミングを定めることを特徴とする。
【0006】
このような請求項1記載の発明によれば、前輪の単独制動状態で前輪用車輪ブレーキのアンチロック制御を実行する際に、高摩擦係数の路面では、前輪用車輪ブレーキの減圧制御によって前輪のスリップ率は比較的早く低下するので、前輪のスリップ率が第1の閾値から第1の閾値よりも小さな第2の閾値以下に変化するまでの時間は比較的短くなり、その時間が第1の設定時間以下のときに前輪のスリップ率が第2の閾値以下になるのに応じて増圧制御に移行することにより、高摩擦係数の路面で前輪用車輪ブレーキが過減圧状態となるのを防止し、制動時における減速度の「抜け感」が生じることを回避して、制動フィーリングを向上することができる。一方、低摩擦係数の路面では、前輪用車輪ブレーキの減圧制御によって前輪のスリップ率が低下する時間は長くなるので、前輪の車輪速度が加速状態から減速状態に転じたことを少なくとも1つの要件として増圧制御開始のタイミングを定めることで、必要以上に早く増圧制御に移行することはなく、前輪用車輪ブレーキの減圧制御時の減圧量を多めにし、車体安定性を向上することが可能である。
【0007】
また上記目的を達成するために、請求項2記載の発明は、ブレーキ液圧の増減により前輪用および後輪用車輪ブレーキのアンチロック制御を独立して実行可能な自動二輪車のアンチロックブレーキ制御方法であって、前輪単独制動時の前輪用車輪ブレーキのアンチロック制御を実行するにあたり、前輪および後輪の車輪速度をそれぞれ検出する車輪速度センサの検出値に基づいて前輪のスリップ率を算出し、その算出したスリップ率を該アンチロック制御に用いるようにした制御方法において、前輪単独制動時の前輪用車輪ブレーキのアンチロック制御を実行するにあたり、前輪の車輪速度が減速状態から加速状態に転じた時点から前記スリップ率が予め設定した閾値以下になるまでの時間を計測し、またその計測時間が予め設定した第2の設定時間以下のときには、スリップ率が閾値以下となった時点で前輪用車輪ブレーキの増圧制御を開始し、前記計測時間が第2の設定時間を超えるときには、前輪の車輪速度が加速状態から減速状態に転じたことを少なくとも1つの要件として前輪用車輪ブレーキの増圧制御開始のタイミングを定めることを特徴とする。
【0008】
このような請求項2記載の発明によれば、前輪の単独制動状態で前輪用車輪ブレーキのアンチロック制御を実行する際に、高摩擦係数の路面では、前輪用車輪ブレーキの減圧制御によって前輪のスリップ率は比較的早く低下するので、前輪の車輪速度が減速状態から加速状態に転じた時点から前輪のスリップ率が予め設定した閾値以下となるまでの時間は比較的短くなり、その時間が第2の設定時間よりも小さいときに前輪のスリップ率が閾値以下になるのに応じて増圧制御に移行することにより、高摩擦係数の路面で前輪用車輪ブレーキが過減圧状態となるのを防止し、制動時における減速度の「抜け感」が生じることを回避して、制動フィーリングを向上することができる。一方、低摩擦係数の路面では、前輪用車輪ブレーキの減圧制御によって前輪のスリップ率が低下する時間は長くなるので、前輪の車輪速度が加速状態から減速状態に転じたことを少なくとも1つの要件として増圧制御開始のタイミングを定めることで、必要以上に早く増圧制御に移行することはなく、前輪用車輪ブレーキの減圧制御時の減圧量を多めにし、車体安定性を向上することが可能である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0010】
図1および図2は本発明の第1実施例を示すものであり、図1は自動二輪車用ブレーキ装置の液圧回路図、図2はタイミングチャートである。
【0011】
先ず図1において、スクータ型である自動二輪車には、乗員が右手で操作する右ブレーキレバー1の操作に応じて液圧を出力する第1マスタシリンダMAと、乗員が左手で操作する左ブレーキレバー2の操作に応じて液圧を出力する第2マスタシリンダMBとが搭載される。一方、自動二輪車の前輪には、一対のポッド3,4を有する前輪用車輪ブレーキBFが搭載されており、この前輪用車輪ブレーキBFには、第1マスタシリンダMAが制御弁手段6Aを介して接続されるとともに第2マスタシリンダMBが制御弁手段6B1および遅延弁5を介して接続される。また後輪に装着された後輪用車輪ブレーキBRには第2マスタシリンダMBが制御弁手段6B2を介して接続される。
【0012】
制御弁手段6Aは、前輪用車輪ブレーキBFのポッド3および第1マスタシリンダMA間に設けられる常開型電磁弁7と、該常開型電磁弁7に並列に接続されるチェック弁8と、前輪用車輪ブレーキBFのポッド3およびリザーバ10A間に設けられる常閉型電磁弁9とで構成されるものであり、第1マスタシリンダMAおよび前輪用車輪ブレーキBFのポッド3間の連通・遮断と、前輪用車輪ブレーキBFのポッド3およびリザーバ10A間の連通・遮断とを切換え可能である。
【0013】
リザーバ10Aには、該リザーバ10Aのブレーキ液を汲上げて第1マスタシリンダMA側に圧送する戻しポンプ11Aの吸入側が吸入弁12Aを介して接続されており、この戻しポンプ11Aの吐出側は、吐出弁13Aを介して第1マスタシリンダMAに接続される。
【0014】
制御弁手段6B1は、上記制御弁手段6Aと同様に常開型電磁弁7、チェック弁8および常閉型電磁弁9で構成されるものであり、前輪用車輪ブレーキBFのポッド4に接続される遅延弁5および第2マスタシリンダMB間の連通・遮断と、前記遅延弁5およびリザーバ10B間の連通・遮断とを切換え可能である。
【0015】
また制御弁手段6B2は、上記制御弁手段6A,6B1と同様に常開型電磁弁7、チェック弁8および常閉型電磁弁9で構成されるものであり、後輪用車輪ブレーキBRおよび第2マスタシリンダMB間の連通・遮断と、後輪用車輪ブレーキBRおよびリザーバ10B間の連通・遮断とを切換え可能である。
【0016】
リザーバ10Bには、該リザーバ10Bのブレーキ液を汲上げて第2マスタシリンダMB側に圧送する戻しポンプ11Bの吸入側が吸入弁12Bを介して接続されており、この戻しポンプ11Bの吐出側は、吐出弁13Bを介して第2マスタシリンダMBに接続される。
【0017】
前記両戻しポンプ11A,11Bには共通な単一のモータ16が連結されており、該モータ16により両戻しポンプ11A,11Bが駆動される。
【0018】
このような制御弁手段6A,6B1,6B2において、右および左ブレーキレバー1,2によるブレーキ操作時に車輪がロック状態に入りそうになったときのアンチロックブレーキ制御時には、常開型電磁弁7…のうちロック状態に入りそうである車輪に対応する常開型電磁弁を通電により閉弁するとともに常閉型電磁弁9…のうち上記車輪に対応する常閉型電磁弁を通電により開弁する。そうすると、ブレーキ液圧の一部がリザーバ10Aあるいは10Bに逃がされて減圧されることになる。またブレーキ液圧を保持する際には、常開型電磁弁7…を通電により閉弁するとともに常閉型電磁弁9…を非通電により閉弁状態に保持すればよく、ブレーキ液圧を増圧する際には、常開型電磁弁7…を非通電により開弁するとともに常閉型電磁弁9…を非通電により閉弁状態に保持すればよい。
【0019】
一対の戻しポンプ11A,11Bを共通に駆動するモータ16は、上記アンチロックブレーキ制御の開始に応じて作動を開始するものであり、リザーバ10A,10Bに逃がされたブレーキ液が戻しポンプ11A,11Bから第1および第2マスタシリンダMA,MB側に戻される。したがってリザーバ10A,10Bに逃がした分だけ第1および第2マスタシリンダMA,MBにおけるブレーキレバー1,2の操作量が増加することはない。
【0020】
各制御弁手段6A,6B1,6B2における常開型電磁弁7…および常閉型電磁弁9…の非通電・通電、ならびにモータ16の作動は、前輪および後輪の車輪速度を個別に検出する車輪速度センサ19F,19Rの検出信号が入力される制御ユニット18により制御されるものであり、制御ユニット18は、前記車輪速度センサ19F,19Rの検出信号に基づいて車輪がロック状態に入りそうであると判断したときには、ブレーキ液圧の減・増圧サイクルを繰返すように各制御弁手段6A,6B1,6B2の作動を制御することで、前輪用および後輪用車輪ブレーキBF,BRのアンチロック制御を実行する。
【0021】
また制御ユニット18は、前記各制御弁手段6A,6B1,6B2のいずれか1つによるアンチロックブレーキ制御の開始に伴ってモータ16の作動を開始する。
【0022】
ところで、制御ユニット18は、前輪の単独制動時における前輪用車輪ブレーキBFのアンチロック制御時において、前輪のスリップ率Sが第1の閾値(たとえば50%)から第1の閾値よりも小さな第2の閾値(たとえば5%)以下に変化するまでの時間T1を計測し、その計測時間T1が予め設定した第1の設定時間γ1以下であったときには、スリップ率Sが第2の閾値以下となった時点で前輪用車輪ブレーキBFの増圧制御を開始し、前記計測時間T1が第1の設定時間γ1を超えるときには、前輪の車輪速度が加速状態から減速状態に転じたことを少なくとも1つの要件として前輪用車輪ブレーキBFの増圧制御開始のタイミングを定めるものであり、この実施例では、前輪の車輪速度が加速状態から減速状態に転じたときに前輪用車輪ブレーキBFの増圧制御を開始する。
【0023】
ここで、前輪のスリップ率Sは、自動二輪車の推定車体速度をVR、前輪の車輪速度をVWとしたときに、
S=(VR−VW)/VR
に基づいて演算することができ、推定車体速度VRは前輪および後輪の車輪速度を個別に検出する車輪速度センサ19F,19Rの検出値に基づいて演算することができ、前輪の車輪速度VWは、前輪の車輪速度を検出する車輪速度センサ19Fの検出値に基づいて得ることができる。
【0024】
次にこの第1実施例の作用について説明すると、前輪の単独制動時に前輪がロック状態に陥ることを回避するために前輪用車輪ブレーキBFのアンチロック制御を実行する場合、前輪用車輪ブレーキBFのブレーキ液圧制御モード、前輪の車輪速度および前輪用車輪ブレーキBFのブレーキ液圧は、図2(a),(b),(c)でそれぞれ示すようになり、減圧制御に応じて低下した前輪の車輪速度が減速から加速に転じた後、スリップ率Sが第1の閾値から第1の閾値よりも小さな第2の閾値以下に変化するまでの時間T1を計測する。すなわち第1の閾値のスリップ率に対応した車輪速度V1と、第2の閾値のスリップ率に対応した車輪速度V2とを予め設定しておくことにより、前輪の車輪速度が車輪速度V1を超えてから車輪速度V2以上となるまでの時間T1を計測する。
【0025】
而して計測時間T1が、予め設定した第1の設定時間γ1以下のときには、スリップ率Sが第2の閾値以下となった時点すなわち前輪の車輪速度が車輪速度V2以上となった時点で前輪用車輪ブレーキBFの増圧制御を開始する。
【0026】
一方、前記計測時間T1が第1の設定時間γ1を超えるときには、前輪の車輪速度が加速状態から減速状態に転じたことを少なくとも1つの要件として前輪用車輪ブレーキBFの増圧制御開始のタイミングを定めるものであり、この実施例では、前輪の車輪速度が加速状態から減速状態に転じたときに前輪用車輪ブレーキBFの増圧制御を開始する。
【0027】
前輪の単独制動時における上述のようなアンチロック制御を実行すると、高摩擦係数の路面では、前輪用車輪ブレーキBFの減圧制御によって前輪のスリップ率Sは比較的早く低下するので、前輪のスリップ率Sが第1の閾値から第2の閾値以下に変化するまでを計測した計測時間T1は比較的短くなり、比較的早く増圧制御が開始されることになる。したがって高摩擦係数の路面で前輪用車輪ブレーキBFのブレーキ液圧が過減圧状態となるのを防止し、制動時における減速度の「抜け感」が生じることを回避して、制動フィーリングを向上することができる。
【0028】
ここで、前記計測時間T1にかかわらず、前輪の車輪速度が加速状態から減速状態に転じたときに前輪用車輪ブレーキBFの増圧制御を開始するようにした場合を想定すると、図2の鎖線で示すように、前輪用車輪ブレーキBFのブレーキ液圧制御モード、前輪の車輪速度および前輪用車輪ブレーキBFのブレーキ液圧が変化することになり、前輪用車輪ブレーキBFのブレーキ液圧が過減圧状態となり、減速度の「抜け感」が生じてしまうのである。
【0029】
一方、低摩擦係数の路面では、前輪用車輪ブレーキBFの減圧制御によって前輪のスリップ率Sが低下する時間は長くなるので、前輪の車輪速度が加速状態から減速状態に転じたことを少なくとも1つの要件として増圧制御開始のタイミングを定めることで、必要以上に早く増圧制御に移行することはなく、前輪用車輪ブレーキBFの減圧制御時の減圧量を多めにし、車体安定性を向上することが可能である。
【0030】
図3は本発明の第2実施例を示すものであり、制御ユニット18は、前輪の単独制動時における前輪用車輪ブレーキBFのアンチロック制御時において、減圧制御に応じて低下した前輪の車輪速度が減速状態から加速状態に転じた時点から前輪のスリップ率Sが予め設定した閾値以下になるまでの時間T2を計測する。すなわち閾値のスリップ率に対応した車輪速度V′を予め設定しておくことにより、前輪の車輪速度が加速状態に転じた時点から車輪速度V′以上となるまでの時間T2を計測する。
【0031】
而して計測時間T2が予め設定した第2の設定時間γ2以下のときには、前輪のスリップ率Sが閾値以下となった時点すなわち前輪の車輪速度が車輪速度V′以上となった時点で前輪用車輪ブレーキBFの増圧制御を開始し、前記計測時間T2が第2の設定時間γ2を超えるときには、前輪の車輪速度が加速状態から減速状態に転じたことを少なくとも1つの要件として前輪用車輪ブレーキBFの増圧制御開始のタイミングを定めるものであり、この第2実施例では、前輪の車輪速度が加速状態から減速状態に転じたときに前輪用車輪ブレーキBFの増圧制御を開始する。
【0032】
このような第2実施例によれば、前輪の単独制動状態で前輪用車輪ブレーキBFのアンチロック制御を実行する際に、高摩擦係数の路面では、前輪用車輪ブレーキBFの減圧制御によって前輪のスリップ率Sは比較的早く低下するので、前輪の車輪速度が減速状態から加速状態に転じた時点から前輪のスリップ率Sが予め設定した閾値以下となるまでの時間T2は比較的短くなり、その時間T2が第2の設定時間γ2よりも小さいときに前輪のスリップ率Sが閾値以下になるのに応じて増圧制御に移行することにより、高摩擦係数の路面で前輪用車輪ブレーキが過減圧状態となるのを防止し、制動時における減速度の「抜け感」が生じることを回避して、制動フィーリングを向上することができる。
【0033】
また低摩擦係数の路面では、前輪用車輪ブレーキBFの減圧制御によって前輪のスリップ率Sが低下する時間は長くなるので、前輪の車輪速度が加速状態から減速状態に転じたことを少なくとも1つの要件として増圧制御開始のタイミングを定めることで、必要以上に早く増圧制御に移行することはなく、前輪用車輪ブレーキBFの減圧制御時の減圧量を多めにし、車体安定性を向上することが可能である。
【0034】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0035】
【発明の効果】
前輪の単独制動状態で前輪用車輪ブレーキのアンチロック制御を実行する際に、高摩擦係数の路面では、前輪用車輪ブレーキの減圧制御によって前輪のスリップ率が比較的早く低下する関係で、前輪のスリップ率が第1の閾値から第1の閾値よりも小さな第2の閾値以下に変化するまでの経過時間は比較的短くなるが、請求項1の発明では、上記経過時間が第1の設定時間以下のときに前輪のスリップ率が第2の閾値以下になるのに応じて増圧制御に移行するようにしたので、高摩擦係数の路面で前輪用車輪ブレーキが過減圧状態となるのを防止し、制動時における減速度の「抜け感」が生じることを回避して、制動フィーリングを向上することができる。
【0036】
また前輪の単独制動状態で前輪用車輪ブレーキのアンチロック制御を実行する際に、高摩擦係数の路面では、前輪用車輪ブレーキの減圧制御によって前輪のスリップ率が比較的早く低下する関係で、前輪の車輪速度が減速状態から加速状態に転じた時点から前輪のスリップ率が予め設定した閾値以下となるまでの経過時間は比較的短くなるが、請求項2の発明では、上記経過時間が第2の設定時間よりも小さいときに前輪のスリップ率が閾値以下になるのに応じて増圧制御に移行するようにしたので、高摩擦係数の路面で前輪用車輪ブレーキが過減圧状態となるのを防止し、制動時における減速度の「抜け感」が生じることを回避して、制動フィーリングを向上することができる。
【0037】
一方、低摩擦係数の路面では、前輪用車輪ブレーキの減圧制御によって前輪のスリップ率が低下する時間は長くなるが、請求項1,2の各発明では、前輪の車輪速度が加速状態から減速状態に転じたことを少なくとも1つの要件として増圧制御開始のタイミングを定めるようにしたので、必要以上に早く増圧制御に移行することなく、前輪用車輪ブレーキの減圧制御時の減圧量を多めにし、車体安定性を向上することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施例における自動二輪車用ブレーキ装置の液圧回路図である。
【図2】 タイミングチャートである。
【図3】 第2実施例のタイミングチャートである。
【符号の説明】
19F,19R・・・車輪速度センサ
BF・・・前輪用車輪ブレーキ
BR・・・後輪用車輪ブレーキ
T1,T2・・・計測時間
γ1・・・第1の設定時間
γ2・・・第2の設定時間
Claims (2)
- ブレーキ液圧の増減により前輪用および後輪用車輪ブレーキ(BF,BR)のアンチロック制御を独立して実行可能な自動二輪車のアンチロックブレーキ制御方法であって、
前輪単独制動時の前輪用車輪ブレーキ(BF)のアンチロック制御を実行するにあたり、前輪および後輪の車輪速度をそれぞれ検出する車輪速度センサ(19F,19R)の検出値に基づいて前輪のスリップ率を算出し、その算出したスリップ率を該アンチロック制御に用いるようにした制御方法において、
前輪単独制動時の前輪用車輪ブレーキ(BF)のアンチロック制御を実行するにあたり、前記スリップ率が第1の閾値から第1の閾値よりも小さな第2の閾値以下に変化するまでの時間(T1)を計測し、その計測時間(T1)が予め設定した第1の設定時間(γ1)以下のときには、前記スリップ率が第2の閾値以下となった時点で前輪用車輪ブレーキ(BF)の増圧制御を開始し、また前記計測時間(T1)が第1の設定時間(γ1)を超えるときには、前輪の車輪速度が加速状態から減速状態に転じたことを少なくとも1つの要件として前輪用車輪ブレーキ(BF)の増圧制御開始のタイミングを定めることを特徴とする、自動二輪車のアンチロックブレーキ制御方法。 - ブレーキ液圧の増減により前輪用および後輪用車輪ブレーキ(BF,BR)のアンチロック制御を独立して実行可能な自動二輪車のアンチロックブレーキ制御方法であって、
前輪単独制動時の前輪用車輪ブレーキ(BF)のアンチロック制御を実行するにあたり、前輪および後輪の車輪速度をそれぞれ検出する車輪速度センサ(19F,19R)の検出値に基づいて前輪のスリップ率を算出し、その算出したスリップ率を該アンチロック制御に用いるようにした制御方法において、
前輪単独制動時の前輪用車輪ブレーキ(BF)のアンチロック制御を実行するにあたり、前輪の車輪速度が減速状態から加速状態に転じた時点から、前記スリップ率が予め設定した閾値以下になるまでの時間(T2)を計測し、その計測時間(T2)が予め設定した第2の設定時間(γ2)以下のときには、スリップ率が閾値以下となった時点で前輪用車輪ブレーキ(BF)の増圧制御を開始し、また前記計測時間(T2)が第2の設定時間(γ2)を超えるときには、前輪の車輪速度が加速状態から減速状態に転じたことを少なくとも1つの要件として前輪用車輪ブレーキ(BF)の増圧制御開始のタイミングを定めることを特徴とする、自動二輪車のアンチロックブレーキ制御方法。
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