JPH08197855A - 熱転写用印画紙 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 熱転写記録用印画紙に関し、耐水性を低下さ
せることなく、画像を形成した印画紙を重ね合わせた場
合の裏移りを防止する。 【構成】 シート状基材の一方の面に染料受容層を有
し、他面にバックコート層を有する熱転写用印画紙にお
いて、バックコート層に、ポリビニルアセタールと、該
ポリビニルアセタールに相溶性で且つ非水溶性の樹脂と
を含有させる。この場合、ポリビニルアセタールの含有
割合はバックコート層の樹脂成分中に１０〜７０重量％
とする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、バックコート層を有す
る熱転写用印画紙に関する。さらに詳しくは、本発明
は、昇華型熱転写記録に好適に使用することができる熱
転写用印画紙であって、特定のバックコート層を設ける
ことにより、プリンター内での走行性の向上と重送防止
を図り、かつ裏移りを防止し、耐水性も向上させた熱転
写用印画紙に関する。

【０００２】

【従来の技術】昇華性又は熱拡散性の染料からなるイン
ク層を有するインクリボンと、染料受容層を有する印画
紙とを重ね合わせ、そのインク層をサーマルヘッド等に
より画像情報に応じて加熱し、インク層から印画紙の染
料受容層に染料を移行させて画像を形成する昇華型熱転
写記録方法が知られている。この方法によれば、連続的
な階調のフルカラー画像を形成することができるので、
ビデオ画像をハードコピーする方法として注目されてい
る。

【０００３】図１は、昇華型熱転写記録に使用される一
般的な印画紙１の断面図である。同図に示したように、
印画紙１はシート状基材２の一方の面に染料受容層３を
有し、他面にバックコート層４を有している。

【０００４】ここで、染料受容層３は、熱転写記録時に
インクリボンから移行してくる染料を受容し、それによ
り形成された画像を保持する層である。このような染料
受容層３は、従来より染料に染着されやすいポリエステ
ル、セルロースエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化
ビニル等の熱可塑性樹脂から形成されている。

【０００５】また、バックコート層４は、(1) 熱転写記
録を行うプリンター内での印画紙の摩擦を低減し走行性
を向上させるため、あるいは、(2) 本来一枚ずつプリン
ターに送り込まれるべき印画紙が、複数枚重なってプリ
ンターに送り込まれる重送現象を防止するため、あるい
はまた、(3) 印画紙の表裏を逆にしてプリンターに印画
紙を誤送してしまった場合でも、印画紙がプリンター内
でインクリボンと融着しないようにし、それによりプリ
ンター内でのトラブルの発生を防止し、また印画紙にあ
る程度の画像が形成されるようにするために設けられて
いる。このようなバックコート層は、従来より、アクリ
ル樹脂から形成されている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
バックコート層を有する熱転写用印画紙においては、画
像を形成した印画紙の上に他の印画紙を重ねて置いた場
合に、画像が形成されている印画紙の当該画像からその
上に置いた印画紙の裏面に染料が移行するという裏移り
が問題となっていた。

【０００７】この裏移りの問題に対しては、画像を形成
する染料が親油性である点に鑑み、親油性染料に対して
相溶性が低いポリビニルアルコール等の親水性樹脂でバ
ックコート層を形成することが考えられる。しかし、親
水性樹脂でバックコート層を形成するとバックコート層
の耐水性が低下するという問題が生じる。

【０００８】本発明はこのような従来技術の欠点を解消
しようとするものであり、耐水性を低下させることなく
裏移りを防止することのできるバックコート層を熱転写
用印画紙に形成することを目的とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明者は、印画紙のバ
ックコート層を、特定の樹脂を用いて形成することによ
り上記の目的が達成できることを見出し、本発明を完成
させるに至った。

【００１０】即ち、本発明はシート状基材の一方の面に
染料受容層を有し、他面にバックコート層を有する熱転
写用印画紙において、バックコート層が、ポリビニルア
セタールと該ポリビニルアセタールに相溶性で且つ非水
溶性の樹脂とを含有し、該ポリビニルアセタールがバッ
クコート層の樹脂成分中に１０〜７０重量％含まれるこ
とを特徴とする熱転写用印画紙を提供する。

【００１１】以下、本発明を詳細に説明する。

【００１２】本発明の印画紙も、図１に示した印画紙と
同様に、基本的にはシート状基材と染料受容層とバック
コート層との積層構造からなるが、本発明の印画紙は、
このバックコート層に、ポリビニルアセタールと、その
ポリビニルアセタールに相溶性で且つ非水溶性の樹脂と
を含有させたこと、即ちこれらの樹脂のブレンドポリマ
ーを用いてバックコート層を形成したことを特徴として
いる。

【００１３】ここで、ポリビニルアセタールとしては、
次式（１）

【００１４】

【化１】 （式中、Ｒ^１、Ｒ^２はそれぞれＨ又はアルキル基を示
す。）で表されるものを使用できる。Ｒ^１としてはＣＨ
₃ が好ましく、Ｒ^２としてはＣＨ₃ 、Ｈ等が好ましい。

【００１５】ポリビニルアセタールのアセタール化度
（％）＝｛ｘ／（ｘ＋ｙ＋ｚ）｝×１００については特
に制限はないが、１〜５０％程度のものが好ましい。一
般に、アセタール化度が７０％を超えるポリビニルアセ
タールは昇華型熱転写記録用インクリボンのインク層の
バインダー樹脂として使用されているが、アセタール化
度５０％以下のものを使用することにより、ポリビニル
アセタールをインク層のバインダー樹脂として使用して
いるインクリボンに対して本発明の印画紙を使用する場
合でも、プリンター内での印画紙とインクリボンとの融
着を確実に防止することができるので好ましい。また、
アセタール化度５０％以下とすることによりポリビニル
アセタールの親水性の程度を大きくすることができるの
で、親油性染料の裏移りを一層防止できるので好まし
い。さらに、アセタール化度５０％以下とすることによ
りポリビニルアセタールを水系溶媒に溶解させることが
できるので、ポリビニルアセタールを含有するバックコ
ート層形成用塗料を水系溶媒を使用して容易に調製でき
るようになるので好ましい。反対に、ポリビニルアセタ
ールのアセタール化度を１％未満とすると、後述するよ
うに非水溶性樹脂をポリビニルアセタールにブレンドし
てもバックコート層の耐水性が不十分となり易いので好
ましくない。

【００１６】一方、本発明において、上述のようなポリ
ビニルアセタールとブレンドする樹脂であって、ポリビ
ニルアセタールに相溶性でかつ非水溶性の樹脂は、バッ
クコート層の耐水性を改善するために使用される。この
ような非水溶性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹
脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、アクリル酸エステ
ル樹脂、メタクリル酸樹脂、塩ビ−酢ビ共重合体等を使
用することができる。

【００１７】これらの非水溶性樹脂とポリビニルアセタ
ールとの配合割合は、使用する当該非水溶性樹脂やポリ
ビニルアセタールの種類にもよるが、バックコート層の
樹脂成分中ポリビニルアセタールが１０〜７０重量％含
まれるようにする。ポリビニルアセタールの含有割合が
少なすぎると裏移りを防止することができず、反対に、
多すぎると耐水性が低下する。

【００１８】本発明の印画紙のバックコート層には、ポ
リビニルアセタールの架橋物の他、必要に応じて種々の
添加剤を配合することができる。例えば、滑性をより向
上させるため、シリコーンオイル、脂肪酸等の滑剤を配
合することができる。また、重送防止のため、導電剤を
配合することができる。この他、離型剤、フィラー、架
橋剤等も適宜配合することができる。

【００１９】以上のような成分からなるバックコート層
は、各成分を水系溶剤と共に混合してバックコート層形
成用塗料を調製し、それを常法によりシート状基材に塗
布、乾燥することにより形成することができる。

【００２０】第１の本発明の印画紙において、シート状
基材や染料受容層は従来の熱転写用印画紙と同様に構成
することができる。

【００２１】例えば、染料受容層は、ポリエステル、セ
ルロースエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル
等の染着性樹脂から形成することができる。特に、転写
感度を向上させる点から、セルロースアセテートブチレ
ート等のセルロースエステル、ポリエステル等を用いる
ことが好ましい。

【００２２】また、染料受容層にも必要に応じて種々の
添加剤を含有させることができる。例えば、染料受容層
の白色度を向上させて転写画像の鮮明度を高め、また画
像表面に筆記性を付与し、さらにまた転写画像の再転写
を防止するために、蛍光増白剤や白色顔料を含有させる
ことができる。ここで、白色顔料としては、酸化チタ
ン、酸化亜鉛、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、微
粉末シリカ等を使用することができる。また、転写画像
の耐光性を向上させるために、紫外線吸収剤、光安定
剤、酸化防止剤等も使用することができる。また、熱転
写時のインクリボンとの離型性を向上させるために離型
剤を含有させることができる。離型剤としては、ポリエ
チレンワックス、アミドワックス、テフロンパウダー等
の固形ワックス類、フッ素系、リン酸エステル系の界面
活性剤、シリコーンオイル、高融点シリコーンワックス
等を使用することができる。なかでも、離型性、耐久性
の点からシリコーンオイルを使用することが好ましい。
さらに、静電気の発生を抑制するために、帯電防止剤を
含有させることができる。帯電防止剤としては、陽イオ
ン型界面活性剤（第４級アンモニウム塩、ポリアミン
等）、陰イオン型界面活性剤（アルキルベンゼンスルホ
ネート、アルキル硫酸エステルナトリウム塩等）、両性
イオン型界面活性剤、非イオン型界面活性剤等の種々の
界面活性剤を使用することができる。なお、このような
帯電防止剤は、染料受容層内に含有させる他、染料受容
層の表面にコーティング等により塗布してもよい。

【００２３】染料受容層の形成方法としては、染料受容
層を形成する各成分を、必要に応じて溶剤と共に均一に
混合して塗料を調製し、その塗料をシート状に塗布する
か、あるいは各成分の熱溶融物をシート状基材上に塗布
し、キュアリングを行うことにより形成することができ
る。

【００２４】シート状基材としては、上質紙、コート
紙、合成紙等の紙類、種々のプラスチックシート、ある
いはこれらの複合シート等を使用することができる。

【００２５】本発明の印画紙に対する画像形成方法には
特に制限はなく、例えば、昇華型熱転写記録用インクリ
ボンを使用し、市販のビデオプリンター等により、昇華
型熱転写記録を行うことができ、特に、アントラキノン
系の親油性染料を用いる画像形成方法に使用する場合
に、画像の裏移りを有効に防止することができる。

【００２６】

【作用】本発明の印画紙のバックコート層が含有するポ
リビニルアセタールは適度な親水性を有し、親油性染料
に対して相溶性が低いので、本発明の印画紙は裏移りが
防止されるものとなる。また、本発明の印画紙のバック
コート層は、このポリビニルアセタールの他に非水溶性
樹脂を含有するので十分な耐水性も有するものとなる。

【００２７】

【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説
明する。

【００２８】実施例１〜４、比較例１〜６ シート状基材として、１５０μｍ厚の合成紙（王子油化
（株）製、ＦＰＧ−１５０）を用意し、この表面に乾燥
膜厚が１０μｍとなるように以下の組成の染料受容層形
成用塗料を塗布し、１２０℃で２分間乾燥させた。

【００２９】 ［受容層形成用塗料］ （重量部） ・ポリエステル樹脂（バイロン２００、東洋紡（株）製） １００ ・ＭＥＫ １００ ・トルエン ３００ 次に、シート状基材の裏面に表１、表２の組成のバック
コート層形成用塗料を乾燥膜厚が１μｍとなるように塗
布し、５０℃で２日間硬化させて印画紙を作製した。

【００３０】

【表１】 バックコート層形成用塗料 実施例 （重量部） １ ２ ３ ４ 樹脂成分 ・ホ゜リヒ゛ニルホルマール(アセタール化度１%) 50 − − − ・ホ゜リヒ゛ニルアセトアセタール(アセタール化度30%) − 50 − − ・ホ゜リヒ゛ニルフ゛チラール(アセタール化度50%) − − 10 70 ・フェノキシ樹脂(*1) 50 − − − ・ポリエステルポリウレタン(*2) − 50 − − ・アクリル酸エステル共重合体(*3) − − 90 30 シリコーンオイル(*4) 3 3 3 3 導電剤(*5) 20 20 20 20 ＩＰＡ 300 300 − 300 トルエン 300 300 300 300 ＭＥＫ − − 300 − 評価 重送 無 無 無 無 融着 無 無 無 無 染料移行濃度 0.08 0.10 0.05 0.06 耐水性 ○ ○ ○ ○ (*1)ＹＰ−５０、東都化成（株）製 (*2)バイロン２００、東洋紡（株）製 (*3)プライコールＷＬ−８１、ロームアンドハース社製 (*4)ＳＦ−８４２７、東レダウコーニングシリコーン（株）製 (*5)サフトマーＳＴ−１０００、三菱油化（株）製

【００３１】

【表２】 バックコート層形成用塗料 比較例 （重量部） １ ２ ３ ４ ５ ６ 樹脂成分 ・ホ゜リヒ゛ニルフ゛チラール(アセタール化度50%) 5 80 − − − − ・フェノキシ樹脂(*1) − − 100 − − − ・ポリエステルポリウレタン(*2) − − − 100 − − ・アクリル酸エステル共重合体(*3) 95 20 − − − 100 ・メタクリル樹脂(*6) − − − − 95 − ・エポキシ樹脂(*7) − − − − 5 − シリコーンオイル(*4) 3 3 3 3 − − シリコーンオイル(*8) − − − − 3 3 導電剤(*5) 20 20 20 20 20 20 ＩＰＡ − 300 300 300 − − トルエン 300 300 300 − 300 300 ＭＥＫ 300 − − 300 300 300 評価 重送 無 無 無 有 無 無 融着 無 無 有 有 有 有 染料移行濃度 0.26 0.05 0.42 0.30 0.45 0.55 耐水性 ○ △ ○ ○ ○ ○ (*6)デルペット５６０Ｆ、旭化成（株）製 (*7)エポコートＤＸ−２ＳＳ、シェル（株）製 (*8)ＹＦ−３８１８、東芝シリコーン（株）製

【００３２】（評価）作製した印画紙に対し、昇華型熱
転写インクリボン（ＶＰＭ３０ＳＴＡ、ソニー（株）
製）を使用し、プリンター（ＣＶＰ−Ｇ７、ソニー
（株）製）で、１２階調のステアステップ印画を行っ
た。そして、その時の重送の有無を観察した。また、印
画紙の表裏を逆にしてプリンターにセットした場合の印
画紙とヘッドとの融着及び印画紙とインクリボンとの融
着の有無を観察した。

【００３３】さらに、得られた画像の裏移りの程度を評
価するために、印画面に同種の印画紙のバックコート層
面を重ね合わせ、１００ｇ／ｃｍ^２の圧力を４０℃で２
日間かけて放置し、その後、重ね合わせたバックコート
層の光学濃度を測定した。そして、重ね合わせる前のバ
ックコート層の光学濃度との差からバックコート層に移
行した染料濃度を評価した。

【００３４】また、印画紙の耐水性を評価するために、
画像を形成した印画紙を水に浸し、ベンコットで１０回
ふいたときのバックコート層の剥がれの有無を目視観察
し、次の評価基準にしたがって３段階に評価した。

【００３５】［耐水性評価基準］ ○： 剥がれが認められない場合 △： やや剥がれが認められる場合 ×： 明らかに剥がれが認められる場合 これらの結果を表１、２に示す。

【００３６】表１及び表２から、バックコート層の樹脂
成分中に１０〜７０重量％のポリビニルアセタールと非
水溶性樹脂とを含有させることにより、重送や融着が防
止され、かつ裏移りも大きく低減し、その場合に耐水性
も損なわれないことがわかる。一方、バックコート層の
樹脂成分中にポリビニルアセタールが５重量％しか含ま
れていない比較例１は裏移りが生じ、８０重量％含まれ
る比較例２では耐水性が低いことがわかる。また、ポリ
ビニルアセタールを含有しない比較例３〜６では、いず
れも裏移りが生じることがわかる。また、アクリル樹脂
系、アクリル酸エステル系樹脂を多量に使用した比較例
１、５、６では特有のアクリル臭がしたが、本発明の印
画紙にはそのような異臭は感じられなかった。

【００３７】

【発明の効果】本発明の印画紙によれば、走行性を向上
させ、重送を防止し、印画紙を表裏逆にしてプリンター
に誤送した場合のトラブルも防止することができ、さら
に、耐水性を低下させることなく裏移りを大きく低減さ
せることが可能となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】一般的な印画紙の断面図である。

【符号の説明】

１ 印画紙 ２ シート状基材 ３ 染料受容層 ４ バックコート層

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 シート状基材の一方の面に染料受容層を
   有し、他面にバックコート層を有する熱転写用印画紙に
   おいて、バックコート層が、ポリビニルアセタールと該
   ポリビニルアセタールに相溶性で且つ非水溶性の樹脂と
   を含有し、該ポリビニルアセタールがバックコート層の
   樹脂成分中に１０〜７０重量％含まれることを特徴とす
   る熱転写用印画紙。
2. 【請求項２】 ポリビニルアセタールのアセタール化度
   が１〜５０％である請求項１記載の熱転写用印画紙。
3. 【請求項３】 ポリビニルアセタールに相溶性で且つ非
   水溶性の樹脂が、フェノキシ樹脂、ポリエステルポリウ
   レタン樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸樹
   脂及び塩ビ−酢ビ共重合体から選ばれる請求項１又は２
   記載の熱転写用印画紙。