JPH08188827A - マルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法 - Google Patents

マルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法

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JPH08188827A
JPH08188827A JP7000925A JP92595A JPH08188827A JP H08188827 A JPH08188827 A JP H08188827A JP 7000925 A JP7000925 A JP 7000925A JP 92595 A JP92595 A JP 92595A JP H08188827 A JPH08188827 A JP H08188827A
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cooling
quenching
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Kunio Kondo
邦夫 近藤
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Abstract

(57)【要約】 【構成】重量%で、0.1〜0.3%のCおよび11.
0〜15.0%のCrを含有するCr系ステンレス鋼管
を焼入れ焼戻しして組織の80%以上がマルテンサイト
である鋼管を製造する方法であって、焼入れの際のMs
点からMf 点までの温度域での平均冷却速度を8℃/秒
以上となして焼入れし、その後に焼戻しすることを特徴
とするマルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法。焼
入れに際し、鋼管の冷却を一定条件の下で行っても良
い。 【効果】高価な合金元素を特別に添加しなくとも、耐炭
酸ガス腐食性と耐硫化物応力腐食割れ性を共に備えたマ
ルテンサイト系ステンレス鋼管を得ることができ、更
に、鋼管に対する冷却を一定条件の下で行えば、耐食性
を備えたマルテンサイト系ステンレス鋼管を焼割れさせ
ずに得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、マルテンサイト系ステ
ンレス鋼管の製造方法に関し、更に詳しくは耐炭酸ガス
腐食性と耐硫化物応力腐食割れ性に優れたマルテンサイ
ト系ステンレス鋼管の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】マルテンサイト系ステンレス鋼は容易に
高強度が得られるため、強度と耐食性が要求される種々
の用途に広く使用されており、特に近年においてはエネ
ルギ事情から石油や天然ガス採取用の油井管としても大
いに使用されている。
【0003】すなわち、石油や天然ガスを採取するため
の井戸の環境は近年ますます過酷なものとなっており、
採掘深さの増大にともなう高圧化に加えて湿潤な炭酸ガ
スや硫化水素、塩素イオンなどの腐食性成分をかなりの
量で含む井戸も多くなっている。それにつれて材料の強
度アップが要求される一方、上述のような腐食性成分に
よる腐食、そしてそれによる材料の脆化が問題となり、
耐食性の優れた高合金油井管の必要性が高まってきた。
こうした状況の下、マルテンサイト系ステンレス鋼は硫
化水素による硫化物応力腐食割れに対しては充分な抵抗
性を有さないものの、炭酸ガス腐食に対しては優れた抵
抗性を有するため、比較的低温の湿潤な炭酸ガスを含む
環境下で広く用いられてきている。
【0004】その代表的なものとしては、API(米国
石油協会)が定めるL80グレード13Crタイプの油
井管が挙げられる。これは重量%で、C:0.15〜
0.22%、Si:1.00%以下、Mn:0.25〜
1.00%、Cr:12.0〜14.0%、P:0.0
20%以下、S:0.010%以下、Ni:0.50%
以下およびCu:0.25%以下の成分規定をされた、
マルテンサイト系の13Crステンレス鋼を素材とする
油井管で、主に硫化水素分圧が0.003気圧以下の比
較的低温の湿潤な炭酸ガスを含む環境下で広く用いられ
ている。
【0005】ところで、一般にマルテンサイト系ステン
レス鋼は焼入れ焼戻しをして使用され、上記のAPIL
8013Cr鋼も例外ではない。しかし、前記13Cr
鋼のマルテンサイト変態開始温度(Ms点)は300℃
程度と低合金鋼に比べて低く、加えて硬化能が大きいた
めに焼割れに対する感受性が高い。特に、鋼管形状品を
焼入れした場合には、板材や棒材の場合に比べて極めて
複雑な応力状態を呈し水焼入れすると焼割れを起こすた
め、放冷、強制空冷やミスト冷却といった冷却速度の非
常に遅いプロセスを採る必要がある。そのため上記のL
80グレード13Crタイプ油井管の製造に対しては、
焼割れを防止するために空気焼入れが行われている。し
かし、この方法では焼き割れは防止できても冷却速度が
遅いため、生産性が悪いことに加えて、耐硫化物応力腐
食割れ性をはじめとして種々の特性が劣化してしまうと
いう問題があった。
【0006】そこでこのような問題を解決するため、特
定の化学組成を有するマルテンサイト系ステンレス鋼を
特定の冷却条件で焼入れしたり、マルテンサイト系ステ
ンレス鋼の化学組成を改善する技術が特開昭63−14
9320号、特公平1−14290号、特開平2−23
6257号、特開平2−247360号、特開平4−2
24656号などの各公報に提案されている。
【0007】このうち、特開昭63−149320号公
報には、低温靭性の向上のためマルテンサイト系ステン
レス鋼管を溶体化後、空冷以上の冷却速度で焼入れする
方法が提案されている。しかしながらこの公報の実施例
では依然として空冷が採用されているだけであり、ま
た、急冷したときの焼割れ対策についても全く言及され
ていない。
【0008】また、特公平1−14290号公報には油
井管を溶体化後、20〜1℃/秒の冷却速度で冷却する
と応力腐食割れ感受性が低下することが開示されている
が、この冷却速度は焼入れ組織がマルテンサイト組織と
なることを避けて、均一なフェライト−炭化物混合組織
にするためのものであり、従って、マルテンサイトの硬
さを活用できないため強度が低いという問題があった。
更に、前記公報の実施例における急冷は、例えばステン
レス鋼棒のマルテンサイト系の熱処理としてJISG4
304(1981)に規定されている油焼入れ(油冷)
をそのまま用いたものであり、800〜500℃程度の
「高温領域」ではかなり大きな冷却速度が得られるもの
の、油焼入れの特徴として300℃程度以下の所謂「低
温領域」における冷却速度は小さく、そのため耐食性、
就中、耐硫化物応力腐食割れ性が劣るという問題がある
し、急冷したときの焼割れ対策についても全く言及され
ていないものである。
【0009】一方、前記したようにマルテンサイト系ス
テンレス鋼は特に耐炭酸ガス腐食性に優れるが、硫化物
応力腐食割れや焼割れに対する感受性が高く、マルテン
サイト系ステンレス鋼管のメーカーおよびユーザーの長
年の懸案事項になっている。
【0010】従って、近年は、特開平2−236257
号、特開平2−247360号、特開平4−22465
6号などの各公報で、従来のマルテンサイト系ステンレ
ス鋼を改良した低Cの化学組成を有する、所謂「スーパ
ー13Cr」と称される各種の鋼やその製造方法が提案
されている。しかしながら、いずれも高価な合金元素を
添加するのでコストの上昇が著しいという問題点があっ
た。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、特に
高価な合金元素を添加しなくとも、耐炭酸ガス腐食性と
耐硫化物応力腐食割れ性(以下、これらを併せて単に
「耐食性」という場合もある)を共に備えたマルテンサ
イト系ステンレス鋼管を得ることのできる製造方法を提
供することにあり、更には、耐食性を備えたマルテンサ
イト系ステンレス鋼管を焼割れを生じることなく得るこ
とのできる製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の課題
を解決するため実験、研究を重ねた結果、先ず、化学組
成は従来のマルテンサイト系ステンレス鋼管の成分系の
ままでも熱処理プロセスを変更すれば、耐炭酸ガス腐食
性を維持しつつ硫化物応力腐食割れ感受性を低減するこ
とが可能であることを知見した。
【0013】すなわち、硫化物応力腐食割れ感受性は
引張強さが高いほど増大すること。
【0014】従って、油井管の規格降伏強さの範囲で耐
硫化物応力腐食割れ性を向上させるためには降伏比(降
伏強さ/引張強さ)を向上させれば良いこと。
【0015】同じマルテンサイト組織であっても、マ
ルテンサイト系ステンレス鋼の降伏比は低合金鋼に比べ
て低いが、これはマルテンサイト系ステンレス鋼の場合
には焼入れ後に残留オーステナイトが微量存在し、焼戻
しによってこの残留オ−ステナイトが柔らかいフェライ
トに分解するためであること。
【0016】更に、このオーステナイトの残留を阻止
するためには、マルテンサイト変態を起こさせるための
焼入れ速度を従来の空気焼入れに比べ大幅に増大させる
必要があること。
【0017】焼入れでオーステナイトをほとんど残留
させずにマルテンサイト変態させるためには、Ms 点か
らMf 点の温度域における平均冷却速度を8℃/秒以上
とする必要があること。
【0018】上記の冷却速度は油焼入れのように、低
温度領域では冷却曲線が寝てしまい冷却速度が遅くなる
ような焼入れ法では得られないこと。
【0019】次に、マルテンサイト系ステンレス鋼管
を、上記の冷却条件を満足させるような焼入れ方法、
例えば水焼入れのような急冷処理によっても焼割れを起
こすことなく焼入れを行うためには、以下に示す方法が
適切であることを実証した。
【0020】焼入れ時の強制冷却を鋼管の内面だけか
ら行うこと。
【0021】焼入れ時の強制冷却を鋼管の内面だけか
ら行い、更に鋼管を回転させて均一に冷却すること。
【0022】焼入れ時、鋼管外面冷却速度より大きな
鋼管内面冷却速度で鋼管の内外面から強制冷却を行い、
更に鋼管を回転させて均一に冷却すること。
【0023】上記知見に基づく本発明は下記に示すマル
テンサイト系ステンレス鋼管の製造方法を要旨とする。
【0024】(1)重量%で、0.1〜0.3%のCお
よび11.0〜15.0%のCrを含有するCr系ステ
ンレス鋼管を焼入れ焼戻しして組織の80%以上がマル
テンサイトである鋼管を製造する方法であって、焼入れ
の際のMs 点からMf 点までの温度域での平均冷却速度
を8℃/秒以上となして焼入れし、その後に焼戻しする
ことを特徴とするマルテンサイト系ステンレス鋼管の製
造方法。
【0025】(2)上記(1)の焼入れにおいて鋼管の
冷却を内面だけから行うことを特徴とする上記(1)に
記載のマルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法。
【0026】(3)上記(1)の焼入れにおいて鋼管の
冷却を内面だけから行うと共に冷却時にその鋼管を回転
させることを特徴とする上記(1)に記載のマルテンサ
イト系ステンレス鋼管の製造方法。
【0027】(4)上記(1)の焼入れにおいて鋼管外
面冷却速度より大きな鋼管内面冷却速度で、鋼管の冷却
を内外面から行うと共に冷却時にその鋼管を回転させる
ことを特徴とする上記(1)に記載のマルテンサイト系
ステンレス鋼管の製造方法。
【0028】
【作用】以下、本発明について、その作用効果と共に説
明する。なお成分元素量における「%」は「重量%」を
意味する。
【0029】(A)化学組成:耐炭酸ガス腐食性と耐硫
化物応力腐食割れ性を共に具備したマルテンサイト系ス
テンレス鋼管の化学組成として、C量とCr量のみをそ
れぞれ0.1〜0.3%および11.0〜15.0%に
限定する。これはC量が0.1%未満ではδ−フェライ
トが多量に生成して所望の強度と耐食性が得られないか
らである。一方、C量が0.3%を超えると、本発明の
方法によって焼入れしてもオ−ステナイトの残留が避け
られず耐食性が劣化するばかりか、本発明の第2〜第4
の方法によって焼入れしても焼割れを阻止できなくなる
ためである。更に、Cr量が11%未満では耐食性が劣
化するためであり、一方15.0%を超えて含有させる
と所望の組織が得られず強度と耐食性が共に劣化してし
まうからである。従って、本発明においては0.1〜
0.3%のCと11.0〜15.0%のCrを含有する
Cr系ステンレス鋼のうち、特に組織が80%以上のマ
ルテンサイトから成るマルテンサイト系ステンレス鋼を
対象とするものである。
【0030】ところで、組織が80%以上のマルテンサ
イトから成るマルテンサイト系ステンレス鋼管を得るた
めの化学組成としてのCおよびCr以外の他の化学成分
の組成については特別な限定を加える必要はない。所望
の強度と耐食性を確保できるように組織が80%以上の
マルテンサイトとなるような成分組成であれば良い。
【0031】具体的には、例えば、CとCr以外の元素
としてはSi:0.01〜1.0%、Mn:0.01〜
1.0%、Mo:0〜1.0%、Ni:0〜1.0%、
Al:0.001〜0.1%、N:0〜0.1%、N
b:0〜0.5%、Ti:0〜0.5%、V:0〜0.
8%、Cu:0〜2%、Ca:0〜0.01%、Mg:
0〜0.01%、B:0〜0.01%を含有し、残部は
Feと不可避的不純物からなり、不純物としてのP:
0.1%以下、S:0.05%以下のものであれば良
い。
【0032】(B)組織:所望の強度と耐食性を共に具
備するためには、マルテンサイトステンレス鋼管の組織
は80%以上のマルテンサイトから成ることが必要であ
る。ここで組織の量(%)は顕微鏡観察による面積率の
ことをいう。ところで「組織がマルテンサイト80%以
上である」というのは、全組織がマルテンサイト(マル
テンサイト100%)であっても良く、20%未満の他
の組織が存在しても良い、という意味である。なお本発
明は前記したようにオ−ステナイトの残留を阻止したも
のであり、従って、マルテンサイト以外の組織とはδ−
フェライトを指す。
【0033】(C)焼入れ時の冷却:焼入れ時にオース
テナイトを残留させないためには、マルテンサイト変態
時の冷却速度を管理することが重要である。すなわち、
本発明に関するマルテンサイト系ステンレス鋼は一般に
約300℃から常温程度でマルテンサイト変態するが、
この時の冷却速度で残留オーステナイトの存在の有無が
決定され、Ms 点からMf 点までの温度領域での平均冷
却速度を8℃/秒以上として焼入れした場合にオーステ
ナイトが残留しない。なお本発明に関するマルテンサイ
ト系ステンレス鋼のMf 点はC含有量によって変化し、
およそ150℃から常温程度であるが、常温まで冷やし
きっても問題はない。
【0034】なお、前記のMs 点からMf 点までの温度
領域での平均冷却速度の上限は特に規定されるものでは
なく、冷却設備上の上限の冷却速度で冷却しても構わな
い。
【0035】またMs 点とMf 点は鋼の化学組成をベー
スにした従来のデータに基づいた経験や実際に変態曲線
を測定した結果から決定すれば良い。
【0036】ところで、焼入れ前の加熱温度はオ−ステ
ナイト粒が粗大化せず、しかも前記したδ−フェライト
の量が20%に達しない温度領域、例えば900〜11
00℃を選べば良い。焼入れプロセスとしては、所謂オ
フラインでの焼入れだけでなく、熱間加工後に素材の保
有する熱を利用して、あるいはライン中で再加熱して、
そのまま焼入れを実施するところの所謂直接焼入れによ
っても良い。
【0037】(D)冷却方法:本発明に係わるマルテン
サイト系ステンレス鋼管を急冷焼入れすると、マルテン
サイト変態する時の体積膨張により、特に外表面に大き
な引張り応力が作用して焼き割れを回避することができ
なかったため、従来は空気焼入れが用いられてきた。
【0038】しかしながら、マルテンサイト系ステンレ
ス鋼管を焼入れするに際して、鋼管の内面だけから冷
却する、鋼管を回転させながら内面だけから冷却す
る、鋼管外面冷却速度より大きな鋼管内面冷却速度
で、鋼管を回転させながら内外面から冷却する、のいず
れかの方法を採れば熱応力と変態応力とがうまくバラン
スして、引張りの残留応力が著しく低減し後述の実施例
で示すように、水焼入れのような急冷処理でも焼割れを
生じない。
【0039】なお鋼管を内面から冷却する方法は特定さ
れるものではなく、ノズル孔を設けたパイプを鋼管の内
面に挿入しそこから冷却媒体を吹き付ける方法や、鋼管
の内面に冷却媒体のジェット流を走らせる方法など適当
な方法を用いれば良い。また鋼管を内外面から冷却する
方法も特定されるものではなく、鋼管の内外面にノズル
から冷却媒体を吹き付ける方法や、鋼管を冷却媒体の浴
に浸漬して外面を冷却し内面は上記した内面冷却方法で
冷却するなど適当な方法を用いれば良い。
【0040】なお鋼管を内面だけから冷却する場合、鋼
管の回転は必ずしも必要ではないが、鋼管を回転させれ
ば一層均一な冷却条件となり特性が安定し、就中、10
回/分以上の回転数で鋼管を回転させれば、一層安定し
た特性を得ることができる。
【0041】また鋼管を回転させながら内外面から冷却
する際の鋼管の回転条件も同様に、回転数を10回/分
以上とすることが好ましい。
【0042】(E)焼戻し:本発明の方法によって焼入
れされたマルテンサイト系ステンレス鋼管は、APIの
規定により593℃以上Ac1点以下の温度で焼戻しされ
て所望の特性を付与される。なお良好な耐食性付与のた
めには焼戻しの温度は650℃以上であることが望まし
い。この焼戻しの後の冷却は空冷以上の冷却速度で行う
ことが望ましく、冷却速度が大きければ大きいほど靭性
が向上する。
【0043】更に、焼戻しの後にホットストレートナで
矯正する処理を行っても前記マルテンサイト系ステンレ
ス鋼管の特性に何ら問題は生じない。
【0044】
【実施例】以下実施例によって、本発明の効果を説明す
る。
【0045】表1に示す化学組成のマルテンサイト系ス
テンレス鋼を溶製し、通常の方法によって外径151m
m、肉厚7.5mmのマルテンサイト系ステンレス鋼管
を製造した。
【0046】この鋼管から長さ1mの試験鋼管を切り出
し980℃に加熱した後、表2および表3に示す各条件
につき100本ずつ焼入れを実施した。焼入れ後の試験
鋼管は目視で焼き割れの有無を判定し、その後730℃
で焼戻し処理を行って強度と耐食性を調査した。耐食性
は、耐炭酸ガス腐食性と耐硫化物応力腐食割れ性が同時
に評価できるノッチ付き4点曲げ試験にて実施した。す
なわち、図1(a)に示すノッチ付き試験片1に同図
(b)に示す曲げ治具3で降伏強さの100%の応力を
付加した後、5%食塩水に30気圧の炭酸ガスと0.0
05気圧の硫化水素を飽和させた25℃の溶液中に20
0時間浸漬し、割れの有無を調査した。焼割れの調査結
果を表2および表3に、また強度と耐食性の調査結果を
表4にまとめて示す。
【0047】試験番号1〜12に示すように、Ms 点か
らMf 点までの温度領域での平均冷却速度を8℃/秒以
上の速い冷却速度で焼入れした本発明例では降伏比が大
きく耐食性の良好な結果が得られている。なお、試験番
号1〜9のように焼入れを本発明の第2〜4の方法で行
うと、水焼入れしたにもかかわらず焼割れは皆無であ
り、焼割れの防止を同時に達成できることが明らかであ
る。
【0048】一方、試験番号13、14に示すように、
Ms 点からMf 点までの温度領域での平均冷却速度が8
℃/秒を下回る比較例の水焼入れ方法では降伏比が低
く、耐食性も劣っている。更にこの場合には、焼割れも
発生している。
【0049】試験番号15、16の従来例では、焼割れ
は生じないが降伏比が低く耐食性は極めて悪い。一方、
通常の浸漬処理により油焼入れした試験番号17の従来
例でも、焼割れは生じないがMs 点からMf 点までの温
度領域での平均冷却速度が8℃/秒を下回るため降伏比
が低く、耐食性も劣っている。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
【0054】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
コストアップにつながる高価な合金元素を特に添加する
ことなく優れた耐食性を有するマルテンサイト系ステン
レス鋼管を得ることができる。更に、マルテンサイト系
ステンレス鋼管に対する冷却を一定条件の下で行えば、
耐食性を備えたマルテンサイト系ステンレス鋼管を焼割
れを生じることなく得ることができる。従って、産業上
の効果は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の実験で用いたノッチ付き4点曲げ試験
片と、曲げ治具による応力付加方法を示す図である。
(a)はノッチ付き4点曲げ試験片の詳細形状図、
(b)は応力付加前の状態である。
【符号の説明】
1:試験片、2:ノッチ、3:曲げ治具

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、0.1〜0.3%のCおよび1
    1.0〜15.0%のCrを含有するCr系ステンレス
    鋼管を焼入れ焼戻しして組織の80%以上がマルテンサ
    イトである鋼管を製造する方法であって、焼入れの際の
    Ms 点からMf 点までの温度域での平均冷却速度を8℃
    /秒以上となして焼入れし、その後に焼戻しすることを
    特徴とするマルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方
    法。
  2. 【請求項2】焼入れにおいて鋼管の冷却を内面だけから
    行うことを特徴とする請求項1に記載のマルテンサイト
    系ステンレス鋼管の製造方法。
  3. 【請求項3】焼入れにおいて鋼管の冷却を内面だけから
    行うと共に冷却時にその鋼管を回転させることを特徴と
    する請求項1に記載のマルテンサイト系ステンレス鋼管
    の製造方法。
  4. 【請求項4】焼入れにおいて鋼管外面冷却速度より大き
    な鋼管内面冷却速度で、鋼管の冷却を内外面から行うと
    共に冷却時にその鋼管を回転させることを特徴とする請
    求項1に記載のマルテンサイト系ステンレス鋼管の製造
    方法。
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