JP3792341B2 - 冷間鍛造性及び耐ピッチング性に優れた軟窒化用鋼 - Google Patents

冷間鍛造性及び耐ピッチング性に優れた軟窒化用鋼 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は冷間鍛造性及び耐ピッチング性に優れた軟窒化用鋼に関し、詳細には、軟窒化処理前には優れた冷間鍛造性を示し、軟窒化処理後には優れた耐ピッチング性を発揮して、浸炭材と同等以上の耐摩耗性及び耐疲労性を有する軟窒化用鋼に関するものである。本発明の軟窒化用鋼は、例えば歯車,継ぎ手,シャフト等の様に、熱処理時に歪みが発生することを嫌う構造用部品に利用でき、特に使用時に高い面圧のかかる歯車等の部品に好適である。
【0002】
【従来の技術】
機械構造用部品の中でも歯車やシャフト等の様に耐摩耗性及び耐疲労性が要求される部品については、浸炭処理が施されて用いられている。浸炭処理は、鋼材をオーステナイト化温度以上に加熱し、炭素を鋼中に侵入拡散させ、その後急冷することによりマルテンサイト主体の組織とする方法であり、浸炭後の焼入れ時に大きな歪みが発生する。このような浸炭処理で発生する熱処理歪みを抑制する方法としては、窒化法がある。窒化法によればA1 変態点温度以下の温度で表面硬化処理を行うことができ、一般的には、500〜525℃のアンモニアガスまたは窒素ガスの雰囲気中で、鋼表面から内部に窒素を侵入させるという方法を採用することにより極めて高い表面硬さを得ることができる。但し、窒化処理には非常に長い時間が必要であり、例えば0.2mm以上の硬化層深さを得るには50時間以上を必要とする。そこで処理時間の短縮を目的として軟窒化法が開発されている。軟窒化法は、溶融シアン塩浴(570℃)を用いて、この塩浴中に空気を吹き込みつつ窒化処理を行う方法である。また上記の様なシアン化合物を用いたくない場合には、RXガス(例えばCO:20%,H2 :40%,N2 :40%の組成を有するガス)とNH3 ガスを1:1の割合で混合した雰囲気中で窒化処理を行う方法を採用すればよいことが知られている。
【0003】
前記の様な窒化処理に用いる窒化用鋼としては、JIS規格鋼のSACM645があり、その他にも機械構造用合金鋼のSCM435や機械構造用炭素鋼であるS45C等に窒化処理が施されて用いられている。
【0004】
但し、これらの窒化用鋼に対して、軟窒化処理を施した場合には、有効硬化層深さが浅く、高い面圧のかかる歯車等に用いると、鋼の硬化層部と芯部の境界で剥離が生じ易いという問題を有していた。即ち、従来の窒化用鋼に軟窒化処理を施すと、浸炭材に比較して耐ピッチング性や耐スポーリング性等の耐面圧性(以下、代表的に耐ピッチング性という)が劣ることが指摘されていた。そこで軟窒化処理により浸炭材と同程度の耐ピッチング性を得ることが可能な軟窒化用鋼の開発を目的として種々の研究がなされており、例えば特開平6−264178号公報には、VやAl等の合金化元素を増量して添加することにより、SCM435やS45Cと比較して深い有効硬化層深さを得ることができ、浸炭材と同程度の耐ピッチング性を有する軟窒化用鋼が開示されている。
【0005】
ところで、切削加工工程を省略することにより構造用部品の製造コストを削減するという観点から、切削加工を行うことなく冷間鍛造により目的とする形状に加工する所謂ネットシェイプ加工が可能な鋼材の開発が要望されており、上記軟窒化用鋼に対しても、より優れた冷間鍛造性が要求されている。軟窒化用鋼の冷間鍛造性の向上を目的とした技術としては、特開平5−171347号公報に開示されている軟窒化用鋼が挙げられる。この技術によれば、圧延後の硬さをHv200以下とし、軟窒化処理後の表面硬さをHv600以上、有効硬化層深さを0.2mm以上にすることができ、優れた冷間鍛造性を得ることができる。但し、上記軟窒化用鋼の芯部硬さはHv200以下であることから芯部と表層部の硬度差が大きく、特に高面圧のかかる歯車等の部品に適用した場合には十分な耐ピッチング性が得られなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に着目してなされたものであり、冷間鍛造性に優れた軟窒化用鋼であって、高面圧のかかる歯車等の部品に適用した場合であっても十分な耐ピッチング性を発揮する軟窒化用鋼を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決した本発明とは、低炭素鋼からなる軟窒化用鋼であって、Cuを2.0%以下(0%を含まない)及びNiを2.0%以下(0%を含まない)含有すると共に、フェライトの面積率が50面積%以上であり、且つフェライトの平均粒径が40μm以下であることを要旨とするものである。
【0008】
具体的な化学成分としては、C:0.2%以下(0%を含まない),Si:0.15%以下(0%を含まない),Mn:2.0%以下(0%を含まない),P:0.015%以下(0%を含まない),S:0.030%以下(0%を含まない),Cu:2.0%以下(0%を含まない),Ni:2.0%以下(0%を含まない),Al:1.0%以下(0%を含まない),N:0.030%以下(0%を含まない)を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなることが好ましい。
【0009】
更に、Cr:2.0%以下(0%を含まない),Mo:2.0%以下(0%を含まない),V:2.0%以下(0%を含まない),Nb:1.5%以下(0%を含まない),Tiを0.5%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上を含有させることによりフェライト面積率を高めて冷間鍛造性の向上を図ることができ、中でもTiの添加は耐ピッチング性を向上させる上でも有効である。
【0010】
またCa:0.01%以下(0%を含まない),Zr:0.08%以下(0%を含まない),Te:0.08%以下(0%を含まない),Bi:0.08%以下(0%を含まない),Pb:0.30%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上を含有させることにより、被削性の向上を図ることができる。
【0011】
尚、本発明においてフェライトとは、ポリゴナルフェライトまたはアシキュラーフェライトのことであり、フェライト相以外の組織を限定するものではなく、パーライト,ベイナイト,マルテンサイト等の単相または混合相のいずれでも良い。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、軟窒化処理前の冷間鍛造性を高めてネットシェイプ加工を可能にすると共に、軟窒化処理後には優れた耐ピッチング性を発揮する軟窒化用鋼の開発を目的として鋭意研究を重ねた結果、軟窒化処理前の冷間鍛造性を高めるには冷間鍛造前のフェライトの面積率を50面積%以上とすると共に、軟窒化処理後に十分な耐ピッチング性を得るには成分組成としてCuを含有させ、且つフェライトの平均粒径を40μm以下に制御すればよいことを見出し本発明に想到した。尚、化学成分としてCuを含有すると熱間圧延時に割れが発生し易いので、Cu添加による熱間圧延時の脆化を抑制する上で、Niを添加させることが必要である。
【0013】
また軟窒化処理前の冷間鍛造性を高めるには、変形抵抗を大きくする元素の添加を抑制することが必要であり、具体的にはSi及びPの含有量を制限することにより変形抵抗を小さくし、S含有量を制限することにより変形能の向上を図ることが望ましい。更に、Cr,Mo,V,Nb,Ti等の炭窒化物形成元素を含有させれば、炭窒化物の凝集を促進して圧延材におけるフェライト面積率を高めることができるので、冷間鍛造性の向上に効果的である。
【0014】
一方、十分な耐ピッチング性を確保するには、窒化処理後の芯部硬さを高めて芯部と表層部の硬度差を小さくすると共に、有効硬化層深さを深くすることが必要である。冷間鍛造性の観点からフェライト面積率を50面積%以上としている組織において、芯部硬さを高めるには、時効硬化元素であるCuを含有させることが重要である。即ち、窒化処理時に、鋼中に微細なCuを析出させることにより芯部硬さを確保することができる。
【0015】
また、窒化処理時において、CやNはフェライト粒界に沿って拡散するので、フェライトの平均粒径をできるだけ小さくすれば、CやNの拡散を促進することができ、短時間でより深い有効硬化層深さを得ることができる。具体的には、フェライトの平均粒径を40μm以下とすることが重要である。
以下、本発明に係る軟窒化用鋼の化学成分に関して説明する。
【0016】
C:0.2%以下(0%を含まない)
Cは、所望の芯部硬さと有効硬化層深さを得る為の必須元素である。但し、多過ぎると冷間鍛造性が悪化するので上限は0.2%とすることが望ましい。
【0017】
Si:0.15%以下(0%を含まない)
Siは、溶製時の脱酸剤として有用な元素であるが、多過ぎると冷間鍛造時の変形抵抗が大きくなるので、上限を0.15%とすることが望ましい。
【0018】
Mn:2.0%以下(0%を含まない)
Mnは、溶製時の脱酸剤として有用な元素であるが、多過ぎると冷間鍛造性が低下するので、上限を2.0%とすることが望ましく、1.5%以下であるとより望ましい。尚、Mn含有量の好ましい下限は0.3%である。
【0019】
P:0.015%以下(0%を含まない)
Pは冷間鍛造時の変形抵抗を高める元素である。従って、冷間鍛造性を確保する上で、上限を0.015%とすることが望ましく、0.010%以下であればより望ましい。
【0020】
S:0.030%以下(0%を含まない)
SはMnSを生成し、被削性の向上に寄与する元素であるが、多過ぎると冷間鍛造時の変形能が低下するので上限は0.030%とすることが望ましい。冷間鍛造性をより一層向上させるには0.015%以下とすることが好ましく、0.010%以下であればより好ましい。
【0021】
Cu:2.0%以下(0%を含まない)
Cuは窒化処理時における芯部の時効硬化に寄与する元素であり、本発明の軟窒化用鋼では必須元素である。但し、多過ぎると熱間脆性を生じて製造過程中に割れが発生するので、上限を2.0%に定めた。好ましくは、1.0%以下である。尚、時効硬化により十分な芯部硬さを得るには、0.2%以上含有させることが望ましい。
【0022】
Ni:2.0%以下(0%を含まない)
NiはCu添加による熱間脆性を抑制するのに有効な元素であり、本発明の軟窒化用鋼では必須元素である。但し、過剰に添加すると切削性が急激に低下するので上限は2.0%とすることが必要である。
【0023】
Al:1.0%以下(0%を含まない)
Alは窒化処理時に侵入してくるNと化合物を形成して、表面硬さを上げるのに有効な元素である。但し、多過ぎると生産性が悪化しコストの増加を招くので1.0%を上限に設定した。好ましくは、0.5%以下である。尚、十分な表面硬さを得るには0.015%以上添加することが望ましい。
【0024】
N:0.030%以下(0%を含まない)
Nは鋼中でAlやV,Ti,Nb等と結合して窒化物を生成し、結晶粒の粗大化を抑制する効果を発揮する。但し、多過ぎても効果は飽和するので、0.03%を上限に設定した。尚、十分な効果を発揮させるには、0.003%以上含有させることが望ましい。
【0025】
本発明の軟窒化用鋼は、上記の元素を含有して残部がFe及び不可避的不純物であることが推奨されるが、以下に説明する理由から、更に、Cr,Mo,V,Nb,Ti,Ca,Zr,Te,Bi,Pbのいずれか1種以上を添加することが望ましい。
【0026】
Cr:2.0%以下(0%を含まない)
Mo:2.0%以下(0%を含まない)
V:2.0%以下(0%を含まない)
Nb:1.5%以下(0%を含まない)
Cr,Mo,V,Nbはいずれも炭窒化物形成元素であり、圧延材で炭窒化物の凝集を促進することによりフェライト面積率を高める作用を有するので、添加することにより冷間鍛造性の向上を図ることができる。
【0027】
上記炭窒化物形成元素の中でも、Crは窒化処理時に炭窒化物を形成し、表面硬さを高める上でも有効である。但し、多過ぎるとCrが粒界に偏析し、粒界強度を低下させることにより靭性を劣化させるので、上限は2.0%とすることが望ましい。
【0028】
また、Moを含有させることにより冷間鍛造性を向上させる効果は2.0%を超えると飽和してくるのでMoの含有量は2.0%以下で十分である。
【0029】
Vは冷間鍛造性を向上させる効果に加え、窒化処理時にC及びNと結合して炭窒化物を生成し、表面硬さを高めると共に、有効硬化層深さを深くする元素である。但し、多過ぎると被削性の低下を招くので、上限は2.0%とすることが望ましい。
【0030】
NbもVと同様、冷間鍛造性を向上させる効果に加え、窒化処理時にC及びNと結合して炭窒化物を生成し、表面硬さを高めると共に、有効硬化層深さを深くする元素である。更に、結晶粒の微細化にも有効である。但し、多過ぎても冷間鍛造性の劣化を招くので、上限は1.5%とすることが望ましい。
【0031】
Ti:0.5%以下(0%を含まない)
Tiも炭窒化物形成元素であり、圧延材で炭窒化物の凝集を促進することによりフェライト面積率を高め、冷間鍛造性の向上に寄与する。しかも、Nと結合してTi窒化物を生成し、結晶粒の微細化にも有効であることから耐ピッチング性の向上にも効果的である。但し、多過ぎるとピッチング寿命が短くなると共に、被削性が低下するので上限を0.5%とすることが望ましく、0.1%以下であることがより望ましい。尚、Ti添加の効果を有効に発揮させるには、0.005%以上添加することが望ましい。
【0032】
Ca:0.01%以下(0%を含まない)
Zr:0.08%以下(0%を含まない)
Te:0.08%以下(0%を含まない)
Bi:0.08%以下(0%を含まない)
Pb:0.30%以下(0%を含まない)
Ca,Zr,Te,Bi,Pbはいずれも被削性を向上させる効果を有する元素である。
Caは添加することにより硬質介在物を軟質な介在物で包むことができ被削性が向上する。但し、0.01%を超えると効果は飽和するので、0.01%以下の添加で十分である。Zrは、被削性の向上効果に加え、MnSを球状化させる作用も有するので鋼材の異方性を改善する上でも有効である。但し、0.08%を超えると効果は飽和するので、0.08%以下の添加で十分である。Te及びBiの被削性向上効果も、夫々0.08%を超えると飽和するので、0.08%以下の添加で十分である。Pbは被削性を向上させる上で有効な元素であるが、0.30%を超えるとピッチング寿命が短くなり、疲労強度が低下するので0.30%を上限とすることが望ましい。
【0033】
更に、本発明の軟窒化用鋼に重要な組織であるフェライトの面積率と平均粒径の限定理由について説明する。
フェライト面積率≧50面積%
窒化処理前の冷間鍛造性を高めるためには、冷間鍛造前の組織をフェライト主体の組織とすることが必要であり、少なくとも面積率で50面積%以上が不可欠であり、70面積%以上であれば好ましく、80%面積以上であればより好ましい。
【0034】
フェライト面積率は、例えば組織を光学顕微鏡を用いて組織観察を行い、画像解析により視野内におけるフェライト部分の占有面積率を求めればよい。後述の実施例では光学顕微鏡により400倍で任意に5視野の組織観察を行い、その平均値をフェライト面積率とした。
【0035】
フェライト平均粒径が40μm以下
窒化処理時、C及びNはフェライト粒界に沿って優先的に拡散するため、フェライト粒が小さい程、窒化処理時にC及びNの拡散が促進される。即ち、フェライトの平均粒径を小さくすることによりC及びNの拡散が促進され、短時間で深い有効硬化層深さを得ることができる。この効果を得るにはフェライト平均粒径を40μm以下とする必要があり、35μm以下であると望ましい。
【0036】
但し、フェライト粒径が20μm未満の場合、圧延時にCuが析出し、時効処理により硬さ上昇に有効に寄与するCu量が少なくなる。この場合には、圧延後に析出したCuを鋼中に再度溶解させる溶体化処理を施した後に、冷間鍛造を行うことにより、窒化処理時に鋼中に微細なCuを析出させることができ、冷間鍛造性を確保したままで芯部硬さを高めることができる。
【0037】
尚、本発明において、フェライトの平均粒径とは、以下の計算式で算出されたフェライト粒径の平均値であり、例えば後述の実施例では、光学顕微鏡を用いてランダムに5視野の組織観察(倍率:400倍)を行い、1視野当り10か所のフェライト粒径を測定し、平均化することによりフェライト平均粒径を測定した。
フェライト粒径=1/2(フェライト粒の長径+短径)
【0038】
またフェライト平均粒径を40μm以下にするには、圧延前の加熱温度を1100℃以上とし、圧下率を30%以上、圧延仕上げ温度950℃で圧延を行い、圧延仕上げ後の冷却速度を0.3〜100℃/sec に制御する方法を採用すればよい。
【0039】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の主旨に徴して設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0040】
【実施例】
実施例1
表1に成分組成を示すNo.1〜23の鋼材を用い、冷間鍛造性評価の指標として変形抵抗と割れ発生加工率を調べた。変形抵抗測定用の試験片は、上記鋼材を夫々50kg溶製しφ35mmに熱間鍛造した後、焼きならし処理(900℃で1時間加熱後、空冷)を行い、次いでφ20mm×30mmに機械加工した丸棒を用い、割れ発生加工率の測定は、図1に示す形状に機械加工した試験片を用いた。但し、No.14及びNo.15の試験片には、上記焼きならし処理に代えて900℃で1時間加熱した後水冷する溶体化処理を施し、No.16及びNo.17の試験片には、上記焼きならし処理に代えて、900℃で1時間加熱した後に衝風冷却して機械加工を行い、No.22及びNo.23の試験片は、上記焼きならし処理後、球状化処理を施して機械加工を行った。
変形抵抗の値と割れ発生加工率は、各鋼材のフェライト面積率及びフェライト平均粒径と共に、表1に示す。
【0041】
【表1】
Figure 0003792341
【0042】
No.21〜23は従来材であって、No.21はJIS規格鋼であるSWRCH10,No.22はS45C球状化材,No.23はSCr420球状化材であり、いずれも加工率60%における変形抵抗は700N/mm2 未満であると共に、割れ発生加工率が60%以上であり、冷間鍛造性に優れている。
【0043】
No.1〜15は、本発明に係る鋼材であり、いずれも上記従来鋼と同様、加工率60%における変形抵抗は700N/mm2 未満であると共に、割れ発生加工率が60%以上であり、冷間鍛造性に優れている。
【0044】
No.16及びNo.17は、フェライト面積率が低過ぎる場合の比較例であり、変形抵抗が700N/mm2 以上であると共に、割れ発生加工率が60%未満であり冷間鍛造性が乏しい。No.18は、Si量が多過ぎる場合の比較例であり、変形抵抗が700N/mm2 以上と大きく、割れ発生加工率も低い。No.19はP量が多過ぎる場合の比較例であり、割れ発生加工率は60%以上であるが、変形抵抗が700N/mm2 以上と大きくなっている。No.20は、S量が多過ぎる場合の比較例であり、変形抵抗は700N/mm2 未満であるが、割れ発生加工率が低い。
【0045】
実施例2
表2に成分組成を示す鋼材を夫々50kg溶製しφ65mmに熱間鍛造した後、焼きならし処理(900℃で1時間加熱後、空冷)を施し、次いで機械加工を行いφ60mm×5mmで仕上げ面粗さが2Sのスラスト型転動疲労試験用試験片を作製した。但し、No.14及びNo.15の試験片には、上記焼きならし処理に代えて900℃で1時間加熱した後水冷する溶体化処理を施し、No.16の試験片には、上記焼きならし処理に代えて、900℃で1時間加熱した後に衝風冷却して機械加工を行い、No.22及びNo.23の試験片は、上記焼きならし処理後、球状化処理を施して機械加工を行った。
【0046】
次にNo.23以外の試験片は、RXガス:NH3 =1:1のガス雰囲気中において570℃で8時間加熱する軟窒化処理を施し、空冷した。No.23の試験片は、925℃で3時間の浸炭処理を施し、油焼入れ(130℃)を行った後、180℃で2時間の焼戻し処理を行った。
【0047】
以上の軟窒化処理又は浸炭処理を施した後、芯部硬さ及び有効硬化層深さを測定すると共に、スラスト型転動疲労試験機を用いて面圧4000N/mm2 で転動疲労寿命を測定した。測定結果は、各鋼材のフェライト面積率及びフェライト平均粒径と共に、表2に示す。
【0048】
【表2】
Figure 0003792341
【0049】
No.23はJIS規格鋼SCr420に浸炭処理を施した従来の浸炭材である。
本発明に係る窒化用鋼(No.1,9,10,12,14,15)は、いずれも芯部硬さがHv200以上であると共に、有効硬化層深さが0.2mm以上であり、しかも上記浸炭材(No.23)と同等以上の転動疲労寿命を有している。換言すれば、本発明の軟窒化用鋼は耐ピッチング性に優れ、しかも耐疲労性が高い。
従来材であるSWRCH10(No.21)及びS45C球状化材(No.22)は、いずれも芯部硬さが低く、転動疲労寿命が短い。
【0050】
No.16は、フェライト面積率が低く、且つフェライトの平均粒径が大き過ぎる場合の比較例であり、有効硬化層深さが0.2mm以下であって転動疲労寿命が短い。No.24はフェライトの平均粒径が大き過ぎる場合の比較例であり、有効硬化層深さが0.2mm以下であって転動疲労寿命が短い。No.25はAl量が少な過ぎ、No.26はN量が少な過ぎる場合の比較例であり、フェライトの平均粒径が大きくなり過ぎ、有効硬化層深さが0.2mm以下であって転動疲労寿命が短い。No.27はCu量が多過ぎる場合の比較例であり、芯部硬さが低いと共に、フェライトの平均粒径が大きくなり過ぎ、有効硬化層深さが0.2mm以下であって転動疲労寿命が短い。No.28は、Cuを含有していない場合の比較例であり、芯部硬さが低く、転動疲労寿命が短い。この様に、No.16及びNo.24〜28の比較例は、いずれも耐ピッチング性が十分ではなく、耐疲労性も本発明鋼ほどには高くない。
【0051】
【発明の効果】
本発明は以上の様に構成されているので、冷間鍛造性に優れた軟窒化用鋼であって、高面圧のかかる歯車等の部品に適用した場合であっても十分な耐ピッチング性を発揮し、しかも耐疲労性も高い軟窒化用鋼が提供できることとなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】割れ発生限界試験用の試験片形状を示す説明図である。

Claims (4)

  1. 低炭素鋼からなる軟窒化用鋼であって、
    Cuを2.0%(質量%の意味:以下同じ)以下(0%を含まない)及び
    Niを2.0%以下(0%を含まない)含有すると共に、
    C:0.2%以下(0%を含まない)、
    Si:0.15%以下(0%を含まない)、
    Mn:2.0%以下(0%を含まない)、
    P:0.015%以下(0%を含まない)、
    S:0.030%以下(0%を含まない)、
    Al:1.0%以下(0%を含まない)、および
    N:0.030%以下(0%を含まない)
    を満足し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
    フェライトの面積率が50面積%以上であり、且つフェライトの平均粒径が40μm以下であることを特徴とする冷間鍛造性及び耐ピッチング性に優れた軟窒化用鋼。
  2. 更に、
    Cr:2.0%以下(0%を含まない),
    Mo:2.0%以下(0%を含まない),
    V:2.0%以下(0%を含まない),
    Nb:1.5%以下(0%を含まない)
    よりなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項に記載の軟窒化用鋼。
  3. 更に、Tiを0.5%以下(0%を含まない)含有する請求項1または2に記載の軟窒化用鋼。
  4. 更に、
    Ca:0.01%以下(0%を含まない)
    Pb:0.30%以下(0%を含まない)
    よりなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の軟窒化用鋼。
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