JPH075301Y2 - 車両用ディスクブレーキ - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、自動車や自動二輪車等の車両に装着されるデ
ィスクブレーキに係り、詳しくは、ハンガーピンにて吊
持された摩擦パッドをディスクロータへ押圧するキャリ
パの剛性の向上を主目的とした車両用ディスクブレーキ
に関する。

〔従来の技術〕

摩擦パッドをハンガーピンにて吊持するこの種の車両用
ディスクブレーキとして、例えば、特開昭63−152733号
公報に示されるものがある。

このディスクブレーキは、キャリパをブリッジ部の中央
で分断して一対のキャリパ半体に２分割し、ディスクロ
ータの側部に配置される各キャリパ半体の側腕部に、そ
れぞれシリンダ孔をディスクロータ側に開口して設け、
これらシリンダ孔に液圧で作動するピストンを対向配置
したもので、ブリッジ部の中央には、天井開口部がキャ
リパの内外を連通して設けられている。

ブリッジ部の外面には、ディスク軸方向のピン孔を穿設
したボス部が天井開口部を挟んで突設されており、両側
腕部の間にディスクロータを挟んで対向配置される一対
の摩擦パッドは、上記ピン孔に挿通されるハンガーピン
にでディスク軸方向へ移動可能に吊持され、各摩擦パッ
ドは、シリンダ孔を液圧で前進するピストンによって、
ディスクロータに圧接され、両摩擦パッドでディスクロ
ータを挾圧して制動作用が行なわれる。

〔考案が解決しようとする課題〕

このような構成では、上述の制動作用が行なわれた際
に、キャリパの各側腕部に制動反力が働いて、両側腕部
が外方へ開くように撓むため、ディスクブレーキの持つ
制動能力を充分に発揮できないことがある。そこで、キ
ャリパのブリッジ部をディスク半径方向に厚く形成し
て、剛性を高める対策が考えられるが、キャリパの高さ
が増して、ホイールとの干渉の虞を生じたり、ディスク
ロータの有効径を小さく制約するなど問題がある。

更に、ボス部のピン孔に挿通されたハンガーピンを抜け
止めするために、頭部を大径に形成し、また先端に割り
ピンや係止リングを装着する必要があり、ハンガーピン
形状の製作が複雑であると共に、部品点数が多く組付け
が煩わしいものであった。

本考案は、かかる実情を背景にしてなされたもので、そ
の目的とするところは、キャリパのディスク半径方向の
大きさを抑えつつ剛性を高めて、側腕部の撓みを抑えな
がら、同時にハンガーピンを簡便に抜け止めでき、更に
キャリパ内部の冷却効果をも図ったディスクブレーキを
提供することにある。

〔課題を解決するための手段〕

上述の目的を達成するため、本考案の車両用ディスクブ
レーキは、ディスクロータの両側に配置される両側腕部
をディスクロータの外周を跨いで連結するキャリパのブ
リッジ部に、キャリパの内外を連通する天井開口部とデ
ィスク軸方向のピン孔とを形成し、該ピン孔に挿通され
るハンガーピンにて、前記キャリパの両側腕部の間にデ
ィスクロータを挟んで対向配置される一対の摩擦パッド
を吊持した車両用ディスクブレーキにおいて、前記キャ
リパに、ブリッジ部を跨いで両側腕部の外面を覆う剛性
プレートを取着すると共に、該剛性プレートに、前記ハ
ンガーピンの両端を覆ってハンガーピンを抜け止めする
ディスク軸方向のリブと、前記天井開口部を通して、キ
ャリパ外部の走行風の導入とキャリパ内部の制動熱の排
出とを案内する導風板を設けたことを特徴とするもので
ある。

〔実施例〕

以下、本考案の一実施例を図面に基づいて説明する。

ディスクブレーキ１は、ディスクロータ２の側部に配置
されるキャリパ３の側腕部4c,4cに、それぞれ大小一対
のシリンダ孔５（隣接する一方は図示せず）をディスク
ロータ２側に開口して並設し、これらシリンダ孔５に、
ピストン６を対向配置したピストン対向型で、キャリパ
３は、ブリッジ部4dの中央で分断された一対のキャリパ
半体4a,4bを、４本の連結ボルト７で連結して構成され
る。

キャリパ半体4a,4bは、それぞれ上記側腕部4cに、ディ
スクロータ２の外周で分断されたブリッジ部4dの半分を
持つ形状で、更に一方のキャリパ半体4aには、車体取付
け用のブラケット4e,4eと、昇圧した作動液を導入する
ためのインレットポート4fと、作動液排出用のブリュー
ダスクリュー８とが設けられ、キャリパ３は、ブラケッ
ト4e,4eを図示しないボルトにて車体に固設される。

ブリッジ部4dの中央部には、キャリパ３の内外を連通す
る矩形の天井開口部4gが、ディスク周方向に長く形成さ
れ、またブリッジ部4dの外面には、ピン孔4hをディスク
軸方向に穿設したボス部4i,4iが、天井開口部4gを挟ん
で突設されており、両側腕部4c,4cの間にディスクロー
タ２を挟んで対向配置される一対の摩擦パッド9,9は、
上記ピン孔4h,4hに挿通されるハンガーピン10にてディ
スク軸方向へ移動可能に吊持される。

摩擦パッド９は、ディスクロータ２に圧接されるライニ
ング9aを裏板9bに貼着したもので、裏板9bの中央上部に
突設した吊下げ片9cには、ハンガーピン10が挿通される
横長のピン孔9dが穿設され、ハンガーピン10にて吊持さ
れる裏板9bは、天井開口部4gに連続する各キャリパ半体
4a,4bのトルク受け部4j,4jの間に配設される。

各シリンダ孔５の底部には、ブリッジ部4dに形成された
液通孔11にて、対向する他方のシリンダ孔５と連通する
液圧室12が画成されており、上記インレットポート4fか
ら一方のキャリパ半体4aの液圧室12に導入された液圧
は、更に液通孔11を経て他方のキャリパ半体4bの液圧室
12に送られ、各ピストン６を液圧作動して、両摩擦パッ
ド9,9をディスクロータ２に圧接する。

上述のように構成されるキャリパ３には、略コ字形に形
成された剛性プレート13が取着される。この剛性プレー
ト13は、上述の制動作用が行なわれた際に、その剛性力
にて、制動反力による側腕部4c,4cの撓みを抑止するよ
うに付設されるもので、ブリッジ部4dに敷設される連結
部13aと、該連結部13aの両端に連続して、両側腕部4c,4
cの外面を覆う抑え板13b,13bとを、キャリパ３よりも高
剛性の板材（例えばキャリパ３がアルミ合金製であれば
鋼板）を折曲して形成され、連結部13aを２本のボルト1
4,14にてブリッジ部4dに螺着して取着される。

剛性プレート13の連結部13aには、半円筒形の両端を閉
塞したディスク軸方向のリブ13cと、天井開口部4gの両
側部上方へ傾斜して突出する導風板13d,13eとが設けら
れている。

このうちリブ13cは、制動反力を受ける剛性プレート13
の補強と、ボス部4i,4iに挿通されたハンガーピン10の
抜け止めと兼ねており、剛性プレート13を上述の如く取
着した場合に、ハンガーピン10とボス部4i.4iの外側を
一体に覆い、更に該ピン10の両端を覆う端壁13f,13fに
て、ハンガーピン10の抜け止めを行なう。

また導風板13d,13eは、ディスクロータ２が矢印Ａ方向
へ回転した場合に、走行風をディスク回出側の導風板13
dにてキャリパ３内に導き、摩擦パッド９やディスクロ
ータ２に走行風を当てて冷却すると共に、キャリパ３内
の制動熱をディスク回入側の導風板13eより外部へ速か
に排出するもので、キャリパ３内には、導風板13dによ
る導風のほか、導風板13eからの排風によって、キャリ
パ３の下方からも走行風が導かれるので、高い冷却効果
が得られる。

本実施例は以上のように、キャリパ３の側腕部4c,4cの
撓みを剛性プレート13で抑えるので、ディスクブレーキ
１の持つ制動能力を充分に発揮させることができる。ま
た、剛性プレート13をキャリパ３の外形状に沿って配設
する構造であるため、キャリパ３がディスク半径方向に
大きくならないので、ホイールとの干渉やディスクロー
タ２の有効径を小さく制約するなどの弊害を招かない。

更に、剛性プレート13の補強を兼ねたリブ13cが、ハン
ガーピン10を簡便に抜け止めするので、ハンガーピン10
が簡単な形状のもので済み、しかも割りピンや係止リン
グ等の抜止め部材が不要となるなど、組付けを頗る簡便
に行なうことができる。

また、ブリッジ部4dを剛性プレート13の連結部13aで覆
うも、導風板13d,13eにて走行風と制動熱とを強制的に
吸排して、キャリパ３内の冷却効果を高めることができ
ると共に、導風板13d,13eと天井開口部4gとの間の間隙
を通して、ライニング9aの摩擦量を視認することも可能
である。

尚、上記実施例では、ハンガーピンに大径頭部を図示し
たが、本考案ではハンガーピンの両端を剛性プレートの
リブにて抜け止めするので、ハンガーピンは例えば棒材
を寸断しただけの簡単なもので差支えない。

更に本考案は、キャリパを摺動ピンにてディスク軸方向
へ移動させて制動作用を行なうキャリパ浮動型のディス
クブレーキにも適用可能である。

〔考案の効果〕

本考案の車両用ディスクブレーキは、キャリパにブリッ
ジ部を跨いで両側腕部の外面を覆う剛性プレートを取着
することにより、キャリパの各側腕部に働く開き方向の
制動反力を剛性プレートによって抑えるので、ディスク
ブレーキの持つ制動能力を充分に発揮させることができ
る。しかも、キャリパのブリッジ部をディスク半径方向
に厚く形成しないで済むので、ホイールとの干渉やディ
スクロータの有効径を小さく制約するなどの弊害がな
い。

更に、キャリパのブリッジ部にディスク軸方向へ挿通さ
れるハンガーピンの両端を覆って抜け止めするディスク
軸方向のリブを上述の剛性プレートに設けるので、剛性
プレートを補強しつつ、ハンガーピンを簡便に抜け止め
することができ、しかもハンガーピンが簡便な形状のも
ので済むと共に、割りピンや係止リング等の抜止め部材
が不要となるなど、摩擦パッドの組付けを頗る簡便に行
なうことができる。

また、剛性プレートに設けた導風板により、キャリパ外
部の走行風の導入とキャリパ内部の制動熱の排出とを、
天井開口部を通して強制的に行なうので、制動能力をよ
く保持することができる。

【図面の簡単な説明】

図は本考案の一実施例を示し、第１図は第２図のＩ−Ｉ
断面図、第２図はディスクブレーキの正面図、第３図は
同じく一部切欠き平面図、第４図は第３図のIV−IV断面
図、第５図は剛性プレートの斜視図である。 １…ディスクブレーキ、２…ディスクロータ、３…キャ
リパ、4a,4b…キャリパ半体、4c…側腕部、4d…ブリッ
ジ部、4g…天井開口部、4i…ボス部、９…摩擦パッド、
9a…ライニング、9b…裏板、10…ハンガーピン、13…剛
性プレート、13a…連結部、13b…抑え板、13c…リブ、1
3d,13e…導風板、13f…端壁

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】ディスクロータの両側に配置される両側腕
   部をディスクロータの外周を跨いで連結するキャリパの
   ブリッジ部に、キャリパの内外を連通する天井開口部と
   ディスク軸方向のピン孔とを形成し、該ピン孔に挿通さ
   れるハンガーピンにて、前記キャリパの両側腕部の間に
   ディスクロータを挟んで対向配置される一対の摩擦パッ
   ドを吊持した車両用ディスクブレーキにおいて、前記キ
   ャリパに、ブリッジ部を跨いで両側腕部の外面を覆う剛
   性プレートを取着すると共に、該剛性プレートに、前記
   ハンガーピンの両端を覆ってハンガーピンを抜け止めす
   るディスク軸方向のリブと、前記天井開口部を通して、
   キャリパ外部の走行風の導入とキャリパ内部の制動熱の
   排出とを案内する導風板を設けたことを特徴とする車両
   用ディスクブレーキ。