JPH0749763B2 - バルブリフタ - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 発明の目的 （産業上の利用分野） この発明は、内燃機関の動弁機構に用いられるバルブリ
フタに係り、詳しくは、そのチップ部内面に取り付けら
れるインナーシムの取付構造に関するものである。

（従来の技術） 近年、自動車等に使用される内燃機関は高回転までスム
ーズに回って高い出力を発生するように性能向上が図ら
れている。このため、前記内燃機関はその作動部分の各
部材において慣性モーメントを小さくするための軽量化
が試みられている。

これらの軽量化のうち、バルブリフタにおける軽量化の
方法としては、該バルブリフタ自体をアルミニウム等の
軽合金で形成することが考えられている。

ところで、上述したような軽合金のうち、アルミニウム
を用いた場合にはその金属自体が比較的柔らかいので、
特開昭58−165508号公報に示されるような構成が採用さ
れている。

すなわち、直打式バルブリフタの場合においては、チッ
プ部内面のほぼ中央部に凹部を設けるとともに、その凹
部に耐摩耗性のある硬い金属（鉄等をいう）にて形成さ
れたインナーシムを鋳込んで固定し、バルブステムの当
り部としている。

（発明が解決しようとする問題点） ところが、上記インナーシムを用いた場合には、次に示
すような問題点が生ずる。

すなわち、内燃機関の運転中に加わる周期的な力や微振
動等によって該当たり部となるインナーシムには自身を
回転させようとする力が加わるため、このかしめ部位や
圧入部位にゆるみが発生した場合には、前記凹部内でイ
ンナーシムが回転してしまい、硬さの劣るバルブリフタ
側の凹部底面が摩耗することがある。従って、この摩擦
によってカムとチップ部上面とのバルブクリアランスが
大きくなって異音を発生するとか、このクリアランスが
大きくなりすぎてバルブリフタが破損するといった問題
が生じる。

また、インナーシムを鋳込んで固定する場合、バルブリ
フタが鋳造製品に限定されるため、使用材質や熱処理が
制約を受けてしまう。

例えば、バルブリフタにアルミ合金を使用した場合、強
度および硬さを向上させるため、T6処理等の熱処理を実
施するが、その時、インナーシムの硬さが低下してしま
い、耐磨耗特性の低下を招いてしまう。

また、バルブリフタの鋳込み時に熱によってインナーシ
ムの特性が低下してしまうため、インナーシムの材質も
限定されてしまい高価なものとなる。

発明の構成 （問題点を解決するための手段） 本発明は、前記問題点を解決するため、板状のインナー
シムが、チップ部内面のほぼ中央部に設けられた前記イ
ンナーシムに対応した形状の凹部に嵌合固定されるバブ
ルリフタにおいて、前記インナーシムの形状が長円板状
に形成されていることをその要旨とする。

（作用） 長円板状のインナーシムと、チップ部内面に設けられた
凹部とを嵌合させることにより、チップ部内面とインナ
ーシムとが係止固定される。このとき、チップ部内面凹
部内で回動しようとするインナーシムを係止する作用
は、該長円板状のインナーシム外周全体と該インナーシ
ムに対応した形状の該凹部の内周全体とで行われる。そ
のため、該凸部および該凹部に働く応力は、それぞれの
周面全体に均等に分散されることになり、応力集中によ
る変形によってガタが生じることがない。

また、チップ部内面の凹部は長円板状であるため、容易
に加工形成することもできる。

さらに、バルブリフタとインナーシムとは別々に製造可
能であり、各々の完成後に嵌合させる。そのため、全て
の材質や熱処理に対応でき、より高強度で耐磨耗性が高
く安価なバルブリフタを提供することができる。従っ
て、内燃機関の運転中における周期的な力や微振動等に
よってインナーシムを回転させようとする力が加わって
も該インナーシムが凹部内で回転することはない。

（第一実施例） 以下、この発明をOHC動弁機構を有する自動車用内燃機
関に用いる直打式バルブリフタに具体化した第一実施例
を第１〜３図に従って説明する。

第１図に示すように、シリンダヘッド１の上方には吸排
気バルブ開閉用のカム２を一体に有するカムシャフト３
が延びている。シリンダヘッド１におけるカム２直下の
部位にはガイド孔４が貫設されており、同ガイド孔４に
は次のように構成された直打式のバルブリフタ５が摺動
可能に挿入されている。

すなわち、本実施例のバルブリフタ５は、前記ガイド孔
４内を摺動する筒状のスカート部６とその上端よりやや
下方に設けられた円板状のチップ部７と、その上面に装
着されたシム８と、該チップ部内面7aに設けられたバル
ブステム当り部としてのインナーシム12とから構成され
ている。そして、本実施例においては、前記インナーシ
ム12は表面硬度の高いばね鋼帯にて形成され、前記スカ
ート部６及びチップ部７はアルミニウム金属にて形成さ
れている。

さらに詳述すると、第2,3図に示すように、チップ部内
面7aのほぼ中央部には、バルブステム16が当たる円柱状
の突出部９が、チップ部７と一体に形成されている。そ
して、突出部９の中央部には凹部10が形成されている。
一方、インナーシム12には、インナーシム12と同じ直径
の凸部28が形成されている。すなわち、インナーシム12
は、凸部28分の適宜な厚さをもった長円板状になってい
る。そして、凹部10に凸部28が嵌合されるようになって
いる。すなわち、凹部10の形状は凸部28の形状に対応し
たものになっており、凹部10に凸部28を嵌合すると、両
者が隙間なく密着するようになっている。

従って、凹部10に凸部28を嵌合することにより、チップ
部7aとインナーシム１とが係止固定され、インナージム
12の凹部10内での回転が防止される。このとき、該係止
固定は、該凸部28の長円板状の外周全体と、該凸部28に
対応した形状の該凹部10の内周全体とで行われる。その
ため、該凸部28および該凹部10に働く応力は、それぞれ
の周面全体に均等に分散されることになり、応力集中に
よる変形によってガタが生じることがない。

前記シリンダヘッド１には吸気バルブ（又は排気バル
ブ、以下バルブと略す）17が摺動可能に挿入されてお
り、そのバルブステム16の上端は前記バルブリフタ５の
インナーシム12の下面に当接されている。

また、バルブステム16の上端部にはコッタ18が取着さ
れ、該コッタ18は下面ほど縮径する円錐台状に形成され
ている。前記コッタ18の外周にはバルブスプリングリテ
ーナ19が嵌合され、該バルブスプリングリテーナ19のテ
ーパ状の内周面はコッタ18のテーパ状の外周面と当接し
ている。また、バルブスプリングリテーナ19のフランジ
部とシリンダヘッド１内に設けられた支持面20との間に
は、バルブスプリング21が圧縮状態で装着されている。
前記バルブスプリング21は常にパルプ17を上方へ付勢
し、一方、バルブステム16の上端は前記バルブリフタ５
の突出部９のインナーシム12に当接している。

以上のように構成されたこの実施例につき、次にその作
用を効果とともに記載する。

まず、カムシャフト３が回転することによってカム２が
周期的にバルブリフタ５を押し下げる。すると、前記バ
ルブリフタ５はそのスカート部６が前記ガイド孔４内周
面にそっと摺動移動するとともに、前記インナーシム12
に当接したバルブステム16を下方に押圧する。従って、
該バルブステム16は前記バルブスプリング21の付勢力に
抗して下方に移動し、その先端のバルブ17を周期的に開
く。

また、前記カム２の回転にともない前記バルブリフタ５
に当接するインナーシム12には周期的な力や微振動が常
に加わり、該インナーシム12を前記凹部10内で回転させ
ようとする。

このとき、チップ部内面7aの突出部９の凹部10と、イン
ナーシム12の凸部28とが嵌合しているため、チップ部7a
とインナーシム12とが係止固定され、インナーシム12の
凹部10内での回転が防止される。また、該係止固定は、
該凸部28の長円板状の外周全体と、該凸部28に対応した
形状の該凹部10の内周全体とで行われる。そのため、該
凸部28および該凹部10に働く応力は、それぞれの周面全
体に均等に分散されることになり、応力集中による変形
によってガタが生じることがない。

従って、インナーシム12が凹部10内で回転することによ
って該凹部10の底面が磨耗し、前記カム２とシム８との
間にクリアランスが生じることを防止できる。そのた
め、該クリアランスの発生に起因する異音やバルブリフ
タ５の破損を防止することができる。

また、凹部10は長円板状であるため、エンドミルによっ
て容易に加工形成することができる。

さらに、バルブリフタ５とインナーシム12とは別々に製
造可能であり、各々の完成後に嵌合させる。そのため、
全ての材質や熱処理に対応でき、より高強度が耐磨耗性
が高く安価なバルブリフタを提供することができる。

尚、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例
えば、以下のように実施してもよい。

１）前記凹部10と凸部28とを単に嵌合させるだけでな
く、両者を接着剤によって固定する。この場合は、本発
明の効果をさらに高めることができる。

同様に、単に嵌合させるだけでなく、バルブリフタ５か
らインアーシム12が抜け落ちないように、前記凹部10と
インナーシム12とをそれぞれカシメ固定することによ
り、上記の効果をさらに高めることができる。

尚、バルブリフタを内燃機関に組付けた後にはバルブリ
フタ５からインナーシム12が抜け落ちる心配はないた
め、前記凹部10とインナーシム12とのカシメ固定は、バ
ルブリフタを内燃機関に組付けるまでの落下を防止する
程度の強度でさえあればよく、強固なものである必要は
ない。

２）前記凹部10を予め形成しておくのではなく、バルブ
リフタ５の冷間鍛造による成型時に、インナーシム12を
同時に打ち込むことによって形成する。この場合は、前
記凹部10を予め形成する加工工程が不要になり、製造コ
ストを削減することができる。

３）チップ部７及びスカート部６をアルミニウム金属で
はなく、通常用いる鉄鋼材料に置き換える。

４）本発明をOHV機構を有する内燃機関に具体化する。

５）前記インナーシム12の材質をばね鋼帯ではなく、ベ
イナイト鋼帯や冷間圧延材の浸炭焼き入れ品等に置き換
える。この場合、振動減衰率の高い材質を用いれば、内
燃機関の運転時に発生する振動や騒音に対する低減効果
をさらに高めることができる。

発明の効果 以上詳述したように、本発明によれば、インナーシムを
長円板状に形成し、チップ部内面のほぼ中央部に該イン
ナーシムに対応した形状の凹部を設けてインナーシムを
嵌合させることにより、チップ部内面とインナーシムと
を固定して、該凹部内でのインナーシムの回転を防止す
ることが可能となる。そのため、内燃機関の運転中の振
動等によって該インナーシムが回転することを確実に防
止でき、ひいては該回転に起因して生じる異音やバルブ
リフタの破損を防止できるという優れた効果がある。ま
た、凹部は長円板状であるため、容易に加工形成するこ
とができる。さらに、バルブリフタ５とインナーシム12
とは別々に製造可能であり、各々の完成後に嵌合させ
る。そのため、全ての材質や熱処理に対応でき、より高
強度で耐磨耗性が高く安価なバルブリフタを提供するこ
とができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明を具体化した一実施例のバルブリフタを
内燃機関に組み込んだ状態を示す断面図、第２図は一実
施例のバルブリフタの底面図、第３図はインナーシムの
平面図である。 7a……チップ部内面、10……凹部、12……インナーシム

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】板状のインナーシム（12）が、チップ部内
   面（7a）のほぼ中央部に設けられた前記インナーシム
   （12）に対応した形状の凹部（10）に嵌合固定されるバ
   ブルリフタにおいて、前記インナーシム（12）の形状が
   長円板状に形成されていることを特徴とするバルブリフ
   タ。