JP3837185B2 - スナップリング - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転軸に装着され、その回転軸に遊嵌された歯車等の回転部材のスラスト荷重を受けて、その回転部材を軸方向に係止するためのスナップリング、特に高速回転軸に装着して有効なスナップリングに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に切欠円状の主体部の両端間に合口を有してC形に形成されており、回転軸に形成したリング溝に内周側が着脱自在に嵌着され、その回転軸に遊嵌される歯車等の回転部材にかかるスラスト荷重を受け、該回転部材を軸方向に係止するようにしたスナップリング(サークリップ)は、良く知られている(特開昭63−180711号公報、実開昭61−181109号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところでかかるスナップリングでは、これの嵌着される回転軸が高速回転されるに伴い、そこに作用する遠心力により、その合口が拡がる傾向となるという不具合がある。
【0004】
そこでかかる不具合を解消するために、
1)スナップリングに前記遠心力に打ち勝つだけの高い緊縛力を保持させておくこと、
2)スナップリングの合口部に別途に、その拡がり防止手段を設けること、
等の技術手段が考えられるが、前記1)では、回転軸への組付、取外作業に手間取って、メンテナンス性に課題があり、また前記2)では、前記課題の外に、さらに軸方向に余分なスペースを必要とするという別の課題もある。
【0005】
本発明はかかる実状に鑑みてなされたもので、前記不具合、課題をすべて解決した、新規なスナップリングを提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本請求項1記載の発明によれば、切欠円状の主体部の両端間に合口を有してC形に形成され、回転軸に装着されるスナップリングにおいて、前記主体部は、それの内、外周とも切欠円状に形成されていて、前記合口とは反対側の基部より両端にいくにつれて径方向の幅が漸減するように該主体部の外径の中心よりも内径の中心が前記合口側に偏心しており、前記回転軸の回転により生じる遠心力で前記合口が開き傾向となるのを抑止するために、スナップリング重心を、前記主体部の内径の中心よりも合口側に偏倚させたことを特徴としている。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0008】
図1は、本発明スナップリングの正面図、図2は、図1の2−2線に沿う断面図、図3は、本発明スナップリングを実施した四サイクルエンジンの一部破断側面図、図4は、図5の4−4線に沿う、スナップリングを嵌着したクランクシャフトの端部断面図、図5は、図4の5−5線に沿う断面図、図6は、図5の6矢視部の拡大図である。
【0009】
先ず図1,2を参照してスナップリングSの構造について説明するに、鋼等の金属板により形成される、スナップリングSは、切欠円状の主体部1の両端12 ,12 間に、合口2を有して正面視C字状に形成されており、その主体部1は、その外径の中心Ooと、その内径の中心Oiとが若干偏心しており、その合口部2と対向する基部11 より、両端12 ,12 にいくにつれて径方向の幅が漸減するように形成されている。
【0010】
また主体部1の、合口2を挟んだ膨大状の両端12 ,12 には、このスナップリングSを外方に押し拡げるための、工具挿入用の通孔3,3がそれぞれ穿設されている。
【0011】
ところでこのスナップリングSは、その全体の重心CGが、その内径の中心Oiよりも合口2側に偏倚させた点に特徴を有しており、これによりこのスナップリングSは、その重心CGから主体部1の基部11 内周面までの距離l1 が、そこから合口2内側面までの距離l2 よりも長くなるが、このスナップリングSを回転軸に装着して使用するとき、そこに作用する遠心力は、その合口2の方が主体部1の基部11 よりも大きくなる。
【0012】
次に、図3〜6を参照して、このスナップリングSを内燃機関用のクランクシャフトに遊嵌される歯車のスラスト受部材として使用した使用例について説明する。
【0013】
図3,4において、直列四気筒の4サイクルエンジンのエンジンブロックEには、クランクシャフト5が回転自在に支承され、このクランクシャフト5の一端には、後に述べるバックラッシュ除去機構15を備えた複合駆動歯車6が設けられ、この複合駆動歯車6は、図示しない支持軸上の被動歯車8に噛合され、クランクシャフト5の回転トルクはこの複合駆動歯車6を介して被動歯車8に伝達される。
【0014】
前記複合駆動歯車6は、クランクシャフト5と一体の主歯車10と、クランクシャフト5の一端部に、主歯車10と同心上に遊合される薄い副歯車11とより構成される。そして主歯車10の外側面に、副歯車11の内側面が摺接されており、それら主歯車10と副歯車11とは、後述するバックラッシュ除去機構15を介して結合され、それらは相対回転可能である。副歯車11の外側において、クランクシャフト5の外端部には、環状のリング溝12が形成されており、このリング溝12に、前記スナップリングSの内周部が着脱自在に嵌着され、このスナップリングSと、副歯車11との間には、クランクシャフト5の端部に遊嵌した皿バネ13およびワッシャ14が介在されており、この皿バネ13の弾発力は主歯車10と副歯車11とを重合状態に付勢し、前記スナップリングSは、それらからのスラスト反力を受ける。また前記皿バネ13の外側面には、皿バネ13の外周縁が係合される複数の突起が同心円上に突設されている。
【0015】
次に前記バックラッシュ除去機構15の構造について説明するに、前記主歯車10の、副歯車11と対面する外側面には、同心円上で、かつ周方向に等間隔を存して複数(図示例では3)の弧状凹所16が形成され、これらの弧状凹所16内の一端部には、係止ピン17がそれぞれ嵌合固定され、また前記弧状凹所16の他端部には、前記係止ピン17に対応して前記副歯車11から内方に切り起こしたバネ受片18が差し込まれており、前記係止ピン17と、バネ受片18との間には、弧状凹所16内に収容したコイルばね19が介装されており、このコイルばね19の弾発力により、前記係止ピン17およびばね受片18を介して主、副歯車10,11は所定角度相対回転方向に回転するように付勢されており、図5に示すように、主、副歯車10,11の歯は、被動歯車8との噛合部において、被動歯車8の歯を弾力的に挟持してバックラッシュを実質的に除去する。その結果複合駆動歯車6と被動歯車8間の伝動はバックラッシュ騒音を発することなく静粛に行なわれる。
【0016】
尚、図中、20は、クランクシャフトの形成した潤滑オイル溝、21は、シリンダブロックのシリンダボア22に摺動自在に嵌合されるピストン、23は、動弁カム軸、24はクランクシャフト5のと、前記動弁カム軸23とを連動連結する調時伝動機構である。
【0017】
次に前記スナップリングSをクランクシャフト5に組み付ける手順について説明するに、先ず主歯車10が一体に形成されている、クランクシャフト5の端部に副歯車11を嵌合してその内側面を、主歯車10の外側面に重合、摺接させて、それらを前記バックラッシュ除去機構15を介して回転方向に相対回転可能に結合する。次いでクランクシャフト5の端部に皿ばね13、次いでワッシャ14を遊合したのち、図示しない従来公知の工具をスナップリングSの主体部1の両端12 ,12 の通孔3,3に挿入して、該スナップリングSの両端部をその内方への緊縛力に抗して押し拡げて、このスナップリングSの内周部をクランクシャフト5端部のリング溝12に嵌着する。これにより副歯車11のスラスト荷重が皿ばね13、ワッシャ14を介してスナップリングSに加わったとき、このスナップリングSでそのスラスト荷重を十分に受けることができる。
【0018】
クランクシャフト5が回転されると、主、副歯車10,11よりなる複合駆動歯車6の回転は、被動歯車8に伝達され、その際、複合駆動歯車6の主、副歯車10,11は、被動歯車8との噛合部において、前記バックラッシュ除去機構15の作用によりそれら間のバックラッシュが除去され、複合駆動歯車6から被動歯車8への動力伝達が静粛に行なわれる。そして副歯車11にかかるスラスト荷重は、皿ばね13を介して前記スナップリングSにより受けられる。
【0019】
ところで前記スナップリングSの重心CGは、前述したようにその内径の中心Oiすなわちクランクシャフト5の回転中心よりも合口2側に偏倚しているので、クランクシャフト5の回転により、このスナップリングSに作用する遠心力は、その合口2側の方が、それと反対側の主体部1の基部11 側よりも大きくなり、これによりスナップリングSの合口2側は、クランクシャフト5の径方向外方へ偏倚する力をうけて合口2の開き傾向を抑止することができ、この傾向はクランクシャフト5の回転数の増大に伴い一層大きくなる。したがってクランクシャフト5が高速回転してもこのスナップリングSは副歯車11からのスラスト荷重を受けてこれを所定位置に確実に係止することができ、しかもこのスナップリングSは、径方向内方への緊縛力を過度に高める必要がなく、クランクシャフトへの組付、離脱が容易になり、メンテナンス性を向上させることができる。
【0020】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明はその実施例に限定されることなく、本発明の範囲内で種々の実施例が可能である。たとえば前記実施例では本発明スナップリングを内燃機関用のクランクシャフトに実施した場合を説明したが、これを回転軸に遊嵌される回転部材のスラスト受用として実施できることは勿論であり、また前記実施例では、主体部の両端に工具挿入用の通孔を穿設しているが、これに代えて工具係止用の係止部を形成するようにしてもよい。
【0021】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、切欠円状の主体部の両端間に合口を有してC形に形成され、回転軸に装着されるスナップリングにおいて、回転軸の回転により生じる遠心力で合口が開き傾向となるのを抑止するために、スナップリング重心を、主体部の内径の中心よりも合口側に偏倚させたので、このスナップリングの装着される回転軸が高速回転されても、その遠心力は、合口側の方が基部側よりも遠心力が大きくなり、従って遠心力により合口が開き傾向となることなく、所期の緊縛力が保持され、スナップリングとしての機能を確実に達成することができる。また合口の開き傾向を防止するために、スナップリング自体の緊縛力を過度に高める必要がないため、スナップリング自体の回転軸への装着、そこからの取外しが容易となりメンテナンスの向上に寄与することができ、さらに別途に合口の開き防止手段を設けたものに比べて、スナップリング装着のため軸方向に余分のスペースを必要としない。
【0022】
また上記主体部は、それの内、外周とも切欠円状に形成されていて、合口とは反対側の基部より両端にいくにつれて径方向の幅が漸減するように該主体部の外径の中心よりも内径の中心が合口側に偏心している。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明スナップリングの正面図
【図2】 図1の2−2線に沿う断面図
【図3】 本発明スナップリングを実施した四サイクルエンジンの一部破断側面図
【図4】 図5の4−4線に沿うスナップリングを嵌着したクランクシャフトの端部縦断面図
【図5】 図4の5−5線に沿う断面図
【図6】 図5の6線矢視部の拡大図
【符号の説明】
1・・・主体部
1 1 ・・基部
1 2 ,1 2 ・・両端
2・・・合口
5・・・クランクシャフト(回転軸)
CG・・重心
Oi・・内径の中心
Oo・・外径の中心
Claims (1)
- 切欠円状の主体部(1)の両端(12 ,12 )間に合口(2)を有してC形に形成され、回転軸(5)に装着されるスナップリングにおいて、
前記主体部(1)は、それの内、外周とも切欠円状に形成されていて、前記合口(2)とは反対側の基部(1 1 )より両端(1 2 ,1 2 )にいくにつれて径方向の幅が漸減するように該主体部(1)の外径の中心(Oo)よりも内径の中心(Oi)が前記合口(2)側に偏心しており、
前記回転軸(5)の回転により生じる遠心力で前記合口(2)が開き傾向となるのを抑止するために、スナップリング重心(CG)を、前記主体部(1)の内径の中心よりも合口(2)側に偏倚させたことを特徴とする、スナップリング。
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