JPH0510705U - 内燃機関用バルブリフター - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 フェース部を塑性変形させることなくインナ
ーシムを固定できるとともに、バルブのリフト量（バル
ブの摺動ストローク）を大きく設定できる内燃機関用バ
ルブリフターの提供。 【構成】 バルブリフター本体２０の少なくともフェー
ス部２１を耐摩耗性に優れた材料で構成するとともに、
インナーシム３０をフェース部２１裏側に固定されたカ
シメ部材４０によってフェース部２１下面にカシメ固定
した。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、バルブリフター本体のフェース部下面にインナーシムが固定保持さ れた内燃機関用バルブリフターに関する。

【０００２】

【従来の技術】

図５は、従来のバルブリフターを示しており、符号２はバケット型のバルブリ フター本体で、この本体２のフェース部下面には、インナーシム３が固着されて いる。バルブ軸端部１ａが当接する部材であるこのインナーシム３は、摩耗しに くいように硬質材料で形成されている。即ち、バルブリフター本体２はインナー シム３より比較的軟質な材料で形成されており、バルブリフター本体２のフェー ス部下面２ａにインナーシム３を囲繞状態にカシメ固定した構造となっている。 また、バルブリフター本体２は比較的軟質であるため、カム４が摺動接触するフ ェース部上面２ｂには、摩耗防止のために硬質のアウターシム５が囲繞状態に固 定されている。

【０００３】

【考案の解決しようとする課題】

しかし、前記従来のバルブリフターのようにフェース部上面２ｂにアウターシ ム５が囲繞状態に固定される構造では、アウターシム５の径はフェース部上面２ ｂの径よりも小さくしなければならず、フェース部上面２ｂの面積が有効に活用 されていない。このため、アウターシムを使用するバルブリフターは、アウター シムを使用しないバルブリフターに比べて性能が落ちる。即ち、同じ大きさのバ ルブリフターで比較すると、アウターシムを使用するバルブリフターは、アウタ ーシムを使用しないバルブリフターに比べてカム有効摺動径が小さいので、バル ブのリフト量が小さくなり、エンジン出力が小さくなるという問題がある。また 、換言すれば、同じエンジン出力を得るためには、アウターシムを使用するバル ブリフターはアウターシムを使用しないバルブリフターより大型となるので、エ ンジンが大型化するという問題がある。また、フェース部上面にアウターシムが 配設される構造では、フェース部が二重構造となるのでそれだけ重くなってしま うという欠点もある。

【０００４】 本考案は前記従来技術の問題点に鑑みなされたもので、その目的は、フェース 部を塑性変形させることなくインナーシムを固定できるとともに、バルブのリフ ト量（バルブの摺動ストローク）を大きく設定できる内燃機関用バルブリフター を提供することにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】

前記目的を達成するために、請求項１に係る内燃機関用バルブリフターにおい ては、 バルブリフター本体のフェース部とバルブ軸端部との間にインナーシムが介装 された内燃機関用バルブリフターにおいて、 バルブリフター本体の少なくともフェース部を耐摩耗性に優れた材料で構成す るとともに、インナーシムをフェース部裏側に固定されたカシメ部材によってフ ェース部下面にカシメ固定するようにした。

【０００６】 また、請求項２では、請求項１に係る内燃機関用バルブリフターにおいて、バ ルブリフター本体は、耐摩耗性に優れたフェース部と摺動性に優れたスカート部 とを付合わせ部において結合一体化して構成するようにした。

【０００７】

【作用】

請求項１では、バルブリフター本体のフェース部は耐摩耗性に優れた材料で構 成され、インナーシムは、フェース部裏側に固定されたカシメ部材によってフェ ース部下面にカシメ固定されているので、フェース部上面にアウターシムを配設 する必要がない。

【０００８】 請求項２では、バルブリフター本体は、耐摩耗性に優れたフェース部と摺動性 に優れたスカート部とが付合わせ部において結合一体化されて構成されているの で、フェース部およびスカート部が劣化しにくい。

【０００９】

【実施例】

次に、本考案の実施例を図面に基づいて説明する。 図１は本考案の第１実施例に係る内燃機関用バルブリフターの縦断面図を示し ている。 この図において、符号２０がバケット形状とされたバルブリフター本体で、硬 質材料で形成され、円盤状のフェース部２１と円筒形状のスカート部２２からな っている。そして、このバルブリフター本体２０は、吸排気バルブ軸１０の軸端 部１０ａに被せるようにして配設されるとともに、シリンダボア１２の内周面に 沿って上下摺動可能とされている。

【００１０】 符号３０は、フェース部２１の裏側とバルブ軸端部１０ａ間に介装された円盤 状のインナーシムで、硬質材料で形成され、次のようにしてフェース部２１に取 付けられている。即ち、フェース部２１の下面中央領域には円筒部２１ａが突設 されており、インナーシム３０は周縁部がこの円筒部２１ａ内部にスッポリと隠 れるようにして囲繞され、水平方向に位置決め固定されている。インナーシム３ ０は上面がフェース部２１の下面に当接するまで挿入されており、この状態で円 筒部２１ａ内周面のインナーシム３０周縁部下方位置には凹条２１ｂが周設され ている。符号４０は、フェース部２１およびインナーシム３０より軟質の材料で 形成されたリング型のカシメ部材で、後述するようにして塑性変形されて外周部 分がこの凹条２１ｂに充填されて固定される。即ち、インナーシム３０は、上面 がフェース部２１下面に当接し、下側周縁部がリング型カシメ部材４０の内周部 分によって下側から担持されて、上下方向に位置決め固定されている。

【００１１】 リング型カシメ部材４０の取付け固定（塑性加工）は、例えば図２に示される ようにして行われる。即ち、バルブリフター本体２０を逆様にした状態（すなわ ち開口部が上を向いている状態）にして、円筒部２１ａ内部にインナーシム３０ を挿入し、このインナーシム３０の上、円筒部内周面の凹条２１ｂにカシメ部材 ４０Ａを配設する。そして、リング型カシメ部材４０Ａの内周部分に対応する斜 面８１が先端外周縁に形成された円筒形治具８０により、カシメ部材４０Ａをプ レスする。すると、治具８０の斜面８１によってリング型カシメ部材４０Ａは凹 条２１ｂ側に押圧され、押圧力が一定値を超えると塑性変形して外周部分が凹条 ２１ｂに充填（図２仮想線参照）されて固定される。

【００１２】 また、インナーシム３０は、次のようにしてフェース部２１から取外すことが できる。即ち、フェース部２１の下面中央には、抜き出し孔２１ｃが形成されて おり、この孔２１ｃに棒等を挿入してインナーシム３０を下方に押圧すれば、リ ング状カシメ部材４０が塑性変形して凹条２１ｂから外れるので、インナーシム ３０が円筒部２１ａから抜け落ちて取外せる。

【００１３】 このように、インナーシム３０は、カシメ部材４０を介してバルブリフター本 体２０に着脱可能に固定保持されている。このため、バルブ軸端部１０ａが当接 するインナーシム中央部分３０ａの上下方向の厚さＨが異なるインナーシム３０ を予め多種類用意しておき、適宜交換することにより、フェース部２１と、フェ ース部上側に配設されてフェース部２１を押圧するカム７０とのギャップ（バル ブクリアランス）Ｓの調節を行うことができる。

【００１４】 また、インナーシム交換作業においては、具体的には次のような利点がある。 即ち、インナーシム３０は、バルブリフター本体２０に固定されているので、片 手でバルブリフター本体２０を持ち上げるだけで、バルブリフター本体２０と一 体に取り出すことができ、インナーシム３０を交換したバルブリフター本体２０ は、開口側を下方に向けるようにしても、インナーシム３０が外れることがない 。このため、インナーシム３０の交換作業の際に、インナーシム３０をシリンダ ボア１２内に落下させることなく、バルブクリアランスＳの調節作業を簡単に行 うことができる。

【００１５】 図３は、本考案の第２実施例に係るバルブリフターの縦断面図である。 この実施例では、フェース部２１の下面中央領域には円周状に凹部２１ｄが形 成され、凹部２１ｄを形成している内，外両縦壁には、更に凹条２１ｅ，２１ｆ がそれぞれ周設され、一方、円盤状のインナーシム３０の外周面にも凹条３０ｂ が周設されている。カシメ部材４０は円筒型とされて、上側部分４１が円周状の 凹部２１ｄに挿入され、下側部分４２がインナーシム３０を囲繞するようにして 配設され、カシメ部材４０の下端部外周縁に対応する斜面９１が先端部内周縁に 形成された円筒形治具９０でプレスされる。すると、円筒型カシメ部材４０は塑 性変形され、凹部２１ｄに挿入されたカシメ部材上側部分４１の内周，外周両面 の表面が周囲に沿って凸型に突出して溝側凹条２１ｅ，２１ｆに充填される。一 方、インナーシム３０を囲繞しているカシメ部材下側部分４２の内周面の表面の 一部分が内周に沿って凸型に突出してインナーシム側凹条３０ｂに充填される。 このようにして、インナーシム３０はカシメ部材４０を介してフェース部２１の 下面にカシメ固定されている。

【００１６】 また、この実施例では、フェース部２１に抜き出し孔２１ｃが形成されるとと もに、インナーシム３０にも抜き出し孔２１ｃより径の小さい貫通孔３０ｃが形 成されており、抜き出し孔２１ｃおよび貫通孔３０ｃを介してバルブリフター内 側に潤滑油が供給され、バルブの摩耗が軽減されるようになっている。 図４は、本考案の第３実施例に係るバルブリフターの縦断面図である。

【００１７】 この実施例は前記第１実施例とは多少形状が異なっているが、インナーシムの 固定方法は第１実施例と略同様であり、その説明は同符号を付して省略する。こ の実施例で前記第１実施例と異なる点は、インナーシムの取外し方法、およびバ ルブリフター本体の構成についてであり、以下にこれらの異なる２点について説 明する。

【００１８】 まず、インナーシムの取外し方法を説明する。この実施例では前記第１実施例 のようにフェース部２１に抜き出し孔２１ｃが形成されておらず、その代りにイ ンナーシム３０に貫通する螺子孔３０ｄを形成し、この螺子孔３０ｄに螺合する とともにインナーシム３０の厚さより十分に長い雄螺子６０を用意する。即ち、 この雄螺子６０を螺子孔３０ｄに捩じ込んで、雄螺子６０先端がフェース部２１ 下面に当接してインナーシム３０をフェース部２１下面から押し離すようにして 、リング型カシメ部材４０を塑性変形させて凹部２１ｂから外すことにより、イ ンナーシム３０を円筒部２１ａから取り外すことができる。

【００１９】 次に、バルブリフター本体の構成について説明する。この実施例では、耐摩耗 性に優れた材料で形成されたフェース部２１と摺動性に優れた材料で形成された スカート部２２とが、両部２１，２２とは別の部材によって結合一体化されてい る。両部２１，２２の付き合わせ部２０ｘは次のように構成されている。即ち、 スカート部２２の上側開口部内側周縁部には内フランジ部２２ａが周設されて、 この内フランジ部２２ａがフェース部２１下面の円筒部２１ａ外周に嵌合すると ともに、内フランジ部２２ａより下方に突出する円筒部２１ａの外周には凹条２ １ｅが周設されている。そして、フェース部２１とスカート部２２とは別部材で あるリング状締結部材５０が塑性変形されて、締結部材５０の内側部分がこの凹 条２１ｅに充填されて付き合わせ部２０がカシメ固定され、内フランジ部２２ａ がこのリング状締結部材５０の外側部分とフェース周縁部２３とで上下方向に挟 持固定されて、フェース部２１とスカート部２２が結合一体化されている。

【００２０】 このように、この実施例では、両部２１，２２に直接塑性加工を一切施すこと なく、フェース部２１とスカート部２２を結合一体化しているので、フェース部 ２１およびスカート部２２が塑性加工不可能な材料であっても結合することがで きる。フェース部２１およびスカート部２２に使用される材料としては、例えば 、鉄、アルミ、チタン等の金属、強化プラスチック等の合成樹脂、塑性加工が不 可能なセラミック等があり、フェース部２１およびスカート部２２としてそれぞ れ要求される条件に合わせた材料を、自由に組み合わせて用いることも可能であ る。一方、リング状締結部材５０に使用される材料としては、塑性加工に適した 材料、例えば、軟鋼、銅、Ｌｏ−Ｓｉ、亜鉛、アルミ等、あるいはこれらの合金 が用いられる。また、リング状締結部材５０を熱可塑性樹脂製とし、加熱しなが ら塑性加工を行うようにしてもよい。

【００２１】

【考案の効果】

以上の説明から明らかなように、請求項１に係る内燃機関用バルブリフターに よれば、 インナーシムは、インナーシムおよびフェース部とは別に用意されたカシメ部 材によってフェース部下面にカシメ固定されるので、インナーシムおよびフェー ス部をともに硬質部材とすることができ、フェース部上面を保護するためにアウ ターシムを設ける必要がない。即ち、従来のアウターシムを使用するバルブリフ ターに比べてフェース部上面を有効に活用することができ、カム有効摺動径をフ ェース部上面いっぱいにとることができる。このため、同じ大きさのバルブリフ ターで比較すると、アウターシムを使用しないバルブリフターはアウターシムを 使用するバルブリフターに比べてカム有効摺動径が大きいので、バルブリフトが 大きくできエンジン出力を大きくすることができる。また、換言すれば、同じエ ンジン出力を得るために、アウターシムを使用しないバルブリフターはアウター シムを使用するバルブリフターより小型にすることができ、エンジンを小型化す ることができる。

【００２２】 また、請求項２においては、バルブリフター本体は、耐摩耗性に優れたフェー ス部と摺動性に優れたスカート部とが付合わせ部において結合一体化されて構成 されているので、フェース部およびスカート部が劣化しにくく、それだけ耐久性 が良好となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の第１実施例である内燃機関用バルブリ
フターの縦断面図

【図２】同バルブリフターのインナーシム取付け説明図

【図３】本考案の第２実施例である内燃機関用バルブリ
フターの縦断面図

【図４】本考案の第３実施例である内燃機関用バルブリ
フターの縦断面図

【図５】従来の内燃機関用バルブリフターの縦断面図

【符号の説明】

１０ 吸排気バルブ １０ａ 吸排気バルブ軸端部 ２０ バルブリフター本体 ２０ｘ 付き合わせ部 ２１ フェース部 ２２ スカート部 ３０ インナーシム ４０ カシメ部材

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 バルブリフター本体のフェース部とバル
   ブ軸端部との間にインナーシムが介装された内燃機関用
   バルブリフターにおいて、 バルブリフター本体の少なくともフェース部が耐摩耗性
   に優れた材料で構成されるとともに、インナーシムがフ
   ェース部裏側に固定されたカシメ部材によってフェース
   部下面にカシメ固定されたことを特徴とする内燃機関用
   バルブリフター。
2. 【請求項２】 前記バルブリフター本体は、耐摩耗性に
   優れたフェース部と摺動性に優れたスカート部とが付合
   わせ部において結合一体化されたことを特徴とする請求
   項１記載の内燃機関用バルブリフター。