JPH06123204A - 内燃機関用タペットのチップ取付方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【目的】 内燃機関用タペットのチップのかしめ力を増
大し、チップを嵌合孔内に強固に固定する。 【構成】 チップ５が嵌合されたタペット本体１の嵌合
孔４の周端部を、内方の辺を凹曲面6aとしたコーキング
刃６を備えるポンチ７をもって強圧することにより、塑
性変形９部の内方への肉の流れが円滑となって塑性変形
量が増し、塑性変形９部とチップ５との係合面積が増大
するとともに、チップ５に押圧荷重が有効に作用する。
その結果、かしめ力が増大して、チップ５が嵌合孔４内
に強固に固定される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、タペット本体の内底面
におけるエンジンバルブとの接触部に設けられたチップ
を、強固に固定するようにした内燃機関用タペットのチ
ップ取付方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】近年、ＤＯＨＣ式等の直動型の動弁機構
に、アルミニウム合金製のタペット（バルブリフタ）を
用いて動弁系を軽量化し、エンジン性能を一層向上させ
る試みがなされている。

【０００３】アルミニウム合金製のタペットは、通常の
鉄製に比べて強度、剛性が低く、かつ耐摩耗性も劣るた
め、回転カムやエンジンバルブとの接触面に、耐摩耗性
金属材料を装着して使用される。

【０００４】図３は、直動型の動弁機構に組込まれたア
ルミニウム合金製のタペットを示し、（１０１）はシリ
ンダヘッド、（１０２）はシリンダヘッド（１０１）に
摺動自在に嵌合されたタペット本体で、上面が閉塞され
た円筒形をなし、その上壁（１０２ａ）の上面に形成さ
れた大径の凹所（１０２ｂ）には、回転カム（１０５）
と接触する耐摩耗性金属材料製の円板状のシム（１０
３）が、また上壁（１０２ａ）の内底面中央に形成され
た有底の嵌合孔（１０２ｃ）には、エンジンバルブ（１
０６）の軸端と当接する、同じく耐摩耗性金属材料製の
小径のチップ（１０４）が、それぞれ嵌合されている。

【０００５】チップ（１０４）を嵌合孔（１０２ｃ）に
固定する場合、単に圧入しただけでは、双方の部材の熱
膨張率の差等により、チップ（１０４）が脱落する恐れ
があるため，図４（上下逆向に示す）に示すように、チ
ップ（１０４）が嵌合された嵌合孔（１０２ｃ）の周縁
部を、下端に逆三角形断面のコーキング（かしめ）刃
（１０７）を備えるコーキング用のポンチ（１０８）に
より強圧し，周縁部を内方（求心方向）に塑性変形（１
０９）させてかしめることにより、チップ（１０４）の
脱落防止を図っている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】上述した従来のチップ
の取付方法では、逆三角形断面をなすコーキング刃（１
０７）の内方の斜辺が単に直線状に形成されているた
め、押圧時における塑性変形（１０９）部の内方への移
動量が小さく、そのため、チップ（１０４）と塑性変形
（１０９）部との係合（接触）面積が小さくて、チップ
（１０４）に大きな押圧荷重が作用せず、充分なかしめ
力が得られない。

【０００７】チップ（１０４）が嵌合孔（１０２ｃ）内
に強固に固定されていないと、チップ（１０４）とタペ
ット本体（１０２）との間、又はチップ（１０４）とエ
ンジンバルブ（１０６）との間に隙間が生じて、運転中
に打撃音が発生したり、異常摩耗を起こすなどして、耐
久性、信頼性が損なわれる。

【０００８】チップ（１０４）を強固に固定する一手段
として、ポンチ（１０８）の押圧荷重を高めてかしめ力
を増大させ、チップ（１０４）の保持力を増強すること
も考えられるが、必要以上に強い力でかしめると、図４
に示すように、凹溝（１１０）の頂部に亀裂（１１１）
が生じることがある。

【０００９】本発明は、上記問題点を解決するためにな
されたもので、チップのかしめ力を大幅に増大すること
により、チップを嵌合孔内に強固に固定し、耐久性、信
頼性に優れる内燃機関用タペットのチップ取付方法を提
供することを目的としている。

【００１０】

【作用】チップが嵌合された嵌合孔の周端部を、内方の
辺を凹曲面としたコーキング刃を備えるポンチをもって
強圧することにより、塑性変形部の内方への肉の流れが
円滑となって塑性変形量が増し、塑性変形部とチップと
の係合面積が増大するとともに、チップに押圧荷重が有
効に作用する。その結果、かしめ力が増大してチップが
嵌合孔内に強固に固定される。

【００１１】

【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明
する。図１は、本発明の第１実施例を上下倒立して示す
もので、アルミニウム合金製のタペット本体（１）にお
ける上壁（２）の内底面中央に形成された厚肉部（３）
の中心には、有底の嵌合孔（４）が形成されている。

【００１２】チップ（５）は、耐摩耗性金属材料によ
り、その板厚を上記嵌合孔（４）の深さよりも若干小と
した円板状に形成され、その上部周端縁には、ほぼ４５
゜のテーパ状をなす面取り部（５ａ）が形成されてい
る。チップ（５）を嵌合孔（４）内に固定する際は、次
の要領で行なう。

【００１３】すなわち、図１に示すように、予め倒立し
たタペット本体（１）の嵌合孔（４）内に、まずチップ
（５）を、面取り部（５ａ）を上方に向けて嵌挿する。
ついで、嵌合孔（４）の周端部の厚肉部（３）の上面
を、内方の斜辺が円弧状の凹曲面（６ａ）をなす、概ね
逆二等辺三角形断面の円形のコーキング刃（６）を下端
に備えるポンチ（７）をもって強圧する。

【００１４】すると、厚肉部（３）の上面にコーキング
刃（６）と補形をなす環状の凹溝（８）が形成され、か
つ同時に、嵌合孔（４）の周囲の厚肉部（３）の端縁部
が、チップ（５）の面取り部（５ａ）に沿って内方に塑
性変形（９）させられ、チップ（５）がかしめられる。
なお、コーキング刃（６）の頂部は、凹溝（８）の頂端
に応力が集中するのを防止するために、若干丸みを形成
するのがよい。

【００１５】このようにして、チップ（５）をかしめる
と、コーキング刃（６）の内方の斜辺が凹曲面（６ａ）
となっているので、塑性変形（９）部の肉の流れが円滑
となって内方への塑性変形量が大となり、塑性変形
（９）部とチップ（５）との係合（接触）面積が増大す
るとともに、チップ（５）に押圧荷重が有効に作用する
ことにより、面取り部（５ａ）を強力に圧着する。

【００１６】その結果、チップ（５）を嵌合孔（４）内
に押し込める抱込み力、及びかしめ力（締付力）が増大
して、チップ（５）は嵌合孔（４）内に強固に固定され
る。図２は、本発明の第２実施例を示すもので、この実
施例では、チップ（５）の上部周端縁に、円弧状のなだ
らかな曲面部（１０）を形成したものである。

【００１７】このようにすると、肉の流れがより円滑と
なって曲面部（１０）と塑性変形（９）との密着性が向
上するとともに、押圧荷重が曲面部（１０）全体に効果
的に作用するので、かしめ力が一層増大して、チップ
（５）のタペット本体（１）に対する剥離荷重が大とな
る。

【００１８】なお、上記両実施例においては、チップ
（５）の周端縁に面取り部（５ａ）及び曲面部（１０）
を形成しているが、それらの形状、大きさ等は適宜であ
り、またこのような面取り部（５ａ）や曲面部（１０）
を形成しないで実施することもある。

【００１９】実施例では、チップ（５）の回りを円形に
かしめているが、複数個の不連続したコーキング刃を備
えるポンチにより、チップ（５）の回りの複数個所をか
しめるようにしてもよい。

【００２０】

【発明の効果】本発明によれば、内方への塑性変形量が
増加して、塑性変形部とチップとの係合面積が大きくな
るので、チップのかしめ力が増大し、チップを嵌合孔内
に強固に固定することができる。

【００１２】チップの周端縁に面取り部又は曲面部を形
成すると、塑性変形部とチップとの係合面積がより大き
くなるとともに、密着性が向上するのでチップはより強
固に固定される。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１実施例を適用したタペットとかし
め要領を示す要部の中央縦断正面図である。

【図２】同じく第２実施例のかしめ要領を示す要部の拡
大断面図である。

【図３】直動型動弁機構とそれに組み込まれた従来方法
によるタペットの中央縦断正面図である。

【図４】従来のチップのかしめ要領を示す要部の縦断正
面図である。

【符号の説明】

(１)タペット本体 (２)上
壁 (３)厚肉部 (４)嵌
合孔 (５)チップ (5a)面
取り部 (６)コーキング刃 (6a)凹
曲面 (７)ポンチ (８)凹
溝 (９)塑性変形 (10)曲
面部

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 上端が閉塞された円筒形をなすタペット
   本体の内底面中央に形成した嵌合孔内に、チップを嵌合
   したのち、前記内底面における嵌合孔の周端部を、内方
   の辺が凹曲面をなすほぼ三角形断面のコーキング刃を備
   えるポンチをもって押圧し、内方に塑性変形させること
   により、かしめることを特徴とする内燃機関用タペット
   のチップ取付方法。
2. 【請求項２】 チップにおける嵌合孔の開口端側の周端
   縁に、面取り部又は曲面部が形成されている請求項１記
   載の内燃機関用タペットのチップ取付方法。