JPH0744806U - クラッチレリーズ装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 クラッチレリーズ装置を構成する滑りスリー
ブの鍔状の加圧板に対しスラスト軸受の静止軌道輪の鍔
を半径方向に移動可能に接触させ、調心部材を介して上
記加圧板と鍔を摩耗させることなく静止軌道輪を自動調
心する。 【構成】 スラスト軸受の静止軌道輪の鍔５が接触する
滑りスリーブの加圧板３の端面の周縁部に、その鍔５を
保持するための軸方向突出部１５と、該突出部の先端の
半径方向内向き突出部１４とからなる掛け爪１３を円周
方向に離して複数設けると共に、加圧板の周縁部に上記
掛け爪の内向き突出部１４と対向し、且つこれと同形同
大の軸方向の貫通開口１７を設け、前記各掛け爪の内向
き突出部１４の先端部に傾斜面１６を設け、この内向き
突出部１４と、加圧板３の端面との間の間隔Ａを、静止
軌道輪の鍔５の厚さｔより大、静止軌道輪の鍔５の半径
Ｒに対して加圧板３の中心から掛け爪の軸方向突出部１
５の内面までの半径Ｒ₁ を大、加圧板の中心から掛け爪
の内向き突出部１４の内向き端部までの半径Ｒ₂ を小に
する。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

この考案は、外周から一体の加圧板が鍔状に張出した滑りスリーブと、スラス ト軸受とからなり、スラスト軸受の静止軌道輪は滑りスリーブの加圧板に半径方 向に移動可能に接触して支持される鍔を備え、且つ調心部材により調心されるク ラッチレリーズ装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】

上記のようなクラッチレリーズ装置は、実開昭５６−１４２２７号公報によっ て公知であり、その第１〜３図には静止軌道輪の鍔を滑りスリーブの加圧板に押 付け、押付けた状態のまゝその一方、又は双方を回すことにより鍔から放射状に 突出する複数の突出部を、加圧板の周縁部から半径方向内向きに折返して突出す る複数の折返し爪の下に、該爪の弾性に抗してもぐらせ、折返し爪が放射状の突 出部に加える復元力で静止軌道輪の鍔を滑りスリーブの加圧板に対し押付けて固 定することが記されている。 又、その第４〜７図には、加圧板の内周の近くに爪を自由端に有する複数の軸 方向突出部を設け、静止軌道軸の鍔を加圧板に向かって押付けると、鍔の内周、 又は鍔の内周近くに設けた孔が軸方向突出部を変形させて爪を乗り越え、爪を乗 り越えると軸方向突出部は復元し、その爪が静止軌道軸の鍔を加圧板に対し押付 けて接面状に固定するスナップ係合式の固定が示されている。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】

上記した公知のクラッチレリーズ装置では、滑りスリーブの加圧板が弾性変形 可能な折返し爪や、自由端に爪を有する変形可能な軸方向突出部を一体に備えね ばならないので、滑りスリーブを弾性材料で作る必要があり、滑りスリーブ、加 圧板の強度は低下する。 又、静止軌道輪の鍔に放射状の突出部や、孔を設ける場合は、その加工に手数 がかゝると共に、滑りスリーブの加圧板に折返し爪や、爪付きの軸方向突出部を 備えさせるため、滑りスリーブを弾性材料で成形する金型は著しく複雑になり、 コストが嵩む。その結果、製品のコストは高価にならざるを得ない。 更に、静止軌道輪の鍔は、滑りスリーブの加圧板の端面に対し押付けて固定さ れているので、運転中、ダイヤフラムバネと同心になる自動調心のために軸受が 半径方向に動く際、その静止軌道輪の鍔と加圧板は摩擦し、滑らかに動けず、且 つ加圧板は摩耗する。

【０００４】

【課題を解決するための手段】

本考案は、上述した問題点を解消するためのもので、外周から一体の加圧板（ ３）が鍔状に張出した滑りスリーブ（２）と、スラスト軸受（１）とからなり、 スラスト軸受の静止軌道輪（４）は滑りスリーブの加圧板（３）に半径方向に移 動可能に接触して支持される鍔（５）を備え、且つ調心部材（11）により調心さ れるクラッチレリーズ装置において、滑りスリーブの加圧板（３）は、静止軌道 輪の鍔（５）が接触する端面の周縁部に、その鍔（５）を保持するための軸方向 突出部（15）と、軸方向突出部の先端に設けられた半径方向内向きに突出する内 向き突出部（14）とからなる掛け爪（13）を円周方向に離して複数有すると共に 、加圧板は周縁部に上記掛け爪の内向き突出部（14）と対向し、且つこれと同形 同大の軸方向の貫通開口１７を有し、前記各掛け爪の内向き突出部（14）は先端 部に傾斜面（16）を有し、前記掛け爪の内向き突出部（14）と、加圧板（３）の 端面との間の間隔（Ａ）は、静止軌道輪の鍔（５）の厚さ（ｔ）より大、静止軌 道輪の鍔（５）の半径Ｒに対して加圧板（３）の中心から掛け爪の軸方向突出部 （15）の内面までの半径Ｒ₁ は大、加圧板の中心から掛け爪の内向き突出部（14 ）の内向き端部までの半径Ｒ₂ は小にしたことを特徴とする。

【０００５】

【実施例】

図示の実施例において、１はスラスト軸受、２は滑りスリーブを示す。滑りス リーブ２は外周から鍔状に張出した加圧板３と一体に、例えばガラス繊維強化プ ラスチックで成形されている。加圧板３のクラッチに向いた端面には、スラスト 軸受１の静止軌道輪（こゝでは内輪）４の半径方向外向きに張出した鍔５が半径 方向に移動可能に接触している。スラスト軸受の外輪６はダイヤフラムばね（図 示せず）との接触面７を有するほか、内輪の内周中に遊びを保って突入した軸方 向の筒部８を備えているので、両軌道輪４，６と、転動体９は組立て状態を保つ と共に、スラスト軸受１の第１図で右側は外輪の接触面７と筒部８で密閉されて いる。又、スラスト軸受の第１図で左側は外輪の外周に固定され、内輪４との間 に密閉隙間を形成する薄板キャップ１０で塞がれている。

【０００６】 静止軌道輪４の内周中には調心部材１１として小判形に曲げたばねリングが配 置してある。このばねリングは互いに平行な側部で滑りスリーブ２の環状溝１２ の中に嵌り、半径方向に作用する摩擦力で静止軌道輪（内輪）４を調心位置に保 つ。

【０００７】 滑りスリーブの加圧板３は、クラッチに向いた端面の周縁部に、円周方向に分 散した複数の掛け爪を備え、この掛け爪は、内輪の鍔５の外周をつかんでスラス ト軸受１を滑りスリーブ２に連結する。掛け爪１３は加圧板３の端面から軸方向 に突出する軸方向突出部１５と、該軸方向突出部の先端から半径方向内向きに突 出する内向き突出部１４とからなるＬ形で、内向き突出部１４は先端に傾斜面１ ６を有する。

【０００８】 第３図に示したように、内向き突出部１４と加圧板３の端面との間の間隔Ａは 鍔５の厚さｔより大である。又、鍔５の半径Ｒに対して、加圧板の中心から軸方 向突出部１５の内面までの半径Ｒ₁ は大であり、加圧板の中心から内向き突出部 １４の先端までの半径は小である。

【０００９】 そして、加圧板の周縁部には、掛け爪の各内向き突出部１４と対向して、これ と同形、同大の軸方向の貫通開口１７が設けてある。この貫通開口１７は、一体 の滑りスリーブと加圧板をガラス繊維強化プラスチックで成形するための射出成 形工具、又は注型工具に設けられた軸方向に可動な中子型で掛け爪１３の内面を 形成したとき、その中子型を引抜いた跡として必然的に生じるのであるが、この 貫通開口１７が設けられることにより、弾性に乏しいガラス繊維強化プラスチッ クで滑りスリーブと加圧板を成形しても、貫通開口１７の真上から突出する軸方 向突出部１５を備えた掛け爪１３は或る程度の可撓性を有することになる。

【００１０】 従って、静止軌道輪の鍔５を加圧板３の端面に押付けると、鍔の外周は掛け爪 の内向き突出部１４の先端の傾斜面１６を押す。これによって傾斜面１６のカム 作用で掛け爪は外向きに撓み、鍔の外周は傾斜面１６を乗り越え、鍔が乗り越え ると掛け爪は元通りに復元し、こうしてスナップ係合でスラスト軸受は滑りスリ ーブと連結する。 そして、加圧板の中心から掛け爪の軸方向突出部１５の内面までの半径Ｒ₁ は 鍔５の半径よりも大であり、加圧板の端面と、掛け爪の内向き突出部との間の間 隔Ａは鍔５の厚さｔよりも大である。このため、静止軌道輪４は掛け爪の軸方突 出部の内面に外周が当接する範囲で自由に半径方向に動くことができ、軸受は容 易に自動調心される。

【００１１】 尚、滑りスリーブ２の加圧板３を有する部分の内部には金属のリング１８をイ ンサートモールドして補強する。このリング１８には直径方向に二つの突出片２ ０を備えさせ、この両突出片を加圧板の、クラッチ操作レバー（図示せず）が接 触する部分２０の内部に位置させておくことが好ましい。

【００１２】

【考案の効果】

以上で明らかなように、この考案による滑りスリーブの加圧板３は、静止軌道 輪の鍔５が接触する端面の周縁部に、その鍔５を保持するための軸方向突出部１ ５と、軸方向突出部の先端に設けられた半径方向内向きに突出する内向き突出部 １４とからなる掛け爪１３を円周方向に離して複数有すると共に、加圧板は周縁 部に上記掛け爪の内向き突出部１４と対向し、且つこれと同形同大の軸方向の貫 通開口１７を有し、この軸方向の貫通開口１７により、滑りスリーブをガラス繊 維強化プラスチックなどの、固くて弾性に乏しい材料で成形しても掛け爪１３は 或る程度、可撓性になる。

【００１３】 そして、各掛け爪の内向き突出部１４は先端部に傾斜面１６を有すると共に、 掛け爪の内向き突出部１４と、加圧板３の端面との間の間隔Ａは、静止軌道輪の 鍔５の厚さｔより大、静止軌道輪の鍔５の半径Ｒに対して加圧板３の中心から掛 け爪の軸方向突出部１５の内面までの半径Ｒ₁ は大、加圧板の中心から掛け爪の 内向き突出部１４の内向き端部までの半径Ｒ₂ は小になっている。

【００１４】 従って、静止軌道輪の鍔５を加圧板３の端面に押付けると、鍔の外周は掛け爪 の内向き突出部１４の先端の傾斜面１６を押し、これによって傾斜面１６のカム 作用で掛け爪は外向きに撓み、鍔の外周は傾斜面１６を乗り越え、鍔が乗り越え ると掛け爪は元通りに復元し、こうしてスナップ係合でスラスト軸受を滑りスリ ーブに連結できる。 そして、加圧板の中心から掛け爪の軸方向突出部１５の内面までの半径Ｒ₁ は 鍔５の半径よりも大であり、加圧板の端面と、掛け爪の内向き突出部との間の間 隔Ａは鍔５の厚さｔよりも大であるため、静止軌道輪４は掛け爪の軸方突出部の 内面に外周が当接する範囲で自由に半径方向に動くことができ、軸受は容易に自 動調心される。

【００１５】 このように本考案では、加圧板と一体の滑りスリーブをガラス繊維強化プラス チックなどの頑強な材料で成形できる。そして、静止軌道輪の鍔に放射状の突出 部や孔を設ける必要がない。更に、運転中の自動調心によって加圧板、静止軌道 輪の鍔が摩耗することもない。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例を示す図２のＡ−Ａ線に沿っ
た断面図である。

【図２】図１の滑りスリーブを左から見た正面図であ
る。

【図３】図１の要部の拡大断面図である。

【符号の説明】

１ スラスト軸受 ２ 滑りスリーブ ３ 加圧板 ４ 静止軌道輪（内輪） ５ 鍔 １１ 調心部材 １３ 掛け爪 １４ 掛け爪の半径方向内向き突出部 １５ 掛け爪の軸方向突出部 １６ 内向き突出部の先端の傾斜面 １７ 軸方向の貫通開口

フロントページの続き (72)考案者 ローランド ハース ドイツ連邦共和国 8729 ホフハイム ヤ ーンシュトラッセ 260 (72)考案者 ボルブガング フリードリヒ ドイツ連邦共和国 8720 シュバインフル ト ズデーテンシュトラッセ 26

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 外周から一体の加圧板（３）が鍔状に張
   出した滑りスリーブ（２）と、スラスト軸受（１）とか
   らなり、スラスト軸受の静止軌道輪（４）は滑りスリー
   ブの加圧板（３）に半径方向に移動可能に接触して支持
   される鍔（５）を備え、且つ調心部材（11）により調心
   されるクラッチレリーズ装置において、滑りスリーブの
   加圧板（３）は、静止軌道輪の鍔（５）が接触する端面
   の周縁部に、その鍔（５）を保持するための軸方向突出
   部（15）と、軸方向突出部の先端に設けられた半径方向
   内向きに突出する内向き突出部（14）とからなる掛け爪
   （13）を円周方向に離して複数有すると共に、加圧板は
   周縁部に上記掛け爪の内向き突出部（14）と対向し、且
   つこれと同形同大の軸方向の貫通開口（17）を有し、前
   記各掛け爪の内向き突出部（14）は先端部に傾斜面（1
   6）を有し、前記掛け爪の内向き突出部（14）と、加圧
   板（３）の端面との間の間隔（Ａ）は、静止軌道輪の鍔
   （５）の厚さ（ｔ）より大、静止軌道輪の鍔（５）の半
   径Ｒに対して加圧板（３）の中心から掛け爪の軸方向突
   出部（15）の内面までの半径Ｒ₁ は大、加圧板の中心か
   ら掛け爪の内向き突出部（14）の内向き端部までの半径
   Ｒ₂ は小にしたことを特徴とするクラッチレリーズ装
   置。