JPH0742210B2 - 義歯用裏装剤 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明はアクリル酸系の三元共重合体を含む義歯用裏装
剤および義歯用裏装剤用剥離性向上剤に関する。ここで
いう義歯用裏装剤とは義歯を口腔内の粘膜へ安定化させ
る義歯安定剤および粘膜調整剤をいう。義歯用裏装剤用
剥離性向上剤は義歯用裏装剤に添加してその剥離性をさ
らに向上させるものである。

従来の技術 従来より酢酸ビニル樹脂とエタノールとを主成分とした
義歯用裏装剤が知られている。この義歯用裏装剤を使用
した場合、経時的に口腔内でエタノールが溶け出し、義
歯用裏装剤が固化してしまい、使用感が悪化してしま
う。また、エタノールは刺激臭を有するため、口腔粘膜
を刺激し、使用者に不快感を与え、かつ、義歯に悪影響
を及ぼす欠点がある。さらに、酢酸ビニル樹脂は義歯を
構成しているアクリル樹脂とは相溶性が高いので、使用
後、義歯に固着して取り除きが非常に困難となる欠点を
有する。

他の従来技術として、酢酸ビニル樹脂と可塑剤とを主成
分とした義歯用裏装剤も知られている。この義歯用裏装
剤はエタノールを含有していないため、それに伴う欠点
は有していない。しかし、可塑剤（例えば、フタル酸エ
ステル）を含有するため、口腔内で可塑剤が溶出すると
いう人体に対する安全性の問題がある。また、酢酸ビニ
ル樹脂を使用することによるアクリル樹脂との相溶性に
関する欠点は上記従来技術のそれと同様である。

上記の問題点を解決するため本発明者は部分ケン化酢酸
ビニル樹脂並びに酢酸ビニルユニットを有する高分子の
部分ケン化物を有する義歯安定剤を特開昭61−73648号
公報および特開昭62−129210号公報においてそれぞれ開
示した。この二つの公報にて開示された義歯安定剤の剥
離性は従来の酢酸ビニル樹脂を使用した義歯安定剤より
も向上したが、より一層の改善が望まれていた。

発明が解決しようとする課題 一般に義歯用裏装剤には、次に掲げるような性質を有す
ることが求められている。即ち、 （イ）容器よりの取り出しが容易な柔軟性を有するこ
と。

（ロ）無味、無臭、無害であり、口腔粘膜への刺激がな
いこと。

（ハ）義歯への塗布が容易なこと。

（ニ）適度のクッション効果を有し、使用感が良好なこ
と。

（ホ）義歯への適度な粘着力を有し、長時間使用可能な
こと。

（ヘ）使用後に義歯からの剥離が容易なこと。

などがある。本発明では特に（ヘ）に関し改良を行うこ
とを目的としている。本発明者は上記（ヘ）に関し鋭意
研究を重ねた結果、本発明の三元共重合体系樹脂を含む
裏装剤は義歯床樹脂との相溶性が良くないため義歯安定
剤および粘膜調整剤としての使用後も固着せず、義歯よ
りシールを剥がすがごとく簡単に取り除くことができる
こと見いだした。

課題を解決するための手段 本発明はアクリル酸低級アルキルとメタアクリル酸低級
アルキルとメタアクリル酸塩化トリメチルアンモニウム
エチルとを構成成分とする三元共重合体を含む義歯用裏
装剤または義歯用裏装剤用剥離性向上剤を提供するもの
である。ここでいう低級アルキルとはメチル、エチル、
プロピルまたはブチルを示す。本願発明で特に好ましい
三元共重合体はアクリル酸エチルとメタアクリル酸メチ
ルと比較的少量のメタアクリル酸塩化トリメチルアンモ
ニウムエチルとからなるものである。この三元共重合体
としてＲhm Pharma社からEudragit RSの登録商標で市
販されているものが使用できる。Eudragit RSは分子量
約150,000のランダム共重合体であるが、本発明の三元
共重合体はそれに限定されるものではない。本発明の三
元共重合体は義歯安定剤の主成分として使用できる反
面、義歯安定剤に対する助剤、即ち、通常の義歯安定
剤、例えばポリ酢酸ビニルに添加して、その剥離性を向
上させる成分としても使用できる。この事実は実施例に
示したとおりであり、本発明の三元共重合体を幅広い添
加範囲で使用できるのである。

また、本発明の三元共重合体は口腔粘膜の調整剤として
も有用であることが見い出された。

本発明で使用する三元共重合体系樹脂を含む義歯用裏装
剤は人体に対して安全性の高い可塑剤（溶剤）、例えば
エタノール、グリセリン脂肪酸エステルで軟化させるこ
とができ、これにより義歯用裏装剤に柔軟性が付与さ
れ、容器よりの取り出しおよび義歯への塗布が容易とな
る。

本発明の義歯用裏装剤には炭酸カルシウム、タルクまた
はシリカのような水不溶性無機物を０〜20重量％、好ま
しくは５〜10重量％含むことができる。

さらに、本発明の義歯用裏装剤は各種防腐剤、例えばメ
チルパラベン、エチルパラベンなどを含むことができ
る。また、色素を添加してもよい。

次に、本発明の実施例を示すが、本発明の範囲はそれら
に限定されるものではない。

実施例１〜７および比較例１〜３ 表に示す処方をそれぞれ加熱下に撹拌し均一な半流動体
とし、これをチューブ容器に充填することにより義歯用
裏装剤を製造した。機能評価を６つの項目にわたり官能
試験により行った。表にその結果を総合評価とともに示
した。数値は重量％で示した。比較例として表に示した
成分を有する市販品（比較例１〜３）を掲げた。表中の
各機能評価の基準は下記の通りである。

◎……特に良好、○……良好 △……普通、×……不良 発明の効果 比較例１〜３の義歯用裏装剤は使用後の義歯から取り除
きが非常に困難であった。実施例１〜２の義歯用裏装剤
および実施例３〜７の義歯用裏装剤用剥離性向上剤の使
用後の剥離性は非常に良好であった。

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】アクリル酸低級アルキルとメタアクリル酸
   低級アルキルとメタアクリル酸塩化トリメチルアンモニ
   ウムエチルと構成成分とする三元共重合体を含む義歯用
   裏装剤。
2. 【請求項２】アクリル酸低級アルキルとメタアクリル酸
   低級アルキルとメタアクリル酸塩化トリメチルアンモニ
   ウムエチルとを構成成分とする三元共重合体を含む義歯
   安定剤。
3. 【請求項３】アクリル酸低級アルキルとメタアクリル酸
   低級アルキルとメタアクリル酸塩化トリメチルアンモニ
   ウムエチルとを構成成分とする三元共重合体からなる義
   歯用裏装剤用剥離性向上剤。