JPH07328857A - ウォータージェットピーニング装置およびウォータージェットピーニング法 - Google Patents

ウォータージェットピーニング装置およびウォータージェットピーニング法

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JPH07328857A
JPH07328857A JP12767294A JP12767294A JPH07328857A JP H07328857 A JPH07328857 A JP H07328857A JP 12767294 A JP12767294 A JP 12767294A JP 12767294 A JP12767294 A JP 12767294A JP H07328857 A JPH07328857 A JP H07328857A
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jet
water
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water jet
cavitation
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Application number
JP12767294A
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English (en)
Inventor
Kazunori Satou
一教 佐藤
Takenori Shindou
丈典 進藤
Koichi Kurosawa
孝一 黒沢
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Hitachi Ltd
Mitsubishi Power Ltd
Original Assignee
Babcock Hitachi KK
Hitachi Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 大気中の構造物において、キャビテーション
を利用するウォータージェットピーニング施工を可能に
する技術を提供する。 【構成】 ノズル本体101の先端に加工対象物112
の加工対象面に対し開口する噴流カバー107を設け、
容器内低速水流中に高速水を噴射し、人為的に水中水噴
流を作り出すようにする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高速キャビテーション
噴流を用いて、鋼材の残留応力を改善するウォータージ
ェットピーニング(WJP)技術に係わり、特に大気中
にある構造物にWJPを適用しょうとする場合のキャビ
テーションノズルの構造およびウォータージェットピー
ニング方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】応力腐食割れ(SCC)を起こすポテン
シャルのある熱影響部を有する既設構造物の表面応力
は、小さな鋼球を気流の勢いで吹きつけるショットブラ
スト、砂粒を用いるサンドブラスト、氷粒を用いるクラ
イオブラスト等によるピーニング(残留応力改善)処理
を行い、応力を引張方向(亀裂を拡大させる方向)から
圧縮方向へと改善する。
【0003】このようなピーニング技術は、残留応力対
策として各種機械構造物あるいは部品加工時に広く用い
られている。
【0004】図14に示すような構造のノズルを用いる
ウォータージェットの利用は、ユニークな加工、採鉱、
あるいは洗浄技術として知られている。
【0005】ここで、同図において、801はノズル本
体、802は高圧水、803は中心軸、804は高圧水
供給流路、805は径収縮部(しぼり部)、806は噴
出孔である。
【0006】これを表面応力改善に利用する試みが、特
開昭62−63614号公報にて提案されている。水噴
流によるピーニングは、水冷効果もあって、局所的な温
度上昇を防げ、つまり、金属組織に熱的なダメージを与
えないというメリットもある。
【0007】しかしながら、この噴流は、細いビーム状
であり、広い面積部分の大型構造物の溶接部のピーニン
グには向いていない。また、ビーム状の噴流の衝突部に
は、集中的に狭い部分に高い圧力が作用するため、表面
に損傷を受けるおそれがある。
【0008】これに対し、水中における高速水噴流に
は、激しいキャビテーションが発生するため、このキャ
ビテーション気泡の崩壊時に発生する衝撃的な圧力をピ
ーニングに有効利用できる。
【0009】図15は気相中水噴流と水中水噴流の場合
の、噴流軸方向距離と噴流軸上動圧力との関係を示す特
性図で、図中の曲線(a)は気相中水噴流、曲線(b)
は水中水噴流の場合の特性曲線である。
【0010】同図に示すように、水中では、気相中に比
べてキャビテーションが発生しないと仮定する場合に
は、噴流軸動圧力の減衰が速い。これは、水中の水で同
相であるが故に拡散が速く噴流が広がるからである。
【0011】しかしながら、キャビテーションによって
太い水中水噴流にも高い圧力が発生するようになる。大
気中にある構造物に、このようなキャビテーションを伴
う水中水噴流によるピーニングを適用しようとする場合
には、水を噴射するノズルに工夫が必要になる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】水中での高速水噴流に
発生する激しいキャビテーション現象を利用する水中構
造物のピーニング加工、即ち、WJP加工には多くのメ
リットがある。
【0013】この反面、水中の構造物のみを対象とする
ために用途が限られる。さほど大きくない部材であれ
ば、水槽内へ入れてWJPを施工することが可能である
が、溶接により、大型構造物として構成されている場合
には、大気中のWJP施工は不可能に近い。
【0014】このような場合には、加熱炉を用いる焼鈍
処理や、鋼球を衝突させる従来式のショットピーニング
を行わざるを得ない。
【0015】大気中の構造物に対しては、大気中の高速
水噴流を直接利用することも考えられるが、前述したよ
うに、噴流がビーム状にしぼられているため、構造物表
面上に壊食を起こしやすいという問題がある。
【0016】噴霧のように噴流を広げると、壊食の危険
はなくなるものの、噴流の衝突エネルギーは著し減衰し
てしまう。また、このような大気中水噴流の衝突による
場合は、衝突による高周波の騒音が発生し、作業者に不
快感を与えるため、作業環境上、好ましいとは言えな
い。また、大気中噴流では、水噴流を比較的高速で衝突
させるため、衝突によって飛沫が激しく飛び散る。
【0017】そのため、特殊なミストキャッチャーや水
処理設備が必要になる。さらに、キャビテーション噴流
を用いる場合に比べて、高い噴射圧力が必要になる。即
ち、より高性能の高圧ポンプを用いることになるため、
施工コストに関して不利になる。
【0018】このような問題に対し、人工的に局部的
(例えば、ノズルの先端)に「水中環境」を作り出し、
激しいキャビテーョンを伴う噴流が実現すれば、水中施
工と同様に、WJPの加工の効果を生み出すことが可能
になり、WJPの加工の用途も大幅に拡大すると考えら
れる。
【0019】本発明の目的は、このような観点のもとで
大気中の構造物において、キャビテーションを利用する
ウォータージェットピーニング施工を可能にする技術を
提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】キャビテーションを伴う
高速水噴流を、大気中における鋼材のピーニングや洗
浄、あるいは、はつりと言った各種表面処理作業に応用
するため、本発明においては、次のような手段を採用す
る。
【0021】キャビテーションを伴う高速水噴流を人為
的に実現するため、高速水噴流を、ノズルの先端に取り
付けたカップ型の容器(噴流カバー)内へ噴射するとと
もに、この容器内へは、別の給水系統から低速の水流を
供給するようにする。
【0022】このようにすれば、容器内の低速水流中へ
高速水噴流が噴射されることになり、大気中において
も、ノズルのごく先端部において水中高速水噴流が作り
出されることになる。
【0023】この噴流カバーの先端は開口しており、そ
の開口端が加工対象面と僅かな隙間を残すようにしてノ
ズルを位置決めする。この隙間からは、加工に関与した
高速水噴流と低速水流との混じり合った水が噴出する。
高速水噴流が噴出するノズル噴出孔の出口と加工対象面
間の距離、いわゆるスタンドオフ(Stand−of
f)距離x(s)は、加工効率をできるだけ保ち、さら
にエロージョン等の表面損傷が生じないように適正な条
件に保たれる。
【0024】従って、上記した噴流カバーの長さは、こ
の最適スタンドオフ距離を基に選定される。この最適ス
タンドオフ距離xは、高速水噴流の噴出孔直径をD
(j)とした場合、下記の条件に存在する。
【0025】80<x(s)/D(j)<130 噴流カバーの長さは、このスタンドオフ距離の条件より
も、加工対象物との隙間に相当する分のみ幾分短めに設
定すればよい。
【0026】なお、高速水噴流を噴射する噴出孔を多数
設けるマルチノズルの場合、噴流カバーの中へは、特に
低速水流の供給を必要としない。つまり、マルチノズル
の先端に噴流カバーを装着させるのみでよい。これは噴
流カバー内に大量の水が供給されて内部に水が十分に充
満し、水中の高速水噴流が実現するからである。
【0027】
【作用】ノズルの先端に取り付けた噴流カバーの水流
(これが、いわゆる「周囲」水流となる)中に、高速水
噴流が噴射されると、噴流カバー内において激しいキャ
ビテーションを伴う水噴流が作り出される。
【0028】この水噴流は、加工対象物の表面に衝突
し、夥しい数のキャビテーション気泡の崩壊によって、
加工対象物の表面に衝撃パルスが高頻度で発生する。こ
の衝撃パルスの繰り返し作用は、ショット(鋼球)を用
いるショットピーニングと同様の効果があり、加工対象
物表層の結晶粒は潰れて塑性変形し、表層の応力状態は
引張方向から圧縮方向へと改善される。噴流カバー内を
流れる低速の周囲水流と、加工対象物へ衝突した水噴流
は、噴流カバー先端と加工対象物の隙間から、放射状に
大気中へ放出される。
【0029】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明
する。
【0030】図1は、本発明を具体化したキャビテーシ
ョンジェットノズルの一例を示すものであり、大気中に
おいて人為的に水中水噴流を作り出すノズルの構造を断
面図として示したものである。
【0031】高圧水102を噴射するノズル本体101
には、高圧水供給流路103、径収縮部(しぼり部)1
05および噴出孔106が、ノズル中心軸104上に連
接して開口しており、高圧水102が噴出孔106から
噴射されるようになっている。
【0032】ノズル本体101の先端には、その径が噴
出孔106の内径よりも十分に大きくした円錐形の噴流
カバー107が設置されている。この噴流カバー107
における内径D(c)は、噴出孔106の径D(j)の
少なくとも10倍以上とし、噴流に発生したキャビテー
ションが噴流カバー107の内壁に衝突しないようにす
る。
【0033】この噴流カバー107内へは、高圧水10
2とは別系統で導かれた低圧力の周囲水110が供給さ
れる。この周囲水110は、噴流カバー107内におい
て噴出孔106から噴射される水噴流に対する周囲水1
10となる。
【0034】このようにして、噴流カバー107内の周
囲水110内に、高圧水102が噴出孔106から噴射
され、ノズルの先端において水中水噴流が実現される。
噴流カバー107とノズル本体101の接続部における
噴流カバー107の形状は、広がり角度が大きい略円錐
体となっている。
【0035】略円錐体の側面には、周囲水を導く周囲水
供給アダプタ108が接続している。この略円錐体に接
続する噴流カバー107の本体は、広がり角(片振り)
θ(f)の小さな略円錐体(円筒形に近い)である。な
お、この噴流カバー107の本体形状は、円筒形であっ
てもよい。
【0036】スタンドオフ距離、即ち、噴出孔106の
出口と加工対象物112の表面間の距離x(s)は、噴
出孔106の内径をD(j)として、 80<x(s)/D(j)<130 の範囲になるよう設定する。噴出孔106の内径が1m
mであれば、スタンドオフ距離x(s)を、80〜13
0mmになるように選定すればよい。
【0037】この条件を基に、噴流カバー107の噴流
軸方向の長さを選定する。噴流カバー107の出口先端
と加工対象物112の表面間の距離、即ち、隙間111
の長さδ(c)は施工条件にもよるが、1〜3mmにな
るように設定する。
【0038】隙間111の長さδ(c)が小さ過ぎる
と、噴流カバー107内の水圧が上昇して、噴流カバー
107の中にキャビテーション噴流をうまく作り出せな
くなる。
【0039】一方、隙間の長さδ(c)が大き過ぎる
と、充満させるべきはずの水が噴流カバー107から流
出してしまい、噴流カバー107に空洞部が生じて、こ
の場合もキャビテーション噴流を実現できなくなる。な
お、図中の109は周囲水供給管、113は例えば大気
などの気相雰囲気、Q1 は高圧噴射水量、Q2 は周囲水
水量である。
【0040】図2は、キャビテーションジェットノズル
の他の実施例を示すものである。
【0041】この場合には、ノズル本体121に複数個
の噴出孔124が開口しており、ここから高圧水122
が噴射される。ノズル本体121には、噴流カバー12
7が取り付けられている。
【0042】この実施例では、図1に示す実施例とは異
なり、低圧の周囲水を噴流カバー127内へは供給しな
い。複数個開口した噴出孔124から大量の高圧水12
2が噴射されるために噴流カバー127の先端と加工対
象物129の表面とが離れ過ぎない限り、つまり、隙間
128の長さδ(c)が大き過ぎない限り、噴流カバー
127内には水が充満し、いわゆる「周囲水」としての
環境が整う。
【0043】このようにして、噴流カバー127内の周
囲水中に、噴出孔124から複数個の高速水噴流が噴射
され、それぞれが激しいキャビテーションを伴う水中水
噴流となる。
【0044】この実施例は、比較的大型の鋼材のピーニ
ング施工に適している。噴流カバー127の本体の広が
り角度(片振り)θ(f)は、図1の実施例よりも大き
く設定している。また、この角度θ(f)は、θ(f)
>θ(n)+7°とし、噴出孔124のひろがり角度θ
(n)よりも幾分大きめとしている。θ(n)=10°
とする場合には、θ(f)を18〜22°程度とすれば
よい。
【0045】この実施例においても、スタンドオフ距離
x(s)の設定基準は、図1に示す実施例のそれと同じ
である。
【0046】なお、図2において、123は高圧水供給
流路、125はノズル本体の中心軸、126は噴出孔の
中心軸、130は気相雰囲気(例えば、大気)である。
【0047】図3は、図1に示した実施例における水の
供給系統を示したものである。
【0048】貯水槽205内の使用水206は、低圧ポ
ンプ212と高圧ポンプ208から汲み上げられ、それ
ぞれ周囲水および高圧噴射水用として、噴流カバー20
1とノズル本体200へ送給される。
【0049】それぞれの水量は、ポンプの回転数等の設
定および吐出圧調整機構209と213により制御され
る。ピーニング施工用の使用水206からは、フィルタ
で固形異物をできるだけ除去するようにする。これは、
高圧ポンプ208の加圧部におけるシール機構やノズル
の噴出孔に傷をつけることになるからである。
【0050】なお、図3において、202はキャビテー
ションを伴う水中水噴流、203は加工対象物、204
は跳ね返り噴流、207は吸水ライン、210は高圧水
供給ライン、211は吸水ライン、214は低圧水供給
ラインである。
【0051】図4は、本発明を具体化したキャビテーシ
ョンジェットノズルにおける現象を模式的に示したもの
である。
【0052】例として、図1に構造を示すノズルをとり
上げる。噴流カバー303内へ、低圧水である周囲水3
05が、周囲水供給管304を通じて導かれ、噴流カバ
ー303内には水が充満する。この周囲水305の中
へ、ノズル本体301の中央に開口する噴出孔から高圧
水302が高速で噴射されると、激しいキャビテーショ
ンを伴う水中水噴流306が生成する。噴流カバー30
3の内壁と激しいキャビテーションを伴う水中水噴流3
06の間には、循環渦流307が生じる。
【0053】この循環渦流307には、水中水噴流30
6に乱れを与えると同時に、水中の気泡核を再循環させ
る作用があり、水中水噴流306に生じるキャビテーシ
ョンは十分に発達し、材料に対して強い影響力を及ぼす
ようになる。
【0054】このようにして、大気中の環境にノズルを
置きながらも、ノズルのごく先端において激しいキャビ
テーションを伴う水中水噴流306が実現する。
【0055】激しいキャビテーションを伴う水中水噴流
306が加工対象面308に衝突すると、夥しい数のキ
ャビテーション気泡が崩壊し、衝撃圧力が発生する。こ
の衝撃圧力の作用により、加工対象面308の表層の結
晶粒は押しつぶされるようにして塑性変形し、表層の残
留応力は引張方向から圧縮方向へと改善されることにな
る。
【0056】このようにして、ピーニング作用の終了し
た水(この水は周囲水305と激しきキャビテーション
を伴う水中水噴流306の混合したもの)は、噴流カバ
ー303と加工対象面308の隙間310から、跳ね返
り噴流309として放出される。
【0057】図5、図6は、噴流カバー401と加工対
象物405の隙間406から水が放出される状態を示す
一例を示すものである。
【0058】略円筒形の噴流カバー401の円周方向に
対し、噴流カバー401の先端部と加工対象物405の
間に形成される隙間406はほぼ一定であり、円周方向
に対して略一様にピーニング後の跳ね返り噴流404が
吹き出すようになっている。加工対象物405が、この
図に示したように、鉛直面である場合、重力の作用によ
り、跳ね返り噴流404は下方へやや偏る傾向がある。
【0059】なお、図5、図6において、402は高圧
水、403は周囲水である。
【0060】図7、図8に示す例は、噴流カバー501
から吹き出す跳ね返り噴流を人為的に下方へ放出させよ
うとしたものであり、噴流カバー501の先端部を図7
に示すように斜めに切断している。
【0061】噴流カバー501の先端において、隙間を
拡大した部分504からは、水が大量に放出される(5
06)。
【0062】一方、隙間を狭くした部分505から放出
される水量(507)は少なく、ノズルから上方へ吹き
出す水の影響は相対的に小さくなっている。このように
すれば、ピーニング施工中に下方へ流出する水を、吸引
ダクト等を通じて選択的に回収することも可能になる。
なお、図中の502は高圧水、503は周囲水、508
は加工対象物である。
【0063】次に、以上のような作用により、ノズル先
端に取り付けた円筒容器型の噴流カバー内に生じる水中
水噴流の衝撃圧特性について、感圧フィルム法と衝突壊
食法により調べた結果を述べる。
【0064】図9は、無次元化したスタンドオフ距離x
(s)/D(j)〔x(s)はノズル先端と加工対象面
との距離であるスタンドオフ距離、D(j)はノズルの
噴出孔径〕に対する衝撃圧、Pshの変形パターンを示
す例である。
【0065】ここでの衝撃圧Pshは図10に示すよう
に、キャビテーション噴流623と平行に感圧フィルム
624を設置することにより測定したものである。噴流
の中心軸625と感圧フィルム624間の距離は5mm
である。スタンドオフ距離方向、即ち、噴流の軸方向に
沿って噴流の空間衝撃圧は2つのピークを有する分布と
なる。
【0066】ノズル621に近い第1ピークでは、ピー
クの形状が尖っており、スタンドオフ距離の範囲も狭
い。これに対して、下流にある衝撃圧の第2ピークで
は、幅広いスタンドオフ距離にわたり、ピークの形状も
なだらかなものとなっている。
【0067】なお、図10において、図中の622は高
圧水、626は周囲水、627は噴流カバーである。
【0068】図11は、材料の壊食特性を、壊食による
質量損失Δmを無次元化したスタンドオフ距離x/Dと
の関係でまとめ、質量損失のパターンとして表したもの
である。
【0069】この実験は図12に示すように、大気中に
おいてキャビテーション噴流644を連続的に試験片6
45に衝突させることにより行った。質量損失Δmは、
ノズルの噴出孔から離れるに従い急速に増加し、x≦2
5でピークに達した後は急激に減少する。
【0070】質量損失Δmがピークに達するスタンドオ
フ距離x/Dは、感圧フィルム624により測定した衝
撃圧分布(図9)における第1ピーク相当のx/Dに近
い。
【0071】一方、図9の衝撃圧分布において明瞭にあ
らわれた第2ピークは、Δm〜x/Dの壊食曲線には存
在しない。
【0072】従って、水中の水噴流において、第1ピー
クを利用した場合には、激しい壊食を起こす危険性があ
るのに対し、第2ピークの場合には、壊食を起こすこと
なく噴流の衝撃圧を有効に利用できることになる。要す
るに、残留応力改善等のピーニング加工では、第2ピー
クのスタンドオフ距離を利用すればよい。
【0073】このようにして、ピーニング加工に最適な
スタンドオフ距離が設定され、図1および図2に構造を
示した〔これらの図において、スタンドオフ距離はx
(s)と表記してある〕噴流カバー107あるいは12
7の軸方向長さが決定される。最適なスタンドオフ距離
x(s)と噴流カバー107,127の軸方向長さが決
まれば、噴流カバー107,127の出口先端と加工対
象物間の距離、つまり隙間の長さδ(c)も決まってく
る。
【0074】図13は、本発明に係る大気中のピーニン
グ法による施工前後の残留応力を比較し、ピーニングに
よる効果を確認した例を示すものである。
【0075】ピーニング施工前における引張方向残留応
力のレベルを無次元化した数字を−1とし、これを基準
として残留応力の値を表した。
【0076】施工前には引張方向であった残留応力が、
ピーニング施工後には圧縮方向に改善されたことが分か
る。
【0077】以上のように、本発明を具体化することに
より、大気中において鋼材の残留応力を大幅に改善でき
ることが明らかになった。
【0078】本発明によって、大気中においてキャビテ
ーションを利用するピーニングが可能になることで、応
用範囲が大幅に拡大する。
【0079】一般に、表面応力改善にあたっては、熱を
加えない、つまり金属組織の変態を伴わない低温処理の
方が格段に好ましい。この点からも本発明の実用化は有
利であり、ボイラの耐圧部材の表面応力改善へも応用す
ることができる。
【0080】この他、本発明は、表面洗浄、付着物除去
(デスケーリング)、表面仕上げ加工(ポリシング)あ
るいは水中掘孔(サブマージド・ドリリング)等へも応
用することが可能である。
【0081】
【発明の効果】本発明による効果をまとめると次のよう
になる。
【0082】(1)水中の高速水噴流に発生する激しい
キャビテーション現象を利用するピーニング加工が、大
気中あるいは特殊気体雰囲気中においても可能になる。
従って、通常の大気下にある様々な溶接構造物の残留応
力を、水中におけるウォータージェットピーニング施工
と同等に良好に改善できるようになる。つまり、ウォー
タージェットを利用するピーニング加工の用途が拡大す
ることになる。
【0083】(2)上記効果(1)と関連するが、大気
中の作業となるために、施工時の作業能率が著しく向上
する。施工時間が短縮し、また作業工数も低減するた
め、大幅に施工コストを削減することができる。また、
特別な水槽も不要になる。
【0084】(3)ノズルの先端において、カップ型容
器を設けて小さな水中環境を作り出すために、ノズルか
らの噴出音や加工対象物へ衝突する際に生じる騒音のレ
ベルを、大気中におけるウォータージェット利用時に比
べて著し低減することができる。このことは、作業環境
の改善に寄与するものである。
【0085】(4)加工対象物へ衝突する噴流からの飛
沫の生成が、大気中におけるウォータージェット利用時
と比較して大幅に減少する。従って、特殊なミストキャ
ッチャーが不要になり、加工時の廃水処理法も容易にな
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例に係るキャビテーション
ジェットノズルの断面図である。
【図2】本発明の第2の実施例に係るキャビテーション
ジェットノズルの断面図である。
【図3】第1の実施例におけるキャビテーションジェッ
トノズル水の供給系統を示す構成図である。
【図4】第1の実施例におけるキャビテーションジェッ
トノズルの現象を示す模式図である。
【図5】キャビテーションジェットノズルの噴流カバー
と加工対象物の隙間から水が放出される様子を示す正面
図である。
【図6】キャビテーションジェットノズルの噴流カバー
と加工対象物の隙間から水が放出される様子を示す側面
図である。
【図7】噴流カバーから吹き出す跳ね返り噴流を人為的
に下方へ放出させる様子を示す正面図である。
【図8】噴流カバーから吹き出す跳ね返り噴流を人為的
に下方へ放出させる様子を示す側面図である。
【図9】本発明のベースとなる基礎実験結果を示す特性
図である。
【図10】本発明のベースとなる基礎実験結果を示す模
式図である。
【図11】本発明のベースとなる基礎実験結果を示す特
性図である。
【図12】本発明のベースとなる基礎実験結果を示す模
式図である。
【図13】本発明の効果を実証した試験結果を示す特性
図である。
【図14】従来のキャビテーションジェットノズルの断
面図である。
【図15】従来技術の問題点を示す特性図である。
【符号の説明】
101 ノズル本体 102 高圧水 103 高圧水供給流路 104 ノズル中心軸 105 径収縮部 106 噴出孔 107 噴流カバー 108 周囲水供給アダプター 109 周囲水供給管 110 周囲水 111 隙間 112 加工対象物 113 気相雰囲気
フロントページの続き (72)発明者 黒沢 孝一 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式会 社日立製作所日立工場内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水中においてキャビテーションを伴う高
    速水噴流を衝突させることにより加工対象部材の残留応
    力を除去あるいは改善するウォータージェットピーニン
    グ装置において、 前記高速水噴流を噴射するノズル本体の噴出孔の先端
    に、高速水噴流を覆い囲む噴流カバーを設けたキャビテ
    ーションジェットノズルを備えることを特徴とするウォ
    ータージェットピーニング装置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載において、前記ノズル本体
    の噴出孔先端から加工対象面までのスタンドオフ距離を
    x(s)とした時、噴出孔内径D(j)を、80<x
    (s)/D(j)<130の関係を満たす値としたこと
    を特徴とするウォータージェットピーニング装置。
  3. 【請求項3】 請求項1記載において、噴流カバーの最
    小内径を、ノズルにおける高速水噴流の噴出孔内径D
    (j)の少なくとも10倍以上になるよう構成したこと
    を特徴とするウォータージェットピーニング装置。
  4. 【請求項4】 請求項1記載において、前記噴流カバー
    が略円錐形をしており、その噴流カバーのひろがり角度
    をθ(f)、ノズル本体の中心軸に対する噴出孔の半振
    り広がり角度をθ(n)とした時、θ(f)>θ(n)
    +7°になるように構成したことを特徴とするウォータ
    ージェットピーニング装置。
  5. 【請求項5】 請求項1記載において、前記噴流カバー
    に低速水流供給流路を接続し、その供給流路から供給す
    る低速水流によって噴流カバー内に水を充満させること
    を特徴とするウォータージェットピーニング装置。
  6. 【請求項6】 水中においてキャビテーションを伴う高
    速水噴流を衝突させることにより加工対象部材の残留応
    力を除去あるいは改善するウォータージェットピーニン
    グ法において、 高速水噴流を噴射するノズル本体の噴出孔の先端に、高
    速水噴流を覆い囲む噴流カバーを設け、その噴流カバー
    内に水を充填するとともに、噴流カバー先端と鋼材加工
    対象面との間に水流を排出させる隙間を設け、噴流カバ
    ー内充満水流中に高速水噴流を噴射してノズルの先端に
    水中水噴流を形成し、この水中水噴流を鋼材加工対象面
    に衝突させることを特徴とするウォータージェットピー
    ニング法。
  7. 【請求項7】 請求項6記載において、前記噴流カバー
    に低速水流供給流路を接続し、その供給流路から供給す
    る低速水流によって噴流カバー内に水を充満させること
    を特徴とするウォータージェットピーニング法。
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