WJPによる構成部材の残留応力は、ノズルから噴射された高圧の水流が構成部材の表面に直接衝突したときの衝撃力によってだけ改善されるのではなく、噴射された水流に含まれた気泡が潰れて生じる衝撃波が構成部材に衝突することによってより大きく改善されるのである。
この構成部材の残留応力改善について、さらに詳細に説明する。水中に配置されたノズルから噴射される高圧の水流が、多数の気泡を含んでいる。気泡は、ノズルから噴射される高圧の水流に含まれているだけでなく、ノズルから水中に噴射された水流内でも発生する。水中に配置されたノズルから高圧の水流を噴射したとき、ノズルの周囲に存在する静止水とノズルから噴射された水流の境界に生じるせん断力によって多数の渦が発生し、これらの渦の近傍で局所的な圧力変動が起こる。このとき、局所的に負圧になった領域では気泡が発生する。
ノズルから噴射される時点で高圧の水流に含まれていた気泡、及び噴射後の水流内で発生した気泡は、負圧下で成長し、陽圧下で収縮する。陽圧がさらに増大したとき、発生した気泡が潰れる。気泡が潰れる際に、極めて大きな衝撃波を放出する。このような気泡の発生、成長・収縮、圧壊の過程をキャビテーションと呼んでいる。キャビテーションが発生すると大きな衝撃波が放出され、この衝撃波が構成部材に衝突することによって、構成部材の表面付近の引張残留応力が圧縮残留応力に改善される。
噴射された水流内で気泡が発生してから潰れるまでの状態を、図4に模式的に示している。水3内に配置されたノズル6にポンプ(図示せず)から高圧水38が供給される。高圧水38がノズル6の噴射口37から水中に噴射されたとき、水中に微小な気泡が多数発生して塊状となったキャビテーションクラウド39が発生する。発生した複数のキャビテーションクラウド39内で、一つ、または、数個の気泡が潰れたとき、数個の衝撃波が放出される。これらの衝撃波が構成部材の表面に繰り返し当たることによって、構成部材の表面付近に存在する残留応力が改善される。噴射された水流内で一つ、または、数個の気泡が潰れて衝撃波が発生するとき、その気泡の周囲に存在する多数の気泡が衝撃波によって押し流される。このため、押し流される気泡群が連なっている渦糸キャビテーション40が形成される。さらには、気泡が押し流されてしまったために気泡が消滅したかのように見えるスポット41が観察される。図4において、42は粗い気泡である。
構成部材の応力改善効果をもたらすのは、気泡が潰れて生じる衝撃波である。発明者らは、その応力改善効果が、ノズルから噴射される水流に含まれた気泡の数、及びその水流が噴射された水中に存在する気泡の数によってではなく、単位時間当たりの潰れた気泡の数(気泡が潰れる頻度)、すなわち、単位時間当たりの衝撃波の発生数(衝撃波の発生頻度)によって確認できることを見出した。発明者らは、特に、構成部材の表面からの位置(距離)ごとの、単位時間当たりの衝撃波の発生数を求めることによって、構成部材の表面付近での残留応力の改善度合いを精度良く把握することができることも、見出した。本発明は、これらの知見に基づいて成されたのである。
これらの知見に基づいて成された本発明の概念を、図5に示す一つの具体例を用いて説明する。ノズル6及び支持部材17が移動装置19に取り付けられ、2個のAEセンサ(衝撃波検出装置)16A,16Bがノズル6の軸方向に間隔を置いて設置される(図5(A)参照)。ノズル6及びAEセンサ16A,16Bが水中に配置され、WJP施工対象物である構成部材2も水中に配置される。ノズル6が構成部材2の、WJPを施工する表面に対向している。AEセンサ16Aが構成部材2の表面近くに配置され、AEセンサ16Bがノズル6の先端よりも構成部材2の表面から少し離れた位置に配置される。衝撃波変換板33A,33Bが、支持部材17に設けられ、AEセンサ16A,16Bのそれぞれの前面に接触して取り付けられる。衝撃波検出装置としては、AEセンサ以外に圧力センサ、加速度センサ及び水中マイクロホンを用いてもよい。
ノズル6から噴射された高圧の水流34に含まれた気泡35が潰れたとき、衝撃波36が発生する。この衝撃波36は、伝播経路43Aを経て衝撃波変換板33A内で音波に変えられてAEセンサ16Aに伝えられる。また、衝撃波36は、伝播経路43Bを経て衝撃波変換板33B内で音波に変えられてAEセンサ16Bに伝えられる。このようにして、AEセンサ16A,16Bがそれぞれ衝撃波を検出して衝撃波検出信号を出力する。
衝撃波36の水中での伝播速度をV(m/s)、音源の位置(気泡35が潰れた位置、すなわち、衝撃波36の発生位置)に近い位置に存在するセンサ(例えば、AEセンサ16A)のZ方向の座標値をz1(m)(図5(B)参照)、音源の位置から遠い位置に存在するセンサ(例えば、AEセンサ16B)のZ方向の座標値をz2(m)、近い位置に存在するAEセンサへの衝撃波の伝播時間をt(s)、遠い位置に存在するAEセンサにおける衝撃波の検出時間と近い位置に存在するAEセンサにおける衝撃波の検出時間の時間差をT1(s)とする。Z方向(ノズル6の軸方向)における衝撃波伝播経路の1次元近似モデルは、図5(B)のように表すことができ、音源から各衝撃波検出装置、例えば、AEセンサ16A,16Bまでの衝撃波の伝播時間は(1)式及び(2)式で表される。
V×t=(z0−z1) ……(1)
V×(t+T1)=(z2−z0) ……(2)
t(s)は実際には測定することができず、測定できるのは時間差T1(s)である。水中での衝撃波の伝播速度V(m/s)が既知である(例えば、水中音速1500(m/s))場合には、音源のZ方向の座標値(音源のZ方向での位置)z0(m)は、衝撃波の発生位置であり、(3)式により算出できる。
z0=(z1+z2)/2−V×T1/2 ……(3)
衝撃波の水中での伝播速度V(m/s)(水中での音速)が未知である場合には、3個の衝撃波検出装置、例えば、AEセンサ16A,16B及び16Cを設けることによって、衝撃波の発生位置を特定することができる。この場合における衝撃波の発生位置の特定を、図6を用いて説明する。AEセンサ16Cが支持部材17に設けられる。衝撃波変換板33Cが、支持部材17に設けられ、AEセンサ16Cの前面に接触して取り付けられる(図6(A)参照)。AEセンサ16Cは、水中に配置され、AEセンサBよりも構成部材2の表面から離れた位置に配置される。AEセンサ16A,16B及び16Cは、実質的に一直線上に配置される。Z方向における座標値z0、z1及びz2は、Z方向、すなわち、構成部材2の表面に垂直な方向での、その表面からの距離を表わしている。
気泡35が潰れて発生した衝撃波36は、伝播経路43C及び衝撃波変換板33Cを経てAEセンサ16Cで検出される。衝撃波を最初に検出するセンサ(例えば、AEセンサ16A)のZ方向の座標値をz1、衝撃波を2番目に検出するセンサ(例えば、AEセンサ16B)のZ方向の座標値をz2、衝撃波を3番目に検出するセンサ(例えば、AEセンサ16C)のZ方向の座標値をz3とする(図6(B)参照)。Z方向における座標値z3も、構成部材2の表面に垂直な方向での、その表面からの距離を表わしている。衝撃波の音速をVz(m/s)、音源で発生した衝撃波が一番近いセンサで検出される時間をt(s)、音源の位置から2番目に近いセンサにおける衝撃波の検出時間と一番近いセンサにおける衝撃波の検出時間の時間差をT1(s)、音源の位置から最も遠いセンサにおける衝撃波の検出時間と一番近いセンサにおける衝撃波の検出時間の時間差をT2[s]とする。このときの衝撃波伝播経路の1次元近似モデルは図6(B)のように表すことができ、音源から各衝撃波検出装置、すなわち、AEセンサ16A,16B及び16Cまでの衝撃波の伝播時間は(4)式、(5)式及び(6)式で表される。
Vz×t=(z0−z1) ……(4)
Vz×(t+T1)=(z2−z0) ……(5)
Vz×(t+T2)=(z3−z0) ……(6)
t(s)は実際には測定できず、測定できるのは時間差T1(s)、T2(s)である。音源位置z0(m)及びZ方向に投影した衝撃波の伝播速度Vz[m/s]は、(7)式及び(8)式に基づいて算出することができる。
z0={z1+z2−T1×(z3−z2)/(T2−T1)}/2 ……(7)
Vz=(z3−z2)/(T2−T1) ……(8)
以上のようにして、WJP施工対象物である構成部材の表面からの音源の位置、すなわち、衝撃波の発生位置を求めることによって、WJP施工対象物である構成部材2の表面に垂直な方向における各位置での単位時間当たりの衝撃波の発生数(衝撃波の発生頻度)を求めることができる。例えば、構成部材2の表面に垂直な方向で、この表面とノズル6の先端までの間を所定幅で複数の区間に分割し、これらの区間ごとに衝撃波の発生頻度を求める。
図7及び図8は、いずれも、求められた衝撃波の発生位置に基づいて、構成部材2の表面に垂直な方向でその表面からの位置と衝撃波の発生頻度の関係を整理したものであり、構成部材2の表面に垂直な方向で、この表面とノズル6の先端までの間における衝撃波の発生頻度の分布を示している。図7及び図8では、構成部材2の表面に垂直な方向において構成部材2の表面とノズル6の間が、15の位置(区間)に分割されている。
図7に示された衝撃波発生頻度の分布例では、ノズル6に近い位置での発生頻度ピーク44、及び構成部材2の表面に近い位置での発生頻度ピーク45の、2つのピークが観察される。発生頻度ピーク45が生じる位置は構成部材2の表面に近く、この発生頻度ピーク45では衝撃波の発生頻度も大きい。このため、この衝撃波発生頻度の分布例では、噴射された水流34に含まれた気泡35が潰れて発生した衝撃波36が、構成部材2の表面に効率良く衝突しているので、構成部材2の表面付近に存在する残留応力が十分に改善されている。
図8に示された衝撃波発生頻度の分布例では、ノズル6に近い位置での発生頻度ピーク46が観察されるが、構成部材2の表面に近い位置では発生頻度ピークが観察されない。この衝撃波発生頻度の分布例では、発生頻度ピーク46の位置が構成部材2の表面から離れ過ぎているので、発生した各衝撃波のエネルギーが構成部材2の表面に衝突するまでの間に弱められ、構成部材2の表面付近に存在する残留応力の改善効果が期待できない。
図8に示すような、構成部材2の表面近くで衝撃波発生頻度が小さいという衝撃波発生頻度の分布が得られた場合には、(a)ノズル6を構成部材2の表面に近づけて、ノズル6と構成部材2との間の距離(スタンドオフという)を短くする、(b)ノズル6に供給する水の圧力を高くする(ノズル6から噴射される水流の圧力を高くする)、及び(c)ノズル6に供給する水の流量を増加させる(ノズル6から噴射される水流の流量を増加させる)の少なくともいずれかの操作を行い、WJPの施工条件を変更する必要がある。また、スタンドオフの変更、衝撃波の発生位置の算出、構成部材2の表面に垂直な方向における各位置での発生した衝撃波の計数、及び構成部材2の表面に垂直な方向での衝撃波発生頻度の分布の表示を繰り返すことによって、噴射された水流の圧力及び流量など噴射条件を一定にした場合でのスタンドオフの最適値を求めることができる。
本発明の実施例を以下に説明する。
本発明の好適な一実施例である実施例1のウォータージェットピーニング方法を、図1及び図2を用いて説明する。
本実施例のウォータージェットピーニング方法を説明する前に、本実施例に用いるウォータージェットピーニング装置(以下、WJP装置という)1を、図1を用いて説明する。WJP装置1は、ノズル6、水供給装置7、ノズル走査装置10、AEセンサ(衝撃波検出装置)16A,16B、信号処理装置20、ノズル走査制御装置27及びポンプ制御装置28を備えている。
ノズル走査装置10は、支柱11、移動装置12,14,19、第1アーム13及び第2アーム15を有する。支柱11が、基台32に取り付けられ、上下方向に伸びている。上下方向に移動する移動装置12が支柱11に移動可能に設けられる。水平方向でX方向に伸びる第1アーム13が移動装置12に設置されている。第1アーム13に沿ってX方向に移動する移動装置14が、第1アーム13に移動可能に設置されている。水平方向でX方向に直交するY方向に伸びる第2アーム15が移動装置14に取り付けられている。移動装置19が第2アーム15に移動可能に設置され、ノズル6が移動装置19に取り付けられる。基台32は、水槽(容器)4が設置された床に設置される。
水供給装置7が、高圧ポンプ5、給水ホース8及び高圧ホース9を有する。給水ホース8が水槽4の底部付近に取り付けられ、高圧ポンプ5に接続される。高圧ホース9が、高圧ポンプ5及びノズル6に接続される。
信号処理装置20は、A/D変換器21、時間差算出装置22、位置算出装置23、衝撃波計数装置24及び表示情報作成装置25を有する。時間差算出装置22がA/D変換器21及び位置算出装置23に接続される。位置算出装置23に接続された衝撃波計数装置24が表示情報作成装置25に接続される。表示情報作成装置25には、A/D変換器21及び表示装置25が接続される。
衝撃波検出装置であるAEセンサ16A,16Bが、移動装置19に取り付けられて下方に向って伸びる支持部材17に設置されている。AEセンサ16Bがノズル6の軸方向においてノズル6の先端付近に配置され、AEセンサ16Aはその軸方向においてノズル6の先端から遠ざかる位置に配置される。衝撃波変換板33A,33Bが、支持部材17に設けられ、AEセンサ16A,16Bのそれぞれの前面に接触して取り付けられる。増幅器18A,18Bが移動装置19に取り付けられている。AEセンサ16Aが増幅器18Aに接続され、AEセンサ16Bが増幅器18Bに接続される。増幅器18A,18BがA/D変換器21に接続される。
操作盤29がノズル走査制御装置27及びポンプ制御装置28に接続される。表示装置26が操作盤29に設けられる。ノズル走査制御装置27が移動装置12,14及び19に接続され、ポンプ制御装置28が高圧ポンプ5に接続される。高圧ホース9に取り付けられた圧力計31及び流量計30がポンプ制御装置28に接続される。信号処理装置20及び表示装置26が操作盤29に設置される。
WJP装置1を用いて行う本実施例のウォータージェットピーニング方法を、説明する。本実施例のウォータージェットピーニング方法では、図2に示す各ステップの操作または処理が実施される。
水槽4内に水3が充填され、WJP施工対象物である構成部材2が、水槽4内の水3の中に設置される。この構成部材2は、プラント、例えば、建設される原子力プラントに設置される構成部材である。あるいは、構成部材2は運転を経験した原子力プラントの構成部材であり、この構成部材に対し、原子力プラントの管理区域内に位置する、水が満たされたプール内で、WJP装置1を用いてWJPを施工してもよい。図1では、構成部材2は模式的に簡略化した形状で示されている。
ノズルをWJPの開始位置に移動させる(ステップS1)。オペレータが、WJPを開始する位置情報、すなわち、ノズル6の噴射口の位置情報を操作盤29に入力する。ノズル6の位置情報は、X方向、Y方向、及びZ方向(上下方向)の各座標値で示される。ノズル走査制御装置27が、入力したこの位置情報に基づいて移動装置12,14及び19をそれぞれ駆動する。ノズル6の先端が、移動装置12の移動によってZ方向の座標値に、移動装置14の移動によってX方向の座標値に、移動装置19の移動によってY方向の座標値に位置決めされる。Z方向の座標値によって、ノズル6と構成部材2との間の距離、すなわち、スタンドオフが設定された距離に保持される。AEセンサ16Aが、水中で、AEセンサ16Bよりも構成部材2の近くに配置されている。
ノズル6がWJPの開始位置に設定された後、高圧ポンプを起動する(ステップS2)。オペレータの操作により、ポンプ起動信号が操作盤29からポンプ制御装置28に入力される。このとき、ポンプ制御装置28が高圧ポンプ5を起動する。高圧ポンプ5は初期値の運転条件で運転される。高圧ポンプ5の起動によって水槽4内の水3が給水ホース8を通して高圧ポンプ5に導かれる。ポンプ制御装置28は、圧力計31及び流量計30のそれぞれの計測値に基づいて、高圧ポンプ5から吐出される水の圧力及び流量を制御する。
高圧ポンプ5から吐出された水3は、初期値の圧力及び流量で、高圧ホース9を通してノズル6に供給され、ノズル6から高圧の水流34となって水槽4内の水中に噴射される。噴射された水流34内の気泡35が水中で潰れることにより衝撃波36が発生する。この衝撃波36は、構成部材2に衝突すると共に、AEセンサ16A,16Bによって検出される。
衝撃波36を検出したAEセンサ16A,16Bから出力された各衝撃波検出信号が、増幅器18A,18Bで増幅された後、A/D変換器21に入力される。A/D変換器21は、アナログ信号である各衝撃波検出信号をデジタル信号に変換し、時間差算出装置22及び表示情報作成装置25に出力する。表示情報作成装置25は、各衝撃波検出信号に基づいてAEセンサ16A,16Bごとの衝撃波検出信号表示情報を作成する。これらの衝撃波検出信号表示情報が表示装置26の表示部38に表示される(図3参照)。図3において、「16A」がAEセンサ16Aから出力された衝撃波検出信号を、「16B」がAEセンサ16Bから出力された衝撃波検出信号を示している。これらの衝撃波検出信号において、不定期に発生している波高の大きい鋭い波形が、気泡35が潰れた際に発生した衝撃波36を表わしている。表示情報作成装置25は、A/D変換器21から出力された各衝撃波検出信号を、信号処理装置20の記憶装置(図示せず)に記憶させる。
衝撃波の発生位置が算出され、衝撃波がカウントされる(ステップS3)。時間差算出装置22は、入力した各衝撃波検出信号に基づいて、AEセンサ16Bにおけるある衝撃波の検出時間とAEセンサ16Aにおけるこの衝撃波の検出時間との時間差T1を算出する。位置算出装置23は、(3)式に、その時間差T1、AEセンサ16AのZ方向の座標値z1(m)、AEセンサ16BのZ方向の座標値z2(m)及び水中での衝撃波の伝播速度V(m/s)(例えば、水中音速1500(m/s)を代入して、衝撃波の発生位置z0を算出する。座標値z1(m)、座標値z2(m)及び水中での衝撃波の伝播速度V(m/s)は、既知の値である。座標値z1(m)及びz2(m)は、オペレータがステップS1において操作盤29から入力したノズル6の噴射口のZ方向の座標値を基に特定できる。衝撃波の発生位置は、発生した全ての衝撃波に対して求められる。
衝撃波計数装置24は、構成部材2のWJPを施工する表面に垂直な方向で、この表面からノズル6の先端までの間を所定幅で分割して設定されたそれぞれの位置(区間)ごとに、位置算出装置23で算出された各衝撃波の発生位置の情報を用いて、衝撃波の発生数をそれぞれカウントする。上記の所定幅は、例えば、10mmであり、各位置は構成部材2のWJPを施工する表面から10mmごとに設定される。それぞれの位置に対して得られた単位時間当たりの各衝撃波の発生数(各衝撃波の発生頻度)が衝撃波計数装置24から表示情報作成装置25に入力される。衝撃波の発生位置の測定幅を10mmとしているが、WJPの適正なスタンドオフの範囲の裕度が広いので、10mm程度の調整幅があっても十分な応力改善効果を達成できる。
表示情報作成装置25は、構成部材2のWJPを施工する表面に垂直な方向でのそれぞれの位置ごとに衝撃波発生頻度を表わした表示情報を作成する。この表示情報は、構成部材2の表面に垂直な方向での衝撃波発生頻度の分布を示しており、表示装置26の表示部39に表示される。表示情報作成装置25は、各衝撃波の発生位置の情報、それぞれの位置に対する衝撃波の発生頻度、及び衝撃波発生頻度の分布の情報を、上記の記憶装置に記憶させる。
WJP施工対象物に対する残留応力の改善効果があるかを判定する(ステップS4)。オペレータは、表示装置26の表示部39に表示された情報(構成部材2の表面に垂直な方向での衝撃波発生頻度の分布)を見ることによって、構成部材2に存在している引張残留応力が圧縮残留応力に改善されているかを判定することができる。表示部39に表示された衝撃波発生頻度の分布が図7に示す分布を有するときには、ステップS4の判定が、「Yes」、すなわち、「残留応力の改善効果が充分にある」となる。図7に示す分布は、構成部材2の近くに衝撃波発生頻度のピーク45が存在し、発生頻度ピーク45における衝撃波発生頻度が大きくなっている。その衝撃波発生頻度の分布がノズル6に近い位置で衝撃波発生頻度のピーク46が存在する図8に示す分布になっているときには、ステップS4の判定が、「No」、すなわち、「残留応力の改善効果が不充分である」となる。
スタンドオフの変更の確認が終了したかを判定する(ステップS5)。オペレータが、スタンドオフの変更の確認が終了したかを判定する。この判定が「No」であるとき、スタンドオフが変更される(ステップS6)。オペレータが、スタンドオフを変更する、例えば、スタンドオフを短くするために、操作盤29から変更したZ方向の座標値を入力する。ノズル走査制御装置27が、このZ方向の座標値に基づいて移動装置12を下降させ、ノズル6の先端がZ方向の所定位置に位置決めされる。
その後、ノズル6から水流34が噴射され、信号処理装置20でステップS3の処理が実行される。ステップS4の判定が「No」でステップS5の判定が「Yes」であるときは、オペレータが、スタンドオフの変更だけでは残留応力の改善効果が生じる条件が見つからないと判断したことになる。このときには、高圧ポンプの運転条件を変更する(ステップS7)。オペレータは、操作盤29を操作して高圧ポンプ5の運転条件(高圧ポンプ5の吐出圧力の設定値(または吐出流量の設定値))を変更する。例えば、吐出圧力(または吐出流量)の設定値が増加される。ポンプ制御装置28は変更された運転条件に基づいて高圧ポンプ5を制御する。高圧ポンプ5で圧力等が増加された水がノズル6から噴射される。ステップS3の処理が実行され、ステップS4の判定が「Yes」になったとき、WJP施工の準備が完了する。
ステップS4の判定が「Yes」になったとき、ノズルの走査を開始する(ステップS8)。ノズル6を設定された方向に走査する。この走査は、オペレータが操作盤29にノズル走査開始位置(以下、走査開始位置という)、走査方向(X方向またはY方向)及びノズル走査終了位置(以下、走査終了位置という)を入力することによって行われる。ノズル走査制御装置27が、操作盤29からこれらの情報を入力したとき、該当する移動装置(移動装置14または移動装置19)に対して走査開始信号を出力する。例えば、オペレータが操作盤29に入力した走査方向がX方向であるとき、移動装置14が第1アーム13に沿って移動し、ノズル6をX方向における走査開始位置から走査終了位置まで移動させる。
ノズル走査制御装置27から出力された走査開始信号はポンプ制御装置28にも入力される。ポンプ制御装置28は走査開始信号に基づいて高圧ポンプ5を駆動する。このため、移動装置14の移動によりノズル6がX方向に移動している間、ノズル6から高圧の水流34が構成部材2に向って噴射される。ノズル6がX方向に移動している間、噴出された水流34内の気泡35が潰れて発生する衝撃波36が、順次、構成部材2の表面に当てられる。ノズル6の移動が構成部材2に存在してX方向に伸びている1つの溶接部に沿って行われるので、その衝撃波36によって、溶接部及びこれの熱影響部の表面付近に存在している引張残留応力が圧縮残留応力に改善される。
AEセンサ16A,16Bも、ノズル6と共にX方向に移動する。AEセンサ16A,16Bは、移動しながら、衝撃波36をそれぞれ検出して衝撃波検出信号を出力する。これらの衝撃波検出信号は、前述したように、増幅器18A,18Bで増幅された後、A/D変換器21に入力される。表示情報作成装置25は、A/D変換器21から出力された各衝撃波検出信号のデジタル信号に基づいてAEセンサ16A,16Bごとの衝撃波検出信号表示情報を作成する。これらの衝撃波検出信号表示情報が表示装置26の表示部38に表示される(図3参照)。
さらに、水流34を噴射しているノズル6が移動されている間、衝撃波の発生位置が算出され、衝撃波がカウントされる(ステップS9)。ステップS9の処理は、信号処理装置20の時間差算出装置22、位置算出装置23、衝撃波計数装置24及び表示情報作成装置25で行われ、ステップS3の処理と同じである。表示情報作成装置25は、構成部材2の表面に垂直な方向でのそれぞれの位置ごとに衝撃波発生頻度を表わした表示情報を作成する。この表示情報は、表示装置26の表示部39に表示される。
ノズルが走査終了位置に到達したとき、ノズルの走査を停止する(ステップS10)。前述したX方向における走査終了位置にノズル6が到達したとき、ノズル走査制御装置27が移動装置14に停止信号を出力する。この停止信号の出力によって移動装置14が停止し、ノズル6のX方向における走査が終了する。ノズル走査制御装置27は、移動装置14に設けられたエンコーダ(図示せず)の出力信号を入力し、この出力信号に基づいてノズル6がX方向での走査終了位置に到達したと判定する。
WJP施工対象物に対する残留応力の改善効果があるかを判定する(ステップS11)。ステップS11の判定は、ステップS4の判定と同様に行われる。オペレータが、表示装置26の表示部39に表示された情報(構成部材2の表面に垂直な方向での衝撃波発生頻度の分布)を見ることによって、構造部材2に存在している引張残留応力が圧縮残留応力に改善されているかを判定する。ステップS11の判定が「Yes」になったとき、高圧ポンプ5が停止される(ステップS14)。オペレータが操作盤29から入力したポンプ停止指令に基づいて、ポンプ制御装置28が高圧ポンプ5を停止させる。これにより、構成部材2に形成された1つの溶接部に沿ったWJPの施工が終了する。
ステップS11の判定が「No」であるとき、スタンドオフ(または高圧ポンプの運転条件)を変更する(ステップS12)。オペレータは、操作盤29を操作してノズル6のZ方向の座標値(または高圧ポンプ5の運転条件(高圧ポンプ5の吐出圧力または吐出流量の設定値))を変更する。そして、ノズルの走査方向を逆方向に変更する(ステップS13)。オペレータは、操作盤26を操作して、ステップS8で設定した、ある方向(例えば、X方向)における走査終了位置を走査開始位置に、そして、ステップS8で設定した走査開始位置を走査終了位置に設定する。
その後、ステップS8の走査が行われる。ノズル走査制御装置27が、ステップS13で設定されたそれらの位置情報に基づいて、移動装置14が前回と逆の方向に移動させる。高圧の水流を噴射しているノズル6が、ステップS13で設定した走査開始位置から走査終了位置まで移動される。ノズル6が走査終了位置に到達したとき、ノズル6の走査を停止する(ステップS10)。オペレータは、表示装置26の表示部39に表示された衝撃波発生頻度の分布を見て、ステップS11の判定を行う。この判定が「Yes」であるとき、ステップS14の操作で、上記したように、高圧ポンプ5が停止される。
構成部材2において、X方向に他の溶接部が存在する場合、及びY方向にも溶接部が存在する場合には、ステップS8でそれぞれの溶接部及び熱影響部に対して、順番に走査開始位置及び走査終了位置を設定し、WJPを順次施工する。構成部材2に存在する全ての溶接部等に対するWJPの施工が終了したとき、構成部材2に対するWJPの施工が終了する。
本実施例は、ノズル6から高圧の水流34を噴射してこの水流34内の気泡35が潰れて発生する衝撃波36を構成部材2の表面に当てて構成部材2にWJPを施工している間、AEセンサ16A,16Bが衝撃波36を検出する。衝撃波36は、潰れた気泡35から発生し、潰れなかった気泡35からは発生しない。したがって、本実施例において、AEセンサ16A,16Bは、衝撃波36を発生した気泡35、すなわち、WJP施工に貢献した気泡35を検出することになる。AEセンサ16A,16Bは潰れなかった気泡35を検出しない。WJP施工に貢献した、潰れた気泡35を検出することによって、構成部材2の残留応力の改善度合いをより精度良く把握することができる。
特に、本実施例は、AEセンサ16A及び16Bのそれぞれにおける衝撃波36の検出時間の時間差T1に基づいて、構成部材2のWJPを施工する表面に垂直な方向における各衝撃波36の発生位置を求め、さらに、その垂直な方向で、この表面からノズル6の先端までの間を分割して設定されたそれぞれの位置ごとに、各衝撃波の発生位置の情報を用いて、衝撃波の発生数をそれぞれカウントしている。このため、その垂直な方向に設定されたそれぞれの位置ごとに、衝撃波36の発生頻度を得ることができ、その垂直な方向における衝撃波の発生頻度の分布を把握できる。したがって、衝撃波発生頻度のピークが生じる、その垂直な方向における位置、及びこのピークの位置での衝撃波の発生頻度に基づいて、構成部材2に存在する残留応力の改善効果をさらに精度良く把握することができる。衝撃波発生頻度のピークの位置が構成部材2の近くに存在し、このピークの位置での衝撃波発生頻度が発生頻度の設定値以上になっていれば、構成部材2において残留応力の改善効果があることになる。
本実施例は、構成部材2に存在する残留応力の改善効果をより精度良く把握することができるので、その改善効果が不十分であるときには、スタンドオフまたは高圧ポンプ5の運転条件を変更して、直ちにWJPの再施工を行うことができる。
本実施例は、ノズル6を、水流34を噴射しながら走査している間でも、構成部材2におけるWJPの施工効果をより精度良く確認することができる。
本実施例では、AEセンサ16A,16Bが、ノズル6ではなく、移動装置19に設けられた支持部材17に取り付けられている。このため、AEセンサ16A,16Bによる、ノズル6の噴射口を通過する気泡を含んだ高圧水の流動振動に基づいた弾性波の検出が、著しく抑制される。これも、WJP施工対象物における残留応力の改善効果をさらに精度良く確認できることに貢献する。
特に、構成部材2の表面に垂直な方向での衝撃波発生頻度の分布の情報を表示装置21に表示するので、オペレータがWJP施工対象物における残留応力の改善効果を容易に把握することができる。
本実施例は、衝撃波発生頻度に基づいてWJP施工対象物における残留応力の改善効果を精度良く確認することができるので、残留応力の改善効果を確認するための評価のマージンを小さくすることができる。このため、そのマージンを小さくできる分、ノズル6に高圧水を供給する高圧ポンプ5の容量を小さくすることができる。
高圧ポンプ5の容量を小さくしない場合には、そのマージンを小さくできる分、ノズル6の移動速度を速くすることができる。このため、WJPの施工時間をさらに短縮することができる。
ノズル走査制御装置27及びポンプ制御装置28を1つの制御装置にしてもよい。AEセンサ16A,16Bをそれぞれ圧力センサ、加速度センサ及び水中マイクロホンのいずれかに替えてもよい。
本発明の他の実施例である実施例2のウォータージェットピーニング方法を、図9、図10及び図11を用いて説明する。
本実施例のウォータージェットピーニング方法を説明する前に、本実施例に用いるWJP装置1Aを、図9を用いて説明する。WJP装置1Aは、実施例1で用いられるWJP装置1において信号処理装置20を信号処理装置20Aに替え、高圧ポンプ5及びノズル走査装置10の制御を自動化している。本実施例では、実施例1で用いられたノズル走査制御装置27及びポンプ制御装置28を統合した1つの制御装置47が設けられており、3つのAEセンサ及び3つの増幅器が設けられている。WJP装置1Aの他の構成は、WJP装置1と同じである。
WJP装置1Aにおいて、WJP装置1と異なる構成について説明する。信号処理装置20Aは、実施例1で用いられる信号処理装置20にピーク位置算出装置48を付加した構成を有する。ピーク位置算出装置48が、衝撃波計数装置24及び表示情報作成装置25に接続される。信号処理装置20Aの記憶装置49が、A/D変換器21、位置算出装置23、衝撃波計数装置24、ピーク位置算出装置48及び表示情報作成装置25に接続される。
支持部材17には、AEセンサ16A,16B,16Cが取り付けられる。支持部材17に設けられた衝撃波変換板33Cが、AEセンサ16Cの前面に接触して取り付けられる。AEセンサ16A,16B,16Cが移動装置19に設けられた増幅器18A,18B,18Cに別々に接続され、増幅器18A,18B,18CがA/D変換器21に接続される。
制御装置47は、操作盤29及び記憶装置49に接続される。この制御装置47は、高圧ポンプ5、移動装置12,14及び19、流量計30及び圧力計31にも接続されている。制御装置47は、高圧ポンプ5の運転条件を変更するしきい値(以下、運転条件変更しきい値という)、残留応力の改善効果を判定するしきい値(以下、改善効果判定しきい値という)、及びスタンドオフの最大値、最小値及び変更ピッチを、予め、制御装置47の記憶装置(図示せず)に記憶している。これらの値は、オペレータにより操作盤29から制御装置47に入力される。運転条件変更しきい値及び改善効果判定しきい値は、制御装置47から記憶装置49にも記憶される。
本実施例のウォータージェットピーニング方法では、制御装置47が、図10及び図11に記載されたステップS1、S2、S6〜S8,S10,S14,S16〜S19及びS21〜S26の各ステップの制御または判定を実行する。WJP装置1Aを用いて行う本実施例のウォータージェットピーニング方法を、図10及び図11に記載された各ステップに基づいて説明する。
原子力プラントの構成部材2が、水3を充填した水槽4内に設置されて水中に配置されている。この構成部材2は、プラント、例えば、建設される原子力プラントに設置される構成部材である。また、運転を経験した原子力プラントの構成部材2に対し、原子力プラントの管理区域内に位置する、水が満たされたプール内で、WJP装置1を用いてWJPを施工してもよい。ステップS1の制御が行われる前に、オペレータは、水槽4内に設置された構成部材2に形成された、X方向(またはY方向)に伸びる複数の溶接部について、走査開始位置及び走査終了位置を予め操作盤29に入力する。入力されたこれらの走査開始位置及び走査終了位置の各情報は、制御装置47の記憶装置に記憶される。
構成部材2に形成された、例えば、X方向に伸びるある溶接部に対してWJPが施工されることを想定して、説明する。制御装置47は、オペレータが操作盤29に入力したWJP開始指令を入力したとき、ステップS1の制御を開始する。ステップS1の制御により、移動装置12,14及び19が駆動され、ノズル6の噴射口が、X方向に伸びるその溶接部に対する、WJP開始位置に位置決めされる。このとき、ノズル6の先端が、スタンドオフの最小値になるように、構成部材2のWJPを施工する表面から離されている。
制御装置47がステップS2の制御を実行する。高圧ポンプ5が駆動し、ノズル6から高圧の水流34が噴射される。水流34に含まれた各気泡35が潰れて発生する各衝撃波36が、AEセンサ16A,16B,16Cによってそれぞれ検出される。
ノズル6から高圧の水流34が噴射された後、信号処理装置20Aによって、監視指標の値を算出する(ステップS15)。本実施例における監視指標は衝撃波発生頻度のピーク位置であり、本実施例における運転条件変更しきい値及び改善効果判定しきい値はそれぞれ衝撃波発生頻度のピーク位置に対するしきい値である。ステップS15の処理内容を、以下に具体的に説明する。
衝撃波36を検出したAEセンサ16A,16B,16Cから出力された各衝撃波検出信号が、増幅器18A,18B,18Cで増幅された後、A/D変換器21に入力される。A/D変換器21は、アナログ信号の各衝撃波検出信号をデジタル信号に変換し、デジタル信号に変換された各衝撃波検出信号を表示情報作成装置25に出力する。表示情報作成装置25は、各衝撃波検出信号に基づいてAEセンサ16A,16B,16Cごとの衝撃波検出信号表示情報を作成する。これらの衝撃波検出信号表示情報が表示装置26に表示される(図12参照)。図12において、「16A」がAEセンサ16Aから出力された衝撃波検出信号であり、「16B」がAEセンサ16Bから出力された衝撃波検出信号であり、「16C」がAEセンサ16Cから出力された衝撃波検出信号である。これらの衝撃波検出信号において、不定期に発生している波高の大きい鋭い波形が、気泡35が潰れた際に発生した衝撃波36を表わしている。A/D変換器21から出力された、デジタル信号に変換された各衝撃波検出信号が記憶装置49に記憶される。
図13は、図12に示された波高の大きい鋭い波形の部分を、横軸(時間軸)を拡大して表わしている。図13に示された波形50aは、1つの衝撃波36を検出した際にAEセンサ16Aから出力された衝撃波検出信号に含まれている。波形50bは、同じ1つの衝撃波36を検出した際にAEセンサ16Bから出力された衝撃波検出信号に含まれている。波形50cは、同じ1つの衝撃波36を検出した際にAEセンサ16Cから出力された衝撃波検出信号に含まれている。波形50a,50b,50cの検出時間に時間差が生じているので、後述するように、その1つの衝撃波36の発生位置を特定できる。
時間差算出装置22は、A/D変換器21から出力された各衝撃波検出信号に基づいて、AEセンサ16Bにおけるある衝撃波の検出時間とAEセンサ16Aにおけるこの衝撃波の検出時間との時間差T1(波形50bと波形50aの間の時間差)、及びAEセンサ16Cにおけるその衝撃波の検出時間とAEセンサ16Aにおけるその衝撃波の検出時間との時間差T2(波形50cと波形50aの間の時間差)を算出する。位置算出装置23は、(7)式に、これらの時間差T1,T2、AEセンサ16AのZ方向の座標値z1(m)、AEセンサ16BのZ方向の座標値z2(m)、及びAEセンサ16CのZ方向の座標値z3(m)を代入して、衝撃波の発生位置z0を算出する。水中での衝撃波の伝播速度Vzは、(8)式に時間差T1,T2及び座標値z2,z3を代入することによって求めることができる。
衝撃波計数装置24は、構成部材2のWJPを施工する表面に垂直な方向において設定されたそれぞれの位置(区間)ごとに、位置算出装置23で算出された各衝撃波の発生位置の情報を用いて、衝撃波の発生数をそれぞれカウントする。ピーク位置算出装置48は、衝撃波計数装置24で得られた、設定されたそれぞれの位置での単位時間当たりの各衝撃波の発生数(各衝撃波の発生頻度)に基づいて、衝撃波の発生頻度が極大になる位置(以下、ピーク位置という)を求める。位置算出装置23で算出された衝撃波の発生位置、衝撃波計数装置24で得られた、設定されたそれぞれの位置での衝撃波の発生頻度、及びピーク位置算出装置48で得られた少なくとも1つの、衝撃波の発生頻度がピークになる位置の各情報が、記憶装置49に記憶される。
表示情報作成装置25は、記憶装置49から取り込んだ、設定されたそれぞれの位置での衝撃波の発生頻度、運転条件変更しきい値及び改善効果判定しきい値、及びピーク位置算出装置48で得られたピーク位置の各情報に基づいて、構成部材2のWJPを施工する表面に垂直な方向における衝撃波発生頻度の分布の表示情報を作成する。この表示情報が、表示装置26に表示されると共に記憶装置49に記憶される。表示装置26に表示された表示情報の例が、図14及び図15に示されている。これらの表示情報の例には、運転条件変更しきい値51及び改善効果判定しきい値52が含まれている。本実施例で用いられる運転条件変更しきい値51及び改善効果判定しきい値52は、監視指標である衝撃波発生頻度のピーク位置に対するものである。さらに、図14及び図15に示された各表示情報の例は、53A,53B及び53Cで示された衝撃波発生頻度のピーク位置の表示記号を含んでいる。オペレータは、表示装置26に表示された情報を見ることによって、構成部材2における残留応力の改善効果を把握することができる。
ステップS2によるノズル6からの水流34の噴射が、所定時間、継続された後、制御装置47は、スタンドオフが最大であるかを判定する(ステップS16)。この判定が「No」であるとき、スタンドオフが、1ピッチ分、増加される(ステップS6)。制御装置47が、記憶しているスタンドオフの変更ピッチに基づいて、1ピッチ増加指令を移動装置12に対して出力する。移動装置12が1ピッチ増加指令に基づいて移動され、ノズル6の先端が、変更ピッチ1つ分だけ構成部材2の表面から離される。スタンドオフが最大値になるまで、ノズル6の先端が構成部材2の表面から間欠的に離される。ノズル6の先端が構成部材2の表面から離されるたびに、信号処理装置20AでステップS15の処理が行われる。A/D変換器21、位置算出装置23、衝撃波計数装置24及びピーク位置算出装置48で得られた各情報が、スタンドオフの値と対応付けて記憶装置49に記憶される。
ステップS16の判定が「Yes」であるとき、監視指標の値が最も望ましい値になったときのスタンドオフを検索する(ステップS17)。監視指標の最も望ましい値とは、本実施例では、構成部材2の表面に最も近くに存在する衝撃波発生頻度のピーク位置である。制御装置47が、最も望ましい監視指標の値、すなわち、最も望ましい衝撃波発生頻度のピーク位置(構成部材2の表面に最も近くに存在する衝撃波発生頻度のピーク位置)に対応するスタンドオフ(最適なスタンドオフ)を記憶装置49から検索する。最も望ましい監視指標の値が運転条件変更しきい値以下であるかを判定する(ステップS18)。制御装置47において、ピーク位置算出装置48で得られた衝撃波発生頻度のピーク位置が、運転条件変更しきい値以下であるかが判定される。この判定結果が「No」であるときには、「応力改善効果は充分に上がっているが、このままの条件で噴射を継続すると応力改善効果が不充分な状態に推移する可能性がある」と判定され、高圧ポンプの運転条件が変更される(ステップS7)。制御装置47が、高圧ポンプ5の運転条件(高圧ポンプ5の吐出圧力(または吐出流量の設定値))の設定値を変更する。この設定値の変更は、例えば、記憶装置49に記憶されている吐出圧力の1ピッチ上昇分に基づいて現在の吐出圧力の設定値に1ピッチ上昇分を加算することによって行われ、1ピッチ上昇分が加算された値が新しい設定値になる。その後、ステップS15の処理が行われ、ステップS16の判定が「Yes」になったとき、ステップS17及びS18が実行される。
ステップS18の判定が「Yes」になったとき、検索されたスタンドオフに基づいて、ノズルの位置決めを行う(ステップS19)。制御装置47が、検索されたスタンドオフに基づいて移動装置12を制御し、検索されたスタンドオフだけ構成部材2の表面から離れるように、ノズル6先端の位置決めを行う。その後、ノズルの走査を開始する(ステップS8)。ノズル6先端の位置決めが終了した後、制御装置47は、例えば、X方向に伸びる溶接部に対してWJPを施工するために、走査開始信号を移動装置14に出力する。移動装置14が第1アーム13に沿って移動し、ノズル6を走査開始位置から走査終了位置まで移動させる。制御装置47は、その走査開始信号を高圧ポンプ5にも出力し、高圧ポンプ5を駆動する。このため、構成部材2に向って水流34を噴射しながらノズル6がX方向に移動される。ノズル6がX方向に移動している間、噴出された水流34内の気泡35が潰れて発生する衝撃波36が、順次、構成部材2の溶接部の表面に当てられる。その衝撃波36によって、溶接部及びこれの熱影響部の表面付近に存在している引張残留応力が圧縮残留応力に改善される。
ノズル6と共に移動しているAEセンサ16A,16B,16Cは、水3の中を伝播するそれらの衝撃波29をそれぞれ検出し、複数の衝撃波検出信号を出力する。具体的には、AEセンサ16Aが、衝撃波36の衝突により衝撃波変換板33A内で発生した音波を検出して衝撃波検出信号を出力する。AEセンサ16B,16Cでも同様にして衝撃波検出信号が出力される。
ノズル6が水流34を噴射しながら移動している間、信号処理装置20Aによって、監視指標の値を算出する(ステップS20)。ステップS20の処理は、ステップS15の処理と同じであるため、詳細な説明を省略する。AEセンサ16A,16B,16Cから出力された各衝撃波検出信号が、増幅器18A,18B,18Cで増幅された後、A/D変換器21に入力される。ここで、デジタル信号に変換された各衝撃波検出信号に基づいて、時間差算出装置22は、時間差T1、T2を算出する。位置算出装置23は、時間差T1、T2を用いてステップS15と同様に衝撃波の発生位置を算出する。衝撃波計数装置24は、構成部材2のWJPを施工する表面に垂直な方向において設定されたそれぞれの位置(区間)ごとに、算出された各衝撃波の発生位置の情報を用いて、衝撃波の発生数をそれぞれカウントする。ピーク位置算出装置48は、設定されたそれぞれの位置での各衝撃波の発生頻度に基づいて、衝撃波の発生頻度のピーク位置を求める。表示情報作成装置25は、ステップS15と同様に、衝撃波発生頻度の分布の表示情報を作成し、表示装置26に出力する。
監視指標の値が運転条件変更しきい値以下かを判定する(ステップS21)。ノズル6を、水流34を噴射しながら走査終了位置に向って移動している間、制御装置47が、記憶装置49から最新のピーク位置の値を読み取り、このピーク位置の値が運転条件変更しきい値以下であるかを判定する。例えば、記憶装置49から、図14に示すピーク位置53Aを取り込んだとき、ピーク位置53Aが運転条件変更しきい値よりも大きいので、ステップS21の判定が「No」となる。この場合には、監視指標の値が改善効果判定しきい値以下かを判定する(ステップS22)。制御装置47が行うステップS22の判定は、ピーク位置53Aが改善効果判定しきい値よりも大きいので、「No」になる。ノズルを走査開始位置に移動する(ステップS24)。ステップS22の判定が「No」になったときは、ノズル6の走査の過程で、構成部材2に残留応力の改善効果が不足している箇所がある、すなわち、引張残留応力が圧縮残留応力に充分に改善されていない箇所があることを示している。このため、ノズル6を、WJPを施工している溶接部に対する走査開始位置に戻す必要がある。制御装置47は、ステップS22の判定が「No」になったとき、移動装置14に戻し指令を出力する。この指令を入力した移動装置14が逆方向に移動し、ノズル6を該当する溶接部に対する走査開始位置まで戻す。ノズル6が走査開始位置に戻された後、ノズルの走査速度(または高圧ポンプの運転条件)を変更する(ステップS23)。制御装置47は移動装置14に減速指令を出力する。移動装置14は、減速指令に基づいてノズル6の走査速度が遅くなるように、移動する。このため、構成部材2に衝突する衝撃波の数が増大し、構成部材2に存在する残留応力の改善効果が増大する。制御装置47は、ノズル6の走査速度を減速させる替りに、高圧ポンプ5からの水の吐出圧力(または水の吐出流量)を増加させてもよい。これによっても、構成部材2の残留応力の改善効果が増大する。
ステップ24において、ノズル6を走査開始位置ではなく、ステップ22の判定が「No」になった時点の位置(衝撃波発生頻度のピーク位置が改善効果判定しきい値よりも大きくなった位置)よりも若干前の位置に、ノズル6を戻し、この位置からノズル6の走査速度を遅くしてWJPを再開してもよい。
ステップS22の判定が「Yes」の場合には、ステップ23の制御が制御装置47によって実行される。
ノズル6の走査速度が遅くなった状態で、信号処理装置20Aは、ステップS20の処理を実行する。制御装置47が、ステップS21の判定を行う際に、例えば、記憶装置49から、図15に示すピーク位置53B及び53Cを取り込んだとする。これらのピーク位置は、衝撃波の発生頻度が極大になっている位置である。ピーク位置が複数存在する場合には、構成部材2に最も近いピーク位置、すなわち、ピーク位置53Bが運転条件変更しきい値以下になっているとき、ステップS21の判定は「Yes」になる。このため、制御装置47でのステップS21の判定が「Yes」になる。運転条件変更しきい値以下の衝撃波のピーク位置が存在することは、構成部材2の表面近くで発生する衝撃波が多いことを意味し、構成部材2の残留応力の改善効果が大きいことを意味している。
ステップS21の判定が「Yes」であるとき、衝撃波の発生頻度が設定値以上であるかを判定する(ステップS25)。制御装置47において、記憶装置49に記憶されている、衝撃波発生頻度のピーク位置での衝撃波発生頻度が、設定値以上であるかを判定する。この設定値は、残留応力の改善効果を判定する衝撃波発生頻度の設定値(以下、衝撃波発生頻度の第2設定値という)よりも大きい、高圧ポンプ5の運転条件を変更する、衝撃波発生頻度の設定値(以下、衝撃波発生頻度の第1設定値という)である。衝撃波発生頻度のピーク位置での衝撃波発生頻度は、衝撃波計数装置24で、構成部材2の表面に垂直な方向において設定されたそれぞれの位置での衝撃波の発生数をカウントすることによって求められる。
ステップS25において、衝撃波発生頻度のピーク位置での衝撃波発生頻度の替りに、改善効果判定しきい値52の位置と構成部材2の表面との間で発生した衝撃波の発生頻度を用い、この衝撃波発生頻度を、これに対応する衝撃波発生頻度の第1設定値と比較してもよい。改善効果判定しきい値52の位置と構成部材2の表面との間で発生した衝撃波の発生頻度は、衝撃波計数装置24で、改善効果判定しきい値52の位置と構成部材2の表面との間で発生した衝撃波の発生数をカウントすることによって求められる。
図16に示すように、衝撃波発生頻度のピーク位置での衝撃波発生頻度55が衝撃波発生頻度の第1設定値56よりも小さくなったとき、ステップS25の判定が「No」になる。ステップS25の判定は、ノズル6が走査終了位置に向って移動している間、行われる。図16に示された57は、衝撃波発生頻度の第2設定値である。ステップS25の判定が「No」になったとき、「応力改善効果は充分に上がっているが、このままの条件で噴射を継続すると応力改善効果が不充分な状態に推移する可能性がある」と判定され、ステップS23の制御が行われ、移動装置14の移動速度を遅くする。この移動速度を遅くする替りに、高圧ポンプ5の吐出圧力(または吐出流量)を増加させてもよい。移動装置14の移動速度、すなわち、ノズル6の走査速度を遅くすることによって、ノズル6の単位移動距離当たりにおける衝撃波の発生数が増加し、実質的に、衝撃波の発生頻度が増大したことに相当する。
ステップS25の判定結果が「Yes」であるとき、制御装置47が、ノズルが走査終了位置に到達したかを判定する(ステップS26)。ステップS26の判定が「No」であるときにはノズル走査は継続中と判定され、制御装置47において、ステップS21以降の判定または制御が実行される。ノズルが走査終了位置に到達してステップS26の判定が「Yes」になったとき、ステップS10の制御が実行される。
ノズルが走査終了位置に到達したとき、ノズルの走査を停止する(ステップS10)。制御装置47は、移動装置14を移動させるモータ(図示せず)に設けられたエンコーダ(図示せず)からの出力信号に基づいて、ノズル6がX方向に伸びる1つの溶接部の走査終了位置に到達したと判定したとき、そのモータに駆動停止信号を出力して移動装置14の移動を停止し、ノズル6の走査を停止させる。
高圧ポンプが停止される(ステップS14)。制御装置47から出力された駆動停止信号が高圧ポンプ5に入力され、高圧ポンプ5が停止する。これによって、構成部材2のX方向に伸びる1つの溶接部に沿ったWJP施工が終了する。このWJP施工によって、その溶接部及びそれの熱影響部の表面付近に存在した引張残留応力が圧縮残留応力に改善されている。
構成部材2に他の溶接部が存在する場合には、以上に述べたように、その溶接部に対してWJPが施工される。
本実施例では、実施例1で生じる各効果を得ることができる。本実施例は、オペレータではなく制御装置47によって自動的にWJP装置1Aの各移動装置、及び高圧ポンプ5を制御できるので、WJP施工時におけるオペレータの負担が軽減される。さらに、本実施例では、構成部材2に存在する残留応力の改善効果をさらに精度良く把握することができるので、スタンドオフを少しずつ変化させて残留応力の改善効果をできる。このため、スタンドオフを最適なスタンドオフに設定してWJPを施工することができる。
本発明の他の実施例である実施例3のウォータージェットピーニング方法を、図17、図18、図19及び図20を用いて説明する。本実施例のウォータージェットピーニング方法は、例えば、沸騰水型原子力プラントの原子炉圧力容器内に設置された炉内構造物を対象に実施される。この炉内構造物は、例えば、炉心シュラウドである。
沸騰水型原子力プラントの原子炉付近の構造を、図17を用いて説明する。沸騰水型原子力プラントの原子炉75は、原子炉圧力容器(以下、RPVという)76、炉心シュラウド77、炉心支持板79、上部格子板80及びジェットポンプ81を備えている。炉心シュラウド77、炉心支持板79、上部格子板80及びジェットポンプ81は、RPV76内に設置される。炉心を取り囲む炉心シュラウド77内には、炉心の下端に位置する炉心支持板79が設置され、炉心の上端に位置する上部格子板80が設置される。複数のジェットポンプ81が、RPV76と炉心シュラウド77の間に形成される環状のダウンカマ82内に配置される。
本実施例のウォータージェットピーニング方法に用いられるWJP装置1Bは、実施例1で用いられるWJP装置1においてノズル走査装置10をノズル走査装置10Aに替えた構成を有する。WJP装置1Aの他の構成はWJP装置1と同じである。
ノズル走査装置10Aについて説明する。ノズル走査装置10Aは、図17、図18及び図19に示すように、移動装置58A,58B、ポスト部材62、昇降体63及びターンテーブル65を有する。ターンテーブル65が、炉心シュラウド5277の上部フランジ78の上面に設置された環状のガイドレール66に旋回可能に設置される。図示されていないが、ターンテーブル65には、ガイドレール66の上面に接触する複数の車輪が設けられる。少なくとも1つの車輪(図示せず)を回転させるモータ(図示せず)がターンテーブル65に設けられる。移動装置58A,58Bがターンテーブル65上に設置される。
同じ構成を有する移動装置58A,58Bを、移動装置58Aを例にとって説明する。移動装置58Aは、図19に示すように、装置本体59、2本のアーム60及びボールネジ72を有する。2本のアーム60が、装置本体59のケーシングを貫通しており、スライド可能にそのケーシングに取り付けられる。2本のアーム60の両端部が連結部材61A,61Bによって連結されている。装置本体59のケーシングを貫通するボールネジ72が、回転可能に連結部材61A,61Bに取り付けられる。装置本体59のケーシング内には、図示されていないが、モータが設置され、このモータの回転軸に取り付けられた歯車(図示せず)が、ボールネジ72に噛み合う歯車(図示せず)と噛み合っている。このモータの駆動によってそれらの歯車が回転し、ボールネジ72がRPV76の半径方向に移動する。RPV76の軸方向に伸びるポスト部材62が、連結部材61Bに取り付けられる。昇降体63が、ポスト部材62に沿って移動できるように、ポスト部材62に取り付けられる。昇降体63を上下動させるモータ64がポスト部材62の上端部に設けられる。
ノズル6、AEセンサ16A,16B及び監視カメラ67が昇降体63に設置される。
本実施例では、炉心シュラウド77の上端部の外面に対してWJPが施工される。本実施例では、炉心シュラウド77がWJP施工対象物である。沸騰水型原子力プラントの運転が停止された後、RPV76の上蓋が取り外され、RPV76内に設置されている蒸気乾燥器及び気水分離器が取り外されてRPV76の外に搬出される。これらの搬出は、RPV76が設置されている原子炉建屋内の天井クレーン(図示せず)を用いて行われる。これらの取り外し及び搬出作業を行うとき、RPV76の真上に位置する原子炉ウエル68内に、水3が充填されている。
ガイドレール66が、その天井クレーンを用いて上部フランジ78上まで移送され、上部フランジ78に設置される。移動装置58A,58Bが設置されたターンテーブル65が、天井クレーンによって搬送され、ガイドレール66上に設置される。昇降体63が取り付けられたポスト部材62が、ターンテーブル65の搬送前に、移動装置58A,58Bのそれぞれに設置されている。ターンテーブル65がガイドレール66に設置されたとき、移動装置58A,58Bのそれぞれに設けられたポスト部材62が、ダウンカマ82内に配置される。
高圧ポンプ5及び操作盤29が原子炉建屋内の運転床69の上に置かれ、信号処理装置20、ノズル走査制御装置27,ポンプ制御装置28及び表示装置26が操作盤29に設けられる。運転床69は原子炉ウエル68を取り囲んでいる。高圧ポンプ5に接続された2本の高圧ホース9が、移動装置58A,58Bにそれぞれ取り付けられ、移動装置58Aに設けられたノズル6及び移動装置58Bに設けられたノズル6に別々に接続されている。
移動装置58Aにおいて、防水対策が施された増幅器18A,18Bが昇降体63に設置されている(図20参照)。移動装置58Aの昇降体63に設けられたAEセンサ16A,16Bが、増幅器18A,18Bに別々に接続される。増幅器18A,18Bに別々に接続された2本の信号線70が、1つの信号処理装置20のA/D変換器21に接続される。この信号処理装置20の表示情報作成装置25が表示装置26に接続される。
移動装置58Bにおいても、防水対策が施された増幅器18A,18Bが昇降体63に設置されている。移動装置58Bの昇降体63に設けられたAEセンサ16A,16Bが、増幅器18A,18Bに別々に接続される。増幅器18A,18Bに別々に接続された2本の信号線70が、他の信号処理装置20のA/D変換器21に接続される。この信号処理装置20の表示情報作成装置25が他の表示装置26に接続される。
制御装置22に接続される制御信号線71が、移動装置58A,58Bのそれぞれに設けられたモータ64、装置本体59のケーシング内に設けられたモータ、及びターンテーブル65に設けられてターンテーブル65の車輪を回転させるモータにそれぞれ接続される。それぞれのモータにはエンコーダ(図示せず)が設けられ、各エンコーダは、モータによって移動される部材の移動距離、すなわち、その部材の移動後の位置を検出する。
本実施例のウォータージェットピーニング方法においても、実施例1と同様に、図2に示す各操作または処理等が実行される。炉心シュラウド77では、軸方向に伸びる溶接部が炉心シュラウド77の周方向に複数箇所存在し、周方向に伸びる溶接部が炉心シュラウド77の軸方向に複数箇所存在する。本実施例において、WJPはこれらの溶接部に沿って施工される。
例えば、炉心シュラウド77の周方向に伸びるある溶接部に沿ってWJPを施工するとする。ステップS1で、移動装置58A,58Bに設けられた各ノズル6をWJPの開始位置に移動させる。オペレータが、操作盤29から、炉心シュラウド77の周方向、軸方向及び半径方向のそれぞれの位置情報を入力する。制御装置22が、これらの位置情報に基づいてWJP装置1Aに設けられた3つのモータを駆動し、ノズル6を上記した1つの溶接部に対向するように指定された走査開始位置に位置決めする。移動装置58A,58Bの各装置本体59にそれぞれ設けられたモータの駆動によってボールネジ72が回転し、各ポスト部材62が炉心シュラウド77の半径方向に移動する。ポスト部材62のこの移動によって、ノズル6と炉心シュラウド77のWJP施工面である外面との間の距離、すなわち、スタンドオフが設定値にセットされる。モータ64の駆動によって昇降体63がポスト部材62沿って炉心シュラウド77の軸方向に移動し、ノズル6が炉心シュラウド77の軸方向の所定位置に位置決めされる。
その後、ステップS2の操作が実行される。高圧ポンプ5が駆動され、昇圧された高圧水が高圧ホース9を通して移動装置58A,58Bに設けられた各ノズル6に供給される。初期値の圧力及び流量で各ノズル6から高圧水が、上部格子板80付近で炉心シュラウド77の溶接部の外面に向って噴射される。噴射された水流に含まれた気泡35が潰れて発生した衝撃波36がAEセンサ16A,16Bで検出される。この衝撃波の検出によってAEセンサ16A,16Bからそれぞれ出力された衝撃波検出信号が、A/D変換器21に入力される。各信号処理装置20内で、実施例と同様に、ステップS3の処理が行われる。表示情報作成装置25で作成された、構成部材2の表面に垂直な方向でのそれぞれの位置ごとに衝撃波発生頻度を表わした表示情報が、表示装置26に表示される。
ステップS4の判定が、実施例1と同様に、オペレータによって行われる。ステップS4の判定が「No」であるとき、「残留応力の改善効果が不充分である」と判定し、ステップS5の判定が行われる。この判定が「No」であるとき、ステップS6のスタンドオフの変更が行われる。オペレータが、スタンドオフを変更する、すなわち、スタンドオフを短くするために、操作盤29から変更したRPV76の半径方向の座標値を入力する。ノズル走査制御装置27が、この半径方向の座標値に基づいて、装置本体59に設けられたモータを駆動させてボールネジ72を回転させる。これによって、ノズル6がRPV76の半径方向に移動され、ノズル6のその半径方向における位置決めが行われる。
ステップS5の判定が「Yes」であるとき、ステップS7において、高圧ポンプ5の吐出圧力(または吐出流量)が増加される。
ステップS3において、構成部材2のWJPを施工する表面に垂直な方向で設定されたそれぞれの位置(区間)ごとに、算出された各衝撃波の発生位置の情報を用いて、衝撃波の発生数をそれぞれカウントし、構成部材2の表面に垂直な方向での、衝撃波発生頻度の分布の表示情報を作成する。この表示情報が表示装置26に表示される。ステップS4の判定が「Yes」になったとき、ノズルの走査が開始される(ステップS8)。
移動装置58A,58Bに設けられた各ノズル6が、高圧の水流を噴射しながら、炉心シュラウド77の周方向に伸びるある溶接部に沿って移動する。この移動は、ノズル操作制御装置27による制御によって、ターンテーブル65をガイドレール66に沿って旋回させることによって行われる。この溶接部及び熱影響部に対するWJPが施工される。本実施例では、2つのノズル6が180°反対方向に位置しているので、各ノズル6が周方向に、例えば、190°移動したとき、ステップS10の操作が行われ、ノズル6の走査が停止される。ノズル6が炉心シュラウド77の周方向に走査されている間、ステップS9の処理が、各信号処理装置20で行われる。
ステップS9の処理で得られて表示装置26に表示された衝撃波発生頻度の分布の表示情報に基づいて、ステップS11の判定が行われる。ステップS11の判定が「No」であるとき、「残留応力の改善効果が不充分である」と判定され、ステップS12の制御が、オペレータによって操作盤29から変更されたスタンドオフ(または高圧ポンプ5の運転条件)に基づいて、ノズル走査制御装置27によって行われる。そして、ノズルの走査方向を逆方向に変更する(ステップS13)。オペレータが、操作盤29を操作して、ステップS8で設定した、ある方向(例えば、周方向)における走査終了位置を走査開始位置に、そして、ステップS8で設定した走査開始位置を走査終了位置に設定する。その後、ステップS8の走査が逆方向に向って行われる。ノズル6が走査終了位置に到達したとき、ノズル6の走査を停止する(ステップS10)。
炉心シュラウド52に周方向に形成された別の溶接部、炉心シュラウド52に軸方向に形成された溶接部に対しても、同様にWJPが施工される。
本実施例も、実施例1で生じた各効果を得ることができる。
本発明の他の実施例である実施例4のウォータージェットピーニング方法を、図21を用いて説明する。本実施例のウォータージェットピーニング方法は、例えば、沸騰水型原子力プラントのRPV内に設置された炉内構造物を対象に実施される。この炉内構造物は、例えば、炉心シュラウドである。
本実施例のウォータージェットピーニング方法に用いられるWJP装置1Cは、実施例3で用いられるWJP装置1Bにおいて信号処理装置20、ノズル走査制御装置27及びポンプ制御装置28を実施例2で用いられる信号処理装置20A及び制御装置47に替えた構成を有する。WJP装置1Cの他の構成はWJP装置1Bと同じである。制御装置47は、実施例2と同様に、図10及び図11に記載されたステップS1、S2、S6〜S8,S10,S14,S16〜S19及びS21〜S26の各ステップの制御または判定を実行する。
制御装置47は、実施例2と同様に、運転条件変更しきい値、改善効果判定しきい値、及びスタンドオフの最大値、最小値及び変更ピッチを、予め、制御装置47の記憶装置に記憶している。
本実施例のウォータージェットピーニング方法においても、実施例2と同様に、図10及び図11に示された各制御または処理等が実行される。本実施例では、WJPが炉心シュラウド77に形成された複数の溶接部に沿って施工される。例えば、炉心シュラウド77の周方向に伸びるある溶接部に沿ってWJPを施工する。
ステップS1において、制御装置47が、実施例3と同様に、移動装置58A,58Bをそれぞれ制御し、両移動装置に設けられた各ノズル6を所定の位置に位置決めする。ステップS2で、高圧ポンプ5が駆動され、それぞれのノズル6から高圧の水流34が噴射される。ステップS15において、実施例2と同様に、AEセンサ16A,16B,16Cがそれぞれ衝撃波36を検出し、各信号処理装置20Aで衝撃波の発生頻度のピーク位置等が求められる。ステップS16の判定、ステップS17の検索、ステップS18の判定、及びステップS6,S19の制御が、実施例2と同様に、制御装置47によって行われる。ステップS6及びS19の制御は、移動装置58A,58Bの各装置本体59にそれぞれ設けられたモータを駆動してボールネジ72を回転することによって行われる。
ステップS19の制御が実行された後、ノズルの走査を開始する(ステップS8)。周方向に伸びる1つの溶接部に対してWJPを施工するために、制御装置47が、走査開始信号をノズル走査装置10Aに出力する。この走査開始信号に基づいて、ターンテーブル65をガイドレール66に沿って旋回させる。2つのノズル6が、水流34を噴射しながら、周方向に伸びる1つの溶接部に沿って移動する。ノズル6が移動している間で、ステップS20において、ステップS15と同様に、信号処理装置20Aで衝撃波の発生頻度のピーク位置等が求められる。
制御装置47が、実施例2と同様に、ステップS21の判定を行い、ステップS21の判定が「No」であるとき、は、「応力改善効果は充分に上がっているが、このままの条件で噴射を継続すると応力改善効果が不充分な状態に推移する可能性がある」と判定し、ステップS22の判定を行う。本実施例での監視指標はピーク位置である。ステップS22の判定が「No」のとき、ノズル6の走査の過程で、構成部材に残留応力の改善効果が不足している箇所がある、すなわち、引張残留応力が充分に圧縮残留応力に改善されていない箇所があることを示している。このため、制御装置47により、実施例2と同様に、ターンテーブル65の駆動が制御され、ステップS24,S23の制御が行われる。ステップS21の判定が「Yes」のとき、ステップS25,S26の判定が行われる。ステップS26の判定が「Yes」のとき、ステップS10,S14の制御が実行され、1つの溶接部に対するWJPの施工が終了する。
炉心シュラウド52に周方向に形成された別の溶接部、炉心シュラウド52に軸方向に形成された溶接部に対しても、同様にWJPが施工される。
本実施例も、実施例3で生じた各効果を得ることができる。本実施例は、実施例2と同様に、最適なスタンドオフを選択してWJPを施工することができる。
実施例3及び4は、沸騰水型原子力プラントのRPV76内の他の炉内構造物に対するWJPの施工に適用することができる。
本発明の他の実施例である実施例5のウォータージェットピーニング方法を、図22を用いて説明する。本実施例のウォータージェットピーニング方法に用いるWJP装置1Dは、実施例2に用いられるWJP装置1Aにおいて信号処理装置20Aを図22に示す信号処理装置20Bに替えた構成を有する。WJP装置1Dの他の構成はWJP装置1Aの構成と同じである。信号処理装置20Bは、信号処理装置20Aのピーク位置算出装置48を平均値算出装置85に替えた構成を有する。信号処理装置20Bの他の構成は信号処理装置20Aの構成と同じである。平均値算出装置85は、衝撃波計数装置24、表示情報作成装置25及び記憶装置49に接続される。
本実施例のウォータージェットピーニング方法においても、図10及び図11に記載されたステップS1、S2、S6〜S8,S10,S14,S16〜S19及びS21〜S26の各ステップの制御または判定が制御装置47で実行され、ステップS15,S20の処理が信号処理装置20Bで実行される。制御装置47の制御により、実施例2と同様に、構成部材2に対してWJPが施工される。
本実施例のウォータージェットピーニング方法で、実施例2と異なる部分について説明する。平均値算出装置85は、衝撃波計数装置24で得られた、設定されたそれぞれの位置での単位時間当たりの各衝撃波の発生数(各衝撃波の発生頻度)に基づいて、衝撃波発生頻度の平均値を求める。この衝撃波発生頻度の平均値は、設定された全ての位置を対象とした平均値である。この平均値が記憶装置49に記憶される。
表示情報作成装置25は、記憶装置49から取り込んだ設定されたそれぞれの位置での衝撃波の発生頻度、運転条件変更しきい値及び改善効果判定しきい値、及び平均値算出装置85で得られた衝撃波発生頻度の平均値の各情報に基づいて、構成部材2のWJPを施工する表面に垂直な方向における衝撃波発生頻度の分布の表示情報を作成する。この表示情報が、表示装置26に表示されると共に記憶装置49に記憶される。表示装置26に表示された表示情報の例が、図23及び図24に示されている。これらの表示情報の例には、運転条件変更しきい値90及び改善効果判定しきい値91が含まれている。本実施例で用いられる運転条件変更しきい値90及び改善効果判定しきい値91は、衝撃波発生頻度の平均値に対するものである。さらに、図23及び図24に示された各表示情報の例は、92A及び92Bで示された衝撃波発生頻度の平均値の表示記号を含んでいる。
本実施例における監視指標は衝撃波発生頻度の平均値である。本実施例のステップS18,S21及びS22のそれぞれの判定は、記憶装置49から取り込んだ衝撃波発生頻度の平均値を用いて行われる。
本実施例は、実施例2で生じる各効果を得ることができる。
WJP装置1Cにおいて信号処理装置20Aを本実施例で用いた信号処理装置20Bに変えることも可能である。信号処理装置20Aが信号処理装置20Bに交換されたWJP装置1Cを用いて、実施例4のウォータージェットピーニング方法を実行してもよい。この場合には、実施例4で生じる効果を得ることができる。
本発明の他の実施例である実施例6のウォータージェットピーニング方法を、図25を用いて説明する。本実施例のウォータージェットピーニング方法に用いるWJP装置1Eは、実施例2に用いられるWJP装置1Aにおいて信号処理装置20Aを図25に示す信号処理装置20Cに替えた構成を有する。WJP装置1Eの他の構成はWJP装置1Aの構成と同じである。信号処理装置20Cは、信号処理装置20Aの衝撃波計数装置24を衝撃波計数装置24Aに替え、さらに、走査距離変換装置86を追加した構成を有する。信号処理装置20Cの他の構成は信号処理装置20Aの構成と同じである。衝撃波計数装置24Aは、走査距離変換装置86及び記憶装置49に接続される。走査距離変換装置86は、表示情報作成装置25及び記憶装置49に接続される。
本実施例のウォータージェットピーニング方法においても、図10及び図11に記載されたステップS1、S2、S6〜S8,S10,S14,S16〜S19及びS21〜S26の各ステップの制御または判定が制御装置47で実行され、ステップS15,S20の処理が信号処理装置20Cで実行される。制御装置47の制御により、実施例2と同様に、構成部材2に対してWJPが施工される。
本実施例のウォータージェットピーニング方法で、実施例2と異なる部分について説明する。衝撃波計数装置24Aは、実施例2と同様に、構成部材2の表面に垂直な方向において設定されたそれぞれの位置(区間)ごとに、各衝撃波の発生位置の情報を用いて、衝撃波の発生頻度を求める。さらに、衝撃波計数装置24Aは、設定されたそれぞれの位置(区間)ごとの衝撃波の発生頻度を用いて、しきい値93の位置と構成部材2の表面との間で発生する単位時間当たりの有効な衝撃波の発生頻度(以下、第1有効な衝撃波発生頻度という)を求める。第1有効な衝撃波の発生頻度が、記憶装置49に記憶され、走査距離変換装置86に入力される。走査距離変換装置86は、衝撃波計数装置24Aから出力された第1有効な衝撃波発生頻度をノズル6の単位走査距離当たりの有効な衝撃波発生頻度(以下、第2有効な衝撃波発生頻度という)に変換する。
オペレータは、WJPの施工前に、操作盤29に表示情報選択指令を入力する。この表示情報選択指令は操作盤29から表示情報作成装置25に入力される。表示情報作成指令は、(a)第1有効な衝撃波発生頻度を用いた表示情報の作成、及び(b)第2有効な衝撃波発生頻度を用いた表示情報の作成のいずれかである。
表示情報作成指令により、例えば、(a)の表示情報の作成が選択されたと仮定する。表示情報作成装置25は、記憶装置49から取り込んだ設定されたそれぞれの位置での単位時間当たりの衝撃波の発生頻度、しきい値93及び第1有効な衝撃波発生頻度の各情報に基づいて、構成部材2のWJPを施工する表面に垂直な方向における衝撃波発生頻度の分布の表示情報を作成する。この表示情報が、表示装置26に表示されると共に記憶装置49に記憶される。表示装置26に表示された表示情報の例が、図26及び図27に示されている。これらの表示情報の例には、しきい値93が含まれている。さらに、図26及び図27に示された各表示情報の例は、第1有効な衝撃波発生頻度の値を含んでいる。
図26及び図27において、しきい値93の位置より構造部材2の表面側の位置で発生した衝撃波は、構造部材2の残留応力の改善に貢献する有効な衝撃波である。また、しきい値93の位置よりノズル6側の位置で発生した衝撃波は、構造部材2の残留応力の改善にあまり貢献しない無効な衝撃波である。第1及び第2有効な衝撃波発生頻度は、残留応力の改善に貢献する有効な衝撃波の発生頻度である。しきい値93は、有効な衝撃波が生じる領域と無効な衝撃波が生じる領域の境界を実験等で確認することによって定める。
(b)の表示情報の作成が選択された場合には、図26及び図27の各表示情報の例において、横軸が単位走査距離当たりの衝撃波発生頻度になり、第2有効な衝撃波発生頻度の値が含まれる。
本実施例における監視指標は、(a)の表示情報の作成が選択されたとき、及び(b)の表示情報の作成が選択されたときで異なる。(a)が選択されたとき、監視指標は第1有効な衝撃波発生頻度であり、運転条件変更しきい値及び改善効果判定しきい値はそれぞれ第1有効な衝撃波発生頻度に対するものとなる。(b)が選択されたとき、監視指標は第2有効な衝撃波発生頻度であり、運転条件変更しきい値及び改善効果判定しきい値はそれぞれ第2有効な衝撃波発生頻度に対するものとなる。
(a)が選択されているので、本実施例のステップS18,S21及びS22のそれぞれの判定は、記憶装置49から取り込んだ第1有効な衝撃波発生頻度を用いて行われる。(b)が選択されたときには、本実施例のステップS18,S21及びS22のそれぞれの判定は、記憶装置49から取り込んだ第2有効な衝撃波発生頻度を用いて行われる。
本実施例は、実施例2で生じる各効果を得ることができる。単位走査距離当たりの有効な衝撃波発生頻度を用いた場合は、単位時間当たりの有効な衝撃波の発生頻度を用いた場合に比べて、WJP施工対象物における残留応力の改善効果をより精度良く確認することができる。
WJP装置1Cにおいて信号処理装置20Aを本実施例で用いた信号処理装置20Cに変えることも可能である。信号処理装置20Aが信号処理装置20Cに交換されたWJP装置1Cを用いて、実施例4のウォータージェットピーニング方法を実行してもよい。この場合には、実施例4で生じる効果を得ることができる。
本発明の他の実施例である実施例7のウォータージェットピーニング方法を、図28を用いて説明する。本実施例のウォータージェットピーニング方法に用いるWJP装置1Fは、実施例2に用いられるWJP装置1Aにおいて信号処理装置20Aを図28に示す信号処理装置20Dに替えた構成を有する。WJP装置1Fの他の構成はWJP装置1Aの構成と同じである。信号処理装置20Dは、信号処理装置20Aの衝撃波計数装置24を衝撃波計数装置24Bに替え、さらに、走査距離変換装置86を追加した構成を有する。信号処理装置20Cの他の構成は信号処理装置20Aの構成と同じである。衝撃波計数装置24Bは、走査距離変換装置86及び記憶装置49に接続される。走査距離変換装置86は、表示情報作成装置25及び記憶装置49に接続される。
本実施例のウォータージェットピーニング方法においても、図10及び図11に記載されたステップS1、S2、S6〜S8,S10,S14,S16〜S19及びS21〜S26の各ステップの制御または判定が制御装置47で実行され、ステップS15,S20の処理が信号処理装置20Dで実行される。制御装置47の制御により、実施例2と同様に、構成部材2に対してWJPが施工される。
本実施例のウォータージェットピーニング方法で、実施例2と異なる部分について説明する。衝撃波計数装置24Bは、実施例2と同様に、構成部材2の表面に垂直な方向において設定されたそれぞれの位置(区間)ごとに、各衝撃波の発生位置の情報を用いて、単位時間当たりの衝撃波の発生頻度を求める。さらに、衝撃波計数装置24Aは、設定されたそれぞれの位置ごとの、単位時間当たりの衝撃波の発生頻度を、構成部材2の表面からの距離に基づいて補正する。構成部材2の表面と設定された位置との間の距離をL、その設定された位置で発生した衝撃波の数をnとしたとき、その設定された位置における、単位時間当たりの補正衝撃波発生頻度(以下、第1補正衝撃波発生頻度という)SFは、n/L2で求められる。第1補正衝撃波発生頻度が、記憶装置49に記憶され、走査距離変換装置86に入力される。走査距離変換装置86は、衝撃波計数装置24Bから出力された第1補正衝撃波発生頻度をノズル6の単位走査距離当たりの補正衝撃波発生頻度(以下、第2補正衝撃波発生頻度という)に変換する。
本実施例でも、実施例6と同様に、表示情報選択指令は操作盤29から表示情報作成装置25に入力される。表示情報作成指令は、(c)第1補正衝撃波発生頻度を用いた表示情報の作成、及び(d)第2補正衝撃波発生頻度を用いた表示情報の作成のいずれかである。
表示情報作成指令により、例えば、(c)の表示情報の作成が選択されたと仮定する。表示情報作成装置25は、記憶装置49から取り込んだ設定されたそれぞれの位置での単位時間当たりの衝撃波の発生頻度、及び第1補正衝撃波発生頻度の各情報に基づいて、構成部材2のWJPを施工する表面に垂直な方向における衝撃波発生頻度の分布の表示情報を作成する。この表示情報が、表示装置26に表示されると共に記憶装置49に記憶される。表示装置26に表示された表示情報の例が、図29及び図30に示されている。図29及び図30に記載された表示情報の例では、横軸が単位時間当たりの補正衝撃波発生頻度になっている。図29では、94Aに構成部材表面からの距離L毎の補正衝撃波発生頻度が、95Aには全てのLを積算した場合の補正衝撃波発生頻度98Aが示されている。図30では、94Bに構成部材表面からの距離L毎の補正衝撃波発生頻度が、95Bには全てのLを積算した場合の補正衝撃波発生頻度98Bが示されている。また、95A,95Bの表示情報の例には、運転条件変更しきい値97及び改善効果判定しきい値98がそれぞれ含まれている。
本実施例における監視指標は、(c)の表示情報の作成が選択されたとき、及び(d)の表示情報の作成が選択されてときで異なる。(c)が選択されたとき、監視指標は第1補正衝撃波発生頻度であり、運転条件変更しきい値及び改善効果判定しきい値はそれぞれ第1補正衝撃波発生頻度に対するものとなる。(d)が選択されたとき、監視指標は第2補正衝撃波発生頻度であり、運転条件変更しきい値及び改善効果判定しきい値はそれぞれ第2補正な衝撃波発生頻度に対するものとなる。
(c)が選択されているので、本実施例のステップS18,S21及びS22のそれぞれの判定は、記憶装置49から取り込んだ第1補正衝撃波発生頻度を用いて行われる。(d)が選択されたときには、本実施例のステップS18,S21及びS22のそれぞれの判定は、記憶装置49から取り込んだ第2補正衝撃波発生頻度を用いて行われる。
本実施例は、実施例2で生じる各効果を得ることができる。単位走査距離当たりの補正衝撃波発生頻度を用いた場合は、単位時間当たりの補正衝撃波の発生頻度を用いた場合に比べて、WJP施工対象物における残留応力の改善効果をより精度良く確認することができる。
WJP装置1Cにおいて信号処理装置20Aを本実施例で用いた信号処理装置20Dに変えることも可能である。信号処理装置20Aが信号処理装置20Dに交換されたWJP装置1Cを用いて、実施例4のウォータージェットピーニング方法を実行してもよい。この場合には、実施例4で生じる効果を得ることができる。
本発明の他の実施例である実施例8のウォータージェットピーニング方法を、図31を用いて説明する。本実施例のウォータージェットピーニング方法に用いるWJP装置1Gは、実施例2に用いられるWJP装置1Aにおいて信号処理装置20Aを図31に示す信号処理装置20Eに替えた構成を有する。WJP装置1Gの他の構成はWJP装置1Aの構成と同じである。信号処理装置20Eは、信号処理装置20Aにおいて、衝撃波計数装置24及びピーク位置算出装置48を除去し、第1エネルギー算出装置87、第2エネルギー算出装置88及び走査距離変換装置86を追加した構成を有する。信号処理装置20Eの他の構成は信号処理装置20Aの構成と同じである。第1エネルギー算出装置87は、A/D変換器21及び第2エネルギー算出装置88に接続される。第2エネルギー算出装置88は、位置算出装置23、走査距離変換装置86及び記憶装置49に接続される。走査距離変換装置86は、表示情報作成装置25及び記憶装置49に接続される。
本実施例のウォータージェットピーニング方法においても、図10及び図11に記載されたステップS1、S2、S6〜S8,S10,S14,S16〜S19及びS21〜S26の各ステップの制御または判定が制御装置47で実行され、ステップS15,S20の処理が信号処理装置20Eで実行される。制御装置47の制御により、実施例2と同様に、構成部材2に対してWJPが施工される。
本実施例のウォータージェットピーニング方法で、実施例2と異なる部分について説明する。第1エネルギー算出装置87は、A/D変換器21から入力された、AEセンサ16A,16Bのそれぞれの衝撃波検出信号に基づいて、各衝撃波が持っているエネルギーを算出する。衝撃波のエネルギーの算出を図13に示す衝撃波検出信号を用いて具体的に説明する。AEセンサ16Aの出力である波形50a、及びAEセンサ16Bの出力である波形50bのそれぞれの高さが、衝撃波のエネルギーに比例する。波形50a,50bは1つの衝撃波の検出によって発生したものである。第1エネルギー算出装置87は、波形50aの高さに基づいてエネルギーEa1を算出し、波形50bの高さに基づいてエネルギーEa2を算出する。
算出されたエネルギーEa1,Ea2等、及び位置算出装置23で求めた衝撃波の発生位置が、第2エネルギー算出装置88に入力される。衝撃波の発生位置とAEセンサ16A,16Bのそれぞれとの間の距離をLa1、La2としたとき、その発生位置で発生した衝撃波のエネルギーEは、{(Ea1/La1 2)+(Ea2/La2 2)}/2で算出される。さらに、第2エネルギー算出装置88は、構成部材2が各衝撃波によって受ける全エネルギーΣEを算出する。衝撃波の発生位置と構成部材2の表面との間の距離をLとしたとき、構成部材2が受ける全エネルギーΣEは、(9)式で算出される。
ΣE=Σ(Ei/Li 2) …(9)
ここで、iは単位時間当たりに発生する衝撃波の個数である。
算出されたΣEが記憶装置49に記憶され、走査距離変換装置86に入力される。第2エネルギー算出装置88で算出された、単位時間当たりに構成部材2が受けるエネルギーΣEを、便宜的に、第1エネルギーと称する。走査距離変換装置86は、入力した第1エネルギーを、ノズル6の単位走査距離当たりのエネルギー(以下、第2エネルギーという)に変換する。
本実施例でも、実施例6と同様に、表示情報選択指令は操作盤29から表示情報作成装置25に入力される。表示情報作成指令は、(e)第1エネルギーを用いた表示情報の作成、及び(f)第2エネルギーを用いた表示情報の作成のいずれかである。
表示情報作成指令により、例えば、(e)の表示情報の作成が選択されたと仮定する。表示情報作成装置25は、記憶装置49から取り込んだ第1エネルギーの情報に基づいて、構成部材2が受けたエネルギーの表示情報を作成する。この表示情報が、表示装置26に表示されると共に記憶装置49に記憶される。
(f)の表示情報の作成が選択された場合には、表示情報作成装置25は第2エネルギーに基づいて表示情報を作成する。
本実施例における監視指標は、(e)の表示情報の作成が選択されたとき、及び(f)の表示情報の作成が選択されてときで異なる。(e)が選択されたとき、監視指標は第1エネルギーであり、運転条件変更しきい値及び改善効果判定しきい値はそれぞれ第1エネルギーに対するものとなる。(f)が選択されたとき、監視指標は第2エネルギーであり、運転条件変更しきい値及び改善効果判定しきい値はそれぞれ第2エネルギーに対するものとなる。
(e)が選択されているので、本実施例のステップS18,S21及びS22のそれぞれの判定は、記憶装置49から取り込んだ第1エネルギーを用いて行われる。(f)が選択されたときには、本実施例のステップS18,S21及びS22のそれぞれの判定は、記憶装置49から取り込んだ第2エネルギーを用いて行われる。
本実施例は、実施例2で生じる各効果を得ることができる。単位走査距離当たりに構成部材2が受けるエネルギーを用いた場合は、単位時間当たりに構成部材2が受けるエネルギーを用いた場合に比べて、WJP施工対象物における残留応力の改善効果をより精度良く確認することができる。
WJP装置1Cにおいて信号処理装置20Aを本実施例で用いた信号処理装置20Eに変えることも可能である。信号処理装置20Aが信号処理装置20Eに交換されたWJP装置1Cを用いて、実施例4のウォータージェットピーニング方法を実行してもよい。この場合には、実施例4で生じる効果を得ることができる。
実施例2、及び実施例5〜8の効果を比較すると以下のことが言える。WJP施工対象物における残留応力の改善効果を確認できる精度は、衝撃波発生頻度のピーク位置(例えば、実施例2)、衝撃波発生頻度の平均値(例えば、実施例5)、有効な衝撃波発生頻度(例えば、実施例6)、距離に基づいて補正した衝撃波発生頻度(例えば、実施例7)及び構成部材2が受けるエネルギー(例えば、実施例8)の順に、後者になるほど増大する。信号処理装置における処理時間は、構成部材2が受けるエネルギー(例えば、実施例8)、距離に基づいて補正した衝撃波発生頻度(例えば、実施例7)、有効な衝撃波発生頻度(例えば、実施例6)、衝撃波発生頻度の平均値(例えば、実施例5)及び衝撃波発生頻度のピーク位置(例えば、実施例2)の順に、後者になるほど短くなる。
前述した実施例1ないし8は、加圧水型原子力プラントの構成部材における残留応力の改善に適用することができる。さらに、前述した実施例1,2及び5〜8は、海から陸に引き上げることが難しい船舶の、海水に漬かっている鋼鈑の応力改善、及びその鋼板に付着しているふじつぼ落としに適用することができる。1,2及び5〜8は、自動車部品の表面改質に適用してもよい。