JPH07300462A - 抗腫瘍性物質be−19412類 - Google Patents

抗腫瘍性物質be−19412類

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JPH07300462A
JPH07300462A JP11428794A JP11428794A JPH07300462A JP H07300462 A JPH07300462 A JP H07300462A JP 11428794 A JP11428794 A JP 11428794A JP 11428794 A JP11428794 A JP 11428794A JP H07300462 A JPH07300462 A JP H07300462A
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compound
formula
salt
microorganism
streptomyces
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JP11428794A
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English (en)
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Katsuhisa Ojiri
勝久 小尻
Masahisa Tsukamoto
匡央 塚本
Shigeru Nakajima
中島  茂
Hajime Suzuki
肇 鈴木
Hiroyuki Suda
寛之 須田
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MSD KK
Original Assignee
Banyu Phamaceutical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 一般式 【化1】 [式中、Rは水素原子、低級アルキル基、低級アルカノ
イル基又はベンゾイル基を示す]で表される化合物、そ
の薬学的に許容しうる塩、その製法並びにその用途及び
その化合物を産生する能力を有するストレプトミセス
(Streptomyces)属に属する微生物に関す
る。 【効果】本発明に係る化合物は腫瘍細胞の増殖を抑制す
ることから医薬の分野で有用であり、特に抗腫瘍剤とし
ての使用が期待される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は医薬の分野で有用であ
り、より具体的には腫瘍細胞の増殖を阻害して抗腫瘍作
用を有する新規化合物群、その製造法及びその用途並び
に該化合物を産生する微生物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】癌化学療法の分野においては、既に多く
の化合物が医薬品として実用化されている。しかしなが
らさまざまな種類の腫瘍に対してその効果は必ずしも充
分ではなく、また臨床上これらの薬剤に対する腫瘍細胞
の耐性現象が明らかにされるにつれ、その臨床的応用性
は複雑化している[第47回日本癌学会総会記事、12
頁〜15頁(1988年)参照]。
【0003】かかる状況下、癌治療の分野においては常
に新規制癌物質の開発が求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
の希求に応える新規抗腫瘍物質を提供することであり、
既存の抗腫瘍物質が充分に効果を発揮できない種々の腫
瘍に対しても抗腫瘍効果を発揮する化合物を見い出すこ
とが本発明が解決しようとする課題である。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決すべく、抗腫瘍活性を有する物質について、微
生物二次代謝産物を鋭意スクリーニングした結果、下記
一般式[I]で表される化合物が優れた抗腫瘍作用を示
すことを見いだして本発明を完成した。
【0006】即ち、本発明は新規な一般式[I]
【0007】
【化8】 [式中、Rは水素原子、低級アルキル基、低級アルカノ
イル基又はベンゾイル基を示す]で表される化合物、又
はその薬学的に許容しうる塩、その製法並びに用途、及
び式[I]の化合物を産生する能力を有するストレプト
ミセス(Streptomyces)属に属する微生物
に関するものである。次に本明細書において使用する用
語について説明する。本明細書において使用する「低
級」なる語は、この語の付された基又は化合物の炭素数
が6個以下、好ましくは4個以下であることを意味す
る。
【0008】「低級アルキル基」とは炭素数が1〜6個
の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示し、例えば、メチ
ル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル
基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチ
ル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、
ヘキシル基等が挙げられる。
【0009】「低級アルカノイル基」とは炭素数が1〜
6個の直鎖状又は分岐状のアルカノイル基を示し、例え
ばホルミル基、アセチル基、プロプオニル基、ブチリル
基基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基等が挙げられ
る。
【0010】以下に本発明に係る新規抗腫瘍性物質BE
−19412類の物理化学的性状を示す。
【0011】ここで、一般式[I]でRが水素原子であ
る化合物(構造式[II]の化合物)をBE−1941
2Aと称し、一般式[I]でRがメチル基である化合物
をBE−19412Bと称する。
【0012】下記にNMR測定における略号の意味を示
す。 s :シングレット d :ダブレット t :トリプレット q :カルテット m :マルチプレット J :カップリング定数 Hz :ヘルツBE−19412Aの物理化学的性状 性状 :黄色アモルファス状固体若しくは結晶 分子式 :C2822NO8Cl 質量分析:[高分解能FAB−MS] (M+H)+として : 計算値 536.1112 実測値 536.1083 紫外吸収スペクトル:λmax(MeOH,nm) 217,243,287,412,431 赤外吸収スペクトル:(KBr,cm-1) 3423,2939,1649,1614,1510,
1450,1381,1211,1093,895,8
33,6111 H−NMRスペクトル:(500MHz,DMSO−
6に微量の重塩酸を添加 ,δppm) 2.00(3H,s),2.33(1H,m),2.4
4 (1H,m),2.45(3H,s),2.89
(2H,m),3.42(1H,t,J=3.4H
z),3.70(3H,s),5.91(1H,s),
6.89(1H, s),7.16(1H,s)13 −NMRスペクトル:(125MHz,DMSO−
6に微量の重塩酸を添加 ,δ ppm)14.7
(q),16.7(t),18.5(q),24.6
(t),53.6(d),62.6(q),75.7
(s),102.1(d)×2,107.8(s),1
08.2(s),108.7(s),115.4
(s),121.8(d),125.3(s),12
7.4(s),129.5(s),137.6(s),
139.8(s),140.9(s),142.4
(s),154.8(s),158.0(s),15
8.7(s),160.2(s),162.0(s),
199.1(s),200.3(s) 溶解性 :メタノール、ジメチルスルホキシド等の有機
溶媒に溶け易く、水に溶けにくい。 酸性、中性、塩基性物質の区別:中性 薄層クロマトグラフィー:メルク社製キーゼルゲル60
254使用 Rf値 0.6(展開溶媒 クロロホルム:メタノール
=5:1) 呈色反応:硫酸反応 陽性 また本発明化合物は塩の形で存在することができ、その
ような塩としては例えばナトリウム塩、カリウム塩等の
アルカリ金属塩、例えばトリメチルアミン塩、トリエチ
ルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、エタノールア
ミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン
塩、プロカイン塩等の脂肪族アミン塩、例えばN,N−
ジベンジルエチレンジアミン塩等のアラルキルアミン
塩、例えばピリジン塩、ピコリン塩、キノリン塩、イソ
キノリン塩等の複素芳香族アミン塩、例えばテトラメチ
ルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、ベン
ジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルア
ンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、メ
チルトリオクチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモ
ニウム塩等の第4級アンモニウム塩、アルギニン塩、リ
ジン塩等の塩基性アミノ酸塩等が挙げられる。BE−19412Bの物理化学的性状 性状 :橙色アモルファス状固体若しくは結晶 分子式 :C3026NO8Cl 質量分析:[高分解能FAB−MS] (M+H)+ として : 計算値 564.1425 : 実測値 564.1464 紫外吸収スペクトル:λmax(MeOH,nm) 217,234,290,388,404 赤外吸収スペクトル:(KBr,cm-1) 3427,2941,2362,1689,1653,
1605,1456,1398,1227,1095,
1026,989,891,758,6111 H−NMRスペクトル:(500MHz,DMSO−
6,δ ppm) 2.03(3H,s),2.38(1H,m),2.5
2(1H,m),2.66(3H,s),2.94(2
H,m),3.45(1H,t,J=3.4Hz),
3.75(3H,s),3.76(3H,s),4.0
5(3H,s),5.97(1H,s),6.00(1
H,s),6.94(1H,s),7.34(1H,
s),10.8(1H,s),14.8(1H,s)13 C−NMRスペクトル(125MHz,DMSO−d
6,δ ppm) 14.9(q),16.6(t),18.3(q),2
4.4(t),54.1(d),56.6(q),6
1.2(q),62.4(q),75.5(s),10
1.9(d),102.5(d),110.6(s),
115.0(s),115.3(s),118.6
(s),121.7(d),125.0(s),12
7.3(s),130.6(s),138.1(s),
139.7(s),140.7(s),142.2
(s),155.9(s),157.0(s),15
8.4(s),160.0(s),160.6(s),
199.3(s),201.2(s) 溶解性:メタノール、ジメチルスルホキシド等の有機溶
媒に溶け易く、水に溶けにくい。 酸性、中性、塩基性物質の区別:中性 薄層クロマトグラフィー:メルク社製キーゼルゲル60
254使用 Rf値 0.11(展開溶媒 クロロホルム:アセトン
=10:1) 呈色反応:硫酸反応 陽性 また本発明化合物は塩の形で存在することができ、その
ような塩としては例えばナトリウム塩、カリウム塩等の
アルカリ金属塩、例えばトリメチルアミン塩、トリエチ
ルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、エタノールア
ミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン
塩、プロカイン塩等の脂肪族アミン塩、例えばN,N−
ジベンジルエチレンジアミン塩等のアラルキルアミン
塩、例えばピリジン塩、ピコリン塩、キノリン塩、イソ
キノリン塩等の複素芳香族アミン塩、例えばテトラメチ
ルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、ベン
ジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルア
ンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、メ
チルトリオクチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモ
ニウム塩等の第4級アンモニウム塩、アルギニン塩、リ
ジン塩等の塩基性アミノ酸塩等が挙げられる。
【0013】BE−19412類の生物学的活性(抗腫
瘍作用) 抗腫瘍性物質BE−19412類のマウス実験腫瘍細胞
に対する増殖阻止作用を決定するため、in vitr
oで試験を行なった。マウス白血病細胞P388に対す
る抗腫瘍作用試験は、BE−19412類をジメチルス
ルホキシドに溶解した後、ジメチルスルホキシドで逐次
希釈してから、牛胎児血清10%含有RPMI1640
培地(20mMの2−メルカプトエタノールを含む)に
加え検液とした。1×103 個の腫瘍細胞を含む細胞
培養培地(牛胎児血清10%含有RPMI1640培
地、20mMの2−メルカプトエタノールを含む) 5
0μlを96穴マイクロプレートに分注し、37℃で2
4時間、5%CO2下で培養した後に上記の検液50μ
lを加え、37℃で72時間、5%CO2下で培養後、
MTT測定法により対照群と比較した。
【0014】マウス大腸癌細胞colon26に対する
抗腫瘍試験は、BE−19412類をジメチルスルホキ
シドに溶解した後ジメチルスルホキシドで逐次希釈して
から、牛胎児血清10%含有RPMI1640培地に加
え検液 とした。1×103個の腫瘍細胞を含む細胞培
養培地(牛胎児血清10%含有RPMI1640培地)
100μlを96穴マイクロプレートに分注し、37℃
で24時間、5%CO2下で培養した後に上記の検液1
00mlを加え、37℃で72時間、5%CO2下で培
養後、50%トリクロロ酢酸で固定し、0.4%スルホ
ローダミンBで染色後、10mMトリス液を用いて細胞
から色素を抽出した。450nmを対照波長として55
0nmに於ける吸光度を測定して対照群と比較した。そ
の結果、BE−19412類は両癌細胞に対し、強い増
殖阻止活性を示し、50%増殖阻害濃度(IC50)は第
1表の通りであった。
【0015】更に、BE−19412 類のヒト癌細胞
に対する抗腫瘍活性をin vitroで試験した。細
胞は、ヒト大腸癌細胞DLD−1、ヒト肺癌細胞PC−
13及びヒト胃癌細胞MKN−45を使用し、細胞培養
用培地は、全ての癌細胞共に牛胎児血清10%含有RP
MI1640培地を用い、上記のマウス大腸癌細胞co
lon26に対する抗腫瘍試験と同様の手法を用いて測
定した。
【0016】
【表1】 上述したようにBE−19412類はマウス及びヒトの
癌細胞に対し顕著な増殖阻止作用を示す。従って、本発
明はヒトをはじめとする哺乳動物の抗腫瘍剤として有用
である。
【0017】次いでBE−19412類の製造法につい
て説明する。本発明の抗腫瘍性物質BE−19412
類の製造に使用する微生物又はその変異株は、抗腫瘍性
物質 BE−19412Aを生産するものならばいずれ
でも良いが、例えば以下の菌学的性状を有する微生物が
挙げられる。 1.形態 A19412株は基生菌糸の形成は良好であるが、気菌
糸の形成が良好ではない。気菌糸には輪生岐が見られる
が、成熟した胞子の形成は見られない。また、胞子の
う、および菌核等の特殊な器官も観察されない。 2.各種寒天平板培地における培養性状(28゜C,1
4日間培養)
【0018】
【表2】 3.生育温度(グリセリン・アスパラギン寒天培地、1
4日間培養) 12゜C:生育せず 16゜C:生育良好、気菌糸形成せず 18゜C:生育良好、気菌糸形成痕跡 22゜C:生育良好、気菌糸形成僅少 26゜C:生育非常に良好、気菌糸形成僅少 29゜C:生育非常に良好、気菌糸形成僅少 37゜C:生育不良、気菌糸形成せず 39゜C:生育せず 4.生理学的諸性質 (1)ゼラチンの液化 陽性 (グルコース・ペプトン・ゼラチン培地) (2)スターチの加水分解 陽性(弱い) (スターチ・無機塩寒天培地) (3)脱脂粉乳の凝固 陽性 (スキムミルク培地) (4)脱脂粉乳のペプトン化 陽性 (スキムミルク培地) (5)メラニン様色素の生成 陰性 (6)食塩耐性 食塩含有量2%以下で生育 (グリセリン・アスパラギン寒天培地) 5.炭素源の利用能 プリドハム・ゴドリーブ寒天を基礎培地とし、下記各種
糖を添加して28゜C14日間培養した。
【0019】 D−グルコース + ラフィノース − D−キシロース − D−マンニトール − L−アラビノース − イノシトール + L−ラムノース ± サリシン − D−フルクトース ± シュクロース − Dーガラクトース + 6.細胞壁組成 LLージアミノピメリン酸及びグリシンが検出された。
【0020】以上の菌学的諸性質よりA19412株は
放線菌ストレプトミセス属に属すると考えられる。した
がってA19412株をストレプトミセス エスピー
A19412(Streptomyces sp.A1
9412)と称することとした。
【0021】尚、本菌株は通商産業省工業技術院生命工
学工業技術研究所に寄託されており、その微工研受託番
号はFERM P−14194である。
【0022】本発明で使用する抗腫瘍性物質BE−19
412Aを生産する微生物の変異株は、例えばX線もし
くは紫外線などの照射処理、例えばナイトロジェンマス
タード、アザセリン、亜硝酸、2−アミノプリンもしく
はN−メチル−N´−ニトロ−N−ニトロソグアニジン
(NTG)等の変異誘起剤による処理、ファージ接触、
形質転換、形質導入又は接合などの通常用いられる菌種
変換処理方法によりBE−19412A生産菌を変異さ
せた微生物である。
【0023】本発明のBE−19412類を製造するに
あたり、BE−19412の生産菌株を栄養源含有培地
に接種して好気的に発育させることにより、BE−19
412Aを含む培養物が得られる。栄養源としては、放
線菌の栄養源として公知のものが使用できる。
【0024】例えば、炭素源としては、市販されている
ブドウ糖、麦芽糖、デンプン、庶糖、糖蜜又はデキスト
リンなどを単独又は混合物として用いることができる。
【0025】窒素源としては、市販されている大豆粉、
コーンステイープリカー、肉エキス、酵母エキス、乾燥
酵母、綿実粉、ペプトン、小麦胚芽、魚粉、ミートミー
ル、脱脂米ヌカ、脱脂肉骨粉、無機アンモニウム塩又は
硝酸ナトリウムなどを単独又は混合物として用いること
ができる。
【0026】無機塩としては、市販されている炭酸カル
シウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシ
ウム、臭化ナトリウム、ホウ酸ナトリウム又は各種リン
酸塩などを用いることができる。
【0027】その他必要に応じて、鉄、マンガン、亜
鉛、コバルト、モリブデンなどの重金属塩を微量添加す
ることもできる。
【0028】また、発泡の激しい場合には消泡剤とし
て、例えば大豆油もしくは亜麻仁油などの植物油、オク
タデカノールなどの高級アルコール類又は各種シリコン
化合物などを適宜添加してもよい。
【0029】これらのもの以外でも、該生産菌が利用
し、BE−19412Aの生産に役立つもの例えば3−
(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸又はホウ酸ナト
リウムなどであれば、いずれも使用することができる。
【0030】培養方法としては、一般の微生物代謝産物
の生産方法と同様に行なえばよく、固体培養でも液体培
養でもよい。液体培養の場合は、静置培養、攪拌培養、
振とう培養又は通気培養などのいずれを実施してもよい
が、特に振盪培養又は深部通気攪拌培養が望ましい。培
養温度は16〜29℃が適当であるが、好ましくは26
〜29℃である。好ましい培地のpHは4〜8の範囲
で、培養時間は72時間〜168時間である。
【0031】培養物から目的とするBE−19412A
を採取するには、微生物の生産する代謝物から採取する
のに通常使用される分離手段が適宜利用される。
【0032】BE−19412A は培養濾液中及び菌
体中に存在するので、培養濾液又は菌体より通常の分離
手段、例えば溶媒抽出法、イオン交換樹脂法又は吸着も
しくは分配クロマトグラフィー法及びゲル濾過法などを
単独又は組み合わせて行なうことにより精製できる。
【0033】好ましい分離精製の例として次の方法が挙
げられる。まず培養液を濾過し、菌体を得る。得られた
菌体をメタノール又はアセトンなどの有機溶媒を用いて
抽出する。得られた粗抽出物について、水−酢酸エチル
分配を行ない、酢酸エチルを留去後得られる抽出物につ
いてシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタ
ノールで溶出)などを行なうことにより、BE−194
12Aを黄色粉末として得ることができる。
【0034】一般式[I]においてRが水素原子である
化合物(構造式[II]の化合物)(BE−19412
A)は化学の分野で公知のアルキル化、低級アルカノイ
ル化又はベンゾイル化の方法により一般式[I]でRが
低級アルキル基、低級アルカノイル基又はベンゾイル基
である化合物に容易に変換することができる。
【0035】例えば塩基の存在下にBE−19412A
をアルキル化剤で処理し、対応する低級アルキル誘導体
に導くことができ、塩基存在下に、BE−19412A
を酸無水物又は酸ハロゲン化物で処理して低級アルカノ
イル又はベンゾイル誘導体を容易に得ることができる。
【0036】本発明の化合物BE−19412類は腫瘍
細胞の増殖を阻害し、制癌効果を発揮するが、本発明化
合物を抗腫瘍剤として使用する際の投与形態としては各
種の形態を選択でき、例えば錠剤、カプセル剤、散剤、
顆粒剤もしくは液剤などの経口剤、又は例えば溶液もし
くは懸濁液などの殺菌した液状の非経口剤が挙げられ
る。
【0037】固体の製剤は、そのまま錠剤、カプセル
剤、顆粒剤又は粉末の形態として製造することもできる
が、適当な添加物を使用して製造することもできる。そ
のような添加物としては、例えば乳糖もしくはブドウ糖
などの糖類、例えばトウモロコシ、小麦もしくは米など
のデンプン類、例えばステアリン酸などの脂肪酸類、例
えばメタケイ酸アルミン酸マグネシウムもしくは無水リ
ン酸カルシウムなどの無機塩類、例えばポリビニルピロ
リドンもしくはポリアルキレングリコールなどの合成高
分子類、例えばステアリン酸カルシウムもしくはステア
リン酸マグネシウムなどの脂肪酸塩類、例えばステアリ
ルアルコールもしくはベンジルアルコールなどのアルコ
ール類、例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセ
ルロース、エチルセルロースもしくはヒドロキシプロピ
ルメチルセルロースなどの合成セルロース誘導体類、又
は水、ゼラチン、タルク、植物油、アラビアゴムなど通
常用いられる添加物が挙げられる。
【0038】これらの錠剤、カプセル剤、顆粒剤及び粉
末などの固形製剤は一般的には0.1〜100重量%、
好ましくは5〜100重量%の有効成分を含む。
【0039】液状製剤は、水、アルコール類又は例えば
大豆油、ピーナッツ油もしくはゴマ油などの植物由来の
油など液状製剤において通常用いられる適当な添加剤を
使用し、懸濁液、シロップ剤もしくは注射剤などの形態
として製造される。特に、非経口的に筋肉内注射、静脈
注射又は皮下注射で投与する場合の適当な溶剤として
は、例えば注射用蒸留水、塩酸リドカイン水溶液(筋肉
注射用)、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、エタノール、
静脈内注射用液体(例えばクエン酸及びクエン酸ナトリ
ウムなどの水溶液)もしくは電解質溶液(点滴静注及び
静脈内注射用)など、又はこれらの混合溶液が挙げられ
る。
【0040】これらの注射剤はあらかじめ溶解したもの
のほか、粉末のままあるいは適当な添加剤を加えたもの
を用時溶解する形態もとり得る。これらの注射液は通
常、0.1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%の有
効成分を含む。又、経口投与の懸濁剤又はシロップ剤な
どの液剤は、0.5〜10重量%の有効成分を含む。
【0041】本発明の化合物の実際に好ましい投与量
は、使用される化合物の種類、配合された組成物の種
類、適用頻度及び治療すべき特定部位、患者の病態及び
腫瘍によって変化することに注意すべきである。例え
ば、1日あたりの成人の投与量は、経口投与の場合、1
0〜500mgであり、非経口投与、好ましくは静脈注
射の場合、1日あたり、10〜100mgである。な
お、投与回数は投与方法及び症状によって異なるが、1
回ないし5回である。
【0042】以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に
説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるも
のではない。実施例1.BE−19412A の製造法 斜面軟寒天培地に接種した放線菌A19412株をグリ
セリン2.0%、麦芽水飴1.0%、綿実粉0.5%、
小麦胚芽0.5%、肉エキス0.2%、酵母エキス0.
1%、硫酸アンモニウム0.1%、リン酸二水素カリウ
ム0.1%、塩化ナトリウム0.2%、硫酸マグネシウ
ム0.2%、硫酸亜鉛0.001%、炭酸カルシウム
0.2%、硫酸第一鉄0.001%からなる培地(pH
6.7)100mlを含む500ml容の三角フラス
コ4本に接種し、28℃で72時間、回転振盪機(毎分
180回転)上で培養した。この培養液を2mlずつ上
記の培地を100mlを含む500ml容の三角フラス
コ100本に接種し28℃で144時間、回転振盪機
(毎分180回転)上で培養した。
【0043】このようにして得られた培養液(10L)
から濾過により菌体を分離し、この菌体にメタノール5
Lを加え、数時間攪拌後濾過した。この濾液を減圧下で
500mlまで濃縮してから1N塩酸でpHを3に調整
した後、酢酸エチル700mlを加え液−液分配を行な
った。水層を更に500mlの酢酸エチルで抽出した。
得られた酢酸エチル画分を合わせてpH3の希塩酸50
0mlで洗い、更にpH3の希塩酸300mlで洗って
から減圧下に濃縮し、残渣を200mlのn−ヘキサン
で洗浄した。この残渣を酢酸エチル150mlに溶解
し、シリカゲルカラム(メルク社製キーゼルゲル60,
70〜230メッシュ、3×35cm)に吸着させ、ま
ず酢酸エチル500mlで溶出し、ついで酢酸エチル/
メタノール(40:1)410ml、酢酸エチル/メタ
ノール(20:1)2,100ml、酢酸エチル/メタ
ノール(10:1)550ml、酢酸エチル/メタノー
ル(5:1)600ml、酢酸エチル/メタノール
(2:1)600mlの順に展開した。溶出した活性画
分を減圧下に濃縮乾固してからメタノール100mlに
溶解し、この溶液を濃縮するとBE−19412Aの沈
殿を生じた。沈殿を濾取して乾燥することにより、BE
−19412Aの黄色粉末244mgを得た。実施例2.BE−19412Bの製造法 BE−19412A105mgをメタノール10ml及
びベンゼン20mlに懸濁し、攪拌しながらトリメチル
シリルジアゾメタン(10%ヘキサン溶液)1.8ml
を小量づつ添加し、そのまま室温で16時間反応させ
た。反応液を減圧下に濃縮し、残渣をメタノール5ml
に溶解し、セファデックスLH−20のクロマトグラフ
ィー(1.8×50cm,展開溶媒;メタノール)を行
ない、該当画分を減圧下に濃縮した。ついで得られた粗
物質についてシリカゲルのクロマトグラフィー(2.5
×32cm)を行ない、クロロホルム500ml、クロ
ロホルム/アセトン(50:1)510ml、クロロホ
ルム/アセトン(30:1)620ml、クロロホルム
/メタノール(20:1)840ml、クロロホルム/
メタノール(10:1)990mlで順次展開した。B
E−19412Bを含む分画を集めて減圧下に濃縮乾燥
し、BE−19412Bの橙色粉末30mgを得た。
【0044】以下に本発明の化合物の製剤例を示すが、
本発明の化合物の製剤は本製剤例に限定されるものでは
ない。 製剤例1 本物質(BE−19412A) 10部 重質酸化マグネシウム 15部 乳糖 75部 を均一に混合して、350μm以下の粉末状又は細粒状
の散剤とする。この散剤をカプセル容器に入れカプセル
剤とした。 製剤例2 本物質(BE−19412A) 45部 澱粉 15部 乳糖 16部 結晶性セルロース 21部 ポリビニルアルコール 3部 蒸留水 30部 を均一に混合した後、破砕造粒して乾燥し、次いで篩別
して直径1410〜177μmの大きさの顆粒剤とし
た。 製剤例3 製剤例2と同様の方法で顆粒剤を作製した後、この顆粒
剤96部に対してステアリン酸カルシウム3部を加えて
圧縮成形し直径10mmの錠剤を作製した。 製剤例4 製剤例2の方法で得られた顆粒剤90部に対して結晶性
セルロース10部及びステアリン酸カルシウム3部を加
えて圧縮成形し、直径8mmの錠剤とした後、これにシ
ロップゼラチン、沈降性炭酸カルシウム混合懸濁液を加
えて糖衣錠を作製した。 製剤例5 本物質(BE−19412A) 0.6部 非イオン系界面活性剤 2.4部 生理的食塩水 97 部 を加温混合してからアンプルに入れ、滅菌を行なって注
射剤を作製した。
【0045】
【発明の効果】本発明に記載するBE−19412類
は、マウス及びヒトの癌細胞に対して強い増殖抑制効果
を示すことから、医薬の分野で癌の治療剤として有用で
ある。
【0046】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鈴木 肇 茨城県つくば市大久保3番地 萬有製薬株 式会社つくば研究所内 (72)発明者 須田 寛之 茨城県つくば市大久保3番地 萬有製薬株 式会社つくば研究所内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式[I] 【化1】 [式中、Rは水素原子、低級アルキル基、低級アルカノ
    イル基又はベンゾイル基を示す]で表される化合物又は
    その薬学的に許容しうる塩。
  2. 【請求項2】ストレプトミセス(Streptomyc
    es)属に属し、構造式[II] 【化2】 の化合物を産生する能力を有する微生物又はその変異株
    を培養し、その培養液及び菌体から構造式[II]の化
    合物を採取し、要すれば薬学的に許容しうる塩とするこ
    とを特徴とする構造式[II] 【化3】 の化合物又はその薬学的に許容しうる塩の製造法。
  3. 【請求項3】ストレプトミセス(Streptomyc
    es)属に属し、構造式[II] 【化4】 の化合物を産生する能力を有する微生物又はその変異株
    を培養し、その培養液及び菌体から構造式[II]の化
    合物を採取し、構造式[II]の化合物をアルキル化、
    アルカノイル化又はベンゾイル化することを特徴とする
    一般式[I] 【化5】 の化合物又はその薬学的に許容しうる塩の製造法。
  4. 【請求項4】微生物又はその変異株が、ストレプトミセ
    ス エスピー(Streptomyces sp.)で
    ある請求項2記載の製法。
  5. 【請求項5】一般式[I] 【化6】 [式中、Rは水素原子、低級アルキル基、低級アルカノ
    イル基又はベンゾイル基を示す]で表される化合物又は
    その薬学的に許容しうる塩を有効成分とする抗腫瘍剤。
  6. 【請求項6】構造式[II] 【化7】 の化合物を産生する能力を有する、ストレプトミセス
    (Streptomyces)属に属する微生物又はそ
    の変異株。
  7. 【請求項7】微生物が、ストレプトミセス エスピーA
    19412(Streptomyces sp.A19
    412)である請求項6記載の微生物又はその変異株。
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