JPH07299875A - 繊維強化構造材料 - Google Patents

繊維強化構造材料

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JPH07299875A
JPH07299875A JP6093340A JP9334094A JPH07299875A JP H07299875 A JPH07299875 A JP H07299875A JP 6093340 A JP6093340 A JP 6093340A JP 9334094 A JP9334094 A JP 9334094A JP H07299875 A JPH07299875 A JP H07299875A
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nylon
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Kunio Niwa
邦夫 丹羽
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 表面処理剤の付着状態の安定化及び重合阻害
の防止による、ポリアミド樹脂からなる繊維強化構造材
料の物性の向上。 【構成】 ポリアミド樹脂(3)を反応射出成形してな
り、アルコール可溶性のナイロン表面処理剤で表面処理
した繊維(2)で強化された繊維強化構造材料(1)で
ある。ナイロン表面処理剤は、融点が135℃〜200
℃、平衡吸湿率が0.1%〜13%である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、繊維強化構造材料に関
し、詳しくは、テニス、スカッシュ、バトミントン等の
ラケットフレーム、テントフレーム用ポール、構造材料
用パイプ、埋設土管、ブロック、釣竿等として使用する
のに適した繊維強化構造材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、種々の繊維強化構造材料が提
供されている。例えば、本出願人に係る特開昭63−2
12514号には、所望の形状に形成した連続繊維及び
/又は長繊維を金型内に配置し、ポリアミド樹脂をマト
リクス樹脂として繊維強化構造材料を形成することが開
示されている。
【0003】また、本出願人は、先に、FW法で繊維を
中子に巻き付けて形成した繊維予備成形体を金型のキャ
ビティ内に配置し、金型内で反応射出成形(RIM)を
行って所要の形状の成形品を得る繊維強化材料の製造方
法を提案している。(特願平3−271566号、特願
平3−271570号)
【0004】上記のように予め所望の形状に形成した繊
維を金型内に配置する場合には、表面処理剤により繊維
に表面処理を施す必要がある。これは、表面処理剤を繊
維表面に塗布することにより、金型内に配置した繊維ど
うしを緩く接着して繊維が互いに分離するのを防止し、
所望の形状に形成した繊維が型崩れするのを防止するた
めである。
【0005】また、特に、FW法やブレイドの積層方法
で繊維予備成形体を形成する場合には、表面処理剤は、
繊維を中子に巻き付ける際の収束剤の役割を果たす。す
なわち、中子に巻き付ける最中に繊維が濡れた状態にあ
れば、繊維間での結束力が生じて繊維のばらけるのが防
止され、繊維を設計した配向状態に保持することができ
る。
【0006】さらに、上記FW法で繊維予備成形体を形
成する場合には、ロールから引き出した繊維をアイを通
した後中子に巻き付けるが、アイを通過する前に繊維を
表面処理剤を含浸することにより、アイの部分での摩擦
が減少され、繊維のほつれが防止される。
【0007】さらにまた、表面処理剤を塗布することに
より、繊維とマトリクス樹脂の濡れが良好になり、その
界面の接着性が向上する。
【0008】従来、ポリアミド樹脂をマトリクス樹脂と
して繊維強化構造材料を成形する場合、上記表面処理剤
として、アルコール可溶性ナイロン、水溶性ナイロン、
あるいはアルコールと水の両方に可溶性を有するナイロ
ンが使用されていた。
【0009】例えば、上記特開昭63−212514号
では、アルコールと水の両方に可溶なナイロンである東
レ社製のAQナイロン(A−70)を使用して表面処理
することが開示されている。この表面処理材料は融点が
100℃、ガラス転位点が40℃である。また、25
%,65RHでの平衡吸湿率が22%である。
【0010】ここで融点とは、樹脂が容易に変形を開始
する温度を定義するものである。本願では、昇温速度1
0℃/minの示差走査熱量測定(DSC)で樹脂が溶
解時の溶解熱ピークを表し、そのピーク時の温度をい
う。
【0011】また、ガラス転位温度とは、材料がガラス
化する温度をいう
【0012】さらに、25℃,65RHでの平衡吸湿率
とは、25℃,65RH%で放置し、その水分率が平衡
に達した時の水分率をいう。
【0013】この東レ社製のAQナイロン(A−70)
の他にも種々の表面処理剤があるが、従来、ポリアミド
樹脂をマトリクス樹脂として繊維強化構造材料を成形す
る場合に使用されていた表面処理材剤は、融点が80〜
115℃程度、ガラス転位温度が35〜55℃程度、2
5℃,65RHでの平衡吸湿率が14〜25%程度であ
った。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】しかし、ポリアミド樹
脂をマトリクス材料として反応射出成形により繊維強化
構造材料を形成する場合に、上記のような特性の表面処
理剤を使用すると下記の不都合が生じる。
【0015】まず、表面処理剤の融点(80〜115℃
程度)は、反応射出成形における金型温度(140〜1
60℃程度)よりも低温であるため、表面処理剤を含浸
した樹脂を金型内に配置すると、表面処理剤は繊維を伝
わって流動してしまい、繊維表面の表面処理剤と繊維と
樹脂の界面の接着硬化が不均一となる。
【0016】また、上記のように表面処理剤のガラス転
位点は35〜55℃程度であるため、常温(25℃程
度)でガラス化してしまい柔軟性が低下する。そのた
め、繊維に含浸した後の繊維予備成形体を屈曲等した場
合に表面処理剤が剥離することがある。
【0017】このように、従来のポリアミド樹脂からな
る繊維強化材料では、表面処理剤の特性が原因で繊維へ
の表面処理剤の付着状態が不均一となり、繊維とポリア
ミド樹脂の接着が不均一となって完成した繊維強化構造
材料の物性が低下する場合があった。
【0018】一方、上記のように表面処理剤が高い平衡
吸湿率(14〜25%)を有する場合、RIMナイロン
の原料中の触媒は水と反応するため、表面処理剤中に存
在する水が重合阻害を起こすことがある。この場合も完
成した繊維強化構造材料の物性の低下につながる。
【0019】本発明は、かかる従来のポリアミド樹脂か
らなる繊維強化構造材料における問題に鑑み、強化繊維
への表面処理剤の付着状態を安定化することにより、繊
維強化構造材料の物性の向上を図ることを目的としてな
されたものである。また、本発明は、重合阻害を防止す
ることにより、ポリアミド樹脂からなる繊維強化構造材
料の物性の向上を図ることを目的としてなされたもので
ある。
【0020】
【課題を解決するための手段】従って、請求項1は、ア
ルコール可溶性のナイロン表面処理剤で表面処理した繊
維で強化され、ポリアミド樹脂をマトリクス樹脂として
反応射出成形してなる繊維強化構造材料であって、上記
ナイロン表面処理剤の融点が135℃〜200℃である
ことを特徴とする繊維強化構造材料。
【0021】また、請求項2は、アルコール可溶性のナ
イロン表面処理剤で表面処理した繊維で強化され、ポリ
アミド樹脂をマトリクス樹脂として反応射出成形してな
る繊維強化構造材料であって、上記ナイロン表面処理剤
の平衡吸湿率が0.1%〜13%であることを特徴とす
る繊維強化構造材料。
【0022】
【作用】請求項1の繊維強化構造材料では、ナイロン表
面処理剤の融点が135℃〜200℃であるため、反応
射出成形時に金型温度を昇温しても、表面処理剤が軟化
して繊維の表面を流動することがなく、表面処理剤は樹
脂表面に均一に付着する。そのため、請求項1の繊維強
化好材料では、繊維と樹脂の界面が均一に接着硬化して
おり良好な物性を有する。
【0023】一方、請求項2の繊維強化構造材料では、
ナイロン表面処理剤の平衡吸湿率が0.1%〜13%で
あるため、反応射出成形時に表面処理剤中の水分により
重合が阻害されず、良好な物性を有する。
【0024】
【実施例】次に、図面に示す実施例に基づいて、本発明
について詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施例
に係る繊維強化構造材料の実施例を示している。この第
1実施例に係る繊維強化構造材料1は、連続繊維2を強
化繊維としてポリアミド樹脂3を反応射出成形してなる
U字状に湾曲した管体である。また、連続繊維2を表面
処理する表面処理剤は、アルコール可溶性のナイロン表
面処理剤である。
【0025】本実施例では、マトリクス樹脂を構成する
ポリアミド樹脂として、RIMナイロンを使用してい
る。このRIMナイロンは、金型内に重合触媒と重合開
始剤とを含む溶融したω−ラクタム類を注入し、これを
加熱によりポリアミド重合とするモノマーキャスティン
グ法により形成される。
【0026】上記モノマーであるω−ラクタム類として
は、α−ピロリドン、α−ピペリドン、ω−エナントラ
クタム、ε−カプロラクタム、ω−カプリロラクタム、
ω−ペラルゴノラクタム、ω−デカノラクタム、ω−ウ
ンデカノラクタム、ω−ラウロラクタム、あるいはそれ
らのc−アルキル置換−ω−ラクタム、並びにこれらの
二種類以上のω−ラクタムの混合物があげられる。ま
た、ω−ラクタムは必要に応じて改良成分(ソフト成
分)を含むことができる。このソフト成分は分子中に使
用する開始剤と反応する官能基を有し、しかも、Tgの
低い化合物で、通常の官能基を有するポリエーテルや液
状ポリブタジエンなどが使用される。
【0027】上記ω−ラクタム類として使用される市販
の原料としては、宇部興産社製のRIMナイロンUX−
75等がある。これはアルカリ触媒とカプロラクタムか
らなるA成分と、ソフト成分を含むプレポリマーとカプ
ロラクタムとからなるB成分とから構成されている。
【0028】上記重合触媒としては、水酸化ナトリウム
が好ましいが、その他のナトリウム、カリウム、水素化
リチウム等の公知のω−ラクタムの重合触媒を使用する
ことができる。その添加量はω−ラクタムに対して0.
1〜0.5モル%の範囲が好ましい。
【0029】また、上記重合開始剤(活性剤)として
は、N−アセチル−ε−カプロラクタムが用いられる
が、その他のトリアリルイソシアヌレート、N−置換エ
チレンイミン誘導体、1・1’−カルボニルビスアジリ
ジン、オキサゾリン誘導体、2−(N−フェニルベンズ
イミドイル)アセトアニリド、2−(N−フェニルベン
ズイミドイル)アセトアニリド、2−N−モリホリノ−
ヘクロヘキサン−1,3−ジカルボキサニリド等の公知
のイソシアート、カルボイミド等の化合物を用いること
ができる。
【0030】上記重合開始剤の添加量はω−ラクタムの
量に対して0.05〜1.0モル%の範囲にあることが
好ましい。
【0031】また、連続繊維はカーボン繊維、ガラス繊
維、アラミノド繊維、炭化ケイ素繊維、スチール繊維、
アモルファス金属繊維、有機繊維等を用いることができ
る。
【0032】上記アルコール可溶性のナイロン表面処理
剤は、融点が135℃〜200℃であり、25℃,65
RHの平衡吸湿率が0.1%〜13%である。また、こ
の表面処理剤のガラス転位点は−48〜25℃である。
第1実施例では、この表面処理剤をメタノールに溶融
し、0.5%の濃度に調整して使用している。
【0033】上記アルコール可溶性のナイロン表面処理
剤は、ナイロンの重合の際に異種のアミノカルボンさん
または塩基酸とジアミンを混合、重合することにより得
られる共重合ナイロン、6ナイロン、66ナイロン、1
2ナイロンの共重合ナイロン、あるいは6ナイロンにメ
トキシメチル基を付加して得られたもの等がある。ただ
し、アルコール可溶性のナイロン表面処理剤はこれらに
限定されるものではなく、融点と平衡吸湿率が上記の数
値範囲にあればよい。
【0034】次に、第1実施例に係る繊維強化構造材料
の製造方法を図2に基づいて説明する。まず、図2
(A)に示すように、マンドレル5に中子を構成する可
撓性チューブ6を被せる。この可撓性チューブ6は、ナ
イロン、セロファン、ゴム、ポリエステル、ポリエーテ
ルケトン等のチューブ状のものが用いられる。なお、ウ
レタンフォーム等の弾性体からなる中実体を中子として
使用してもよく、この場合マンドレルは不要である。
【0035】上記マンドレル5は、駆動手段(図示せ
ず)により駆動されて、回転作動及び軸線方向の直線往
復作動を行う。なお、マンドレル5側を作動させず、繊
維巻き付け側を回転及び直線往復作動させてもよい。
【0036】一方、連続繊維2をロール8から引き出
し、アイ9、テンションロール10を通した後、表面処
理剤12を貯液している容器13に通し、繊維7を表面
処理剤12に浸漬する。この表面処理剤12に浸漬した
繊維7を再びアイ10を介して上記回転及び直線往復作
動するマンドレルに連続的に供給して繊維7を可撓性チ
ューブ6の外周面に巻き付けていく。
【0037】繊維7の所定の巻き付けが終了して繊維予
備成形体14(レイアップ)を製作した後、図2(B)
に示すように、この繊維予備形成体14を可撓性チュー
ブ6と共にマンドレル5から引き抜く。
【0038】このレイアップ成型作業として、上記のよ
うになFW法を用いる他、強化繊維をスリーブ状に織っ
てブレイドを製作し、このブレイドをマンドレルに可撓
性チューブを被せたものに必要層数積層する方法を用い
てもよい。この場合、レイアップ製作後に、マンドレル
を抜くのは上記FW法の場合と同様である。なお、この
ようにブレイドの積層によりレイアップを製作する場
合、ナイロン表面処理剤は、ブレイドを織る直前に浸漬
してもよく、また、ブレイドを積層する前に浸漬しても
よい。
【0039】次に、図2(C)に示すように、U字型と
した金型15Aのキャビティ16の形状に沿うように繊
維予備形成体14を手で屈曲した後、キャビティ16内
に配置する。
【0040】このとき第1実施例では、上記のようにガ
ラス転位点が−48〜25℃のナイロン表面処理剤12
を使用しているため、常温では連続繊維2の表面のナイ
ロン表面処理剤12はガラス化しておらず充分な柔軟性
を有する。そのため繊維予備形成体14を折り曲げして
変形させた場合にも、ナイロン表面処理剤12が連続繊
維2から剥離してしまうことがない。
【0041】次に、図2(D)で示すように、繊維予備
形成体14を配置したキャビティ16内を真空ポンプ
(図示せず)で減圧しつつ、金型の温度を150℃に昇
温し、かつ、可撓性チューブ6の内部に圧力をかけなが
ら上記宇部興産社製RIMナイロンUX−75をキャビ
ティ16内に注入し、以下のようにして反応射出成形
(RIM)を行う。
【0042】まず、所要量のRIMナイロンUX−75
を2つの容器に分けて入れ、一方には重合触媒を添加し
て反応溶液(A液)を調整し、他方には重合開始剤と活
性調整剤を添加して反応溶液(B液)を調整する。この
A液、B液を2液反応射出形成装置のミキシングヘッド
(図示せず)で混合させ、混合液を注入口17を介して
直ちに上記金型15A,15Bのキャビティ16内に注
入する。注入された混合液はキャビティ16内に配置し
た繊維予備形成体14に含浸しながら反応を生じ、1〜
5分間重合反応を行って、混合液が硬化する。硬化後、
金型15A,15Bを開いて成形された繊維強化構造材
料1を取り出す。
【0043】第1実施例では、上記のようにナイロン表
面処理剤12の融点が135℃〜200℃であるため、
反応射出成形時に金型温度を150℃に昇温しても、ナ
イロン表面処理剤12が繊維7の表面を流動してしまう
ことがない。よって、第1実施例では、繊維と樹脂の界
面は均一に接着硬化し、完成した樹脂強化構造材料1は
良好な物性を有する。
【0044】また、第1実施例では、上記のようにナイ
ロン表面処理剤12の平衡吸湿率が0.1〜13%であ
るため、上記反応射出成形時にナイロン表面処理剤12
中の水分により重合が阻害されない。第1実施例では、
このように重合が阻害されないことによっても、完成し
た繊維強化構造材料1は良好な物性が有する。
【0045】図3は、本発明の第2実施例に係る繊維強
化構造材料21を示している。この第2実施例に係る繊
維強化構造材料21は、連続繊維20(繊維長さ50m
m以上)を平織りしたクロス22を強化繊維としてポリ
アミド樹脂3を使用して反応射出成形してなり、直方体
状である。
【0046】第2実施例では、上記クロス22として東
邦レーヨン社製のカーボン繊維クロスW3101(30
00フィラメント平織)を使用している。ただし、クロ
ス22はカーボン繊維に限定されずガラス繊維、アラミ
ノド繊維、炭化ケイ素繊維、スチール繊維、アモルファ
ス金属繊維、有機繊維等のブレイドを使用してもよい。
【0047】また、第2実施例では、マトリクス樹脂を
構成するポリアミド樹脂3として上記第1実施例と同様
に、宇部興産社製RIMナイロンUX−75を使用して
いる。
【0048】さらに、第2実施例では、ナイロン表面処
理剤は、第1実施例と同様に、融点が135℃〜200
℃、ガラス転位点が−48〜25℃、25℃,65RH
の平衡吸湿率が0.1%〜13%のアルコール可溶性ナ
イロン表面処理剤を使用している。
【0049】次に、第2実施例に係る繊維強化構造材料
の製造方法に図4に基づいて説明する。まず、図4
(A)に示すように、同一形状の長方形状としたクロス
22をナイロン表面処理剤12に浸漬した後、金型24
Aのキャビティ16に複数層積層する。
【0050】次に、図4(B)に示すように、クロス2
2を配置した後、上記第1実施例と同様に宇部興産社製
RIMナイロンUX−75を圧力をかけて注入し、反応
射出成形を行う。このとき、第1実施例と同様に金型2
4A,24Bの温度を150℃、重合時間を5分とす
る。
【0051】上記のように第2実施例においてもナイロ
ン表面処理剤12の融点が135℃〜150℃であるた
め、金型温度が昇温しても、ナイロン表面処理剤12が
軟化してブレイド22を構成する繊維の表面を流動する
ことがない。よって、第2実施例では、連続繊維20と
樹脂3の界面は均一に接着硬化し、完成した樹脂強化構
造材料21は良好な物性を有する。
【0052】また、第1実施例では、上記のようにナイ
ロン表面処理剤12の平衡吸湿率が0.1〜13%であ
るため、上記反応射出成形時にナイロン表面処理剤12
中の水分により重合が阻害されず、完成した繊維強化構
造材料21は良好な物性を有する。
【0053】図5は、本発明の第3実施例を示してい
る。この第2実施例に係る繊維強化構造材料31は、短
繊維32(繊維長50mm以下)を強化繊維としてポリ
アミド樹脂3を反応射出成形してなる直方体状である。
【0054】第3実施例では、短繊維32としてカーボ
ン繊維を使用し、マトリクス樹脂としてて宇部興産社製
RIMナイロンUX−75を使用している。また、ナイ
ロン表面処理剤も上記第1及び第2実施例と同様に、融
点が135℃〜200℃であって、25℃,65RHの
平衡吸湿率は0.1%〜13%のアルコール可溶性ナイ
ロン表面処理剤を使用している。
【0055】この第3実施例の繊維強化構造材料31
は、ナイロン表面処理剤に含浸して前処理を施した短繊
維32を上記RIMナイロンUX−75のA成分、B成
分に混合し、強化繊維を配置していない金型のキャビテ
ィで反応射出成形して製造している。この反応射出成形
時の、金型温度は150℃、重合時間は5分程度であ
る。
【0056】この繊維強化構造材料31では、ナイロン
表面処理剤の軟化温度が135〜200℃であるため、
反応射出時の原料温度は90℃であり、ナイロン表面処
理剤が軟化して繊維鏡面を流動することがなく、完成し
た樹脂強化構造材料は良好な物性を有する。
【0057】また、第1実施例では、上記のようにナイ
ロン表面処理剤の平衡吸湿率が0.1〜13%であり反
応射出成形時あるいは原料の保管時にナイロン表面処理
剤中の水分により重合が阻害されないため、完成した繊
維強化構造材料は良好な物性な物性が得られる。
【0058】
【実験例】本発明の効果を確認するための実験を行っ
た。以下の実験のため、表1に示す6種類の表面処理剤
を準備した。
【0059】
【表1】
【0060】なお、上記表1中、破断伸度は、厚さ15
0〜250ミクロン、初期長さ50mmのホットプレス
フィルムを製作し、引張速度200mm/minで破断
したときの長さの初期長さに対する割合で表している。
【0061】上記第1実施例から第3実施例では、表面
処理剤の融点を135℃〜200℃、25℃,65RH
の平衡吸湿率は0.1%〜13%としているが、表1の
6種類のナイロン表面処理剤A〜Xと上記実施例におい
て使用したナイロン表面処理剤の関係は下記の通りであ
る。
【0062】ナイロン表面処理剤A,B,C:融点及び
25℃,65%RHの平均吸湿率を実施例の範囲に設定 ナイロン表面処理剤D:表面処理剤の融点のみを実施例
の範囲に設定 ナイロン表面処理剤E:表面処理剤の25℃,65%R
Hの平均吸湿率のみを実施例の範囲に設定 ナイロン表面処理剤X:表面処理財の融点及び25℃,
65%RHの平均吸湿率を上記実施例の範囲外に設定
【0063】また、実験に先立って、以下のようにして
上記表面処理剤A〜Xの強化繊維に対する付着のばらつ
きの程度を調べた。
【0064】まず、上記表面処理剤A〜Xの0.5%ア
ルコール溶液に、カーボン繊維のブレイド(6Kブレイ
ド、64打、直径16mmで繊維角度20゜)を浸漬
し、図6に示すように、長さ1800mm、直径16m
mのU字型パイプ35を形成して金型36A,36Bの
キャビティ16に配置する。次に、金型36A,36B
の温度を150℃まで昇温し、10分間保持した。冷却
後、図6中a1〜a5で示す5箇所について、窒素流通
下での熱重量分析(TGA)により表面処理剤A〜Xの
付着量を測定した。なお、この熱重量分析では、昇温速
度を10℃/minとして500℃まで昇温した。測定
結果を表2に示す。
【0065】
【表2】
【0066】この表2より、融点を135℃〜200℃
の範囲に設定している表面処理剤A〜Dでは、強化繊維
の表面に均一に付着していることが確認できる。
【0067】(実験1)実験1では、第2実施例に対応
する実験例1から実験例5の繊維強化構造材料の物性を
調べた。また、実験1では比較例1の繊維強化構造材料
を用意した。
【0068】実験例1〜実験例5では、下記の表2に示
すように表面処理剤A〜表面処理剤Eを使用した。ま
た、比較例1では、表面処理剤Xを使用した。実験例1
〜実験例5及び比較例1の繊維強化構造材料は、上記の
ように表面処理剤の特性のみを異ならせ、その他の条件
は下記のように統一している。
【0069】すなわち、実験例1〜実験例5及び比較例
1とも、東邦レーヨン社製カーボン繊維クロスW310
1(3000フィラメントの平織クロス)を20層金型
内に積層し、宇部興産社製RIMナイロンUX−75の
A成分、B成分を90℃で加熱溶融し、この溶融したA
成分、B成分を金型のキャビティ内に注型して重合反応
させて平板を製造した。この際、金型の温度は150℃
とし重合時間は5分とした。また、完成した樹脂強化構
造材料の寸法は、幅Wが10mm、長さLが150m
m、厚さTが4mmである。(図3参照)
【0070】この実験1では、上記記実験例1〜実験例
5及び比較例1に係る繊維強化構造材料について、JI
S−K7055に準じて3点曲げ試験を行い、破壊たわ
み量、曲げ弾性率及び曲げ強度を調べた。この3点曲げ
試験では、図7に示すように、各実験例及び比較例の繊
維強化構造材料36をサンプル支持長さ(スパン長さ)
80mmで支持台37に支持し、このスパン長さの中間
に力を加えてテストスピード2.5mm/minで3点
曲げを行った。実験1の結果は、表3に示すとおりであ
る。なお、表3中の値は、各実験例及び比較例につい
て、12個のサンプルについて測定した結果の平均値で
ある。
【0071】
【表3】
【0072】上記表3より、融点が135℃〜200℃
の範囲にあるナイロン表面処理剤A〜Dを使用した実験
例1〜実験例4と、融点がこの範囲にないナイロン表面
処理剤Xを使用した比較例1を比較すると、破壊たわみ
量、曲げ弾性率、曲げ強度のいずれの値も、実験例1〜
実験例4の方が比較例1より高い。このことから、融点
が135〜200℃の表面処理剤を用いる方と完成した
繊維強化構造材料の物性が良好であることが確認でき
る。
【0073】また、上記表3より、25℃,65%RH
の平衡吸湿率が0.1〜13%の範囲にあるナイロン表
面処理剤A〜C,Eを使用した実験例1〜実験例3及び
実験例5と、25℃,65%RHの平衡吸湿率がこの範
囲にないナイロン表面処理剤Xを使用した比較例1を比
較すると、破壊たわみ量、曲げ弾性率、曲げ強度のいず
れの値も、実験例1〜実験例4の方が比較例1より高
い。このことから、25℃,65%RHの平衡吸湿率が
0.1〜13%の範囲のナイロン表面処理剤を用いる方
が、完成した繊維強化構造材料の物性が良好であること
を確認できる。
【0074】(実験2)実験2では、第3実施例に対応
する実験例6の繊維強化構造材料について物性を調べ
た。
【0075】この実験2では、実験例11と比較例2の
2種類の繊維強化構造材料を供試した。実験例11では
表面処理剤として上記した表面処理剤Bを使用する一
方、比較例2では表面処理剤Xを使用しており、その他
の条件は実験例11と比較例2とで統一している。
【0076】すなわち、実験例11、比較例2とも表面
処理剤に含浸して前処理を施した短繊維を上記RIMナ
イロンUX−75のA成分、B成分に混合し、強化繊維
を配置していない金型のキャビティで反応射出成形して
製造している。この際、金型温度150℃、重合時間5
分に統一している。また、完成した繊維強化構造材料
は、上記実験1と同様に、幅Wが10mm、長さLが1
50mm、厚さTが4mmの直方体形状である。
【0077】上記実験例7と比較例2に係る繊維強化構
造材料について、実験1と同様に、JIS−K7055
に準じて3点曲げ試験を行い、破壊たわみ量、曲げ弾性
率及び曲げ強度を調べた。この実験2の結果は、表4に
示すとおりである。なお、表4中の数値は、実験例7と
比較例2のそれぞれについて5個のサンプルを測定した
結果の平均値である。
【0078】
【表4】
【0079】上記表3より、融点が135℃〜200%
の範囲にあり、25℃,65%RHの平衡吸湿率が0.
1〜13%の範囲にある表面処理剤Bを使用した実験例
11と、融点、平衡吸湿率ともこの範囲にない表面処理
剤Xを使用した比較例2を比較すると、破壊たわみ量、
曲げ弾性率、曲げ強度のいずれの値も、実験例11の方
が比較例2より高い。このことから、強化繊維が短繊維
の場合も、融点が135℃〜200℃、25℃,65%
RHの平衡吸湿率が0.1〜13%の範囲にある表面処
理剤を用いると、完成した繊維強化構造材料の物性が良
好であることを確認できる。
【0080】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、請求項
1の繊維強化構造材料では、ナイロン表面処理剤の融点
が135℃〜200℃であるため、反応射出成形時に金
型温度を昇温しても、表面処理剤が軟化して繊維の表面
を流動することがなく、表面処理剤は樹脂表面に均一に
付着する。そのため、請求項1の繊維強化好材料では、
繊維と樹脂の界面が均一に接着硬化しており良好な物性
を有し、テニス等のラケットフレーム、テントフレーム
用ポール、構造材料用パイプ等の種々の用途に好適に使
用することができる。
【0081】また、請求項2の繊維強化構造材料では、
ナイロン表面処理剤の平衡吸湿率が0.1%〜13%で
あるため、反応射出成形時に表面処理剤中の水分により
重合が阻害されない。そのため、請求項1の繊維強化構
造材料は、良好な物性を有し、テニス等のラケットフレ
ーム、テントフレーム用ポール、構造材料用パイプ等の
種々の用途に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施例に係る繊維強化構造材料
を示す概略斜視図である。
【図2】 (A),(B),(C),(D)は第1実施
例の繊維強化構造材料の製造方法を示す概略図である。
【図3】 本発明の第2実施例に係る繊維強化構造材料
を示す概略斜視図である。
【図4】 (A),(B)は第2実施例の繊維強化構造
材料の製造方法を示す概略図である。
【図5】 本発明の第3実施例に係る繊維強化構造材料
を示す概略斜視図である。
【図6】 ナイロン表面処理材料の繊維への付着のばら
つきの測定を説明するための概略図である。
【図7】 3点曲げ試験を示す概略図である。
【符号の説明】
1,21,31 繊維強化構造材料 2 連続繊維 3 ポリアミド樹脂 22 ブレイド 32 短繊維
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 // B29K 77:00 105:08 C08L 77:00

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルコール可溶性のナイロン表面処理剤
    で表面処理した繊維で強化され、ポリアミド樹脂をマト
    リクス樹脂として反応射出成形してなる繊維強化構造材
    料であって、 上記ナイロン表面処理剤の融点が135℃〜200℃で
    あることを特徴とする繊維強化構造材料。
  2. 【請求項2】 アルコール可溶性のナイロン表面処理剤
    で表面処理した繊維で強化され、ポリアミド樹脂をマト
    リクス樹脂として反応射出成形してなる繊維強化構造材
    料であって、 上記ナイロン表面処理剤の平衡吸湿率が0.1%〜13
    %であることを特徴とする繊維強化構造材料。
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