JPH07277898A - 無機質皮膜 - Google Patents

無機質皮膜

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JPH07277898A
JPH07277898A JP8557094A JP8557094A JPH07277898A JP H07277898 A JPH07277898 A JP H07277898A JP 8557094 A JP8557094 A JP 8557094A JP 8557094 A JP8557094 A JP 8557094A JP H07277898 A JPH07277898 A JP H07277898A
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JP
Japan
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crystals
crystal
inorganic
oriented
examples
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Application number
JP8557094A
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English (en)
Inventor
Yasushi Kawahito
康 川人
Takahiro Gunji
貴浩 郡司
Katsumune Tabata
勝宗 田畑
Kenji Dousaka
健児 堂坂
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Honda Motor Co Ltd
Original Assignee
Honda Motor Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 耐焼付き性の優れた摺動面構成体を提供す
る。 【構成】 摺動面構成体4はFe結晶の集合体より構成
される。その集合体は、頂部a側が湾曲している多数の
六角錐状Fe結晶51 を有する。このように構成する
と、六角錐状Fe結晶51 の湾曲面bが相手部材と早期
に面接触し、また微細な六角錐状Fe結晶51 によって
摺動荷重の分散が図られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は無機質皮膜、特に、無機
質結晶の集合体より構成された無機質皮膜に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種無機質皮膜、例えば摺動面
構成体として、内燃機関用カムシャフトにおける鋳鉄製
母材のジャーナル部外周面に、耐摩耗性の向上を狙って
設けられるFeメッキ層が知られている。
【0003】しかしながら、内燃機関が高速、且つ高出
力化の傾向にある現在の状況下では、従来のFeメッキ
層はその摺動面が比較的平滑であることに起因してオイ
ル保持性、つまり保油性が十分でなく、また初期なじみ
性も悪いため耐焼付き性が乏しいという問題があった。
【0004】そこで、本出願人は、先に、Feメッキ層
としてその摺動面に多数の角錐状Fe結晶を有するもの
を開発した(例えば、特願平4−351333号明細書
および図面参照)。
【0005】このように構成すると、相隣る両Fe結晶
は相互に食込んだ状態を呈し、したがって摺動面は、多
数の微細な山部と、それら山部の間に形成された多数の
微細な谷部と、山部相互の食込みに因る多数の微細な沢
部とからなる入組んだ様相を呈するので、Feメッキ層
の保油性が良好となり、またFe結晶における先端部側
の優先的摩耗によってFeメッキ層の初期なじみ性も良
好となる。これによりFeメッキ層の耐焼付き性の向上
が図られる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが、前記摺動面
構成体について種々検討を加えたところ、より厳しい摺
動環境においては、Fe結晶が角錐状をなすことから局
部的に面圧が高くなるため動摩擦係数が比較的大きくな
り、その結果、摩耗量が増加傾向にある、ということが
判明した。
【0007】本発明は前記に鑑み、無機質結晶の形態を
変えることによって、耐摩耗性、耐焼付き性等の耐久性
を改善し得るようにした前記無機質皮膜を提供すること
を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明に係る無機質皮膜
は、無機質結晶の集合体より構成され、その集合体は、
頂部側が湾曲している多数の角錐状無機質結晶を有する
ことを特徴とする。
【0009】
【作用】無機質皮膜を摺動面構成体として用いた場合、
無潤滑下においては各角錐状無機質結晶の頂部側に存す
る湾曲面が、相手部材と早期に面接触して動摩擦係数が
小さくなり、また角錐状無機質結晶が微細であることか
ら摺動荷重の分散が図られ、これにより摺動面構成体の
耐摩耗性および耐焼付き性を向上させることができる。
【0010】潤滑下においては、摺動面が相隣る両角錐
状無機質結晶の食込みに起因して入組んだ様相を呈する
と共にオイルが各角錐状無機質結晶の頂部側に存する湾
曲空間にも保持されるので、摺動面構成体の保油性が極
めて良好となり、その結果、耐焼付き性の一層の向上が
図られる。
【0011】さらに、無機質皮膜をコーティング用下地
層として用いた場合には、各角錐状無機質結晶の前記湾
曲空間にコーティング層の一部が入込むので、無機質皮
膜はコーティング層に対して強力なアンカ効果を発揮す
る。
【0012】
【実施例】図1(A)において、内燃機関用カムシャフ
ト1は鋳鉄製母材2を有し、その母材2のジャーナル部
3外周面に層状摺動面構成体(無機質皮膜)4が形成さ
れる。摺動面構成体4は金属結晶(無機質結晶)の集合
体より構成される。その集合体は、図1(B),2,3
に示すように頂部a側が湾曲している多数の角錐状、図
示例では六角錐状金属結晶(角錐状無機質結晶)51
有する。
【0013】摺動面構成体4を前記のように構成する
と、無潤滑下においては各六角錐状金属結晶51 の頂部
a側に存する湾曲面bが、軸受ホルダと早期に面接触し
て動摩擦係数が小さくなり、また六角錐状金属結晶51
が微細であることから摺動荷重の分散が図られ、これに
より摺動面構成体4の耐摩耗性および耐焼付き性を向上
させることができる。
【0014】潤滑下においては、摺動面(皮膜表面)4
aが相隣る両六角錐状金属結晶51の食込みに起因して
入組んだ様相を呈すると共にオイルが各六角錐状金属結
晶51 の頂部a側に存する湾曲空間cにも保持されるの
で、摺動面構成体4の保油性が極めて良好となり、その
結果、耐焼付き性の一層の向上が図られる。
【0015】図4に示すように、六角錐状金属結晶51
は体心立方構造(bcc構造)を持ち、且つミラー指数
で(hhh)面を、摺動面4a側に向けた(hhh)配
向性金属結晶である。集合体における(hhh)配向性
金属結晶の存在率SはS≧40%に設定される。(hh
h)配向性金属結晶は母材2より柱状に成長し、したが
って六角錐状金属結晶51 は柱状晶の先端部を構成す
る。
【0016】湾曲面bを持つ多数の六角錐状金属結晶5
1 を備えた摺動面構成体4の製作に当っては、図5に示
すようにメッキ処理によって直立、またはそれに近い状
態の多数の六角錐状金属結晶51 を有するメッキ層を形
成し、次いでそれら六角錐状金属結晶51 の頂部a側を
d方向へ押圧して曲げる、といった手段が採用される。
【0017】六角錐状金属結晶51 は、同様に(hh
h)配向性金属結晶である三角錐状金属結晶に比べて平
均粒径が小さく、且つ粒径も略均一である。六角錐状金
属結晶51 において、粒径と高さとの間には相関関係が
あり、したがって粒径が略均一である、ということは高
さも略等しいということである。
【0018】図6に示すように、摺動面4aに沿う仮想
面6に対する(hhh)面の傾きは六角錐状金属結晶5
1 の傾きとなって現われるので、湾曲加工、摺動面構成
体4の保油性等に影響を与える。そこで、(hhh)面
が仮想面6に対してなす傾き角θは0°≦θ≦15°に
設定される。この場合、(hhh)面の傾き方向につい
ては限定されない。傾き角θがθ>15°になると、湾
曲加工性等が低下する。
【0019】bcc構造を持つ金属結晶としては、F
e、Cr、Mo、W、Ta、Zr、Nb、V等の単体ま
たは合金の結晶を挙げることができる。
【0020】摺動面構成体4用メッキ層を形成するため
のメッキ処理において、通電法として直流法を適用した
電気Feメッキ処理を行う場合の基本的条件は、表1,
表2の通りである。
【0021】
【表1】 有機系添加剤としては、尿素、サッカリン等が用いられ
る。
【0022】
【表2】 前記条件下で行われる電気Feメッキ処理において、メ
ッキ浴組成および処理条件を変えることによって(hh
h)配向性Fe結晶の析出、その存在量等を制御する。
【0023】通電法としてはパルス電流法も適用され、
そのパルス電流法において、メッキ用電源の電流Iは、
図7に示すようにその電流Iが最小電流Imin から立上
って最大電流Imax に至り、次いで最小電流Imin へ下
降するごとく、時間Tの経過に伴いパルス波形を描くよ
うに制御される。
【0024】そして、電流Iの立上り開始時から下降開
始時までの通電時間をTONとし、また先の立上り開始時
から次の立上り開始時までを1サイクルとして、そのサ
イクル時間をTc としたとき、通電時間TONとサイクル
時間Tc との比、即ち、時間比TON/Tc はTON/Tc
≦0.45に設定される。最大陰極電流密度CDmaxは
CDmax ≧4A/dm2 に、また平均陰極電流密度CDm
はCDm≧2A/dm2にそれぞれ設定される。
【0025】メッキ処理としては、電気メッキ処理の外
に、例えば気相メッキ法であるPVD法、CVD法、ス
パッタ法、イオンプレーティング等を挙げることができ
る。スパッタ法によりW、Moメッキを行う場合の条件
は、例えばAr圧力 0.2〜1Pa、平均Ar加速電
力 直流1〜1.5kW、母材温度 150〜300℃
である。CVD法によりWメッキを行う場合の条件は、
例えば原材料 WF6、ガス流量 2〜15cc/min 、
チャンバ内圧力 50〜300Pa、母材温度400〜
600℃、ArFエキシマレーザの平均出力 5〜40
Wである。
【0026】一方、集合体が、図8,9に示すように頂
部a側が湾曲している多数の四角錐状金属結晶52 を有
する場合、その四角錐状金属結晶52 は、図10に示す
ように面心立方構造(fcc構造)を持ち、且つミラー
指数で(3hhh)面を摺動面4a側に向けた(3hh
h)配向性金属結晶である。集合体における(3hh
h)配向性金属結晶の存在率SはS≧40%に設定され
る。(3hhh)配向性金属結晶は母材2より柱状に成
長し、したがって四角錐状金属結晶52 は柱状晶の先端
部を構成する。
【0027】湾曲面bを持つ多数の四角錐状金属結晶5
2 を備えた摺動面構成体4の製作に当っては、前記同様
に図11に示すようにメッキ処理によって直立、または
それに近い状態の多数の四角錐状金属結晶52 を有する
メッキ層を形成し、次いでそれら四角錐状金属結晶52
の頂部a側をd方向へ押圧して曲げる、といった手段が
採用される。
【0028】図12に示すように、摺動面4aに沿う仮
想面6に対する(3hhh)面の傾きは四角錐状金属結
晶52 の傾きとなって現われるので、湾曲加工等に影響
を与える。そこで、(3hhh)面が仮想面6に対して
なす傾き角θは、前記同様に0°≦θ≦15°に設定さ
れる。この場合、(3hhh)面の傾き方向については
限定されない。傾き角θがθ>15°になると、湾曲加
工性等が低下する。
【0029】fcc構造を持つ金属結晶としては、P
b、Ni、Cu、Pt、Al、Ag、Au等の単体また
は合金の結晶を挙げることができる。
【0030】摺動面構成体4用メッキ層を形成するため
のメッキ処理において、電気Niメッキ処理を行う場合
の基本的条件は、表3,4の通りである。通電法はFe
メッキ処理の場合と同じであるが、この実施例では直流
法が適用される。
【0031】
【表3】
【0032】
【表4】 前記条件下で行われる電気Niメッキ処理において、メ
ッキ浴組成および処理条件を変えることによって(3h
hh)配向性Ni結晶の析出、その存在量を制御する。
【0033】メッキ処理としては、電気メッキ処理の外
に、前記同様の気相メッキ法を挙げることができる。例
えば、スパッタ法によりPt、Alメッキを行う場合の
条件は、Ar圧力 0.8〜1Pa、Ar加速電力 直
流200〜1000W、母材温度 80〜300℃であ
る。またCVD法によりAlメッキを行う場合の条件
は、原材料 Al(CH3 3 、Al(CH3 3 ガス
流量 1〜10cc/min、チャンバ内圧力 50〜30
0Pa、母材温度 300〜600℃である。 〔実施例1〕複数の鋼板製チップの一面(面積1cm2
に、直流法またはパルス電流法を適用した電気Feメッ
キ処理を施すことによりFe結晶の集合体より構成され
たメッキ層を形成した。
【0034】表5,6は、メッキ層の例1〜10におけ
る電気Feメッキ処理条件を示す。
【0035】
【表5】
【0036】
【表6】 表7は、メッキ層の例1〜10における表面の結晶形態
および各配向性Fe結晶の存在率Sをそれぞれ示す。
【0037】
【表7】 存在率Sは、例1〜10のX線回折図(X線照射方向は
メッキ層表面に対して直角方向)に基づいて次のような
方法で求められたものである。一例として、例1につい
て説明すると、図13は例1のX線回折図であり、各配
向性Fe結晶の存在率Sは次式から求められた。なお、
例えば{110}配向性Fe結晶とは、{110}面を
メッキ層表面側に向けた配向性Fe結晶を意味する。 {110}配向性Fe結晶:S110 ={(I110 /IA
110 )/T}×100、 {200}配向性Fe結晶:S200 ={(I200 /IA
200 )/T}×100、 {211}配向性Fe結晶:S211 ={(I211 /IA
211 )/T}×100、 {310}配向性Fe結晶:S310 ={(I310 /IA
310 )/T}×100、 {222}配向性Fe結晶:S222 ={(I222 /IA
222 )/T}×100 ここで、I110 、I200 、I211 、I310 、I222 は各
結晶面のX線反射強度の測定値(cps)であり、また
IA110 、IA200 、IA211 、IA310 、IA222
ASTMカードにおける各結晶面のX線反射強度比で、
IA110 =100、IA200 =20、IA211 =30、
IA310 =12、IA222 =6である。さらにTは、T
=(I110 /IA110 )+(I200 /IA200 )+(I
211 /IA211 )+(I310 /IA310 )+(I222
IA222 )である。
【0038】図14は、例1におけるメッキ層表面の結
晶構造を示す顕微鏡写真である。図14において、多数
の六角錐状Fe結晶が観察される。この六角錐状Fe結
晶は(hhh)面、したがって{222}面をメッキ層
表面側に向けた{222}配向性Fe結晶である。この
場合、{222}配向性Fe結晶の存在率Sは、表7,
図13に示すように、S=97.3%である。
【0039】次に、例1〜5,7のメッキ層に湾曲加工
として、各チップを回転研磨ディスクの布による研磨面
に押圧する加工を施して、摺動面構成体4の例1〜5,
7を製作した。これらの例1〜5,7はメッキ層の例1
〜5,7にそれぞれ対応する。
【0040】図15は摺動面構成体4の例1の結晶構造
を示す顕微鏡写真であり、図15より、頂部側が湾曲し
ている多数の六角錐状Fe結晶が観察される。
【0041】摺動面構成体4の例2においては、図16
に示すように略全部の六角錐状Fe結晶51 が、その頂
部a側を摺動方向e前方に向けて湾曲している。
【0042】メッキ層の例6,8〜10は、湾曲加工せ
ずにそのメッキ層を摺動面構成体とした。また摺動面構
成体1〜5,7に対応する摺動面構成体として、湾曲加
工無しのメッキ層からなるものの例1a〜5a,7aを
用意した。 (a) 耐摩耗性について 摺動面構成体4の例1〜8、例1a〜5a、7aを持つ
チップと、Al合金(JIS AC8B)よりなるディ
スクとを用い、無潤滑下にて、ディスクの周速を0.5
m/sec に設定し、またチップに対する押圧荷重を段階
的に増加させて500Nに保持し、1km摺動後における
チップの重量減量を摩耗量として測定したところ、表8
の結果を得た。
【0043】
【表8】 図17は、{222}配向性Fe結晶の存在率Sとチッ
プの摩耗量との関係ををグラフ化したもので、図中、点
(1)〜(8)は例1〜8に、また点(1a)〜(5
a)、(7a)は例1a〜5a、7aにそれぞれ対応す
る。表8、図17から明らかなように、湾曲加工を施さ
れた例1〜5,7と湾曲加工を施されていない例1a〜
5a、7aとを比較すると、湾曲面bを持つ例1〜5,
7の方が例1a〜5a,7aに比べて耐摩耗性が優れて
いる。特に、例2の場合、頂部側が摺動方向前方に向っ
て湾曲していることから耐摩耗性は最高となる。湾曲面
bを持たない例6,8は耐摩耗性が低い。 (b) 耐焼付き性について 摺動面構成体4の例1〜10、例1a〜5a、7aを持
つチップと、Al合金(JIS AC8B)よりなるデ
ィスクとを用い、オイル供給量を0.3ml/min に、ま
たディスクの周速を15m/sec にそれぞれ設定し、さ
らにチップに対する押圧荷重を段階的に増加させて動摩
擦係数の急激な上昇時を焼付き発生時として焼付き発生
荷重を測定したところ、表9の結果を得た。
【0044】
【表9】 図18は、{222}配向性Fe結晶の存在率Sと焼付
き発生荷重との関係をグラフ化したもので、図中、点
(1)〜(10)は例1〜10に、また点(1a)〜
(5a)、(7a)は例1a〜5a,7aにそれぞれ対
応する。表9、図18から明らかなように、湾曲加工を
施された例1〜5,7と、湾曲加工を施されていない例
1a〜5a,7aとを比較すると、湾曲面bを持つ例1
〜5,7の方が例1a〜5a,7aに比べて耐焼付き性
が優れている。特に、例2の場合、頂部側が摺動方向前
方に向って湾曲していることから、耐焼付き性は最高と
なる。湾曲面bを持たない例6,8〜10は耐焼付き性
が低い。 (c) 摩擦係数について 摺動面構成体4の例1〜8、例1a〜5a、7aを持つ
チップと、Al合金(JIS AC8B)よりなるディ
スクとを用い、オイル供給量を0.3ml/minに、また
ディスクの周速を15m/sec にそれぞれ設定し、さら
にチップに対する押圧荷重を段階的に増加させて250
Nにおける平均動摩擦係数μを測定したところ、表10
の結果を得た。
【0045】
【表10】 図19は、{222}配向性Fe結晶の存在率Sと平均
動摩擦係数μとの関係をグラフ化したもので、図中、点
(1)〜(8)は例1〜8に、また点(1a)〜(5
a),(7a)は例1a〜5a,7aにそれぞれ対応す
る。表10、図19から明らかなように、湾曲加工を施
された例1〜5,7と、湾曲加工を施されていない例1
a〜5a,7aとを比較すると、湾曲面bを持つ例1〜
5,7の方が例1a〜5a,7aに比べて平均動摩擦係
数μが小さい。特に、例2の場合、頂部が摺動方向前方
に向って湾曲していることから、平均動摩擦係数μは最
小となる。湾曲面bを持たない例6,8は平均動摩擦係
数μが比較的高い。
【0046】〔実施例II〕複数の鋼板製チップの一面
(面積1cm2 )に、直流法を適用した電気Niメッキ処
理を施すことによりNi結晶の集合体より構成されたメ
ッキ層を形成した。
【0047】表11,12は、メッキ層の例1〜6にお
ける電気Niメッキ処理条件を示す。
【0048】
【表11】
【0049】
【表12】 表13は、メッキ層の例1〜6における表面の結晶形態
および各配向性Ni結晶の存在率Sをそれぞれ示す。
【0050】
【表13】 存在率Sは、例1〜6のX線回折図(X線照射方向はメ
ッキ層表面に対して直角方向)に基づいて次のような方
法で求められたものである。一例として、例1について
説明すると、図20は例1のX線回折図であり、各配向
性Ni結晶の存在率Sは次式から求められた。なお、例
えば{111}配向性Ni結晶とは、{111}面をメ
ッキ層表面側に向けた配向性Ni結晶を意味する。 {111}配向性Ni結晶:S111 ={(I111 /IA
111 )/T}×100、 {200}配向性Ni結晶:S200 ={(I200 /IA
200 )/T}×100、 {220}配向性Ni結晶:S220 ={(I220 /IA
220 )/T}×100、 {311}配向性Ni結晶:S311 ={(I311 /IA
311 )/T}×100 ここで、I111 、I200 、I220 、I311 は各結晶面の
X線反射強度の測定値(cps)であり、またI
111 、IA200 、IA220 、IA311 はASTMカー
ドにおける各結晶面のX線反射強度比で、IA111 =1
00、IA200 =42、IA220 =21、IA311 =2
0である。さらにTは、T=(I111 /IA111 )+
(I200 /IA200 )+(I220 /IA220 )+(I
311 /IA311 )である。
【0051】図21は、例1におけるメッキ層表面の結
晶構造を示す顕微鏡写真である。図21において、多数
の四角錐状Ni結晶が観察される。この四角錐状Ni結
晶は(3hhh)面、したがって{311}面をメッキ
層表面側に向けた{311}配向性Ni結晶である。こ
の場合、{311}配向性Ni結晶の存在率Sは、表1
3、図20に示すように、S=75%である。
【0052】次に、例1〜6のメッキ層に湾曲加工とし
て、前記同様に、各チップを回転研磨ディスクの布によ
る研磨面に押圧する加工を施して、摺動面構成体4の例
1〜6を製作した。これらの例1〜6はメッキ層の例1
〜6に対応する。
【0053】またメッキ層の例1を用いて、頂部a側が
摺動方向e前方に向って湾曲する多数の四角錐状Ni結
晶を有する摺動面構成体の例7を製作した。さらに、摺
動面構成体の例1〜6に対応する摺動面構成体として、
湾曲加工無しのメッキ層からなるものの例1a〜6aを
用意した。
【0054】摺動面構成体4の例1,7,1aを持つチ
ップと、Al合金(JIS AC8B)よりなるディス
クとを用い、無潤滑下にて、ディスクの周速を0.5m
/sec に設定し、またチップに対する押圧荷重を段階的
に増加させて500Nに保持し、1km摺動後におけるチ
ップの重量減量を摩耗量として測定したところ、表14
の結果を得た。
【0055】
【表14】 表14から明らかなように、湾曲加工を施された例1
と、湾曲加工を施されていない例1aとを比較すると、
湾曲面bを持つ例1の方が例1aに比べて耐摩耗性が優
れている。例7の場合、頂部側が摺動方向前方に向って
湾曲していることから耐摩耗性は例1よりも良好とな
る。
【0056】次に、相手部材であるディスクの摩耗状況
を調べるため、摺動面構成体4の例1〜7、例1a〜6
aを持つチップと、Al合金(JIS AC8B)より
なるディスクとを用い、オイル供給量を0.3ml/min
に、またディスクの周速を5m/sec にそれぞれ設定
し、またチップに対する押圧荷重を段階的に増加させて
500Nに保持し、10km摺動後におけるディスクの1
cm2 当りの重量減量を摩耗量として測定したところ、表
15の結果を得た。
【0057】
【表15】 図22は、{311}配向性Ni結晶の存在率Sとディ
スクの摩耗量との関係をグラフ化したもので、図中、点
(1)〜(7)は例1〜7に、また点(1a)〜(6
a)は例1a〜6aにそれぞれ対応する。表15,図2
2から明らかなように、湾曲加工を施された例1〜6を
用いると、湾曲加工を施されていない例1a〜6aを用
いた場合に比べてディスクの摩耗量を抑制することがで
きる。特に、例7の場合、頂部が摺動方向前方に向って
湾曲していることからディスクの摩耗量抑制効果は最高
となる。
【0058】摺動面構成体は、例えば次のような内燃機
関用部品等の摺動部に適用される。ピストン(リング
溝)、ピストンリング、ピストンピン、コンロッド、ク
ランクシャフト、軸受メタル、オイルポンプロータ、オ
イルポンプロータハウジング、スプリング(端面)、ス
プリングシート、スプリングリテーナ、コッタ、ロッカ
アーム、ローラベアリングアウタケース、ローラベアリ
ングインナケース、バルブステム、バルブフェイス、油
圧タペット、ウォータポンプロータシャフト、プーリ、
ギア、トランスミッションシャフト部、クラッチプレー
ト、ワッシャ、ボルト(座面、ねじ部)。
【0059】また無機質皮膜を、前記金属に限らず、立
方晶構造を持つ炭化物、酸化物、窒化物等のセラミック
スより構成することも可能である。
【0060】
【発明の効果】本発明によれば、結晶構造を前記のよう
に特定することによって、耐摩耗性、耐焼付き性等の耐
久性を改善されると共にコーティング用下地層として用
いた場合には強力なアンカ効果を発揮する無機質皮膜を
提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)はカムシャフトの斜視図、(B)は
(A)のB−B線拡大断面図である。
【図2】頂部側が湾曲している六角錐状金属結晶の斜視
図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】体心立方構造およびその(hhh)面を示す斜
視図である。
【図5】六角錐状金属結晶の斜視図である。
【図6】体心立方構造における(hhh)面の傾きを示
す説明図である。
【図7】メッキ用電源の出力波形図である。
【図8】頂部側が湾曲している四角錐状金属結晶の斜視
図である。
【図9】図8の9−9線断面図である。
【図10】面心立方構造およびその(3hhh)面を示
す斜視図である。
【図11】四角錐状金属結晶の斜視図である。
【図12】面心立方構造における(3hhh)面の傾き
を示す説明図である。
【図13】メッキ層の一例におけるX線回折図である。
【図14】メッキ層の一例における表面の結晶構造を示
す顕微鏡写真である。
【図15】摺動面構成体の一例における摺動面の結晶構
造を示す顕微鏡写真である。
【図16】摺動面構成体の他例における概略断面図であ
る。
【図17】{222}配向性Fe結晶の存在率とチップ
の摩耗量との関係を示すグラフである。
【図18】{222}配向性Fe結晶の存在率と焼付き
発生荷重との関係を示すグラフである。
【図19】{222}配向性Fe結晶の存在率と平均動
摩擦係数との関係を示すグラフである。
【図20】メッキ層の他例におけるX線回折図である。
【図21】メッキ層の他例における表面の結晶構造を示
す顕微鏡写真である。
【図22】{311}配向性Ni結晶の存在率とディス
クの摩耗量との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
4 摺動面構成体(無機質皮膜) 4a 摺動面(皮膜表面) 51 六角錐状金属結晶(無機質結晶) 52 四角錐状金属結晶(無機質結晶) a 頂部 e 摺動方向
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 堂坂 健児 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会 社本田技術研究所内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 無機質結晶の集合体より構成され、その
    集合体は、頂部(a)側が湾曲している多数の角錐状無
    機質結晶(51 ,52 )を有することを特徴とする無機
    質皮膜。
  2. 【請求項2】 前記角錐状無機質結晶は体心立方構造を
    有し、且つミラー指数で(hhh)面を皮膜表面側に向
    けた(hhh)配向性無機質結晶であり、前記集合体に
    おける(hhh)配向性無機質結晶の存在率SがS≧4
    0%である、請求項1記載の無機質皮膜。
  3. 【請求項3】 前記角錐状無機質結晶は面心立方構造を
    有し、且つミラー指数で(3hhh)面を皮膜表面側に
    向けた(3hhh)配向性無機質結晶であり、前記集合
    体における(3hhh)配向性無機質結晶の存在率Sが
    S≧40%である、請求項1記載の無機質皮膜。
  4. 【請求項4】 無機質皮膜は摺動面構成体(4)であっ
    て、頂部(a)側が摺動方向(e)前方に向って湾曲し
    ている多数の角錐状無機質結晶(51 ,52)を有す
    る、請求項1,2または3記載の無機質皮膜。
JP8557094A 1994-03-31 1994-03-31 無機質皮膜 Pending JPH07277898A (ja)

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