JP2005097704A - 摺動部材 - Google Patents

Abstract

【課題】 良好な初期なじみ性を有すると共に構成元素としてＰｂを含まない，公害防止促進上有益なすべり軸受を提供する。
【解決手段】 摺動部材１は，金属製基板２と，その基板２上に設けられた金属製ライニング層３と，そのライニング層３上に電気メッキ法により形成されて，相手部材４との摺動面５を持つ金属製表面層６とを備えている。ライニング層３はＣｕ，Ａｌ，Ｃｕ合金およびＡｌ合金から選択される一種よりなる。表面層６はＳｎよりなり，且つライニング層３から成長した複数の柱状晶７を有する。
【選択図】 図２

Description

本発明は摺動部材に関する。

従来，摺動部材であるすべり軸受として，金属製基板と，その基板上に設けられた金属製ライニング層と，そのライニング層上に電気メッキ法により形成されて，相手部材との摺動面を持つ金属製表面層とを備えたものが知られている（例えば，特許文献１参照）。
特開平５−２０２９３８号公報

しかしながら従来のすべり軸受は，そのライニング層がＣｕ−Ｐｂ系合金より構成され，また表面層がＰｂ合金より構成されているので，公害防止を促進する上で好ましくない。

本発明は，良好な初期なじみ性を有すると共に構成元素としてＰｂを含まない，公害防止促進上有益な前記摺動部材を提供することを目的とする。

前記目的を達成するため本発明によれば，金属製基板と，その基板上に設けられた金属製ライニング層と，そのライニング層上に電気メッキ法により形成されて，相手部材との摺動面を持つ金属製表面層とを備え，前記ライニング層はＣｕ，Ａｌ，Ｃｕ合金およびＡｌ合金から選択される一種よりなり，前記表面層はＳｎよりなり，且つ前記ライニング層から成長した複数の柱状晶を有する摺動部材が提供される。

前記構成において，摺動部材使用開始時に相手部材と摺擦する表面層は，潤滑性を有するＳｎより形成されているので，良好な初期なじみ性を得ることができる。また表面層は複数の柱状晶を有することから良好な熱伝導性を備え，これにより表面層の発生熱は，Ｃｕ等よりなるライニング層を通じて効率良く金属製基板に逃がされるので，Ｓｎが低融点であるにも拘らず表面層の溶融が防止される。

表面層の摩滅後はライニング層が現出し，それは，Ｃｕ等が持つ潤滑性および熱伝導性を有することから相手部材との摺擦において優れた耐久性を発揮する。

さらに表面層およびライニング層はその構成元素としてＰｂを含まないので公害防止を促進する上で有益である。

本発明によれば，前記のように構成することによって，良好な初期なじみ性を有すると共に構成元素としてＰｂを含まない，公害防止促進上有益な摺動部材を提供することができる。

図１，２において，摺動部材としてのすべり軸受１はエンジンにおけるクランクシャフトのジャーナル部，コンロッドの大端部等に適用されるもので，第１および第２半体１₁ ，１₂ よりなる。両半体１₁ ，１₂ は同一構造を有し，金属製基板２と，その基板２上に設けられた金属製ライニング層３と，そのライニング層３上に電気メッキ法により形成されて，相手部材４との摺動面５を持つ金属製表面層６とを備えている。

基板２は，この実施例では，いわゆる裏金であって，圧延鋼板より構成され，その厚さはすべり軸受１の設定厚さにより決められる。ライニング層３は焼結および圧延を経て形成されたもので，Ｃｕ，Ａｌ，Ｃｕ合金およびＡｌ合金から選択される一種よりなり，構成元素としてＰｂを含まない。Ｃｕ合金には，Ｃｕ−６ｗｔ％Ｓｎ合金等が該当し，またＡｌ合金にはＡｌ−２０ｗｔ％Ｓｎ−３ｗｔ％Ｓｉ合金，Ａｌ−１２ｗｔ％Ｓｎ−３ｗｔ％Ｓｉ合金等が該当する。表面層６はＳｎよりなり，且つライニング層３から成長すると共に先端部が四角錐形をなす複数の柱状晶７を有する。表面層６の厚さｔは５μｍ≦ｔ≦１５μｍが適当である。

前記のように構成すると，すべり軸受１の使用開始時に相手部材４と摺擦する表面層６は，潤滑性を有するＳｎより形成されているので，良好な初期なじみ性を得ることができる。また表面層６は複数の柱状晶７を有することから良好な熱伝導性を備え，これにより表面層６の発生熱は，Ｃｕ等よりなるライニング層３を通じて効率良く金属製基板２に逃がされるので，Ｓｎが低融点であるにも拘らず表面層６の溶融が防止される。

表面層６の熱伝導性を良好にするためには，その表面層６における柱状晶７の存在率は，その表面層６の表面において全部の四角錐形先端部８が占める面積の比率，つまり面積率Ａに変換して，Ａ≧４０％（１００％を含む）であることが好ましい。この面積率Ａは，顕微鏡写真において，所定の区域の面積をａとし，その区域内にて複数の四角錐形先端部８が占める面積をｂとしたとき，Ａ＝（ｂ／ａ）×１００（％）として求められる。

表面層６の摩滅後はライニング層８が現出し，それは，Ｃｕ等が持つ潤滑性および熱伝導性を有することから相手部材４との摺擦において優れた耐久性を発揮する。

さらに表面層６およびライニング層３はその構成元素としてＰｂを含まないので公害防止を促進する上で有益である。

Ｓｎよりなる表面層６を形成する場合において，そのメッキ浴条件は表１の通りである。

表面層６を形成する電気メッキ法ではパルス電流法が適用される。そのパルス電流法においては，図３に示すように電流の立上り開始時から下降開始時までの通電時間Ｔ_ONは１ｍｓ≦Ｔ_ON ≦４ｍｓに，先の立上り開始時から次の立上り開始時までを１サイクルとして，そのサイクル時間をＴ_c としたとき，時間比Ｔ_ON／Ｔ_c はＴ_ON／Ｔ_c ≦０．２にそれぞれ設定される。また最大陰極電流密度ＣＤｍａｘはＣＤｍａｘ≧１０Ａ／ｄｍ² に，平均陰極電流密度ＣＤｍはＣＤｍ≧４Ａ／ｄｍ² にそれぞれ設定される。

［実施例］
厚さ２．５mmの冷間圧延鋼板（ＪＩＳ ＳＰＣＣ）およびＣｕ−６ｗｔ％Ｓｎ合金粉末を用意し，次のような方法で，基板２とライニング層３とよりなる，断面半円弧状をなす２つの積層体を得た。即ち，冷間圧延鋼板上にＣｕ−６ｗｔ％Ｓｎ合金よりなる多孔質焼結層を形成する工程と，多孔質焼結層に圧延加工を施して真密度化する工程と，切断加工を行って，冷間圧延鋼板よりなる基板２と高密度焼結体よりなるライニング層３とを備えた２つの素材を得る工程と，各素材に冷間にて曲げ加工を施す工程とを行った。

両積層体のライニング層３表面に，それぞれ電気メッキ法により厚さｔが約１４μｍの表面層６を形成した。

表２はメッキ浴条件を，また表３は通電条件をそれぞれ示す。

このようにして得られたすべり軸受１を実施例とする。

図４は，実施例における表面層６断面の結晶構造を示す顕微鏡写真の写図であり，複数のＳｎ柱状晶７が観察される。この場合，表面層６表面，つまり摺動面５における複数の四角錐形先端部８の面積率ＡはＡ＝４０％であった。

比較のため，前記同様の両積層体のライニング層３表面に，それぞれ電気メッキ法により厚さ約２μｍの表面層６を形成した。この場合，メッキ浴としては表２のものが用いられ，また通電法には直流法が適用され，その陰極電流密度ＣＤは４Ａ／dm² に設定された。このようにして得られたすべり軸受を比較例とする。比較例の表面層６表面，つまり摺動面５を顕微鏡観察したところ複数の粒状晶が認められた。

実施例および比較例について，次のような焼付きテストを行った。即ち，ＪＩＳ Ｓ５０Ｃよりなる回転軸の外周面に実施例等を押圧し，摺動速度２０ｍ／ｓ，給油温度１４０℃および給油圧力１０ＭＰａにて，その押圧荷重を増加量３ｋＮで段階的に上昇させ，押圧荷重が６０ｋＮに達したときテストを停止して，実施例等の摺動面を顕微鏡観察した。

実施例においてはＳｎよりなる表面層６が摩耗していたが，その形態を維持していた。つまり，実施例においては，表面層６の温度がＳｎの融点（約２３２℃）未満に保たれて，焼付きの発生の無いことが判明した。比較例においては，表面層６に流動が生じており，したがって焼付きの発生が認められた。

なお，本発明はすべり軸受に限らず他の摺動部材にも当然に適用される。

すべり軸受の斜視図である。 すべり軸受の要部断面図である。 電気メッキ用電源の出力波形図である。 実施例において，表面層断面の結晶構造を示す顕微鏡写真の写図である。

符号の説明

１………すべり軸受（摺動部材）
２………基板
３………ライニング層
４………相手部材
５………摺動面
６………表面層
７………柱状晶

Claims (1)

1. 金属製基板（２）と，その基板（２）上に設けられた金属製ライニング層（３）と，そのライニング層（３）上に電気メッキ法により形成されて，相手部材（４）との摺動面（５）を持つ金属製表面層（６）とを備え，前記ライニング層（３）はＣｕ，Ａｌ，Ｃｕ合金およびＡｌ合金から選択される一種よりなり，前記表面層（６）はＳｎよりなり，且つ前記ライニング層（３）から成長した複数の柱状晶（７）を有することを特徴とする摺動部材。

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