JPH0724835A - タイヤ加硫成形用ブラダーおよびそれを製造するための金型 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 加硫成形後のタイヤの性能を損なわずに、加
硫成形時の空気排出効果を高めてタイヤ製品の品質を向
上でき、しかも簡単に製造できるタイヤ加硫成形用ブラ
ダーを提供する。 【構成】 生タイヤの内表面とブラダーの外表面とのあ
いだの空気を排出されるように、ブラダー１の外表面３
に凹凸部４が設けられてなるタイヤ加硫成形用ブラダ
ー。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は車輌用タイヤの加硫成形
時に膨張することによって生タイヤを金型内壁に押し付
けるタイヤ加硫成形用ブラダーおよびそれを製造するた
めの金型に関し、とくに、ブラダーとタイヤの内表面と
のあいだに空気が容易に排出され、かつ、加工が容易で
あるタイヤ加硫成形用ブラダーおよびそれを製造するた
めの金型に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、タイヤの加硫成形は、図７に示す
ように生タイヤ14を加熱した金型15に入れ、その生タイ
ヤ14の中に弾性、可膨張性の中空体からなるブラダー16
を入れ、高温スチームをブラダー16内に吹き込むことに
よってブラダー16を膨張させ、生タイヤ14を矢印Ｃ方向
に向かって金型15の内壁に押し付け、生タイヤ14の外表
面に所望の形状、たとえばトレッド部（タイヤが路面と
接触する部分）などをうるようにしている。なお、タイ
ヤ加硫成形後に、タイヤとブラダー16とが離脱しやすい
ように、予め生タイヤ14の内表面には離脱剤が塗布され
ている。ところで、前述したタイヤ加硫成形用ブラダー
では、タイヤ加硫成形時に、ブラダーとタイヤの内表面
とのあいだに空気が残存すると、タイヤにゴム流れ不良
をきたし製品の均一性を害してしまうので、ブラダーの
外表面に沿って空気が排出されるように、ブラダーの外
表面に溝状のベントラインを設けている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】かかるベントライン
は、空気の排出性をよくするために深くすると、加硫成
形後のタイヤ内部に大きな突起が形成されてしまい、重
荷重用のタイヤなどではこの部分からクラッキングが発
生しやすくなる。ベントラインを幅広にすると、タイヤ
のインナーライナーの厚さ変化が大きくなり、ケースの
トッピングゴムに波打ち現象をきたす。いずれにして
も、ベントラインの大きさがある限度をこえると、タイ
ヤの性能に悪影響を及ぼしやすい。また、ベントライン
はブラダーの湾曲した外表面に形成しなければならない
ので、タイヤ性能に悪影響を及ぼさない適性形状のベン
トラインを加工しにくいという問題点を残している。

【０００４】前記従来技術の欠点を解消すべく、本発明
は加硫成形後のタイヤの性能を損なわずに、加硫成形時
の空気排出効果を高めてタイヤ製品の品質を向上でき、
しかも、簡単に製造できるタイヤ加硫成形用ブラダーお
よびそれを製造するための金型を提供することを目的と
する。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明により、車輌用の
タイヤ加硫成形時に膨張することによって生タイヤを金
型内壁に押し付けるブラダーであって、生タイヤの内表
面とブラダーの外表面とのあいだの空気を排出されるよ
うに、ブラダーの外表面に凹凸部が設けられていること
を特徴とするタイヤ加硫成形用ブラダーが提供される。

【０００６】前記凹凸部の凹部は、ピッチが0.3 〜0.5m
m で、深さが0.02〜0.06mmであることが好ましい。

【０００７】また、凹凸部の断面上において空気が通過
できる面積率を55〜70％とすることが好ましい。

【０００８】本発明により、さらに、外部に配置した上
金型および下金型からなる製造金型と内部に配置した中
子とからなり、車輌用のタイヤ加硫成形時に膨張するこ
とによって生タイヤを金型内壁に押し付けるブラダーを
製造する金型であって、前記製造金型の内表面が凹凸部
を有することを特徴とするブラダーの製造金型が提供さ
れる。

【０００９】前記製造金型の内表面に、ショットブラス
トで凹凸部を形成しておくのが好ましい。

【００１０】

【作用】本発明のタイヤ加硫成形用ブラダーはその外表
面に設けた微小な凹凸部によって空気が排出できるの
で、タイヤ製品の品質向上が図れる。また、前記凹凸部
はブラダー製造金型にて刻印できるので、加工が簡単と
なる。

【００１１】

【実施例】以下、添付図面に基づいて本発明のタイヤ加
硫成形用ブラダー（以下、単にブラダーという）を詳細
に説明する。

【００１２】図１は本発明のタイヤ加硫成形用ブラダー
の斜視図、図２は本発明のタイヤ加硫成形用ブラダーの
成形方法を示す説明図、図３は本発明のタイヤ加硫成形
用ブラダーの外表面形状を示す模式図、図４はタイヤ加
硫成形用ブラダーおよび生タイヤの状態を示す断面図、
図５はタイヤ加硫成形時のブラダーの作動を示す説明
図、図６は表１に使用した記号を示す図である。

【００１３】図１に示すようにブラダー１は樽型をして
おり、タイヤ加硫成形金型に固定するために使用される
厚くされた環状のフランジ状縁端部２を上下に有してい
る。このブラダー１は中空の膨張可能な弾性体からなっ
ており、この中に高温スチームを圧入することによって
膨張し、図４に示すように生タイヤ14を金型15の内面に
押圧維持する。ブラダー１の外表面３には滑らかで微小
な凹凸部４が形成されている。

【００１４】図２に基づいてブラダー１の外表面３に凹
凸部４を形成する方法を説明する。５はブラダー１の外
部に配置され、ブラダー１の外部形状を与える製造金型
（５ａは下金型、５ｂは上金型）である。６はブラダー
１の内部に配置され、ブラダー１の内部形状を与える中
子である。前記下金型５ａおよび上金型５ｂの内表面７
には、両金型５ａ、５ｂをテーブル上で回転させつつエ
アーガンを用いて手動または自動にてφ1.0 〜1.2mm の
ビーズ（スチールボールやセラミックビーズ）をランダ
ムに吹き付ける、いわゆるショットブラストで微小な凹
凸部８が形成されている。こうした金型５でブラダー１
を加圧成形し、ブラダー１の外表面３に前記凹凸部８の
反転模様としての微小な凹凸部４を刻印する。

【００１５】この凹凸部４は図３に示すように、その凹
部９が外表面３上にて互いに連通し合っており、また凸
部10が高低差のある不均一さを呈している。なお、わか
り易くするために凹凸部４は極端に拡大して示してい
る。

【００１６】つぎに図４、図５にもとづいてブラダー１
の作動を説明する。金型15は分離可能で下部モールド15
ａと上部モールド15ｂとからなっている。この下部モー
ルド15ａの上に生タイヤ14を載置後、生タイヤ14の中に
前記ブラダー１を挿入し、上部モールド15ｂを被せる。
このときブラダー１のフランジ状縁端部２を下部モール
ド15ａと上部モールド15ｂとに設けた内径部12ならびに
クランプ材13に固定する。つぎにフランジ状縁端部２の
内側から高温スチームを圧入してブラダー１を矢印Ｃ方
向に膨ませつつ、上部モールド15ｂを下部モールド15ａ
に向かって閉じて、生タイヤ14を金型15（15ａ，15ｂ）
の内面に押圧する。この押圧に際し、ブラダー１が生タ
イヤ14に接近しだすと、図５に示すように生タイヤ14の
ゴムがブラダー１の外表面３上の凹部９を塞ぐ前に、生
タイヤ14の内面に塗布したマイカ、タルクを主成分とす
る離脱剤（インサイドペイント）17が高い凸部10の頂部
から凹部９へ流れ込んで、空気を凹部９からかき出す。
かき出された空気は離脱剤17の流動にともない互いに連
通し合う凹部９および低い凸部10周辺を伝わって生タイ
ヤ14とブラダー１との解放側である図４に示す矢印Ａお
よび矢印Ｂ方向の外部へと排出される。

【００１７】引き続き空気が排出されて図７に示すよう
に生タイヤ14は金型15に押し付けられ、加硫が行われ
る。この加硫工程でタイヤのトレッドパターンやサイド
ウォールの刻印などが型づけされるとともに、ゴムの分
子がつながる加硫反応が起こり、ゴム本来の弾性が生じ
る。

【００１８】なお、本実施例は凹凸部を設けたばあいの
みについて説明したが、これに浅い溝状ラインを設けて
もよい。

【００１９】

【表１】

【００２０】表１に本発明のブラダーを用いて加硫成形
したタイヤの性能を示す。

【００２１】図６は表１に使用した記号を示す説明図で
ある。まず、実施例３は凹部のピッチＰおよび深さＤを
それぞれ0.4mm および0.04mmの一定値としたばあいを示
す。この結果より、凹凸部を形成していないブラダーで
加硫成形したタイヤよりもタイヤの軽不良率が３％と低
減することが判明した。つぎに、実施例１により、凹部
のピッチＰを0.3 〜0.5mm とし、かつ凹部の深さＤを0.
02〜0.06mmとすると、タイヤのエアー残存がなくなって
タイヤの不良率が０％となりタイヤ製品の歩溜が向上す
ることがわかる。また、凹部に離脱剤が入り込むことか
らタイヤとブラダーとが食い付きにくくすべりやすくな
り、結果としてブラダーの使用回数（寿命）が向上する
ことがわかる。このように実施例２は、凹部のピッチＰ
および深さＤが一定値よりもランダムに形成する方が好
ましいことを示している。さて、前記凹部のピッチおよ
び凹部の深さはそれぞれ0.3mm 未満および0.02mm未満の
ばあいだと離脱剤が凹部を被いやすくなり、空気の流れ
を塞いでしまうことから、好ましくはそれぞれ0.3mm 以
上および0.02mm以上とする。さらに凹部のピッチが長過
ぎるばあいと深さが深過ぎるばあいでは、離脱剤が凹部
の底に達するまでに時間が長くなり過ぎてしまい、かえ
って空気を凹部の底からかき出す時間が遅くなり、空気
が残存しやすくなる。そこで、凹部のピッチおよび深さ
の上限は好ましくはそれぞれ0.5mm および0.06mmとす
る。

【００２２】つぎに実施例２より、断面の空気通過面積
率を実施例１より多くして65％とすることにより、さら
に空気が凹部および凸部周辺を伝わって、通り抜けやす
くなるため、空気残存がなくなりタイヤ製品の品質を維
持できることがわかる。しかし、空気通過面積率が70％
をこえると、かえって空気が残りやすくなり好ましくな
い。

【００２３】なお、断面の空気通過面積率とは、ブラダ
ー１と生タイヤ14とが有効に接するブラダーの凹凸部の
断面上において凸部を除いて空気が通過できる面積を、
この面積と凸部断面積の総和で割ったものである。

【００２４】前述した実施例ではショットブラストによ
り金型表面に凹凸を形成したが、これ以外にも、酸など
で金型表面をピッチ、時間を変化させ腐蝕させることに
より形成することができる。

【００２５】

【発明の効果】本発明のタイヤ加硫成形用ブラダーは、
その外表面に微小な凹凸部が設けられている。このため
タイヤ加硫成形時の空気排出を高めてタイヤ製品の品質
を向上できる。しかも前記凹凸部はブラダー成形用金型
にショットブラストなどで凹凸部を加工しておき、ブラ
ダー成形時に刻印するので、簡単に加工することができ
る。

【００２６】前記ブラダーに設けた凹部のピッチおよび
深さは好ましくはそれぞれ0.3 〜0.5mm および0.02〜0.
06mmとすることにより、またこれに加えて凹凸部におけ
る断面の空気通過面積率を好ましくは55〜70％とするこ
とにより安定してタイヤ製品の品質を向上することがで
きる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のタイヤ加硫成形用ブラダーの斜視図で
ある。

【図２】本発明のタイヤ加硫成形用ブラダーの成形方法
を示す説明図である。

【図３】本発明のタイヤ加硫成形用ブラダーの外表面形
状を示す模式図である。

【図４】タイヤ加硫成形用ブラダーおよび生タイヤの状
態を示す断面図である。

【図５】タイヤ加硫成形時のブラダーの作動を示す説明
図である。

【図６】表１に使用した記号を示す図である。

【図７】タイヤ加硫成形用ブラダーおよびタイヤの状態
を示す断面図である。

【符号の説明】

１ ブラダー ３ 外表面 ４ 凹凸部 ９ 凹部 10 凸部 14 生タイヤ

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 車輌用のタイヤ加硫成形時に膨張するこ
   とによって生タイヤを金型内壁に押し付けるブラダーで
   あって、生タイヤの内表面とブラダーの外表面とのあい
   だの空気が排出されるように、ブラダーの外表面に凹凸
   部が設けられていることを特徴とするタイヤ加硫成形用
   ブラダー。
2. 【請求項２】 前記凹凸部の凹部は、ピッチが0.3 〜0.
   5mm で、深さが0.02〜0.06mmである請求項１記載のブラ
   ダー。
3. 【請求項３】 前記生タイヤとブラダーとの有効な接触
   表面の凹凸部の断面上において、凸部に遮られずに空気
   が通過できる面積を、この面積と凸部断面積の総和で割
   った空気通過面積率が55〜70％である請求項２記載のブ
   ラダー。
4. 【請求項４】 外部に配置した上金型および下金型から
   なる製造金型と内部に配置した中子とからなり、車輌用
   のタイヤ加硫成形時に膨張することによって生タイヤを
   金型内壁に押し付けるブラダーを製造する金型であっ
   て、前記製造金型の内表面が凹凸部を有することを特徴
   とするブラダーの製造金型。
5. 【請求項５】 前記製造金型の凹凸部がショットブラス
   トにて形成されることを特徴とする請求項４記載の製造
   金型。