JPH07204841A - 非対称のど厚を有する裏波溶接ビードルート止端部の折れ込み状欠陥の防止方法 - Google Patents

非対称のど厚を有する裏波溶接ビードルート止端部の折れ込み状欠陥の防止方法

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JPH07204841A
JPH07204841A JP6018806A JP1880694A JPH07204841A JP H07204841 A JPH07204841 A JP H07204841A JP 6018806 A JP6018806 A JP 6018806A JP 1880694 A JP1880694 A JP 1880694A JP H07204841 A JPH07204841 A JP H07204841A
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健一 狩峰
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誠 奥村
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秀里 間渕
Haruo Shimomura
春夫 下村
Yorihito Nagai
順仁 永井
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 鋼構造物の溶接において、非対称のど厚を有
する裏波溶接ビードルート止端部近傍での溶接金属割れ
状の疑似欠陥を防止する方法を提供する。 【構成】 初層の裏波溶接や開先面へのバタリング溶接
に用いる溶接材料に、溶着金属の引張降伏強度または
0.2%耐力を母材より50MPaから150MPa低
くした軟質材を選定し、裏波溶接ビードルート止端部の
折れ込みによる疑似欠陥と防止する。また、初層裏波溶
接ビードの左右のど厚比率を60から100%に形成さ
せるか、初層溶接後ビードののど厚の大きい側をビード
表面側から2から5mmの深さに研削する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は鋼構造物全般にわたって
初層に裏波溶接が要求される多層溶接継手部において、
健全な溶接継手を得るための溶接方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】近年、鋼構造物の大型化とともに地球環
境問題の深刻化に伴って、鋼構造物に対する安全性の要
求は一段と厳しくなってきている。一方、非破壊検査機
器の性能向上に基づく検査技術の進歩に伴い、従来看過
されていた微小な溶接欠陥や類似の形態を示す疑似欠陥
が精度良く検出できるようになり、このような欠陥の許
容可否が将来的には問題となってくる可能性がある。
【0003】こうした微小な溶接欠陥あるいは疑似欠陥
とも考えられる例に、日本溶接協会規格のレ形開先多層
溶接割れ試験方法(WES 1105−1985)解説
図9に示される溶接金属割れ状欠陥がある。このような
ものは、レ形開先多層溶接をはじめとして隅肉多層溶接
や目違いのある突き合わせ溶接などの継手部、もしくは
鋼製部材が単に直交するのでなく複雑に会合する継手部
には、かなりの頻度で発生していると推定されている。
すなわち、図2は上記試験方法の解説図に準拠した溶接
部の顕微鏡組織のスケッチ図で、3は溶接金属、4は熱
影響部であり、そのうち5の部分が溶接金属の割れ状欠
陥である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記のような裏波溶接
ビードルート止端部近傍における溶接金属割れ状欠陥は
明確な溶接欠陥とはいえないものの極めて紛らわしく、
鋼構造物の大型化、地球環境問題の深刻化に伴う安全性
要求の厳格化とともにPL(製造物責任)の導入・普及
が進むと、その対応の困難さが増すばかりでなく、異常
に大きな応力が構造物に負荷された時の脆性亀裂発生お
よび繰り返し荷重がかかる構造物では疲労破壊の起点に
なりはしないかとの過剰な懸念を有していた。
【0005】従って、前記の溶接金属割れ状欠陥は、従
来認識されている溶接欠陥の範疇に属するものでなく、
しかも極めて軽微なものであると主張できるとしても、
一旦、当該構造物にトラブルが発生した場合、トラブル
と無関係であるとの証明には多大な負荷が予想され、そ
の対応に困難をきたすと考えられるので解決しておく必
要がある課題である。
【0006】本発明は鋼構造物の溶接において、非対称
のど厚を有する裏波溶接ビードルート止端部近傍での溶
接金属割れ状の疑似欠陥を防止する方法を提供すること
を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は前記課題を解決
するものであって、初層に裏波溶接が要求されるレ形開
先多層溶接、隅肉多層溶接および目違いのある突き合わ
せ多層溶接継手において、溶着金属の引張降伏強度また
は0.2%耐力を母材より50MPaから150MPa
低くした軟質溶接材料を用いて初層の裏波溶接を行うこ
とを特徴とする非対称のど厚を有する裏波溶接ビードル
ート止端部の折れ込み状欠陥の防止方法である。
【0008】また、ルートギャップが4mmから15m
mの開先において、初層裏波溶接に先立ち開先面にバタ
リングを行うに際して、溶着金属の引張降伏強度または
0.2%耐力を母材より50MPaから150MPa低
くした軟質溶接材料を用いてバタリング溶接を行うこ
と、また、バタリングに引き続く初層裏波溶接も前記軟
質溶接材料を用いて行うことを特徴とする非対称のど厚
を有する裏波溶接ビードルート止端部の折れ込み状欠陥
の防止方法である。
【0009】また、初層裏波溶接ビードを形成後、ビー
ドのど厚の大きい側をビード表面側から2から5mmの
深さに研削し、左右のど厚比率を60から100%に整
形することを特徴とする非対称のど厚を有する裏波溶接
ビードルート止端部の折れ込み状欠陥の防止方法であ
る。
【0010】さらにまた、初層裏波溶接ビードの形成時
に、溶接入熱を開先幅方向に分散させることにより、裏
波溶接ビードの平均のど厚量を5から15mmにすると
共に、左右のど厚比率が60から100%になる溶接ビ
ードを形成させることを特徴とする非対称のど厚を有す
る裏波溶接ビードルート止端部の折れ込み状欠陥の防止
方法である。
【0011】さらにまた、溶接金属の引張降伏強度また
は0.2%耐力を母材より50MPaから150MPa
低くした軟質溶接材料を用いて初層の裏波溶接および/
または開先面へのバタリング溶接を行い、その後の第2
層以降を通常の溶接材料を用いて溶接するに際して、第
2層および/または第3層溶接ビードを2パスに振り分
けて溶接することを特徴とする非対称のど厚を有する裏
波溶接ビードルート止端部の折れ込み状欠陥の防止方法
である。
【0012】
【作用】本発明の対象とする溶接方法は被覆アーク溶
接、セルフシールドアーク溶接、ガスシールドアーク溶
接、潜弧(サブマージドアーク)溶接とし、積層数は2
層以上とする。また、対象とする鋼構造物は、初層裏波
溶接が許容されるもので、かつ溶接継手部も重要な強度
部材として配慮されねばならない構造物であり、適用さ
れる鋼材は500MPa以上600MPa級鋼、すなわ
ち、降伏強度ないし0.2%耐力水準で350〜500
MPaのものである。
【0013】本発明者らがかかる鋼構造物におけるシー
ム溶接または円周溶接における裏波溶接ビードルート止
端部の割れ状疑似欠陥について詳細に調査した結果、こ
の疑似欠陥は従来認知されている溶接欠陥のどれでもな
く、第2層または第3層ビード以降の溶接金属凝固時の
収縮応力によって、裏波溶接ビードルート止端部近傍に
収縮変位が集中する結果、止端部が局部的に内側へ折れ
込むことにより生じる疑似欠陥であることを見いだし
た。さらに、鋼管構造物で見られる鋼製部材が互いに複
雑に会合する接合面での溶接の場合では、溶接線方向の
拘束状況も異なることによりこの折れ込み現象が助長さ
れることも知見した。その結果、裏波溶接ビードを含む
初層溶接部に形成された溶接金属の強度特性がかかる疑
似欠陥を低減ないし防止する上で極めて重要なことを明
らかにするに至った。また、裏波溶接ビードのど厚の非
対称性の解消あるいは平均のど厚寸法の増加が、かかる
疑似欠陥を低減ないし防止する上で極めて重要なことを
明らかにするに至った。
【0014】本発明は、かかる前記した将来的な懸念お
よび問題発生を解決すべく、初層の裏波溶接や開先面へ
のバタリング溶接に用いる溶接材料に軟質材を選定し、
裏波溶接ビードルート止端部への収縮変位の集中を緩和
させる効果により当該裏波溶接ビードルート止端部の折
れ込みによる疑似欠陥を防止することを特徴とする。ま
た、上記の効果に加えて、第2層、第3層で通常の溶接
材料を用いて溶接するに際して、第2、第3層溶接ビー
ドをそれぞれ2パスに振り分けて溶接することにより溶
接入熱を低減し収縮変位の総量を減ずるという効果を活
用して裏波溶接ビードルート止端部の折れ込みによる疑
似欠陥を防止することを特徴とするものである。また、
裏波溶接ビードの形状を改善し、当該裏波溶接ビードル
ート止端部の折れ込みによる疑似欠陥を防止する方法を
提供するものである。これらの方法を適用することによ
り大型構造物の安全性向上と信頼性向上とを同時に図
り、立会い検査官らの対応を円滑にして工期短縮による
鋼構造物製造の非価格競争力を強化するものである。以
下に本発明を詳細に説明する。
【0015】レ形開先多層溶接、隅肉多層溶接および目
違いのある突き合わせ多層溶接などの継手部における裏
波溶接では、一般に、母材強度に対し溶接金属強度(硬
さ)を高くするオーバーマッチの施工が行われるが、逆
に、初層裏波溶接に用いる溶接材料の溶着金属の降伏強
度ないし0.2%耐力を母材のそれより低くした軟質の
ものを選ぶと、図1に示すように初層裏波溶接ビードル
ート止端部における折れ込み状の疑似欠陥発生率が低減
し、その平均折れ込み深さも小さくなる。すなわち、図
1は初層裏波溶接に用いる溶接材料の溶着金属強度特性
の折れ込み状欠陥深さにおよぼす影響を示したもので、
溶着金属の強度が母材のそれを50MPaほど下回る付
近から折れ込み深さが低減している。
【0016】通常、レ形開先多層溶接、隅肉多層溶接お
よび目違いのある突き合わせ多層溶接などの継手部にお
ける裏波溶接ビードは、図3に代表例を示すように両側
の鋼部材に形成される融合境界線(FL)の長さ(のど
厚)、および溶接熱影響部(HAZ)の大きさが非対称
になる。図3は折れ込み状疑似欠陥発生を説明する溶接
部分の断面図で、(a)は初層溶接後、(b)は第2層
溶接後を示す。図において、1、2は母材、61、62
はそれぞれ初層、第2層の溶接ビードであり、71A、
71Bは初層溶接の熱影響部、72は第2層溶接の熱影
響部で、8は折れ込みによる溶接割れ状疑似欠陥であ
る。
【0017】この場合、第2層または第3層ビード以降
の溶接が初層の裏波溶接ビードの直上を通過する際、溶
接入熱が初層裏波ビードに伝達され、さらに初層裏波ビ
ードのFLを通じて鋼部材側に熱伝達されるに際して、
FLの長さが非対称なため短い方に熱が集中し、より高
温になる。加えて、第2層または第3層以降の溶接金属
の凝固に際して発生する収縮応力が、上記の理由で高温
にさらされ強度特性の低下した極く狭い領域に負荷され
る結果、図3の71Aに示す初層裏波溶接ビード余盛側
に隣接するHAZが挫屈を起こし内側へ折れ込んだ状態
の疑似欠陥が発生する。
【0018】この疑似欠陥発生機構に関する上記の考察
に基づくと、図1に示す結果は、溶着金属の強度特性が
母材のそれより低いことにより、たとえHAZの非対称
性が生じFLの短い側に収縮応力が負荷されても、HA
Z部分にのみ収縮変位が集中するのではなく、裏波溶接
の溶接金属側で収縮変位を負担し裏波溶接ビード止端部
の局部収縮変位の集中を緩和させ裏波溶接ビードルート
止端部に折れ込み状疑似欠陥を生じ難くしていることに
よる。図4は、この状況を積層過程における収縮変位の
変化を測定して確認したもので、(a)は溶着金属の引
張降伏強度が母材のそれより高い場合で、ルート止端部
域のみ測定した結果と溶接金属全幅も加え測定域を広げ
て測定した結果も同一の結果を呈しており、収縮変位が
ルート止端部域に集中しているのが認められる。これに
対し(b)は溶着金属の引張降伏強度が母材のそれより
低い場合で、ルート止端部域のみの測定結果は、溶接金
属全幅も加えて測定した結果と比較してかなり小さい値
を示しており、軟質溶接材料の適用に収縮変位の抑制効
果があることがわかる。
【0019】この場合、溶着金属と母材との強度差が5
0MPa未満になりほとんど差がなくなるか、あるいは
逆に母材より高くなると、溶接金属側において収縮変位
を負担する能力が急激に低下するため、図5(a)のよ
うにルート止端部への収縮変位の集中が生じ、裏波溶接
ビードルート止端部の折れ込み状疑似欠陥の発生率が増
大し折れ込み深さが大きくなる。また、溶着金属の強度
が低くなりすぎて、母材とのマイナス強度差が150M
Pa超になると、ルート止端部の材質不連続の影響が現
れ、継手の疲労亀裂発生を促進する結果となるので好ま
しくない。
【0020】バタリング溶接はルートギャップが4mm
以上と大きすぎる場合、溶け落ちを防止する観点から一
般的には実施される。ここでは、図1をもって前述した
理由で、初層裏波溶接ビードルート止端部の折れ込みを
防止するためも考慮し、初層裏波溶接に先立ち開先面に
バタリング溶接を行うに際して、溶着金属の引張降伏強
度または0.2%耐力を母材のそれより50MPaから
150MPaの範囲で低くした軟質溶接材料を用いてバ
タリング溶接を行うことが好ましい。ただし、ルートギ
ャップが15mm超になるとバタリング溶接を実施して
も裏波溶接ビード形成が困難となるので、前記軟質材料
を用いてバタリング溶接する場合の継手におけるルート
ギャップ量を4mmから15mmとする。
【0021】なお、第2層および/または第3層溶接は
1パスで溶接するよりも2パスに振り分けて溶接する方
が各パスの溶接金属の凝固収縮が2回に分散し、かつ溶
接入熱も低下するため初層裏波溶接ビードの非対称のど
厚のFLの短い側が高温になるのが抑制される。すなわ
ち、図5はこの方法を示す溶接部分の断面図であって、
第2層および第3層を振り分け溶接した場合を示してい
る。この図において61は初層ビードであり、第2層の
ビードは62A、62B、第3層のビードは63A、6
3Bとしてそれぞれ2パスに振り分けられ溶接されてい
る。第2層以降は軟質でない通常の溶接材料で行うが、
振り分け溶接によりルート止端部に負荷される収縮応力
が軽減され結果的に折れ込み疑似欠陥発生量が減少す
る。従って、鋼構造物溶接におけるシーム溶接または円
周溶接において、引張降伏強さまたは0.2%耐力にお
ける母材との強度差が50〜150MPaの範囲にある
軟質溶接材料を用いた初層裏波溶接に引き続く第2層お
よび/または第3層の溶接に際して、第2、第3層溶接
ビードをそれぞれ2パスに振り分けて溶接することが好
ましい。
【0022】また、この図3(a)の各点a,b,c,
dにおいて右側のど厚abと左側のど厚cdとの比率が
左右のど厚比率となり、abとcdの平均値が平均のど
厚量となる。ここにおいて、初層裏波溶接ビードののど
厚比率が60%未満では、図6に見られるように折れ込
み深さが大きくなる。すなわち、図6は、のど厚比率の
折れ込み深さに及ぼす影響を示したグラフで、欠陥を低
減ないし防止する上でのど厚比率を高くし対称性を確保
することが有効であることを示している。このことは、
のど厚比率が60%未満になり左右のど厚の非対称性が
増すと、前記した機構により欠陥発生率が増大し、折れ
込み状疑似欠陥の長さが大きくなるからである。
【0023】この疑似欠陥発生機構に関する上記の考察
に基づく検討の結果、裏波溶接ビードの非対称性を解消
する直接手段として、初層裏波溶接ビードを形成したあ
と第2層溶接を実施する前に、のど厚の大きい側の溶接
金属を2から5mmの深さまで研削しビード形状を整形
することが、この折れ込み疑似欠陥の発生を著しく減少
ないし防止できる上で有効であることを知見した。ここ
で、溶接ビードの研削整形により左右FLの非対称性が
緩和し、左右のど厚比率を60%以上に確保できるため
には、研削深さが2mm以上は必要であり2mm未満で
あると効果が少ない。一方、研削深さが5mm超になる
と第2層の溶接を行う際、極めて狭開先となり融合不良
欠陥を発生させる恐れが生じるので研削深さは2から5
mmとする。
【0024】さらにまた、疑似欠陥発生機構に関する上
記の考察に基づくと、初層裏波溶接ビードの厚みを増す
ことも防止対策として有効であると考え検討した。その
結果、初層裏波溶接ビードの形成時に、溶接入熱を開先
幅方向に分散させることにより、溶接ビード単位長さ当
たりの溶着金属量を増加させ裏波溶接ビードの平均のど
厚量を5から15mmにすると共に、左右のど厚比率を
60%以上にすることにより、この折れ込み疑似欠陥の
発生を著しく低減ないし防止できることを知見した。こ
のとき、平均のど厚量が5mm未満であると、左右のど
厚の非対称性緩和の効果が少ない。一方、15mm超で
は、裏波溶接ビード形成が困難になり裏波溶接ビード止
端部に溶け込み不良などの溶接初期欠陥が生成しやすく
好ましくないので、平均のど厚量は5から15mmとす
る。また、図3において右側のど厚を左側のど厚より大
きくする、すなわち初層裏波溶接ビードの左右のど厚比
率を100%超に溶接することは、右側母材の過加熱に
よる溶け落ちとともに、左側母材の加熱不足による溶け
込み不良欠陥を著しく生じやすくなるため、極めて困難
である。
【0025】
【実施例】
実施例1 表1に被覆アーク溶接(電流125A、電圧24V、入
熱量25kJ/cm)およびCO2 ガスシールドアーク
溶接(電流250A、電圧28V、入熱量30kJ/c
m)を用いて初層裏波溶接を行ったレ形開先多層溶接に
おける溶接試験結果を示す。
【0026】
【表1】
【0027】初層裏波溶接および開先面へのバタリング
溶接に用いた溶接材料の溶着金属強度特性値が本発明の
範囲内であれば、裏波溶接ビードルート止端部の折れ込
み深さは極めて小さく、さらに第2層、第3層の溶接で
振り分け溶接を施すと疑似欠陥発生率および折れ込み深
さともに大幅に改善され、ほぼ欠陥を防止できる。な
お、裏波溶接ビードの溶接金属強度が本発明の範囲外で
母材より高くなっている比較例は折れ込み深さが大きく
なり本発明例よりも著しく悪い。また、裏波溶接で適用
する溶接材料の溶着金属強度特性値が本発明の範囲外で
母材のそれより著しく低い場合は早期に疲労損傷が生
じ、健全な溶接継手が形成されない。
【0028】実施例2 図7は、裏波溶接ビード上面を研削により加工整形する
方法を説明する溶接部の断面図であり、9が研削部分で
efで示す量をビード整形研削深さとする。表2に被覆
アーク溶接(電流125A、電圧24V、入熱量22k
J/cm)およびセルフシールドアーク溶接(電流25
0A、電圧28V、入熱量30kJ/cm)によるレ形
開先多層溶接における初層裏波溶接ビードの整形研削深
さが、裏波ビードルート止端部の疑似欠陥の平均折れ込
み深さに及ぼす影響を示す。
【0029】
【表2】
【0030】ビード整形研削深さが本発明の範囲内であ
る2から5mmのまでの適正量であれば、左右のど厚比
率を60%以上にすることができ、裏波溶接ビードルー
ト止端部の折れ込み深さを極めて小さくすることができ
る。一方、ビード整形研削深さが比較例に示すように本
発明の範囲外で小さい場合、裏波溶接ビードの非対称性
の改善効果が小さく、折れ込み深さは大きいままで本発
明例より悪い結果となる。また、ビード整形研削深さが
本発明の範囲外で大きい場合は、後続の溶接パスの際に
大きな融合不良欠陥が発生しており健全な溶接継手が形
成されない。
【0031】表3に被覆アーク溶接(棒径4mm、電流
120〜150A)を用いたレ形開先多層溶接における
初層裏波溶接ビードの平均のど厚量が、裏波ビードルー
ト止端部の疑似欠陥の平均折れ込み深さに及ぼす影響を
示す。ウイービング運棒により平均のど厚量が本発明の
範囲内にある場合は、左右のど厚比率も60%以上を確
保でき、裏波溶接ビードルート止端部の折れ込み深さを
極めて小さくすることができる。一方、平均のど厚量が
比較例に示すように運棒の違いにより本発明の範囲外で
小さい場合、裏波溶接ビードの非対称性の改善効果が小
さく、折れ込み深さは小さくできない。また、入熱が過
大になり平均のど厚量が本発明の範囲外で大きくなる場
合は、初層の裏波溶接ビードの形成が困難になり、溶け
込み不良などが発生する。
【0032】
【表3】
【0033】
【発明の効果】本発明は鋼構造物における初層裏波溶接
ビードルート止端部近傍に発生する疑似欠陥を溶接割れ
でなく、局部的挫屈を介した折れ込みによる疑似欠陥で
あることを突き止めることによって、この折れ込み状疑
似欠陥自体の発生も防止できる溶接方法を発明し提供し
たものである。これにより、大型構造物の安全設計の厳
格化、地球環境問題の深刻化に伴い検査基準が厳しくな
る事態への対処を可能ならしめて大型構造物の安全性向
上と立会検査への円滑な対応を可能にすると共に、将来
PL導入・普及に際して紛らわしい問題が発生する懸念
をも解消したものである。従って、本発明により大型構
造物に対する信頼性の向上はもとより、将来的には非価
格競争力の向上に加え、産業界に与える工期的、経済的
利益は多大なものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】初層裏波溶接ビードの溶着金属強度と折れ込み
状欠陥深さとの関係を示すグラフ
【図2】溶接部の欠陥を示す顕微鏡組織のスケッチ図
【図3】折れ込み発生状況を説明する溶接継手部の断面
図で(a)は初層裏波溶接終了後、(b)は第2層溶接
終了後
【図4】ルート止端部の収縮変位挙動に及ぼす初層裏波
溶接の溶着金属の降伏強度の影響を示すグラフで(a)
は溶着金属の降伏強度450MPa、(b)は同じく3
00MPa
【図5】第2層、第3層の振り分け溶接例を示す溶接部
の断面図
【図6】初層裏波溶接ビードの左右のど厚比率が折れ込
み深さに及ぼす影響を示すグラフ
【図7】初層裏波溶接ビード形状を整形するための研削
方法を示す溶接部の断面図
【符号の説明】
3 溶接金属 4 熱影響部 5 割れ状欠陥 8 溶接割れ状疑似欠陥 9 研削部分
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 下村 春夫 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内 (72)発明者 永井 順仁 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶着金属の引張降伏強度または0.2%
    耐力を母材より50MPaから150MPa低くした軟
    質溶接材料を用いて初層の裏波溶接を行うことを特徴と
    する非対称のど厚を有する裏波溶接ビードルート止端部
    の折れ込み状欠陥の防止方法。
  2. 【請求項2】 ルートギャップが4mmから15mmの
    開先において、初層裏波溶接に先立ち開先面にバタリン
    グを行うに際して、溶着金属の引張降伏強度または0.
    2%耐力を母材より50MPaから150MPa低くし
    た軟質溶接材料を用いてバタリング溶接を行うことを特
    徴とする非対称のど厚を有する裏波溶接ビードルート止
    端部の折れ込み状欠陥の防止方法。
  3. 【請求項3】 請求項2記載のバタリング溶接に引き続
    き、初層裏波溶接を前記軟質溶接材料を用いて行うこと
    を特徴とする非対称のど厚を有する裏波溶接ビードルー
    ト止端部の折れ込み状欠陥の防止方法。
  4. 【請求項4】 請求項1ないし3記載の溶接を行った後
    の第2層以降を通常の溶接材料を用いて溶接するに際し
    て、第2層および/または第3層溶接ビードを2パスに
    振り分けて溶接することを特徴とする非対称のど厚を有
    する裏波溶接ビードルート止端部の折れ込み状欠陥の防
    止方法。
  5. 【請求項5】 初層裏波溶接ビードを形成後、ビードの
    ど厚の大きい側をビード表面側から2から5mmの深さ
    に研削し、左右のど厚比率を60から100%に整形す
    ることを特徴とする非対称のど厚を有する裏波溶接ビー
    ドルート止端部の折れ込み状欠陥の防止方法。
  6. 【請求項6】 初層裏波溶接ビードの形成時に、溶接入
    熱を開先幅方向に分散させることにより、裏波溶接ビー
    ドの平均のど厚量を5から15mmにすると共に、左右
    のど厚比率が60から100%になる溶接ビードを形成
    させることを特徴とする非対称のど厚を有する裏波溶接
    ビードルート止端部の折れ込み状欠陥の防止方法。
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