JP4216980B2 - 鋼とチタン板との接合構造及び接合方法 - Google Patents
鋼とチタン板との接合構造及び接合方法 Download PDFInfo
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【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼と厚さ2mm以下のチタン板との接合構造及び接合方法に関するものであり、特に接合部にインサート材を用いない直接接合であって接合部の耐脆化特性にすぐれた接合構造及び接合方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
チタンは、比強度や耐食性に優れており、特に海水に対する耐食性が優れている。従って、鋼構造物の表面をチタン板で完全に被覆することにより、海洋構造物等において耐食性に極めて優れた鋼構造物を形成することができる。一方、チタンと鋼とを溶接しようとすると、溶接部にチタンと鉄との金属間化合物が形成され、該金属間化合物は硬く脆弱なため、鋼構造物の表面にチタン板を溶接することは困難であった。
【0003】
圧延法や爆着法によって鋼板とチタン板とを圧着する方法が知られている。このような方法で製造したチタンクラッド鋼板を用いて鋼構造物を製造し、該構造物の表面をチタンで被覆することができる。この方法においては、クラッド鋼板どうしの接合部において、チタン板側の溶接部に脆弱な鉄チタン金属間化合物を生成させないためには、鋼板側の溶接とチタン板側の溶接を別個に行う必要があり、製作工程は複雑化し、かつ製作費用を安価にすることが困難であった。
【0004】
チタン板と鋼とを溶接接合するに際し、溶接界面にインサート材としてニッケル箔、銅箔、ニッケル系アモルファスろう材等を挿入し、鉄チタン金属間化合物の生成を抑えつつ溶接接合を行う方法が知られている。この方法では、インサート材に用いる第三の材料価格が加わり経済性に劣る上、接合作業の工程が煩雑になるという問題があった。
【0005】
溶接学会全国大会講演概要第49集(’91−9)第322頁〜第323頁には、板厚0.5mmの工業用純チタンと同じ厚みの工業用純鉄とを重ね合せてスポット溶接する方法が開示されている。この方法により、極めて薄いナゲットを界面に形成することによって高応力値の継手が得られているものの、該継手が脆性的であるという欠点は解消されていない。
【0006】
特開平8−257635号、特開平9−122744号、特開平9−122919号、特開平9−174152号、特開平9−174258号各公報には、鋼管の外周にチタン等の耐食性金属板をスパイラル状に巻き付け、耐食性金属板の重なり部において抵抗シーム溶接を行なう方法が開示されている。しかし、これら公報で開示された方法においても、鋼とチタン板との接合部の耐脆化特性を改善するための方策は提示されていない。また、これら方法においては、鋼管表面に耐食性金属板を巻き付けるに際して引張り張力を付加しているので、たとえ鋼と耐食性金属板との接合部耐脆化特性が十分に改善されていなくても良好な接合が保持できるという特徴を有している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、チタン板と鋼との接合構造及び接合方法であって、圧延法や爆着法によって予めチタンクラッド鋼板を製造した上で該チタンクラッド鋼板を用いるのではなく、またインサート材を用いて接合を行なうのでもなく、直接チタン板と鋼とを接合し、耐脆化特性のすぐれた接合構造及び接合方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明の要旨とするところは以下のとおりである。
(1)鋼2と厚さ2mm以下のチタン板1との接合構造であって、該接合構造は重ね抵抗溶接接合構造であり、該接合部5のチタン板1と鋼2との界面3において金属間化合物層4の厚さtが10μm以下である比率が50%以上であることを特徴とする鋼とチタン板との接合構造。
(2)前記接合部の断面において観察されるチタン板と鋼との界面3の凹凸がRaで1.0μm以上であることを特徴とする前記(1)に記載の鋼とチタン板との接合構造。
(3)前記接合部5に近接する鋼2及びチタン板1の一方又は両方の表面の粗度がRaで2.0μm以上であることを特徴とする前記(1)に記載の鋼とチタン板との接合構造。
(4)前記接合部5のチタン板と鋼との界面4において金属間化合物層平均厚さが50μm以下であり、該接合部断面において観察されるチタン板と鋼との界面3の凹凸がRaで1.0μm以上であることを特徴とする前記(1)に記載の鋼とチタン板との接合構造。
(5)前記接合部5のチタン板と鋼との界面3において金属間化合物層平均厚さが50μm以下であり、該接合部5に近接する鋼2及びチタン板1の一方又は両方の表面の粗度がRaで2.0μm以上であることを特徴とする前記(1)に記載の鋼とチタン板との接合構造。
(6)鋼2と厚さ2mm以下のチタン板1とを重ね抵抗溶接によって接合し、該接合部5のチタン板と鋼との界面3において金属間化合物層4の厚さtが10μm以下である比率を50%以上とすることを特徴とする鋼とチタン板との接合方法。
【0009】
本発明の鋼2とチタン板1との接合部5はいずれも重ね抵抗溶接接合構造である。抵抗溶接は、溶接対象部材の溶接・接合すべき箇所に電流を流し、その電流による抵抗発熱で溶接・接合部の温度を上昇させ、加圧下で溶接・接合させる方法である。重ね抵抗溶接には、スポット溶接法、プロジェクション溶接法、シーム溶接法等がある。重ね抵抗溶接を行なうことにより、接合時の接合界面での金属の溶融を最小限に抑え、脆い金属間化合物の発生を最小限に抑えることができる。また、重ね抵抗溶接時に接合部5を加圧することにより、生成した金属間化合物を接合界面から絞り出す効果を得ることができる。
【0010】
図1は本発明の接合部断面を部分的に拡大した模式図である。図2、図3は抵抗シーム溶接法を示す概略図である。
【0011】
本発明(1)においては、図1(a)に示す接合部5のチタン板と鋼との界面3における金属間化合物層4の厚さtが10μm以下である比率を50%以上とすることにより、接合部5の耐脆化特性を向上させることができた。
【0012】
鋼とチタン板を重ね抵抗溶接した接合部界面3を観察すると、界面3に鉄チタン金属間化合物4の層が見られ、該金属間化合物層に沿って微小クラックの発生が見られる。金属間化合物層の厚さが500μm〜1000μmと厚い場合には無数のクラックが発生しており、金属間化合物層厚さが100μm前後において界面1mm長さ当たりクラック個数は5個程度、金属間化合物層厚さが20〜30μmにおいて同じくクラック個数は1個程度となる。金属間化合物層が薄くなるほど接合部の耐脆化特性が向上する理由はこのクラック個数の減少と密接に関連しているものと考えられる。そして、接合部の断面において、界面の金属間化合物層厚さが25μm以下となっている部分が界面全体の50%以上存在していれば、接合部の耐脆化特性を十分に向上させることが可能である。
【0013】
鋼とチタン板との接合界面3における金属間化合物層4の厚さは、接合界面を含む断面を切断し、断面を研磨エッチングした後、光学顕微鏡により組織観察を行うことによって測定することができる。顕微鏡組織において、鋼部分はエッチングされた明瞭な結晶組織として観察される。チタン部分と金属間化合物層はエッチング組織とはならず、一方チタン部分と金属間化合物層は顕微鏡視野において輝度に差が生じ、その中で高い明輝度を有する層状の部分であって鋼組織と接する層が金属間化合物層である。以上の特徴によって金属間化合物層と他の組織(鋼、チタン)とを区別することができる。
【0014】
本発明(2)においては、図1(b)に示すような接合部断面において観察されるチタン板と鋼との界面3の凹凸をRaで1.0μm以上とすることにより、接合部5の耐脆化特性を向上させることができた。接合部界面3が凹凸状となっていることにより、両金属間に機械的結合強度が生じ、そのために耐脆化特性が向上したものと考えられる。接合部の界面に凹凸を生成させるためには、接合前の鋼2及びチタン板1の一方又は両方の表面に凹凸を与えることによって可能である。
【0015】
接合部5の界面3は重ね抵抗溶接時に溶融するため、接合部界面の凹凸は溶接前の接合部表面の凹凸とは異なった値となる。接合後において接合部断面の界面凹凸をRaで1.0μm以上とするためには、接合前の鋼2及びチタン板1の一方又は両方の表面の粗度がRaで2.0μm以上となるように表面に凹凸を形成し、その後該凹凸を形成した表面において鋼とチタン板を重ね合わせ、重ね抵抗溶接を行なう。
【0016】
接合前後において接合部界面の凹凸は変化するので、接合後の接合界面においては接合前に形成した表面の凹凸を観察することはできない。しかし、通常は重ね抵抗溶接の接合部幅は狭く、接合前に形成する表面の凹凸は該接合部幅よりも広い幅において形成する。従って、接合後においても、本発明(3)のように、接合部5に近接する鋼2及びチタン板1の一方又は両方の表面には該接合前に形成した凹凸が残存しており、この凹凸を観察することによって接合部表面の接合前の凹凸を確認することができる。
【0017】
本発明(4)においては、鋼とチタン板の接合部界面3において、金属間化合物層厚さtの調整と界面凹凸の調整の両方を行なうことにより、相乗効果を発揮し、より優れた耐脆化特性を有する接合構造を得ることができる。相乗効果を得ることができるので、金属間化合物層4の平均厚さを50μm以下とすれば十分な効果が発揮される。接合部界面3の凹凸がRaで1.0μm以上であればいい点、該凹凸を得るためには本発明(5)のように接合部に近接する鋼及びチタン板の一方又は両方の表面に残存する凹凸を観察することによって接合部表面の接合前の凹凸を確認することができる点は上記発明(2)(3)と同様である。
【0018】
本発明(6)は本発明(1)の製造方法、(7)は(2)(3)の製造方法、(8)は(4)(5)の製造方法である。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明で用いるチタン板1は、純チタン及びチタン合金のいずれをも用いることができる。また、鋼2は、通常の炭素鋼や合金鋼、低合金鋼を用いることができる。もちろん純鉄を用いても同様の効果を得ることができる。
【0020】
チタン板1の厚さを2mm以下と限定したのは、チタン板の用途として鋼材を被覆し腐食を防止することを目的とした場合、耐食性を確保するのに2mmあれば十分であり、かつ抵抗溶接を行う上で重厚な設備を要しない程度の上限値だからである。また、チタン板厚さは、好ましくは最低でも0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上とする。耐衝撃性を確保するのに最低0.1mmの厚さが必要であり、また冷延チタン板が経済的に供給できる最小厚さは0.3mmだからである。
【0021】
重ね抵抗溶接としては、シーム溶接あるいはスポット溶接を採用することができる。シーム溶接においては、図2に示すように溶接電極6とアース電極7を溶接部の表裏に対向させるダイレクト溶接、あるいは図3に示すように溶接電極6とアース電極7を被溶接板の同じ面側に配置するインダイレクト溶接のいずれをも適用することができる。予め構築した鋼製海洋構造物等の大型構造物の鋼表面にチタン板を溶接して配置する場合には、アース電極を鋼板の下に配置することは困難なためダイレクト溶接を採用することができないが、図3に示すように、鋼表面に配置したチタン板1の上に溶接電極6とアース電極7を配置するインダイレクト溶接によって接合を行なうことができる。溶接構造が重ね抵抗溶接構造である点は、溶接部のチタン板表面に残存する電極跡及び溶接部断面を観察することによって容易に特定することが可能である。
【0022】
本発明(1)において、接合部5のチタン板と鋼との界面3において金属間化合物層厚さtが10μm以下である比率を50%以上とするのは、接合部5の耐脆化特性を向上し、健全な接合部を形成するためである。界面の金属間化合物層厚さtは、好ましくは10μm以下である比率を90%以上とする。より好ましくは5μm以下である比率を90%以上とする。
【0023】
重ね抵抗溶接条件の調整を行なうことにより、溶接接合界面の金属間化合物層厚さtを上記所定の厚さに制御することができる。接合部5におけるチタン板及び鋼の溶融量が多くなると金属間化合物層4の厚さが増大するため、溶接電流を調整して過大な溶融が発生しないよう制御する。接合後界面の鋼側には溶融凝固組織が発生せず、チタン側に金属間化合物層が観察される凝固組織となることが好ましい。また、電極の形状(主に電極輪の断面曲率半径)と加圧力を調整することにより、溶接時に発生した金属間化合物を加圧力によって溶接部の両側に排除し、金属間化合物層厚さを薄くすることができる。溶接速度、溶接電流、加圧力、電極輪断面形状の組み合わせは、チタン板及び鋼の厚さ毎に実際の溶接後金属間化合物層厚さが本発明範囲内に入るように確認しつつ決定することができる。
【0024】
例えば、板厚9mmの鋼に板厚0.6mmのチタン板をインダイレクト抵抗シーム溶接によって接合するに際し、電極輪曲率半径は溶接電極6側は20mmR、アース電極7側は300mmRとし、加圧力は溶接側160kg、アース側300kg、電流7000〜10000A、通電時間0.04秒、溶接速度1m/minの条件を採用した場合、接合部界面の金属間化合物層厚さは、平均値で5μm、10μm以下の厚さの部分が占める比率は70%となり、本発明の溶接構造を形成することができる。
【0025】
金属間化合物層厚さの測定については、前述したように、光学顕微鏡観察によって測定することができる。
【0026】
本発明(2)においては、図1(b)にあるように、接合部断面において観察されるチタン板と鋼との界面3の凹凸がRaで1.0μm以上とする。接合界面をRaで1.0μm以上の凹凸形状とすることにより、異種金属を爆着によって接合した場合と同様、メカニカル接合効果が発揮されるためと考えられる。また、本発明(7)のように、接合前の鋼及びチタン板の一方又は両方の表面粗度をRaで2.0μm以上とすることにより、接合後の界面の凹凸をRaで1.0μm以上とすることができる。接合部断面における界面の凹凸は好ましくはRaで2μm以上とする。接合前の鋼及びチタン板の一方又は両方の表面粗度をRaで3μm以上とすることにより、該接合後の界面凹凸を実現することができる。接合部断面における界面の凹凸はより好ましくはRaで5μm以上とする。接合前の鋼及びチタン板の一方又は両方の表面粗度をRaで6μm以上とすることにより、該接合後の界面凹凸を実現することができる。
【0027】
本発明(2)においては接合部界面金属間化合物層厚さは特に指定しないが、厚さが薄い方がより好ましい結果を得ることができる。通常用いられる接合条件によって重ね抵抗溶接法を実施した場合、界面の金属間化合物層厚さは50μm程度となり、本発明(2)によって接合強度の改善効果を十分に発揮することができる。
【0028】
本発明(4)においては、接合部のチタン板と鋼との界面金属間化合物層平均厚さを50μm以下とすると同時に接合部断面において観察されるチタン板と鋼との界面の凹凸をRaで1.0μm以上とすることにより、耐脆化特性は最も良好な結果を得ることができる。界面金属間化合物厚さは好ましくは25μm以下、より好ましくは10μm以下とすることにより、接合部5の耐脆化特性を更に改善することができる。本発明(8)のように、接合前の鋼及びチタン板の一方又は両方の表面粗度をRaで2.0μm以上とすることにより、接合後の界面の凹凸をRaで1.0μm以上とすることができる。接合部断面における界面の凹凸は好ましくはRaで2μm以上とする。接合前の鋼及びチタン板の一方又は両方の表面粗度をRaで3μm以上とすることにより、該接合後の界面凹凸を実現することができる。接合部断面における界面の凹凸はより好ましくはRaで5μm以上とする。接合前の鋼及びチタン板の一方又は両方の表面粗度をRaで6μm以上とすることにより、該接合後の界面凹凸を実現することができる。
【0029】
接合界面を凹凸形状とする本発明においては、接合を行なう前のチタン板及び鋼の一方又は両方の接合すべき表面に凹凸を付加し、その後重ね抵抗溶接を行なう。高い生産性を得るためには、鋼の表面に凹凸を付加する方法が最も好適である。また、鋼表面のみに凹凸を付加した場合であっても、接合後の接合界面には好ましい凹凸が形成される。鋼又はチタン板表面に凹凸を付加する方法としては、グリッドブラスト処理やサンドブラスト処理による方法、ベルトサンダー等によって研磨する方法を採用することができる。
【0030】
接合後の接合界面の凹凸は以下のようにして測定することができる。接合部を接合界面に垂直な面で切断し、断面をナイタール液等でエッチングしてマクロ組織を顕在化させる。該マクロ組織を拡大し、画像処理等の手法を用いて接合界面の形状をコンピュータによって認識させ、その結果、凹凸をRaとして表示させることができる。なお、Raは中心線平均粗さ(中心線からの平均距離)であり、粗さ曲線をf(x)で表わせば以下の式によって算出される。
Ra = 1/lm∫0 lm|f(x)|dx
【0031】
接合前の接合部表面の粗さは、JIS B0601の定義で表面粗度を測定し、上記と同様の演算によってRaを計算することができる。表面粗度の測定は、接合前において接合部表面の測定を行なう。接合後においても、接合部に近接する鋼又はチタン板の表面には接合前の接合部表面粗度と同等の粗度の凹凸が残存しているので、当該部分の粗度を測定することによって接合前の接合部表面粗度を推定することが可能である。
【0032】
【実施例】
板厚9mmの鋼2に板厚0.6mmのチタン板1を図3に示すようなインダイレクト抵抗シーム溶接によって接合するに際し、本発明を適用した。電極輪曲率半径は溶接電極6側は20mmR、アース電極7側は300mmRとし、加圧力は溶接側160kg、アース側300kgとした。溶接電流を9000A、通電時間0.04秒、溶接速度1m/minの条件を採用してシーム溶接を行なった。実施例1においては溶接部の鋼表面をベルトサンダーによってRa=2μmの凹凸を付加し、実施例2においては溶接部の鋼表面をグリッドブラスト処理によってRa=6μmの凹凸を付加した。チタン板表面には凹凸は付加しなかった。表面粗度は粗度計を用いてJIS B0601の定義で測定した。
【0033】
接合後の溶接部断面を研磨し、ナイタール液によってマクロ組織を顕在化させた上でマクロ写真を撮影した。接合部界面の明輝度の組織部分を金属間化合物層として認識した。金属間化合物層厚さは、平均値で5μm、10μm以下の厚さの部分が占める比率は70%となった。界面の鋼側には溶融凝固組織は観察されなかった。
【0034】
マクロ写真上で接合部界面の位置を1μmピッチで測定し、該測定結果に基づいて界面凹凸のRaを計算した。その結果、実施例1ではRa=1.0μm、実施例2ではRa=5μmであった。
【0035】
上記実施例1、2で製造したインダイレクト抵抗溶接接合部から試験片を採取し、接合部に繰り返し応力を付加することによって疲労試験を行なった。
【0036】
応力振幅100MPa及び150MPaでは、実施例1、2ともに1000万回まで疲労破壊は発生しなかった。応力振幅200MPaでは、実施例1は179万回、実施例2は265万回で疲労破壊した。この結果は、JSSC疲労設計指針のA〜B等級となり、本発明の接合構造はきわめて良好な疲労強度を有するといえる。疲労破壊サンプルにおいて、疲労亀裂はインダイレクト溶接部近傍の母材の熱影響部から発生しており、溶接接合部自体を起点とした亀裂は発生しなかった。
【0037】
【発明の効果】
本発明により、圧延法、爆着法あるいはインサート材を用いる接合方法を採用せず、直接チタン板と鋼とを接合するに際し、耐脆化特性のすぐれた接合構造及び該接合構造を得るための接合方法を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のチタン板と鋼との接合部断面を拡大した状況を示す図であり、(a)は界面に凹凸がない場合、(b)は界面に凹凸がある場合である。
【図2】ダイレクト抵抗シーム溶接法を示す概略図である。
【図3】インダイレクト抵抗シーム溶接法を示す概略図である。
【符号の説明】
1 チタン板
2 鋼
3 界面
4 金属間化合物層
5 接合部
6 溶接電極
7 アース電極
t 金属間化合物層厚さ
Claims (6)
- 鋼と厚さ2mm以下のチタン板との接合構造であって、該接合構造は重ね抵抗溶接接合構造であり、該接合部のチタン板と鋼との界面において金属間化合物層厚さが10μm以下である比率が50%以上であることを特徴とする鋼とチタン板との接合構造。
- 前記接合部の断面において観察されるチタン板と鋼との界面の凹凸がRaで1.0μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の鋼とチタン板との接合構造。
- 前記接合部に近接する鋼及びチタン板の一方又は両方の表面の粗度がRaで2.0μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の鋼とチタン板との接合構造。
- 前記接合部のチタン板と鋼との界面において金属間化合物層平均厚さが50μm以下であり、該接合部断面において観察されるチタン板と鋼との界面の凹凸がRaで1.0μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の鋼とチタン板との接合構造。
- 前記接合部のチタン板と鋼との界面において金属間化合物層平均厚さが50μm以下であり、該接合部に近接する鋼及びチタン板の一方又は両方の表面の粗度がRaで2.0μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の鋼とチタン板との接合構造。
- 鋼と厚さ2mm以下のチタン板とを重ね抵抗溶接によって接合し、該接合部のチタン板と鋼との界面において金属間化合物層厚さが10μm以下である比率を50%以上とすることを特徴とする鋼とチタン板との接合方法。
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