JP6287083B2 - 鋼板とアルミニウム合金板との異種金属接合方法 - Google Patents

鋼板とアルミニウム合金板との異種金属接合方法 Download PDF

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本発明は、鋼板とアルミニウム合金板との異種金属接合方法および異種金属接合継手に関するものであり、特に、部分的なアルミニウム合金板の適用で軽量化された自動車用部品の製造や車体の組立などの工程において好適な、鋼板とアルミニウム合金板とを接合する異種金属接合方法、および、それによって得られる異種金属接合継手に関するものである。
近年、自動車分野においては、低燃費化や炭酸ガス(CO)の排出量削減を目的とした車体の軽量化のため、車体や部品などに部分的にアルミニウム合金板を使用するニーズが高まっており、特に、ハイブリッド車などの分野において顕著となっている。一方、車体の組立や部品の取付けなどの工程においては、主としてスポット溶接が用いられているが、アルミニウム合金板が部分的に使用された場合には、鋼板とアルミニウム合金板とをスポット溶接する必要性が生じる。このようなスポット溶接によって得られる溶接継手で重要な特性としては、引張強さと疲労強度が挙げられるが、まず重要なのは引張強さである。溶接継手の引張強さには、せん断方向に引張荷重を負荷して測定する引張せん断強さ(TSS)と、剥離方向に引張荷重を負荷して測定する十字引張強さ(CTS)がある。
しかしながら、鋼板とアルミニウム合金板とをスポット溶接した場合には、以下のような問題が生じる。
すなわち、図7に示す異種金属接合継手110のように、鋼板101とアルミニウム合金板201とをスポット溶接した場合には、溶接部で脆弱な金属間化合物(FeAlなど)203が生成され、スポット溶接部(溶接継手)の引張強さ、特に剥離方向の引張強さが極端に低下するという問題が生じる。図7に示す金属間化合物203は、鋼板101とアルミニウム合金板201側に生成される溶融Al201aの界面で生成される。このような金属間化合物203が界面で厚く生成されると、継手強度、特に剥離方向の十字引張強さが極端に低下するという問題が生じる。また、上述のような金属間化合物203が生成された溶接継手に衝撃が加わった場合には、容易に破壊が起こるという問題も生じる。さらに、金属間化合物203が生成された溶接部では、腐食が優先的に進行するため、耐食性が劣るという問題もある。
鋼板とアルミニウム合金板とを溶接する際に金属間化合物が生成するのを抑制し、継手強度を高めるため、これまでに多くの方法が提案されている。例えば、溶接時の通電パターンを大電流・短時間通電とすることで金属間化合物の生成を抑制する方法(例えば、特許文献1などを参照)や、電極先端形状を工夫することによって金属間化合物の成長を抑制する方法(例えば、特許文献2などを参照)が提案されている。また、被溶接材である鋼板やアルミニウム合金板の組成、または、酸化皮膜におけるMnやSiの含有量を適正化することで、金属間化合物の生成を抑制する方法が提案されている(例えば、特許文献3などを参照)。
さらに、鋼板とアルミニウム合金板とを溶接するにあたり、予め接合面間に接着層などを設け、接着と溶接を併用することで継手強度や耐食性を向上させる方法(例えば、特許文献4などを参照)や、共晶反応を用いた溶接を行う方法が提案されている(例えば、特許文献5などを参照)。また、鋼板とアルミニウム合金板との溶接部に生成される金属間化合物の厚さや面積率を規定することで、継手強度を確保する方法も提案されている(例えば、特許文献6などを参照)。
上記以外にも、例えば、鋼板とアルミニウム合金板との間にアルミクラッド鋼板をインサートして溶接することで、溶接後の継手強度を高める方法や、セルフピアスリベットなどによる機械的接合と接着とを併用する方法もある。また、ピンを回転させながら加圧力で被接合材に押し付けて摩擦熱を発生させ、この摩擦熱と、ピンの回転方向に発生した塑性流動によって接合を行う、アルミニウムなどの軽金属の接合に好適な摩擦攪拌接合法を用いる方法もある。さらに、特殊なツール(ピン)を用い、回転工具を強い圧力で被接合材に押し当てることで、その摩擦熱と攪拌力で接合する摩擦攪拌点接合を用いる方法も考得られる(例えば、特許文献7を参照)。
その他、例えば、アルミニウム合金板を鋼ピンで貫通させて鋼板に接触させ、鋼ピンと鋼板との間で通電を行うことで接触部を抵抗溶接することにより、鋼板とアルミニウム合金板とを接合させる方法なども考得られる(例えば、特許文献8を参照)。
しかしながら、上記の方法の中で、接合部を加熱する方法においては、鋼板とアルミニウム合金板との接合部において、脆弱な金属間化合物の生成を抑制することができず、接合強度や耐食性が低下するという問題があった。また、機械的に接合する場合には、かしめなどの方法では接合強度が低い場合があり、リベットを使う方法では、接合工程が複雑になる、高い加圧力が必要になる、リベット代が高いなどの問題があった。
ここで、鋼板にアルミニウムめっき鋼板を用いるとともに、アルミニウムめっき層と母材の間にNを濃縮させてFe−Al系金属間化合物の生成を抑制させる方法が提案されている(例えば、非特許文献1などを参照)。非特許文献1に記載の方法によれば、Nによって脆弱な金属間化合物の生成が抑制され、継手の接合強度が高められるとされている。しかしながら、非特許文献1に記載の方法でも、例えば入熱が高い場合には、Fe−Al系金属間化合物の生成を完全に防ぐことはできないため、上記同様に、溶接後の継手強度、特に剥離方向に負荷する十字引張強さや耐衝撃性、耐食性が低下するという問題があった。
さらに、鋼板とアルミニウム合金板とを接合する方法として、リング電極とフラット電極を用いて加熱し、塑性変形させて接合するRIF方が提案されている(例えば、非特許文献2を参照)。しかしながら、この方法では、接合時に高い加圧力が必要であり、また、加圧部の接触面積が小さいために、その部分で電流が集中して電極が損耗し易いという問題があった。さらに、電極の加圧力が高くなると、リング電極側に鋼板がめり込み、接合体が電極に溶着し易いという問題もあった。
一方、リング電極における電極先端径と穴の径の比を最適化することも検討されている(例えば、非特許文献3を参照)。しかしながら、非特許文献3は、鋼板同士をスポット溶接するものであり、異材接合をリング電極で行う場合に電極を最適化する検討については、これまで全くなされていなかった。
特開2004−114108号公報 特開2007−326146号公報 特開2006−336070号公報 特開2008−080394号公報 特開2010−099672号公報 特開2009−061500号公報 特開2009−202828号公報 特開平07−214338号公報
岩瀬,笹部,松本,谷川,俵,服部:神戸製鋼技報,Vol.57 No.2(Aug.2007),p.56−60. 佐藤,片山:軽金属溶接,Vol.15(1977)No.9,p.393−400. 佐藤,小川,林:溶接学会全国大会講演概要集,Vol.14(1976),p.180−181.
上述したように、鋼板とアルミニウム合金板とをスポット溶接した場合には、溶接部で脆弱な金属間化合物が生成され、継手強度(特に剥離方向)や耐衝撃性、耐食性が低下するという問題が生じていた。また、従来のリング電極を用いた場合には、加圧部に電流集中が生じて電極が損耗し易くなり、さらに、加圧力が高くなると接合体が電極に溶着し易いという問題があった。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、鋼板とアルミニウム合金板とをスポット溶接した場合においても、溶接部で金属間化合物が生成されるのを抑制することができ、継手強度、特に剥離方向の継手強度や耐衝撃性、耐食性を向上させることが可能な、鋼板とアルミニウム合金板との異種金属接合方法、および、それによって得られる異種金属接合継手を提供することを目的とする。
本発明者らが上記問題を解決するために鋭意研究したところ、鋼板とアルミニウム合金板との間でスポット溶接による異種金属接合を行うにあたり、一対の電極の内の一方の電極をリング形状にするとともに、その形状・寸法を適正化することで、接合部において十分な塑性流動を発現させ、金属間化合物が生成するのを抑制しながら、通電による加熱と十分な塑性変形によって鋼板とアルミニウム合金板とを接合できることを知見した。すなわち、リング状の電極形状を適正化した条件で鋼板とアルミニウム合金板とをスポット溶接することにより、継手強度、特に剥離方向の継手強度や耐衝撃性、耐食性を向上させることが可能になることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1] 鋼板とアルミニウム合金板とを重ね合わせた状態とし、前記鋼板およびアルミニウム合金板の上下に配置された一対の電極で加圧しながら接合する、鋼板とアルミニウム合金板との異種金属接合方法であって、前記一対の電極の内、一方の電極として、先端径D1が6〜9mmとされ、該先端の中心部に、直径dが前記先端径D1の40〜70%、深さhが0.5〜2.0mmである円筒状の凹部が形成された銅電極を用いるとともに、他方の電極として、先端径D2が6〜16mm、先端曲率半径Rが40〜100mmである銅電極を用い、前記アルミニウム合金板を溶融させない状態で通電しながら、前記鋼板と前記アルミニウム合金板との界面に塑性流動を発生させ、高さが0.5〜2.0mmである突起状の塑性変形部を形成させることで、前記鋼板と前記アルミニウム合金板とを接合することを特徴とする鋼板とアルミニウム合金板との異種金属接合方法。
[2] 前記鋼板と前記アルミニウム合金板との間に、予め、熱硬化性のエポキシ系接着剤を塗布して接着し、その後、前記鋼板と前記アルミニウム合金板とを接合することを特徴とする上記[1]に記載の鋼板とアルミニウム合金板との異種金属接合方法
本発明の鋼板とアルミニウム合金板との異種金属接合方法によれば、上記構成の如く、鋼板とアルミニウム合金板とをスポット接合する際に用いる電極の形状を適正化する方法を採用している。これにより、鋼板とアルミニウム合金板とを接合する際の良好な作業性を確保しつつ、溶接部の特性、すなわち、継手強度、特に剥離方向の継手強度や耐衝撃性、耐食性に優れた、信頼性の高い継手を形成させることが可能となる。
また、本発明に係る異種金属接合継手によれば、上記の異種金属接合方法によって鋼板とアルミニウム合金板とを接合することで得られ、接合部に突起状の塑性変形領域を有するものなので、溶接部の特性、すなわち、継手強度、特に剥離方向の継手強度や耐衝撃性、耐食性に優れた信頼性の高いものとなる。
従って、例えば、自動車分野において、部分的なアルミニウム合金板の適用で軽量化された自動車用部品の製造や車体の組立などの工程に本発明を適用することにより、車体全体の軽量化による低燃費化や炭酸ガス(CO)の排出量削減などのメリットを十分に享受することができ、その社会的貢献は計り知れない。
本発明に係る鋼板とアルミニウム合金板との異種金属接合方法および異種金属接合継手の第1の実施形態を模式的に説明する図であり、スポット溶接によって鋼板とアルミニウム合金板とを接合する工程を示す断面図である。 本発明に係る鋼板とアルミニウム合金板との異種金属接合方法および異種金属接合継手の第1の実施形態を模式的に説明する図であり、鋼板とアルミニウム合金板とをスポット溶接で接合した後の接合部を示す断面図である。 本発明に係る鋼板とアルミニウム合金板との異種金属接合方法および異種金属接合継手の第2の実施形態を模式的に説明する図であり、鋼板とアルミニウム合金板との間に熱硬化性のエポキシ系接着剤を塗布した後に、スポット溶接によって鋼板とアルミニウム合金板とを接合する工程を示す断面図である。 本発明に係る鋼板とアルミニウム合金板との異種金属接合方法および異種金属接合継手の第2の実施形態を模式的に説明する図であり、鋼板とアルミニウム合金板とをスポット溶接で接合した後の、接合部の周囲が熱硬化性のエポキシ系接着剤で囲まれている状態を示す断面図である。 本発明に係る鋼板とアルミニウム合金板との異種金属接合方法および異種金属接合継手の一例を模式的に説明する図であり、鋼板とアルミニウム合金板とが接合されてなる異種金属接合継手の十字引張強さの測定方法を示す概略図である。 本発明に係る鋼板とアルミニウム合金板との異種金属接合方法および異種金属接合継手の一例を模式的に説明する図であり、鋼板とアルミニウム合金板とが接合されてなる異種金属接合継手の引張せん断強さの測定方法を示す概略図である。 従来の鋼板とアルミニウム合金板との異種金属接合方法および異種金属接合継手を模式的に説明する図であり、スポット溶接によって鋼板とアルミニウム合金板とを溶接した際に生成される金属間化合物を示す断面図である。
以下、本発明の鋼板とアルミニウム合金板との異種金属接合方法および異種金属接合継手(以下、単に異種金属接合方法、異種金属接合継手と略称することがある)の実施の形態について、主に図1〜図4を適宜参照しながら説明する。なお、本実施形態は、本発明における異種金属接合方法および異種金属接合継手の趣旨をより良く理解させるために詳細に説明するものであるから、特に指定の無い限り本発明を限定するものではない。
近年、特に自動車分野においては、低燃費化や炭酸ガス(CO)の排出量削減を目的とした車体の軽量化のために、車体や部品などに部分的にアルミニウム合金板を使用するニーズが高まっており、この傾向は、特に、ハイブリッド車などの分野において顕著となっている。また、車体の組立や部品の取付けなどを行う場合には、主としてスポット溶接方法が用いられるが、アルミニウム合金板が部分的に使用された場合には、鋼板とアルミニウム合金板とをスポット溶接する必要性が生じる。従来、鋼板とアルミニウム合金板とを溶接した場合には、特に、接合界面において生成される金属間化合物により、溶接部の剥離方向における引張強さ(十字引張強さ)が低下したり、耐衝撃性や耐食性が低下したりする問題があった。このため、自動車分野におけるアルミニウム合金板の適用箇所の拡大に伴い、鋼板とアルミニウム合金板とをスポット溶接する際に金属間化合物が生成するのを抑制でき、優れた継手特性が実現できる方法が望まれていた。
このような要求に対し、本発明の鋼板とアルミニウム合金板との異種金属接合方法では、上述したように、一対の電極の内の一方の電極をリング形状とするとともに、その形状・寸法を適正化した方法を採用している。これにより、接合部において十分な塑性流動を発現させ、金属間化合物が生成するのを抑制しながら、通電による加熱と十分な塑性変形によって鋼板とアルミニウム合金板とを接合できるので、継手強度、特に剥離方向の継手強度や耐衝撃性、耐食性が向上した異種金属接合継手を得ることが可能となる。
[第1の実施形態]
以下に、本発明の鋼板とアルミニウム合金板との異種金属接合方法および異種金属接合継手の第1の実施形態について詳述する。
<鋼板とアルミニウム合金板との異種金属接合方法>
本実施形態の鋼板1とアルミニウム合金板2との異種金属接合方法は、図1に示すように、鋼板1とアルミニウム合金板2とを重ね合わせた状態とし、鋼板1およびアルミニウム合金板2の上下に配置された一対の電極5、6で加圧しながらスポット溶接を行う方法である。そして、本実施形態では、鋼板1とアルミニウム合金板2とを溶接するにあたり、一対の電極5、6の内、一方の電極5として、先端51の先端径D1が6〜9mmとされ、この先端51の中心部に、直径dが先端径D1の40〜70%、深さhが0.5〜2.0mmである円筒状の凹部51aが形成された銅電極を用いるとともに、他方の電極6として、先端61の先端径D2が6〜16mm、先端曲率半径Rが40〜100mmである電極を用い、アルミニウム合金板2を溶融させない状態で通電しながら、鋼板1とアルミニウム合金板2とを接合する方法を採用している。
『スポット溶接』
図1は、本発明において鋼板1とアルミニウム合金板2とを溶接するのに用いられるスポット溶接方法を説明するための模式図である。
本実施形態で説明するスポット溶接は、まず、被溶接材である鋼板1とアルミニウム合金板2とを重ね合わせる。図示例においては、鋼板1とアルミニウム合金板2とを各1枚ずつ重ね合わせた状態としている。そして、鋼板1とアルミニウム合金板2との重ね合わせ部分に対して両側から、すなわち、図1中における上下方向から挟み込むように、銅合金からなる一対の電極5、6を押し付けつつ通電することにより、鋼板1とアルミニウム合金板2との接合部において十分な塑性流動を発生させる。これにより、金属間化合物が生成するのを抑制しながら、通電による加熱と十分な塑性変形によって鋼板1とアルミニウム合金板2とを固相接合することができる。その後、この固相接合部は、溶接通電が終了した後、水冷された電極5、6による抜熱や鋼板1およびアルミニウム合金板2への熱伝導によって急速に冷却される。
なお、図示例では、上述したような異なる形状を有する一対の電極5、6の内、一方の電極5を鋼板1側に配置するとともに、他方の電極6を、アルミニウム合金板2側に配置している。
本発明では、図2に示す例のように、鋼板1とアルミニウム合金板2の界面では、通電時に両者がともに溶融しない状態になることが重要である。なぜなら、通常、このような通電形態では、固有抵抗が高く熱伝導度が低い鋼板1側が優先的に加熱され、その熱がアルミニウム合金板2側にも伝わって発熱が生じるが、この際、界面でアルミニウム合金板2側が溶融すると、金属間化合物が容易に生成されてしまうからである。したがって、接合界面では、鋼板1、アルミニウム合金板2とも固相状態で接合されるのが望ましい。しかしながら、加熱状態によっては、アルミニウム合金板2側で一部溶融が起こることもあるので、その場合には、金属間化合物層4の厚さを、本発明の請求項5で規定する範囲、すなわち、平均厚さを1.0μm以下にしておけば良い。
図2に示す例では、接合界面における固相状態の鋼板1とアルミニウム合金板2との間に、薄いFe−Al系金属間化合物層(金属間化合物)3が生成されている状態を示している。この金属間化合物は生成されない方が望ましく、また、生成された場合でも島状であることが望ましいが、連続的な層状であっても厚さが薄ければかまわない。また、本発明において得られる異種金属接合継手10は、図2に示す例のように、鋼板1とアルミニウム合金板2との接合部に、突起状の塑性変形領域4を有してなるものである。
本発明に係る異種金属接合方法は、上述のようなスポット溶接において、一対の電極5、6を用いて溶接通電を行う条件としている。このような条件で鋼板1とアルミニウム合金板2とをスポット溶接で異種金属接合することにより、特に、接合界面におけるアルミニウム合金板2の溶融が抑制される。このように、接合界面におけるアルミニウム合金板2の溶融を抑制することで、鋼板1とアルミニウム合金板の界面でのFe−Al系金属間化合物の生成が抑制される。そして、鋼板1とアルミニウム合金板2との接合部に、突起状の塑性変形領域4が形成されることで、継手強度、特に剥離方向の強度である十字引張強さを向上させ、また、耐衝撃性、耐食性に優れ、信頼性の高い継手を得ることが可能となる。
『鋼板』
以下に、本発明の異種金属接合方法における一方の被溶接材である、鋼板1の特性について詳述する。
「鋼種」
本発明では、被溶接材である鋼板の鋼種については特に限定されず、例えば、極低C型(フェライト主体組織)、Al−k型(フェライト中にパーライトを含む組織)、2相組織型(例えば、フェライト中にマルテンサイトを含む組織、フェライト中にベイナイトを含む組織)、加工誘起変態型(フェライト中に残留オーステナイトを含む組織)、微細結晶型(フェライト主体組織)など、何れの型の鋼板であっても良い。何れの鋼種からなる鋼板であっても、本発明の異種金属接合方法を適用することにより、鋼板の特性を損なうことなく、金属間化合物の生成を抑制しながら鋼板とアルミニウム合金板とを溶接することができ、信頼性の高い異種金属接合継手(溶接部)が得られる。また、SiはFe−Al系金属間化合物生成の抑制元素であるため、鋼板にSiが含有されていることが望ましい。
「引張強さ」
本発明では、鋼板の引張強さについても、特に限定されるものではなく、如何なる引張強さの鋼板であっても適用が可能である。例えば、自動車車体などにおいて一般的に用いられる、270〜1470MPa級程度の引張強さとされた鋼板を何ら制限無く採用することができる。
「めっき」
本発明では、表層にさらにめっき層が設けられた鋼板を採用することができるが、この際に施されるめっき層の種類についても、何ら制限されるものではない。例えば、鋼板の表面に施されるめっき層の種類としては、Zn系(Zn、Zn−Fe、Zn−Ni、Zn−Al、Zn−Al−Mg、Zn−Al−Mg−Siなど)、Al系(Al−Siなど)など、何れのものであっても良い。また、これらのめっき層の目付量についても特に限定されないが、両面の目付け量で100g/100g/m以下とすることが好ましい。めっきの目付け量が片面あたりで100g/mを超えると、めっき層が接合の際の障害となる場合がある。
「板厚」
本発明では、鋼板の板厚についても特に限定されるものではなく、自動車車体などにおいて一般的に用いられる、0.50〜2.0mm程度の厚さとされた鋼板を何ら制限無く採用することができる。
『アルミニウム合金板』
以下、本発明の異種金属接合方法における他方の被溶接材である、アルミニウム合金板2の特性について詳述する。
「合金種」
本発明では、アルミニウム合金板2の合金の種類についても特に限定されるものではない。例えば、自動車車体などにおいて一般的に用いられる5000(Al−Mg)系、6000(Al−Mg−Si)系など、何れの型のアルミニウム合金であっても何ら制限無く採用することが可能である。ただし、SiはFe−Al系金属間化合物生成の抑制元素であるのに対し、Mgは助長元素であるため、アルミニウム合金板にSiは含有されている方が望ましく、また、Mgは必要最小限の添加量であることが望ましい。
「引張強さ」
本発明では、アルミニウム合金板2の合金の引張強さについても特に限定されるものではなく、例えば、自動車車体などにおいて一般的に用いられる270〜450MPa程度のものを何ら制限無く採用することができる。
「めっき」
本発明では、鋼板1と同様、表層にさらにめっき層が設けられたアルミニウム合金板を採用することができるが、この際に施されるめっき層の種類についても、何ら制限されるものではない。例えば、上記鋼板1の場合と同様、Zn系(Zn、Zn−Fe、Zn−Ni、Zn−Al、Zn−Al−Mg、Zn−Al−Mg−Siなど)、Al系(Al−Siなど)など、何れのものを採用しても良い。また、これらのめっき層の目付量についても特に限定されず、鋼板1の場合と同様、両面の目付け量で100g/100g/m以下とすることが好ましい。
「板厚」
本発明では、アルミニウム合金板2の板厚についても特に限定されるものでは無く、例えば、自動車車体などにおいて一般的に用いられる、0.5〜2.0mm程度の厚さとされたアルミニウム合金板を何ら制限無く採用することができる。
『鋼板とアルミニウム合金板との重ね合わせ』
本実施形態では、異種金属接合方法に関して、主として図2(図1も参照)に例示するような、鋼板1とアルミニウム合金板2とを各1枚の2枚重ねでスポット溶接する場合を説明しているが、本発明ではこれには限定されない。本発明では、被溶接材として一方に鋼板が、他方にアルミニウム合金板が存在する条件であれば、3枚重ね以上としてスポット溶接を行っても良く、適宜選択することが可能である。また、これら鋼板1およびアルミニウム合金板2は、各々2枚以上を重ね合わせた場合には、異厚、異種材であっても良い。
『一対の電極』
以下に、本発明の異種金属接合方法で用いる一対の電極5、6の形状および寸法について、その限定理由を詳述する。本実施形態では、上述したように、一対の電極5、6の内、一方の電極5が鋼板1側に配置され、他方の電極6がアルミニウム合金板2側に配置される。
「一方の電極」
上述したように、本実施形態で用いられる一方の電極5は、先端51の先端径D1が6〜9mmとされ、この先端51の中心部に、直径dが先端径D1の40〜70%、深さhが0.5〜2.0mmである円筒状の凹部51aが形成された銅電極からなる。一方の電極5は、上記構成により、先端51側から見た平面視で略リング状に形成されている。
(先端径:D1)6〜9mm
本実施形態では、一方の電極5の先端51の先端径D1を6〜9mmの範囲に規定する。先端51の先端径D1をこの範囲とすることにより、高い継手強度を有する十分な大きさの固相接合部を形成させることが可能となる。
先端51の先端径D1が6mm未満では、高い継手強度が得られる十分な大きさの固相接合部が得られない。一方、先端51の先端径D1が9mmを超えると、一方の電極5と鋼板1との面圧が低くなり過ぎて十分な塑性変形が起こらず、また、電流密度も低下して接合部における溶接時の到達温度が低下するため、高い継手強度が得られない。また、先端を、9mmを超える先端径として高い継手強度を得ようとする場合には、高い加圧力と電流が必要となり、生産性やコスト面で不利になることがある。
(凹部の直径:d)
本実施形態では、一方の電極5の先端51において、軸方向中心部に設けられた円筒状の凹部51aの直径dを、上述した先端51の先端径D1の40〜70%の範囲に規定する。凹部51aの直径dがこの範囲であれば、高い継手強度を有する十分な大きさの固相接合部を形成させることが可能となる。
先端51の凹部51aの直径dが40%未満だと、高い継手強度が得られる十分な大きさの固相接合部が得られない。また、鋼板1との電極先端との接触面積が増加し、電流密度が低下して接合部における溶接時の到達温度が低下するため、高い継手強度が得られない。一方、凹部51aの直径dが70%を超えると、鋼板1およびアルミニウム合金板2において十分な塑性変形が起こらないため、高い継手強度が得られず、また、鋼板1との接触部の面積が低下して面圧が高くなることにより表面での凹みが大きくなって、電極が鋼板にめり込んで溶着し易くなるという問題がある。
(凹部の深さ:h)
本実施形態では、一方の電極5の先端51に設けられた円筒状の凹部51aの深さhを、0.5〜2.0mmの範囲に規定する。凹部51aの深さhがこの範囲であれば、鋼板1およびアルミニウム合金板2において十分な塑性変形を発生させることができ、高い継手強度を得ることが可能となる。
先端51に設けられた円筒状の凹部51aの深さhが0.5mm未満だと、鋼板1およびアルミニウム合金板2において十分な塑性変形が起こらないため、高い継手強度が得られない。一方、凹部51aの深さhが2.0mmを超えると、鋼板1の表面における凸形状の部分の突出高さが大きくなりすぎ、電極が鋼板1にめり込んで抜けなくなり、また、溶着し易くなるという問題がある。
「他方の電極」
上述したように、本実施形態で用いられる他方の電極6は、先端61の先端径D2が6〜16mm、先端曲率kが40〜100mmである銅電極からなる。
(先端径:D2)6〜16mm
本実施形態では、他方の電極6の先端部61の先端径D2を6〜16mmの範囲に規定する。先端部61の先端径D2がこの範囲であれば、上述した一方の電極5の先端51に形成された凹部51aの直径dよりも先端径D2が大きくなり、鋼板1およびアルミニウム合金板2の塑性変形を十分に発生させることができるので、継手強度を向上させることが可能となる。
先端部61の先端径D2が6mm未満だと、アルミニウム合金板2側の凹みが大きくなり過ぎ、外観の劣化や疲労強度の低下が生じるおそれがある。一方、先端部61の先端径D2が16mmを超えると、先端部61の凸状部分へのアルミニウム合金板2の流入促進作用が小さくなり、鋼板1およびアルミニウム合金板2が十分に塑性変形せず、高い継手強度が得られなくなる。
(先端曲率半径:R)40〜100mm
本実施形態では、他方の電極6の先端部61の先端曲率半径Rを40〜100mmの範囲に規定する。先端部61の先端曲率半径Rをこの範囲とし、電極先端が所定の曲率を有する形状とし、先端部61の凸状部分にアルミニウム合金板2が流入し易くすることにより、鋼板1およびアルミニウム合金板2の塑性変形を十分に発生させることができ、継手強度を向上させることが可能となる。
先端部61の先端曲率半径Rが40mm未満だと、アルミニウム合金板2側の凹みが大きくなり過ぎ、外観の劣化や疲労強度の低下が生じるおそれがある。一方、先端部61の先端曲率半径Rが100mmを超えると、先端部61の凸状部分へのアルミニウム合金板2の流入促進作用が小さくなり、鋼板1およびアルミニウム合金板2が十分に塑性変形せず、高い継手強度が得られなくなる。
『その他の溶接条件』
本実施形態の鋼板とアルミニウム合金板との異種金属接合方法においては、その他の溶接条件、例えば、溶接時の電流や通電時間、電極加圧力の他、溶接通電後の保持時間などについては、従来公知のスポット溶接で選ばれている条件と同様の条件とすることができる。
ここで、本実施形態の異種金属接合方法は、鋼板1とアルミニウム合金板2とを、接合界面における塑性流動を利用して固相接合させる方法であることから、特に、アルミニウム合金板2が溶融しない通電条件とすることが望ましい。また、一般に、鋼板とアルミニウム合金板とを加圧して接合する場合、溶接温度が450℃を超えると、鋼板とアルミニウム合金板との界面に金属間化合物が生成されやすくなるという問題がある。このため、本実施形態では、上記通電(加圧)条件に関し、溶接温度が450℃以下となるような条件を設定することが好ましい。但し、溶接温度が低すぎると、上述した接合界面における塑性流動が生じにくいことから、その下限が350℃となるような通電(加圧)条件を設定することが好ましい。
本実施形態では、上記構成の一対の電極5、6を用いて、重ね合わせられた鋼板1およびアルミニウム合金板2を加圧し、アルミニウム合金板2を溶融させない状態で通電しながら、鋼板1とアルミニウム合金板2とを接合する方法を採用している。すなわち、鋼板1およびアルミニウム合金板2に塑性変形を発生させ、金属間化合物が生じるのを抑制しながら、鋼板1とアルミニウム合金板2との界面に十分な塑性流動を発生させ、固相接合部を形成させる。このように、本実施形態では、通電による加熱と十分な塑性変形によって鋼板とアルミニウム合金板とを接合できるので、継手強度、特に剥離方向の継手強度や耐衝撃性、疲労強度および耐食性が向上した異種金属接合継手を得ることが可能となる。
<異種金属接合継手>
本実施形態の異種金属接合継手10は、上記したような本実施形態の異種金属接合方法により、鋼板1とアルミニウム合金板2とがスポット溶接で接合されて得られるものである。また、本発明の異種金属接合継手10は、図1、2に例示するように、鋼板1とアルミニウム合金板2との接合部に、突起状の塑性変形部(塑性変形領域)4を有する。なお、図1、2に示す例においては、塑性変形部4に関し、鋼板1およびアルミニウム合金板2の両方の突起部に符号を付している。
また、図2に示す例の異種金属接合継手10は、鋼板1とアルミニウム合金板2との接合界面に、平均厚さが1.0μm以下のFe−Al系金属からなる金属間化合物層3が生成されている。
図1、2に示すように、本実施形態の異種金属接合継手10に備得られる突起状の塑性変形部4は、上記の異種金属接合方法において、先端51に凹部51aが備えられた一方の電極5と、先端61の先端曲率kが適正範囲とされた他方の電極6とによる加圧、通電時に、鋼板1およびアルミニウム合金板2が塑性変形することで形成されるものである。このような突起状の塑性変形部4が形成されることで、この箇所における接合強度が強固となり、特に剥離方向の継手強度を向上させる効果が得られる。
また、塑性変形部4の位置においては、鋼板1とアルミニウム合金板2との接合界面に、塑性流動によって固相接合された固相接合部が形成されており、この箇所における接合強度が強固となる。これにより、継手強度、特に剥離方向の継手強度や耐衝撃性を向上させる効果がより顕著に得られる。
塑性変形部4の高さとしては、0.5〜2.0mmの範囲であることが好ましく、0.5〜1.0mmの範囲であることがより好ましい。塑性変形部4の高さが上記範囲であれば、継手強度、特に剥離方向の継手強度や耐衝撃性を向上させる効果がより顕著に得られる。塑性変形部4の高さが0.5mm未満だと、上記効果が得られ難くなり、また、2.0mmを超えると、鋼板1の表面における凸形状の部分の突出高さが大きくなりすぎ、外観や製品寸法などの問題が生じる。
また、塑性変形部4の平面視形状としては、特に限定されるものではないが、例えば、円形などであることが、応力集中回避や継手全体における強度バランスの観点から好ましい。
「金属間化合物層の平均厚さ」
本実施形態においては、図2中に示すような金属間化合物3の厚さは極力薄いことが好ましい。異種金属接合継手10において存在する金属間化合物3は、一対の電極5、6によって鋼板1およびアルミニウム合金板2を加圧、通電する際の塑性流動と加熱により、不可避的に生成されるFe−Al系金属間化合物からなるものである。そして、本実施形態では、この金属間化合物層3の厚さを、平均厚さで1.0μm以下に規定している。このように、スポット溶接を用いた異種金属接合方法によって生成される金属間化合物層3に関し、その生成を可能な限り抑制して薄くすることにより、優れた継手強度、疲労強度および耐食性が得られる。金属間化合物層3の平均厚さが1.0μmを超えると、継手強度、特に剥離方向の強度(十字引張強さ)が低下する。
本実施形態の異種金属接合継手10によれば、上記本実施形態の異種金属接合方法によって製造され、上記構成を備えるものなので、溶接部の特性、すなわち、継手強度、特に剥離方向の継手強度や耐衝撃性、疲労強度および耐食性に優れた信頼性の高いものとなる。
[第2の実施形態]
以下、本発明の鋼板とアルミニウム合金板との異種金属接合方法および異種金属接合継手の第2の実施形態について、主に図3、4を参照しながら詳述する。
なお、本実施形態においては、上記第1の実施形態と同様の構成については同じ符号を付与するとともに、その詳しい説明を省略する。
<異種金属接合方法>
本実施形態の鋼板とアルミニウム合金板との異種金属接合方法は、鋼板1とアルミニウム合金板2との間に、予め、熱硬化性のエポキシ系接着剤を塗布して接着した後、鋼板1とアルミニウム合金板2とを溶接する点で、上記第1の実施形態とは異なる。また、本実施形態の異種金属接合方法は、上述した熱硬化性のエポキシ系接着剤を予め塗布する点を除き、第1の実施形態と同様の条件及び手順で鋼板1とアルミニウム合金板2とを接合する。
図3に示すように、本実施形態の異種金属接合方法においては、鋼板1とアルミニウム合金板2とを重ね合わせる前に、鋼板1のアルミニウム合金板2と接合される面、および/または、アルミニウム合金板2の鋼板1と接合される面に、熱硬化性のエポキシ系接着剤を塗布し、接着層(熱硬化性のエポキシ系接着剤からなる層)Aを形成する。
本実施形態における接着剤の厚さは、鋼板1またはアルミニウム合金板2の一方に接着剤を塗布した場合は、その厚さであり、鋼板1およびアルミニウム合金板2の両方に接着剤を塗布した場合は、両者の合計の厚さである。この際の接着剤の塗布厚さは、良好な接着性を得るためには0.05〜0.3mmの範囲とすることが好ましい。熱硬化性のエポキシ系接着剤を塗布する際の厚さが上記範囲未満であっても、あるいは、上記範囲を超えた場合であっても、接着性が低下する。
本実施形態では、接着層Aをなす接着剤として、熱硬化性のエポキシ系接着剤を用いることが好ましい。このような接着剤を用いて接着層Aを形成し、接合部周囲を覆うことで、継手の疲労強度を向上させ、異種金属接触腐食を防ぐ効果が得られる。また、さらに後熱処理を行うことで接着剤を硬化させ、継手強度をより向上させることが可能となる。
本実施形態において用いる熱硬化性のエポキシ系接着剤としては、エポキシ樹脂として、例えば、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型など、ウェルドボンド接合の接着剤の硬化物に一般的に含まれるものが挙げられる。また、熱硬化性のエポキシ系接着剤としては、さらに、ウェルドボンド接合の接着剤に一般的に含まれる溶剤、可塑剤などの添加剤が適量含有されているものであってもよく、またさらに、炭酸カルシウム、タルク、シリカなどの充填材や、顔料などの添加剤が適量含有されているものであってもよい。
ここで、従来から用いられている、熱硬化性のエポキシ系接着剤としては、一液加熱硬化型接着剤や二液硬化型接着剤などを用いることができ、例えば、一液加熱硬化型接着剤であるIW2010(商品名:住友スリーエム株式会社製)、SW2214(商品名:住友スリーエム株式会社製)、X7416(商品名住友スリーエム株式会社製)などを好適に用いることができる。
次に、本実施形態では、鋼板1の表面に、アルミニウム合金板2の一方の面の一部を、接着剤を介して対向して配置し、接着剤を硬化させる硬化処理を行う。接着剤の硬化処理としては、所定の温度で所定の時間加熱する処理が挙げられ、硬化条件は、接着剤の種類に応じて適宜決定できる。
そして、本実施形態では、接着剤を介して重ねられた鋼板1とアルミニウム合金板2とを、上記第1の実施形態と同様の条件及び手順でスポット溶接する。
<異種金属接合継手>
本実施形態の異種金属接合継手20は、上記本実施形態の異種金属接合方法によって鋼板1とアルミニウム合金板2とがスポット溶接されてなるものであり、図2に示す例のように、鋼板1とアルミニウム合金板2との接合部に突起状の塑性変形部(塑性変形領域)24を有し、かつ、平面視における接合部の周囲が、熱硬化性のエポキシ系接着剤からなる接着層Aで囲まれた構成とされている。また、接着層Aは、鋼板1とアルミニウム合金板2との間の少なくとも一部に配置されており、鋼板1とアルミニウム合金板2とがスポット溶接されてなる溶接部には配置されていない。
より詳細には、溶接部の位置における接着層Aは、予め、鋼板とアルミニウム合金板との間に塗布された接着剤が、スポット溶接によって溶接部が形成されることにより、この領域から排出される。このような溶接部の周辺領域は、隙間液等が侵入して異種金属間の電位差に起因する腐食が発生しやすい領域でもある。
上述したような隙間液としては、例えば、異種金属接合継手を自動車の車体の一部に適用した場合に、車外から入り込んだ雨水などが、接着層と鋼板の表面との隙間に侵入したものが挙げられる。このように、接着層と鋼板との間に隙間液が侵入すると、鋼板が腐食されるとともに、この腐食に伴って隙間液のpHが上昇する。そして、pHの上昇した隙間液を中和するために、両性金属であるAlがアルミニウム合金板から隙間液に溶出し、Al系腐食生成物が形成されてアルミニウム合金板が腐食される。このような作用により、異種金属接合継手が腐食する場合がある。
本実施形態によれば、上記構成の如く、鋼板1とアルミニウム合金板2との接合部に突起状の塑性変形部24を有するとともに、平面視における接合部の周囲、すなわち、塑性変形部24の周囲が接着層Aで囲まれた構成を採用している。これにより、上述のような隙間液が溶接部に侵入するのを遮断できるので、異種金属接合継手20が腐食するのを防止することが可能となる。また、本実施形態の異種金属接合継手20は、第1の実施形態における異種金属接合継手10と同様、鋼板1とアルミニウム合金板2との接合部に突起状の塑性変形部24を有した構成なので、この箇所における接合強度が強固となる。また、本実施形態の異種金属接合継手20は、第1の実施形態の異種金属接合継手10と同様、金属間化合物層23が生成するのが抑制されている。これにより、継手強度、特に剥離方向の継手強度や耐衝撃性を向上させる効果がより顕著に得られる。
なお、熱硬化性のエポキシ系接着剤からなる接着層Aの平均厚さ、すなわち、熱硬化性のエポキシ系接着剤が硬化した後の接着層Aの平均厚さが0.05〜0.3μmの範囲であることが好ましい。接着層Aの厚さがこの範囲内であれば、高い接着性が得られるとともに、上述したような、接合部への隙間液の浸入を遮断し、異種金属接合継手20が腐食するのを防止できるとともに、継手の疲労強度が向上する。
接着層Aの平均厚さが上記範囲未満であっても、あるいは、上記範囲を超えた場合であっても、接着性が低下するか、あるいは、接合部への隙間液の浸入を遮断して腐食を防止する効果が得られにくくなるおそれがある。
以上説明したような、本発明に係る鋼板1とアルミニウム合金板2との異種金属接合方法によれば、上記構成の如く、鋼板とアルミニウム合金板とをスポット溶接する際に用いる電極の形状を適正化する方法を採用している。これにより、鋼板とアルミニウム合金板とを接合する際の良好な作業性を確保しつつ、溶接部の特性、すなわち、継手強度、特に剥離方向の継手強度や耐衝撃性、疲労強度および耐食性に優れた、信頼性の高い継手を形成させることが可能となる。
また、本発明に係る異種金属接合継手によれば、上記の異種金属接合方法によって鋼板とアルミニウム合金板とを接合することで得られ、接合部に突起状の塑性変形領域を有するものなので、溶接部の特性、すなわち、継手強度、特に剥離方向の継手強度や耐衝撃性、疲労強度および耐食性に優れた信頼性の高いものとなる。
従って、例えば、自動車分野において、部分的なアルミニウム合金板の適用で軽量化された自動車用部品の製造や車体の組立などの工程に本発明を適用することにより、車体全体の軽量化による低燃費化や炭酸ガス(CO)の排出量削減などのメリットを十分に享受することができ、その社会的貢献は計り知れない。
以下、本発明に係る鋼板とアルミニウム合金板との異種金属接合方法および異種金属接合継手の実施例を挙げ、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、もとより下記実施例に限定されるものではなく、前、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
上述したように、本発明においては、溶接通電や加圧保持の条件については特に限定していないが、本実施例では、板厚が1mm前後の軟鋼板やアルミニウム合金板の2枚重ね溶接時に用いられる、代表的な通電および加圧パターンの条件の内、アルミニウム合金板の溶融が発生しないような条件を選定した。このような溶接条件を選定することで、例えば、通電や加圧条件の一部設定変更を行った場合でも、一般的なスポット溶接の条件の範囲を逸脱するものとはならないため、実施例データとして適正であるとともに、実工程においては生産性を阻害しないメリットがある。
[実施例1]
実施例1においては、まず、下記表1に示すような、引張強さが294〜1773MPa級の鋼板と、同様に下記表1に示すようなアルミニウム合金板(1000系、5000系ならびに6000系)を準備した。そして、これらの各鋼板およびアルミニウム合金板から、スポット溶接継手の十字引張試験方法(JIS Z3137)に基づいて、十字引張試験片に用いる50×150mmのサイズのサンプル片を切り出した。
Figure 0006287083
次に、上記サンプル片を用いて、スポット溶接継手の十字引張試験方法(JIS Z3137)に基づき、図5に示すような十字状に各試験片を重ね合せ、下記表2および表3に示す条件で、インバータ式直流スポット溶接機を用いてスポット溶接を行い、溶接継手によって各サンプル片が接合されてなる十字引張試験片を作製した。
また、上記サンプル片を用いて、スポット溶接継手のせん断強さ試験方法(JIS Z3138)に基づき、図6に示すように各試験片を重ね合せ、下記表2および表3に示す条件で、インバータ式直流スポット溶接機を用いてスポット溶接を行い、溶接継手によって各サンプル片が接合されてなる引張せん断試験片を作製した。
この際、本発明例である試験No.A1〜A45においては、溶接電極として、図1に示すような一対の電極5、6を使用した。具体的には、鋼板1側に配置される一方の電極5として、先端51の中心部に円筒状の凹部51aが設けられ、先端51側から見た平面視でリング状に形成されたものを用い、また、アルミニウム合金板2側に配置される他方の電極6として、先端61が所定の曲率で隆起した形状のものを用いた。また、これら一対の電極5、6については、本発明の請求項1に記載の各寸法規定を満たすものを用いた。
また、比較例である試験No.A46〜A54においては、溶接電極として、従来公知である、Cr−Cu合金製で先端径が6.0mmのドームラジアス型のものを使用した。
また、比較例である試験No.A55〜A64においては、溶接電極として、上記本発明例である試験No.A1〜A45と同様の形状を有するものの、各部の寸法が、本発明の請求項1で規定する範囲を逸脱するものを用いた。
ここで、溶接通電(加圧)、ならびに、溶接通電パターンが完了した後の加圧保持条件については、下記表2および表3に示す範囲で変化させた。
次に、得られた十字引張試験片について、スポット溶接継手の十字引張試験方法(JIS Z3137)に基づき、十字引張試験を実施した。この際、剥離方向、すなわち、図5中の符号6で示すように、上側の試験片を上方向に、下側の試験片を下方向に、相互に剥離する方向で荷重を付加することで十字引張試験を実施し、十字引張強さ(CTS)を測定した。
また、得られた引張せん断試験片について、スポット溶接継手の引張せん断強さ試験方法(JIS Z3138)に基づき、図6に示すように、せん断方向(図中の符号7)に負荷して引張せん断試験を実施し、引張せん断強さを測定した。
そして、十字引張強さ(剥離荷重)については、アルミニウム合金板A6022同士のスポット溶接部における接合強度を参考にして、1.0(kN)以上、引張せん断強さについては、1.5(kN)以上を合格「○」とし、溶接不良の有無の結果として、下記表2および表3に示した。
また、鋼板とアルミニウム合金板との接合界面に生成される金属間化合物層に関し、電極で加圧された位置における厚さを測定した。この測定にあたっては、まず、上述の十字引張試験などと同じサンプル片を用いて、同条件でスポット溶接を行うことで断面観察用スポット溶接サンプルを作製した。次いで、このサンプルの溶接部中央付近を切断し、樹脂に埋め込んで断面研磨した後、走査型電子顕微鏡によって断面を観察することで厚さを測定し、結果を下記表2および表3に示した。
そして、総合評価として、溶接部において、電極で加圧された位置の金属間化合物層の厚さが1.0μm以下であって、引張せん断強さが1.5(kN)以上、かつ、十字引張強さが1.0kN以上の場合を「○」とし、また、金属間化合物層の厚さが1.0μm超、もしくは、引張せん断強さが1.5(kN)未満であるか十字引張強さが1.0kN未満の場合を「×」として評価し、結果を下記表2および表3に示した。
Figure 0006287083
Figure 0006287083
表2に示す試験No.A1〜A45は本発明例であり、表3に示す試験No.A46〜A64は比較例である。
表2の結果に示すように、本発明で規定する形状・寸法とされた一対の電極を用いてスポット溶接を行った試験No.A1〜No.A45の本発明例では、何れも、接合界面間に生成された金属間化合物層が1.0μm以下の厚さに抑制されていた。また、引張せん断強さが全て1.5(kN)以上で、十字引張強さも全て1.0kN以上であり、接合強度が高いことが確認できた。そして、上記結果により、試験No.A1〜No.A45の本発明例は、全て、総合評価が「○」となった。
一方、表3の結果に示すように、本発明の規定外、すなわち、従来のドームラジアス型のCr−Cu合金製電極を用いてスポット溶接を行った試験No.A46〜A54の比較例では、ほとんどの例において金属間化合物層の厚さが1.0μmを超える結果となった。また、これら比較例においては、全ての例の引張せん断強さが1.5(kN)未満であるとともに、十字引張強さが1.0kN未満であり、結果として、金属間化合物層の厚さ、または、十字引張強さの少なくとも何れかの評価が低いものとなり、継手強度に劣るものとなった。この結果、試験No.A46〜A64の比較例は、全て、総合評価が「×」となった。
[実施例2]
実施例2においては、実施例1と同様、まず、表1に示すような、引張強さが294〜1773MPa級の鋼板と、同様に表1に示すようなアルミニウム合金板(1000系、5000系ならびに6000系)を準備した。そして、これらの各鋼板およびアルミニウム合金板から、スポット溶接継手の十字引張試験方法(JIS Z3137)に基づいて、十字引張試験片に用いる50×150mmのサイズのサンプル片を切り出した。
次に、上記実施例1と同様、スポット溶接継手の十字引張試験方法(JIS Z3137)に基づき、図5に示すような十字状に各試験片を重ね合せ、下記表4および表5に示す条件で、インバータ式直流スポット溶接機を用いてスポット溶接を行い、溶接継手によって各サンプル片が接合されてなる十字引張試験片を作製した。この際、本実施例においては、まず、鋼板、あるいは、アルミニウム合金板のいずれかの接合面に、熱硬化性のエポキシ系接着剤を塗布した後、図5に示すような十字状に各試験片を重ね合せ、鋼板とアルミニウム合金板とを接着した。その後、所定の温度で加熱して接着剤を硬化させる熱硬化処理を行った。
また、上記実施例1と同様、スポット溶接継手の引張せん断強さ試験方法(JIS Z3138)に基づき、図6に示すように各試験片を重ね合せ、下記表4および表5に示す条件で、インバータ式直流スポット溶接機を用いてスポット溶接を行い、溶接継手によって各サンプル片が接合されてなる引張せん断試験片を作製した。この際、上記同様、まず、鋼板、あるいは、アルミニウム合金板のいずれかの接合面に、熱硬化性のエポキシ系接着剤を塗布した後、図6に示すように各試験片を重ね合せ、鋼板とアルミニウム合金板とを接着し、その後、所定の温度で加熱して接着剤を硬化させる熱硬化処理を行った。
本実施例では、熱硬化性のエポキシ系接着剤として、エポキシ樹脂を含む接着剤である一液エポキシ加熱硬化型接着剤スコッチウェルドIW2010(商品名;住友スリーエム株式会社製)を用いた。
そして、重ね合せて接着された各試験片について、実施例1と同様の方法でスポット溶接を行った。
この際、本発明例である試験No.B1〜B45においては、溶接電極として、図1に示すような一対の電極5、6を使用した。具体的には、鋼板1側に配置される一方の電極5として、先端51の中心部に円筒状の凹部51aが設けられ、先端51側から見た平面視でリング状に形成されたものを用い、また、アルミニウム合金板2側に配置される他方の電極6として、先端61が所定の曲率で隆起した形状のものを用いた。また、これら一対の電極5、6については、本発明の請求項1に記載の各寸法規定を満たすものを用いた。
また、比較例である試験No.B46〜B54においては、溶接電極として、従来公知である、Cr−Cu合金製で先端径が6.0mmのドームラジアス型のものを使用した。
また、比較例である試験No.B55〜B64においては、溶接電極として、上記本発明例である試験No.B1〜B45と同様の形状を有するものの、各部の寸法が、本発明の請求項1などで規定する範囲を逸脱するものを用いた。
また、上記のスポット溶接における溶接通電(加圧)、ならびに、溶接通電パターンが完了した後の加圧保持条件については、下記表4および表5に示す範囲で変化させた。
次に、得られた十字引張試験片について、スポット溶接継手の十字引張試験方法(JIS Z3137)に基づき、十字引張試験を実施した。この際、剥離方向、すなわち、図5中の符号6で示すように、上側の試験片を上方向に、下側の試験片を下方向に、相互に剥離する方向で荷重を付加することで十字引張試験を実施し、十字引張強さ(CTS)を測定した。
また、得られた引張せん断試験片について、スポット溶接継手の引張せん断強さ試験方法(JIS Z3138)に基づき、図6に示すように、せん断方向(図中の符号7)に負荷して引張せん断試験を実施し、引張せん断強さを測定した。
そして、十字引張強さ(剥離荷重)については、アルミニウム合金板A6022同士のスポット溶接部における接合強度を参考にして、1.0(kN)以上、引張せん断強さについては、1.5(kN)以上を合格「○」とし、溶接不良の有無の結果として、下記表4および表5に示した。
また、本実施例では、継手の耐食性に関し、自動車用外観腐食試験法のJASO M609−91試験を用いて評価を行った。この際、各試験片に対して、所定の化成処理・電着塗装を行ったうえで6週間の試験を行った。また、腐食の程度は、継手を隔離させたうえで、溶接部周辺部を中心に目視で評価し、溶接部における耐食性の評価が、五段階評価(良い←1、2、3、4、5→悪い)で評点3以上の場合を、後述の総合評価における「○」として加点し、評点2以下の場合を「×」として評価した。
また、実施例1と同様に、鋼板とアルミニウム合金板との接合界面に生成される金属間化合物層に関し、電極で加圧された位置における厚さを測定した。この際、まず、上述の十字引張試験などと同じサンプル片を用いて、同条件でスポット溶接を行うことで断面観察用スポット溶接サンプルを作製した。次いで、このサンプルの溶接部中央付近を切断し、樹脂に埋め込んで断面研磨した後、走査型電子顕微鏡によって断面を観察することで厚さを測定し、結果を下記表4および表5に示した。
そして、総合評価として、溶接部において、電極で加圧された位置の金属間化合物層の厚さが1.0μm以下であって、引張せん断強さが1.5(kN)以上、かつ、十字引張強さが1.0kN以上、さらに、溶接部における耐食性の評価が評点3以上の場合を「○」とした。また、金属間化合物層の厚さが1.0μm超、もしくは、引張せん断強さが1.5(kN)未満であるか十字引張強さが1.0kN未満、さらに、溶接部における耐食性の評価が評点2点以下の場合を「×」として評価し、結果を下記表4および表5に示した。
Figure 0006287083
Figure 0006287083
表4に示す試験No.B1〜B45は本発明例であり、また、表5に示す試験No.B46〜B64は比較例である。
表4の結果に示すように、本発明で規定する方法で鋼板とアルミニウム合金板とを接着した後、本発明で規定する形状・寸法とされた一対の電極を用いてスポット溶接を行った試験No.B1〜No.B45の本発明例では、何れも、接合界面間に生成された金属間化合物層が0.1μm以下の厚さに抑制されていた。また、耐食性の評価も全て評点3以上であり、優れた耐食性を備えていることが確認できた。また、引張せん断強さが全て1.5(kN)以上で、十字引張強さも全て1.0kN以上であり、接合強度が高いことが確認できた。そして、上記結果により、試験No.B1〜No.B45の本発明例は、全て、総合評価が「○」となった。本実施例においては、実施例1において示した、本発明の請求項1の方法で異種金属を接合した場合の、接合部の引張せん断強さおよび十字引張強さの向上に加え、さらに、耐食性に優れていることが確認できた。
一方、表5の結果に示すように、従来のドームラジアス型のCr−Cu合金製電極を用いてスポット溶接を行った試験No.B46〜B54の比較例では、ほとんどの例において金属間化合物層の厚さが1.0μmを超える結果となった。また、これら比較例においては、全ての例の引張せん断強さが1.5(kN)未満であるとともに、十字引張強さが1.0kN未満であり、結果として、金属間化合物層の厚さ、または、十字引張強さの少なくとも何れかの評価が低いものとなり、継手強度に劣るものとなった。
また、本発明の規定外、すなわち、本発明例である試験No.B1〜B45と同様の形状を有するものの、各部の寸法が、本発明の請求項1で規定する範囲を逸脱するものを用いてスポット溶接を行った試験No.B55〜B64の比較例では、塑性変形部の形成が十分でないか、あるいは、大きく突出する突起部として形成される結果となった。これに伴い、試験No.B55〜B64では、接着層が塑性変形部を囲むように形成されずに、塑性変形部の位置において鋼板とアルミニウム合金板との間に存在する状態となるか、あるいは、突起部が巨大で外観に劣るものとなった。また、試験No.B55〜B64は、B46〜B54と同様、全ての例の引張せん断強さおよび十字引張強さが低いものとなり、さらに、金属間化合物層が厚いものとなった。
この結果、試験No.B46〜B64の比較例は、接着層による耐食性向上の効果は見られるものの、全て、総合評価が「×」となった。
なお、上記実施例1、2においては、板厚を変更して実験を行った場合も、また、鋼板表面のめっき種や目付量などを変更して実験を行った場合も、結果は上記と同様であった。すなわち、板厚やめっきの有無などにかかわらず、本発明の異種金属接合方法を採用することで、金属間化合物が生成するのを抑制しながら、通電による加熱と十分な塑性変形によって鋼板とアルミニウム合金板とを接合でき、継手強度、特に剥離方向の継手強度や耐衝撃性、疲労強度および耐食性が向上する効果が得られることが確認できた。
本発明によれば、部分的なアルミニウム合金板の適用で軽量化された自動車用部品の製造や車体の組立などの工程に本発明を適用することにより、良好な作業性を確保しつつ、継手特性を向上させることが可能となる。従って、自動車分野において、車体全体の軽量化による低燃費化や炭酸ガス(CO)の排出量削減などのメリットを十分に享受することができ、その社会的貢献は計り知れない。
1…鋼板、
2…アルミニウム合金板、
3、23…金属間化合物層(金属間化合物)、
4、24…塑性変形部(塑性変形領域)、
A…接着層(熱硬化性のエポキシ系接着剤からなる層)、
5…一方の電極(一対の電極)
51…先端、
51a…凹部(円筒状の凹部)、
D1…先端径(先端)、
d…直径(凹部)、
h…深さ(凹部)、
6…他方の電極(一対の電極)、
61…先端、
D2…先端径(先端)、
R…先端曲率半径(先端)、
10、20…異種金属接合継手

Claims (2)

  1. 鋼板とアルミニウム合金板とを重ね合わせた状態とし、前記鋼板およびアルミニウム合金板の上下に配置された一対の電極で加圧しながら接合する、鋼板とアルミニウム合金板との異種金属接合方法であって、
    前記一対の電極の内、一方の電極として、先端径D1が6〜9mmとされ、該先端の中心部に、直径dが前記先端径D1の40〜70%、深さhが0.5〜2.0mmである円筒状の凹部が形成された銅電極を用いるとともに、他方の電極として、先端径D2が6〜16mm、先端曲率半径Rが40〜100mmである銅電極を用い、
    前記アルミニウム合金板を溶融させない状態で通電しながら、前記鋼板と前記アルミニウム合金板との界面に塑性流動を発生させ、高さが0.5〜2.0mmである突起状の塑性変形部を形成させることで、前記鋼板と前記アルミニウム合金板とを接合することを特徴とする鋼板とアルミニウム合金板との異種金属接合方法。
  2. 前記鋼板と前記アルミニウム合金板との間に、予め、熱硬化性のエポキシ系接着剤を塗布して接着し、その後、前記鋼板と前記アルミニウム合金板とを接合することを特徴とする請求項1に記載の鋼板とアルミニウム合金板との異種金属接合方法。
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