JP6104008B2 - 抵抗熱により接合されたステンレス鋼板製成型品 - Google Patents

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Description

本発明は、熱交換器、機械部品、燃料電池部品、家電製品部品、プラント部品、装飾品構成部材、建材、その他種々のステンレス鋼板およびステンレス箔(以下、ステンレス鋼という)が使用される部品において、インサート材なしに継手部に電流を流し、そこに発生する抵抗熱によって加熱し、圧力を加えて接合する方法(以下、「抵抗発熱法」という)にて接合を施したステンレス鋼製抵抗熱接合成形品に関する。
ステンレス鋼の接合方法として、抵抗溶接による接合は、スポット溶接、シーム溶接、プロジェクション溶接などの手法により、様々な分野で使用されてきた。重ね抵抗溶接では、一般にはJISZ3001−1:08(溶接用語)の番号15201の図で示されるように、ナゲット、コロナボンド、熱影響部、散り、くぼみと呼ばれる部位で構成されており、JISZ3140:89(スポット溶接部の検査方法)では十分なナゲット径を有し、割れやブローホールのない状態が健全な成型品であるとされてきた。
ナゲットは、抵抗溶接時における鋼板への入熱を規制することにより適正量に調整することが可能である。例えば、入熱過小であれば接合強度不足、入熱過大であれば溶融部の溶け落ちや表面割れが発生するため、これらを避けるための入熱選定が重要となる。しかし、抵抗溶接を薄板に適用する場合、適切なナゲット径が形成されるように入熱を調整するとともに、鋼板を上下から加熱しつつ所定の時間通電するため、一般には、ナゲットを形成する部分の板厚減少、すなわちくぼみ(インデンテーション)が、重ねた板の厚さに対して大きくなりやすく、その結果、接合部の強度低下や応力集中が課題の1つとして挙げられる。また、ステンレス鋼の抵抗溶接は、鋼表面に存在する不動態皮膜により、散り(スパッタ)が発生しやすく、鋼板を美麗に保つための研磨や酸洗などの後処理が必要であるといった生産性を阻害する要因もあった。
薄板の接合は、TIG溶接やMIG溶接などのアーク溶接法でも同様に入熱管理を精度よく行う必要があり、抵抗溶接の代替手段としては容易ではない。一方、拡散接合に代表される固相接合法や、ろう付けに代表される液相接合法は、薄板でも比較的容易に接合可能であるが、一般には炉中で面圧を付与しながら接合されるため、生産性に劣るとともに、炉内の露点と鋼成分によっては着色を避けがたく、また接合後の冷却速度が緩慢なため、鋭敏化、σ相析出、475℃脆化などの感受性が高い鋼種には適用が困難であるとの短所があった。以上述べたように、板厚1.0mm以下のステンレス鋼薄板の接合において、溶融溶接、抵抗溶接、拡散接合、ろう付けなどの方法が各々の用途に対し検討されてきていたが、接合面の信頼性、外観、生産性という点では必ずしも十分とは言えない場合があった。
特許文献1では、組電池の極間を接続する金属板のアークスポット溶接方法において、板厚に対する溶け込み深さを制限することで良好な溶接品質を得るものである。
特許文献2では、溶接部の変色や耐食性劣化を防止するために不活性ガスを供給した状態で溶接を行なう方法が開示されている。
特許文献3,4では、鋼板中の炭窒化物や各合金成分を制限することにより、溶接熱影響部の結晶粒粗大化を抑制し、継手強度を向上させる技術が開示されている。
特開2008−210730号公報 特開平6−246659号公報 特開2008−81758号公報 特開2010−100909号公報
本発明が解決しようとする課題は、板厚1.0mm以下、好ましくは板厚0.3mm以上1.0mm以下の被接合箇所を含む抵抗溶接において、上述した接合不足やくぼみによる強度低下、散りや着色による意匠性低下を抑制させるため、抵抗発熱法のうち、抵抗溶接の定義では良品と扱われない方法によって、ステンレス鋼製の接合成型品を得ることである。
上記目的は、被接合素材の少なくとも一部の板厚が1.0mm以下のステンレス鋼板同士を直接接触させて通電で発生する抵抗熱により一体化した成型品であって、JISZ3139で規定される最大溶け込み率が10%以下、くぼみ(インデンテーション)の板厚に対する割合が5%以下、の両方を満足する抵抗熱により接合されたステンレス鋼製成型品によって達成される。
ここで、最大溶け込み率は、JISZ3139:09(スポット、プロジェクション及びシーム溶接部の断面試験方法)で規定される値のうち、板厚を分母として溶け込み率を定義する場合、すなわち図2−2のa)に記載の計算式を元に決定される。JISで規定された断面試験片を作製し、切断面を5箇所切り出し、溶け込み率A1とA2をそれぞれ求め、その最大値が0.10以下(10%以下)を満足するものを本発明の範囲内とする。ナゲットは、断面をバフ研磨後、フッ酸−硝酸−グリセリン混合液中でエッチングしたのち、光学顕微鏡で組織観察すれば判定が可能である。
また、くぼみ(インデンテーション)の板厚に対する割合は、最大溶け込み率を算出したサンプルと同じものを用い、上述のJISZ3139の図6で規定されたくぼみ(インデンテーション)の測定にしたがってIn1とIn2を求め、これらの和を元板厚の和で除した値を採用し、この値が5%以下を満足するものを本発明の範囲とする。
「ステンレス鋼」は、JISG0203:09(鉄鋼用語(製品及び品質))の番号3801に示されているように、Cr含有量を十分に確保して耐食性を向上させた合金鋼である。ここでは、Cr量を9.0質量%以上の鋼を対象とすることができるが、Cr含有量10.5質量%以上を確保した鋼がより好適な対象となる。
接合に供するステンレス鋼は、JISB0601:01(表面粗さ−定義及び表示)で規定される算術平均粗さRaが0.2μm以下に調整されたものである。Raは、接合面となる鋼板表面を圧延方向と垂直方向に測定した値が採用される。また、当該ステンレス鋼は、平均結晶粒径が50μm以下に調整されたものである。平均結晶粒径は、JISG0551:05(鋼−結晶粒度の顕微鏡試験方法)の附属書2(規定)(フェライト結晶粒の切断法よる評価方法)により粒度番号を求め、附属書C表1(結晶粒の各変数の関係)により結晶粒の平均直径を算出した値が採用される。
被接合素材の少なくとも一部のステンレス鋼材をフェライト系またはマルテンサイト系ステンレス鋼とする場合、Cr含有量が9〜40質量%、好ましくは10.5〜40質量%である鋼種を対象とすることができる。より好ましい成分組成範囲を例示すると、質量%で、C:0.0001〜0.10%、Si:0.001〜1.2%、Mn:0.001〜1.2%、P:0.001〜0.04%、S:0.0005〜0.03%、Ni:0〜2.0%、Cr:11.5〜32.0%、Mo:0〜2.5%、Cu:0〜1.5%、Nb:0〜0.8%、Ti:0〜0.4%、Al:0〜6.0%、N:0〜0.05%、Ca、Mg、Y、REM(希土類元素)の合計:0〜0.1%、不純物として含有されるPb、Sn、Znの合計:0〜0.03%、残部がFeおよび不可避的不純物からなるフェライト系またはマルテンサイト系ステンレス鋼種を挙げることができる。
フェライト系またはマルテンサイト系ステンレス鋼は、100℃における熱伝導率が20W/m・K以上の値に調整されたものである。熱伝導率は、JISH7801:95(金属のレーザフラッシュ法による熱拡散率の測定方法)により測定した熱拡散率と比熱ならびに密度より算出した値が採用される。
被接合素材の少なくとも一部のステンレス鋼材をオーステナイト系ステンレス鋼またはオーステナイト+フェライト2相系ステンレス鋼とする場合、Cr含有量が9〜40質量%、好ましくは10.5〜40質量%、Ni含有量が3〜30質量%である鋼種を対象とすることができる。より好ましい成分組成範囲を例示すると、質量%で、C:0.0001〜0.10%、Si:0.001〜4.0%、Mn:0.001〜2.5%、P:0.001〜0.045%、S:0.0005〜0.03%、Ni:6.0〜28.0%、Cr:15.0〜26.0%、Mo:0〜7.0%、Cu:0〜3.5%、Nb:0〜1.0%、Ti:0〜1.0%、Al:0〜6.0%、N:0〜0.3%、Ca、Mg、Y、REM(希土類元素)の合計:0〜0.1%、不純物として含有されるPb、Sn、Znの合計:0〜0.03%、残部がFeおよび不可避的不純物からなるオーステナイト系ステンレス鋼またはオーステナイト+フェライト2相系ステンレス鋼種を挙げることができる。
オーステナイト系ステンレス鋼またはオーステナイト+フェライト2相系ステンレス鋼は、25℃における電気抵抗率が70μΩ・cm以上の値に調整されたものである。電気抵抗率は、JISC2526:94(金属抵抗材料の電気抵抗−温度特性試験方法)により測定した値が採用される。
本発明によって、抵抗溶接継手で最重視される継手強度の確保、すなわち接合不足やくぼみによる強度低下を抑制するとともに、散りや着色による意匠性低下の少ない、板厚1.0mm以下の被接合箇所を含むステンレス鋼製の接合成型品を得ることが可能となる。十分な継手強度を有し、散りや着色の発生による接合部の手直しも最小限で済むため、ステンレス鋼を用いた抵抗溶接接合製品の普及に貢献しうる。
加熱時にナゲットを生成しない状態の接合部断面組織の模式図(a)、および本発明における接合部断面組織の模式図(b)、並びに加熱後にナゲット(溶融部)を形成しくぼみ(インデンテーション)を生じている状態の接合部断面組織の模式図(c)。
一般的に抵抗熱による接合では、(1)接合面の凹凸が変形して密着し、接合した箇所の接合面積が増加する過程、(2)密着した箇所で上下方向に加圧しながら通電させ、界面が高温に加熱されると同時に密着した箇所の接合面積がさらに増加する過程、(3)界面が溶融し接合されると同時に接触面積の少ない部分は高電流により散りが発生するか、溶融をともなわない圧接状態で接合される(コロナボンドを形成する)過程、が順に進行することで接合される。このメカニズムで抵抗溶接を行った場合、(3)の過程で溶接入熱や加圧力が大きいと、上述したくぼみや散りの課題を解決することが非常に困難となる。一方で減肉を解決するために電極加圧力を下げたり、散りや着色を防止するために、接合時の入熱(溶接電流、通電時間)を下げたりすると、未接合部分が増加し接合強度そのものが低下するという、致命的な欠点が顕在化してしまう。
発明者らは、板厚1.0mm以下のステンレス鋼の抵抗発熱法による接合を行うにあたり、部分的な板厚減少による応力集中がなく、かつ汎用的で確実に接合が行えるよう、各種ステンレス鋼に共通の支配的阻害要因について検討すべく、抵抗発熱法が適用可能なJISC9305:11(抵抗溶接装置)に記載のスポット溶接機を用いて種々のステンレス鋼の抵抗発熱法による接合を行った。
その結果、接合時に素材の溶融によるナゲット形成を極力抑制し、圧接状態(メカニズムはコロナボンドを形成する際の拡散接合に類似すると推定される)のみ、もしくは圧接状態とナゲットとの混合状態とした上で、上記課題を解決し、本発明に至った。すなわち、圧接状態で散りや着色を生成させないためには、表面の仕上げ状態と鋼素地の成分が重要な役割を果たすこと、圧接状態のみもしくは圧接状態とナゲットの混合状態として、くぼみを抑制するためには抵抗発熱法による接合時の入熱ではなく、鋼素地の物理的性質と結晶粒の大きさを厳密に調整する必要があること、これらを同時に満足する条件が存在することを明らかにした。
接合断面の形態は、図1を用いて説明する。図1の(a)は、加熱時に接合界面が溶融せず、なおかつ相互の粒が拡散せずに接合面が接している状態の接合部断面組織の模式図である。通常の抵抗溶接の場合、この状態からさらに溶接電流を増加させることにより、接合部が溶融してナゲットを形成する。図1の(c)には加熱時にナゲット(溶融部)を形成し、ナゲット部の板厚表層がくぼんでいる状態の接合部断面組織の模式図を示す。通常のスポット溶接条件では、このように溶融部(ナゲット)とくぼみ(インデンテーション)を形成し完全接合する。
[最大溶け込み率]
図1の(b)は本発明における接合部断面組織の模式図である。後述する鋼の表面状態、結晶粒径、鋼種成分および鋼の物理的性質を調整することにより、接合強度と意匠性を兼ね備えた接合成型品を得ることが可能となる。接合強度を得るための接合界面の形態としては、固相接合界面に残存する酸化物(ボイド)を少なくすること、好ましくは固相接合界面長さに対し、残存酸化物(ボイド)の長さが5%以下となるような調整が必要となる。なおボイドは、板厚1.0mm以下の鋼鈑の接合であれば、接合部断面を結晶粒界が現出する程度にエッチングして、走査電子顕微鏡(SEM)にて観察し、接合界面の黒点(ボイドまたは粒状酸化物)をカウントすることで判定可能である。
ナゲットは、接合界面が完全に溶融しているため、固相接合部よりも接合界面の強度を高い水準で確保することが可能となる。接合界面にナゲットが存在しない場合でも、残存酸化物を抑制すれば、接合強度は得られるが、全接合界面長さに対し、5%以上の界面がナゲットで覆われるよう調整するのが好ましい。接合界面がナゲットで覆われる範囲が多いほど接合強度が高くなるが、抵抗発熱の電流を上昇させ、ナゲットがある一定の大きさを超えると、図1(c)のように、くぼみ(インデンテーション)を生じるとともに、接合強度が逆に低下するようになる。このため、接合部の全板厚に対する板厚方向のナゲット径の割合、すなわちJISZ3139で規定される最大溶け込み率は10%以下とする。なお、本発明の成形品には、残存酸化物が5%以下の固相接合界面が存在するが、ガス成分が接合部分を出入りしないという密封性の点では十分に寄与すると言える。
[くぼみ(インデンテーション)の板厚に対する割合]
くぼみの板厚に対する割合は小さいほど減肉による強度低下や、意匠性の劣化を避けることができるため、5%以下とした。くぼみは、図1(c)のように接合断面の観察によって求めることができるが、切断せずに点接触式のマイクロメータにて板厚を測定することによっても簡易的に判定可能である。
[ステンレス鋼種および物理的性質]
素材として用いるステンレス鋼は基本的にはその種類を問わないが、抵抗発熱法による接合に対しては、使用される環境によって、例えば質量%で9〜40%のCrを含むフェライトまたはマルテンサイト系、もしくは質量%で9〜40%のCrと3〜30%のNiを含むオーステナイト系またはオーステナイト+フェライト2相系ステンレス鋼が用いることが可能である。これらの鋼種の具体的な成分組成範囲は前述のとおりである。
[フェライトまたはマルテンサイト系ステンレス鋼の物理的性質]
フェライトまたはマルテンサイト系の場合、100℃における熱伝導率を20W/m・K以上に調整しておくと、厚いナゲットが形成しにくく、固相接合状態のみまたは固相接合とナゲットの混合状態を、くぼみが生じない範囲で得やすくなる。これは、鋼の溶融に必要な抵抗発熱を与えたのち、即時に板厚方向に熱が拡散するため、加圧力による高温変形を抑制するためと推察される。なお、熱伝導率は、鋼素地の成分調整、すなわち、必要に応じCr、Si、Alの低減や、Cu、Niの添加で調整可能である。
[オーステナイト系またはオーステナイト+フェライト2相系ステンレス鋼の物理的性質]
オーステナイト系またはオーステナイト+フェライト2相系ステンレス鋼の場合、25℃における電気抵抗率を70μΩ・cm以上に調整しておくと、より低い入熱で固相接合状態となり、残存酸化物(ボイド)を減少しやすくなる。これは、鋼の固相接合に必要な抵抗発熱が得やすくなるためと推察される。なお、電気抵抗率の調整は、鋼素地の成分調整や鋼板にひずみを加えることにより可能である。すなわち、必要に応じCr、Al、Siの増量や、5%以上の冷間圧延で電気抵抗率を高くすることが可能である。
[結晶粒径および粗さ]
接合部分に残存酸化物(ボイド)を形成させず、成形品に極力くぼみ(インデンテーション)生じさせないためには、鋼素地の結晶粒径や鋼表面の粗さを調整する必要があることも知見した。すなわち、平均結晶粒径が50μmを超える場合は、加圧力によって鋼素地が高温変形し、くぼみが生じやすくなり、また、表面粗さが0.2μmを超える場合は、接合界面にできる隙間が大きくなってしまいボイドが消失しにくくなる。このため、接合前の鋼材の平均結晶粒径は50μm以下、表面粗さはRaが0.20μm以下に調整されたものとした。
抵抗発熱法による接合は、スポット溶接機、シーム溶接機、プロジェクション溶接機などの装置によって実施することが可能である。実際の操業に際しては、接合前の鋼材の成分組成、平均結晶粒、表面粗さなどに応じて予備実験により適切な抵抗発熱パターンを予め把握しておけばよい。例えば、スポット溶接機を用いて、板厚0.8mmのフェライト系ステンレス鋼BA仕上材(SUS430J1L、Raで0.15μm程度)を接合する場合、電極径10mm、電極加圧力1000〜2000N、溶接電流2000〜4000A、スクイズ時間0.5〜1.5秒、通電時間0.5〜1.5秒の範囲内に適切なパターンを見つけることができる。なお、ここで用いた条件の用語は、JISZ3001−1:08(溶接用語)の番号15310の図に記されたものである。
表1および表2に示す成分のステンレス鋼を溶製し、熱間圧延で板厚3〜4mmの熱延板とし、焼鈍、酸洗、冷間圧延を施し板厚0.8mmの冷延焼鈍板とした。その後、必要に応じて酸洗を施し、供試鋼板とした。F1〜F3はフェライト単相系、M1とM2はマルテンサイト系(一部フェライトも存在する)、A1〜A3はオーステナイト系、D1はオーステナイト+フェライト2相系のステンレス鋼である。表1には熱伝導率、表2には電気抵抗率をそれぞれ併せて示している。
Figure 0006104008
Figure 0006104008
供試鋼板の表面粗さRaの調整は、必要に応じて#180〜#2000のエメリー紙で鋼板表面を湿式研磨する工程を冷間圧延後または仕上焼鈍後の酸洗前に挿入することにより行った。供試鋼板の平均結晶粒径は、仕上焼鈍温度を900〜1200℃の範囲で変えることにより種々のサイズに調整した。これらは接合前に、上述した方法にて表面粗さRaと平均結晶粒径を求めた。表面粗さRaは、0.2μm以下のものを○、それ以外を×と表記した。また、平均結晶粒径は、50μm以下のものを○、それ以外を×と表記した。
各供試鋼板から切削加工により20mm×50mmの平板材を作製した。同一の製造条件で作製した2枚の板を1組とし、長手方向を圧延方向として、スポット溶接機にて同一条件で7組の接合体を作製した。このときの抵抗発熱の条件は、電極にφ10mmのCuを用い、スクイズ時間1秒、通電時間1秒に固定し、電極加圧力1500Nを中心とし、1000〜3000Nの範囲で種々変動させ、溶接電流は3000Aを中心とし、2000〜6000Aの間で種々変動させた。そのうち5組を組織観察に、残りの2組を接合強度評価と接合外内面評価に用いた。
組織観察では、接合体を圧延方向に平行に切り出し、上述したJISZ3139に記載の方法で、5箇所の接合部分について、最大溶け込み率とくぼみ(インデンテーション)を求めた。最大溶け込み率は10個の値が得られる。これらの値のうち、最も大きい値が10%以下のものを○、それ以外のものを×とした。くぼみは5個の値が得られる。これらの値のうち、最も大きい値が5%以下のものを○、それ以外のものを×とした。
接合強度は、JISZ3001−1:08(溶接用語)の番号12315(はく離試験(ピール試験))の図に記載の方法にて評価した。はく離試験を行った後、JISZ3137:99(抵抗スポット及びプロジェクション溶接継手の十字引張試験に対する試験片寸法及び試験方法)の図1(十字引張試験の場合の主な破壊形態と溶接径)にてb)界面破断の場合とc)部分プラグ破断の場合を○(良好)、それ以外を×(不良)と評価した。
接合外内面は、はく離試験後の外観で評価した。目視にて、JISZ3001−1:08(溶接用語)の番号15201(ナゲット)の図に記載の表散りまたは中散りが認められ ないものを○、それ以外を×と評価した。以上の結果を表3にまとめて記す。
Figure 0006104008
本発明例はNo.1〜No.11である。表1および表2で示したように、いずれも熱伝導率または電気抵抗率が本発明で規定した範囲に入る鋼である。表3からもわかるように、本発明例のものは最大溶け込み率が10%以下、かつくぼみ(インデンテーション)の板厚に対する割合が5%以下である抵抗熱接合部が形成され、その接合部は、接合強度の信頼性が高いとともに、目視で判定される散りが認められないため意匠性にも優れていた。
No.12〜No.20は比較例である。比較例No.12およびNo.13は、入熱を低く加圧力を高くしたものである。溶け込み率は適正化したものの、くぼみの割合が本発明の範囲から外れ、接合強度に劣っていた。比較例No.14およびNo.15は、抵抗発熱電流が高く、加圧力を低くしたものである。加圧力が低いため、くぼみの割合は適正化されたものの、高入熱であるため、接合強度が高く、散りが発生するという、いわゆる一般的なスポット溶接のような接合状態となり、本発明の目的とする接合状態を得ることができなかった。比較例No.16およびNo.17は、供試鋼の表面粗さRaが大きすぎたため、入熱と加圧力を本発明例と同程度としても、接合界面のボイド率が多くなり、結果として接合強度に劣った。比較例No.18は、接合前の平均結晶粒径が大きすぎたため、加圧力により材料が変形してしまい、くぼみの割合が大きくなるとともに、接合強度に劣った。比較例No.19は、素材の熱伝導率が小さいために、最大溶け込み率が大きくなり、表面の意匠性に劣った。また、比較例No.20は、素材の電気抵抗率が小さいために接合界面のボイド率が多くなり、結果として接合強度に劣った。

Claims (3)

  1. 被接合素材の少なくとも一部の板厚が1.0mm以下のステンレス鋼板同士を直接接触させて通電で発生する抵抗熱により一体化した成型品であって、JISZ3139で規定される最大溶け込み率が10%以下、くぼみ(インデンテーション)の板厚に対する割合が5%以下、の両方を満足する抵抗熱により接合されたステンレス鋼板製成型品。
  2. 被接合素材の少なくとも一部が、質量%で、C:0.0001〜0.10%、Si:0.001〜1.2%、Mn:0.001〜1.2%、P:0.001〜0.04%、S:0.0005〜0.03%、Ni:0〜2.0%、Cr:11.5〜32.0%、Mo:0〜2.5%、Cu:0〜1.5%、Nb:0〜0.8%、Ti:0〜0.4%、Al:0〜6.0%、N:0〜0.05%、Ca、Mg、Y、REM(希土類元素)の合計:0〜0.1%、不純物として含有されるPb、Sn、Znの合計:0〜0.03%、残部がFeおよび不可避的不純物であって、100℃における熱伝導率が20W/m・K以上、平均結晶粒径が50μm以下、表面粗さRaが0.2μm以下のフェライト系ステンレス鋼またはマルテンサイト系ステンレス鋼である請求項1に記載の抵抗熱により接合されたステンレス鋼板製成型品。
  3. 被接合素材の少なくとも一部が、質量%で、C:0.0001〜0.10%、Si:0.001〜4.0%、Mn:0.001〜2.5%、P:0.001〜0.045%、S:0.0005〜0.03%、Ni:6.0〜28.0%、Cr:15.0〜26.0%、Mo:0〜7.0%、Cu:0〜3.5%、Nb:0〜1.0%、Ti:0〜1.0%、Al:0〜6.0%、N:0〜0.3%、Ca、Mg、Y、REM(希土類元素)の合計:0〜0.1%、不純物として含有されるPb、Sn、Znの合計:0〜0.03%、残部がFeおよび不可避的不純物であって、25℃における電気抵抗率が70μΩ・cm以上、平均結晶粒径50μm以下,表面粗さRaが0.2μm以下のオーステナイト系ステンレス鋼またはオーステナイト+フェライト2相系ステンレス鋼を使用することを特徴とする、請求項1記載の抵抗熱により接合されたステンレス鋼板製成型品。
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