JPH07145066A - リグナン配糖体およびリグナン類の製造法 - Google Patents

リグナン配糖体およびリグナン類の製造法

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JPH07145066A
JPH07145066A JP5316079A JP31607993A JPH07145066A JP H07145066 A JPH07145066 A JP H07145066A JP 5316079 A JP5316079 A JP 5316079A JP 31607993 A JP31607993 A JP 31607993A JP H07145066 A JPH07145066 A JP H07145066A
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lignans
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 ごま種子を加湿ないし発芽させることにより
種子中のリグナン配糖体含量を増加せしめ、その粉砕物
または脱脂粕を含水アルコールにて抽出し、リグナン配
糖体を製造する。また前記含水アルコール抽出物に、ご
ま種子から調製したリグナン配糖体加水分解活性を有す
る酵素剤を作用させ、リグナン類を製造する。 【効果】 ごま種子を加湿培養することにより、セサミ
ノール配糖体等のリグナン配糖体、とりわけ水溶性リグ
ナン配糖体を増加させ、従来法に比べ容易かつ多量にリ
グナン配糖体を製造することができる。またこれを原料
とし、ごま種子から調製したリグナン配糖体加水分解酵
素剤を作用させることにより、従来法に比べ多量かつ安
価にセサミノールを主成分とする油溶性リグナン類を製
造することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、加湿ないし発芽させた
ごま種子を原料とするリグナン配糖体の製造法、および
前記リグナン配糖体に特定の酵素剤を作用させるリグナ
ン類の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】ごま種子は従来より栄養学的に優れた油
糧種子として広く食用に供されてきた。近年、ごま種子
中の特徴的な化合物としてリグナン類が注目され、抗酸
化活性を初めとする様々な生理機能に関する研究がなさ
れている(たとえば、並木満夫、小林貞作編、「ゴマの
科学」、朝倉書店、1989年)。
【0003】ごま種子中には、従来の天然抗酸化性物質
を超える優れた抗酸化活性を有するセサミノール(テト
ラヒドロ−1−〔6−ヒドロキシ−3,4−(メチレン
ジオキシ)フェニル〕−4−〔3,4−(メチレンジオ
キシ)フェニル〕−1H,3H−フロ〔3,4−C〕フ
ラン)、P−1(テトラヒドロ−1−(3−メトキシ−
4−ヒドロキシフェニル)−4−〔3,4−(メチレン
ジオキシ)フェニル〕−1H,3H−フロ〔3,4−
C〕フラン)、セサモリノール(テトラヒドロ−1−
〔3−メトキシ−4−ヒドロキシフェノキシ〕−4−
〔3,4−(メチレンジオキシ)フェニル〕−1H,3
H−フロ〔3,4−C〕フラン)、ピノレジノール(テ
トラヒドロ−1,4−ジ(3−メトキシ−4−ヒドロキ
シフェニル)−1H,3H−フロ〔3,4−C〕フラ
ン)等のフェノール性リグナン類が含まれ、その多くは
糖化合物(リグナン配糖体)としてごま種子またはその
脱脂粕中に存在することが明らかにされている(Biosc
i. Biotech. Biochem.、56巻、2087〜2088
頁、1992年)。従って、これら強力な抗酸化活性を
有するリグナン類を工業的に採取し活用するためには、
より多量のリグナン配糖体を調製し、それを効率的に加
水分解することが必要であった。
【0004】一方、ごま種子は、その発芽過程におい
て、トコフェロールやセサモール以外のフェノール性の
抗酸化性物質を生成することが報告されている(日本食
品工業学会誌、32巻、407〜412頁、1985
年)。また、ごま種子の植物成体から誘導した増殖細胞
から、抗酸化性物質あるいは抗光酸化性物質を抽出する
方法が報告されている(日本農芸化学会1991年度大
会要旨集、236頁、1991年、特公平4−2147
5号公報、特開平5−124949号公報)。しかしな
がら、これらに開示されている化合物は、いずれも微量
に存在する新規の抗酸化性物質であって、ごま脱脂粕中
に比較的多量に存在するリグナン配糖体類に関する知見
ではない。従って、ごま種子の発芽過程におけるリグナ
ン配糖体含量の変化はこれまで明らかにされていなかっ
た。
【0005】また、リグナン配糖体の加水分解によるリ
グナン類の製造法としては、ごま種子あるいは脱脂粕を
アルコールで抽出し、その抽出物にβ−グルコシダーゼ
を作用させ、糖鎖を切断し、酢酸エチル等の溶剤を用い
て分離する方法(特公昭62−44793号公報)等が
知られている。しかしながら、かかる方法ではβ−グル
コシダーゼの基質特異性により、ごま種子中のリグナン
配糖体の一部しか加水分解することができずリグナン類
の生産効率が低いことや、β−グルコシダーゼが比較的
高価な酵素剤であること等の理由から、この方法を用い
て工業的規模でごまリグナン類を製造することは行なわ
れていないのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、ご
ま種子から多量のリグナン配糖体を容易に採取する方法
を開発すること、またβ−グルコシダーゼ法による前記
欠点のない簡便かつ安価なリグナン類の製造法を提供す
ることを目的とした。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記目的
を達成するため、ごま種子中のリグナン配糖体およびリ
グナン類の調製法について鋭意検討した結果、第一に
は、ごま種子は、その発芽過程において、種子そのもの
に比べ、リグナン配糖体の含有量を増加させ、蓄積する
ことを見い出した。第二には、ごま種子あるいは脱脂粕
から得られる酵素剤によってリグナン配糖体を加水分解
し、リグナン類を調製できることを見い出した。本発明
はかかる知見に基づき完成されたものであり、生のごま
種子を加湿しまたは発芽させ、リグナン配糖体を増加せ
しめ、リグナン配糖体を多量に製造する方法であり、ま
たこのリグナン配糖体にごま種子から分離した加水分解
酵素を作用させるリグナン類の製造法に関する。
【0008】本発明の要旨の第一は、未焙煎あるいは非
加熱のごま種子を原料とし、適当な条件下で加湿しある
いは培養して発芽させた後、これを粉砕物または脱脂粕
となし、含水アルコールで抽出することを特徴とする水
溶性のリグナン配糖体の製造法である。
【0009】本発明において、ごま種子はその種類およ
び産地の如何を問わず使用することができる。これを、
水中または水分を含有できる適当な培地、例えば寒天、
石英砂、海砂、脱脂綿、砂、土等の好ましくは滅菌処理
した培地に均一に撒き、15〜50℃、好ましくは30
〜40℃にて水分を適時に補いながら、5〜100時
間、好ましくは24〜72時間培養を行なう。培養は照
光下または暗条件下のいずれでも構わない。水で膨潤ま
たは発芽したごま種子を培地から分離した後、食品用ミ
キサーやブレンダー、ホモジナイザー等の粉砕機に入れ
粉砕する。ここで粉砕物はヘキサン等の有機溶媒で油分
を抽出して除去した脱脂粕としてもよい。次にリグナン
配糖体を抽出可能な含水アルコールを、原料種子に対し
て1〜10倍容量/重量(以下、倍(v/wt)と表す)
添加し、要すれば粉砕および抽出操作を繰り返し行な
い、常法により固形物を除去して含水アルコール抽出物
を得る。
【0010】ここに含水アルコールとしては、炭素数1
〜4の直鎖状もしくは側鎖状低級アルコール、例えばメ
タノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノー
ル、ブタノール等と水を混合し、アルコール濃度を30
〜100%容量/容量(以下、%(v/v)と表す)、
好ましくは50〜100%(v/v)に調節したものが
よい。30%(v/v)未満のアルコール濃度では、目
的物を含まない水溶性多糖類が多量に抽出されることに
なり好ましくない。なお該抽出物は、適宜に濃縮すれば
よいが、後述する酵素加水分解によるリグナン類の製造
を引き続き行なう場合は、少なくともアルコール分を除
去しておくことが必要である。該抽出物は、リグナン配
糖体の他種々の糖鎖化合物を含む混合物である。
【0011】なお、前記抽出物中のリグナン配糖体以外
の不純物を除くために以下の処理を行うことが望まし
い。すなわち、油溶性の不純物質を除く為に、抽出物に
対して2〜10倍(v/wt)の非水溶性の有機溶媒、例
えば酢酸エチルやヘキサンと水を加えて抽出し、遠心分
離等により二相に分離する。有機溶媒相を除き、水相を
濃縮乾固させる。このとき目的のリグナン配糖体は水相
側に濃縮される。また、水溶性の不純物を除く為に、抽
出物に対して少量、好ましくは1〜5倍(v/wt)の含
水アルコール(アルコール濃度30〜100%(v/
v))に分散させ、これを緩やかに撹拌している比較的
多量、好ましくは10〜200倍(v/wt)のアルコー
ルに滴下する。静置後、遠心分離または分別ろ過等によ
り沈殿物を除いた後、濃縮乾固する。なお必要であれば
これらの操作を繰り返す。かかる処理に用いるアルコー
ルは、前記ごま種子の粉砕物の抽出時に用いられるアル
コール類と同様のものでよい。
【0012】かくして得られるリグナン配糖体類は、セ
サミノールを主成分としてほかにセサモリノール、P−
1、ピノレジノール等のリグナン類とグルコース、ガラ
クトース等の糖類とが結合したものであり、特にグルコ
ースが2〜3分子結合したジおよび/またはトリグルコ
シドリグナン類を主要成分とするものの混合物である。
これはブタノール、エタノール、メタノール、水等に可
溶な水溶性の物質である。なお、必要に応じてシリカゲ
ル、ODS等の吸着剤を使用して、セサミノール−ジ−
グルコシドやセサミノール−トリ−グルコシド等の個々
の成分に分画、精製することができる。
【0013】かかるリグナン配糖体自身の多くは、抗酸
化性を持たないが、抗酸化性成分の前駆体として存在
し、糖結合の加水分解を受けるような、例えば生体内に
おいて特異的にその活性が期待される成分である。また
抗酸化性を有するリグナン類に比較して、これらは熱等
に対する安定性も高い(50℃、24時間加温後の分解
率は5%以下)。これらリグナン配糖体は、ごま脱脂粕
中100gまたはごま種子200g中に、約0.2〜
0.6ミリモル含まれるが、ごま種子を前記の適当な条
件下で加湿すると、その膨潤ないしは発芽と共にリグナ
ン配糖体の種子中含有量が増加し、特にセサミノール配
糖体を多量に蓄積する。本発明の方法によれば、加湿し
ないごま種子中のセサミノール配糖体含量に比べ、例え
ば加湿48時間後には、少なくとも3倍以上のセサミノ
ール配糖体を得ることができる。
【0014】次に、本発明の要旨の第二は、未焙煎ある
いは非加熱のごま種子を原料とし、これを水または緩衝
液存在下で粉砕して得られる水溶性画分中に存在するリ
グナン配糖体加水分解酵素剤を用いたリグナン配糖体の
加水分解によるリグナン類の製造法である。
【0015】原料のごま種子は、その産地や種類は問わ
ず、酵素活性を消失させるような焙煎等の加熱処理を施
さなければ、その粉砕物および/または圧搾油粕で例示
されるものも本法では使用できる。かかる原料を、水ま
たはpH3〜7、好ましくはpH4〜6の緩衝液ととも
に、食品用ミキサーやブレンダー、ホモジナイザー等の
汎用の粉砕機に入れ粉砕する。粉砕後、遠心分離または
ろ過等の適当な手段を用いて細胞組織片からなる残渣を
除去する。必要であればさらにこの分離操作を繰り返
す。かくして得られる水溶性画分は濃縮してそのままリ
グナン配糖体の加水分解処理に用いることができるが、
以下のようにさらに精製すれば、より好適に使用でき
る。
【0016】すなわち、該水溶性画分に、非もしくは難
水溶性有機溶媒、例えばヘキサン、酢酸エチルまたはブ
タノールを50〜200%(v/v)添加し、二相に分
離後、 有機溶媒相を除去する。ついで、水相に20〜
90%飽和度の硫酸アンモニウム、好ましくは、30〜
75%(wt/v)を添加し塩析を行なう。遠心分離また
は分別ろ過して得られる沈殿を、透析あるいはゲルろ過
等で脱塩処理する。さらに脱塩溶液を凍結乾燥等で濃縮
処理し、本発明で用いる白色粉末状の酵素剤(以下、ご
ま酵素剤という)を得ることができる。なお要すれば、
さらにイオン交換クロマトグラフィーや分子篩クロマト
グラフィー等によって適宜に精製することもできる。以
上のごま酵素剤の製造工程は、0〜25℃、望ましくは
0〜4℃の条件下で行なうことが好ましい。
【0017】かくして得られるごま酵素剤は、少なくと
もβ−グルコシダーゼ、α−グルコシダーゼ、β−ガラ
クトシダーゼおよびセルラーゼの各活性を有しており、
リグナン配糖体を加水分解する目的において特に有用で
ある。すなわち、本発明で得られるごま酵素剤は、広い
基質特異性と高い活性により、ごま種子中のほとんど全
てのリグナン配糖体をほぼ完全に加水分解できる。従っ
て本発明の方法によれば、β−グルコシダーゼのみを用
いる従来法では、セサミノール配糖体の大部分を加水分
解できないといった欠点を克服し、多量のリグナン類
(例えばβ−グルコシダーゼ法によるセサミノール収量
の約9.7倍)を製造することが可能となる。
【0018】次に、ごま種子からの含水アルコール抽出
物すなわちリグナン配糖体混合物に、ごま酵素剤を作用
させ、リグナン類を製造する方法について説明する。ご
ま酵素剤による加水分解反応は、公知の加水分解酵素の
反応方法に準拠して行なえばよく、特に限定されるもの
ではない。また該酵素剤は、適当な基材に固定化し連続
使用が可能としたものであっても構わないが、通常以下
のように行なう。すなわち、リグナン配糖体混合物を1
〜20倍(v/wt)の水または緩衝液(pH2〜6)に
分散ないし溶解させ、該混合物に対して0.1〜30%
(wt/wt)、好ましくは1〜10%(wt/wt)のごま酵
素剤を添加し、10〜50℃で1〜50時間、好ましく
は5〜15時間、望ましくは緩やかに撹拌しながら、糖
鎖を加水分解反応せしめる。ついで該反応液に酢酸エチ
ル、ブタノールあるいはヘキサン等の非もしくは難水溶
性有機溶媒を加えて抽出することにより、目的のリグナ
ン類を得ることができる。
【0019】かくして得られるリグナン類は、セサミノ
ールを主成分としてセサモリノール、P−1、ピノレジ
ノール等の混合物であり、酢酸エチル、ブタノール、ヘ
キサン、食用油脂等に可溶な油溶性かつ水に不溶性であ
る。なお、必要に応じてシリカゲル、ODS等の吸着剤
を使用して、個々の成分に分画、精製することができ
る。従来の天然抗酸化性成分を超える強い抗酸化活性を
有するこれらのリグナン類は、そのままで、あるいは必
要に応じて高純度化して、もしくは他の公知成分と混合
して、油脂類、食品、化粧品、農薬、飼料、医薬品等の
抗酸化剤として利用できる。
【0020】
【実施例】
実施例1 あらかじめ滅菌した石英砂を300cm2 のステンレス製
のバットに敷き、そのうえに中国産ごま種子10gを撒
き、蒸留水を十分に噴霧しながら、40℃の恒温槽中で
発芽させた。発芽率は80%以上であった。発芽状態が
同程度の一定量の発芽体を経時的にサンプリングし、各
々を100mlの含水メタノール(80%(v/v))と
ともにブレンダーで粉砕した。残渣をろ過し、ろ液を濃
縮乾固した後、得られた固形物をヘキサンおよび酢酸エ
チルで2度ずつ洗浄して含水メタノール抽出物(リグナ
ン配糖体抽出物)を得た。各含水メタノール抽出物を1
00mlの含水メタノールに再溶解し、HPLCに供して
組成を分析した。
【0021】HPLC装置は、ポンプ(CCPM、東ソ
ー社製)にカラム(Soken Pak ODS−W5μ、10×
250mm)、紫外吸収検出器(UV−8000、東ソー
社製)を接続し、溶出は、水:メタノールが90:10
から60分後に同10:90となる直線グラジエントを
用い、流速を1ml/min 、検出波長は288nmとした。
分析サンプル中、リグナン配糖体のうちの主成分である
セサミノール−トリ−グルコシドおよびセサミノール−
ジ−グルコシドの含量を求め、その合計値の経時変化を
図1に示した。ごま種子は発芽に伴い、リグナン配糖体
の主成分であるセサミノール配糖体を生成、蓄積し、2
4時間後には、セサミノール−トリ及びジグルコシドの
合計量が、発芽前に比べて3倍量以上得られた。
【0022】実施例2 中国産ごま種子50gを20mM酢酸緩衝液(pH5.
0)300mlとともにブレンダーにて粉砕した。遠心分
離して残渣を除去後、水溶液に300mlのヘキサンを添
加し、軽く抽出後、再び遠心分離した。ヘキサンを除去
し、得られた水相に固形硫酸アンモニウムを75%飽和
度となるように少しずつ撹拌しながら添加した。添加し
て1時間放置後、遠心分離して沈殿を得た。この沈殿を
蒸留水5mlに溶解後、透析用セロファンチューブに充填
し、3リットルの蒸留水に対して15時間透析し脱塩し
た。脱塩後、凍結乾燥してごま酵素剤(300mg)を得
た。
【0023】該酵素剤は、別途、p−ニトロフェニル−
β−D−グルコピラノシド、p−ニトロフェニル−α−
D−グルコピラノシド、P−ニトロフェニル−β−D−
ガラクトピラノシドおよびセルロースパウダーを用い
て、常法により加水分解試験を行った結果、β−グルコ
シダーゼ、α−グルコシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ
およびセルラーゼの各活性を有していた。
【0024】実施例3 実施例1で、48時間発芽させた発芽体から得た含水メ
タノール抽出物(リグナン配糖体抽出物)100mgと、
実施例2で得たごま酵素剤10mgとを20mM酢酸緩衝
液(pH5.0)20mlに溶解し、50℃で15時間振
とうして加水分解反応を行なわしめた。反応液に酢酸エ
チル30mlを加えて2度抽出した。水層と酢酸エチル層
とを分離後、酢酸エチル層を常法により無水硫酸ナトリ
ウムで乾燥し、さらに酢酸エチルを減圧留去して抽出物
(10mg)を得た。該抽出物中のリグナン類含量をガス
クロマトグラフィーおよびマススペクトロスコピーによ
り分析した。ごま種子100g当たりのリグナン類の含
量および組成を表1に示した。表1から本実施例の方法
によれば後述する比較例に比べ、セサミノールは約29
倍量、リグナン類の総量としても8.3倍量が得られ
た。
【0025】比較例1 実施例1において用いた同ロットの中国産ごま種子を、
発芽させずにそのまま含水メタノールにて同様に抽出し
た。得られた含水メタノール抽出物(リグナン配糖体抽
出物)100mgと市販のβ−グルコシダーゼ剤(スイー
トアーモンド由来、フナコシ社製、10000units /
g)20mgとを20mM酢酸緩衝液(pH5.0)20
mlに溶解し、以下実施例3と同様に加水分解、抽出およ
び分析処理した。リグナン類の含量および組成を実施例
3と同じ基準で求め、その結果を表1(比較例1)に示
した。
【0026】
【表1】
【0027】実施例4 実施例1において、ごま種子の発芽段階で経時的にサン
プリングした原料から得た各含水メタノール抽出物(リ
グナン配糖体抽出物)を、実施例3に記載の方法で加水
分解した。得られた各リグナン類の経時変化を図2に示
した。セサミノール量は、ごま種子の加湿ないし発芽に
ともない急速に増加し、24時間以降一定に達した。
【0028】
【発明の効果】本発明によれば、ごま種子を加湿ないし
発芽させることにより、種子中のリグナン配糖体含量を
増加せしめることができる。またこれを含水アルコール
で抽出することにより、加湿せずに抽出する従来法に比
べ、多量のリグナン配糖体、とくにジまたは/およびト
リグルコシドリグナンを主成分とする水溶性グルコシド
リグナン類を容易に製造できる。さらにこの含水アルコ
ール抽出物に、ごま種子から調製したリグナン配糖体加
水分解活性を有する酵素剤を作用させることにより、抗
酸化性物質として知られるリグナン類(セサミノール、
セサモリノール、P−1、ピノレジノール等)を、従来
法に比べて多量にかつ安価に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ごま種子を加湿培養し、粉砕後、80%(v
/v)メタノールで抽出したときの抽出物収量と、該抽
出物中のセサミノール配糖体類の生成量とを、ごま種子
の培養時間とともにプロットしたものである。横軸は、
ごま種子の培養時間、縦軸は前記メタノール抽出物の重
量およびセサミノール配糖体の生成量を示す。
【図2】 ごま種子を加湿培養し、粉砕後、80%(v
/v)メタノールで抽出したときの抽出物に、ごま種子
から調製した酵素剤を作用させた反応物中のリグナン類
生成量を、ごま種子の培養時間とともにプロットしたも
のである。横軸はごま種子の培養時間、縦軸はリグナン
類の生成量を示す。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成7年2月6日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】発明の詳細な説明
【補正方法】変更
【補正内容】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、加湿ないし発芽させた
ごま種子を原料とするリグナン配糖体の製造法、および
前記リグナン配糖体に特定の酵素剤を作用させるリグナ
ン類の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】ごま種子は従来より栄養学的に優れた油
糧種子として広く食用に供されてきた。近年、ごま種子
中の特徴的な化合物としてリグナン類が注目され、抗酸
化活性を初めとする様々な生理機能に関する研究がなさ
れている(たとえば、並木満夫、小林貞作編、「ゴマの
科学」、朝倉書店、1989年)。
【0003】ごま種子中には、従来の天然抗酸化性物質
を超える優れた抗酸化活性を有するセサミノールテト
ラヒドロ−1−〔6−ヒドロキシ−3,4−(メチレン
ジオキシ)フェニル〕−4−〔3,4−(メチレンジオ
キシ)フェニル〕−1H,3H−フロ〔3,4−C〕フ
ラン、P−1テトラヒドロ−1−(3−メトキシ−4
−ヒドロキシフェニル)−4−〔3,4−(メチレンジ
オキシ)フェニル〕−1H,3H−フロ〔3,4−C〕
フラン、セサモリノールテトラヒドロ−1−〔3−メ
トキシ−4−ヒドロキシフェノキシ〕−4−〔3,4−
(メチレンジオキシ)フェニル〕−1H,3H−フロ
〔3,4−C〕フラン、ピノレジノールテトラヒドロ
−1,4−ジ(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニ
ル)−1H,3H−フロ〔3,4−C〕フラン等のフェ
ノール性リグナン類が含まれ、その多くは糖化合物(リ
グナン配糖体)としてごま種子またはその脱脂粕中に存
在することが明らかにされている(Biosci. Biotech. B
iochem.、56巻、2087〜2088頁、1992
年)。従って、これら強力な抗酸化活性を有するリグナ
ン類を工業的に採取し活用するためには、より多量のリ
グナン配糖体を調製し、それを効率的に加水分解するこ
とが必要であった。
【0004】一方、ごま種子は、その発芽過程におい
て、トコフェロールやセサモール以外のフェノール性の
抗酸化性物質を生成することが報告されている(日本食
品工業学会誌、32巻、407〜412頁、1985
年)。また、ごま種子の植物成体から誘導した増殖細胞
から、抗酸化性物質あるいは抗光酸化性物質を抽出する
方法が報告されている(日本農芸化学会1991年度大
会要旨集、236頁、1991年、特公平4−2147
5号公報、特開平5−124949号公報)。しかしな
がら、これらに開示されている化合物は、いずれも微量
に存在する新規の抗酸化性物質であって、ごま脱脂粕中
に比較的多量に存在するリグナン配糖体類に関する知見
ではない。従って、ごま種子の発芽過程におけるリグナ
ン配糖体含量の変化はこれまで明らかにされていなかっ
た。
【0005】また、リグナン配糖体の加水分解によるリ
グナン類の製造法としては、ごま種子あるいは脱脂粕を
アルコールで抽出し、その抽出物にβ−グルコシダーゼ
を作用させ、糖鎖を切断し、酢酸エチル等の溶剤を用い
て分離する方法(特公昭62−44793号公報)等が
知られている。しかしながら、かかる方法ではβ−グル
コシダーゼの基質特異性により、ごま種子中のリグナン
配糖体の一部しか加水分解することができずリグナン類
の生産効率が低いことや、β−グルコシダーゼが比較的
高価な酵素剤であること等の理由から、この方法を用い
て工業的規模でごまリグナン類を製造することは行なわ
れていないのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、ご
ま種子から多量のリグナン配糖体を容易に採取する方法
を開発すること、またβ−グルコシダーゼ法による前記
欠点のない簡便かつ安価なリグナン類の製造法を提供す
ることを目的とした。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記目的
を達成するため、ごま種子中のリグナン配糖体およびリ
グナン類の調製法について鋭意検討した結果、第一に
は、ごま種子は、その発芽過程において、種子そのもの
に比べ、リグナン配糖体の含有量を増加させ、蓄積する
ことを見い出した。第二には、ごま種子あるいは脱脂粕
から得られる酵素剤によってリグナン配糖体を加水分解
し、リグナン類を調製できることを見い出した。本発明
はかかる知見に基づき完成されたものであり、生のごま
種子を加湿しまたは発芽させ、リグナン配糖体を増加せ
しめ、リグナン配糖体を多量に製造する方法であり、ま
たこのリグナン配糖体にごま種子から分離した加水分解
酵素を作用させるリグナン類の製造法に関する。
【0008】本発明の要旨の第一は、未焙煎あるいは非
加熱のごま種子を原料とし、適当な条件下で加湿しある
いは培養して発芽させた後、これを粉砕物または脱脂粕
となし、含水アルコールで抽出することを特徴とする水
溶性のリグナン配糖体の製造法である。
【0009】本発明において、ごま種子はその種類およ
び産地の如何を問わず使用することができる。これを、
水中または水分を含有できる適当な培地、例えば寒天、
石英砂、海砂、脱脂綿、砂、土等の好ましくは滅菌処理
した培地に均一に撒き、15〜50℃、好ましくは30
〜40℃にて水分を適時に補いながら、5〜100時
間、好ましくは24〜72時間培養を行なう。培養は照
光下または暗条件下のいずれでも構わない。水で膨潤ま
たは発芽したごま種子を培地から分離した後、食品用ミ
キサーやブレンダー、ホモジナイザー等の粉砕機に入れ
粉砕する。ここで粉砕物はヘキサン等の有機溶媒で油分
を抽出して除去した脱脂粕としてもよい。次にリグナン
配糖体を抽出可能な含水アルコールを、原料種子に対し
て1〜10倍容量/重量(以下、倍(v/wt)と表す)
添加し、要すれば粉砕および抽出操作を繰り返し行な
い、常法により固形物を除去して含水アルコール抽出物
を得る。
【0010】ここに含水アルコールとしては、炭素数1
〜4の直鎖状もしくは側鎖状低級アルコール、例えばメ
タノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノー
ル、ブタノール等と水を混合し、アルコール濃度を30
〜100%容量/容量(以下、%(v/v)と表す)、
好ましくは50〜95%(v/v)に調節したものがよ
い。30%(v/v)未満のアルコール濃度では、目的
物を含まない水溶性多糖類が多量に抽出されることにな
り好ましくない。なお該抽出物は、適宜に濃縮すればよ
いが、後述する酵素加水分解によるリグナン類の製造を
引き続き行なう場合は、少なくともアルコール分を除去
しておくことが必要である。該抽出物は、リグナン配糖
体の他種々の糖鎖化合物を含む混合物である。
【0011】なお、前記抽出物中のリグナン配糖体以外
の不純物を除くために以下の処理を行うことが望まし
い。すなわち、油溶性の不純物質を除く為に、抽出物に
対して2〜10倍(v/wt)の非水溶性の有機溶媒、例
えば酢酸エチルやヘキサンと水を加えて抽出し、遠心分
離等により二相に分離する。有機溶媒相を除き、水相を
濃縮乾固させる。このとき目的のリグナン配糖体は水相
側に濃縮される。また、水溶性の不純物を除く為に、抽
出物に対して少量、好ましくは1〜5倍(v/wt)の含
水アルコール(アルコール濃度30〜100%(v/
v))に分散させ、これを緩やかに撹拌している比較的
多量、好ましくは10〜200倍(v/wt)のアルコー
ルに滴下する。静置後、遠心分離または分別ろ過等によ
り沈殿物を除いた後、濃縮乾固する。なお必要であれば
これらの操作を繰り返す。かかる処理に用いるアルコー
ルは、前記ごま種子の粉砕物の抽出時に用いられるアル
コール類と同様のものでよい。
【0012】かくして得られるリグナン配糖体類は、セ
サミノールを主成分としてほかにセサモリノール、P−
1、ピノレジノール等のリグナン類とグルコース、ガラ
クトース等の糖類とが結合したものであり、特にグルコ
ースが2〜3分子結合したジおよび/またはトリグルコ
シドリグナン類を主要成分とするものの混合物である。
これはブタノール、エタノール、メタノール、水等に可
溶な水溶性の物質である。なお、必要に応じてシリカゲ
ル、ODS等の吸着剤を使用して、セサミノール−ジ−
グルコシドやセサミノール−トリ−グルコシド等の個々
の成分に分画、精製することができる。リグナン配糖体
の各成分の構造は、前記方法で高純度に精製した成分
を、例えば塩酸加水分解してリグナン部と糖部に分け、
これらをそれぞれトリメチルシリル化してガスクロマト
グラフィーに供し、あるいは核磁気共鳴スペクトロスコ
ピー、マススペクトロスコピー等により分析し確認でき
る。
【0013】かかるリグナン配糖体自身の多くは、抗酸
化性を持たないが、抗酸化性成分の前駆体として存在
し、糖結合の加水分解を受けるような、例えば生体内に
おいて特異的にその活性が期待される成分である。また
抗酸化性を有するリグナン類に比較して、これらは熱等
に対する安定性も高い(50℃、24時間加温後の分解
率は5%以下)。これらリグナン配糖体は、ごま脱脂粕
中100gまたはごま種子200g中に、約0.2〜
0.6ミリモル含まれるが、ごま種子を前記の適当な条
件下で加湿すると、その膨潤ないしは発芽と共にリグナ
ン配糖体の種子中含有量が増加し、特にセサミノール配
糖体を多量に蓄積する。本発明の方法によれば、加湿し
ないごま種子中のセサミノール配糖体含量に比べ、例え
ば加湿48時間後には、少なくとも3倍以上のセサミノ
ール配糖体を得ることができる。
【0014】次に、本発明の要旨の第二は、未焙煎ある
いは非加熱のごま種子を原料とし、これを水または緩衝
液存在下で粉砕して得られる水溶性画分中に存在するリ
グナン配糖体加水分解酵素剤を用いたリグナン配糖体の
加水分解によるリグナン類の製造法である。
【0015】原料のごま種子は、その産地や種類は問わ
ず、酵素活性を消失させるような焙煎等の加熱処理を施
さなければ、その粉砕物および/または圧搾油粕で例示
されるものも本法では使用できる。かかる原料を、水ま
たはpH3〜7、好ましくはpH4〜6の緩衝液ととも
に、食品用ミキサーやブレンダー、ホモジナイザー等の
汎用の粉砕機に入れ粉砕する。粉砕後、遠心分離または
ろ過等の適当な手段を用いて細胞組織片からなる残渣を
除去する。必要であればさらにこの分離操作を繰り返
す。かくして得られる水溶性画分は濃縮してそのままリ
グナン配糖体の加水分解処理に用いることができるが、
以下のようにさらに精製すれば、より好適に使用でき
る。
【0016】すなわち、該水溶性画分に、非もしくは難
水溶性有機溶媒、例えばヘキサン、酢酸エチルまたはブ
タノールを50〜200%(v/v)添加し、二相に分
離後、 有機溶媒相を除去する。ついで、水相に20〜
90%飽和度の硫酸アンモニウム、好ましくは、30〜
75%(wt/v)を添加し塩析を行なう。遠心分離また
は分別ろ過して得られる沈殿を、透析あるいはゲルろ過
等で脱塩処理する。さらに脱塩溶液を凍結乾燥等で濃縮
処理し、本発明で用いる白色粉末状の酵素剤(以下、ご
ま酵素剤という)を得ることができる。なお要すれば、
さらにイオン交換クロマトグラフィーや分子篩クロマト
グラフィー等によって適宜に精製することもできる。以
上のごま酵素剤の製造工程は、0〜25℃、望ましくは
0〜4℃の条件下で行なうことが好ましい。
【0017】かくして得られるごま酵素剤は、少なくと
もβ−グルコシダーゼ、α−グルコシダーゼ、β−ガラ
クトシダーゼおよびセルラーゼの各活性を有しており、
リグナン配糖体を加水分解する目的において特に有用で
ある。すなわち、本発明で得られるごま酵素剤は、広い
基質特異性と高い活性により、ごま種子中のほとんど全
てのリグナン配糖体をほぼ完全に加水分解できる。従っ
て本発明の方法によれば、β−グルコシダーゼのみを用
いる従来法では、セサミノール配糖体の大部分を加水分
解できないといった欠点を克服し、多量のリグナン類
(例えばβ−グルコシダーゼ法によるセサミノール収量
の約9.7倍)を製造することが可能となる。
【0018】次に、ごま種子からの含水アルコール抽出
物すなわちリグナン配糖体混合物に、ごま酵素剤を作用
させ、リグナン類を製造する方法について説明する。ご
ま酵素剤による加水分解反応は、公知の加水分解酵素の
反応方法に準拠して行なえばよく、特に限定されるもの
ではない。また該酵素剤は、適当な基材に固定化し連続
使用が可能としたものであっても構わないが、通常以下
のように行なう。すなわち、リグナン配糖体混合物を1
〜20倍(v/wt)の水または緩衝液(pH2〜6)に
分散ないし溶解させ、該混合物に対して0.1〜30%
(wt/wt)、好ましくは1〜10%(wt/wt)のごま酵
素剤を添加し、10〜50℃で1〜50時間、好ましく
は5〜15時間、望ましくは緩やかに撹拌しながら、糖
鎖を加水分解反応せしめる。ついで該反応液に酢酸エチ
ル、ブタノールあるいはヘキサン等の非もしくは難水溶
性有機溶媒を加えて抽出することにより、目的のリグナ
ン類を得ることができる。
【0019】かくして得られるリグナン類は、セサミノ
ールを主成分としてセサモリノール、P−1、ピノレジ
ノール等の混合物であり、酢酸エチル、ブタノール、ヘ
キサン、食用油脂等に可溶な油溶性かつ水に不溶性であ
る。なお、必要に応じてシリカゲル、ODS等の吸着剤
を使用して、個々の成分に分画、精製することができ
る。従来の天然抗酸化性成分を超える強い抗酸化活性を
有するこれらのリグナン類は、そのままで、あるいは必
要に応じて高純度化して、もしくは他の公知成分と混合
して、油脂類、食品、化粧品、農薬、飼料、医薬品等の
抗酸化剤として利用できる。
【0020】
【実施例】 実施例1 あらかじめ滅菌した石英砂を300cm2 のステンレス製
のバットに敷き、そのうえに中国産ごま種子10gを撒
き、蒸留水を十分に噴霧しながら、40℃の恒温槽中で
発芽させた。発芽率は80%以上であった。発芽状態が
同程度の一定量の発芽体を経時的にサンプリングし、各
々を100mlの含水メタノール(80%(v/v))と
ともにブレンダーで粉砕した。残渣をろ過し、ろ液を濃
縮乾固した後、得られた固形物をヘキサンおよび酢酸エ
チルで2度ずつ洗浄して含水メタノール抽出物(リグナ
ン配糖体抽出物)を得た。各含水メタノール抽出物を1
00mlの含水メタノールに再溶解し、HPLCに供して
組成を分析した。
【0021】HPLC装置は、ポンプ(CCPM、東ソ
ー社製)にカラム(Soken Pak ODS−W5μ、10mm
φ×250mm)、紫外吸収検出器(UV−8000、東
ソー社製)を接続し、溶出は、水:メタノールが90:
10から60分後に同10:90となる直線グラジエン
トを用い、流速を1ml/min 、検出波長は288nmとし
た。
【0022】また含水メタノール抽出物を前記条件下で
分取HPLCに繰り返して供し、各成分が単一になるま
で精製した後、各成分を構成するリグナンおよび糖を次
の方法で分析した。すなわち各成分の精製物に1N塩酸
を加え、100℃で30分間加水分解せしめた後、酢酸
エチルで抽出し、酢酸エチル層および水層に分けた。酢
酸エチル層は40℃以下で濃縮乾固、TMS−PZ(東
京化成工業社製)でトリメチルシリル化処理し、ガスク
ロマトグラフィー(GLC)に供してリグナンを定量分
析した(外標準:セサミン)。
【0023】GLC条件は次のとおり。GLC装置:ヒ
ューレットパッカード社製5890、カラム:DB−1
7HT(15m×0.319mm、film thickness:0.
15μm、J&W SCIENTIFIC社製)、注入
法:スプリット法(スプリット比1/10)、カラム温
度:270℃、キャリアガス:He。
【0024】また水層をHPLC用前処理フィルター
(孔径:0.2μm、マイショリディスク W−13−
2、東ソー社製)で濾過し、濾液にアセトン5mlを加え
て減圧下で濃縮乾固後、TMS−PZ(前出と同じ)で
トリメチルシリル化処理し、これをGLCに供して糖を
定量分析した(外標準:グルコース、ガラクトース、フ
ルクトース)。
【0025】GLC条件は、カラム:DB−1701
(15m×0.25mm、film thickness:1.0μm、
J&W SCIENTIFIC社製)、注入法:スプリ
ット法(スプリット比1/50)、カラム温度:180
℃とする以外は前記リグナン分析の場合と同様である。
【0026】前記HPLC 分析サンプル中、リグナン配
糖体のうちの主成分であるセサミノール−トリ−グルコ
シドおよびセサミノール−ジ−グルコシドの含量を求
め、その合計値の経時変化を図1に示した。ごま種子は
発芽に伴い、リグナン配糖体の主成分であるセサミノー
ル配糖体を生成、蓄積し、24時間後には、セサミノー
ル−トリ及びジグルコシドの合計量が、発芽前に比べて
3倍量以上得られた。
【0027】 実施例2 中国産ごま種子50gを20mM酢酸緩衝液(pH5.
0)300mlとともにブレンダーにて粉砕した。遠心分
離して残渣を除去後、水溶液に300mlのヘキサンを添
加し、軽く抽出後、再び遠心分離した。ヘキサンを除去
し、得られた水相に固形硫酸アンモニウムを75%飽和
度となるように少しずつ撹拌しながら添加した。添加し
て1時間放置後、遠心分離して沈殿を得た。この沈殿を
蒸留水5mlに溶解後、透析用セロファンチューブに充填
し、3リットルの蒸留水に対して15時間透析し脱塩し
た。脱塩後、凍結乾燥してごま酵素剤(300mg)を得
た。
【0028】 該酵素剤は、別途、p−ニトロフェニル−
β−D−グルコピラノシド、p−ニトロフェニル−α−
D−グルコピラノシド、P−ニトロフェニル−β−D−
ガラクトピラノシドおよびセルロースパウダーを用い
て、常法により加水分解試験を行った結果、β−グルコ
シダーゼ、α−グルコシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ
およびセルラーゼの各活性を有していた。
【0029】 実施例3 実施例1で、48時間発芽させた発芽体から得た含水メ
タノール抽出物(リグナン配糖体抽出物)100mgと、
実施例2で得たごま酵素剤10mgとを20mM酢酸緩衝
液(pH5.0)20mlに溶解し、50℃で15時間振
とうして加水分解反応を行なわしめた。反応液に酢酸エ
チル30mlを加えて2度抽出した。水層と酢酸エチル層
とを分離後、酢酸エチル層を常法により無水硫酸ナトリ
ウムで乾燥し、さらに酢酸エチルを減圧留去して抽出物
(10mg)を得た。該抽出物中のリグナン類含量をガス
クロマトグラフィーおよびマススペクトロスコピーによ
り分析した。ごま種子100g当たりのリグナン類の含
量および組成を表1に示した。表1から本実施例の方法
によれば後述する比較例に比べ、セサミノールは約29
倍量、リグナン類の総量としても8.3倍量が得られ
た。
【0030】 比較例1 実施例1において用いた同ロットの中国産ごま種子を、
発芽させずにそのまま含水メタノールにて同様に抽出し
た。得られた含水メタノール抽出物(リグナン配糖体抽
出物)100mgと市販のβ−グルコシダーゼ剤(スイー
トアーモンド由来、フナコシ社製、10000units /
g)20mgとを20mM酢酸緩衝液(pH5.0)20
mlに溶解し、以下実施例3と同様に加水分解、抽出およ
び分析処理した。リグナン類の含量および組成を実施例
3と同じ基準で求め、その結果を表1(比較例1)に示
した。
【0031】
【表1】
【0032】実施例4 実施例1において、ごま種子の発芽段階で経時的にサン
プリングした原料から得た各含水メタノール抽出物(リ
グナン配糖体抽出物)を、実施例3に記載の方法で加水
分解した。得られた各リグナン類の経時変化を図2に示
した。セサミノール量は、ごま種子の加湿ないし発芽に
ともない急速に増加し、24時間以降一定に達した。
【0033】
【発明の効果】本発明によれば、ごま種子を加湿ないし
発芽させることにより、種子中のリグナン配糖体含量を
増加せしめることができる。またこれを含水アルコール
で抽出することにより、加湿せずに抽出する従来法に比
べ、多量のリグナン配糖体、とくにジまたは/およびト
リグルコシドリグナンを主成分とする水溶性グルコシド
リグナン類を容易に製造できる。さらにこの含水アルコ
ール抽出物に、ごま種子から調製したリグナン配糖体加
水分解活性を有する酵素剤を作用させることにより、抗
酸化性物質として知られるリグナン類(セサミノール、
セサモリノール、P−1、ピノレジノール等)を、従来
法に比べて多量にかつ安価に製造できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C09K 15/34 C12N 9/26 8827−4B 9/38 8827−4B 9/40 8827−4B 9/42 8827−4B C12P 17/18 D 7432−4B

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ごま種子を加湿ないし発芽させることに
    より該種子中のリグナン配糖体を増加させ、その粉砕物
    または脱脂粕を含水アルコールで抽出することを特徴と
    するリグナン配糖体の製造法。
  2. 【請求項2】 リグナン配糖体がジグルコシドリグナン
    および/またはトリグルコシドリグナンを主成分とする
    水溶性グルコシドリグナン類である請求項1に記載の製
    造法。
  3. 【請求項3】 ごま種子を加湿ないし発芽させることに
    より該種子中のリグナン配糖体を増加させ、その粉砕物
    または脱脂粕の含水アルコール抽出物に、ごま種子より
    調製した少なくともβ−グルコシダーゼ、α−グルコシ
    ダーゼ、β−ガラクトシダーゼおよびセルラーゼの各活
    性を有する酵素剤を作用させることを特徴とするリグナ
    ン類の製造法。
  4. 【請求項4】 リグナン類が少なくともセサミノールで
    ある請求項1、2または3に記載の製造法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR100407066B1 (ko) * 1995-10-02 2004-03-20 다케모토 유시 가부시키 가이샤 참깨종자로부터유도된세서미놀3배당체를함유하는식품재료
JP2006188464A (ja) * 2005-01-07 2006-07-20 Indivi Wine:Kk ブドウ種子を原材料としたポリフェノールの製造方法
KR20230101354A (ko) * 2021-12-29 2023-07-06 대구대학교 산학협력단 세사미놀 함량이 증진된 참깨 중탕 추출물 및 이의 용도

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