JPH0714249U - フライホイール - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 クラッチ装置側からダイナミックダンパへの
摩擦熱の伝導を少なくする。加熱によるダイナミックダ
ンパの作動不良を無くす。動力伝達系の捩り振動と曲げ
振動を低減する。 【構成】 摩擦板２３との摺接面９をフライホイール本
体２１の一方の面に設ける。フライホイール本体２１の
他方の面に、回転方向の剛性が大きくかつ曲げ方向の剛
性が小さい弾性板２３を取り付ける。この弾性板２３を
クランクシャフト２に結合する。弾性板２３のフライホ
イール本体２１から離間した部位にダイナミックダンパ
３０を設ける。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、自動車用エンジン等の動力伝達系でクラッチ装置の摩擦摺接部を兼 ねるフライホイール、とりわけ、捩り振動を低減するための機能を備えたフライ ホイールに関する。

【０００２】

【従来の技術】

自動車用エンジンは間欠的に発生する爆発のエネルギーをクランクシャフトを 介して駆動トルクとして外部に伝達する。このため、この種のエンジンは、動力 伝達系に伝達される駆動トルクに爆発に起因した変動トルクが含まれ、この変動 トルクが動力伝達系の捩り振動を誘起し易いという問題をかかえている。

【０００３】 この問題に対処するものとして、従来、図３，図４に示すようなフライホイー ルが案出されている。

【０００４】 このフライホイール１は、内周縁部が駆動軸としてのクランクシャフト２に直 結されるフライホイール本体３の側面に、全体形状が眉形、或は、円形状である 凹状部材４が周方向等間隔に複数個設けられ、この凹状部材４とフライホイール 本体３とに囲まれた空間部５に単振り子としての円筒コロ６が収容された構造と なっている。空間部５とその内部を転動する円筒コロ６はダイナミックダンパを 構成するもので、円筒コロ６を捩り振動に共振させることにより動力伝達系の捩 り振動を低減するようになっている。また、このフライホイール１は、クラッチ 装置７の摩擦摺接部を兼ねるもので、フライホイール本体３のダイナミックダン パが配設される側と逆側の側面が摩擦板８に対する摺接面９となっている。尚、 １０は、フライホイール本体３に組み付けられたクラッチカバー、１１は、フラ イホイール１と共に摩擦板８を挾圧して駆動トルクをクラッチディスク１２に伝 達するプレッシャプレートである。

【０００５】 この類似技術は、例えば、実開昭５７−６７１４１号公報等に示されている。

【０００６】

【考案が解決しようとする課題】

しかし、上記従来のフライホイール１の場合、フライホイール本体３の側面が 、円筒コロ６を収容する空間部５の壁面を成す構成であるため、摩擦面９で生じ た熱がフライホイール本体３の内部を通って円筒コロ６や凹状部材４に直接伝達 され易く、こうして伝達された熱によって円筒コロ６や凹状部材４が変形してダ イナミックダンパの正常な作動に支障を来すことが考えられる。また、上記従来 のフライホイール１においては、動力伝達系の捩り振動はダイナミックダンパに よって低減することができるものの、曲げ振動については何等対策を講じておら ず、現在、この点の改善が望まれている。

【０００７】 そこで本考案は、摩擦熱によるダイナミックダンパの作動不良を無くすことが でき、かつ、動力伝達系の捩り振動と曲げ振動とを共に確実に低減することので きるフライホイールを提供しようとするものである。

【０００８】

【課題を解決するための手段】

本考案は上述した課題を解決するための手段として、クラッチ装置の摩擦板が 摺接する摺接面と、捩り振動を低減するためのダイナミックダンパとを備えたフ ライホイールにおいて、前記摺接面をフライホイール本体に設ける一方で、この フライホイール本体に、回転方向の剛性が大きくかつ曲げ方向の剛性が小さい弾 性板を取り付け、この弾性板を駆動軸に結合すると共に、弾性板のフライホイー ル本体から離間した部位に前記ダイナミックダンパを設けるようにした。

【０００９】

【作用】

動力伝達系の捩り振動はダイナミックダンパによって低減し、曲げ振動は弾性 板の曲げ方向の弾性によって低減する。摩擦板との摺接によって発生した熱は、 摺接面からフライホイール本体内を放射状に伝達されるが、ダイナミックダンパ は弾性板のフライホイール本体から離間した部位に配設されているため、摺接面 の熱はダイナミックダンパにほとんど伝達されない。

【００１０】

【実施例】

次に、本考案の一実施例を図１，図２に基づいて説明する。尚、図３，図４に 示した従来のものと同一部分には同一符号を用いるものとする。

【００１１】 図面において、２１は、本考案にかかるフライホイール２０のフライホイール 本体である。このフライホイール本体２１はリング状の質量体からなり、その一 方の側面が、クラッチ装置７の摩擦板８が摺接する摺接面９となっている。尚、 １０は、フライホイール本体２１に結合されたクラッチカバー、１１は、クラッ チカバー１０に軸方向に進退可能に取り付けられたプレッシャプレート、１２は 、摩擦板８を保持するクラッチディスクであり、２２は、フライホイール本体の 外周に焼きばめ等の手段によって取り付けられたリングギヤである。

【００１２】 また、フライホイール本体２１の他方の側面には、回転方向の剛性が大きくか つ曲げ方向の剛性が小さい略円盤状の弾性板２３が取り付けられている。この弾 性板２３はフライホイール本体２１とほぼ同一径に形成され、その外周縁部が、 フライホイール本体２１の外周縁部の突起部２４に複数のボルト２５によって結 合される一方で、内周縁部が、駆動軸としてのクランクシャフト２に、補強部材 ２６と共にボルト２７によって結合されている。このため、エンジンの駆動トル クは、クランクシャフト２から弾性板２３を介してフライホイール本体２１に伝 達される。弾性板２３は前記のように外周縁部でフライホイール本体２１の突起 部２４に結合されているため、この外周縁部の結合部を除く他の部分はフライホ イール本体２１から軸方向に所定間隔離間している。補強部材２６は、弾性板２ ３に圧接される基部２６ａの外周に円筒部２６ｂとフランジ部２６ｃとを備え、 円筒部２６ｂがフライホイール本体２１の中心孔２８に挿入されてフライホイー ル本体２１の半径方向の変位を規制すると共に、フランジ部２６ｃがフライホイ ール本体２１の軸方向の変位を規制するようになっている。

【００１３】 また、弾性板２３のフライホイール本体２１と逆側の側面には、外形が眉形状 である凹状部材４が溶接等の手段によって円周方向等間隔に複数個結合され、各 凹状部材４と弾性板２３が円筒コロ６を収容する空間部２９を構成するようにな っている。空間部２９と円筒コロ６は、動力伝達系の捩り振動を低減するダイナ ミックダンパ３０を構成するもので、捩り振動が弾性板２３に入力されたときに 、円筒コロ６がその捩り振動に共振するように設定されている。ここで、弾性板 ２３上の凹状部材４の結合位置、即ち、ダイナミックダンパ３０の配設位置は、 弾性板２３外周のフライホイール本体２１に対する結合部と弾性板２３内周のク ランクシャフト２に対する結合部とのほぼ中間部に設定され、各ダイナミックダ ンパ３０がフライホイール本体２１に対して軸方向に所定間隔離れるようになっ ている。

【００１４】 このフライホイール２０は以上のような構成であるため、エンジンの始動に伴 ってクランクシャフト２が回転すると、回転方向の剛性の大きい弾性板２３を介 してフライホイール本体２１が確実に回転するようになる。このとき、クランク シャフト２から捩り振動が駆動トルクと共に弾性板２３に入力されると、ダイナ ミックダンパ３０を構成する円筒コロ６がこの振動に共振して空間部２９内を転 動し、捩り振動はこの円筒コロ６の共振によって低減される。また、クランクシ ャフト２から曲げ振動が弾性板２３に入力されると、この振動は弾性板２３の曲 げ方向の弾性によって低減される。

【００１５】 ここで、このフライホイール２０はフライホイール本体２１から軸方向に所定 距離離間した部位にダイナミックダンパ３０を配設しているため、摩擦板８とフ ライホイール本体２１との長時間の摺接等によって摺接面９が発熱しても、ダイ ナミックダンパ３０がこの熱によって高温に加熱されるようなことはない。つま り、摺接面９で発生した熱は、フライホイール本体２１内を放射状に広がるが、 ダイナミックダンパ３０が配設されている弾性板２３はフライホイール本体２１ に対して外周縁の結合部でのみ接触しているため、摺接面９で発生した熱のほと んどは弾性板２３を介してダイナミックダンパ３０に伝達される前に外気中に放 熱される。また、フライホイール本体２１の摺接面９背部とダイナミックダンパ ３０との間は軸方向に所定間隔離れているため、この隙間が空気による断熱層と なり、摺接面９背部からダイナミックダンパ３０に直接的に熱が伝達されること はほとんどない。したがって、このフライホイール２０においては、ダイナミッ クダンパ３０が摩擦熱によって加熱されて作動不良を起こすような心配はない。

【００１６】 尚、この考案の実施例は以上で説明したものに限るものでなく、例えば、ダイ ナミックダンパ３０を構成する凹状部材４の外形を円形にしたり、円筒コロ６に 変えて球を採用すること等も可能である。また、円筒コロ６を収容する凹状部材 ４を弾性板２３に結合するのに代えて、弾性板２３に凹状部を一体に形成してそ の内部に円筒コロ６を収容するようにしても良い。

【００１７】

【考案の効果】

以上のように本考案は、クラッチ装置の摩擦板との摺接面をフライホイール本 体に設ける一方で、このフライホイール本体に、回転方向の剛性が大きくかつ曲 げ方向の剛性が小さい弾性板を取り付け、この弾性板を駆動軸に結合すると共に 、弾性板のフライホイール本体から離間した部位に前記ダイナミックダンパを設 けるようにしたため、弾性板によって動力伝達系の捩り振動を低減することがで きるうえ、摺接面の熱がダイナミックダンパに伝達されるのを確実に防止するこ とができる。したがって、本考案によれば、動力伝達系の捩り曲げの両振動を確 実に低減することができ、しかも、摩擦熱によるダイナミックダンパの作動不良 を無くすことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例を示す図２のＡ−Ａ線に沿う
断面図。

【図２】同実施例を示す正面図。

【図３】従来の技術を示す正面図。

【図４】図３のＢ−Ｂ線に沿う断面図。

【符号の説明】

７…クラッチ装置、 ８…摩擦板、 ９…摺接面、 ２０…フライホイール、 ２１…フライホイール本体、 ２３…弾性板、 ３０…ダイナミックダンパ。

フロントページの続き (51)Int.Cl.⁶ 識別記号 庁内整理番号 ＦＩ 技術表示箇所 Ｆ１６Ｆ 15/315 9030−3Ｊ Ｆ１６Ｆ 15/30 Ｆ

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 クラッチ装置の摩擦板が摺接する摺接面
   と、捩り振動を低減するためのダイナミックダンパとを
   備えたフライホイールにおいて、前記摺接面をフライホ
   イール本体に設ける一方で、このフライホイール本体
   に、回転方向の剛性が大きくかつ曲げ方向の剛性が小さ
   い弾性板を取り付け、この弾性板を駆動軸に結合すると
   共に、弾性板のフライホイール本体から離間した部位に
   前記ダイナミックダンパを設けたことを特徴とするフラ
   イホイール。