JPH07116711B2 - 緑化用植生基体 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】本発明は、例えば緑化工事に用いられる緑
化用植生基体に関する。

【０００２】

【従来の技術】一般に、道路建設や土地造成などに伴っ
て形成される山腹の法面などには、その保護と景観を保
持するために植物を植生して緑化することが行われてい
る。しかして、本発明者等は、以前に、実公昭５７−５
２２０４号公報、実公昭５８−５７０９号公報及び特開
昭６１−１７９９２３号公報などにおいて、大型設備を
必要としたり複雑な施工などを行うことなく、簡単な施
工手段で、かつ、経済的に前記法面などの緑化を行うこ
とができる緑化用植生基体を提案した。

【０００３】以上の緑化用植生基体は、網状体（ネッ
ト）に収容部を形成し、この収容部内に有機質材料や保
水材及び肥料などの植生基材を収容すると共に、前記網
状体に、植物種子や肥料などを直接付着保持させ、或
は、これら植物種子や肥料などを保有する張芝帯を貼着
させ、又は、前記網状体に植物種子の発芽成育可能なマ
ットを貼着し、該マット上に植物種子を付着保持させた
ものである。そして、斯かる緑化用植生基体を前記法面
などに敷設することにより、前記植物種子を発芽させて
前記法面などを緑化させるようにしたものである。

【０００４】また、以上の緑化用植生基体に使用される
網状体は、その何れもがナイロンやポリエチレン及びポ
リプロピレンなどのプラスチック繊維が用いられてお
り、その理由は、これらのプラスチック繊維が丈夫で安
価なことと、前記法面などの緑化を行うためには、該法
面に植物が根付き、この植物がある程度成長するまでは
前記網状体の強度を保持して、網状体で前記法面を保護
し、網状体が植物の植生基盤となる必要があるためであ
る。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】ところが、以上のよう
な網状体は、大半が、１０〜１５ｍｍ程度の目合いを有
するポリエチレンあるいはポリプロピレンなどのポリネ
ットで形成されているから、樹木等の植物が成長する場
合に、成長時に植物幹部にネットが食い込み、樹木の成
長を阻害するおそれがある。また、目合いを大きくする
と、初期エロージョン防止なり種子、肥料の添着が難し
い。

【０００６】しかも、以上のような網状体に用いられる
ナイロンやポリエチレン及びポリプロピレンなどのプラ
スチック繊維は、通常の条件下では半永久的に変質しな
い特性があり、このため他の動植物性繊維のような腐食
性または分解性繊維素材と異なり、長年のうちに風雨に
曝されて風化又は腐食して土壌に同質化されることがな
く、前記網状体が半永久的に残ることになる。従って、
最近では、以上のような特性がむしろ災いとなり、プラ
スチック公害として地球環境的な問題となってきてい
る。すなわち、以上のような状況下において、前記法面
などの緑化を行うために、プラスチック繊維からなる網
状体を使用することは、一方では環境緑化に寄与するも
のの、他方では公害問題を招くといった相矛盾すること
になるのである。

【０００７】しかし、ポリネットの代わりに腐食性また
は分解性繊維素材のネットだけで網状体を形成しても、
ポリネットに比して極めて強度が低いから、切土法面で
勾配の急な所では落石を抑制するための防護壁としては
機能し難い。

【０００８】例えば、ジュートなどの植物繊維からなる
網状体を使用したり、ビスコースレーヨンのような、長
時間を経過しなくても完全に腐食する腐食性繊維を部分
的に腐食させても、次のような問題が発生する。すなわ
ち、前記法面などの緑化を行うために使用される理想的
な網状体は、その敷設後約半年〜２年程度は充分な引張
強度を保持し、植物がある程度まで成長した後に腐食し
て土壌と同質化することが望ましいが、前腐食性または
分解性繊維素材のネットからなる網状体は、その何れも
が前記法面などに敷設した後約２ケ月を経過すると、ほ
とんどが腐食してしまって、植物を植生するために必要
な植生基盤強度が得られなくなり、換言すると、植物が
発芽して充分に成長するまでには、２ケ月という期間は
余りにも短か過ぎ、前記網状体で前記法面などを保護し
て、植物の植生基盤を確保するといった本来の目的を達
成することが出来なかったのである。

【０００９】本発明は、樹木等の植物が成長してその幹
部が大きくなった時でも植物の成長を許容して植物が成
長するまでの良好な植生基盤を確保し、また、植物があ
る程度まで成長した後に前記微生物で前記網状体を分解
腐食させて、この網状体を土壌と同質化させて、公害問
題を招いたりすることなく、環境緑化に寄与できる緑化
用植生基体を提供することを目的とする。

【００１０】

【課題を解決するための手段および作用】上記目的を達
成するため、本発明は、腐食性または分解性繊維素材よ
りなるバックネットと、このバックネットよりも大きな
目合いを有するプラスチック繊維素材のフロントネット
とを重ね合わせた二重構造の網状体からなる緑化用植生
基体である。

【００１１】また、本発明は、フロントネットを構成す
るプラスチック繊維素材の代わりに、５〜６年間は強度
を維持し続ける分解性プラスチック繊維素材もフロント
ネットに好適であるという観点から、腐食性または分解
性繊維素材よりなるバックネットと、このバックネット
よりも大きな目合いを有する分解性プラスチック繊維素
材のフロントネットとを重ね合わせた二重構造の網状体
からなる緑化用植生基体を提供する。

【００１２】本発明におけるバックネットとしては、腐
食性または分解性繊維素材からなり、目合いが植生の発
芽生育可能な程度に小さく設定されるものが好ましい。
この条件を満たす目合いは１０〜１５ｍｍ程度である。
このため、種子、肥料の添着が得やすい。また、素材と
して、例えば、ジュートなどの植物繊維からなる網状体
を使用したり、ビスコースレーヨンのように、長時間を
経過しなくても完全に腐食するものを使用するのが好ま
しい。このビスコースレーヨンは織機に比較的容易にか
けることができることから、ネットを部分的に腐食させ
るような場合に用いることもできる。

【００１３】したがって、バックネットは法面などに敷
設した後約２ケ月を経過すると、ほとんどが腐食、分解
してしまい、その間に、種子、肥料の添着が確実に行わ
れ、その後、樹木等の植物が大きく成長していく時点で
は、未だ残存しているバックネットの強度はすでに低下
しており、植物幹部にネットが食い込んで樹木の成長を
阻害することがなく、樹木は成長し続ける。

【００１４】本発明におけるフロントネットとしては、
バックネットよりも大きな目合いを有するプラスチック
繊維素材が好ましい。目合いはバックネットのものより
大きく、樹木の成長を阻害することのない２４ｍｍ以上
に設定するのが好ましい。また、プラスチック繊維素材
としては、ポリエチレンやポリプロピレンなどを挙げる
ことができる。これらのものを使用すれば、強度が大で
あることから、長年にわたって、切土法面で勾配の急な
所では落石を抑制するための防護壁として機能できると
ともに、樹木等の植物が大きく成長しても、フロントネ
ットは目合いが大きいことから、樹木の成長を阻害する
おそれがなくなる。

【００１５】さらに、本発明におけるフロントネットと
しては、バックネットよりも大きな目合いを有する分解
性プラスチック繊維素材も好ましいものとして挙げるこ
とができる。この分解性プラスチック繊維素材は、使用
後５〜６年間は強度を維持し続ける特性の素材であるか
らである。

【００１６】本発明では、網状体が、上述したようなバ
ックネットとフロントネットとを重ね合わせた二重構造
を有するが、バックネットの目合いがフロントネットの
それより小さいので、バックネットの腐食性または分解
性繊維素材は、フロントネットのプラスチック繊維素材
あるいは分解性プラスチック繊維素材よりも密である。
したがって、この密な分だけ腐食性または分解性繊維素
材がプラスチック繊維素材あるいは分解性プラスチック
繊維素材より多く使用されうるものであり、網状体を構
成する素材の少なくとも５０〜６０％は腐食性または分
解性繊維素材であることから、微生物で分解腐食されて
最終的には土壌と同質化されるのであり、網状体の５０
〜６０％が法面などに半永久的に残ったりして公害問題
を招いたりすることなく、環境緑化に寄与することがで
きる。その結果、山腹の法面などに植物が植生するまで
の敷設後半年〜２年程度の期間は必要な強度が保持さ
れ、前記網状体で法面などを保護して植物の植生基盤を
確保できる。さらには、網状体に収容部を設ければ、収
容部に収容した植生基材内の植物種子を良好に育成させ
ることができる。

【００１７】本発明における二重構造の網状体、いわゆ
る、ダブルネットは公知のダブルラッセル機で製造でき
る。

【００１８】

【実施例】以下、本発明にかかる緑化用植生基体の実施
例を図面に基づいて説明する。図１〜図４において、緑
化用植生基体１は、腐食性または分解性繊維素材よりな
るバックネット２と、このバックネットの目合い２ａよ
りも大きな目合３ａいを有するプラスチック繊維素材の
フロントネット３とを重ね合わせた二重構造の網状体か
ら主としてなる。

【００１９】更に、網状体１は、バックネット２および
フロントネット３間に植生基材４を収容させる緯糸方向
（符号Ａで示す矢印方向）に延びた収容部５を有すると
ともに、網状体１に、植物種子を付着保持させ、或は、
植物種子を保有する張芝帯又はマットなどを貼着させて
なる。

【００２０】すなわち、１は、経糸と緯糸とをそれぞれ
編織してなるバックネット２およびフロントネット３か
らなる網状体で、この網状体１のネット２、３間の複数
箇所に収容部５を形成して、これら収容部５内に植生基
材４を収容させると共に、図６に示すように、網状体１
のバックネット２外表面に、腐食性材料から成る植物種
子を発芽成育可能としたマット６を貼着し、該マット６
上に植物種子７を前記水溶性糊剤を介して付着保持させ
ており、このとき前記マット６には前記植物種子７と共
に肥料や土壌改良材などを付着保持させてある。

【００２１】また、マット６と同様に、図７に示すよう
に、前記網状体１には、ネット２、３の間に、水溶性紙
や落綿など腐食性材料を介して、前記植物種子７を肥料
８や土壌改良材９などと共に挟在させた所謂張芝体１０
を貼着させることも可能である。

【００２２】以上のような網状体１の収容部５に収容さ
れる前記植生基材４は、肥料や保水材及び土壌改良材な
どからなり、これらの１種又は１種以上を組み合わせて
腐食性材料から成る筒状の袋体（肥料袋等）の内に収容
するか、又は、袋体を用いることなく、圧縮プレスなど
を行って筒棒状に成形して形成される。また、前記植生
基材４には、場合によっては前記植物種子７を混入させ
ることもある。

【００２３】また、以上の網状体１に前記植生基材４の
収容部５を形成するにあたっては、例えば図２に示すよ
うに、経糸と緯糸とを編織してなる各ネット２、３を重
合させて、この重合された各ネット２、３を適当間隔置
きに網込み又は融着させることにより、編み込まれない
部分又は融着されない部分で前記収容部５を形成するの
である。

【００２４】そして、以上のように構成された緑化用植
生基体は、例えば、図１で示したように、山腹などの法
面Ｎに敷設されて、アンカーピンやアンカーボルト（図
示せず）などで固定される。

【００２５】しかして、本発明は、以上のような緑化用
植生基体１において、バックネット２を腐食性または分
解性繊維素材から構成し、植生の発芽生育可能な程度に
１０〜１５ｍｍ程度の目合い２ａに小さく設定したの
で、種子、肥料の添着が得やすい。また、素材として、
例えば、ジュートなどの植物繊維からなる網状体を使用
したり、ビスコースレーヨンのように、長時間を経過し
なくても完全に腐食するものを使用するので、バックネ
ットは法面Ｎなどに敷設した後約２ケ月を経過すると、
ほとんどが腐食、分解してしまい、その間に、種子、肥
料の添着が確実に行われ、その後、樹木等の植物が大き
く成長していく時点では、未だ残存しているバックネッ
トの強度はすでに低下しており、植物幹部にネットが食
い込んで樹木の成長を阻害することがなく、樹木は成長
し続けることになる。なお、本発明は、ダブルネット使
用の樹林ベース、ハナゲシキ等にも使用可能である。

【００２６】また、フロントネット３を、バックネット
２よりも大きな目合い３ａを有するプラスチック繊維素
材から構成し、バックネットのものより大きく、樹木の
成長を阻害することのない２４ｍｍ以上に目合い３ａを
設定したので、ポリエチレンやポリプロピレンなどのプ
ラスチック繊維素材を使用すれば、強度が大であること
から、長年にわたって、切土法面で勾配の急な所では落
石を抑制するための防護壁として機能できるとともに、
樹木等の植物１１が大きく成長しても（図５参照）、フ
ロントネット３は目合いが大きいことから、樹木１０の
成長を阻害するおそれがなくなる。しかも、網状体１を
構成する素材の少なくとも５０〜６０％はバックネット
２の腐食性または分解性繊維素材であることから、微生
物で分解腐食されて最終的には土壌と同質化されるので
あり、網状体の５０〜６０％が法面などに半永久的に残
ったりして公害問題を招いたりすることなく、環境緑化
に寄与することができる。その結果、山腹の法面などに
植物が植生するまでの敷設後半年〜２年程度の期間は必
要な強度が保持され、前記網状体で法面などを保護して
植物の植生基盤を確保できる。さらには、網状体に収容
部を設ければ、収容部に収容した植生基材内の植物種子
を良好に育成させることができる。

【００２７】

【発明の効果】以上説明したように、本発明の緑化用植
生基体では、腐食性または分解性繊維素材よりなるバッ
クネットと、このバックネットよりも大きな目合いを有
するプラスチック繊維素材あるいは分解性プラスチック
繊維素材のフロントネットとを重ね合わせた二重構造の
網状体から構成したので、バックネットは法面などに敷
設した後約２ケ月を経過すると、ほとんどが腐食、分解
してしまい、その間に、種子、肥料の添着が確実に行わ
れ、その後、樹木等の植物が大きく成長していく時点で
は、未だ残存しているバックネットの強度はすでに低下
しており、植物幹部にネットが食い込んで樹木の成長を
阻害することがなく、樹木は成長し続けることになる。

【００２８】さらに、フロントネットとして、バックネ
ットよりも大きな目合いを有するプラスチック繊維素材
あるいは分解性プラスチック繊維素材を使用するので、
強度が大であることから、長年にわたって、切土法面で
勾配の急な所では落石を抑制するための防護壁として機
能できるとともに、樹木等の植物が大きく成長しても、
フロントネットは目合いが大きいことから、樹木の成長
を阻害するおそれがなくなる。

【００２９】したがって、網状体が、上述したようなバ
ックネットとフロントネットとを重ね合わせた二重構造
を有するが、バックネットの目合いがフロントネットの
それより小さいので、網状体を構成する素材の少なくと
も５０〜６０％は腐食性または分解性繊維素材であるこ
とから、微生物で分解腐食されて最終的には土壌と同質
化されるのであり、網状体の５０〜６０％が法面などに
半永久的に残ったりして公害問題を招いたりすることな
く、環境緑化に寄与することができる。その結果、山腹
の法面などに植物が植生するまでの敷設後半年〜２年程
度の期間は必要な強度が保持され、前記網状体で法面な
どを保護して植物の植生基盤を確保できる。さらには、
網状体に収容部を設ければ、収容部に収容した植生基材
内の植物種子を良好に育成させることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明にかかる緑化用植生基体の一例を示す構
成説明図である。

【図２】上記実施例における要部斜視図である。

【図３】同じく上記実施例における平面図である。

【図４】上記実施例における要部構成説明図である。

【図５】上記実施例における要部斜視図である。

【図６】上記実施例における斜視図である。

【図７】他の実施例を示す斜視図である。

【符号の説明】

１…網状体、２…バックネット、２ａ…バックネットの
目合い、３…フロントネット、３ａ…フロントネットの
目合い、４…植生基材、５…収容部、６…マット、７…
植物種子、８…肥料、９…土壌改良材、１０…張芝体。

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 腐食性または分解性繊維素材よりなるバ
   ックネットと、このバックネットよりも大きな目合いを
   有するプラスチック繊維素材のフロントネットとを重ね
   合わせた二重構造の網状体からなる緑化用植生基体。
2. 【請求項２】 腐食性または分解性繊維素材よりなるバ
   ックネットと、このバックネットよりも大きな目合いを
   有する分解性プラスチック繊維素材のフロントネットと
   を重ね合わせた二重構造の網状体からなる緑化用植生基
   体。
3. 【請求項３】 網状体は、バックネットおよびフロント
   ネット間に植生基材を収容させる緯糸方向に延びた収容
   部を有するとともに、前記網状体に、植物種子を付着保
   持させ、或は、植物種子を保有する張芝帯又はマットな
   どを貼着させてなる請求項１または請求項２に記載の緑
   化用植生基体。