JPH069860Y2 - 歯車式変速機の変速機構 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、自動車に搭載される歯車式変速機の変速機
構、特に該変速機構を構成するチェンジレバー等の支持
構造に関する。

（従来の技術） 一般に自動車に搭載される歯車式変速機は、変速機ケー
ス内に入力軸に連動するカウンタ軸とこれに平行な出力
軸とを配設し、これら両軸の間に複数のギヤ列を配設す
ると共に、これらのギヤ列を選択的に動力伝達状態とす
る同期噛合い装置や、これを作動させる複数のシフトロ
ッド等を備えた構成である。そして、上記変速機ケース
の外部に配置されて当該自動車の運転席に突入されたチ
ェンジレバーの操作によって上記シフトロッドのいずれ
かを作動させることにより、所望の変速段に切換えるよ
うになっている。その場合に、上記入、出力軸が車体の
前後方向に延びるように配置される縦置き式の歯車変速
機においては、上記チェンジレバーは変速機ケースの前
部を構成するギヤ収納部の上面に直接支持されるのが通
例であるが、車体への搭載時のレイアウト上、該チェン
ジレバーが変速機ケースの後部に配置される場合には、
例えば実開昭５９−７９５３号公報に記載されているよ
うに、上記ギヤ収納部から後方に延びて変速機ケースの
後部を構成するエクステンションハウジングの上方にコ
ントロールケースを設け、このコントロールケースにチ
ェンジレバーを支持させる場合がある。

（考案が解決しようとする課題） ところで、この種の歯車式変速機においては、該変速機
に作用するエンジンからの振動がチェンジレバーにまで
伝達されて、該レバーが振動するといった問題がある。
つまり、このチェンジレバーは下端部のみで支持されて
いると共に、上端部には比較的重量のある把手部が備え
られているので、ギヤケース側からの振動に共振し易
く、しかも増幅されて振動するのである。そして、この
チェンジレバーの振動が車室内の騒音の原因となった
り、該チェンジレバーの操作感を悪化させるなどの問題
を生じさせるのである。

そこで、本考案は、チェンジレバーを変速機ケース後部
の上方に設けられたコントロールケースを介して支持す
るようにした縦置き式の歯車式変速機において、該チェ
ンジレバーの支持性を低下させることなく、該レバーの
振動を低減することを目的とする。

（課題を解決するための手段） 上記の目的を達成するために、本考案は次のように構成
したことを特徴とする。

すなわち、変速用ギヤを収納した変速機ケースと、その
後部上方に配置されて変速操作を行うための変速操作部
材を支持するコントロールケースとを有する縦置き式の
歯車式変速機において、上記コントロールケースの前端
部を変速機ケースに、後端部を車体に夫々支持させると
共に、該コントロールケース前端部の変速機ケースへの
支持位置を、該変速機ケースが車体に支持されるマウン
ト位置と前後方向位置でほぼ一致させたことを特徴とす
る。

（作用） 上記の構成によれば、変速機ケースと車体とで支持され
るコントロールケースの支持部のうち、変速機ケースへ
の支持部は、該ケースを車体に支持るマウント位置と前
後方向位置でほぼ一致するように設けられるのである
が、このマウント位置は、当該変速機とエンジンとで構
成されるパワープラントを前後方向に延びる１本の梁と
考えたときに、その後部を支える支点となる位置であ
る。

つまり、上記パワープラントは前部のエンジン部分と後
部の変速機部分とで車体にマウントされ、この状態で、
エンジンを起振源として前後方向、横方向及び縦方向の
全ての方向に振動するのであるが、そのうち前後方向の
軸の振動を考えると、その振動モードはエンジン部分と
変速機部分の前後のマウント位置を支点とする梁の曲げ
振動となり、両マウント位置がその振動の節となるので
ある。従って、この梁、即ちパワープラントの振動の振
幅は、両マウント位置で上下方向及び横方向とも最も小
さくなる。そこで、このパワープラントの後部のマウン
ト位置に、前後方向位置をほぼ一致させてコントロール
ケースを変速機ケースに支持させることにより、エンジ
ンから変速機ケースに伝達された振動が該コントロール
ケースに殆ど伝達されないことになり、これにともなっ
て該コントロールケースに支持されたチェンジレバー等
の変速操作部材への振動の伝達も低減されることにな
る。

（実施例） 以下、本考案を実施例について説明する。

まず、本実施例に係る歯車式変速機を第１図によって説
明すると、この歯車式変速機１の本体を構成する変速機
ケースは、ギヤケース２とその後端に連設されて後方に
延びるエクステンションハウジング３とで構成され、ギ
ヤケース２内に、エンジン出力が入力される入力軸（図
示せず）と、この入力軸に常時連動して回転するカウン
タ軸（図示せず）と、このカウンタ軸に平行に配設され
た出力軸４とが回転自在に支持されていると共に、上記
カウンタ軸と出力軸４との間には、複数の変速用ギヤ列
が設けられ、更にこれらのギヤ列を選択的に動力伝達状
態とする同期噛合装置が備えられている。また、上記エ
クステンションハウジング３内には、上記出力軸４が延
長されて収納されており、この延長部にスピードメータ
用ギヤ５が取付られていると共に、この出力軸４の後端
にはスプライン４ａが設けられて、プロペラシャフト
（図示せず）の前部のスプラインヨーク６が嵌合されて
いる。そして、このエクステンションハウジング３の中
央下部には、車体側の支持部材７に該エクステンション
ハウジング３を固定するための取付け部８が設けられ、
この取付け部８が上記支持部材７にマウント部材９を介
して結合されている。ここで、上記マウント部材９は、
ボルト＆ナット１０によってエクステンションハウジン
グ３の取付け部８に固定された上部ブラケット９ａと、
ボルト＆ナット１１によって支持部材７に固定された下
部ブラケット９ｂと、両ブラケット９ａ、９ｂを連結す
る弾性部材９ｃ、９ｃとで構成され、エクステンション
ハウジング３を車体に弾力的に支持するようになってい
る。尚、このマウント部材９による支持部は、当該変速
機１とエンジンとでなるパワープラントの後部を支持す
るマウント部となっている。

一方、上記ギヤケース２ないしエクステンションハウジ
ング３の上部には当該変速機１の変速操作機構１２が設
けられている。この変速操作機構１２は、上記ギヤケー
ス２内の上部に収納された複数のシフトロッド１３…１
３（一部のみ図示）と、エクステンションハウジング３
の上方に配設されてその長手方向に延び、前端部が上記
シフトロッド１３…１３の後端にゲート機構１４を介し
て選択的に係合するコントロールロッド１５と、このコ
ントロールロッド１５の後端部に係合機構１６を介して
下端部が連結されたチェンジレバー１７とで構成されて
いると共に、このチェンジレバー１７の下部に設けられ
た球面軸受部１８が、エクステンションハウジング３の
上方に配設されたコントロールケース１９に回動可能に
支持されている。そして、このチェンジレバー１７のセ
レクト操作及びシフト操作により、上記コントロールロ
ッド１５が係合機構１６を介して回動及び前後動し、こ
れに伴って該コントロールロッド１５がゲート機構１４
を介していずれかのシフトロッド１３に選択的に係合し
てこれを前後動させることにより、変速段が所望の変速
段に切換えられるようになっている。

ここで、上記コントロールケース１９は、後端部に設け
られた箱状のチェンジレバー支持部１９ａと、該支持部
１９ａから前方へ延びる筒状部１９ｂとを有し、この筒
状部１９ｂとエクステンションハウジング３の上面前端
部との間に介設されたパイプ２０内に上記コントロール
ロッド１５が挿通されている。また、このコントロール
ロッド１５の前後両端部は、エクステンションハウジン
グ３とコントロールケース１９とにそれぞれ設けられた
ボールブッシュ２１，２２に嵌合支持されて、該コント
ロールロッド１５のエクステンションハウジング３およ
びコントロールケース１９に対する若干の傾動が許容さ
れるようになっている。

次に、本案の特徴部である上記コントロールケース１９
の取付け構造を第１〜３図により説明すると、このコン
トロールケース１９における筒状部１９ｂの先端部は、
ヒンジ機構２３を介してエクステンションハウジング３
の上面所定位置に連結されている。つまり、上記筒状部
１９ｂの先端に設けられた二又部１９ｃ，１９ｃと、エ
クステンションハウジング３の上面に設けられた突出部
３ａとが左右方向に挿通されたピン部材２４によって連
結されてヒンジ機構２３が構成され、このヒンジ機構２
３を介してコントロールケース１９の筒状部１９ｂとエ
クステンションハウジング３とが結合されているのであ
る。

また、このコントロールケース１９の後端部におけるチ
ェンジレバー支持部１９ａは車体のフロアパネル２５に
取付け部材２６を介して取付けられている。この取付け
部材２６は、ボルト２７…２７によって上記支持部１９
ａの上端面に固着された第１フランジ２６ａと、その外
周に弾性部材２６ｂを介して結合された第２フランジ２
６ｃとで構成され、この第２フランジが上記フロアパネ
ル２５におけるチェンジレバー１７の車室内側への挿通
孔２５ａの周囲下面に固着されており、これによりコン
トロールケース１９が車体側に弾力的に結合されてい
る。

そして、特に上記ヒンジ機構２３によるコントロールケ
ース１９のエクステンションハウジング３側への支持部
は、該エクステンションハウジング３を車体側の支持部
材７にマウント部材９を介して支持する上記のマウント
部に前後方向でほぼ一致する位置に設けられている。

上記の構成によれば、フロアパネル２５の挿通孔２５ａ
から車室内へ突出されて変速操作が行われるチェンジレ
バー１７は、エクステンションハウジング３の上方に設
けられたコントロールケース１９に支持され、またこの
コントロールケース１９は、前方へ延びる筒状部１９ｂ
の先端部がヒンジ機構２３を介して上記エクステンショ
ンハウジング３に、後端部のチェンジレバー支持部１９
ａが取付け部材２６を介して車体フロアパネル２５にそ
れぞれ支持されることになり、これにより該コントロー
ルケース１９ないし該ケース１９に支持されたチェンジ
レバー１７の所要の支持性が確保されることになる。そ
して、特に上記コントロールケース１９のエクステンシ
ョンハウジング３への支持部は、該エクステンションハ
ウジング３をマウント部材９を介して車体側の支持部材
７に支持するマウント部に前後方向でほぼ一致する位置
に設けられているが、この位置は、当該変速機１とエン
ジンとで構成されるパワープラントの後部を車体に支持
する位置であって、第１図に鎖線で示すように、パワー
プラントが曲げ振動するときの振動モードＭ，Ｍの節と
なる位置である。従って、この位置においては、パワー
プラントがエンジンの振動等を受けて上記の曲げ振動を
生じても、エクステンションハウジング３は殆ど変位せ
ず、該ハウジング３からコントロールケース１９への振
動の伝達も殆んどないことになる。また、この支持部に
おいては、コントロールケース１９はヒンジ機構２３を
介してエクステンションハウジング３に支持されている
から、該ハウジング３の振動がこのヒンジ機構２３によ
って吸収されることになり、これにより上記振動のコン
トロールケース１９側への伝達が一層効果的に防止され
ることになる。

尚、変速機１ないしパワープラントの上下振動等によ
り、コントロールケース１５を支持するエクステンショ
ンハウジング３とフロアパネル２５との間の間隔が変動
することになるが、該コントロールケース１５はヒンジ
機構２３を介してエクステンションハウジング３に、ま
た弾性部材２６ｂを有する取付け部材２６を介してフロ
アパネル２５にそれぞれ連結されているから、上記間隔
の変動等によって該コントロールケース１５に無理な荷
重が作用することはない。また、コントロールケース１
５がヒンジ機構２３を中心としてエクステンションハウ
ジング３に対して相対的に揺動しても、コントロールロ
ッド１５はボールブッシュ２１，２２を介してエクステ
ンションハウジング３およびコントロールケース１９に
支持されているから、該コントロールロッド１５に無理
な荷重が作用することもない。

（考案の効果） 以上のように、本考案によれば、チェンジレバー等の変
速操作部材を変速機ケースの後部の上方にコントロール
ケースを介して支持するようにしたものにおいて、この
コントロールケースないしチェンジレバーの所要の支持
性を確保しながら、上記変速機ケースからコントロール
ケースへのエンジン振動等の伝達を効果的に低減させる
ことが可能となる。

これにより、コントロールケースに支持されたチェンジ
レバーの振動も抑制されることになり、該レバーの振動
による室内騒音の増大や該レバーの操作感の悪化等が防
止されることになる。

【図面の簡単な説明】 図面は本考案の実施例を示すもので、第１図は歯車式変
速機の要部縦断面図、第２図は第１図におけるコントロ
ールケース取付け部の平面図、第３図は第２図における
IIIーIII断面による拡大断面図である。 １……歯車式変速機、２，３……変速機ケース（２……
ギヤケース、３……エクステンションハウジング）、９
……マウント部（マウント部材）、１５，１７……変速
操作部材（コントロールロッド、チェンジレバー）、１
９……コントロールケース、２５……車体（フロアパネ
ル）。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】変速用ギヤを収納した変速機ケースと、そ
   の後部上方に配置されて変速操作を行うための変速操作
   部材を支持するコントロールケースとを有する縦置き式
   の歯車式変速機において、上記コントロールケースの前
   端部を変速機ケースに、後端部を車体に夫々支持させる
   と共に、該コントロールケース前端部の変速機ケースへ
   の支持位置を、該変速機ケースが車体に支持されるマウ
   ント位置と前後方向位置でほぼ一致させたことを特徴と
   する歯車式変速機の変速機構。