JPH0667955B2 - 粉末状高hlbショ糖脂肪酸エステルの製造法 - Google Patents

粉末状高hlbショ糖脂肪酸エステルの製造法

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JPH0667955B2
JPH0667955B2 JP1116466A JP11646689A JPH0667955B2 JP H0667955 B2 JPH0667955 B2 JP H0667955B2 JP 1116466 A JP1116466 A JP 1116466A JP 11646689 A JP11646689 A JP 11646689A JP H0667955 B2 JPH0667955 B2 JP H0667955B2
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sucrose
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Description

【発明の詳細な説明】 【発明の目的】
〔産業上の利用分野〕 本発明は、高HLBショ糖脂肪酸エステルの工業的な製造
法に関する。 さらに詳しくは、本発明は、精製用有機溶媒を使用せず
に、高純度の粉末状高HLBショ糖脂肪酸エステルを工業
的に取得するための技術に関するものである。
【従来の技術】
(1)背景 現在、界面活性剤として有用なショ糖脂肪酸エステル
(以後《SE》とも略す)は、工業的に、ショ糖とC8〜C
22の高級脂肪酸メチルエステルとを溶媒(ジメチルホル
ミアミドやジメチルスルホキシドなど)中で適当な触媒
の存在下に反応させるか(溶媒法:特公昭35-13102)、
又は溶媒を用いず、水を使ってショ糖を脂肪酸石鹸と共
に溶融混合物とした後、触媒の存在下に高級脂肪酸メチ
ルエステルと反応させること(水媒法:特公昭51-14485
号)により得られている。 しかし、これら二種の合成法のいずれによっても、その
反応混合物中には、目的とするSEの他に未反応の糖、未
反応の脂肪酸メチルエステル、残留触媒、石鹸、遊離脂
肪酸、揮発分等の夾雑物が含まれており、これらの夾雑
物のうち、含量が規定量を越す不純分は、製品化以前に
除去されなければならない。特に上記夾雑物のうち、前
者の溶媒法に伴う残留溶媒(揮発分)の除去は、 近来規制が厳しくなって来ている注)だけに極めて重要
である。 注)米国FDAの規格によれば、SE中許容される残存ジメ
チルスルホキシドは2ppm以下である(Fed.Regist.,51(2
14),40160-1)。 そこで従来から、“粗SEからの残留反応溶媒の除去”と
いう目的で多量の有機溶媒(例えばブタノール、トルエ
ン、メチルエチルケトン、酢酸メチル;特公昭42-1158
8、同48-10448等参照)が慣用されてきたが、かかる溶
媒の多用は、SEの工業的な生産に対し、下述のような著
しい不利益をもたらす。 爆発、火災の危険性。 上のに備えた電気装置の防爆化。 上のに備えた製造装置の密閉化。 上のに備えた建物全体の耐火構造化。 上の、、による固定費の上昇。 溶媒の損耗による原価の上昇。 製品SE中に残留する残留溶媒による負効果。 従業員の健康上への悪影響、ひいてはその予防のため
のシフト数の増加に伴う固定費の上昇。 このような事情から、SE精製時における有機溶媒の使用
を不必要化する技術の開発は、当業界における切実な要
望であった。 (2)従来技術の問題点 ところで、従来から有機溶媒を利用しない精製法が検討
され、例えば代表的なものとして、 (1)酸性水溶液によるSEの沈殿方法(米国特許809,815(1
959)) (2)一般の中性塩水溶液によるSEの沈殿法(特公昭42-88
50) などが知られている。 しかし方法(1)のように、例えば塩酸水溶液を反応混合
物中に加えると、成る程SEは直ちに沈殿するが、未反応
のショ糖は容易にグルコースと果糖とに分解、転化し、
たとえ本操作を低温(0〜5℃)で行っても分解を避け
ることができない。このため未反応糖の回収、再利用が
至難となる。 また、方法(2)のように、食塩や芒硝などの中性塩の水
溶液を反応混合物中に加えてもSEは直ちに沈殿する。こ
の場合、未反応糖の分解は起こらないが、SE中の有用な
成分であるモノエステルが水相側に溶解してしまうた
め、大きなロスを生じるのみでなく、特に近来需要の多
い、かつ本発明の目的でもある高いHLB値を持つショ
糖脂肪酸エステル(以下《高HLB−SE》ともいう)を得
たいとき妨げとなる。 *親水性−親水油性バランス。略1〜20の範囲の値をと
る。この値が大きい程親水性が強い。 さらに、より最近の特開昭51-29417によれば、精製のた
め、水と“精製溶媒”(反応溶媒と区別するために、特
にそう呼ぶ)との混合溶液が軽液層(上層)と重液層
(下層)に分相する性質が利用されている。即ち、一般
に重液層(下層)には水が多く含まれているので、親水
性の未反応糖、触媒由来の塩等はこの重液層(下層)に
溶解し、一方軽液層(上層)には、精製溶媒が多く含ま
れているので、SE、脂肪酸、未反応脂肪酸メチルエステ
ル等の極性の小さい物質はこの軽液層に溶解してくるの
で、相分離により両者の分離が行なわれる。 この場合、ジメチルスルホキシドなど反応溶媒と、下層
の重液層にも溶解するが、都合の悪いことに、上層の軽
液層にも溶解するので、この方法だけで反応溶媒を完全
に分離するのは不可能である。従って、微量の反応溶媒
を除去するだけの目的で、非常に多量の精製溶媒が必要
となる。 このように、水による粗SEの精製を工業的に可能ならし
めるためには、溶媒の除去が完全で、しかも糖及び製品
SEのロスを生じない精製方法を開発することが大前提と
なるが、かかる方法は未だ開発されていない。 さらに、水によるSEの精製を工業的に可能とするためな
お考慮すべき問題として、水を精製溶媒とすることに附
随する含水SEの乾燥問題がある。 即ち、ここに乾燥の対象となる含水SEは、通常、水分80
%以上のものは水溶液状態に、また水分80%未満のもの
はスラリー(泥漿)状をなしているのが普通である。こ
れらSEの含水物は、一般に40℃近辺から急激に粘度が上
昇し、50℃近辺で最高値となるが、同温度を越えると急
激に粘度が下がるという極めて特異な粘性挙動を呈する
(出願人会社刊《シュガーエステル物語(1984)》:103、
107〜108頁参照)。このほか、単に真空下で加熱して水
分を蒸発させることは、著しい発泡性のため、実質的に
不可能である。そして、もし加熱時の温度が高く、かつ
加熱体との接触時間が長い場合には、SEが分解を起こ
し、強度の着色及びカラメル化を引き起すのみでなく、
分解により遊離した脂肪酸によって酸価も上昇してくる
(特公昭37-9966参照)。 特に水分蒸発の終期には、SEの持つ軟化点又は融点の低
さという特性(例えば、ショ糖モノステアレートの軟化
点は52℃近辺、ショ糖ジステアレートの融点は110℃付
近)のため、SE自体が残存している水を抱水する傾向を
持ち、このことが脱水を著しく困難としている。加え
て、溶媒と比較して、水の蒸発潜熱が異常に高い(500kc
al/kgH2O以上)こと及び蒸発温度の高いことなども乾燥
を困難ならしめる一因となっている。それ故、例えば別
形式の乾燥法として、スラリーを加熱して連続的に真空
室へ供給、放出させる所謂フラッシュ式の乾燥機を用い
た場合においても、水の持つ大きな潜熱のため、充分な
脱水、乾燥には種々の困難がつき纒い、たとえこれらの
困難を克服できたとしても、真空下で脱水、乾燥された
後のSEが溶融状態にあるため、それを乾燥機より取出し
てから融点以下まで冷風等を吹きつけて冷却、固化さ
せ、最後に粉砕機で粉砕するという多くの工程を必要と
し、しかも最終の粉砕工程では粉塵爆発の懸念が附随す
る。 従って、以上のような乾燥に伴う諸問題点を解決するこ
とも、本水媒法精製を実現するための重要なステップと
なる。 〔発明が解決しようとする課題〕 よって、本発明が解決しようとする課題は、精製用溶媒
を使用しないで、工業的に、SE反応混合物中の未反応糖
のみならず、残留溶媒、触媒からの副生塩その他の夾雑
物が除去された、精製された粉末状高HLB−SEを取得す
るための技術を開発することによって、精製溶媒の使用
に起因する一切の問題点を解決することである。
【発明の構成】
〔課題を解決するための手段〕 (1)概念 そこで本発明者は、上記課題の解決を目的に、(イ)水相
側に溶解するSE量を最小限に押えるのみならず、可能な
らば該量を零として全量のSEを沈殿させること、(ロ)未
反応糖の分解を避けること、(ハ)残留する反応溶媒を水
相外に溶解させることにより、SEから分離すること、
(ニ)沈殿したSEを精製された状態で粉末化すること及び
(ホ)上の沈殿を分離した濾液(又は上澄み)中の未反応
糖を効率的に回収することの5点の解決を目標として多
くの塩析実験を行なった結果、ショ糖と中性塩を反応混
合物の水溶液中に溶解させたとき、適当なpH、温度、中
性塩及びショ糖濃度並びに量の組合せの下で、意外なこ
とに、SEが水相中に溶出しないでその略々全量が沈殿す
るのみならず、水相中には、未反応の糖以外に、除去が
望まれる触媒由来の塩が溶出するに至るという、都合の
良い現象を見出した。そして、ここに沈殿したSEを再度
水に溶解後、中性塩及びショ糖水溶液による再沈殿操作
を反復しても、SEは水相中に移行することなく沈殿状態
を保つこと、及びこの沈殿に適当なpHを持つ酸性の水を
加えて洗浄することによって、残余の沈殿中の高HLB画
分及び可溶性不純物が酸性水相中に移行し、残余の沈殿
中には高純度の低HLB画分が残留することが判明した。
そしてさらに、ここに水相中へ移行した高HLB−SEの回
収及び粉末化が、脂肪酸の添加及び噴霧乾燥法の利用に
より工業的に可能となることも分った。かくしてSE反応
混合物中から、有機溶媒を全く使用せずに、 (1)不純物を除去すること、 (2)高HLBの粉末状SEを得ること、ひいてはSEを用途に合
わせて分別すること が工業的に可能となったが、これらは従来不可能視され
てきたことであって、従来技術から予想できなかったこ
とである。 (2)概要 本発明は、上記知見に基づくもので、目的物のショ糖脂
肪酸エステルの他、未反応の糖、未反応の脂肪酸メチル
エステル、触媒、石鹸、脂肪酸及び揮発分を含む反応混
合物を中性領域のpHに調整し、水、中性塩及びショ糖を
加えることにより生じる沈殿物を酸性の水で洗浄し、洗
液に脂肪酸を加えて析出する沈殿を中和後、噴霧乾燥す
ることを特徴とする粉末状高HLBショ糖脂肪酸エステル
の製造法を要旨とする。 従って、本発明は以下の諸工程から成り立つ。 (I)精製のSE反応混合物からの不純物の除去工程(粗
製SEの塩析工程)。 (II)不純SE沈殿を洗浄する工程(分別工程)。 (III)高HLB−SEを沈殿状態で回収する工程(脂肪酸の
添加による高HLB−SEの再沈殿工程)。 (IV)回収された沈殿状高HLB−SEを脱水、粉末化する
工程(噴霧乾燥工程)。 以下、発明に関連する重要な事項につき分説する。 (3)溶媒法によるSEの合成 溶媒法によるSEの合成においては、通常、ショ糖と脂肪
酸メチルエステルとの混合物を、これらの合計量に対し
数倍量の反応溶媒、例えばジメチルスルホキシドに添
加、溶解させ、炭酸カリウム(K2CO3)等のアルカリ性
触媒の存在下、真空20〜30Torr近辺で数時間80〜90℃に
保持することにより、容易に90%以上の反応率(脂肪酸
メチルエステル基準)にてSE反応混合物が生成する。 次に、SE反応混合物中のアルカリ性触媒の活性を消失さ
せるため、乳酸、酢酸等の有機酸又は塩酸、硫酸等の鉱
酸を当量だけSE反応混合物に添加する。この中和によ
り、触媒は、乳酸カリウム等に相当する中性塩類に変化
する。 最後に、反応溶媒、例えばジメチルスルホキシドを真空
下に留去すると、大略、下記組成範囲の混合物(中和及
び蒸留後の反応混合物)となる。 ショ糖脂肪酸エステル=15〜95% 未反応糖=1.0〜80% 未反応脂肪酸メチルエステル=0.5〜10% 炭酸カリウム由来の中性塩=0.05〜7% 石鹸=1.0〜10% 脂肪酸=0.5〜10% 揮発分(蒸留する反応溶媒)=3.0〜30% このとき、SEのエステル分布は、モノエステル10〜75%
(ジエステル以上が90〜25%)である。そして、脂肪酸
メチルエステル、石鹸及び脂肪酸の夫々に主として含ま
れる脂肪酸根は、飽和であって、共通のC16〜C22の炭素
数を持つ。 (4)加水 次に、上の反応混合物に対して水を、 水:反応混合物=5:1〜40:1(重量比) (1) 式の割合になるように、更に望ましくは、 水:反応混合物=20:1(重量比) (2) 式の割合に加えると共に、pHを6.2〜8.2、望ましくはpH
7.5とする この場合、水の添加割合が上の範囲から外れ、例えば、
水と反応混合物との量比が5未満となった場合は、得ら
れた水溶液の粘度が大となり、実質的に以後の操作が困
難となる。また、逆に、水と反応混合物との量比が40超
過となる程に過剰の水を加えた場合は、粘度が小となっ
て以後の操作が容易となり、かつ、目的とする反応溶媒
の除去も好適に行われるが、反面、未反応糖等の回収に
際して水分の除去に多大のエネルギーコストを必要とす
ることになって、経済性が失われるに至る。 更に、水溶液のpHは、目的とするSEの分解を避けるた
め、pH6.2〜8.2の間に調整されるのが好ましい。pH8.2
以上の水素イオン濃度下では、アルカリによる定量的な
SEの分解が起こる心配があり、またpH6.2以下の弱酸性
域でも、例えば90℃以上の高温にさらされると、酸分解
の恐れがある。 (5)塩析 以上の如くpH調整されたSE反応混合物の水溶液をなるべ
く50〜80℃に保って、更に中性塩及びショ糖を加える。
この場合、加えるべき中性塩は、先ず下式(3)を満たし
ているのが好ましい。 ここで、 合計塩量=加えるべき中性塩量+触媒から形成される塩
量……(4) 合計糖量=加えるべきショ糖量+当初からの未反応糖量
……(5) 次に、加えるべきショ糖の量は、式(6)により定められ
るのがよい。 更に、上記の両式に加え、合計塩量と合計糖量の重量比
率もまた、下式(7)を満足しているのが好ましい。 本発明者らは、上記式(3)、(6)及び(7)を三者共に満た
すように中性塩及びショ糖を加えて得たSEの沈殿を含む
水溶液を50〜80℃まで加熱昇温させると、添加された中
性塩が乳酸塩、酢酸塩、食塩又は芒硝のいずれであって
も、略々近似的に全量のSEが沈殿することを発見した。
この現象はこれまで知られていなかった特異な現象であ
ると共に、発明目的上、重要な価値を有するものであ
る。そしてこの事実を巧妙に利用することによって、 未反応糖を含む全ショ糖(合計糖) 揮発分 触媒由来の塩 添加された中性塩 の四者は水相に移行し、沈殿したSEのケーキ(即ち、泥
漿状スラリー)と分離できるようになるのである。因
に、この際の液性は酸性ではないから、ショ糖が分解す
ることはなく、従って、必要に応じて回収・再利用する
のも容易である。 添付の第1図は、この現象をより詳しく示す三元グラフ
の一部である。この図において、 水相側に溶解しているSEの重量=Y[g] 沈殿しているSEの重量=X[g] 全SE(X+Y)[g]に対して、水相側に溶解しているSEの重量
割合=φ[%] とすれば、φは下式(8)で定義される。 ここで、以下の条件; 温度=80℃pH=7.5 水:反応混合物=7.4:1(重量比) 脂肪酸残基=ステアリン酸 反応混合物の組成 ショ糖脂肪酸エステル=29% 未反応糖=35% 未反応脂肪酸メチルエステル=2% 触媒由来の塩=1% 石鹸=3% 脂肪酸=1% 揮発分(残留する反応溶媒)=29% SE中のエステル分布:モノエステル=65% ジエステル以上=35% において、φの値がどのように変化するかが三角座標で
示される。 ここに、合計塩は式(4)により、合計糖は式(5)により夫
々で定義された量であって、 水量+合計塩量+合計糖量=100% として表示してある。そして本第1図の斜線の部分は、
本発明者らが発見した式(3)式(6)、及び式(7)を同時に
満たす領域である。 この斜線の部分に入るように中性塩及びショ糖の溶解量
を決めることによって、実質的にφ=0即ち、近似的に
全量のSEを沈殿化することができ、沈殿したSEの濾取又
は遠心分離により、水相側に溶解しているショ糖、揮発
分、中性塩等を除去することができる。 (6)洗浄 前記塩析工程において、中性塩及びショ糖の添加により
反応混合物水溶液中から略々近似的に全量沈殿せしめら
れたSEは、含水状態、即ち、泥漿(スラリー)状のもの
である。このものは、比較的少量ではあるが、なお揮発
分、塩類、ショ糖などの夾雑物を含む。発明者はこの不
純泥漿の精製法につき鋭意研究した結果、これを酸性の
水で洗浄することによって良好な結果が得られることを
見出した。 即ち、上記不純SEスラリーを、pH=3.0〜5.5に調整され
た酸性水で洗浄することによって、不純物が溶去され
る。ここに使用される酸は、例えば塩酸、硫酸等の鉱酸
及び酢酸、乳酸等の有機酸が適当であるが、可食性の酸
であれば、別段例示のもののみに限る訳ではない。な
お、酸性水の塩度は、10〜40℃が適当である。 このような条件の下で洗浄することにより、ケーキ側か
ら除去を希望する不純物(即ち、揮発分、合計糖、添加
中性塩及び触媒由来の塩等)を水相側に移行させること
ができる。 以上の洗浄操作に当たり、酸性水の温度が40℃以上とな
ると、操作が長時間、例えば数ヶ月にも及んだとき、SE
の酸分解が懸念されるだけでなく、粘度が上昇して操作
が困難となる。他方、10℃以下の低温の保持には、経済
性を軽視した冷凍機の設備が必要となる。従って、普通
は10〜40℃、殊に常温付近での操業が好ましい。 なお、この酸性水によるSEケーキの洗浄に際しては、本
ケーキ中に含まれている揮発分(反応溶媒)や、未反応
糖、加えられた中性塩及び触媒の中和により副生した塩
の四者をなるべくSEケーキから除く必要があるので、被
処理SEケーキは、該ケーキから包摂する不純物の粒子を
遊離し易くするため、該酸性水中で可能な限り小さい粒
子径になるまで細断されているのが望ましい。この目的
は、例えば、分散混合機(例えば特殊機器工業(株)製
《ホモミキサー》)、ホモジナイザー又はコロイドミル
(例えば商品名《マイコロイダー》)等の細分化装置に
より効率的に達成でき、揮発分(反応溶媒)、未反応
糖、触媒由来の塩及び中性塩の四者は、全量沈殿SEのケ
ーキから酸性水相中に移行する。このとき、沈殿物か
ら、高いHLBのSEが酸性の水側へ溶け始めるという注目
すべき現象が起こる。この高HLB−SEの水に対する溶解
傾向は、系の温度、pH等の要因によって変化するが、例
えば常温でpHが3.5程度の場合、添付第2図の通りであ
る。 ここで、高いHLBのSEは高い水溶性を持っているので、
仮にこれを《水溶性SE》と名付け、符合として“Y"を与
える。Yは高いHLBを持ち、従って高い水溶性を示す。
このため、酸性の水溶液中でも沈殿せず、該溶液内に普
通に溶解する。 これに反し、低いHLBのSEは低い水溶性を持つので、一
般に、一定の酸性の水素イオン濃度下では沈殿する傾向
がある。そこで、仮にこれを《沈殿性SE》と名付け、符
合として“X"を与える。Xは低いHLBを持ち、従って酸
性水溶液中から沈殿し易い。 上記第2図は、モノエステル、ジエステル及びトリエス
テル三者の合計を100%で表わした三角座標図の一部で
ある。同図において、M点は、元のサンプルSEの組成を
表す。X点は、低いHLBのSEで沈殿性SEの組成を表す。
Y点は、高HLBのSEで、水溶性SEの組成を表す。添字
1、2、3は、夫々エステル分布の異なるSEを表す。 今、例えば同図において、M2なるエステル分布(モノエ
ステル=73%、ジエステル=22%、トリエステル=5
%)を持つSEサンプルにSE濃度として3%になるように
pH3.5の水溶液を加えれば、該SEは沈殿性SE(X2)なる
エステル分布(モノエステル=68%、ジエステル=25
%、トリエステル=7%)と、水溶性SE(Y2)なるエス
テル分布(モノエステル=84%、ジエステル=13%、ト
リエステル=3%)に分割されることが示される。 分割されるX2とY2の重量は、三角座標の性質から、 (但し、 は、M2点とY2点間の距離、 は、X2点とM2点間の距離、M2はM2の重量、X2はX2
重量、Y2はY2の重量、但し、以上乾物の重量とす
る。)なる(a),(b)両式を解くことによってX2及び
Y2が求められる。 このように、相対的にモノエステル含量の高いSE(即
ち、HLBの高いSE)は、酸性水の方に溶解し易く、相対
的にモノエステルの低いSE(即ち、HLBの低いSE)は、
沈殿側に存在し易いという性質を巧妙に利用することに
よって、SEを高HLBのものと低HLBのものとに定量的に分
割できる。なお、一般的にSE中のモノエステル含有率が
高い程、水へ溶解するSE(Y)の量が増加し、その逆の場
合は、水へ溶解するSE(Y)の量が減少するという傾向も
併せて発見された。そして任意の組成のSEがどれ程、酸
性水の中に溶解するかは、第2図のデータで与えられる
φの値を式(a)及び(b)に代入してWX及びWYの値を解くこ
とによって、定量的に求めることができる。 かくして、本洗浄工程で得られた酸性水溶液は、相対的
に多量の高HLB−SEを含むので、低HLBのSEを主体とする
沈殿SEと濾過又は遠心して分離する。得られた濾液(又
は上澄み)は、高HLBのSEの他に、より少量の残存揮発
分(ジメチルスルホキシド等)、塩、ショ糖等を含んで
いる。 (7)脂肪酸による再沈殿及び精製 そこで本発明者らは、上記酸洗処理により得られた不純
高HLB−SE含有濾液中より、高HLBのSE(つまり水溶性S
E)の沈殿物を得る目的で鋭意検討を加えた結果、該濾
液に脂肪酸を添加することによってこの目的を有効に達
成できることを知った。 SEが、水溶液中で一定の条件下で相互に合一して高分子
量のミセル構造の集合体を作ることは、公知(前掲書10
2頁参照)である。 ところで、SEの種類であるが、ショ糖の分子の3個の第
一級水酸基の酸素原子に、夫々1〜3個の脂肪酸残基が
結合したものを夫々モノエステル、ジエステル及びトリ
エステルと称している。そして周知の如く、モノエステ
ルは、親水性がジエステルやトリエステルに比較して大
きい代りに、水中におけるミセル形成の度合いが小さい
ので、比較的低分子量の(分子の直径の小さい)SEミセ
ル集合体を形成する。逆に、ジエステルやトリエステル
は、親水性が比較的小さい代りにミセル形成能が非常に
大きいので、水中では、極めて大きな分子量の(即ち、
分子径の大きい)SEミセル集合体を形成する。 発明者らは、以上の事実から帰納的に、高HLBで親水性
の大きなSE(つまり水溶性であって、モノエステルの含
有量が大略80%を越えるもの)が水中で脂肪酸のような
疎水性物質と接触すると、通常のミセル構造と異なった
SEミセル集合体が形成され、更にその集合体が集合、巨
大化してもはや水溶液状態で存在できなくなり、遂には
SEと脂肪酸とが合体して、沈殿するであろうと推定し
た。仮にこの推定が正しいとすれば、本沈殿現象をうま
く利用することにより、工業的な規模で、通常の手段で
は容易に分離できない水溶性SEを沈殿させうることを期
待できる筈である。 そこで以上の構想を基に種々検討を加えた結果、脂肪酸
により高HLB−SEが選択的に沈殿するという新規な知見
が得られるに至ったものである。以下、本新規知見の詳
細を項分けして解説する。 (a)脂肪酸の添加による高HLB−SEの沈殿現象 発明者らは上述の想定に従って水溶性SE(モノエステル
80%以上、従ってジエステル及びトリエステル合計20%
以下)を含む水溶液に脂肪酸を添加したとき、温度=常
温〜90℃、pH=3.0〜5.5のとき、脂肪酸は添加の当初水
溶液中に浮遊しているが、直ぐに沈殿状又は溶融状のも
のに成長して、遂には、容器の底部に沈殿してくるとい
う驚くべき事実を発見した。この底部の沈殿物は、多量
の高HLB−SEと、添加した量に略々近い量の脂肪酸との
混合物からなっていた。なお、この沈殿物の生成量は、
一般に、 水溶液の温度が高い程(常温〜90℃の範囲で)、 pHが、低い程(pH=3.0〜5.5の範囲で) 添加される脂肪酸の量が多い程(或る一定範囲内の量
で)、 溶解している水溶性SEの濃度が大きな程(1〜4%の
範囲で)、 水溶性SE中に含まれるモノエステルの比率が低い程
(モノエステル80%以上で)、 夫々増加することも引き続き発見された。 以上の現象について、の温度の高い程沈殿物の量が増
加するのは、脂肪酸の溶融によってSEと脂肪酸の合一が
促進されるためであろうと推定され、事実融点以下の固
体温度下では、沈殿量は数分の一に減少する。しかしSE
の対温度安定性の見地では、可及的低温である方が望ま
しいので、無制限に高温にするのは好ましくない。従っ
て実験的に、大略50〜80℃の範囲の温度が、沈殿量とSE
の安定保持の両面を満足する好ましい結果を与える。因
に、C20のアラキン酸でも融点77℃であるから、この上
限温度値は、SEを構成する通常脂肪酸の融点以上であ
る。 のpHが、低い程、沈殿物の量は増加する。周知の如
く、SEはアルカリ側pH域よりむしろ酸性側pH域に於て遥
かに安定である。但し酸性が余りに強すぎてもSEの安定
性を害するので、弱酸性のpH3.0〜5.5の範囲とするのが
よい。この範囲のpH域に於ては、pHが低い程沈殿の生成
量が増加する。多量の沈殿を得るためには、その他の条
件も配慮して、大略pH3.5〜4.0の弱酸性領域が好適であ
る。 の必要な脂肪酸の添加量は、溶解状態にある水溶性SE
の量及び濃度に依存している。従って厳密に言うと、脂
肪酸の添加量と沈殿量とは必ずしも相関しないが、傾向
的には多く脂肪酸を添加した方が多量の沈殿を生じるケ
ースが多い。 しかし余りに過剰な脂肪酸の添加は、一般的に沈殿生成
量を増大させる反面、不純物としての脂肪酸を増やすこ
とになるので、得られた高HLB−SEの純度低下を引き起
こすという望ましくない結果を招く。 の水溶性SE(高HLB−SE)が過剰に溶存している場
合、水溶液の粘度、比重共に大きくなり過ぎて沈殿物の
分離が困難となる。 そこで例えば、ステアリン酸がSEの構成脂肪酸の場合に
は、水溶液SEの濃度=2.0%程度が分離効率上好まし
い。 のSEは一般にモノエステルの含有量が80%以下の場合
には、pHが酸性域となると水溶性を保つことができず
に、一部沈殿してくる。発明者らの経験によると、多く
の場合モノエステルが80%以上(従ってジエステルとト
リエステルとの合計=20%以下)ならば、pH=3.5〜4.0
程度で水溶性である。モノエステルが90%以上の場合な
らば、SEはより確実に水溶性を保ち、上述程度の酸性領
域でも沈殿しない。 次に沈殿する量であるが、やはりモノエステルの含有量
の少ないSE(モノエステル含有量>80%に於て)の方が
沈殿物の量が多くなる。即ち、ジエステルやトリエステ
ルの含有量が多い程(但し、ジエステル+トリエステル
の含有量<20%に於て)、沈殿量が多くなるという傾向
がある。 以上の知見は、以下のような水溶性SEの回収技術を導
く。 (b)脂肪酸の添加による水溶性SEの回収技術。 従来から、溶媒を用いずに水溶性SE(モノエステルを多
く含み、高いHLB値を持つ)を得ることは、工業的に容
易ではなかった。しかし、上述の発明者らの発見した現
象をうまく利用すれば、無害な物質(つまり脂肪酸)を
添加するだけで、溶媒を用いることなく、水溶性の高HL
B−SEを沈殿物として回収するという新しい工業的技術
への展望が開ける。 以下、主としてステアリン酸を構成脂肪酸とする水溶性
の高HLB−SEの回収技術につき説明するが、この技術は
当然ステアリン酸の添加のみに限定されるものではな
く、他種脂肪酸の添加によっても工業的に実施可能であ
る。しかし問題を複雑にさせないため、SEの構成脂肪酸
と同種の脂肪酸の添加が望ましい。 (イ)高HLB−SE(水溶性SE)を含SE粗製物の酸洗工程で得
られた酸性の水溶液は、多量の高HLB−SEを含む他、よ
り少量の残存揮発分(DMSO)、塩、ショ糖等をも含む。
この酸性水溶液を、pH3.0〜5.5に維持し、かつ好ましく
は50℃〜80℃に加温して含有SE濃度を1.0〜4.0%、より
好ましくは2%のSE濃度としておく。 (ロ)脂肪酸の添加量 以上の酸性水溶液に、ステアリン酸(又はそれと類似の
脂肪酸)を加えると、脂肪酸の周辺に高いHLB値を持つ
水溶性SEが凝集し始め、遂には合一して、沈殿物を形成
していく。添加すべき脂肪酸量は、以下の範囲がよい。 しかし得られる高HLB−SE純度及び高HLB−SEの回収率の
二点を配慮すれば、好ましい脂肪酸の添加量は、 の範囲である。 (ハ)水溶液のpH 脂肪酸の添加に当たり、対象高HLB−SE含有水溶液に適
当な酸を加えてpH=3.0〜5.5に調整すべきことは前述し
たが、この際、pHを=3.5〜4.0とするのが幾つかの点で
好ましい。SEの安定性の点で、過度のアルカリ域pHは最
も避けるべきで、また逆に、強酸性であっても、SEの分
解をもたらすのでよくない。弱酸域のpH3.5〜4.0であれ
ば、短時間ではSEは安定である。また、高HLB−SE(水
溶性SE)の沈殿量を増やす点からいっても、本pH域が好
ましい。その他、pHが3.5〜4.0であれば、形成された沈
殿物の分離装置の金属腐蝕を引き起こす危険性も少な
い。(但し、pH調整剤としての塩酸や高温度の硫酸の使
用は避けるべきである。)。 次に、pHを弱酸性となした水溶液を攪拌し、沈殿化を完
結させる。この攪拌は、強い方がよく、時間は約10分間
程度で足りる。 かくして分離された沈殿物は、大略80%の水分と20%の
固形分を含んでいる。含まれている水分を除いた後の乾
燥固形分の組成比は、 程度の値をとることが多い。 (ニ)沈殿物の洗浄 以上の脂肪酸添加により析出した高HLB−SEと脂肪酸と
が合一した沈殿は、水以外により少量の残存する揮発分
(反応溶媒のDMSO)、塩、ショ糖等の不純物を随伴する
が、これを引き続き酸性水で洗浄することにより水溶液
(上澄液)層と分別され、それだけで不純物(揮発分、
塩、ショ糖等)の含有量が少なくなり、純度が向上す
る。なお、この後洗浄操作は所望により二回以上反復す
ることができ、これにより高HLB−SEの純度が一層向上
する。 (ホ)回収率 以上の操作により、当初水溶状態で存在していた高HLB
−SEを85〜95%という高い割合で沈殿物として回収でき
る。そして得られた高HLB−SE含有沈殿は、固形分5〜2
0%の沈殿として、濾別、回収された後、中和されて再
び水に溶解された後、次段の乾燥工程に付される。 (8)噴霧乾燥 (a)概観 ショ糖脂肪酸エステル水溶液の乾燥に工業的な困難があ
り、所謂溝型の攪拌型乾燥機で代表される通常の真空乾
燥機を用いた場合は無論、泥漿を連続的に供給して加熱
して真空室に放出させる所謂フラッシュ式の乾燥機を用
いた場合も、SEの持つ粘度特性や低融点という性質のた
め、被処理SEの酸価の上昇、着色、カラメル化などの品
質低下現象を回避することができず、さらに後者の場合
には、なお粉塵爆発の危険性も無視できないことは既に
前出〔従来の技術〕項中詳述した。 しかるに、本発明者らは多数の実験の結果から、上記高
HLB−SE沈殿物の脱水、乾燥のため、噴霧乾燥手段の利
用が最適であって、これにより既往乾燥手段の欠点を一
挙に解決することができる。 この乾燥工程では、水溶液状態の含水高HLB−SEを、ポ
ンプを介して噴霧乾燥塔へ連続的に供給し、ノズルによ
る噴霧又は回転円盤(ディスク)の遠心力により微細な
霧状微粒子に分割して乾燥気流と接触させる。これによ
り水の蒸発面積が著しく大きくなり、このため極めて短
時間内(噴霧してから数秒以内)に脱水、乾燥を完了し
得る。なお霧化手段としては、含水高HLB−SEの粘度が
大であるため、回転円盤の利用が望ましい。 (b)噴霧乾燥条件 高HLB−SEの水溶液の供給温度は40〜80℃の間で任意に
変更できるが、品質面の考慮から望ましくは40〜60℃の
範囲内の温度を選ぶ。 上記溶液又は水溶液を回転円盤により霧化させる場合、
例えば円盤の直径が5〜10cmφのときは、15,000〜24,0
00rpmの回転数が適当である。 塔内へ送風される空気は、溶液又は水溶液中の水分を蒸
発させるに必要な熱量以上を保有すべきであり、従って
空気温度が低い場合は、より多量の空気量が必要であ
る。この際の空気温度は10〜100℃の広範囲であってよ
いが、対象高HLB−SEの乾燥効率と熱分解防止とを考慮
して、60〜80℃の間の温度を選ぶのが有利である。 送風空気中の湿度も前記の空気温度と共に乾燥効率に関
係する。作業上好適な絶対湿度は、大略 の範囲にあるのが経済的である。 噴霧乾燥塔の所要容積、所要塔経、所要高さなどの諸条
件は、以上の噴霧条件を前提に設計される。塔の設計及
び作業条件が適当であれば、水分5%以下の粉末化され
た乾燥高HLB−SEが、噴霧乾燥塔の下部より連続的に排
出される。得られた製品は、熱履歴が短いため、品質的
に極めて優れ、かつ乾燥作業用の人員を殆ど必要としな
い。
【作用】
未反応の糖、未反応の脂肪酸メチルエステル、触媒、石
鹸、脂肪酸及び揮発分(残留する反応溶媒)を含む高HL
B−SE生成反応混合物に酸を加えて中性領域のpHに調整
後、水、中性塩及びショ糖を加えて適当な温度下に塩析
すると、高HLB−ショ糖脂肪酸エステル、未反応の脂肪
酸メチルエステル、石鹸及び脂肪酸が沈澱すると共に、
揮発分(残留する反応溶媒)が水相側に移行するので、
全く有機溶媒を使用せずに残留揮発分を除去することが
できる。特に、式(3)式(6)及び式(7)の条件を満足させ
るように操作することによって、ショ糖脂肪酸エステル
の損失が実質的に絶無の状態で残留溶媒を除去すること
ができる。次いで、この沈殿を酸性の水で洗い、洗液に
脂肪酸を加えて発生した沈殿を分離して夾雑揮発分やシ
ョ糖、加えられた中性塩及び触媒の中和により副生した
塩等の不純物が除去された固形分5〜20%の高HLB−シ
ョ糖脂肪酸エステルの沈殿物が得られる。 これを中和して、噴霧乾燥することにより、高HLB−シ
ョ糖脂肪酸エステルが、流動性の良い粉末として連続的
に生産される、かくして全く精製用溶媒を使用せずに高
いHLB値を持つ粉末状ショ糖脂肪酸エステルの工業的生
産が可能となる。なお、上の酸洗工程に際し、沈殿側に
残留したショ糖脂肪酸エステルは、高純度の低HLB−シ
ョ糖脂肪酸エステルであるから、ここに粗製のショ糖脂
肪酸エステルの精製を兼ねて高HLBのものと低HLBのもの
とに分別する目的が併せて達成されることになる。
【実施例】
以下、実施例により発明実施の態様及び効果を説明する
が、例示は勿論説明のためのものであって、発明思想の
限定又は制限を意図したものではない。 実施例 下表−1の組成で表される溶媒法ショ糖脂肪酸エステル
反応混合物から反応溶媒を留去した残渣を、乳酸で中和
後、乾燥させた乾物(ドライマター)100kgに水1.000kg
を加えて溶解させた。 上の水溶液に、ショ糖62.5kg及び50%乳酸カリウム97.6
kgを加えて、75℃まで加熱、昇温させ、沈殿したケーキ
を濾別後、真空下80℃で乾燥し、固形物の組成を調べた
ところ、下表−2の通りであった。なお、上記ケーキ中
の水分は45%であった。 なお、ケーキより濾別された濾過液中のショ糖脂肪酸エ
ステル量を、ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)法
(上掲書63頁参照)で測定したところ、ショ糖脂肪酸エ
ステルの存在は全く認められなかった他、反応溶媒のジ
メチルスルホキシドの95%が除去されていた。 次に、上表−2のケーキ(重量80kg)をpH3.5の常温酢
酸水400kgに懸濁させ、ホモミキサーで細断しつつ10分
間攪拌した後、細分化された沈殿を濾取し、これを再び
酢酸水で洗浄する操作を計4回繰り返した。得られた濾
液(pH3.5)の組成は下表−3の通りであった。 表−3の水溶液(390kg)を酢酸でpH3.5に調整後、80℃
まで加熱し、これにステアリン酸0.78kgを添加後、10分
よく攪拌した。攪拌を停止すると、54.1kgの含水沈殿物
が上澄液と分離された。この沈殿物の一部を乾燥して得
た粉末の組成は下表−4の通りであった。 表−4の含水沈殿物54.0kg、攪拌しながら、苛性ソーダ
を滴下してpH7.8に調整して、中性の高HLBショ糖脂肪酸
エステル水溶液を得た。 この水溶液の一部を真空下に乾燥したところ、下表−5
の通りの組成のモノエステル含量約89.0%の高HLB−シ
ョ糖脂肪酸エステルが得られた。 なお、表−2記載のショ糖脂肪酸エステルを酢酸で洗
浄、精製した残りの沈殿物は、モノエステル含量67%の
低HLB−ショ糖脂肪酸エステルであった。 最後に、pH=7.8に調整した中性の高HLBショ糖脂肪酸エ
ステル水溶液を以下の条件下に噴霧乾燥した。 噴霧乾燥塔の直径:2.0mφ 直筒部の長さ:1.5m 回転円盤(ディスク)径:10cmφ 円盤回転数:24,000rpm 入口空気温度:55.0℃、 噴霧乾燥塔の下部から得られた粉末状の高HLB-ショ糖脂
肪酸エステルは、下表−6の組成を有し、水分1.9%、
嵩比重0.40で、過熱による着色も無く、流動性のよいも
のであった。 このように、当初の反応混合物のエステル分布におい
て、モノエステル=70.0%(ジエステル以上=30%)の
ショ糖脂肪酸エステルからモノエステル含量89.2%の高
HLBショ糖脂肪酸エステルが得られた。なお、酸洗沈殿
から得られたショ糖脂肪酸エステルは、既述のように、
モノエステル含量67%の低HLB品であるので、本例によ
り、当初反応混合物中に存在していたショ糖脂肪酸エス
テルが、高HLB品と低HLB品とに分別されたことになる。
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明は、溶媒法高HLB−ショ糖脂
肪酸エステル反応混合物から精製用溶媒を使用しない
で、工業的に、精製された高HLBの粉末状高HLB−ショ糖
脂肪酸エステルを製造すると共に、併せて低HLB/高HLB
−ショ糖脂肪酸エステルの分別を可能ならしめ得たこと
によって、工業的に以下のような多大の直接及び間接効
果を奏する。 (1)安価な水のみを用いて粉末状高HLB/高HLB−ショ糖
脂肪酸エステルの製造が可能となること。 (2)低HLB/高HLB−ショ糖脂肪酸エステルの分別できる
こと。 (3)高HLB−ショ糖脂肪酸エステルの乾燥を常圧下に短時
間内に行うことができるため、製品の熱劣化がないこ
と。 (4)溶剤の爆発、火災の心配がなく、従って、防爆仕様
の高価な電気装置も不要となること。 (5)精製用溶媒が製品に混入する懸念がないこと。 (6)職場の衛生環境が向上すること。 (7)低費用で工業化できること。
【図面の簡単な説明】
第1図は、水、合計糖及び合計塩各量の変化と、水相中
に溶存するショ糖脂肪酸エステル量との関係を示す三元
グラフ、第2図は、ショ糖脂肪酸エステルのエステル組
成と酸性水への溶解度の関係を示す三元グラフである。

Claims (21)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】目的物のショ糖脂肪酸エステルの他、未反
    応の糖、未反応の脂肪酸メチルエステル、触媒、石鹸、
    脂肪酸及び揮発分を含む反応混合物を中性領域のpHに調
    整し、水、中性塩及びショ糖を加えることにより生じる
    沈殿物を酸性の水で洗浄し、洗液に脂肪酸を加えて析出
    する沈殿を中和後、噴霧乾燥することを特徴とする粉末
    状高HLBショ糖脂肪酸エステルの製造法。
  2. 【請求項2】反応混合物の組成が、 未反応のショ糖 =1.0〜80.0% 未反応の脂肪酸メチルエステル =0.5〜10.0% 触媒 =0.05〜7.0% 石鹸 =1.0〜10.0% 脂肪酸 =0.5〜10.0% 揮発分 =3.0〜30.0% ショ糖脂肪酸エステル =15.0〜95.0% である請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】反応混合物が、pH6.2〜8.2に調整される請
    求項1記載の方法。
  4. 【請求項4】pH調整後の反応混合物が、50〜80℃に加熱
    される請求項1記載の方法。
  5. 【請求項5】反応混合物に加えられる水と反応混合物の
    重量比が、水:反応混合物=5:1〜40:1である請求項1
    記載の方法。
  6. 【請求項6】下記の関係式に従って、中性塩及びショ糖
    がpH調製後の反応混合物に添加される請求項1又は3記
    載の方法。 かつ、 かつ、 ここで、 合計塩量=加えられるべき中性塩量+触媒の中和によっ
    て生成する塩量 合計糖量=加えられるべきショ糖量+当初からの未反応
    糖量
  7. 【請求項7】反応混合物のpHの調整に使用される酸が、
    乳酸、酢酸、塩酸及び硫酸からなる群から選ばれた酸の
    いずれかである請求項1又は3記載の方法。
  8. 【請求項8】反応混合物中の脂肪酸メチルエステル、石
    鹸及び脂肪酸の夫々に主として含まれる脂肪酸根が、炭
    素数16〜22の共通飽和脂肪酸根を持つ請求項1又は2記
    載の方法。
  9. 【請求項9】反応混合物中の揮発分(残留する反応溶
    媒)の成分が、ジメチルスルホキシド又はジメチルホル
    ムアミドである請求項1又は2記載の方法。
  10. 【請求項10】反応混合物に加えられる中性塩が、食
    塩、芒硝、乳酸カリウム及び酢酸カリウムからなる群か
    ら選ばれた塩のいずれかである請求項1又は6記載の方
    法。
  11. 【請求項11】ショ糖脂肪酸エステルのエステル分布
    が、モノエステル含分として、10〜75%(ジエステル以
    上が90〜25%)である請求項1又は2記載の方法。
  12. 【請求項12】酸性の水のpHが、3.0〜5.5である請求項
    1記載の方法。
  13. 【請求項13】脂肪酸を添加された洗液のpHが、3.0〜
    5.5である請求項1記載の方法。
  14. 【請求項14】脂肪酸を添加された洗液の温度が、50〜
    80℃である請求項1又は13記載の方法。
  15. 【請求項15】高HLBショ糖脂肪酸エステルが、モノエ
    ステルを80%以上含む(ジエステルとトリエステルの合
    計量が20%以下)請求項1又は2記載の方法。
  16. 【請求項16】脂肪酸を添加された洗液中に含まれる高
    HLBショ糖脂肪酸エステルの濃度が、1〜4%である請
    求項1、13又は14のいずれかに記載の方法。
  17. 【請求項17】脂肪酸の種類が、ショ糖脂肪酸エステル
    の構成脂肪酸と同一又は類似である請求項1、13、14又
    は16のいずれかに記載の方法。
  18. 【請求項18】脂肪酸を添加された洗液中に溶解してい
    る高HLBのショ糖脂肪酸エステルに対し、その1/4〜1/30
    量の脂肪酸を添加する請求項1、13、14、16又は17のい
    ずれかに記載の方法。
  19. 【請求項19】噴霧乾燥されるスラリー(泥漿)の固形
    分が、4〜40%である請求項1記載の方法。
  20. 【請求項20】噴霧乾燥時の送風空気の湿度と温度が、 (但し温度=10.0〜100.0℃) の範囲内に在る請求項1記載の方法。
  21. 【請求項21】製品の粉末状高HLBショ糖脂肪酸エステ
    ルの組成が、下記範囲内に在る請求項1記載の方法。 水分 =0.5〜5.0% 未反応脂肪酸メチルエステル =0.5〜10.0% 石鹸 =0.5〜60.0% 脂肪酸 =0.5〜10.0% ショ糖脂肪酸エステル =98.0〜15.0%
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