JP2688930B2 - 粉末状高hlbショ糖脂肪酸エステルの製造方法 - Google Patents

粉末状高hlbショ糖脂肪酸エステルの製造方法

Info

Publication number
JP2688930B2
JP2688930B2 JP18869288A JP18869288A JP2688930B2 JP 2688930 B2 JP2688930 B2 JP 2688930B2 JP 18869288 A JP18869288 A JP 18869288A JP 18869288 A JP18869288 A JP 18869288A JP 2688930 B2 JP2688930 B2 JP 2688930B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
fatty acid
reaction mixture
water
ester
unreacted
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP18869288A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH0240390A (ja
Inventor
修策 松本
由夫 畑川
明彦 中島
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
DKS CO. LTD.
Original Assignee
DKS CO. LTD.
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by DKS CO. LTD. filed Critical DKS CO. LTD.
Priority to JP18869288A priority Critical patent/JP2688930B2/ja
Publication of JPH0240390A publication Critical patent/JPH0240390A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP2688930B2 publication Critical patent/JP2688930B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Description

【発明の詳細な説明】 【産業上の利用分野】
本発明は、粉末状の高HLBショ糖脂肪酸エステルの工
業的な製造法に関する。 さらに詳しくは、本発明は、溶媒法ショ糖脂肪酸エス
テル生成反応混合物中の高HLBショ糖脂肪酸エステルを
工業的に分別、精製及び粉末化する技術に関するもので
ある。
【従来の技術】
(背景) 現在、界面活性剤として有用なショ糖脂肪酸エステル
(以後《SE》と略す)は、工業的に、ショ糖とC8〜C22
の高級脂肪酸メチルエステルとを有機溶媒(ジメチルホ
ルムアミドやジメチルスルホキシドなど)中で適当な触
媒下で反応させるか(溶媒法:特公昭35−13102)、又
は有機溶媒を用いずに、水を使ってショ糖を脂肪酸石鹸
と共に溶融混合物とした後、触媒の存在下に高級脂肪酸
メチルエステルと反応させる(水媒法:特公昭51−1448
5号)ことにより得られている。 しかし、これら二種の合成法のいづれによっても、そ
の反応混合物中には、目的とするSEの他に、未反応の
糖、未反応の脂肪酸メチルエステル、残留触媒、石鹸、
遊離脂肪酸、揮発分等の夾雑物を含んでおり、これらの
夾雑物のうち含量が規定量を越す不純分は、製品と成る
以前に除去されなければならない。特に、上記夾雑物の
うち、前者の溶媒法に伴う残留溶媒(揮発分)の除去
は、近年既製が激しく注)なって来ているだけに極めて
重要である。 注)米国FDAの規格によれば、SE中許容される残存ジ
メチルスルホキシドの量は2ppm以下である(Fed.Regis
t.,51(214),40160−1)。 ところで、上記両方法を通じ従来からSEの精製に慣用
されて来た精製手段は溶媒の利用であるが、この溶媒の
利用は、下記の如く工業的に多くの不利益をもたらす。 爆発、火災の危険性。 上のに備えた電気装置の防爆化。 上のに備えた製造装置の密閉化。 上のに備えた建物全体の耐火構造化。 上の、、による固定費の上昇。 溶媒の損耗による原価の上昇。 製品SE中に残留する残留溶媒による負効果。 従業員の健康上への悪影響、ひいてはその予防のた
めのシフト増加による口数の増大と固定費の上昇。 このような事情から、SE精製時における精製溶媒の使
用を不必要化する精製技術の開発は、当業界における切
実な要望であった。 (従来技術の問題点) そこで従来から有機溶媒を利用しない精製法が検討さ
れ、例えば代表的なものとして、 (1)酸性水溶液によるSEの沈殿方法(英国特許809,81
5(1959)) (2)一般の中性塩水溶液によるSEの沈澱法(特公昭42
−8850) などが知られている。 しかし方法(1)のように、例えば塩酸水溶液を反応
混合物中に加えると、成る程SEは直ちに沈澱するが、未
反応のショ糖は容易にグルコースと果糖とに分解、転化
し、たとえ低温(0〜5℃)で行っても分解を避けるこ
とができない。このため未反応糖の回収、再利用が困難
となる。 また、方法(2)のように、食塩や芒硝などの中性塩
の水溶液を反応混合物中に加えてもSEは直ちに沈澱す
る。この場合、未反応糖の分解は起こらないが、SE中の
有用な成分であるモノエステルが水相側に溶解してしま
うため、大きなロスを生じるのみでなく、特に近来需要
の多く、かつ本発明の目的物である高HLBのSE(以下
《高HLB−SE》とも略す)を得たいとき妨げとなる。 *親水性−親油性バランス。略1〜20の範囲の値を採
る。この値が大きい程親水性が強い。 さらにより最近の特開昭51−29417によれば、水と
“精製溶媒”(反応溶媒と区別するために、特にそう呼
ぶ)の混合溶液が軽液層(上層)と重液層(下層)に分
相する性質が利用される。即ち、一般に重液層(下層)
には水が多く含まれているので、親水性の未反応糖、触
媒由来の塩などがこの重液層(下層)に溶解している。
一方軽液層(上層)は、精製溶媒が多く含まれているの
で、SE、脂肪酸、未反応脂肪酸メチルエステル等の極性
の小さいものは、この軽液層に溶解してくる。 ところが、ジメチルスルホキシドなど反応溶媒は、下
層の重液層にも溶解するが、都合の悪いことに上層の軽
液層にも溶解するので、この方法だけで反応溶媒を完全
分離するのは不可能である。 従って、微量の反応溶媒を除去するだけの目的で、非
常に多量の精製溶媒が必要となる。 以上、反応溶媒の除去を中心に既往技術の問題点を瞥
見したが、水のみを溶媒とするSEの精製(水媒法精製)
に関連して是非とも考慮しなければならないのは、精製
された含水SEの乾燥に関する問題の克服である。 即ち、水を溶媒として使用する以上、精製された含水
SEは、通常、水分80%以上のものは水溶液状態に、また
水分80%未満のものはスラリー(泥漿)状をなしている
のが普通である。これらSEの含水物は、一般に40℃近辺
から急激に粘度が上昇し、50℃近辺で最高値となるが、
同温度を越えると急激に粘度が下がるという極めて特異
な粘性挙動を呈し(出願人会社刊《シュガーエステル物
語(1984)》108頁参照)、単に真空下で加熱して水分
を蒸発させることは、著しい発泡性のため、実質的に不
可能である。そして、もし加熱時の温度が高く、かつ加
熱体との接触時間が長い場合には、SEが分解を起こし、
強度の着色及びカラメル化を引き起すのみでなく、分解
により遊離した脂肪酸により酸価も上昇してくる(特公
昭37−9966参照)。 特に水分蒸発の終期には、SEの持つ軟化点又は融点の
低さという特性(例えば、ショ糖モノステアレートの軟
化点は52℃近辺、ショ糖ジステアレートの融点は110℃
の近辺)のため、SE自体が残存している水を抱水する傾
向を持ち、このことが脱水を著しく困難とする。加え
て、溶媒と比較して水の蒸発潜熱が異常に高い(500kca
l/kg・H2O以上)こと及び蒸発温度の高いこと等も乾燥
を困難ならしめる一因となっている。 それ故、例えば別形式の乾燥法として、スラリーを加
熱して連続的に真空室へ供給、放出させる所謂フラッシ
ュ式の乾燥機を用いた場合においても、水の持つ大きな
潜熱のため、充分な脱水、乾燥には種々の困難がつき纏
い、たとえこれらの困難を克服できたとしても、真空下
で脱水、乾燥された後のSEは、溶融状態にあるため、そ
れを乾燥機より取出してから融点以下まで冷風等を吹き
つけて冷却し、固化させ、最後に粉砕機で粉砕するとい
う多くの工程を必要とし、しかも最終の粉砕工程では粉
塵爆発の懸念が附髄する。それ故、これらの乾燥に関連
する困難性も従来溶媒法精製が慣用されてきた一因と推
定される。従って、以上のような乾燥に伴う諸問題点を
解決することも、本水媒法精製を実現するための重要な
ステップとなる。
【発明が解決しようとする課題】
以上の実情に鑑み、本発明は、溶媒法で合成された粗
SEの精製に際し、精製用溶媒を使用しないで、高HLB−S
Eを分別、精製及び乾燥、粉末化する技術を確立するの
を目的とする。 (発明の経緯) そこで本発明者は、(イ)水相側に溶解するSE量を最
小限に押えること、及び(ロ)未反応糖の分解を避ける
ことを目標として多くの塩析実験を行なった結果、中性
塩を反応混合物の水溶液中に溶解させたとき、適当なp
H、温度、中性塩の濃度及び水量の組合せの下で、多く
の割合でSEが沈澱するのみならず、意外なことに、水相
には未反応の糖以外に反応溶媒その他の不純物が溶解す
るに至るという、都合の良い現象を見出した。従ってこ
の現象を利用して、沈澱したSEを再度中性塩水溶液によ
る洗浄操作を反復することにより、SEの損失を最小限に
とどめながら、残留する揮発分(残留する反応溶媒)を
略々水相中に移行させることができること、更に沈澱し
たSEに随伴している中性塩は、該沈殿を適当なpHの酸性
水で洗浄することにより実質的に除去されて、SEを精製
できること、及び上の酸洗液中には、高HLB−SEが溶解
することが明らかとなり、ここに、HLBの低いSEの精製
を兼ねて高HLB−SEを分別できるという新規な知見が得
られた。そして更に、以上の酸洗により得られた高HLB
−SEを溶解している水溶液を限外濾過膜と接触させるこ
とによって、該水溶液中の高HLB−SEを効率的に水溶液
の状態で分離、回収されるだけでなく、この水溶液は、
噴霧乾燥手段により、品質の低下なしに粉末化できるこ
とが発見された。このような一連の技術は此迄知られて
おらず、発明者の研究により始めて確立された新規技術
である。 (概要) 本発明は、上記知見に基づくもので、目的物のショ糖
脂肪酸エステルの他、未反応の糖、未反応の脂肪酸メチ
ルエステル、触媒、石鹸、脂肪酸及び揮発分を含む反応
混合物を、中性領域のpHに調整し、水、中性塩を加える
ことにより生じる沈澱物を酸性の水で洗浄し、洗液を中
和後、限外濾過した後、噴霧乾燥することを特徴とする
粉末状高HLBショ糖脂肪酸エステルの製造方法を要旨と
するものである。以下、発明に関連する種々の事項につ
き分説する。 (発明の骨格) 従って、本発明は以下の諸工程から成り立つ。 (I)粗製のSE反応混合物からの不純物の除去工程(塩
析工程)。 (II)不純SE沈殿を洗浄する工程(分別工程)。 (III)高HLB−SEを水溶液状態で回収する工程(限外濾
過工程)。 (IV)高HLB−SEの水溶液を乾燥、粉末化する工程(噴
霧乾燥工程)。 以下、発明に関連する種々の事項につき分説する。 (溶媒法によるSEの合成) 溶媒法によるSEの合成においては、通常、ショ糖と脂
肪酸メチルエステルとの混合物を、これらの合計量に対
し数倍量の反応溶媒、例えばジメチルスルホキシドに添
加、溶解させ、炭酸カリウム(K2CO3)等のアルカリ性
触媒の存在下、真空20〜30Torr近辺で数時間80〜90℃に
保持することにより、容易に90%以上の反応率(脂肪酸
メチルエステル基準)にてSE反応混合物が生成する。 次に、SE反応混合物中のアルカリ性触媒の活性を消失
させるため、乳酸、酢酸等の有機酸又は塩酸、硫酸等の
鉱酸を当量だけSE反応混合物に添加する。この中和によ
り、触媒は、乳酸カリウム等のカリウム塩に変化する。 最後に、反応溶媒、例えばジメチルスルホキシドを真
空下に留去すると、大略、下記組成範囲の混合物(中和
及び蒸留後の反応混合物)となる。 ショ糖脂肪酸エステル=15.0〜92% 未反応糖=1.0〜80% 未反応脂肪酸メチルエステル=0.5〜10% 炭酸カリウム由来の中性塩=0.05〜7% 石鹸=1.0〜10% 脂肪酸=0.5〜10% 揮発分(残留する反応溶媒)=5.0〜30% このとき、SEのエステル分布は、モノエステル10〜75
%(ジエステル以上が90〜25%)である。そして、脂肪
酸メチルエステル、石鹸及び脂肪酸の夫々に主として含
まれる脂肪酸根は、飽和であって、共通のC16〜C22の炭
素数を持つ。 (加水) 次に、上の反応混合物に対して水を、 水:反応混合物=5:1〜40:1(重量比) ……(1) 式の割合になるように、更に望ましくは、 水:反応混合物=20:1(重量比) ……(2)式 の割合に加えると共に、pHを6.2〜8.2、望ましくはpH7.
5とする。 この重合、水の添加割合が上の範囲から外れ、例え
ば、水と反応混合物との量比が5未満となった場合は、
得られた水溶液の粘度が大となり、実質的に以後の操作
が困難となる。また、逆に、水と反応混合物との量比が
40超過となる程に過剰の水を加えた場合は、粘度が小と
なって以後の操作が容易となり、かつ、目的とする反応
溶媒の除去も好適に行われるが、反面、未反応糖等の回
収に際して水分の除去に多大のエネルギーコストを必要
とすることになって、経済性が失われることになる。 さらに、目的とするSEの分解を避けるため、水溶液は
pH6.2〜8.2の間に調整されるのが好ましい。pH8.2以上
の水素イオン濃度下では、アルカリによる定量的なSEの
分解が起こる心配があり、またpH6.2以下の弱酸性域で
も、例えば90℃以上の高温にさらされると、酸分解の恐
れがある。 (塩析) 以上の如くpH調整されたSE反応混合物の水溶液を、な
るべく50〜80℃に保って、更に中性塩を加える。 本発明者らは、多数の実験の結果より、中性塩を加え
て得たSEの沈澱を含む水溶液を、50〜80℃まで加熱、昇
温させると、水相側へ溶出するSEの量を最少限に押える
ことができ、たとえ本反応混合物中に含まれる揮発分
(残留する反応溶媒)の組成が3.0〜30.0%と大幅に変
動しても、多くの割合のSEが沈澱することを発見した。
このような中性塩の添加のみでSEが沈殿し、揮発分が水
相側へ移行するという現象は特異な現象であると共に、
水を使用しないで反応混合物中の揮発分を除くという発
明目的上、重要な意義を有するものである。 今、水相側に溶解しているSEの重量=Y[g] 沈澱しているSEの重量=X[g] 全SE(X+Y)[g]に対して、水相側に溶解している
SEの重量割合=φ[%] とすれば、φは下式(3)で定義される。 ここで、以下の試料反応混合物(乾物)を20倍量(重
量比)の水に溶かし(pH7.8)て75℃に加熱し、 脂肪酸残基=ステラリン酸 試料中のSE組成(乾物) ショ糖脂肪酸エステル=94% (エステル分布:モノエステル73%、ジエステル以上=
27%) 未反応脂肪酸メチルエステル=2% 石鹸=2% 脂肪酸=1% その他=1% これに種々の濃度に中性塩を加えると、添加塩が食塩、
芒硝、乳酸カリウム又は酢酸カリウムであるとき、概ね
下表−1の結果が得られる。 上表から明らかなように、合計塩の量が増える程φの
値は減少するが、3.5%を超えると減少傾向は緩やかと
なり、7.5%以上に増大してもこの値が小さくならない
ことが分る。なお、以上の傾向は、当初の反応混合物中
に含まれる揮発分(残留反応溶媒)の量比が3.0〜30.0
%と大幅に変化しようとも殆ど影響を受けないことも確
かめられた。即ち、このようなSE−水−塩の三成分系に
おいては、揮発分の量が大幅に変化し、また添加中性塩
の種類が変化しても、合計塩の濃度によってのみφの値
が定まるのである。この理由は未だ明白でないが、一つ
の原因として、SEのミセル集合体の形成度合と、塩の奏
する、所謂塩析効果が複雑に絡み合っていることは確か
であろう。 以上の塩析作用の程度は、換言すればφの値は、SEの
エステル分布及びSE中の脂肪酸残基の種類によって幾分
変動するが、合計塩量が6%(水94%)を越えてもφの
値が減少しないという傾向は同じである。逆に言うと、
該量が6%(水94%)未満の場合には、φの値が増加
し、SEの溶解損失を増やすので望ましくない。従って、
φの値を小さくするには、塩量を6%(水94%)以上に
保つことにより、水層側へのSEの溶解損失を最小限に押
えることができる。 (洗浄) 以上の塩析操作の後、pH3.0〜5.5、温度10〜40℃程度
に調整、調温された酸性水を用いて、前述の分離された
SEのケーキを洗浄する。ここに使用される酸としては、
例えば塩酸、硫酸等の鉱酸、及び酢酸、乳酸等の可食性
有機酸が適当であるが、別段例示のもののみに限る訳で
はない。 このような条件の下で洗浄することにより、ケーキ側
から不純物を水相側に移行させることができる。 以下、下表−2に、この酸性水による洗浄をステアリ
ン酸メチルエステルより出発したSE(ショ糖ステアレー
ト)に適用した場合における水層側へのSEの溶解量を例
示する。表中、φは上式(3)で定義されたものであ
る。 以上の洗浄工程において、酸性水の温度が40℃以上と
もなると、操作が長時間、極端には数ヶ月もの長期に及
んだ場合SEの酸分解が懸念されるだけでなく、粘度が上
昇して操作が困難となる。 他方、10℃以下の低温の保持には、経済性を軽視した
冷凍機の設備が必要となる。従って、普通は10〜40℃、
殊に常温付近での操業が好ましい。 なお、この酸性水によるSEケーキの洗浄に際しては、
本ケーキ中に含まれている未反応糖、添加中性塩及び触
媒の中和により副生した塩の三者を、可能な限りSEケー
キから除く必要があるので、SEケーキは、該酸性水中
で、可能な限り小さな粒子径になるまで細分化されてい
るのが望ましい。この目的は、例えば、分散混合機(例
えば特殊機器工業(株)製《ホモミキサー》)、ホモジ
ナイザー又はコロイドミル(例えば商品名《マイコロイ
ダー》)等の細分化装置により効率的に達成でき、未反
応糖、触媒由来の塩及び中性塩の三者は、全量沈澱SEの
ケーキから酸性水相中に移行する。このとき、沈澱物か
ら、高いHLBのSEが酸性の水側へ溶け始めるという注目
すべき現象が起こる。この高HLB−SEの水に対する溶解
傾向は、系の温度、pH等の要因によって変化するが、例
えば常温でpHが3.5程度の場合、添付第1図の通りであ
る。 ここで、高いHLBのSEは高い水溶性を持っているの
で、仮にこれを《水溶性SE》と名付け、符号として“Y"
を与える。Yは高いHLBを持ち、従って高い水溶性を示
す。このため、酸性の水溶液中でも沈殿せず、該溶液内
に普通に溶解する。 これに反し、低いHLBのSEは低い水溶性を持つので、
一般に、一定の酸性の水素イオン濃度下では沈殿する傾
向がある。そこで、仮にこれを《沈澱性SE》と名付け、
符合として“X"を与える。Xは低いHLBを持ち、従って
酸性水溶液中から沈殿し易い。 上記第1図は、モノエステル、ジエステル及びトリエ
ステル三者の合計を100%で表わした三角座標である。 同図において、M点は、元のサンプルSEの組成を表
す。X点は、低いHLBのSEで沈澱性SEの組成を表す。Y
点は、高HLBのSEで、水溶性SEの組成を表す。添字1、
2、3は、夫々エステル分布の異なるSEを表す。 今、例えば同図において、M2なるエステル分布(モノ
エステル=73%、ジエステル=22%、トリエステル=5
%)を持つSEサンプルにSE濃度として3%になるように
pH3.5の水溶液を加えれば、該SEは沈澱性SE(X2)なる
エステル分布(モノエステル=68%、ジエステル=25
%、トリエステル=7%)と、水溶性SE(Y2)なるエス
テル分布(モノエステル=84%、ジエステル=13%、ト
リエステル=3%)に分割されることが示される。分割
されるX2とY2の重量は、三角座標の性質から、 WM2=WX2+WY2 ……(a) (但し、▲▲は、M2点とY2点間の距離、▲
▲は、X2点とM2点間の距離、WM2はM2の重量、WX2
X2の重量、WY2はY2の重量、但し、以上乾物の重量とす
る。)なる(a)、(b)両式を解くことによって、WX
2及びWY2が求められる。 このように、相対的にモノエステル含量の高いSE(即
ち、HLBの高いSE)は、酸性水の方に溶解し易く、相対
的にモノエステルの低いSE(即ち、HLBの低いSE)は、
沈澱側に存在し易いという性質を巧妙に利用することに
よって、SEを高HLBのものと低HLBのものとに定量的に分
割できる。なお、一般的にSE中のモノエステル含有率が
高い程、水へ溶解するSE(Y)の量が増加し、その逆の
場合は水へ溶解するSE(Y)の量が減少するという傾向
も併せて発見した。そしてSEがどれ程酸性中に溶解する
かは、表−2のデータで与えられるφの値を式(a)及
び(b)に代入してWX及びWYの値を解くことによって、
定量的に求めることができる。 かくして、本洗浄工程で得られた酸性水溶液は、相対
的に多量の高HLB−SEを含むので、低HLBのSEを主体とす
る沈澱SEと濾過又は遠心して分離する。得られた濾液
(又は上澄み)は、高HLBのSEの他に、より少量の残存
揮発分(ジメチルスルホキシド等)、塩、ショ糖等を含
んでいるので、製品化のためには更に精製される必要が
ある。 (限外濾過) そこで本発明者らは、上記の不純な高HLB−SE含有濾
液中より夾雑する少量の揮発分、塩、ショ糖を除去する
手段につき鋭意検討を加えた結果、限外濾過膜の利用が
この目的に有効であることを知った。 SEが、水溶液中で一定の条件下で相互に合一して高分
子量のミセル構造の集合体を作ることは、公知(前掲書
102頁参照)である。 ところで、SEの種類であるが、ショ糖の分子の3個の
第一級水酸基の酸素原子のいづれかに、夫々1〜3個の
脂肪酸残基が結合したものを夫々モノエステル、ジエス
テル及びトリエステルと称している。そして周知の如
く、モノエステルは、親水性がジエステルやトリエステ
ルに比較して大きい代りに、水中におけるミセル形成の
度合いが小さいので、比較的低分子量の(分子の直径の
小さい)SEミセル集合体を形成する。逆に、ジエステル
やトリエステルは、親水性が比較的小さい代りにミセル
形成能が極めて大きいので、水中では、極めて大きな分
子量の(即ち、分子径の大きい)SEミセル集合体を形成
する。市販のSEでは、モノエステル単品として製造され
ることは稀であって、通常はモノエステルの含量が、例
えば70%、50%、30%・・・といった混合組成物として
製造されている。 本発明者らは、例えば、モノエステルの含量が70%と
多いSEは、モノエステル含量が50%のSEに比べて、より
低分子量のSE集合体を作るので、その分、集合体の微視
的径が小さいこと、従って、一定の孔径を有する限外濾
過膜に対してモノエステル含有量50%のSEよりも通過し
易く、このため、未反応の糖や触媒からの副生塩(触媒
を酸で中和して塩としたもの)、揮発分等と一緒に膜を
通過してしまい易いという望ましくない傾向を有するこ
とを知った。そこで本発明者らは、これに対する対策と
して、モノエステル含量の高い不純SEから未反応の糖、
触媒由来の塩、揮発分等を除去したい場合は、分画分子
量の小さい(即ち、孔径の小さい)濾過膜を選定するの
がよいこと、及び逆にモノエステル含量の低いSEの場合
には、分画分子量の大きい(即ち、孔径の大きい)濾過
膜を選定するのが処理速度を速めるのに都合であること
を見出した。 なお、発明者らは、反応混合物に含まれている物質の
うち、未反応の脂肪酸メチルエステル、石鹸及び脂肪酸
の三者は、SEのミセル構造集合体中に内包された状態で
存在するため、SEとそれらの三者を濾過手段により分離
するのは事実上不可能であることも、多くの実験結果か
ら確認した。 そして多くの実験から、結論として言えることは、圧
力を駆動源として限外濾過膜(適当な分画分子量を持
つ)を水と共に通過できる不純物質は、未反応の糖を含
むショ糖、触媒由来の塩、添加された中性塩類、及び揮
発分(ジメチルスルホキシドやジメチルホルムアミド
等、SE合成に際し溶媒として用いられた、極性が強く、
水溶性が大で、かつショ糖と親和性の大きい物質)の四
者であり、一方、高分子量のミセル集合体中に取り込ま
れて濾過膜を通過できない物質は、SE、未反応の脂肪酸
メチルエステル、石鹸及び遊離脂肪酸等である。 本工程は、これらの事実を巧妙に利用すると共に、適
当な分画分子量を持つ限外濾過膜の選定によって、未反
応の糖、触媒由来の塩及び揮発分の三者をSE、未反応の
脂肪酸メチルエステル、石鹸及び脂肪酸の四者から分
離、除去しようとするものである。 《濾過対象物質の分子量》 適当な分画分子量を持つ限外濾過膜を選定するために
は、対象物質の大略の分子量を知っておく必要がある。
発明と関連するこれら単一物質の分子量は、以下の通り
である。 ○ショ糖=342 ○未反応の脂肪酸メチルエステル ステアリン酸メチルエステル=290 ○触媒(K2CO3)の中和により発生する塩 乳酸を使う場合→乳酸カリウム=128 酢酸を使う場合→酢酸カリウム=98 ○揮発分 ジメチルスルホキシド=78 ジメチルホルムアミド=73 ○SE(ミセル集合体を作らない単量体として) ショ糖モノステアレート=600 ショ糖ジステアレート=858 ショ糖トリステアレート=1116 ○石鹸 ステアリン酸ナトリウム=298 ステアリン酸カリウム=314 ○脂肪酸 ステアリン酸=276 ○水=18 ところで、SEのミセル構造の集合体の見掛け分子量
(以下《SEミセル集合体の分子量》と称す)について
は、以下のように仮定する。 実際の水溶液中のSEは、水中にてミセル集合体を形成
しているから、例えば、SEのミセル会合数が10個の場
合、該ミセル集合体の分子量は、モノエステル100%と
して、 ◇モノエステル単量体の分子量(600)×10=6,000 ジエステル100%として、 ◇ジエステル単量体の分子量(850)X10=8,580 トリエステル100%として、 ◇トリエステルの分子量(1,116)X10=11,160 実際のSEは、モノエステル、ジエステル及びトリエス
テルの混合物であるから、SEのミセル集合体の分子量と
しては、その平均分子量を定義するのがよい。 《限外濾過膜の分画分子量》 発明目的に適った膜の選定は、次のようにして行な
う。 先ず、分画分子量が200の濾過膜では、本膜へ水溶液
状態の反応混合物を与圧しながら供給して、未反応糖と
触媒(K2CO3)から生じた塩及び揮発分の除去を狙って
も、その限外濾過膜で、分離され得るのは、限外濾過膜
の分画分子量200よりも低い分子量を持つ水、触媒(K2C
O3)から生じた塩及び揮発分のみである。分画分子量20
0より大きい分子量342のショ糖は、全く限外濾過膜を透
過しないから、未反応糖はSEから分離、除去できない。 ところが、分画分子量が5,000の限外濾過膜の場合で
は、ショ糖、触媒からの塩及び揮発分は、夫々の分子量
が5,000より小さいので、限外濾過膜の微孔を容易に通
過できる。SEは、前述の通りミセル集合体を構成し、ミ
セル会合数を例えば10個と仮定すると、そのSEミセル集
合体の分子量は6,000以上と推定されるから、濾過膜の
分画分子量が5,000より大きいと該ミセル集合体が微孔
を通過できないものと推定されるが、この推定は実験的
に確認された。 別に、分画分子量1,000の濾過膜の場合についても検
討したが、結果は予想の通りであった。 このように、限外濾過膜の分画分子量を適当に選定す
ることによって、不純なSEから未反応糖を含む不純物の
除去が可能となる。 《限外濾過膜の具備すべき条件》 SE反応混合物に含まれる未反応糖と、触媒(K2CO3
から副生した塩と、揮発分との三者をSE、石鹸、未反応
の脂肪酸メチルエステル及び脂肪酸の四者より分離しよ
うとする場合、限外濾過膜の具備すべき条件は、該膜が
適当な分画分子量を有する場合、 物理的な外力に対し、抵抗力があること。 耐熱性を有し、微生物によって分解されないこと。 適当な分画分子量を持ち、処理能力の大きいこと。 耐用年数が長いこと。 経済的な価格で入手できること。 等である。 近年の限外濾過膜の製造における技術の進歩には著し
いものがあるから、市販のものでも上の条件を満たして
いるものが見出される。 《限外濾過条件》 前工程で得られた水溶性の高HLB−SE(Y)を含む水
溶液は、本限外濾過に先立ち酸を加えて中和し、液性を
pH6.2〜8.2、望ましくはpH7.5付近に調整しておく。中
和された被処理液のpHが8.2を超えるとSEの分解が進
み、またpH6.2未満ではSEのミセル集合体が形成され難
くなるため、限外濾過膜からSEが流れ出したり、細孔が
詰まったりするので好ましくない。 濾過時の水溶液の温度は、脂肪酸メチルエステルの種
類とは無関係に80℃以下の温度が好ましく、同温度を超
えるとSEが分解する懸念がある。発明者らは、該温度
が、特に40〜60℃の温度範囲内に在るとき、最大の濾過
速度が得られることを見出した。即ち、濾過温度を40〜
60℃、好ましくは約50℃に調節すると、後述の理由で、
未反応糖、触媒(K2CO3)由来の副生塩及び添加中性塩
並びに揮発分(ジメチルスルホキシドやジメチルホルム
アミド)の四者は、水と共に最も効率良く濾過膜を通過
する。この理由としては40〜60℃の温度領域に於てSEの
ミセル集合体の分子が巨大化する結果、ミセル集合体の
総数が減少し、未反応糖等の元来ミセル集合体の形成に
関与しない物質がSEの抵抗を受け難くなり、その分、未
反応糖等が通過し易くなることに困るものと推測され
る。困に、公知の如く、SE水溶液は一般に40〜60℃の間
で最大の粘度を示す(上掲書103頁参照)が、これは、
その温度範囲内で最大の分子量を持ち得ることを示唆す
るものであり、この事実からも、40〜60℃の範囲で未反
応糖等が最大の通過速度を示す理由を説明することが可
能である。 かくして、40〜60℃に維持されたSEを含む反応混合物
水溶液を、ポンプにより1〜20Kg/cm2Gまで加圧して駆
動源としての圧力をかけ、pH6.2〜8.2の水素イオン濃度
領域で限外濾過膜に接触させる。ここに濾過膜として、
セルロース系のものは物理的に弱いだけでなく、かつ微
生物にも侵され易いので、実用上余り望ましくない。実
用的に好適であるのは、支持層で補強されたポリスルホ
ン製もしくはポリ弗化ビニリデン製の膜である。これら
両種の濾過膜は、現在市販されており、本膜は、耐熱
性、耐酸性及び耐アルカリ性に優れるのみでなく、物理
的外力にも強く、しかも微生物が膜面で増殖することも
ない。 前述の通り、濾過膜の分画分子量の決定に際しては、
SEの洩れなしに未反応糖等の分離が効率よく行なわれ、
かつ濾過速度も大である範囲のものを選定することが重
要である。発明者らは、検討の結果、SEの洩れがなく、
未反応糖、副生塩及び揮発分の分離性が損なわれず、し
かも濾過速度が大であるという希望条件を満たす膜の分
画分子量として、1,000〜100,000の範囲内のものが好適
であること、及び、とりわけSEの洩れがなく、しかも工
業的な規模での処理に適したものとして、分画分子量5,
000の濾過膜が最も好ましいことを発見した。5,000超過
の分画分子量のものでは、僅かではあるがSEの洩れが発
生し、逆に5,000未満の分画分子量の膜では、濾過速度
が減少する。しかしいづれの場合でも、工業的に採算に
乗らない程の不利益をもたらすものではない。 現在市販の濾過膜のうちで、発明目的に適うものとし
ては、例えば東レエンジニアリング(株)の販売に係る
限界濾過膜のうち、商品名《TERP−E−5》(ポリ弗化
ビニリデン系)、《TERP−HF−10》(ポリスルホン系)
及び《TERP−HF−100》(ポリスルホン系)等がある。 以上の限外濾過処理により、塩析沈殿の酸洗液中から
揮発分、ショ糖分、塩類当の夾雑物を除去された高純度
の高HLB−SE(Y)が普通5〜15%の水溶液の形で回収
される。 (中和泥漿) かくして精製された含水状態のSEは泥漿(スラリー)
状である。得られたスラリーは、未反応の糖、触媒起源
の塩、塩析に際して添加された中性塩を含まないが、S
E、未反応の脂肪酸メチルエステル、石鹸及び脂肪酸の
四者を含み、固形分1〜50%、水分99〜50%の範囲に調
整されることが多い。 本スラリー中の固形分の量は、後述の乾燥のため、大
略40%以下であるのが好ましいが、固形分の量比が過小
であることは、乾燥のエネルギーコストの面から望まし
くなく、通常、4%以上の値とするのが経済的に好まし
い。 (噴霧乾燥) 含水SEは、一般に水分80%以上では水溶液状、80%未
満では泥漿状をなすことが多い。このような性状の含水
SEを常法のように真空乾燥するのは既に
【従来の技術】
項中で詳述したとおり非常に困難であって、このことも
従来水媒法精製が実用化しなかった原因の一つであろう
と付度される。 しかるに本発明者らは、多数の実験結果より、噴霧乾
燥法が、固形分40〜96%のSEスラリーの脱水乾燥に最適
の方法であることを見出した。因に、既述の如く、所謂
溝型の撹拌型乾燥機で代表される通常の真空乾燥機を用
いた場合も、また、スラリーを連続的に供給し、加熱し
て真空室に放出させる所謂フラッシュ式の乾燥機を用い
た場合も、SEの持つ粘度特性や低融点という性質のた
め、被処理SEの酸価の上昇、着色、カラメル化などの品
質低下現象を回避することができず、更に後者の場合に
は、なお粉塵爆発の危険性も無視できない。しかるに、
発明者らが見出した噴霧乾燥手段の採用によれば、既往
SE乾燥手段の欠点を一挙に解決することができる。 本発明における乾燥工程では、スラリー状態の含水SE
を、ポンプを介して噴霧乾燥塔へ連続的に供給し、ノズ
ルによる噴霧又は回転円盤(ディスク)の遠心力により
微細な霧状微粒子に分割して乾燥気流と接触させる。こ
れにより水の蒸発面積が著しく大きくなり、このため極
めて短時間内(噴霧してから数秒以内)に脱水、乾燥を
完了し得る。なお霧化手段としては、含水SEの粘度が大
であるため、回転円盤の利用が望ましい。 (噴霧乾燥条件) SEの溶液又はスラリーの供給温度は40〜80℃の間で任
意に変更できるが、品質面の考慮から望ましくは40〜60
℃の範囲内の温度を選ぶ。 上記溶液又は泥漿を回転円盤により霧化させる場合、
例えば円盤の直径が5〜10cmφのときは、15,000〜24,0
00rpmの回転数が適当である。 塔内へ送風される空気は、溶液又は泥漿中の水分を蒸
発させるに必要な熱量以上を保有すべきであり、従って
空気温度が低い場合は、より多量の空気量が必要であ
る。この際の空気温度は10〜100℃の広範囲であってよ
いが、対象SEの乾燥効率と熱分解防止とを考慮して、60
〜80℃の間の温度を選ぶのが有利である。 送風空気中の湿度も前記の空気温度と共に乾燥効率に
関係する。作業上好適な絶対湿度は、大略、 の範囲であるが、特に、 の範囲にあるのが経済的である。 噴霧乾燥塔へ送る泥漿中の固形分濃度が40%を超える
と、粘度が著しく増大する結果、噴霧されたスラリーの
粒子径は相対的に大きくなり、その分、水の乾燥が遅く
なり、結果として乾燥塔の内壁に付着し易くなる。故
に、スラリー中の固形分濃度を40%以下に調整するのが
よい。スラリーの固形分濃度が40%以下であれば、噴霧
された液滴の直径が40%超過の場合より小となり、乾燥
され易くなるから、乾燥塔の内壁に付着する懸念もなく
なる。尤も、スラリーの固形分濃度が、例えば3%未満
のように小さくなると、乾燥は容易となるが、所要エネ
ルギーの面から不経済である。従って、噴霧乾燥塔への
スラリー供給濃度としては、4%〜40%の範囲が適して
いる。 噴霧乾燥塔の所要容積、所要塔径、所要高さなどの諸
条件は、以上の噴霧条件を前提に設計される。塔の設計
及び作業条件が適当であれば、水分5%以下の粉末化さ
れた乾燥SEが、噴霧乾燥塔の下部より連続的に排出され
る。得られた製品は、熱履歴が短いため品質的に極めて
優れ、かつ乾燥作業用の人員を殆ど必要としない。
【作用】
未反応の糖、未反応の脂肪酸メチルエステル、触媒、
石鹸、脂肪酸及び揮発分(残留する反応溶媒)を含むシ
ョ糖脂肪酸エステル生成反応混合物に酸を加えて中性領
域のpHに調整後、水及び中性塩を加えて適当な温度下に
塩析すると、ショ糖脂肪酸エステル、未反応の脂肪酸メ
チルエステル、石鹸及び脂肪酸が沈殿すると共に、揮発
分(残留する反応溶媒)が水相側に移行するので、全く
有機溶媒を使用せずに残留揮発分を除去することができ
る。 次いで、この沈殿を酸性の水で洗浄し、洗液を限外濾
過することによって、夾雑揮発分や、ショ糖、加えられ
た中性塩及び触媒の中和により副生した塩等の不純物が
除去された高純度の高HLB−SEの水溶液が得られ、更
に、このSE水溶液を中和後、噴霧乾燥することによっ
て、全く精製用溶媒を使用せずに、高いHLB値を持つ粉
末状SEの工業敵生産が可能となる。なお、上の酸洗工程
に際し、沈澱側に残留したSEは、高純度の低HLB−SEで
あるから、ここに粗製のSEの精製を兼ねて高HLBのもの
と低HLBのものとに分別する目的が併せて達成されるこ
とになる。
【実施例】
以下、実施例により発明実施の態様及び効果を説明す
るが、例示は勿論説明のためのものであって、発明思想
の限定又は制限を意図したものではない。 実施例1 下表−3の組成で表される溶媒法SE反応混合物から反
応溶媒を留去した残渣を、乳酸で中和後、乾燥させた乾
物(ドライマター)100kgに水2,000kgを加えて溶解させ
た。 この水溶液に50%乳酸カリウム254.0kgを加えて、75
℃まで加熱、昇温させ、沈澱したケーキ(ケーキ水分=
48.1%)を濾取し、真空下に80℃で乾燥後、得られた固
形分の組成を調べた結果は下表−4の通りであった。 なお、ケーキより濾別された濾液中のSE量を、ゲル濾
過クロマトグラフィー(GPC)法(上掲書63頁記載)で
測定したところ、SEの損失は当初量の1.5%であった。 上記ケーキ63.0kgとそれに随伴する水分59.0kgとから
なるスラリー(合計122.0kg)に対し常温酢酸水(pH4.
5)2,000kgを加えたところ、直ちにSEが白色沈殿として
析出した。 次いで、この沈殿を含む弱酸性の水溶液(pH4.5)を
ホモミキサー(特殊機器工業(株)製)で、充分撹拌し
た後、沈澱を濾別して濾液を得た。濾別された沈澱に再
び上記酢酸水の同量を加え、同様に再洗浄する操作を計
5回繰り返すことによって得られた濾液計10,000kgに苛
性ソーダを加えてpHを中性に調整した後、50℃に加温
し、東レエンジニアリング(株)販売の限外濾過膜《TE
RP−E−5》(分画分子量5,000)を装置した膜面積8m2
のスパイラル型4″円筒形加圧濾過ユニット(10本一
組)へ以下の条件で送液した。 送液圧力9.5kg/cm2G 濾過膜の循環速度=95.0〜88.0(kg/分) 濾過膜の排出速度=15.0〜22.0(kg/分) 濾過温度=50.0℃ 濾過時間=8時間 その結果、濾過膜を通して透過液9,750kgが排出さ
れ、他方、濃縮液250.0kgが残留した。この濃縮液(25
0.0kg)の組成は下表−5の通りであった。 上表から明らかなように、SE中のモノエステル含量が
当初の含有率50%に比べて大巾に高くなっており、それ
に応じてHLBの値も向上していた。 実施例2 前実施例−1で得られた溶質濃度2.5%の濃縮液(250
kg)を通常の真空缶を用い、50〜100Torr、70〜80℃の
条件で濃縮し、溶質濃度を7.5%に高めた。この濃縮液8
1.6kgを50℃に保ったまま、噴霧乾燥塔へ供給し、噴霧
乾燥した。乾燥条件は、 噴霧乾燥塔の直径:2.0mφ 直筒部の長さ:1.5m 回転円盤(ディスク)径:10cmφ 円盤回転数:20,000rpm 入口空気温度:52℃ であった。 噴霧乾燥塔の下部から得られた粉末状SEは、水分1.65
%、嵩比重0.46で、過熱による着色も無く、流動性のよ
いものであった。 乾燥は安定して継続でき、当初心配された、粉末が噴
霧乾燥塔の内部壁に付着する等のトラブルはみられなか
った。 なお、SE中のモノエステル量は乾燥前後を通じ63.0%
と全く変化がなく、かつ、酸価にも変化がなかった。
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明は、溶媒法ショ糖脂肪酸エ
ステル反応混合物から精製用溶媒を使用しないで、工業
的に、高純度の粉末状高HLBショ糖脂肪酸エステルの分
別、生産を可能ならしめると共に、併せて精製された低
HLBショ糖脂肪酸エステルを分別、取得する手段を提供
し得たことによって、以下のような多大の工業的効果を
奏する。 (1)安価な水のみを用いてショ糖脂肪酸エステルの精
製が可能となること。 (2)溶剤の爆発、火災の心配がなく、従って、防爆仕
様の高価な電気装置も不要となること。 (3)精製用溶媒が製品に混入する懸念がないこと。 (4)職場の衛生環境が向上すること。 (5)低費用で工業化できること。
【図面の簡単な説明】
第1図は、SEのエステル組成と酸性水への溶媒度の関係
を示す三元グラフである。

Claims (20)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】目的物のショ糖脂肪酸エステルの他、未反
    応の糖 未反応の脂肪酸メチルエステル、触媒、石鹸、
    脂肪酸及び揮発分を含む反応混合物を、中性領域のpHに
    調整し、水、中性塩を加えることにより生じる沈澱物を
    酸性の水で洗浄し、洗液を中和後、限外濾過した後、噴
    霧乾燥することを特徴とする粉末状高HLBショ糖脂肪酸
    エステルの製造方法。
  2. 【請求項2】反応混合物の組成が、 ショ糖脂肪酸エステル=15.0〜92% 未反応のショ糖=1.0〜80.0% 未反応の脂肪酸メチルエステル=0.5〜10.0% 触媒=0.05〜7.0% 石鹸=1.0〜10.0% 脂肪酸=0.5〜10.0% 揮発分=5.0〜30.0% である請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】反応混合物が、pH6.2〜8.2に調整される請
    求項1記載の方法。
  4. 【請求項4】pH調整後の反応混合物が、50〜80℃に加熱
    される請求項1記載の方法。
  5. 【請求項5】反応混合物に加えられる水と反応混合物の
    重量比が、水:反応混合物=5:1〜40:1である請求項1
    記載の方法。
  6. 【請求項6】反応混合物のpHの調整に使用される酸が、
    乳酸、酢酸、塩酸及び硫酸からなる群から選ばれた酸の
    いずれかである請求項1又は3記載の方法。
  7. 【請求項7】反応混合物中の脂肪酸メチルエステル、石
    鹸及び脂肪酸の夫々に主として含まれる脂肪酸根が、炭
    素数が16〜22の共通飽和脂肪酸根を持つ請求項1又は2
    記載の方法。
  8. 【請求項8】反応混合物中の揮発分(残留する反応溶
    媒)の成分が、ジメチルスルホキシド又はジメチルホル
    ムアミドである請求項1又は2記載の方法。
  9. 【請求項9】反応混合物に加えられる中性塩が、食塩、
    芒硝、乳酸カリウム及び酢酸カリウムからなる群から選
    ばれた塩のいずれかであって、かつ、水/中性塩94/6
    (重量比)である請求項1記載の方法。
  10. 【請求項10】ショ糖脂肪酸エステルのエステル分布
    が、モノエステル含分として、10〜75%(ジエステル以
    上が90〜25%)である請求項1又は2記載の方法。
  11. 【請求項11】酸性の水のpH値が、3.0〜5.5である請求
    項1記載の方法。
  12. 【請求項12】酸性の水の温度が、10〜40℃である請求
    項1又は11記載の方法。
  13. 【請求項13】限外濾過膜が、ポリスルホン系又はポリ
    弗化ビニリデン系の樹脂からなる請求項1記載の方法。
  14. 【請求項14】限外濾過膜の分画分子量が1,000−100,0
    00である請求項13記載の方法。
  15. 【請求項15】限外濾過時の駆動源としての圧力が1.0
    〜20.0kg/cmGである請求項1記載の方法。
  16. 【請求項16】限外濾過時の反応混合物水溶液のpHが、
    6.2〜8.2である請求項1記載の方法。
  17. 【請求項17】限外濾過時の反応混合物水溶液の温度
    が、40〜60℃である請求項1又は16記載の方法。
  18. 【請求項18】噴霧乾燥される沈澱のスラリー(泥漿)
    が、固形分=4〜40%、水分=96〜60%のものである請
    求項1記載の方法。
  19. 【請求項19】噴霧乾燥時の送風空気の湿度と温度が、 温度=10.0〜100.0℃ の範囲内に在る請求項1記載の方法。
  20. 【請求項20】製品の粉末状ショ糖脂肪酸エステルの組
    成が、下記範囲内に在る請求項1記載の製法。 水分=0.5〜5.0% 未反応脂肪酸メチルエステル=0.5〜10.0% 石鹸=0.5〜60.0% 脂肪酸=0.5〜10.0% ショ糖脂肪酸エステル=98.0〜15.0%
JP18869288A 1988-07-28 1988-07-28 粉末状高hlbショ糖脂肪酸エステルの製造方法 Expired - Fee Related JP2688930B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP18869288A JP2688930B2 (ja) 1988-07-28 1988-07-28 粉末状高hlbショ糖脂肪酸エステルの製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP18869288A JP2688930B2 (ja) 1988-07-28 1988-07-28 粉末状高hlbショ糖脂肪酸エステルの製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH0240390A JPH0240390A (ja) 1990-02-09
JP2688930B2 true JP2688930B2 (ja) 1997-12-10

Family

ID=16228154

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP18869288A Expired - Fee Related JP2688930B2 (ja) 1988-07-28 1988-07-28 粉末状高hlbショ糖脂肪酸エステルの製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2688930B2 (ja)

Also Published As

Publication number Publication date
JPH0240390A (ja) 1990-02-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP0369339B1 (en) Process for preparing sucrose fatty acid ester powder
JPH0667953B2 (ja) 粉末状ショ糖脂肪酸エステルの製造方法
JPH0667954B2 (ja) 粉末状高hlbショ糖脂肪酸エステルの製造方法
JP2784882B2 (ja) 粉末状高融点2,2−ビス[4′−(2″,3″−ジブロモプロポキシ)−3′,5′−ジブロモフェニル]プロパンの製造方法
JP2688930B2 (ja) 粉末状高hlbショ糖脂肪酸エステルの製造方法
JP2686972B2 (ja) 粉末状高hlbショ糖脂肪酸エステルの製造法
JP2712035B2 (ja) 粉末状高hlbショ糖脂肪酸エステルの製造方法
EP0338464B1 (en) Process for purifying sucrose fatty acid esters
JP2688937B2 (ja) 粉末状ショ糖脂肪酸エステルの製造方法
JP2688929B2 (ja) 高hlbショ糖脂肪酸エステルの精製方法
JP2686971B2 (ja) 高hlbショ糖脂肪酸エステルの精製法
JP2648936B2 (ja) ショ糖脂肪酸エステルの製造方法
JPH0240392A (ja) 粉末状ショ糖脂肪酸エステルの製造方法
JPH0667951B2 (ja) 粉末状ショ糖脂肪酸エステルの製造方法
JPH0667955B2 (ja) 粉末状高hlbショ糖脂肪酸エステルの製造法
JP2686966B2 (ja) ショ糖脂肪酸エステル合成反応混合物中の未反応糖を粉末状として回収する方法
JPH0256493A (ja) 粉末状ショ糖脂肪酸エステルの製造方法
JPH0240391A (ja) 粉末状ショ糖脂肪酸エステルの製造方法
JPH02164889A (ja) 粉末状高hlbショ糖脂肪酸エステルの製造方法
JPH0667949B2 (ja) 粉末状蔗糖脂肪酸エステルの製造方法
JPH02164887A (ja) 高hlbショ糖脂肪酸エステルの精製方法
JPH01311092A (ja) 粉末状ショ糖脂肪酸エステルの製造方法
JPH0256494A (ja) 粉末状ショ糖脂肪酸エステルの製造方法
JPH02164886A (ja) 粉末状高hlbショ糖脂肪酸エステルの製造方法
JPH02164888A (ja) 高hlbショ糖脂肪酸エステルの精製方法

Legal Events

Date Code Title Description
LAPS Cancellation because of no payment of annual fees