JPH0633088A - 高純度ドコサヘキサエン酸またはそのエステルの 製造方法 - Google Patents
高純度ドコサヘキサエン酸またはそのエステルの 製造方法Info
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Abstract
天然油脂から得られる脂肪酸またはそのエステルの混合
物を高真空下で複数の蒸留塔によって、特に3塔以上の
蒸留塔によって精密蒸留して炭素数22の脂肪酸または
エステルを主成分とする留分を取得し、次いでこれを逆
相分配系のカラムクロマトグラフィーに供して分画精製
する。 【効果】 99%以上の高純度品として、回収率45%
以上の優れた成績で、血栓症や炎症性疾患、癌等の予防
もしくは治療等に有用なドコサヘキサエン酸またはその
エステルを得る。
Description
エン酸またはそのエステルの製造方法に関するものであ
る。さらに詳しくは、この発明は、血栓性疾患や炎症性
疾患、癌等の治療および予防のための処方剤等として有
用なドコサヘキサエン酸(DHA)またはそのエステル
の高純度品の高効率生産を可能とする新規な製造方法に
関するものである。
酸(DHA)、およびそのエステル、アミド等は血栓性
疾患、炎症性疾患、癌等の治療や予防に有用なことが報
告されてている。これらのドコサヘキサエン酸類は、天
然油脂、特にサバ、イワシ、タラ等の水産物油脂中にそ
れ自体として、あるいはそのグリセライド等の誘導体と
して含有されていることが知られており、これらの魚油
等からドコサヘキサエン酸類を取り出すための方法につ
いての検討が進められてきてもいる。
然油脂中にはその炭素数22および二重結合数6を有す
るドコサヘキサエン酸以外に炭素数12〜24、そして
二重結合数0〜6と、極めて多岐にわたる脂肪酸が圧倒
的に多く含まれており、ドコサヘキサエン酸類のみを選
択的に高濃度、高純度品として効率的に分離・精製する
ことは困難を極めている。
エステル混合物を精留し、次いで尿素付加体を形成して
精製する方法が知られている(特開昭57−14940
0号公報)が、この方法ではドコサヘキサエン酸エステ
ルと、他のC22高度不飽和脂肪酸エステルおよび夾雑す
るC20の高度不飽和脂肪酸エステルとの分離が不充分と
なるため、その純度もせいぜい90%どまりで、実際に
も特開昭57−149400号公報記載の方法の場合に
は実施例1として87.5%が最高値として示されてい
るにすぎない。また、DHA回収率も32%と極めて低
い水準にとどまっている。
分配型のカラムクロマトグラフィーを利用する方法も提
案されている(たとえば、特開昭58−109444号
公報、特開昭60−208940号公報)。いずれも、
魚油から調整したメチルエステル混合物を出発原料にド
コサヘキサエン酸をメチルエステルとして分離精製して
いるが、特開昭58−109444では、カラムクロマ
トグラフィーに供する試料は、尿素付加処理および精留
によりDHAメチルエステルを63%まで濃縮したもの
を用いているが、カラムクロマトグラフィーで得られた
精製物のDHAメチルエステルの純度は91.6%と低
く、高純度ドコサヘキサエン酸の製造法としては満足で
きるものではない。また、特開昭60−208940で
は、クロマトグラフィー精製物のDHAメチルエステル
の純度は99.0%、回収率は86.5%と良好な値を
示しているが、この発明の発明者の追試では、このよう
な良好な値は得られていない。そして、尿素付加処理に
より調製した、カラムクロマトグラフィーに供する試料
のDHAメチルエステルの濃度が14.5%と低いた
め、カラム処理1バッチあたりのDHA収率は12.5
%と低く、工業的製造法としては不満足なものである。
合物からの高純度品、特に95%以上の高純度のドコサ
ヘキサエン酸類を高回収率で、かつ、効率よく取得する
ことは従来の技術においては困難を極めていた。そこ
で、この発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたも
のであり、従来方法の欠点を解消し、95%以上の高純
度品としても取得可能な、新しい高純度ドコサヘキサエ
ン酸またはそのエステルの高回収率、かつ、工業規模で
の製造方法を提供することを目的としている。
を解決するものとして、ドコサヘキサエン酸またはその
誘導体を含む天然油脂から得られる脂肪酸またはそのエ
ステルの混合物を高真空下で複数の蒸留塔によって精密
蒸留して炭素数22の脂肪酸またはそのエステルを主成
分とする留分を取得し、次いでこれを逆相分配系のカラ
ムクロマトグラフィーに供して分画精製することを特徴
とする高純度ドコサヘキサエン酸またはそのエステルの
製造方法を提供する。
の蒸留塔を用いた多塔式の高度精留によって、脂肪酸も
しくはそのエステルの炭素数を揃えてC22以外の脂肪酸
をできるだけ除去し、次いで前記の逆相分配系のカラム
クロマトグラフィーによって分画精製し、95%以上、
特に99%以上の超高純度のドコサヘキサエン酸もしく
はそのエステルを、工業的に飛躍的に高収率で取得する
ことをその要点としている。
することは、従来の技術では全く不可能なことで、予期
し得なかったことである。ドコサヘキサエン酸等の長鎖
高度不飽和脂肪酸類は分子内に二重結合が多いため、蒸
留時の加熱によって劣化や重合等の熱変性をおこしやす
く、蒸留濃縮は著しく困難である。また、一方、ドコサ
ヘキサエン酸類を含有する天然油脂は、ドコサヘキサエ
ン酸類以外に各種脂肪酸類を含み、これらは沸点が近い
ため、蒸留塔の高さをかなり高くし、還流量を多くしな
ければ分離することができない。しかしながら、このこ
とは、塔底圧力の上昇とそれにともなう温度上昇による
熱変性という問題を引きおこし、結局のところ、ドコサ
ヘキサエン酸類の蒸留精製を著しく困難なものとする。
それだけ、ドコサヘキサエン酸含有の油脂混合物からの
高度不飽和長鎖脂肪酸としてのドコサヘキサエン酸を高
度選択的に取得することは極めて困難なことであった。
下で複数の蒸留塔を用いた多塔式の精留を行うが、この
方法は、より具体的には2塔以上の蒸留塔において行
う。さらに好ましくは、ドコサヘキサエン酸またはその
エステルを含む天然油脂から得られた混合物を、低炭素
数脂肪酸類からなる初留分の精留塔を独立させた3塔以
上の蒸留塔において、この精留塔塔底液を前段蒸留塔に
還流し、10Torr以下の減圧および210℃以下の塔底
温度において連続蒸留する。
の塔頂留分の凝縮液を上記初留分精留塔に送ることや、
ドコサヘキサエン酸またはそのエステルを主成分として
含有する主留分の精留塔と、後留(残留)分の精留塔と
を各々独立して設けて連続蒸留することを好ましい態様
としてもいる。またはさらに、この方法は、各々の蒸留
塔が独立した真空系および凝縮系を有することを好まし
い態様の一つとしてもいる。
リング式、棚段式等の各種の方式のものが採用でき、よ
り好ましくは、網目板状体を用い、理論段数5以上とす
ることができる。この方法での連続蒸留塔は、いずれ
も、10Torr以下、より好ましくは、0.1Torr 前後の減
圧条件、および210℃以下、より好ましくは、200
℃以下の塔底温度において実施することができる。
ずれの場合も、そのうちの1塔は初留分回収のための精
留塔として独立させる。たとえば3塔によって構成する
場合には、 (I) 第1蒸留塔 (II) 第2蒸留塔(初留分精留塔) (III ) 第3蒸留塔(主留分および後留分精留塔) に区分し、また4塔によって構成する場合には、 (I) 第1蒸留塔 (II) 第2蒸留塔(初留分精留塔) (III ) 第3蒸留塔(後留分精留塔) (IV) 第4蒸留塔(主留分精留塔) に区分する。さらに、3塔の場合には、 (I) 第1蒸留塔(初留分精留塔) (II) 第2蒸留塔(後留分精留塔) (III ) 第3蒸留塔(主留分精留塔) に区分することもできる。もちろん、精留塔の構成をさ
らに細分化することもできる。
初留分精留塔の塔底液は前段の、すなわち上記の構成例
では第1蒸留塔への還流液として戻すこととしている。
また、第1蒸留塔の塔頂留分をいったん凝縮させた後
に、凝縮液の状態で初留分精留塔に送ることや、各々の
蒸留塔は、その真空度や塔底温度を厳密に制御すること
が必要であることから、各塔毎に独立した真空系を設け
ることが好ましい。
いてさらに詳しく説明すると、たとえば4塔の蒸留塔を
用いる図1に示した例では、脂肪酸もしくはそのエステ
ル混合物(A)を対象として、4塔の蒸留塔(1)
(2)(3)(4)を用いて連続蒸留する。各々の蒸留
塔(1)(2)(3)(4)には、独立して、真空系
(5)(6)(7)(8)および凝縮系(9)(10)
(11)(12)、さらに、リボイラー(13)(1
4)(15)(16)を配設してもいる。
各々、1Torr以下の減圧、および200℃以下の塔底温
度に厳密に制御する。真空度と温度とは密接に関係して
いるため、各々の蒸留塔に独立の真空系を配置するのが
好ましいが、この制御のために真空系(5)(6)
(7)(8)を各々完全に独立にすることは必ずしも必
須ではない。真空ポンプの能力や制御システム等に応じ
てこの真空系を適宜に構成してもよい。
1蒸留塔(1)に、たとえばその塔頂近傍に導入し、塔
頂留分は凝縮系(9)において凝縮し、第2蒸留塔
(2)としての初留分精留塔に、たとえばその塔底部に
液状で導入する。この液状での導入は、重要なファクタ
ーである。第2蒸留塔(2)においては、その塔頂留分
としてより低炭素数(<C19)の脂肪酸類からなる初留
分(B)を回収する。また、その塔底液の一部は、第1
蒸留塔(1)の塔頂近傍に還流する。これもこの発明の
方法にとって極めてひとつの特徴である。第1蒸留塔
(1)の塔底凝縮液もリボイラー(13)で加熱して塔
底部に戻すとともに、第3蒸留塔(3)塔頂近傍に、液
状で導入する。
(11)を介して凝縮液として第4蒸留塔(4)の塔底
部に供給する。また、塔底凝縮液は、リボイラー(1
5)によって加熱して塔底部に戻すとともに、ドコサヘ
キサエン酸またはそのエステルより長鎖のC23以上の脂
肪酸から主としてなる後留(残留)分(C)を回収す
る。
入した第4蒸留塔(4)においては、塔頂からの蒸留成
分を凝縮系(12)において凝縮し、一部を塔頂近傍に
還流するとともに、ドコサヘキサエン酸またはそのエス
テルを主なものとする主留分(D)を回収する。一方、
塔底凝縮液はリボイラー(16)で加熱して塔底に戻す
とともに、一部を、第3蒸留塔(3)の塔頂近傍に還流
する。
の導入前に、減圧に保ったフラッシュタンク(17)に
おいて処理し、空気や水分等の不純物を除去するように
してもよい。また、リボイラー(13)(14)(1
5)(16)には、加熱時間を短くすることができる流
下薄膜蒸発型のものを採用することが有利でもある。こ
れにより、熱劣化をより効果的に防ぐことができる。
ような問題の発生もなく、蒸留精製のみによって、簡便
な操作で、しかも高効率に80%以上の濃度の高純度ド
コサヘキサエン酸またはそのエステルの取得を可能とす
る。対象とする脂肪酸またはそのエステルの混合物は、
ドコサヘキサエン酸またはそのグリセリド等の誘導体を
多く含有する天然油脂から得られる任意のものを用いる
ことができ、たとえば、イワシ、サバ、ニシン、サンマ
等の魚、ナンキョクオキアミ、ツノナシオキアミ、コペ
ポーダ等の動物性海洋プランクトン、スルメイカ、ムラ
サキイカ等の軟体動物等の適宜なものから得られる脂肪
酸またはエステルの混合物を使用することができる。
ステル化して連続蒸留する。また、この発明では、以上
の連続蒸留に続いて逆相分配系のカラムクロマトグラフ
ィーに供して分画精製する。この場合のカラムには、い
わゆる逆相分配系を構成するように、たとえばアルキル
基結合シリカ充填材等を用い、また溶媒系としては、
水、アルコール、ケトン等を好適に用いることができ
る。これらは単独、もしくは混合して用いてもよい。
して、尿素付加や低温分別等により低度不飽和脂肪酸ま
たはエステルを除去することもできる。また、クロマト
グラフィーにおいては、マルチカラム方式として、ドコ
サヘキサエン酸と分離しやすい成分を予め除去する等の
操作により、さらに生産効率を向上させることができ
る。
ーによる分画精製によって、この発明では純度99%以
上、回収率45%以上の優れた成績でドコサヘキサエン
酸もしくはそのエステルを取得することができる。以
下、実施例を示し、さらに詳しくこの発明の製造法を説
明する。
組成からなるもの; C21以下 71.6% C22 27.4% (このうちDHA 17.8%) C23以上 1.0% のエチルエステルについて、図1に示した4塔式の精留
装置にて精留を行った。
1Torrの真空に保ったフラッシュタンク(17)にて処
理し、次いで、塔径300mm、高さ約7mで、0.1Torr
の真空に保った第1蒸留塔(1)に14.0Kg/hr の割合で
供給した。この第1蒸留塔(1)においては、塔底温度
200℃以下、より具体的には198〜200℃となる
ようにした。また、その理論段数は4段とした。この第
1蒸留塔(1)には、その塔底にC22以上の脂肪酸エス
テル混合物が集まることから、この第1蒸留塔の塔底部
の真空度および温度の制御が難しくなる。そこで、第1
蒸留塔内への充填物の量は第2蒸留塔(2)よりも少な
くした。
塔(2)の塔底部に導入した。この第2塔の塔底温度は
189〜190℃となるようにし、0.1Torr の減圧にお
いて操作した。理論段数は6段とした。また、塔頂留分
は、還流比1:1で還流し、一部は、初留分(B)とし
て 10.5Kg/hrで回収した。この初留分の組成は、C21以
下の脂肪酸エステル95.1%、C22ドコサヘキサエン
酸エステル他4.9%、C23以上の脂肪酸エステル0%
であった。
が液面として一定になるように制御し、塔底液を第1蒸
留塔(1)の塔頂近傍に戻した。つまり、この塔底凝縮
液は還流液として第1蒸留塔(1)に戻した。第1蒸留
塔(1)の塔底液は、第3蒸留塔(3)の塔頂近傍に供
給した。この時の圧力は0.1Torr の減圧条件とし、また
塔底温度は同様に200℃以下となるようにした。理論
段数は4段とした。
(残留)分(C)を回収した。この後留の組成は、C21
以下の脂肪酸エステル0.1%、C22ドコサヘキサエン
酸エステル他91.4%、C23以上の脂肪酸エステル
8.5%であった。この第3蒸留塔(3)の塔頂留分
は、凝縮液として第4蒸留塔(4)の塔底部に供給し
た。理論段数6段のこの第4蒸留塔(4)は、0.1Torr
の減圧で、塔底温度200℃以下となるように操作し
た。
の塔頂部に戻した。この時も、第4蒸留塔の塔底液面が
一定となるようにした。塔頂凝縮液は、還流比1:1で
還流させ、同時に1.8Kg/hrで主留分(D)を回収した。
この主留分の組成は、C21以下の脂肪酸エステル0.8
%、C23以上の脂肪酸エステル0%、C22ドコサヘキサ
エン酸エステル他99.2%であった。
は、表1に示した通り81.9%であった。
マトグラフィーに供した。主留分のうちの5gを、内径
5cm、長さ50cmのステンレス管に粒径10〜20μm
のオクタデシル化シリカゲルを充填したカラムに注入
し、100ml/minの流量のメタノールで溶出した。検出
は210nmの吸収により行った。 得られたクロマトグ
ラムを示したものが図2である。斜線部分の溶出液を分
取し、ロータリーエバポレータにて、減圧下溶剤を留去
し、3.22gの無色澄明な油状物を得た。このものの組成
は、ドコサヘキサエン酸エチルエステル99.22%、
およびC21:5エチルエステル0.78%であり、本処理
工程におけるドコサヘキサエン酸エチルエステルの回収
率は、78.0%であった。実施例1の原料の混合エチ
ルエステルからのドコサヘキサエン酸エチルエステルの
回収率は、46.2%であった。
アセトンの50:50を溶媒としてクロマトグラフィー
分画した。その結果、ドコサヘキサエン酸エチルエステ
ルとして99.08%の純度品を、回収率43.1%で
得た。
り、99%以上の高純度品として、回収率45%以上の
優れた成績でドコサヘキサエン酸またはそのエステルを
得る。
る。
る。
Claims (1)
- 【請求項1】 ドコサヘキサエン酸またはその誘導体を
含む天然油脂から得られる脂肪酸またはそのエステルの
混合物を高真空下で複数の蒸留塔によって精密蒸留して
炭素数22の脂肪酸またはエステルを主成分とする留分
を取得し、次いでこれを逆相分配系のカラムクロマトグ
ラフィーに供して分画精製することを特徴とする高純度
ドコサヘキサエン酸またはそのエステルの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP19354392A JP3614177B2 (ja) | 1992-07-21 | 1992-07-21 | 高純度ドコサヘキサエン酸またはそのエステルの 製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP19354392A JP3614177B2 (ja) | 1992-07-21 | 1992-07-21 | 高純度ドコサヘキサエン酸またはそのエステルの 製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0633088A true JPH0633088A (ja) | 1994-02-08 |
JP3614177B2 JP3614177B2 (ja) | 2005-01-26 |
Family
ID=16309824
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP19354392A Expired - Lifetime JP3614177B2 (ja) | 1992-07-21 | 1992-07-21 | 高純度ドコサヘキサエン酸またはそのエステルの 製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP3614177B2 (ja) |
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