JPH06315350A - 家禽飼料用配合物及び該配合物を用いる家禽の飼養方 法 - Google Patents

家禽飼料用配合物及び該配合物を用いる家禽の飼養方 法

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JPH06315350A
JPH06315350A JP4108577A JP10857792A JPH06315350A JP H06315350 A JPH06315350 A JP H06315350A JP 4108577 A JP4108577 A JP 4108577A JP 10857792 A JP10857792 A JP 10857792A JP H06315350 A JPH06315350 A JP H06315350A
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Makoto Muraoka
誠 村岡
Masanobu Tsurusaki
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Toshihiro Nakamura
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 産卵期間の延長、産卵率の向上、破卵率の低
減、及び卵黄へのリノレン酸、ドコサヘキサエン酸等の
長鎖不飽和脂肪酸の強化を同時に達成した高付加価値の
卵を経済的、かつ長期的に生産させる。 【構成】 炭素数18以上の長鎖不飽和脂肪酸カルシウ
ム塩単独、又は炭素数18以上の長鎖不飽和脂肪酸カル
シウム塩80%以上と糖蜜、糖の加熱によって生成する
褐変物質、又はこれらの任意の割合の混合物20%(重
量)以下、の少なくとも2成分を有効成分として含有す
る家禽飼料用配合物、及び炭素数18以上の長鎖不飽和
脂肪酸カルシウム塩単独、又は炭素数18以上の長鎖不
飽和脂肪酸カルシウム塩80%以上と糖蜜、糖の加熱に
よって生成する褐変物質、又はこれらの任意の割合の混
合物20%(重量)以下の少なくとも2成分からなる混
合物を家禽用飼料に添加し、家禽に給餌することを特徴
とする家禽の飼養方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、家禽特に産卵鶏用の飼
料に配合し、卵黄の高度不飽和脂肪酸含量を増大させ、
破卵率を低下させ、かつ産卵期間を延長させる家禽飼料
用配合物、及び該配合物を用いる家禽、特に産卵鶏の飼
養方法に関する。
【0002】本明細書において、長鎖不飽和脂肪酸は、
炭素数が少なくとも18の不飽和脂肪酸であり、百分率
は産卵率及び破卵率を除き重量による値である。
【0003】
【従来の技術】鶏卵生産者にとって、産卵期間、及び産
卵された卵の破損は経営上重大な問題であり、産卵期間
を可及的に長期に維持すること、及び破卵率(全産卵数
に対する破損卵数の百分率。以下同じ)を低下させるこ
とは、重要かつ緊急の課題である。
【0004】鶏卵1個には約2gのカルシウムが含まれ
ているが、その大部分は卵殻中に炭酸カルシウムとして
含まれており、産卵鶏のカルシウム要求量は、非産卵鶏
の2倍以上となることが知られている(森本宏著、「家
禽栄養学」、養賢堂、1971年)。したがって、卵殻
を強化する目的から、産卵鶏へのカルシウム給餌量を増
加させる種々の試みがなされており、例えば、鶏用飼料
に炭素数8〜12の中鎖脂肪酸のカルシウム塩を0.5
%以上含有させる方法(特開平2−177865号公
報)が開示されている。
【0005】一方、最近の健康食品ブームから鶏卵にリ
ノール酸、リノレン酸等の長鎖不飽和脂肪酸を強化する
ため、これらの脂肪酸を多く含む油脂又はこれらの脂肪
酸そのものを産卵鶏に給餌する試みもなされている。例
えば、飼料にアマニ油、サフラワー油等を配合する方法
(日本畜産学会報、第46巻、第5号、251ページ、
1975年)、ω3系高度不飽和脂肪酸を乳化した水を
接種させる方法(特開昭60−105471号公報)、
αーリノレン酸系脂肪酸含有率の高い飼料を給餌する方
法(特開昭63−237745号公報)等が開示されて
おり、これらの油脂又は脂肪酸の給餌により鶏卵脂質中
の長鎖不飽和脂肪酸が顕著に増加することが知られてい
る。
【0006】一方、糖とアミノ酸とを加熱して生成する
メイラード・タイプの褐変物質、及び糖を加熱して生成
するカラメル・タイプの褐変物質が抗酸化作用を有する
ことは、知られており[例えば、日本農芸化学会誌、第
43巻、第7号、第484ページ、1969年。ジャー
ナル・オブ・フード・サイエンス(Journal of FoodSci
ence)、第40巻、第3号、第460ページ、1975
年。ケミカル・アブストラクツ(Chemical Abstract
s)、第98巻、記事番号第33211W、1983
年]、カラメル、ヘミセルロース、キシロース、及びリ
グノサルフェートの混合物とエチレンジアミン・ジヒド
ロアイオダイドとを1:1(重量)の割合で混合して貯
蔵中におけるエチレンジアミン・ジヒドロアイオダイド
の安定剤として飼料に利用することも知られている(ア
メリカ特許第3,733,405号、1973年)。
【0007】更に、家禽の嗜好増強のため糖蜜を飼料に
利用することも従来公知である(例えば、特公昭58−
35066号公報)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】前記従来技術におい
て、破卵率低減のため鶏用飼料に炭素数8〜12の中鎖
脂肪酸のカルシウム塩を配合する方法は、長鎖不飽和脂
肪酸カルシウム塩を使用していないので(前記特開平2
−177865号公報、第518ページ上段右下から7
行〜下段左2行には、長鎖脂肪酸カルシウム塩では破卵
率が改善されないことが、明記されている)、鶏卵脂質
にリノール酸、リノレン酸等の長鎖不飽和脂肪酸を強化
することはできない。一方鶏卵脂質にリノール酸、リノ
レン酸等の長鎖不飽和脂肪酸を強化するため、これらの
脂肪酸を多く含む油脂又はこれらの脂肪酸そのものを給
餌する方法では、生産者による脂肪酸又は油脂の鶏への
給餌が繁雑であり、かつ破卵率を低減することはできな
い。更に、長鎖不飽和脂肪酸を多く含有する油脂は、酸
化されやすいという欠点があり、長鎖不飽和脂肪酸カル
シウム塩は長鎖不飽和脂肪酸を多く含有する油脂よりも
一層酸化されやすく、家禽用飼料に配合するには種々の
問題があった。
【0009】更に、前記従来技術においては、破卵率の
低減、及び卵黄への長鎖不飽和脂肪酸の強化を目的とし
た、長鎖不飽和脂肪酸カルシウム塩、又はこれと糖蜜、
糖の加熱によって生成する褐変物質、糖とアミノ酸との
加熱によって生成する褐変物質、又はこれらの任意の割
合の混合物(以下、これらをまとめて褐変物質と記載す
ることがある)、とを併用した例は皆無であり、これら
の併用による産卵期間の延長効果については全く知られ
ていない。
【0010】本発明は、家禽の産卵期間を延長するとと
もに、産卵率(飼養羽数に対する1日の産卵個数の百分
率。以下同じ)の向上、破卵率の低減、及び卵黄へのリ
ノール酸、リノレン酸等の長鎖不飽和脂肪酸の強化を同
時に解決し、高付加価値の卵を経済的に、かつ長期的に
生産することを課題としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、従来技術
に鑑みて、前記課題を解決するため鋭意研究を行った結
果、長鎖不飽和脂肪酸カルシウム塩単独、又は褐変物質
と長鎖不飽和脂肪酸カルシウム塩とを家禽用飼料に配合
することにより、家禽の産卵期間を延長するとともに産
卵率の向上、破卵率の低減及び卵黄へのリノール酸、リ
ノレン酸等の長鎖不飽和脂肪酸の強化を同時に達成し得
ることを見いだし、本発明を完成した。前記課題を解決
する本発明の第1の発明は、炭素数18以上の長鎖不飽
和脂肪酸カルシウム塩を有効成分として含有することを
特徴とする家禽飼料用配合物、である。
【0012】前記課題を解決する本発明の第2の発明
は、炭素数18以上の長鎖不飽和脂肪酸カルシウム塩8
0%(重量)以上、及び糖蜜、糖の加熱によって生成す
る褐変物質、糖とアミノ酸との加熱によって生成する褐
変物質、又はこれらの任意の割合の混合物20%(重
量)以下、の少なくとも2成分を有効成分として含有す
ることを特徴とする家禽飼料用配合物である。
【0013】前記課題を解決する本発明の第3の発明
は、炭素数18以上の長鎖不飽和脂肪酸カルシウム塩を
少なくとも0.5%(重量)の割合で家禽用飼料に配合
し、家禽に給餌することを特徴とする家禽の飼養方法で
ある。
【0014】前記課題を解決する本発明の第4の発明
は、炭素数18以上の長鎖不飽和脂肪酸カルシウム塩8
0%(重量)以上、及び糖蜜、糖の加熱によって生成す
る褐変物質、糖とアミノ酸の加熱によって生成する褐変
物質、又はこれらの任意の割合の混合物20%以下、の
少なくとも2成分からなる混合物を、長鎖不飽和脂肪酸
カルシウム塩換算で少なくとも0.5%(重量)の割合
で家禽用飼料に配合し、家禽に給餌することを特徴とす
る家禽の飼養方法である。
【0015】次に本発明について詳述する。
【0016】本発明に使用する長鎖不飽和脂肪酸カルシ
ウム塩は、公知の方法、例えば複分解法(吉田時行等編
著、「金属せっけんの性質と応用」、15ページ、幸書
房、昭和63年)等の方法により次のようにして製造さ
れる。アマニ油、大豆油、コーン油等の長鎖不飽和脂肪
酸を主要な構成脂肪酸とするヨウ素価50以上の油脂
を、ケン化して脂肪酸アルカリ石鹸を生成させ、これに
塩化カルシウムの水溶液を加えて該石鹸と反応させ、生
成した脂肪酸カルシウム塩を分離し、洗浄し、脱水し、
乾燥し、粉末状の長鎖不飽和脂肪酸カルシウム塩を得
る。この製造工程において、予め所定量の褐変物質を混
合し、脂肪酸カルシウム塩の生成反応を行わせることも
できる。
【0017】本発明に使用する糖蜜は市販品であり、糖
の加熱によって生成する褐変物質、糖とアミノ酸の加熱
によって生成する褐変物質、又はこれらの任意の割合の
混合物は、次のようにして製造することができる。糖の
加熱によって生成する褐変物質は、糖(例えばグルコー
ス、乳糖等)を公知の方法により常圧で加熱する(例え
ば、100℃で2〜6時間)ことにより製造することが
できる。生成された物質は褐色の色調を有し、例えば市
販品ではカラメル等を例示することができる。糖とアミ
ノ酸の加熱によって生成する褐変物質は、公知の方法に
より単糖類とアミノ酸類とを常圧で加熱することにより
製造することができ、市販品を使用することもできる。
また、これらの褐変物質を任意の割合で混合した混合物
も本発明に使用できる。
【0018】本発明の家禽飼料用配合物は、次のように
して製造される。前記褐変物質の所定量を前記の長鎖不
飽和脂肪酸カルシウム塩粉末に混合し、ミキサー等を用
いて均一に混合する。他の製造法としては、前記のよう
に長鎖不飽和脂肪酸カルシウム塩を製造する工程におい
て、所定量の褐変物質を配合することもできる。何れの
方法においても、褐変物質の配合量は、20%以下、望
ましくは0.5〜10%である。
【0019】以上のようにして本発明の家禽飼料用配合
物は製造されるが、必要に応じてアルファルファミール
等の他の飼料成分を同時に配合することもできる。
【0020】本発明の家禽の飼養方法は、市販の家禽用
飼料に少なくとも0.5%の割合で前記長鎖不飽和脂肪
酸カルシウム塩、又は長鎖不飽和脂肪酸カルシウム塩換
算で少なくとも0.5%の割合で前記長鎖不飽和脂肪酸
カルシウム塩と褐変物質との混合物を配合し、常法によ
り家禽に給餌することにより実施される。後記する試験
例から明らかなように、該長鎖不飽和脂肪酸カルシウム
塩の配合割合が0.5%未満、又は該配合物の配合割合
が長鎖不飽和脂肪酸カルシウム塩換算で0.5%未満の
場合は破卵率の低減が少なく、望ましくない。一方、該
長鎖不飽和脂肪酸カルシウム塩、又は該配合物の配合割
合が長鎖不飽和脂肪酸カルシウム塩換算で10%を越え
る場合は、配合量の増加に見合った破卵率の低減に顕著
な効果がないこと、及び家禽の生理に好ましくない影響
を与えることから望ましくない。従って、本発明の方法
においては、家禽飼料に該長鎖不飽和脂肪酸カルシウム
塩を少なくとも0.5%、又は該配合物を長鎖不飽和脂
肪酸カルシウム塩換算で少なくとも0.5%、望ましく
は何れの場合も2〜6%、の割合で配合する。
【0021】次に試験例を示して本発明を詳述する。
【0022】[試験例1]この試験は、飼料配合物の配
合割合による破卵率の低減効果を調べるために行った。
【0023】1)試料の調製 実施例2と同一の方法により、構成脂肪酸の約90%が
長鎖不飽和脂肪酸であるアマニ油から得られた長鎖不飽
和脂肪酸カルシウム塩からなる家禽飼料用配合物を調製
した。
【0024】この家禽飼料用配合物を、市販の家禽用飼
料(豊橋飼料社製)に5%の割合で均一に混合し、試験
飼料を調製し、家禽飼料用配合物を混合しない市販飼料
そのものを対照飼料とした。
【0025】2)試験方法 316日齢の白色レグホン種の産卵鶏200羽を2群に
分け、試験用飼料及び対照飼料を、それぞれ77日間給
餌し、71日目から1週間の破卵率を各群について採卵
時に目視により調べた。
【0026】3)試験結果 この試験の結果は表1に示すとおりである。表1から明
らかなように、家禽飼料用配合物を混合した試験飼料給
餌群では、平均破卵率が0.4%であるのに対して対照
飼料給餌群のそれは、1.8%であり、試験飼料給餌群
では破卵率が1/4以下に低下し、格段の破卵率低減効
果が認められた。尚、家禽飼料用配合物の種類及び配合
割合を変更して試験をおこなっても、ほぼ同等の結果が
得られた
【表1】 [試験例2]この試験は、家禽飼料用配合物が産卵率及
び産卵期間延長に及ぼす影響を調べるために行なった。 1)試料の調製 実施例1と同一の方法により家禽飼料用配合物を調製
し、この配合物を市販の家禽用飼料(豊橋飼料社製)に
5%の割合で均一に混合し、試験飼料を調製し、家禽飼
料用配合物を混合しない市販飼料を対照飼料とした。 2)試験方法 316日齢の白色レグホン種の産卵鶏100羽に、試験
飼料を86日間給餌したのち2群に分け、それぞれに試
験飼料、及び対照飼料を23日間給餌し、2群に分けた
2週間後から14日間にわたり、毎日産卵率を各群につ
いて調べた。尚、産卵率は、飼養羽数に対する1日の産
卵個数の百分率として算出した。 3)試験結果 この試験の結果は表2に示すとおりである。表2から明
らかなように、対照飼料給餌群の平均産卵率81.8%
に比して、試験飼料給餌群のそれは86.6%であり、
0.5%の危険率で有意の差が認められた。日齢300
日を越える産卵鶏が、本発明の家禽飼料用配合物を給餌
するのみで85%以上の高い産卵率を維持することは、
この分野において驚異的な事実である。尚、家禽飼料用
配合物の種類及び配合割合を変更して試験したが、ほぼ
同様の結果が得られた。
【表2】 [試験例3]この試験は、家禽飼料用配合物を混合した
飼料により飼養した鶏が、産卵した卵の卵黄脂質の脂肪
酸組成の変化を調べるために行なった。 1)試料の調製 実施例1と同一の方法により調製した家禽飼料用配合物
を、市販の家禽用飼料(豊橋飼料社製)に5.0%の割
合で配合し、均一に混合し、試験飼料を調製した。 2)試験方法 316日齢の白色レグホン種の産卵鶏100羽に、試験
飼料を30日間給餌し、給餌開始後6日目、10日目、
及び30日目に採卵した卵について、その卵黄脂質の脂
肪酸組成を測定し、試験飼料給餌前の卵のそれと比較し
た。卵黄脂質の脂肪酸組成の分析は、卵黄よりクロロホ
ルムーメタノール(2:1)混合溶液で脂質を抽出し、
常法によりメチルエステル化し、ガスクロマトグラフィ
ーにより行なった。 3)試験結果 この試験の結果は表3に示すとおりである。表3から明
らかなように、30日目の卵ではαーリノレン酸
(C183)、及びドコサヘキサエン酸(C226)の含
量が、試験飼料給餌前のそれらに比してそれぞれ約20
倍、及び約2.5倍多く含まれていることが認められ
た。尚、家禽飼料用配合物の種類及び配合割合を変更し
て試験を行なっても、ほぼ同等の結果が得られた。
【表3】 (試験例4)この試験は、卵黄脂質の脂肪酸組成に及ぼ
す本発明の家禽飼料用配合物とアマニ種子の影響を調べ
るために行なった。 1)試料の調製 実施例1と同一の方法により調製した本発明の家禽飼料
用配合物を5%の割合で市販の家禽用飼料(豊橋飼料社
製)に配合した飼料(飼料1)、同一の市販飼料に10
%の割合でアマ種子を配合した飼料(飼料2)、及び何
も混合しない同一の市販飼料(対照飼料)を使用した。
尚、飼料1と飼料2は、配合する脂質成分の量が同一に
調整されている。 2)試験方法 385日齢のロードアイランドレッド種の産卵鶏86羽
を、19羽(A群)、20羽(B群)。24羽(C
群)、及び23羽(D群)の4群に分け、A群には2週
間毎に対照飼料ー飼料1−対照飼料、B群には同様に飼
料1−対照飼料ー飼料1、C群には対照飼料ー飼料2−
対照飼料、D群には同様に飼料2−対照飼料ー飼料2
と、2種類の飼料を交互に給餌した。試験開始後、12
日目、26日目、及び40日目の卵について試験例3と
同一の方法により卵黄脂質の脂肪酸組成を試験した。 3)試験結果 この試験の結果は表4に示すとおりである。表4から明
らかなように飼料1及び飼料2を給餌した期間に産卵さ
れた卵の卵黄脂質のαーリノレン酸(C183)及びド
コサヘキサエン酸(C226)含量は有意に増加するこ
とが認められた。しかしながら、飼料1を給餌したA群
の26日目、B群の12日目、及び40日目の平均αー
リノレン酸含量が4.2%であるのに対して、飼料2を
給餌したC群の26日目、D郡の12日目、及び40日
目のそれが僅か1.9%であり、長鎖不飽和脂肪酸カル
シウム塩がアマ種子よりも卵黄脂質のαーリノレン酸含
量を顕著に増加させることが判明した。尚、長鎖不飽和
脂肪酸カルシウム塩の種類及び配合割合を変更して試験
を行っても、ほぼ同等の結果が得られた。
【表4】 [試験例5]この試験は、長鎖不飽和脂肪酸カルシウム
塩の配合割合が卵黄脂質のαーリノレン酸含量に及ぼす
影響を調べるために行った。 1)試料の調製 実施例2と同一の方法により調製した長鎖不飽和脂肪酸
カルシウム塩を、市販の家禽用飼料(豊橋飼料社製)に
1,2,及び6%の割合で均一に混合し、試験飼料を調
製した。尚、長鎖不飽和脂肪酸カルシウム塩を配合しな
い同一の市販飼料を対照飼料とした。 2)試験方法 411日齢の白色レグホン種の産卵鶏40羽を4群に分
け、各群に前記4種の飼料を給餌した。給餌開始後1,
2,及び4週目に採卵し、卵黄脂質のαーリノレン酸含
量を試験例3と同一の方法により測定した。尚、各群の
給餌開始前の卵についても同様に試験した。 3)試験結果 この試験の結果は表5に示すとおりである。表5から明
らかなように長鎖不飽和脂肪酸カルシウム塩の飼料への
配合量の増加により卵黄脂質のαーリノレン酸含量が増
加することが認められた。尚、この試験は、予備試験で
あるため、長鎖不飽和脂肪酸カルシウム塩の飼料への配
合量の詳細な範囲が明らかではないが、後記する試験例
からその範囲は前記のとおり決定される。
【表5】 [試験例6]この試験は、本発明の家禽飼料用配合物を
長期間給餌した家禽の内臓の状態を調べるために行っ
た。 1)試料の調製 実施例1と同一の方法により調製した飼料(試験飼
料)、及び市販の家禽用飼料(豊橋飼料社製)を対照飼
料として使用した。 2)試験方法 316日齢の白色レグホン種の産卵鶏200羽を2群に
分け、試験飼料及び対照飼料を91日間給餌し、給餌開
始後92日目に各群から無作為に2羽を選別し、放血死
させ、解剖し、腹腔内諸臓器を肉眼で観察した。 3)試験結果 試験飼料給餌群及び対照飼料給餌群とも腹腔内脂肪量に
は差異が認められず、肝臓を除く他の臓器にも異常は認
められなかった。しかしながら、対照飼料給餌群の2羽
の肝臓には、鶴田克之等(熊本県養鶏試験場報告・昭和
61年度試験研究報告、第24巻、第58ページ、19
86年)の判定基準に基づく判定の結果、重度3の脂肪
肝が認められた。これに対して、試験飼料給餌群では、
飼料の脂肪含量が多いにもかかかわらず、2羽の肝臓に
は全く異常が認められなかった。一般に産卵鶏が脂肪肝
に罹患すれば、産卵率が低下することが報告されている
から、前記試験結果から本発明の家禽飼料用配合物は脂
肪肝の発症を防止することにより、産卵期間を延長して
いるものと推定される。尚、長鎖不飽和脂肪酸カルシウ
ム塩の種類及び配合割合を変更して試験を行っても、ほ
ぼ同等の結果が得られた。 [試験例7]この試験は、本発明の家禽飼料用配合物の
家禽飼料への好適な配合割合を調べるために行った、 1)試料の調製 表6に示す割合でアマニ油の長鎖不飽和脂肪酸カルシウ
ム塩を含む5種の試験飼料を実施例2と同一の方法によ
り調製した飼料、MCT油(太陽油脂社製)を用いたこ
とを除き参考例1と同一の方法により調製した脂肪酸カ
ルシウム塩を5%の割合で含む試験飼料、及び何も添加
しない市販の家禽用飼料(豊橋飼料社製)を対照飼料と
して使用した。 2)試験方法 320日齢の白色レグホン種の産卵鶏161羽を7群に
分け、各飼料を4週間給餌し、試験開始1週間の各群の
平均産卵率と、試験開始4週目の1週間の各群の平均産
卵率との差から産卵率の上昇値(%)を算出して比較し
た。 3)試験結果 この試験結果は、表6に示すとおりである。表6から明
らかなようにアマニ油の長鎖不飽和脂肪酸カルシウム塩
を0.5%未満の割合で含む試験飼料給餌群及びMCT
油脂脂肪酸カルシウム塩を5%の割合で含む試験飼料給
餌群の産卵率の上昇値は、対照飼料給餌群のそれとほぼ
同等であった。これに対してアマニ油の長鎖不飽和脂肪
酸カルシウム塩を0.5〜10.0%の割合で含む試験
飼料給餌群(第3群〜第6群)は、対照飼料給餌群のそ
れよりも産卵率の上昇が高く、特に第4群及び第5群で
は、顕著に高い値を示した。アマニ油の長鎖不飽和脂肪
酸カルシウム塩を10.0%を越えて家禽飼料に添加す
るのは、飼料のエネルギーが高くなり、家禽の生理上好
ましくない。従って、本発明においては長鎖不飽和脂肪
酸カルシウム塩を0.5〜10.0%の割合で家禽飼料
に添加する。尚、長鎖不飽和脂肪酸カルシウム塩の種類
を変更して試験を行っても、ほぼ同等の結果が得られ
た。
【表6】 参考例1 大豆油(太陽油脂社製)5kgを鹸化して得られた脂肪
酸のアルカリ石鹸の溶液に、塩化カルシウム1kgを溶
解した水溶液10lを徐々に加えて反応させ、静置して
脂肪酸カルシウム塩層と水層に分け、脂肪酸カルシウム
塩層を分離し、水洗、脱水、乾燥し、長鎖不飽和脂肪酸
カルシウム塩粉末約4.4kgを得た。 参考例2 アマニ油(太陽油脂社製)5kgに、水酸化カルシウム
0.82kgを加え、均一に混合し、のちリパーゼPL
−266(名糖産業社製)3.65gを分散した水1l
を添加し、約30分間常温で混合撹拌し、30時間静置
して反応させた。これを常法により破砕して、長鎖不飽
和脂肪酸カルシウム塩粉末約6.5kgを得た。 次に実施例を示して本発明をさらに詳述するが、本発明
は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
実施例1 参考例2と同一の方法により調製したアマニ油の長鎖不
飽和脂肪酸カルシウム塩19.5kg、及び市販の糖蜜
(三井精糖社製)1kgを、ミキサー(愛工舎製)を用
いて均一に混合し、家禽飼料用配合物約20kgを得
た。 実施例2 参考例2と同一の方法により調製したアマニ油の長鎖不
飽和脂肪酸カルシウム塩46kg、及び市販のカラメル
DX50(池田糖化社製)5kgを、ミキサー(愛工舎
製)を用いて均一に混合し、家禽飼料用配合物約50k
gを得た。 実施例3 参考例1と同一の方法により調製した大豆油の長鎖不飽
和脂肪酸カルシウム塩24.5kgに、市販の糖蜜(三
井精糖社製)3kg及び市販のカラメルDX50(池田
糖化社製)3kgを添加し、ミキサー(愛工舎製)を用
いて均一に混合し、家禽飼料用配合物約30kgを得
た。 実施例4 市販のパーム油(太陽油脂社製)10kgに、水酸化カ
ルシウム1.8kg、市販の糖蜜(三井精糖社製)0.
65kg、及びアルファルファミール0.65kgを加
え、均一に混合し、のちリパーゼPL−266(名糖産
業社製)8gを分散した水1.8lを添加し、約30分
間、常温で混合撹拌し、30時間静置して反応させた。
これを常法により破砕し、家禽飼料用配合物約14.5
kgを得た。 実施例5 市販の家禽用飼料(豊橋飼料社製)57kgに、アマニ
油を用いたこと以外は実施例1と同一の方法により調製
した家禽飼料用配合物3kgを添加し、均一に混合し、
家禽飼料用配合物を含む家禽用飼料約60kgを得た。
この飼料を、316日齢の白色レグホン種の産卵鶏10
0羽に50日間常法により給餌した。そして飼料給餌前
後の破卵率を調べた結果、給餌前は1.9%、給餌後は
0.5%であり、この飼料の給餌により破卵率が顕著に
低下した。 実施例6 市販の家禽用飼料(豊橋飼料社製)95kgに、実施例
2と同一の方法により調製した家禽飼料用配合物5kg
を添加し、均一に混合し、家禽飼料用配合物を含む家禽
用飼料約100kgを得た。この飼料を、316日齢の
白色レグホン種の産卵鶏100羽に50日間常法により
給餌した。そして飼料給餌前後の卵の卵黄脂質のリノー
ル酸、及びαーリノレン酸含量を試験例3と同一の方法
により調べた結果、給餌前に産卵した卵ではリノール酸
及びαーリノレン酸含量が、それぞれ14.6%及び
0.3%であったが、給餌後に産卵した卵のそれらは、
14.1%及び5.6%であり、この飼料の給餌により
リノール酸含量は若干減少したが、αーリノレン酸含量
が約19倍に増加した。
【発明の効果】本発明によって奏せられる効果は、次の
とおりである。 (1)家禽類の産卵率を向上させるとともに、産卵期間
を延長させることができる。 (2)破卵率を顕著に低減することができ、その経済的
効果は莫大である。 (3)卵黄脂質中にリノレン酸及びドコサヘキサエン酸
等の長鎖不飽和脂肪酸を増強することができる。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年6月10日
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】発明の名称
【補正方法】変更
【補正内容】
【発明の名称】 家禽飼料用配合物及び該配合物を用
いる家禽の飼養方法
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項3
【補正方法】変更
【補正内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項4
【補正方法】変更
【補正内容】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正内容】
【0005】一方、最近の健康食品ブームから鶏卵にリ
ノール酸、リノレン酸等の長鎖不飽和脂肪酸を強化する
ため、これらの脂肪酸を多く含む油脂又はこれらの脂肪
酸そのものを産卵鶏に給餌する試みもなされている。例
えば、飼料にアマニ油、サフラワー油等を配合する方法
(日本畜産学会報、第46巻、第5号、251ページ、
1975年)、ω3系高度不飽和脂肪酸を乳化した水を
摂取させる方法(特開昭60−105471号公報)、
αーリノレン酸系脂肪酸含有率の高い飼料を給餌する方
法(特開昭63−237745号公報)等が開示されて
おり、これらの油脂又は脂肪酸の給餌により鶏卵脂質中
の長鎖不飽和脂肪酸が顕著に増加することが知られてい
る。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正内容】
【0008】
【発明が解決しようとする課題】前記従来技術におい
て、破卵率低減のため鶏用飼料に炭素数8〜12の中鎖
脂肪酸のカルシウム塩を配合する方法は、長鎖不飽和脂
肪酸カルシウム塩を使用していないので(前記特開平2
−177865号公報、第518ページ上段右下から7
行〜下段左2行には、長鎖脂肪酸カルシウム塩では破卵
率が改善されないことが、明記されている)、鶏卵脂質
にリノール酸、リノレン酸等の長鎖不飽和脂肪酸を強化
することはできない。一方鶏卵脂質にリノール酸、リノ
レン酸等の長鎖不飽和脂肪酸を強化するため、これらの
脂肪酸を多く含む油脂又はこれらの脂肪酸そのものを給
餌する方法では、生産者による脂肪酸又は油脂の鶏への
給餌が煩雑であり、かつ破卵率を低減することはできな
い。更に、長鎖不飽和脂肪酸を多く含有する油脂は、酸
化されやすいという欠点があり、長鎖不飽和脂肪酸カル
シウム塩は長鎖不飽和脂肪酸を多く含有する油脂よりも
一層酸化されやすく、家禽用飼料に配合するには種々の
問題があった。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正内容】
【0026】3)試験結果 この試験の結果は表1に示すとおりである。表1から明
らかなように、家禽飼料用配合物を混合した試験飼料給
餌群では、平均破卵率が0.4%であるのに対して対照
飼料給餌群のそれは、1.8%であり、試験飼料給餌群
では破卵率が1/4以下に低下し、格段の破卵率低減効
果が認められた。尚、家禽飼料用配合物の種類及び配合
割合を変更して試験を行っても、ほぼ同等の結果が得ら
れた。
【表1】 〔試験例2〕この試験は、家禽飼料用配合物が産卵率及
び産卵期間延長に及ぼす影響を調べるために行なった。 1)試料の調製 実施例1と同一の方法により家禽飼料用配合物を調製
し、この配合物を市販の家禽用飼料(豊橋飼料社製)に
5%の割合で均一に混合し、試験飼料を調製し、家禽飼
料用配合物を混合しない市販飼料を対照飼料とした。 2)試験方法 316日齢の白色レグホン種の産卵鶏100羽に、試験
飼料を86日間給餌したのち2群に分け、それぞれに試
験飼料、及び対照飼料を28日間給餌し、2群に分けた
2週間後から14日間にわたり、毎日産卵率を各群につ
いて調べた。尚、産卵率は、飼養羽数に対する1日の産
卵個数の百分率として算出した。 3)試験結果 この試験の結果は表2に示すとおりである。表2から明
らかなように、対照飼料給餌群の平均産卵率81.8%
に比して、試験飼料給餌群のそれは86.6%であり、
0.5%の危険率で有意の差が認められた。日齢300
日を越える産卵鶏が、本発明の家禽飼料用配合物を給餌
するのみで85%以上の高い産卵率を維持することは、
この分野において驚異的な事実である。尚、家禽飼料用
配合物の種類及び配合割合を変更して試験したが、ほぼ
同様の結果が得られた。
【表2】 〔試験例3〕この試験は、家禽飼料用配合物を混合した
飼料により飼養した鶏が、産卵した卵の卵黄脂質の脂肪
酸組成の変化を調べるために行なった。 1)試料の調製 実施例1と同一の方法により調製した家禽飼料用配合物
を、市販の家禽用飼料(豊橋飼料社製)に5.0%の割
合で配合し、均一に混合し、試験飼料を調製した。 2)試験方法 316日齢の白色レグホン種の産卵鶏100羽に、試験
飼料を30日間給餌し、給餌開始後6日目、10日目、
及び30日目に採卵した卵について、その卵黄脂質の脂
肪酸組成を測定し、試験飼料給餌前の卵のそれと比較し
た。卵黄脂質の脂肪酸組成の分析は、卵黄よりクロロホ
ルムーメタノール(2:1)混合溶液で脂質を抽出し、
常法によりメチルエステル化し、ガスクロマトグラフィ
ーにより行なった。 3)試験結果 この試験の結果は表3に示すとおりである。表3から明
らかなように、30日目の卵ではαーリノレン酸
(C183)、及びドコサへキサエン酸(C226 ) の含
量が、試験飼料給餌前のそれらに比してそれぞれ約20
倍、及び約2.5倍多く含まれていることが認められ
た。尚、家禽飼料配合物の配合割合を変更して試験を行
なっても、ほぼ同等の結果が得られた。
【表3】〔試験例4〕 この試験は、卵黄脂質の脂肪酸組成に及ぼ
す本発明の家禽飼料用配合物とアマニ種子の影響を調べ
るために行なった。 1)試料の調製 実施例1と同一の方法により調製した本発明の家禽飼料
用配合物を5%の割合で市販の家禽用飼料(豊橋飼料社
製)に配合した飼料(飼料1)、同一の市販飼料に10
%の割合でアマニ種子を配合した飼料(飼料2)、及び
何も混合しない同一の市販飼料(対照飼料)を使用し
た。尚、飼料1と飼料2は、配合する脂質成分の量が同
一に調整されている。 2)試験方法 385日齢のロードアイランドレッド種の産卵鶏86羽
を、19羽(A群)、20羽(B群)、24羽(C
群)、及び23羽(D群)の4群に分け、A群には2週
間毎に対照飼料ー飼料1−対照飼料、B群には同様に飼
料1−対照飼料ー飼料1、C群には対照飼料ー飼料2−
対照飼料、D群には同様に飼料2−対照飼料ー飼料2
と、2種類の飼料を交互に給餌した。試験開始後、12
日目、26日目、及び40日目の卵について試験例3と
同一の方法により卵黄脂質の脂肪酸組成を分析した。 3)試験結果 この試験の結果は表4に示すとおりである。表4から明
らかなように飼料1及び飼料2を給餌した期間に産卵さ
れた卵の卵黄脂質のαーリノレン酸(C183)及びド
コサへキサエン酸(C226 ) 含量は有意に増加するこ
とが認められた。しかしながら、飼料1を給餌したA群
の26日目、B群の12日目、及び40日目の平均αー
リノレン酸含量が4.2%であるのに対して、飼料2を
給餌したC群の26日目、D群の12日目、及び40日
目のそれが僅か1.9%であり、長鎖不飽和脂肪酸カル
シウム塩がアマニ種子よりも卵黄脂質のαーリノレン酸
含量を顕著に増加させることが判明した。尚、長鎖不飽
和脂肪酸カルシウム塩の配合割合を変更して試験を行っ
ても、ほぼ同等の結果が得られた。
【表4】 〔試験例5〕この試験は、長鎖不飽和脂肪酸カルシウム
塩の配合割合が卵黄脂質のαーリノレン酸含量に及ぼす
影響を調べるために行った。 1)試料の調製 実施例2と同一の方法により調製した長鎖不飽和脂肪酸
カルシウム塩を、市販の家禽用飼料(豊橋飼料社製)に
1,2,及び6%の割合で均一に混合し、試験飼料を調
製した。尚、長鎖不飽和脂肪酸カルシウム塩を配合しな
い同一の市販飼料を対照飼料とした。 2)試験方法 411日齢の白色レグホン種の産卵鶏40羽を4群に分
け、各群に前記4種の飼料を給餌した。給餌開始後1,
2,及び4週目に採卵し、卵黄脂質のαーリノレン酸含
量を試験例3と同一の方法により測定した。尚、各群の
給餌開始前の卵についても同様に試験した。 3)試験結果 この試験の結果は表5に示すとおりである。表5から明
らかなように長鎖不飽和脂肪酸カルシウム塩の飼料への
配合量の増加により卵黄脂質のαーリノレン酸含量が増
加することが認められた。尚、この試験は、予備試験で
あるため、長鎖不飽和脂肪酸カルシウム塩の飼料への配
合量の詳細な範囲が明らかではないが、後記する試験例
からその範囲は前記のとおり決定される。
【表5】 〔試験例6〕この試験は、本発明の家禽飼料用配合物を
長期間給餌した家禽の内蔵の状態を調べるために行っ
た。 1)試料の調製 実施例1と同一の方法により調製した飼料(試験飼
料)、及び市販の家禽用飼料(豊橋飼料社製)を対照飼
料として使用した。 2)試験方法 316日齢の白色レグホン種の産卵鶏200羽を2群に
分け、試験飼料及び対照飼料を91日間給餌し、給餌開
始後92日目に各群から無作為に2羽を選別し、放血死
させ、解剖し、腹腔内諸臓器を肉眼で観察した。 3)試験結果 試験飼料給餌群及び対照飼料給餌群とも腹腔内脂肪量に
は差異が認められず、肝臓を除く他の臓器にも異常は認
められなかった。しかしながら、対照飼料給餌群の2羽
の肝臓には、鶴田克之等(熊本県養鶏試験場報告・昭和
61年度試験研究報告、第24巻、第58ページ、19
86年)の判定基準に基づく判定の結果、重度3の脂肪
肝が認められた。これに対して、試験飼料給餌群では、
飼料の脂肪含量が多いにもかかわらず、2羽の肝臓には
全く異常が認められなかった。一般に産卵鶏が脂肪肝に
罹患すれば、産卵率が低下することが報告されているか
ら、前記試験結果から本発明の家禽飼料用配合物は脂肪
肝の発症を防止することにより、産卵期間を延長してい
るものと推定される。尚、長鎖不飽和脂肪酸カルシウム
塩の種類及び配合割合を変更して試験を行っても、ほぼ
同等の結果が得られた。 〔試験例7〕この試験は、本発明の家禽飼料用配合物の
家禽飼料への好適な配合割合を調べるために行った。 1)試料の調製 表6に示す割合でアマニ油の長鎖不飽和脂肪酸カルシウ
ム塩を含む5種の試験飼料を実施例2と同一の方法によ
り調製した飼料、MCT油(太陽油脂社製)を用いたこ
とを除き参考例1と同一の方法により調製した脂肪酸カ
ルシウム塩を5%の割合で含む試験飼料、及び何も添加
しない市販の家禽用飼料(豊橋飼料社製)を対照飼料と
して使用した。 2)試験方法 320日齢の白色レグホン種の産卵鶏161羽を7群に
分け、各飼料を4週間給餌し、試験開始1週間の各群の
平均産卵率と、試験開始4週目の1週間の各群の平均産
卵率との差から産卵率の上昇値(%)を算出して比較し
た。 3)試験結果 この試験結果は、表6に示すとおりである。表6から明
らかなようにアマニ油の長鎖不飽和脂肪酸カルシウム塩
を0.5%未満の割合で含む試験飼料給餌群及びMCT
油脂脂肪酸カルシウム塩を5%の割合で含む試験飼料給
餌群の産卵率の上昇値は、対照飼料給餌群のそれとほぼ
同等であった。これに対してアマニ油の長鎖不飽和脂肪
酸カルシウム塩を0.5〜10.0%の割合で含む試験
飼料給餌群(第3群〜第6群)は、対照飼料給餌群のそ
れよりも産卵率の上昇が高く、特に第4群及び第5群で
は、顕著に高い値を示した。アマニ油の長鎖不飽和脂肪
酸カルシウム塩を10.0%を越えて家禽飼料に添加す
るのは、飼料のエネルギーが高くなり、家禽の生理上好
ましくない。従って、本発明においては長鎖不飽和脂肪
酸カルシウム塩を0.5〜10.0%の割合で家禽飼料
に添加する。尚、長鎖不飽和脂肪酸カルシウム塩の種類
を変更して試験を行っても、ほぼ同等の結果が得られ
た。
【表6】 参考例1 大豆油(太陽油脂社製)5kgを鹸化して得られた脂肪
酸のアルカリ石鹸の溶液に、塩化カルシウム1kgを溶
解した水溶液10lを徐々に加えて反応させ、静置して
脂肪酸カルシウム塩層と水層に分け、脂肪酸カルシウム
塩層を分離し、水洗、脱水、乾燥し、長鎖不飽和脂肪酸
カルシウム塩粉末約4.4kgを得た。 参考例2 アマニ油(太陽油脂社製)5kgに、水酸化カルシウム
0.82kgを加え、均一に混合し、のちリパーゼPL
−266(名糖産業社製)3.65gを分散した水1l
を添加し、約30分間常温で混合攪拌し、30時間静置
して反応させた。これを常法により破砕して、長鎖不飽
和脂肪酸カルシウム塩粉末約6.5kgを得た。 次に実施例を示して本発明をさらに詳述するが、本発明
は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】 実施例1 参考例2と同一の方法により調製したアマニ油の長鎖不
飽和脂肪酸カルシウム塩19.5kg、及び市販の糖蜜
(三井製糖社製)1kgを、ミキサー(愛工舎製)を用
いて均一に混合し、家禽飼料用配合物約20kgを得
た。 実施例2 参考例2と同一の方法により調製したアマニ油の長鎖不
飽和脂肪酸カルシウム塩46kg、及び市販のカラメル
DX50(池田糖化社製)5kgを、ミキサー(愛工舎
製)を用いて均一に混合し、家禽飼料用配合物約50k
gを得た。 実施例3 参考例1と同一の方法により調製した大豆油の長鎖不飽
和脂肪酸カルシウム塩24.5kgに、市販の糖蜜(三
井製糖社製)3kg及び市販のカラメルDX50(池田
糖化社製)3kgを添加し、ミキサー(愛工舎製)を用
いて均一に混合し、家禽飼料用配合物約30kgを得
た。 実施例4 市販のパーム油(太陽油脂社製)10kgに、水酸化カ
ルシウム1.8kg、市販の糖蜜(三井製糖社製)0.
65kg、及びアルファルファミール0.65kgを加
え、均一に混合し、のちリパーゼPL−266(名糖産
業社製)8gを分散した水1.8lを添加し、約30分
間、常温で混合攪拌し、30時間静置して反応させた。
これを常法により破砕し、家禽飼料用配合物約14.5
kgを得た。 実施例5 市販の家禽用飼料(豊橋飼料社製)57kgに、アマニ
油を用いたこと以外は実施例1と同一の方法により調製
した家禽飼料用配合物3kgを添加し、均一に混合し、
家禽飼料用配合物を含む家禽用飼料約60kgを得た。
この飼料を、316日齢の白色レグホン種の産卵鶏10
0羽に50日間常法により給餌した。そして飼料給餌前
後の破卵率を調べた結果、給餌前は1.9%、給餌後は
0.5%であり、この飼料の給餌により破卵率が顕著に
低下した。 実施例6 市販の家禽用飼料(豊橋飼料社製)95kgに、実施例
2と同一の方法により調製した家禽飼料用配合物5kg
を添加し、均一に混合し、家禽飼料用配合物を含む家禽
用飼料約100kgを得た。この飼料を、316日齢の
白色レグホン種の産卵鶏100羽に50日間常法により
給餌した。そして飼料給餌前後の卵の卵黄脂質のリノー
ル酸、及びαーリノレン酸含量を試験例3と同一の方法
により調べた結果、給餌前に産卵した卵ではリノール酸
及びαーリノレン酸含量が、それぞれ14.6%及び
0.3%であったが、給餌後に産卵した卵のそれらは、
14.1%及び5.6%であり、この飼料の給餌により
リノール酸含量は若干減少したが、αーリノレン酸含量
が約19倍に増加した。
【発明の効果】本発明によって奏せられる効果は、次の
とおりである。 (1)家禽類の産卵率を向上させるとともに、産卵期間
を延長させることができる。 (2)破卵率を顕著に低減することができ、その経済的
効果は莫大である。 (3)卵黄脂質中にリノレン酸及びドコサヘキサエン酸
等の長鎖不飽和脂肪酸を増強することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (71)出願人 591040144 太陽油脂株式会社 神奈川県横浜市神奈川区守屋町2丁目7番 地 (72)発明者 相井 孝允 熊本県菊池郡西合志町大字須屋2421 農林 水産省九州農業試験場内 (72)発明者 寺田 文典 熊本県菊池郡西合志町大字須屋2421 農林 水産省九州農業試験場内 (72)発明者 村岡 誠 熊本県菊池郡西合志町大字須屋2421 農林 水産省九州農業試験場内 (72)発明者 津留崎 正信 福岡県筑紫野市大字吉木587 福岡県農業 総合試験場畜産研究所内 (72)発明者 小野 晴美 福岡県筑紫野市大字吉木587 福岡県農業 総合試験場畜産研究所内 (72)発明者 小島 勇次 福岡県筑紫野市大字吉木587 福岡県農業 総合試験場畜産研究所内 (72)発明者 村上 忠勝 熊本県菊池郡合志町栄3801 熊本県農業研 究センター畜産研究所内 (72)発明者 松崎 正治 熊本県菊池郡合志町栄3801 熊本県農業研 究センター畜産研究所内 (72)発明者 早澤 宏紀 千葉県船橋市前原西2−11−10 (72)発明者 清水 隆司 神奈川県横浜市旭区南希望ケ丘118 森永 希望ケ丘寮 (72)発明者 石田 修三 神奈川県横浜市神奈川区入江1−27−54 (72)発明者 中村 年宏 東京都東久留米市滝山2−5−10−104

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炭素数18以上の長鎖不飽和脂肪酸カ
    ルシウム塩を有効成分として含有することを特徴とする
    家禽飼料用配合物。
  2. 【請求項2】 炭素数18以上の長鎖不飽和脂肪酸カ
    ルシウム塩80%(重量)以上、及び糖蜜、糖の加熱に
    よって生成する褐変物質、糖とアミノ酸の加熱によって
    生成する褐変物質、又はこれらの任意の割合の混合物2
    0%(重量)以下、の少なくとも2成分を有効成分とし
    て含有することを特徴とする家禽飼料用配合物。
  3. 【請求項3】 炭素数18以上の長鎖不飽和脂肪酸カ
    ルシウム塩を、少なくとも0.5%(重量)の割合で家
    禽用飼料に配合し、家禽に給餌するすることを特徴とす
    る家禽の飼育方法。
  4. 【請求項4】 炭素数18以上の長鎖不飽和脂肪酸カ
    ルシウム塩80%(重量)以上、及び糖蜜、糖の加熱に
    よって生成する褐変物質、糖とアミノ酸の加熱によって
    生成する褐変物質、又はこれらの任意の割合の混合物2
    0%(重量)以下、の少なくとも2成分からなる混合物
    を、長鎖不飽和脂肪酸カルシウム塩換算で少なくとも
    0.5%(重量)の割合で家禽用飼料に配合し、家禽に
    給餌することを特徴とする家禽の飼育方法。
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