JPH06287765A - 方向性電磁鋼板の張力被膜形成方法 - Google Patents

方向性電磁鋼板の張力被膜形成方法

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JPH06287765A
JPH06287765A JP7675693A JP7675693A JPH06287765A JP H06287765 A JPH06287765 A JP H06287765A JP 7675693 A JP7675693 A JP 7675693A JP 7675693 A JP7675693 A JP 7675693A JP H06287765 A JPH06287765 A JP H06287765A
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JP
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steel sheet
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film
tension
sol
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JP7675693A
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Takao Kanai
隆雄 金井
Hiroshi Tanemoto
啓 種本
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、二次再結晶焼鈍が完了した方向性
電磁鋼板表面に、十分な張力付与による鉄損低減をもた
らす絶縁被膜の形成方法を提供する。 【構成】 100GPa 以上のヤング率、鋼板と2×10
-6/K以上の熱膨張係数差を有する成分からなるゾルを
塗布・焼き付けることによる張力被膜の形成方法であ
る。1回の塗布、焼き付けで1μm以上の被膜形成を可
能にし、鋼板への大きな張力付与を可能にした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高い張力を付与する密
着性が良好な絶縁被膜を仕上げ焼鈍が完了した方向性電
磁鋼板表面に形成する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】方向性電磁鋼板は、(110),〔00
1〕を主方位とする結晶組織を有し、磁気鉄芯材料とし
て多用されており、エネルギーロスを少なくするために
鉄損を低減することが要求されている。方向性電磁鋼板
の鉄損を低減する手段としては、仕上げ焼鈍後の鋼板表
面にレーザービームを照射して局部的な歪を与え、それ
によって磁区を細分化する方法が特開昭58−2640
5号公報に開示されている。また鉄芯加工後の歪取焼鈍
(応力除去焼鈍)を施した後もその効果が消失しない磁
区細分化手段が、例えば特開昭62−86175号公報
に開示されている。
【0003】一方で、方向性電磁鋼板は外部張力を付与
することによっても磁区の細分化が起こり、鉄損が低下
することが知られている。発明者らの検討によれば、
1.5kgf/mm2 程度までの張力付与は鉄損低減に有効に
作用することがわかっている。現在の方向性電磁鋼板に
は通常、仕上げ焼鈍(二次再結晶焼鈍)中に形成される
フォルステライト質の一次被膜、およびその上のコロイ
ダルシリカ−リン酸塩系の二次被膜が形成されており、
これらの被膜によって板厚0.23mmの場合、約1kgf/
mm2 の張力が付与されている。したがって現行被膜の場
合、より大きな張力付与による鉄損改善の余地は残され
ており、これを実現できる被膜が望まれていた。
【0004】また方向性電磁鋼板の鉄損をより大きく改
善する方法として、仕上げ焼鈍完了後に上述の一次被
膜、および磁区の動きを阻害する鋼板表面近傍の内部酸
化層を除去し、地鉄表面の凹凸を取り除いて鏡面仕上げ
を行い、その表面に金属メッキを施す方法が特公昭52
−24499号公報に、さらにその表面に張力被膜を形
成する方法が例えば特公昭56−4150号公報、特開
昭61−201732号公報、特公昭63−54767
号公報、特開平2−213483号公報などに記載され
ている。この場合においても被膜による鋼板への張力付
与の大きい方が鉄損の改善効果が大きいものの、鏡面化
した鋼板では被膜の密着性が著しく低下するため、被膜
形成方法として真空蒸着、化学蒸着、スパッタリング、
イオンプレーティング、イオンインプランテーション、
溶射などの方法を用いるプロセスを提案している。
【0005】しかしながら、真空蒸着、化学蒸着、スパ
ッタリング、イオンプレーティングなどによって形成し
た被膜は密着性に優れ、張力付与によるかなりの鉄損向
上が認められるが、高真空を必要とし、また実用に供す
る膜厚を得るには長時間を必要とするなど生産性が極め
て低く、高いコストを要するなどの問題点を抱えてお
り、イオンインプランテーション、溶射による手法も電
磁鋼板の被膜形成に対しては工業的な手法とはいいがた
い。
【0006】これらに対し、より工業的な方法として、
ゾル・ゲル法を用いた被膜形成方法が提案されている。
例えば、特開平2−243770号公報には酸化物被膜
の形成について、特開平3−130376号公報には平
滑化した鋼板表面にゲル薄膜を形成し、その薄膜上に絶
縁被膜を被成する方法が開示されている。これらの技術
では従来と同様、塗布・焼き付けプロセスによる被膜形
成が可能であるものの、いずれの明細書中にも記述され
ているように、0.5μm以上の厚さの健全な被膜の形
成が極めて困難であるため、大きな張力付与をもたらす
厚さの被膜を得るためには繰り返しの塗布・焼き付けを
必要としたり、ゾル・ゲル被膜の上に他の手法による被
膜を形成する必要が生じていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこれら従来技
術における問題点を解決し、現行一次被膜、二次被膜、
あるいは鏡面化仕上げを施した仕上げ焼鈍完了後の鋼板
のいずれに対しても良好な密着性、および十分な張力付
与による鉄損低減をもたらす絶縁被膜の形成方法を提供
することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨とするとこ
ろは以下の通りである。 (1)焼き付け後の被膜中に構成成分として残存し、1
00GPa 以上のヤング率、または母材と2×10-6/K
以上の熱膨張係数差を有することによって張力付与効果
を有する成分(A)からなるゾルを準備する工程、該ゾ
ルを仕上げ焼鈍が完了した鋼板表面に塗布し、焼き付け
る工程、以上からなる方向性電磁鋼板の張力被膜形成方
法。 (2)成分(A)が10nm以上1500nm以下のセラミ
ック前駆体粒子からなり、かつpHが6.5以下または
8.0以上に調整されたゾルを用いる(1)記載の方向
性電磁鋼板の張力被膜形成方法。 (3)成分(A)が100nm超1500nm以下のセラミ
ック前駆体粒子からなり、かつpHが6.5以下または
8.0以上に調整されたゾルを用いる(1)記載の方向
性電磁鋼板の張力被膜形成方法。 (4)成分(A)がAl2 3 ,SiO2 ,TiO2
ZrO2 、MgO・Al2 3 ,2MgO・SiO2
MgO・SiO2 ,2MgO・TiO2 、MgO・Ti
2 ,MgO・2TiO2 ,Al2 3 ・SiO2 ,3
Al2 3 ・2SiO2 、Al2 3 ・TiO2 ,Zr
2 ・SiO2 ,ZrO2 ・TiO2 ,ZnO・SiO
2 、2MgO・2Al2 3 ・5SiO2 ,Li2 O・
Al2 3 ・2SiO2 、Li2 O・Al2 3 ・4S
iO2 ,BaO・Al2 3 ・SiO2 、からなる群よ
り選ばれた1種、または2種以上である(1)ないし
(3)のいずれかに記載の方向性電磁鋼板の張力被膜形
成方法。 (5)焼き付け後の被膜中に構成成分として残存し、1
00GPa 以上のヤング率、または母材と2×10-6/K
以上の熱膨張係数差を有することによって張力付与効果
を有する成分(A)、および焼き付け工程で他の被膜形
成成分、下地成分のうちの少なくとも1種と反応および
/または溶融することによって被膜形成温度を低下させ
る効果を有する成分(B)とからなる懸濁液を準備する
工程を有する方向性電磁鋼板の張力被膜形成方法。 (6)成分(B)が、室温において水に対する0.1%
以上の溶解度を持ち、少なくともその一部が水に溶解し
た形の懸濁液を用いる(5)記載の方向性電磁鋼板の張
力被膜形成方法。 (7)成分(B)がLi,B,F,Pの少なくとも1種
を含む化合物の1種、または2種以上である(5)また
は(6)記載の方向性電磁鋼板の張力被膜形成方法。 (8)焼き付け後の被膜中に構成成分として残存し、1
00GPa 以上のヤング率、または母材と2×10-6/K
以上の熱膨張係数差を有することによって張力付与効果
を有する成分(A)、焼き付け工程で他の被膜形成成
分、下地成分のうちの少なくとも1種と反応および/ま
たは溶融することによって被膜形成温度を低下させる効
果を有する成分(B)、および下地との密着性を向上さ
せる効果を有する成分(C)とからなる懸濁液を準備す
る工程を有する方向性電磁鋼板の張力被膜形成方法。 (9)成分(C)がTi,V,Mn,Fe,Co,N
i,Cu,Snの少なくとも1種を含む化合物の1種、
または2種以上である(8)記載の方向性電磁鋼板の張
力被膜形成方法。
【0009】
【作用】本発明の第1の形成方法は焼き付け後の被膜中
に構成成分として残存し、100GPa 以上のヤング率、
または母材と2×10-6/K以上の熱膨張係数差を有す
ることによって張力付与効果を有する成分(A)からな
るゾルを仕上げ焼鈍が完了した鋼板表面に塗布し、焼き
付ける方法である。
【0010】成分(A)は、焼き付け後に100GPa 以
上のヤング率、または母材と2×10-6/K以上の熱膨
張係数差を有していれば特に限定されるものではない
が、通常、セラミック前駆体粒子が好適に用いられる。
ここでセラミック前駆体粒子とは、焼き付け後にセラミ
ックスとなる粒子の総称であり、例えば金属酸化物、金
属酸化物の水和物、金属水酸化物、シュウ酸塩、炭酸
塩、硝酸塩、硫酸塩などの各種塩類、あるいはそれらの
複合体をさす。
【0011】なかでも成分(A)として好適に用いられ
る成分としては、Al2 3 ,SiO2 ,TiO2 ,Z
rO2 、MgO・Al2 3 ,2MgO・SiO2 ,M
gO・SiO2 ,2MgO・TiO2 、MgO・TiO
2 ,MgO・2TiO2 ,Al2 3 ・SiO2 ,3A
2 3 ・2SiO2 、Al2 3 ・TiO2 ,ZrO
2 ・SiO2 ,ZrO2 ・TiO2 ,ZnO・Si
2 、2MgO・2Al2 3 ・5SiO2 ,Li2
・Al2 3 ・2SiO2 、Li2 O・Al2 3 ・4
SiO2 ,BaO・Al2 3 ・SiO2 、およびこれ
らの成分の前駆体であり、1種類の成分を単独で、ある
いは2種以上の成分を混合して用いることができる。
【0012】ゾルの性状も特に限定されず、いかなるも
のも使用可能であるが、繰り返しの塗布・焼き付けを必
要としない、1回の工程で張力付与が可能な厚さの密着
性のよい被膜を得るためには、成分(A)が10nm以上
1500nm以下の粒子からなり、かつpHが6.5以下
または8.0以上に調整されたゾルが好適に用いられ
る。この方法は、従来技術の問題点であった厚い被膜に
おける亀裂の発生、密着の低下を抑制するために、以下
の新しい思想に基づいてなされたものであり、従来のゾ
ル・ゲル法の延長線上にあるものではない。
【0013】通常、ゾル・ゲル法とよばれる被膜形成技
術には大きく分けて2通りの方法があり、1つは金属ア
ルコキシドのような有機金属化合物、あるいは数量体オ
ーダーの極めて小さな粒子の重合・縮合反応により連続
的なネットワークを有するゲル体を生成させ、焼き付け
る方法であり(縮重合プロセス)、もう1つは、これよ
り大きいコロイド粒子が分散した液体からゾルを合成
し、その安定性を徐々に低下させてゲルを作製し、焼き
付ける方法(コロイドプロセス)である。
【0014】このうち、縮重合プロセスでは、1回の塗
布・焼き付け工程のみでは十分な張力の付与をもたらす
厚さの被膜の形成が困難である。通常、縮重合プロセス
ではネットワークの形成時、あるいはその後の乾燥時に
脱溶媒に伴なう大きな収縮が生じるが、被膜が薄い場合
には被膜と鋼板の密着力の方が収縮によって生じる応力
より大きいため、被膜は主として被膜面(鋼板面)に垂
直な方向に起こり、比較的健全な被膜が形成されるもの
の、被膜が厚い場合には収縮によって生じる応力が密着
力より大きくなるため被膜の剥離が生じたり、被膜に亀
裂が生じることとなる。
【0015】一方のコロイドプロセスにおいても同様の
問題点を抱えてはいるものの、縮重合プロセスと比較し
てはるかに容易に厚い被膜の形成が可能である。コロイ
ドプロセスでは、主としてpH変化などの化学的手法、
加熱による脱溶媒などの物理的手法のいずれかによって
ゾルをゲル化、さらに乾燥工程を経るものであるが、特
に物理的手法によるゲル化の場合、条件の制御により乾
燥時に生じる被膜の収縮(この場合は主として粒子の凝
集に起因する)によって生じる応力(凝集力)をコロイ
ド粒子の配列の変化などによって緩和することが可能で
ある。
【0016】特に比較的高濃度のコロイド粒子を反発力
(静電的な反発力が最適であると考えられる)によって
安定的に分散したゾルの場合には、除去する溶媒の量が
少ないため乾燥による収縮が少なく、また粒子間には反
発力が作用し、乾燥時における粒子の凝集も極めて少量
に抑えられるため、縮重合プロセスよりはるかに厚い被
膜の形成が可能となり、高張力付与を可能にする厚さの
被膜を1回の塗布・焼き付け工程で形成することを可能
にした。
【0017】10nm以上の粒子径は上述のコロイドプロ
セスに適した大きさであり、より好ましくは30nm以上
である。特に厚い被膜の形成を行う場合には100nm超
の粒子が好適である。一方、粒子径が1500nm以上で
は安定なゾルを形成するのが極めて困難であり、得られ
るゲル・被膜が不均質なものとなり易く、好ましくは1
000nm以下、より好ましくは500nm以下である。ま
たゾルの粒径は塗布する鋼板の表面状態によっても変え
ることが好ましく、平滑な鋼板に対しては上述の範囲内
でより細かい粒子径のゾルを用いることによって極めて
密着性の優れた被膜を得ることができる。
【0018】ゾルのpHは6.5以下、または8.0以
上に調整される。これはすでに述べた通り、静電的な作
用によって粒子を互いに反発させる効果を有する。セラ
ミック前駆体粒子は、通常、その等電点(粒子の持つ表
面電荷が0になる点)が中性付近に存在するため、pH
を6.5以下に調整することにより、正に帯電した粒子
の表面に負に帯電したアニオンが吸着して電気2重層を
形成し、互いに反発しあって安定的に存在している。
【0019】しかしながら酸化けい素粒子のように等電
点が2前後のpH領域に存在する場合にはゾルのpHを
8.0以上に保持することによってやはり安定的な分散
状態が得られる。ゾルのpHがこれらの範囲外にある場
合、粒子間の反発力が小さくなり高濃度のゾルが得られ
にくくなるだけでなく、粒子同士の凝集も起こるため、
すでに述べたようにゲルの乾燥時に被膜面に平行に凝集
力が発生してひび割れが生じたり、最終的に不均質な被
膜となったりする。また、pHが極端に小さかったり大
きかったりした場合には、ゾルの塗布・焼き付け工程で
鋼板が酸化されるケースもあり、より好ましいpHは2
〜5.5、または8.0〜12.5である。
【0020】塗布する鋼板は仕上げ焼鈍が完了し、二次
再結晶が完了していればいかなるものも支障なく用いる
ことができる。通常工程で仕上げ焼鈍を施し、表面にフ
ォルステライト質の一次被膜が形成された鋼板、またそ
の上にリン酸塩系の二次被膜を形成した鋼板はもちろん
のこと、著しい低鉄損化を達成するために一次被膜を何
らかの方法で除去し、金属面を露出させた鋼板、あるい
は化学研磨、電解研磨などの研磨、または平坦化焼鈍な
どの手法によって鏡面化した鋼板、さらには一次被膜が
生成しないようなプロセスによって金属面が露出したま
まの状態で得られる二次再結晶鋼板などである。
【0021】塗布はロールコーターなどのコーター、デ
ィップ法、あるいは電気泳動法など従来公知の方法で行
い、乾燥・ゲル化の後、焼き付ける。焼き付けの温度
は、被膜が形成される温度範囲であれば特に限定されな
いが、好ましくは500〜1350℃の範囲から選択さ
れ、特に好ましくは500〜1200℃である。
【0022】焼き付けの雰囲気は特に限定されないが、
鋼板の酸化を避ける必要がある場合には窒素などの不活
性ガス雰囲気、窒素−水素混合ガスなどの還元性雰囲気
などから選択することができる。また、特に金属面が露
出している鋼板に被膜形成を行う場合に、雰囲気に若干
の水蒸気を導入することによって密着性が著しく改善さ
れることがあるが、このような場合には適当な露点の雰
囲気を用いてもなんら差し支えはない。
【0023】本発明の第2の形成方法は、前述の成分
(A)、および焼き付け工程で他の被膜形成成分、母材
鋼板成分のうちの少なくとも1種と反応することによっ
て被膜形成温度を低下させる効果を有する成分(B)と
からなる懸濁液を仕上げ焼鈍が完了した鋼板表面に塗布
し、焼き付ける方法である。このうち成分(B)は、焼
き付け工程において、懸濁液中の他の被膜形成成分、ま
たは下地成分のいずれかと反応してその一部、あるいは
全部が異なる成分となり、より大きな張力付与をもたら
したり、被膜と鋼板との密着性を格段に高めたりするこ
とで、結果として被膜形成温度を低下させる働きを有す
る成分である。特に、焼き付け工程において上述の反応
生成物、あるいは成分(B)が単独で溶融する場合に大
きな張力付与、著しい密着性向上が認められる場合があ
るため特に好適に用いられる。
【0024】成分(B)は、以上の要件を満たす限りに
おいては特に限定されないが、より好ましい形態として
は成分(A)との均一な混合を達成するために、少なく
ともその一部を溶媒に溶解させた形で添加することが好
ましく、通常溶媒として用いる水に対する溶解度が室温
で0.1%、好ましくは0.5%、より好ましくは1%
以上である。
【0025】なかでも被膜形成温度の低減に顕著な効果
を有する成分(B)としては、Li,B,F,Pの少な
くとも1種を成分として含む化合物の1種、または2種
以上である。成分(B)は被膜形成助剤、あるいは触媒
的な役割を果たす場合もあるため、少ない含有量から効
果が認められ、好ましい含有量としては、ゾル中の固体
分換算で0.01%以上、より好ましくは0.1%以
上、さらに好ましくは0.5%以上である。また成分
(B)の含有量が多くなりすぎた場合、被膜による張力
付与効果が損なわれるため70%以下、より好ましい含
有量は50%以下である。
【0026】第2の製造方法において塗布する懸濁液
は、溶媒中に微粒子が分散したゾル、コロイドに代表さ
れる安定微粒子分散系、あるいはセラミック前駆体粒子
を溶媒に分散させたスラリーなどのいずれであっても特
に支障なく用いられるが、外観が良好で顕著な張力付与
効果をもたらす塗布液は、第1の製造方法で述べたよう
な制御された粒径の粒子を含有し、pHを調整したゾル
を用いることが好ましい。
【0027】第2の形成方法における被膜形成鋼板、塗
布方法、焼き付け条件などは第1の形成方法と同じでな
んら差し支えなく、そのまま好適に用いられる。
【0028】本発明の第3の形成方法は、成分(A),
(B)に下地との密着性を高める効果を有する成分
(C)とからなる懸濁液を仕上げ焼鈍が完了した鋼板表
面に塗布し、焼き付ける方法である。成分(C)は特に
鏡面化鋼板のように地鉄に直接被膜を形成する場合に、
鋼板最表面の酸化を促進することによって密着性向上を
もたらすものである。被膜と鋼板との間に酸化層を介す
ることは、密着をもたらす1つの有効な手段であるが、
この酸化層を焼き付け工程において効率的に形成させる
ための成分が成分(C)である。
【0029】特に成分(C)としてTi,V,Mn,F
e,Co,Ni,Cu,Snの少なくとも1種を成分と
して含む化合物の1種、または2種以上を0.01%以
上10%未満、好ましくは0.01%以上5%未満含有
するゾルを塗布、焼き付けた場合に密着に寄与する酸化
層が有効に形成され、結果として被膜と鋼板の密着性が
格段に向上する。成分(C)の含有量がこの範囲を超え
て少ない場合には十分な密着がもたらされず、この範囲
以上に含有した場合には良好な密着性は得られるもの
の、界面の凹凸が激しくなり、鉄損低減に支障をきたす
こととなる。以下に本発明の実施例を用いて説明する
が、本発明はかかる実施例にのみ限定されるものではな
い。
【0030】
【実施例】
実施例1 表1に示したゾルを以下の方法により作製した。Al2
3 ゾルは市販のベーマイト粉末(CONDEA VI
STA社;Dispal)に蒸留水を加え、撹拌して作
製したもの、または市販のゾル(日産化学;AS−20
0)を使用した。SiO2 ,TiO2 ,ZrO2 ゾル
は、市販のゾル(日産化学など)に必要に応じてpH調
整を行った。複合酸化物ゾルについては、上記酸化物ゾ
ルを複合酸化物の組成となるように配合し、均一になる
まで撹拌することによって得た。
【0031】このうち、MgO成分はマグネシウムジエ
トキシドを加水分解して得た微粉末を、BaO成分は金
属バリウムをメタノールに溶解して得たバリウムメトキ
シドを加水分解して作製したゾルを、ZnO成分は市販
の超微粉末を分散、pH調整して用いた。Li2 O・A
2 3 ・2SiO2 ,Li2 O・Al2 3 ・4Si
2 は、市販のリチウムシリケートゾルをベースに作製
した。
【0032】これらのゾルを、Siを3.3wt%含有す
る板厚0.2mmの仕上げ焼鈍後のフォルステライト質被
膜(一次被膜)が形成された鋼板、その表面にリン酸塩
系被膜(二次被膜)が形成された鋼板に、焼き付け後で
1m2 で約5gとなるように塗布し、乾燥させてゲル化
した後、1000℃で60秒、窒素中で焼き付けを行い
均質な被膜を得た。被膜の性状は表1中に併記した。
【0033】結晶子サイズは、結晶性が極めて良好な金
属Si粉末を標準とし、ピーク幅の広がりから算出し
た。被膜の外観、密着性は極めて良好であり、片面のす
べての被膜を除去し、その曲がりの程度から算出した張
力、被膜形成前後の飽和磁束密度、鉄損を表1に示し
た。これより、被膜形成により鉄損値が格段に向上した
電磁鋼板が得られていることがわかる。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】実施例2 実施例1と同様に塗布用ゾルを作製した。これらのゾル
を、Siを3.3wt%含有する板厚0.2mmの仕上げ焼
鈍後の高磁束密度方向性電磁鋼板を硫酸とふっ酸の混合
液中に浸漬し、表面のフォルステライト質被膜(一次被
膜)を除去して地鉄を露出させた後、ふっ酸と過酸化水
素を含む溶液中で地鉄表面を平滑にし、鏡面に仕上げた
鋼板、または焼鈍分離剤としてアルミナを塗布して仕上
げ焼鈍を行うことによって、フォルステライト質被膜を
生成させない条件で鏡面化した高磁束密度方向性電磁鋼
板に、焼き付け後で1m2 で約5gとなるように塗布
し、乾燥させてゲル化した後、850℃で60秒、体積
比で3:1の窒素−水素混合雰囲気中で焼き付けを行い
均質な被膜を得た。被膜の性状、鋼板の磁気特性を表2
に示した。これより被膜形成により鉄損値が格段に向上
した電磁鋼板が得られていることがわかる。
【0039】
【表5】
【0040】
【表6】
【0041】
【表7】
【0042】
【表8】
【0043】実施例3 実施例1と同様にして作製したゾルに、成分(B),成
分(C)として表3に示した成分を添加した塗布液を作
製し、実施例1の2種類の被膜付き鋼板、実施例2の2
種類の鏡面化鋼板に、焼き付け後で1m2 で約5gとな
るように塗布し、乾燥させてゲル化した後、900℃で
60秒、水素を体積割合で4%含有する窒素雰囲気中で
焼き付けを行い均質な被膜を得た。被膜の性状、鋼板の
磁気特性を表3に示した。これより被膜形成により鉄損
値が格段に向上した電磁鋼板が得られていることがわか
る。
【0044】
【表9】
【0045】
【表10】
【0046】
【表11】
【0047】
【表12】
【0048】
【発明の効果】本発明は、平滑化した表面であっても密
着性に優れ、必要十分な張力を鋼板に付与することによ
って鉄損の改善をもたらす絶縁被膜を方向性電磁鋼板の
表面に形成する方法を提供するものである。被膜形成方
法としてはゾル・ゲル法を提案しているが、従来のゾル
・ゲル法とは異なる技術思想に基づいてなされたもので
あり、繰り返し工程、あるいは多重被膜を必要とせずに
均質な張力付与被膜を形成することができ、従来の被膜
形成方法と比較して安価で簡便、かつ高い生産性で製造
可能な方法であり、その工業的効果は甚大である。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 焼き付け後の被膜中に構成成分として残
    存し、100GPa 以上のヤング率、または母材と2×1
    -6/K以上の熱膨張係数差を有することによって張力
    付与効果を有する成分(A)からなるゾルを準備する工
    程、該ゾルを仕上げ焼鈍が完了した鋼板表面に塗布し、
    焼き付ける工程、以上からなる方向性電磁鋼板の張力被
    膜形成方法。
  2. 【請求項2】 成分(A)が10nm以上1500nm以下
    のセラミック前駆体粒子からなり、かつpHが6.5以
    下または8.0以上に調整されたゾルを用いる請求項1
    記載の方向性電磁鋼板の張力被膜形成方法。
  3. 【請求項3】 成分(A)が100nm超1500nm以下
    のセラミック前駆体粒子からなり、かつpHが6.5以
    下または8.0以上に調整されたゾルを用いる請求項1
    記載の方向性電磁鋼板の張力被膜形成方法。
  4. 【請求項4】 成分(A)が Al2 3 ,SiO2 ,TiO2 ,ZrO2 、 MgO・Al2 3 ,2MgO・SiO2 ,MgO・S
    iO2 ,2MgO・TiO2 、 MgO・TiO2 ,MgO・2TiO2 ,Al2 3
    SiO2 ,3Al2 3 ・2SiO2 、 Al2 3 ・TiO2 ,ZrO2 ・SiO2 ,ZrO2
    ・TiO2 ,ZnO・SiO2 、 2MgO・2Al2 3 ・5SiO2 ,Li2 O・Al
    2 3 ・2SiO2 、 Li2 O・Al2 3 ・4SiO2 ,BaO・Al2
    3 ・SiO2 、 からなる群より選ばれた1種、または2種以上である請
    求項1ないし3のいずれかに記載の方向性電磁鋼板の張
    力被膜形成方法。
  5. 【請求項5】 焼き付け後の被膜中に構成成分として残
    存し、100GPa 以上のヤング率、または母材と2×1
    -6/K以上の熱膨張係数差を有することによって張力
    付与効果を有する成分(A)、および焼き付け工程で他
    の被膜形成成分、下地成分のうちの少なくとも1種と反
    応および/または溶融することによって被膜形成温度を
    低下させる効果を有する成分(B)とからなる懸濁液を
    準備する工程を有する方向性電磁鋼板の張力被膜形成方
    法。
  6. 【請求項6】 成分(B)が、室温において水に対する
    0.1%以上の溶解度を持ち、少なくともその一部が水
    に溶解した形の懸濁液を用いる請求項5記載の方向性電
    磁鋼板の張力被膜形成方法。
  7. 【請求項7】 成分(B)がLi,B,F,Pの少なく
    とも1種を含む化合物の1種、または2種以上である請
    求項5または6記載の方向性電磁鋼板の張力被膜形成方
    法。
  8. 【請求項8】 焼き付け後の被膜中に構成成分として残
    存し、100GPa 以上のヤング率、または母材と2×1
    -6/K以上の熱膨張係数差を有することによって張力
    付与効果を有する成分(A)、焼き付け工程で他の被膜
    形成成分、下地成分のうちの少なくとも1種と反応およ
    び/または溶融することによって被膜形成温度を低下さ
    せる効果を有する成分(B)、および下地との密着性を
    向上させる効果を有する成分(C)とからなる懸濁液を
    準備する工程を有する方向性電磁鋼板の張力被膜形成方
    法。
  9. 【請求項9】 成分(C)がTi,V,Mn,Fe,C
    o,Ni,Cu,Snの少なくとも1種を含む化合物の
    1種、または2種以上である請求項8記載の方向性電磁
    鋼板の張力被膜形成方法。
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