JP3279450B2 - 絶縁被膜が表面に形成されている方向性電磁鋼板 - Google Patents
絶縁被膜が表面に形成されている方向性電磁鋼板Info
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Description
を形成し、鋼板に優れた電磁気的、機械的特性を付与し
た方向性電磁鋼板に関するものである。
酸化物被膜を付与して製品の高性能化、高付加価値化を
図る技術が研究され、実用化されてきている。中でも方
向性電磁鋼板の分野においては、まず仕上げ焼鈍中に焼
鈍分離剤と鋼板表面のSiO2を含む酸化膜を反応させ
てフォルステライトが主体のグラス被膜を形成し、さら
にその上に張力付与型の絶縁被膜を焼き付けることによ
り磁気特性の向上が図られている。
開昭48−39338号公報、特公昭53−28375
号公報などに開示されている、コロイド状シリカ−リン
酸塩−クロム酸塩系の被覆剤を主として使用されてきて
いる。この絶縁被膜は、800〜900℃の連続炉処理
により鋼板表面に焼き付けることができる。
減、騒音低減の要請より、方向性電磁鋼板に更なる電磁
特性の向上が求められている。この対策として、例えば
グラス被膜を除去し、電解処理などの鏡面仕上げを鋼板
に施す方法が種々検討されている。さらに絶縁被膜につ
いても、より鋼板に与える張力が大きく、方向性電磁鋼
板の磁気特性を向上できるものが研究されてきている。
中でも特開平6−65755号公報に開示されている酸
化アルミニウム−酸化ホウ素系の絶縁被膜は、鋼板への
張力付与が大きく、かつ従来のコロイド状シリカ−リン
酸塩−クロム酸塩系と同様のプロセスによって被膜形成
が可能である。
特公昭53−28375号公報に開示されているよう
に、熱膨張が小さくて鋼板との熱膨張差が大きく、かつ
ヤング率が高いという条件を満たすことが必要である。
酸化アルミニウム−酸化ホウ素系の絶縁被膜において
は、線膨張係数が約4ppm/℃と小さくて、ヤング率が2
00GPa と大きいAl4 B2 O9 又はAl18B4 O33の
結晶相が生成しているため、鋼板に対して大きな張力を
与えて磁気特性が向上すると考えられている。
低膨張でヤング率が高い被膜材料としては、低膨張でヤ
ング率の高いセラミック材料、例えば線膨張係数が約8
ppm/℃、ヤング率が400GPa のα−アルミナなどが候
補として考えられる。
ルミニウム−酸化ホウ素系以外の、低熱膨張でヤング率
の大きいセラミックスを電磁鋼板用絶縁被膜として利用
するには、なお課題が残されている。即ち従来の技術で
は、これらのセラミック材料を鋼板上に被膜として形成
するのに必要な温度が高くなりすぎるという問題があっ
た。例えばα−アルミナ相を含む絶縁被膜を形成する場
合、従来の水酸化アルミニウムなどを原料として鋼板上
に塗布し、被膜焼き付け過程においてα−アルミナ相を
生成させる方法においては、被膜焼き付けを1100℃
以上で行わないとα−アルミナ相を得ることができな
い。このように、現行の絶縁被膜と同等の800〜90
0℃で焼き付けが行え、かつ低熱膨張で高ヤング率の材
料よりなり、鋼板への張力付与が大きい絶縁被膜が求め
られていた。
するために鋭意研究を行った結果、本発明者らは、α−
アルミナ相に代表される低熱膨張で高ヤング率のセラミ
ック微結晶を原料として用い、かつこれと高い反応性を
有するマトリックス相を同時に含むならば、従来と同様
の製造条件によっても、焼き付け後の被膜組織が、原料
のセラミック微結晶に由来するセラミック相と、このセ
ラミック相の間を強固に結合させる酸化物マトリックス
相からなった、絶縁被膜が形成可能であることを見出し
た。さらに原料のセラミック微結晶との反応性の高いマ
トリックス相の開発を進め、本発明を完成させるに至っ
た。
ックス相はアルミニウムと、ホウ素を含む酸化物で、A
l2 O3 換算したアルミニウムの量を100重量部とす
るときに、B2 O3 で換算したホウ素の量が10〜70
重量部であり、かつセラミック相:マトリックス相の体
積比が1:100〜400:100の範囲であることを
特徴とする絶縁被膜が表面に形成されている方向性電磁
鋼板。
なり、マトリックス相はアルミニウムと、バナジウム、
ビスマス、鉛の3種の中より選ばれる1種又は2種以上
を含む酸化物で、Al2 O3 換算したアルミニウムの量
を100重量部とするときに、V2 O5 ,Bi2 O3 ,
PbOでそれぞれ換算したバナジウム、ビスマス、鉛の
量の合計が0.5〜50重量部であり、かつセラミック
相:マトリックス相の体積比が1:100〜400:1
00の範囲であることを特徴とする絶縁被膜が表面に形
成されている方向性電磁鋼板。
にホウ素を含み、かつB2 O3 で換算したホウ素の量
が、Al2 O3 で換算したアルミニウム100重量部に
対し、10〜70重量部である絶縁被膜が表面に形成さ
れていることを特徴とする方向性電磁鋼板。
おいて、セラミック相がα−アルミナ,ムライト,コー
ディエライト,ZrO2 ,TiO2 ,Mg2 Al
2 O4 ,Mg2 SiO4 ,窒化ケイ素、或いは炭化ケイ
素であることを特徴とする絶縁被膜が表面に形成されて
いる方向性電磁鋼板。
数が8ppm/℃以下、ヤング率が200GPa 以上と、電磁
鋼板へ大きな張力付与ができる機械的特性の条件を満た
し、かつ被膜焼き付け工程において、アルミニウム化合
物、ホウ素化合物、バナジウム化合物、ビスマス化合
物、或いは鉛化合物と反応するものである。
ばα−アルミナ,ムライト,コーディエライト,ZrO
2 ,TiO2 ,Mg2 Al2 O4 ,Mg2 SiO4 ,窒
化ケイ素、或いは炭化ケイ素などが本発明で用いるセラ
ミック微結晶として好適である。
径が0.01〜5μm、好ましくは3μm以下の結晶粉
末を用いることが必要である。粒径がこの範囲を外れて
大きすぎると、焼き付け後の被膜がひび割れるなどの問
題が生じ、優れた絶縁被膜が得られなくなる。
したアルミニウム化合物100重量部に対し、1〜40
0重量部のα−アルミナ相当量が適当である。α−アル
ミナ相当量とは、セラミック材料の密度を<ρ>とした
ときに、 <α−アルミナ相当量(重量部)>= <セラミック微結晶の量(重量部)>×3.9/<ρ> で計算される量である。
るのは、これより多いと密着性の良い絶縁被膜が形成困
難になるためであり、この範囲よりも少なくなると、セ
ラミック微結晶を添加することによる磁気特性の向上が
得られなくなるためである。
溶媒に溶解するものだけでなく、溶媒に分散するもので
あれば、サブミクロンサイズのコロイド状などの形態を
とる1種或いは複数種を組み合わせて用いることが可能
である。
は、被膜焼き付け過程において結晶性又は/及び非晶質
の酸化アルミニウムを生成し、セラミック微結晶、及び
他のマトリックス成分と反応するものであれば良く、酸
化アルミニウムの他に、例えば水酸化アルミニウム、塩
化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウ
ム、酢酸アルミニウムなどが好適である。また被膜焼き
付け過程において結晶性又は/及び非晶質の酸化ホウ素
を生成し、他の成分と反応するホウ素化合物としては、
酸化ホウ素以外に、ホウ酸が好適である。
しては、酸化バナジウムの他、バナジン酸塩、塩化バナ
ジル、硫酸バナジルなどが好適であり、ビスマス化合物
としては、酸化ビスマス、硫酸ビスマス、硝酸ビスマス
などが好適であり、鉛化合物としては、酸化鉛、水酸化
鉛、塩化鉛、硫酸鉛、硝酸鉛、酢酸鉛などが好適であ
る。しかし本発明においては、使用可能なアルミニウム
化合物、ホウ素化合物、バナジウム化合物、ビスマス化
合物、鉛化合物を、上記のもののみに特に限定はしな
い。
ジウム化合物、ビスマス化合物、鉛化合物より選ばれる
1種又は2種以上の化合物の量を、V2 O5 ,Bi2 O
3 ,PbOで各々換算した合計が、Al2 O3 換算した
アルミニウム化合物100重量部に対し、0.5〜50
重量部、好ましくは1〜20重量部とする。
化合物も本発明の範囲外になると、被膜の焼き付け反応
が十分進まず、磁気特性が低下するなどして本発明の効
果が得られない。また化合物の量がこの範囲より多い
と、被膜焼き付け後の電磁鋼板の磁気特性の向上が十分
でなくなる。
れをB2 O3 で換算すると、Al2O3 で換算したアル
ミニウム化合物の100重量部に対して10〜70重量
部、より好ましくは30〜45重量部である。これより
ホウ素化合物の量が多いと、被膜中に結晶相を一部生成
はするものの、十分な磁気特性の向上が得られないだけ
でなく、焼き付け後の被膜に汚れが生じやすくなり、被
膜のべたつきも大きくなる。
なく、かつバナジウム化合物、ビスマス化合物、鉛化合
物の量も本発明の範囲外になると、被膜の鋼板への密着
が不十分になったり、被膜焼き付け後の磁気特性の向上
が十分でなくなる。
一に分散でき、被膜焼き付け過程において速やかに蒸発
するものであれば良く、水が経済性にも優れた溶媒であ
る。しかし使用可能な溶媒は水に限定されず、例えばエ
タノール、メタノールなどのアルコールも本発明におい
て可能である。
膜焼き付け工程の温度設定、更には焼き付ける絶縁被膜
の厚さなどによって異なるため、一概に限定することは
できない。しかし鋼板への被覆剤の塗布が容易であるた
めには、原料濃度が40重量%以下となる溶媒量が好ま
しい。
た、フォルステライト質の酸化物層(グラス被膜)を有
する方向性電磁鋼板上へ塗布、焼き付けるのに好適なだ
けでなく、フォルステライト質酸化物が形成されない条
件、或いはそれを除去するための条件で製造され、鏡面
化処理を施された電磁鋼板に対しても良好な密着性を有
しており、張力付与型の絶縁被膜として有効である。
コーティング法や、スプレー法といった既知の方法が採
用可能であり、特に制約はない。被膜の焼き付け工程
は、より低コストでの生産を考慮すると、連続的な通板
ラインを用いることが好ましい。
板の速度などは、被覆剤の組成や絶縁膜の厚さ、さらに
製造設備によっても異なるため、一概に決めることはで
きないが、被膜焼き付けの温度範囲は、600〜110
0℃の範囲であることが必要である。この温度範囲より
低温の被膜焼き付けによっては、十分な張力付与ができ
ず、被膜の鋼板への密着性も不十分である。またこの範
囲より高温で被膜焼き付けを行うと、被膜表面に割れが
発生するなどし、良好な被膜形成が行えない。
被膜の厚さは、有効な張力が得られることと同時に、電
磁鋼板の占積率を考慮しながら決める必要があり、目的
に応じて0.1〜10μmの範囲で選ぶことができる。
被膜の厚さが0.1μmより薄くなると被膜の絶縁性が
十分でなくなる。また10μmより厚くなると占積率が
低下するので好ましくない。
膜の組織は、線膨張係数が8ppm/℃以下、ヤング率が2
00GPa 以上、粒径が0.01〜5μmの間であるセラ
ミック相と、アルミニウム、ホウ素、バナジウム、ビス
マス、鉛などを含む酸化物マトリックス相の2相からな
っている。
比は、1:100〜400:100の範囲であることが
必要である。この範囲よりもセラミック相が少ないと、
セラミック相添加による磁気特性向上の効果が得られな
くなる。またこの範囲よりも多くのセラミック相を含む
場合、被膜の鋼板への密着が不十分となる。
面に有する厚さ0.23mmの方向性電磁鋼板に、表1に
示す被覆剤をそれぞれロールコーティング法により塗布
して、300℃で5分間乾燥後、800℃で窒素雰囲気
中にて3分間被膜焼き付けを行った。
水を用いた。またセラミック微結晶として粒径0.1μ
m以下のα−アルミナ粉を用い、アルミニウム化合物と
してコロイド状水酸化アルミニウムを用いた。ホウ素化
合物としてはメタホウ酸を用いた。またバナジウム化合
物として酸化バナジウムもしくはバナジン酸アンモニウ
ムを用い、ビスマス成分として酸化ビスマスを用い、鉛
成分としては酸化鉛を用いた。
磁鋼板における被膜密着性と被膜性状に関する結果、及
び被膜張力と磁気特性を示す。被膜の鋼板への密着性は
20mmφのロール棒を用いての剥離状態から判断し、5
0%以上剥離した場合は×、20〜50%では△、20
%未満では○として評価した。被膜性状は表面性状から
目視にて判断した。張力の測定は、片面の絶縁被膜を除
去した電磁鋼板の曲がり量から算出した。また磁気特性
として、磁束密度と鉄損の測定を実施した。
厚さ0.2mmの方向性電磁鋼板に、粒径0.1μm以下
のα−アルミナ粉を100重量部、コロイド状水酸化ア
ルミニウムをAl2 O3 換算で100重量部、メタホウ
酸をB2 O3 換算で35重量部、バナジン酸アンモニウ
ムをV2 O5 換算で3重量部、酸化ビスマスを5重量
部、水を溶媒として分散させた被覆剤をロールコーティ
ング法により塗布して、300℃で5分間乾燥後、水素
3%を含有する窒素雰囲気中で、850℃,2分間被膜
焼き付けを行った。
り、被膜の密着性は良好であった。被膜による張力は
1.5kgf/mm2 であった。W17/50 で評価した鉄損値
は、0.80W/kgであり、被膜焼き付け前の1.12
W/kgに対して大幅な磁気特性の向上が達成され、優れ
た電磁鋼板が得られた。
スによっても、方向性電磁鋼板の表面にα−アルミナな
どのセラミック相を含有する張力付与型の絶縁被膜を形
成することが可能となり、磁気特性の優れた方向性電磁
鋼板を提供することができる。
Claims (4)
- 【請求項1】 セラミック相とマトリックス相よりな
り、マトリックス相はアルミニウムと、ホウ素を含む酸
化物で、Al2 O3 換算したアルミニウムの量を100
重量部とするときに、B2 O3 で換算したホウ素の量が
10〜70重量部であり、かつセラミック相:マトリッ
クス相の体積比が1:100〜400:100の範囲で
あることを特徴とする絶縁被膜が表面に形成されている
方向性電磁鋼板。 - 【請求項2】 セラミック相とマトリックス相よりな
り、マトリックス相はアルミニウムと、バナジウム、ビ
スマス、鉛の3種の中より選ばれる1種又は2種以上を
含む酸化物で、Al2 O3 換算したアルミニウムの量を
100重量部とするときに、V2 O5 ,Bi2 O3 ,P
bOでそれぞれ換算したバナジウム、ビスマス、鉛の量
の合計が0.5〜50重量部であり、かつセラミック
相:マトリックス相の体積比が1:100〜400:1
00の範囲であることを特徴とする絶縁被膜が表面に形
成されている方向性電磁鋼板。 - 【請求項3】 請求項2において、マトリックスにホウ
素を含み、かつB2O3 で換算したホウ素の量が、Al
2 O3 で換算したアルミニウム100重量部に対し、1
0〜70重量部である絶縁被膜が表面に形成されている
ことを特徴とする方向性電磁鋼板。 - 【請求項4】 セラミック相がα−アルミナ,ムライ
ト,コーディエライト,ZrO2 ,TiO2 ,Mg2 A
l2 O4 ,Mg2 SiO4 ,窒化ケイ素、或いは炭化ケ
イ素であることを特徴とする請求項1,2又は3記載の
絶縁被膜が表面に形成されている方向性電磁鋼板。
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---|---|---|---|
JP04155795A JP3279450B2 (ja) | 1995-03-01 | 1995-03-01 | 絶縁被膜が表面に形成されている方向性電磁鋼板 |
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Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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JPH08239769A JPH08239769A (ja) | 1996-09-17 |
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ID=12611740
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP04155795A Expired - Fee Related JP3279450B2 (ja) | 1995-03-01 | 1995-03-01 | 絶縁被膜が表面に形成されている方向性電磁鋼板 |
Country Status (1)
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Families Citing this family (3)
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KR101632876B1 (ko) | 2013-12-23 | 2016-06-23 | 주식회사 포스코 | 전기강판용 코팅제, 이의 제조방법 및 이를 사용한 전기강판 코팅방법 |
KR101904308B1 (ko) * | 2016-12-22 | 2018-10-04 | 주식회사 포스코 | 방향성 전기강판용 절연피막 조성물 및 이를 이용한 절연피막 형성방법, 방향성 전기강판 및 방향성 전기강판의 제조 방법 |
-
1995
- 1995-03-01 JP JP04155795A patent/JP3279450B2/ja not_active Expired - Fee Related
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