JP3406799B2 - ほう酸アルミニウム被膜を有する一方向性珪素鋼板の製造方法 - Google Patents

ほう酸アルミニウム被膜を有する一方向性珪素鋼板の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鋼板に大きな張力
を付与するほう酸アルミニウム質被膜を表面に有するこ
とで鉄損を低減した一方向性珪素鋼板の製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】一方向性珪素鋼板は、(100)[00
1]を主方位とする結晶組織を有し、磁気鉄芯材料とし
て多用されており、特にエネルギーロスを小さくするた
めに鉄損の小さい材料が求められている。5%以下の珪
素を含有する一方向性珪素鋼板の鉄損の低減には鋼板に
張力を付与することが有効であり、1.5kgf/mm2 程度
までの張力付与によって効果的に鉄損が低減できること
が知られている。この張力は、通常、表面に形成された
被膜によって付与されている。
【0003】これまでに発明者らは、特開平6−657
54号公報、特開平6−65755号公報などにおい
て、アルミナゾルとほう酸とを含む微粒子分散液を塗布
し、乾燥・ゲル化の後、焼き付けることによる新しい酸
化物被膜の形成方法、および得られる酸化アルミニウム
−酸化ほう素系複合被膜、ほう酸アルミニウム質高張力
被膜を提案してきた。この被膜は、鋼板に対して従来被
膜の1.5〜2倍の高い張力を付与することができ、結
果として鋼板の磁気特性を改善できることを見いだして
いる。また、この製造方法を用いることで、より低鉄損
が期待できる1次被膜のない鋼板、鏡面化仕上げを行っ
た鋼板に対しても良好な密着性を確保することができ、
著しい磁気特性の改善が達成できる。
【0004】しかしながら、本被膜の研究開発を進めて
いく過程で、これまであまり検討の対象とならなかった
塗布原料、すなわち成分以外の微粒子分散液の性状が、
鋼板に対する密着性、被膜張力など得られる被膜の特性
に大きな影響を及ぼすことがわかってきた。特に重要な
性質としてあげられるのは、アルミナゾル(ベーマイト
ゾル)粒子のb軸方向の結晶性、言い換えると結晶水含
有量、およびB2 3/Al2 3 の比率(組成比)で
ある。
【0005】このうち、B2 3 /Al2 3 の比率
(組成比)については、特開平6−306628号公
報、特開平7−207424号公報、特開平7−278
831号公報などにおいて、望ましい値として、モル比
率で0.1〜5の範囲を提示している。一方のゾル粒子
に関しては、特開平5−226134号公報、特開平6
−287765号公報、特開平8−283958号公報
などに粒子の大きさに関する規定が開示されているのみ
であり、ゾルの結晶性、あるいは含有結晶水に関して
は、これまでに開示されている例はない。またこれまで
は、通常、単一性状のベーマイトを出発原料としてお
り、異なる性状のベーマイトを混合して用いた例は開示
されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、密着性に優
れ、より大きな張力を付与するほう酸アルミニウム被膜
を有する一方向性珪素鋼板の製造方法を提供することを
目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、仕上げ焼鈍が
完了した珪素鋼板表面に、ほう酸、100℃で乾燥した
ときの結晶水含有量がAl2 3 ・xH2 Oで表記した
ときにx≦2.0を満たすベーマイトゾルを酸化アルミ
ニウム源全体に対する酸化物換算の重量割合で20%以
上、および100℃で乾燥したときの結晶水含有量がA
2 3 ・xH2 Oで表記したときにx≧2.5を満た
すベーマイトゾルを同じく酸化アルミニウム源全体に対
する酸化物換算の重量割合で20%以上混合して含む微
粒子分散液を塗布し、乾燥・ゲル化、焼き付け・固化工
程を経てほう酸アルミニウム被膜を形成せしめることを
特徴とする一方向性珪素鋼板の製造方法を要旨とする。
また、ほう酸とベーマイトゾルの組成比が、酸化ほう素
換算で12超〜40重量%のほう酸、酸化アルミニウム
換算で60〜88未満重量%のベーマイトゾルであるこ
とを特徴とする前記の一方向性珪素鋼板の製造方法を要
旨とする。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の一方向性珪素鋼板の製造
方法は、2種類以上の異なる結晶水含有量のベーマイト
ゾルとほう酸とを含む微粒子分散液を、仕上げ焼鈍(2
次再結晶焼鈍)が完了した珪素鋼板に塗布し、乾燥・ゲ
ル化の後、焼き付け・固化工程を経て表面に酸化物被膜
を形成するものである。2種類以上の異なる結晶水含有
量のベーマイトゾルとは、100℃で乾燥したときの結
晶水含有量が、Al2 3 ・xH2 Oで表記したときに
x≦2.0を満たすベーマイトゾル、および100℃で
乾燥したときの結晶水含有量が、Al2 3 ・xH2
で表記したときにx≧2.5を満たすベーマイトゾルを
必須の成分とするものであり、さらに上記性状を満たさ
ない2.0<x<2.5のベーマイトゾルを含む場合も
ある。
【0009】発明者らの検討によれば、b軸方向の結晶
性が比較的良好、すなわち結晶水含有量の比較的少ない
ベーマイトは鋼板に対する密着性に優れ、また、結晶が
しっかりしているゆえに経時変化が少なく、ゾルとして
分散している場合でも安定性に優れている。一方で、b
軸方向の結晶性が低く、結晶性含有量の比較的大きなベ
ーマイトは、ゾル状態において、温度、あるいは微量成
分など環境に対する粘度依存性が大きいことから、これ
を用いた場合に微粒子分散液全体を最も好ましい粘度に
調整することが容易であり、また、一般的には高い被膜
張力が得られる傾向にある。
【0010】この理由については検討中であるが、後者
のベーマイトの場合、大きな結晶水量の原因であるb軸
方向の結合力の弱い水素結合層には水、あるいは微量添
加物などを取り込みやすいため、環境に応じて性質、た
とえば液粘度を変化させやすく、ほう酸(イオン)を取
り込んだ場合にはアルミニウム成分との反応性が向上
し、より大きな張力が得られるためであると推察してい
る。
【0011】これらの両者を所定量以上混合して用いる
ことにより、上記の利点を最大限に享受することができ
る。これらの効果が得られる良好な結晶性のベーマイト
の範囲としては100℃で乾燥したときの結晶水含有量
が、Al2 3 ・xH2 Oで表記したときにx≦2.0
を満たすベーマイトゾルであり、好ましくはx≦1.8
である。一方、結晶性の低いベーマイトの範囲として
は、100℃で乾燥したときの結晶水含有量が、Al2
3 ・xH2 Oで表記したときにx≧2.5を満たすベ
ーマイトゾルであり、好ましくはx≧2.7、さらに好
ましくはx≧3.0である。
【0012】混合する割合は、良好な結晶性で結晶水含
有量の少ないベーマイトゾルを酸化アルミニウム源全体
に対する酸化物換算の重量割合で20%以上、好ましく
は30%以上含有し、結晶性が悪く、結晶水含有量の大
きなベーマイトゾルを同じく酸化アルミニウム源全体に
対する酸化物換算の重量割合で20%以上とするのが良
い。混合割合がこの範囲を超えて結晶水含有量の少ない
ベーマイトゾルが少なすぎる場合、密着性のあまり良く
ない被膜となり、また、塗布液の安定性に問題が生じる
可能性がある。一方で結晶水の多いベーマイトが少なす
ぎる場合、微粒子分散液の粘度が低くなりすぎて付着量
の制御が困難になる場合があり、張力もそれほど高くな
い被膜が得られる。
【0013】密着性に関しては下地鋼板に大きく依存し
て変化するが、上記の数値であればほとんどすべての一
方向性珪素鋼板に対して密着性が確保できる。また、上
記性状のベーマイトゾルを所定量以上混合して用いると
ころに本発明の特徴があり、それ以外の性状のベーマイ
ト、すなわち2.0<x<2.5のベーマイトも最大で
60%含んでも一向に差し支えない。
【0014】本発明のxの値は、乾燥、加熱条件によっ
て変化するため以下の方法で確定する。粉末状体のもの
は表面の吸着水を、すでに分散状態にあるものは溶媒を
除去するために100℃で乾燥する。その後、700℃
以上、重量変化が起こらない温度まで加熱して、その前
後の重量変化を測定する。この重量減少の割合からxの
値を計算する。このときのxの値には100℃での乾燥
時間、700℃以上での加熱時間依存性があり、好まし
くは無限大の乾燥時間、加熱時間をかけたときの値とす
るのがよい。しかしながら発明者らの検討では、乾燥は
50時間以上、加熱は、たとえば700℃の場合でも3
0分以上でxの値はほとんど一定となるため、これらの
時間で測定、計算した値で代用することができる。
【0015】また、使用するゾルによっては前記の重量
減少は、必ずしも水分(H2 O)だけによるとは限ら
ず、ゾル安定化剤、不純物などからの寄与も含む場合が
あるが、これらを明確に区別するのは困難であるため、
本発明では見かけ上、すべて結晶水によるものとして計
算した値を用いる。ベーマイトは結晶性、あるいは含水
率によってベーマイト、擬ベーマイト、無定形などと慣
習的に呼ばれており、たとえばxの値が2.5以上の結
晶の場合、ほとんど無定形、非晶質に近いものである
が、本明細書中では特に区別することなくベーマイト
(結晶)で統一している。
【0016】本発明で用いるベーマイトは、市販されて
いるもの、あるいは独自に合成したもののいずれでも好
適に用いることができる。本発明をより明確にするため
に、市販のベーマイトゾルの代表銘柄がいずれに属する
か以下に述べる。まず、x≦2.0のベーマイトゾルと
しては、AS−520(日産化学工業社製)、AS−
2,AS−3(いずれも触媒化成社製)、23N4−2
0,23N4−80(いずれもCondea社製 Vistaブラン
ド)などがあげられる。一方、x≧2.5のベーマイト
ゾルの代表例としては、AS−100,AS−200
(いずれも日産化学工業社製)などがある。合成品の場
合には、出発原料、反応温度、時間、pH、熟成時間な
どを制御することによって所望の結晶性,結晶性含有量
のベーマイトゾルを作製することができるが、本発明の
条件を満たすベーマイトゾルであれば全く支障なく用い
ることができる。
【0017】また本発明の製造方法では、2種類の性状
の異なるベーマイトゾルを必須成分として用いるが、用
いる原料としては必ずしも2種類である必要はなく、本
発明の条件を満たしている限り3種類あるいはそれ以上
を混合して用いても一向に差し支えない。また、市販品
と合成品を同時にブレンドして用いることも何ら問題は
ない。
【0018】塗布液である微粒子分散液に含まれるB2
3 /Al2 3 の比率(組成比)は、重量割合で12
/88〜40/60(ただし、12/88の組み合わせ
は含まない)の範囲である。従来、この比率はモル比で
0.1〜5、すなわち重量割合ではおよそ6/94〜7
8/22の範囲が好ましいと開示されている。従来の開
示範囲はかなり広いが、発明者らの検討でも、この範囲
で被膜張力、密着性など特性のバランスのとれた被膜が
得られることがわかっている。しかしながら、発明者が
鋭意研究を重ねた結果、本発明の性状のベーマイトゾル
を用いた場合、特に本発明の組成範囲で極めて特性の優
れた被膜が得られることを見いだした。本発明の態様に
準ずる場合、組成比がこの範囲を超えてB2 3 が少な
い場合、被膜張力が小さくなるため十分な鉄損改善効果
が得られない。一方で、B2 3が多すぎる場合、化学
量論組成からの過剰分は未反応物として残存するため、
耐水性、耐食性が低下したり、耐熱性、耐スティッキン
グ性に劣る被膜となる可能性がある。より好ましいB2
3 /Al2 3 の比率は、重量割合で20超/80未
満〜40/60、さらに好ましくは26超/74未満〜
36/64である。
【0019】本発明の微粒子分散液中には、上述のベー
マイトゾル、ほう酸以外に微量の添加物を含んでいても
一向に差し支えない。通常よく用いられる添加物として
は、酸化珪素前駆体化合物、遷移金属化合物、アルカリ
/アルカリ土類金属化合物、希土類元素化合物、無機
酸、有機酸等の酸、アンモニアなどであり、目的に応じ
て必要量添加することができる。
【0020】上記の如き微粒子分散液を、5%以下のS
iを含有する仕上げ焼鈍が完了した珪素鋼板表面に、ロ
ールコーター等のコーター、ディップ法、スプレー吹き
付け、あるいは電気泳動法など従来公知の方法によって
塗布する。塗布方法は特に限定されず、液性状に応じて
最適な方法を選択すればよい。ここでいう仕上げ焼鈍が
完了した鋼板とは、(1)従来公知の一方向性電磁鋼板
の製造工程の中で仕上げ焼鈍を行って、表面にその工程
で生じるフォルステライト質の被膜が形成された鋼板、
(2)上記のフォルステライト質の被膜および付随的に
生成している界面酸化層を酸に浸せきして除去した鋼
板、(3)上記(2)で得た鋼板を水素中で平坦化焼鈍
した鋼板、あるいは化学研磨・電解研磨等の研磨を行っ
た鋼板、(4) 被膜生成に対して不活性であるアルミナ粉
末など、または塩化物等の微量添加物を添加した従来公
知の焼鈍分離剤を用い、フォルステライト質の焼鈍被膜
が生成しない条件で仕上げ焼鈍を行った鋼板等を指す。
【0021】本発明の一方向性珪素鋼板最表面の被膜
は、片面あたり鋼板厚さの2%を超えないように形成す
る。被膜が鋼板厚さの2%を超える場合においては、張
力付与による鉄損低減効果はほぼ一定で飽和する領域で
あり、かえって厚い被膜のために占積率を低下すること
となる。
【0022】塗布した鋼板は、乾燥することでゲル化を
生ぜしめ、その後、最終的に不活性ガス、または水素を
含有する還元性雰囲気中500〜1200℃で焼き付け
・固化を行い、ほう素およびアルミニウムの酸化物から
なる絶縁被膜を形成する。酸化性の雰囲気中での焼き付
けは、鋼板が酸化する可能性があるため好ましくない。
特に1次被膜を持たない鋼板は雰囲気酸化に対して敏感
であり、制御された酸素ポテンシャルの雰囲気で焼き付
けることが好ましい。また、低鉄損化をねらって表面を
平滑にした鋼板は、表面、あるいは被膜との界面が少し
でも酸化によって損傷を受け、凹凸が生じた場合、顕著
な特性の低下が生じるため、特に注意して条件を設定す
ることが好ましい。焼き付け温度が500℃未満の場
合、ゲル中のベーマイトの分解が不十分で酸化物となら
ず、不完全な被膜のままである可能性が高い。また、1
200℃を超える場合、特に大きな不都合はないものの
経済的ではない。より好ましくは、700〜1200℃
の温度範囲であり、この範囲であれば密着性、被膜張力
ともに優れた良好な被膜が得られる。
【0023】
【実施例】
(実施例1)x=1.6であるアルミナゾル(前記AS
−520)、x=3.2であるアルミナゾル(前記AS
−200)、市販のほう酸試薬を表1に示した割合で配
合し、必要に応じて蒸留水を加えて塗布用の微粒子分散
液を作製した。これを、フォルステライト被膜がなく平
滑な表面を有する、Siを3.2%含有する厚さ0.2
mmの一方向性珪素鋼板に、焼き付け後の被膜厚さが片面
あたり約2μmとなるようにロールコーターで塗布し
た。
【0024】その後、直ちに乾燥・ゲル化工程を経て最
終的にH2 を75 vol%含有するN2 雰囲気中で850
℃、30秒間焼き付けてほう酸アルミニウム質被膜を形
成し、絶縁被膜を有する一方向性珪素鋼板を製造した。
得られた一方向性珪素鋼板、および表面のほう酸アルミ
ニウム質被膜の特性を表1に併記した。
【0025】被膜の密着性は、20mmφの円柱の周囲
に、その角度が180゜となるように巻き付け試験を行
い、その剥離状況から評価した。耐水性は、沸騰した蒸
留水中に60分間浸せきした試験材の重量変化を測定
し、浸せきした被膜量に対する重量減少割合の大小で評
価した。耐水性の評価基準は、1wt%未満の重量減少で
あれば合格とした。被膜張力は、片面の被膜を除去した
鋼板のそりの大きさから測定し、試験材10枚の平均値
とした。B8 ,W17/50 も同様に試験材10枚の平均値
とした。
【0026】
【表1】
【0027】表1から、本発明の範囲をはずれてx≦
2.0のベーマイトの配合量が多い組成の比較例1,2
においては、被膜張力、磁気特性が良くない値であり、
逆にx≧2.5のベーマイトの配合量が多い組成である
比較例3,4においては密着性が著しく悪い結果となっ
ている。これに対し、本発明の方法、すなわち制御され
た結晶性、含水量のベーマイトゾルを所定以上の割合で
配合した微粒子分散液を塗布・焼き付けることにより形
成したほう酸アルミニウム質被膜は、密着性、耐水性、
被膜張力のいずれにも優れ、また、この被膜を形成した
一方向性珪素鋼板は、顕著な低鉄損化が達成されている
ことがわかる。
【0028】(実施例2)x=1.5であるベーマイト
ゾル(前記23N4−80)、実験室で合成したベーマ
イトを分散・解膠したゾル(x=4.5)、市販のほう
酸試薬を表2に示した割合に配合し、蒸留水を加えて分
散処理を施し、塗布用の微粒子分散液を作製した。これ
を、Siを3.2%含有する厚さ0.2mmの、フォルス
テライト質の1次被膜を有する仕上げ焼鈍が完了した一
方向性珪素鋼板に、焼き付け後の被膜厚さが片面あたり
約2μmとなるようにロールコーターで塗布した。
【0029】その後、直ちに乾燥・ゲル化工程を経て最
終的にH2 を3 vol%含有するN2雰囲気中で800
℃、30秒間焼き付けてほう酸アルミニウム質被膜を形
成し、絶縁被膜を有する一方向性珪素鋼板を製造した。
被膜の密着性、耐水性、被膜張力、および鋼板のB8 ,
W17/50 を実施例1と同様に評価し、表2に併記した。
【0030】
【表2】
【0031】表2から、いずれの配合量においても良好
な性質のほう酸アルミニウム被膜が形成されるが、特に
本発明の請求項2の方法、すなわち制御されたベーマイ
トゾルを用い、B2 3 /Al2 3 比率を12超/8
8未満〜40/60に調整した微粒子分散液を塗布・焼
き付けることにより形成したほう酸アルミニウム質被膜
は、密着性、耐水性、被膜張力のいずれにも優れ、ま
た、この被膜を形成した一方向性珪素鋼板は、顕著な低
鉄損化が達成されていることがわかる。
【0032】(実施例3)実施例2で用いた粉末状ベー
マイトゾル23N4−80、実施例1で用いたアルミナ
ゾルAS−200、および市販のほう酸試薬を表3に示
した割合に配合し、蒸留水を加えて分散処理を施し、塗
布用の微粒子分散液を作製した。これを、フォルステラ
イト被膜がなく平滑な表面を有する、Siを3.2%含
有する厚さ0.2mmの一方向性珪素鋼板に、焼き付け後
の被膜厚さが片面あたり約2μmとなるようにロールコ
ーターで塗布した。
【0033】その後、直ちに乾燥・ゲル化工程を経て最
終的にH2 を75 vol%含有するN2 雰囲気中で850
℃、30秒間焼き付けてほう酸アルミニウム質被膜を形
成し、絶縁被膜を有する一方向性珪素鋼板を製造した。
被膜の密着性、耐水性、被膜張力、および鋼板のB8 ,
W17/50 を実施例1と同様に評価し、表3(表3−1,
3−2)に併記した。
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】
【0036】表3から、本発明の範囲外でx=1.5の
ベーマイトゾルが多い比較例1,2,4,6の組成で
は、被膜張力が十分でなく、磁気特性も良好なものが得
られていない。また、x=3.2のベーマイトゾルが多
い比較例3,5,7,8の組成では、密着性があまり良
くない。本発明の方法、すなわち制御された結晶性、含
水率のベーマイトゾルを用いた微粒子分散液を塗布・焼
き付けることにより形成したほう酸アルミニウム質被膜
は、密着性、耐水性、被膜張力のいずれにも優れ、また
この被膜を形成した一方向性珪素鋼板は、顕著な低鉄損
化が達成されているが、特に請求項2に示したB2 3
/Al2 3 比率に調整した場合に特に良好な結果が得
られていることがわかる。
【0037】
【発明の効果】本発明の製造方法による一方向性珪素鋼
板は、従来被膜より大きな張力を付与するほう酸アルミ
ニウム質被膜を表面に有することで良好な磁気特性を示
し、加えて密着性、および耐水性等の化学的安定性にも
優れている。また、本発明の一方向性珪素鋼板の製造方
法は、従来の被膜形成方法と同じ塗布・焼き付けによる
方法であり、設備的にも従来のものをそのまま使用する
ことができるため、工業的な量産性、汎用性の観点から
も工業的効果は甚大である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平8−239769(JP,A) 特開 平7−207424(JP,A) 特開 平7−228977(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 22/00 - 22/86 C21D 9/46 501 H01F 1/16

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 仕上げ焼鈍が完了した珪素鋼板表面に、
    ほう酸、100℃で乾燥したときの結晶水含有量がAl
    2 3 ・xH2 Oで表記したときにx≦2.0を満たす
    ベーマイトゾルを酸化アルミニウム源全体に対する酸化
    物換算の重量割合で20%以上、および100℃で乾燥
    したときの結晶水含有量がAl2 3・xH2 Oで表記
    したときにx≧2.5を満たすベーマイトゾルを同じく
    酸化アルミニウム源全体に対する酸化物換算の重量割合
    で20%以上混合して含む微粒子分散液を塗布し、乾燥
    ・ゲル化、焼き付け・固化工程を経てほう酸アルミニウ
    ム被膜を形成せしめることを特徴とする一方向性珪素鋼
    板の製造方法。
  2. 【請求項2】 ほう酸とベーマイトゾルの組成比が、酸
    化ほう素換算で12超〜40重量%のほう酸、酸化アル
    ミニウム換算で60〜88未満重量%のベーマイトゾル
    であることを特徴とする請求項1に記載の一方向性珪素
    鋼板の製造方法。
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