JP3324633B2 - 低鉄損一方向性電磁鋼板およびその製造方法 - Google Patents

低鉄損一方向性電磁鋼板およびその製造方法

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JP3324633B2 JP08622096A JP8622096A JP3324633B2 JP 3324633 B2 JP3324633 B2 JP 3324633B2 JP 08622096 A JP08622096 A JP 08622096A JP 8622096 A JP8622096 A JP 8622096A JP 3324633 B2 JP3324633 B2 JP 3324633B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、低鉄損で耐水性に
優れ、かつ保管時の錆発生が著しく少ない一方向性電磁
鋼板、及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】電磁鋼板は、磁気を利用した電気機器に
使用されることから鉄損が低いことが求められ、このた
めに磁気損失の低減のための開発が行われてきた。特に
磁化容易軸を圧延方向に揃えた方向性電磁鋼板は鉄損が
低く、変圧器など低鉄損が必要とされる機器に広く利用
されている。
【0003】この方向性電磁鋼板には、鋼板の磁化容易
軸である圧延方向に張力を加えると鉄損がさらに下がる
という特性があるため、特公昭53−28375号公報
にあるように、鋼板表面に燐酸アルミニウム−酸化珪素
−酸化クロムからなる無機質の被膜原料を塗布した後に
焼き付け、鋼板との熱膨張差で鋼板に張力を加えて鉄損
を改善する方法が提案されている。
【0004】張力を与える張力被膜は、線熱膨張係数の
絶対値が小さいほど張力の付与効果が大きいため、低熱
膨張かつ高ヤング率の材質からなる被膜を方向性電磁鋼
板上に形成することが望ましい。このような化合物とし
ては様々なものが考えられるが、焼き付け法による被膜
の形成法では、高温で焼き付けを行わなければならない
などの問題がある。
【0005】一方、特開昭61−201732号公報で
は、塗布焼き付け法で生成の困難なTiNなどの被膜を
気相法にて生成し、鉄損を大きく改善する方法が提案さ
れている。気相法による被膜形成は、通常の被膜の形成
条件では高い焼き付け温度を必要とする被膜組成でも、
比較的低温に鋼板表面を保ったままで行えるとの利点が
あるが、真空系を要し、また処理時間も長いためにコス
トの面での問題が大きかった。
【0006】他方、最近では特開平4−222850号
公報にあるように、ゾルゲル法を用いて比較的低温で鋼
板表面に張力被膜を形成する方法が開示されている。こ
れによれば、通常の被膜の焼き付け法により、燐酸アル
ミニウム−酸化珪素−酸化クロム複合被膜より優れた低
熱膨張性、高ヤング率を示す硼酸アルミニウムが形成で
き、この被膜を有した方向性電磁鋼板は低鉄損となり、
良好な磁気特性が得られる。
【0007】しかし、これで得られる電磁鋼板は、燐酸
アルミニウム−酸化珪素−酸化クロム複合被膜を有する
鋼板に比べて耐腐食性に劣ることがあり、高湿度中に放
置しておくと、発錆を起こす場合があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来法にお
ける被膜よりも張力付与効果に優れ、かつ耐錆性に優れ
た被膜を有した方向性電磁鋼板を、簡便な方法により得
ることを目的としたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、鋼板表面に、
ヤング率が100GPa 以上、鋼板との線熱膨張係数差が
2×10-6以上である第一層と、燐酸アルミニウムを含
む第二層の二層からなる被膜を有し、低鉄損で耐水性に
優れ、保管時の錆発生が著しく少ない一方向性電磁鋼板
に関するものである。さらに、被膜の第一層が硼酸アル
ミニウムを含むことを特徴とすることを要旨とするもの
である。
【0010】またこのような鋼板において、被膜の第二
層では燐酸アルミニウム以外に、酸化珪素、クロム化合
物を含み、それぞれは重量比で第二層全体に対し、二燐
酸アルミニウムで50〜70%、酸化珪素で20〜50
%、三酸化クロムで0.5〜10%であることを要旨と
するものである。
【0011】また、第一層が硼酸アルミニウム以外に鉄
化合物を含み、第一層全体に占める割合が重量比でそれ
ぞれ硼酸アルミニウムが50%以上、Fe2 3 で換算
した鉄化合物が硼酸アルミニウムに対して0.1〜20
%存在することを要旨とする。
【0012】さらに、第一層の硼酸アルミニウムが結晶
質として第一層全体に対して重量比で50%以上である
ことを要旨とする。さらにこのような鋼板において、被
膜の焼き付け温度を400〜1000℃として、第一
層、第二層あるいは第二層、第一層をこの順に形成する
方法を要旨とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する。
本発明では、張力被膜の機能発現を実現する層(第一層
と呼ぶ)と、被膜の耐錆性、その他の外的環境に対して
機能を発現する層(第二層と呼ぶ)とに分けて形成す
る。張力の発現を担う被膜の第一層は、ヤング率が10
0GPa 以上、鋼板との線熱膨張係数差が2×10-6以上
とすることで、低鉄損の鋼板を得るための十分な張力が
得られる。
【0014】被膜による張力は被膜焼き付け後の鋼板と
被膜との熱膨張差により発生するため、その大きさは被
膜のヤング率と鋼板と被膜の線熱膨張係数差の積に比例
する。従って、被膜のヤング率と鋼板の線熱膨張係数差
が大きいほど、被膜が鋼板に与える張力は大きくなる。
【0015】発明者らが検討した結果、ヤング率が10
0GPa 以上、鋼板との線熱膨張係数差が2×10-6以上
とすると、鉄損改善のための十分な張力を付与する被膜
が実現できる。このような化合物としてムライト、コー
デュエライト、硼酸アルミニウムなど様々な化合物が適
用できるが、なかでも製造条件の見地から硼酸アルミニ
ウムが最適である。
【0016】第一層において被膜を構成する化合物の形
態は、張力を発生させるためには非晶質の硼酸アルミニ
ウム相でも十分であるが、より大きな張力を発生させる
ためには結晶質の硼酸アルミニウムとすることが望まし
い。硼酸アルミニウムとよばれる成分系には、Al4
2 9 ,Al184 33があり、実際にはこの混合系や
準安定状態の硼酸アルミニウムが生成するが、このいず
れの結晶系でも張力付与層とすることができる。
【0017】また、張力付与層のなかで硼酸アルミニウ
ム相が占める割合は、50wt%以上であれば十分な張力
付与効果が期待でき、より望ましくは硼酸アルミニウム
相の割合が70wt%以上である。さらに、張力付与層の
なかで結晶質硼酸アルミニウム相が占める割合は、50
wt%以上であれば十分な張力付与効果が期待でき、より
望ましくは結晶質硼酸アルミニウム相の割合が80wt%
以上である。
【0018】第一層中に鉄化合物を導入すると硼酸アル
ミニウム層の耐水性を改善することができるが、特に鉄
化合物を硼酸鉄とすると良い。硼酸鉄は、Fe3
5 ,FeBO3 ,Fe3 BO6 や非晶質など様々な形
態をとりうるが、これには特に制限はない。
【0019】鉄化合物の量は少なすぎると耐水性に対し
て効果がなく、多すぎると第一層の張力付与能が低下す
るため、その量は鉄の量をFe2 3 で換算した鉄化合
物が硼酸アルミニウムに対して0.1〜20wt%とする
と良い結果が得られ、1〜5wt%の範囲で特に良い結果
が得られる。硼酸アルミニウム相や鉄化合物の相の同定
には、透過型電顕や、X線回折、XPSによる手法を用
いることができる。
【0020】被膜中の化合物の量を決めるためには透過
型電顕による透過像、電子線回折像の結果を用いるが、
このような方法では、第一層中には添加した鉄量に相当
した硼酸鉄などの結晶質の鉄化合物が見られない場合が
ある。これは、鉄化合物が非晶質の状態で存在するため
と考えられるが、このような場合でも耐錆性について、
被膜中に鉄化合物を加えた効果は十分に得られる。
【0021】第一層は鋼板に対する張力付与を目的とし
ているため、薄すぎると鋼板への付与張力が十分ではな
く、厚すぎると大きな張力が得られるが、鋼板をトラン
スコアに組み立てた場合の占積率の低下をもたらして望
ましくないため、その厚さは鋼板両面の第一層の被膜を
合わせて鋼板の0.5〜2%の範囲とすると良い結果が
得られる。
【0022】第二層は主に鋼板に耐食性を与えるもので
ある。この第二層を燐酸アルミニウムのみではなく、酸
化珪素と酸化クロムを含む層とするとより良い結果が得
られ、これには特公昭53−28375号公報と同等の
成分を使うことができる。
【0023】この被膜は特公昭53−28375号公報
に開示されているように、コロイド状シリカ4〜16重
量%、燐酸アルミニウムが重燐酸アルミニウム換算で3
〜24重量%、無水クロム酸を0.2〜4.5重量%含
んだ塗布液を塗布、乾燥、焼き付けすることによって得
られる。
【0024】張力付与は第一層に担わせるため、第二層
の厚みは第一層に比較して薄くすることができる。ただ
し、第二層が薄すぎると防錆性が十分でなくなり、厚く
すると高い防錆性が得られるが、占積率の低下をもたら
すために望ましくない。このような条件から、第二層の
膜厚は0.1μm以上の厚さが望ましい。
【0025】次に、本発明の電磁鋼板を好適に製造する
方法について述べる。第一層の硼酸アルミニウムからな
る被膜は、硼素成分とアルミニウム成分を含む塗布液を
作製し、これを鋼板上に塗布、乾燥し、焼き付ける手法
により得ることができる。ここで硼素成分としては水溶
液を得易い硼酸を用いると良く、硼酸の形態としてはオ
ルト硼酸、メタ硼酸、酸化硼素などのいずれでも良い
が、作業性の面からオルト硼酸が適当である。
【0026】アルミニウム成分としては、酸化アルミニ
ウム前駆体を用いると良い結果が得られる。酸化アルミ
ニウム前駆体とは、酸化アルミニウムはもとより、ベー
マイトに代表される酸化アルミニウムの水和物、水酸化
アルミニウムなどを指す。また、硝酸アルミニウム、塩
化アルミニウムなどのアルミニウム塩類も用いることが
できる。
【0027】第一層中の鉄化合物については、第一層の
塗布液にゾルまたは塩の形で鉄化合物を導入すると良
い。鉄化合物のゾルとしては、水酸化鉄またはFeOO
Hで表されるものや、塩としては水溶性の硝酸鉄などが
好適に用いられるが、鉄源としてはとくにこれらに限定
されるものではない。
【0028】第二層被膜もまた、該成分を含む塗布液を
作製し、これを塗布、乾燥、焼き付けを行うことによっ
て得られる。燐酸アルミニウムまたは、これに加えて酸
化珪素と酸化クロムを含む被膜を得るための塗布液とし
ては、燐酸アルミニウムまたは、これに加えて酸化珪素
前駆体、無水クロム酸を水で溶解して得ると良い。ここ
で酸化珪素前駆体は被膜の焼き付け後に酸化珪素となる
ものを指し、酸化珪素の水和物、酸化水酸化珪素、各種
珪素化合物がこれに含まれる。
【0029】これらの量を限定した理由は、燐酸アルミ
ニウムが二燐酸アルミニウムとして70wt%より多いと
第二層の被膜が白濁しやすくなり、50wt%より少ない
と第二層の被膜の密着性が十分に得られないためであ
る。また、酸化珪素が20wt%に満たないと第二層の被
膜の外観が良好でなくなり、50wt%より多いと第二層
の被膜の密着が十分に得られない。またクロム化合物が
三酸化クロムで0.5wt%に満たないと被膜の防食性が
十分に得られず、10wt%を超えると第二層の被膜の外
観が損なわれるためである。
【0030】第一層と第二層の鋼板上での構造は、鋼板
/第一層/第二層あるいは鋼板/第二層/第一層のいず
れの順序をとることもできるが、鋼板に効率よく張力を
与え、また第二層の防錆層を薄くするために、鋼板/第
一層/第二層の順に被膜を構成すると良い結果が得られ
る。
【0031】ここでの鋼板とは仕上げ焼鈍済み電磁鋼板
であり、これは(1)従来公知の方法で仕上げ焼鈍を行
って、表面にフォルステライトを主体とする仕上げ焼鈍
による被膜(一次被膜と呼ぶ)が形成された鋼板、
(2)一次被膜及び付随的に生成している内部酸化層を
酸に浸漬して除去した鋼板、(3)上記(2)で得た鋼
板に水素中で平坦化焼鈍を施した鋼板、或いは化学電解
研磨などの研磨を施した鋼板、(4)被膜生成に対して
不活性であるアルミナ粉末など、または塩化物などの微
量添加物を添加した従来公知の焼鈍分離剤を塗布し、一
次被膜を生成させない条件下で仕上げ焼鈍を行った鋼板
などを指す。
【0032】二層構造の被膜を形成するには、第一層
(硼酸アルミニウムを含む層)と第二層(燐酸アルミニ
ウムを含む層)の原料液をそれぞれ塗るため、二回の原
料液の塗布工程が必要である。塗布乾燥を終えた被膜中
に硼酸アルミニウム、或いは燐酸アルミニウムを生成す
るための被膜の焼き付け温度は、第一層、第二層ともに
400〜1000℃とすると良く、700〜900℃で
特によい結果が得られる。
【0033】焼き付け温度をこの範囲に限った理由は、
焼き付け温度が低すぎると目的の化合物が得られない
か、該化合物の生成のために長時間の焼き付けが必要と
なるためであり、焼き付け温度が高すぎると特に問題は
ないが効率が悪くなるためである。
【0034】塗布液の塗布方法には制限はなく、塗布量
の制御性良く塗布が行われれば良い。従って、ロールコ
ーターによる方法、刷毛塗り、スプレー法などが適用で
き、塗布方法は限定されない。以下に本発明を実施例に
基づいて説明するが、本発明は本例のみに限定されるも
のではない。
【0035】
【実施例】
(実施例1)市販の硼酸(工業グレードH3 BO3 )、
ベーマイトゾル(平均粒径100nm)を原料として表1
の組成比とし、これに純水を加えて作製した塗布液を仕
上げ焼鈍済みの一次被膜を有する方向性電磁鋼板(Si
を3.1%含有、板厚0.2mm)に、焼き付け後に鋼板
片面当たり3μmとなるように塗布し、水素を含んだ窒
素雰囲気中で1000℃にて5分間の焼き付けを行い、
第一層を形成した。
【表1】
【0036】この被膜をX線回折にて解析したところ、
硼酸アルミニウム(Al4 2 9)が生成していた。
さらにこの被膜を透過型電顕で観察したところ、被膜の
80wt%以上が硼酸アルミニウム結晶(Al4
2 9 )で構成されていた。硼酸アルミニウム結晶以外
に第一層の被膜を構成しているのは、XPSおよび化学
分析の結果より、硼酸アルミニウムと酸化硼素の非晶質
の混合物と確認された。
【0037】この上に、表2の組成を有する塗布液を作
成し、様々な塗布量(表中には第二層塗布量と表示)に
て塗布し、水素を含んだ窒素雰囲気中で800℃にて5
分間の焼き付けを行った。焼き付け後の第二層は酸化珪
素と非晶質からなることがX線回折から確認され、また
化学分析の結果から第二層は二燐酸アルミニウムとして
63wt%、酸化珪素(SiO2 )として30wt%、酸化
クロム(Cr2 3 )として7wt%からなることが確認
された。
【0038】
【表2】
【0039】このようにして得られた被膜を有した電磁
鋼板についての耐錆性、鉄損を表3に示す。耐錆性は5
0℃、91RH%(相対湿度)の雰囲気中に1週間放置
してその前後の重量変化で評価したが、錆が発生すると
重量増加(表中で正の値)が認められるため、重量増加
が少ないものほど耐錆性が良いと判断した。
【0040】
【表3】
【0041】表3から明らかなように、硼酸アルミニウ
ムを含む第一層の被膜と、燐酸アルミニウムを含む第二
層の被膜の二層構造の被膜をもつ鋼板は、燐酸アルミニ
ウム被膜のみを有する鋼板よりも鉄損に優れ、硼酸アル
ミニウム被膜のみからなる被膜を有する鋼板に比して耐
錆性が著しく向上していることが明らかである。第二層
の燐酸アルミニウム被膜の厚さが十分であれば耐錆性は
改善され、特に0.1μm以上の厚さでその改善効果が
顕著である。
【0042】(実施例2)実施例1と同じく市販の硼酸
(工業グレードH3 BO3 )、ベーマイトゾル(平均粒
径100nm)を原料として表4の組成比とし、これに純
水と様々な量の硝酸鉄を加えて作製したゾル液を塗布液
とした。硝酸鉄の添加量は表6に示すごとくであり、そ
の量は表4の組成からアルミニウムが全量消費されて硼
酸アルミニウム(Al4 2 9 )が生成したとして、
この量に対するFe2 3 換算の鉄の量を重量%で示し
てある。
【0043】これを仕上げ焼鈍済みの一次被膜を有する
方向性電磁鋼板(Siを3.1%含有、板厚0.2mm)
を化学研磨して鏡面仕上げとした板に塗布液を焼き付け
後に3μmとなるように塗布し、水素を含んだ窒素雰囲
気中で1000℃にて5分間の焼き付けを行った。
【0044】ここで得られた第一層の被膜をX線回折に
て解析したところ、硝酸鉄の添加量が多い場合は硼酸ア
ルミニウム(Al4 2 9 )と硼酸鉄(Fe3
5 )からなることが確認された。硝酸鉄の添加量が少
ない場合はX線回折からは硝酸鉄の存在が確認できなか
った。
【0045】さらにこの被膜を透過型電顕で観察したと
ころ、被膜の70wt%以上が硼酸アルミニウム結晶(A
4 2 9 )で構成されていた。硼酸アルミニウム結
晶以外に第一層の被膜を構成しているのは、XPSおよ
び化学分析の結果より、硼酸アルミニウムと酸化硼素お
よび硼酸鉄の非晶質の混合物と確認した。
【0046】この上に、表5の組成を有する塗布液を作
成し、焼き付け後にその厚さが0.2μmとなるよう塗
布し、水素を含んだ窒素雰囲気中で800℃にて5分間
の焼き付けを行った。焼き付け後の第二層は酸化珪素と
ガラス質からなることがX線回折から確認され、また化
学分析の結果から第二層は二燐酸アルミニウムとして5
6wt%、酸化珪素(SiO2 )として37wt%、酸化ク
ロム(Cr2 3 )として7wt%からなることが確認さ
れた。
【0047】このようにして得られた被膜を有した電磁
鋼板についての耐錆性、鉄損を表6に示す。耐錆性は5
0℃、91RH%の雰囲気中に1週間放置してその前後
の重量変化で評価したが、錆が発生すると重量増加(表
中で正の値)が認められるため、重量増加が少ないもの
ほど耐錆性が良いと判断した。
【0048】
【表4】
【表5】
【0049】
【表6】
【0050】表6から明らかなように、燐酸アルミニウ
ム被膜の二層構造の被膜をもつ鋼板において、硼酸アル
ミニウム被膜中に鉄化合物を添加した場合は耐錆性がよ
り改善されていることが明らかであり、特に硼酸アルミ
ニウム被膜に対するFe2 3 換算の鉄化合物の量を重
量%で0.1〜20%の範囲とした場合に、優れた鉄損
と耐錆性を両立していることが明らかである。
【0051】
【発明の効果】本発明によれば、従来法よりも張力付与
効果の大きい被膜を有することにより鉄損が著しく改善
され、また耐錆性にも優れる一方向性電磁鋼板を得るこ
とができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山本 幸弘 川崎市中原区井田1618番地 新日本製鐵 株式会社 技術開発本部内 (56)参考文献 特開 平5−279865(JP,A) 特開 平3−47975(JP,A) 特開 平7−207453(JP,A) 特開 平6−287764(JP,A) 特開 平5−279747(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 22/00 - 22/86 C23C 28/00 C21D 9/46 501 H01F 1/16

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼板上にヤング率が100GPa 以上、鋼
    板との線熱膨張係数差が2×10-6以上である第一層
    と、燐酸アルミニウムを含む第二層の二層からなる被膜
    を有してなる低鉄損一方向性電磁鋼板。
  2. 【請求項2】 請求項1において、第一層が硼酸アルミ
    ニウムを含むことを特徴とする請求項1記載の低鉄損一
    方向性電磁鋼板。
  3. 【請求項3】 請求項1から2において、第二層が燐酸
    アルミニウム以外に、酸化珪素、クロム化合物を含むこ
    とを特徴とする請求項1または2に記載の低鉄損一方向
    性電磁鋼板。
  4. 【請求項4】 請求項1から3において、第二層に含ま
    れる燐酸アルミニウム、酸化珪素、クロム化合物がそれ
    ぞれ重量比で第二層全体に対し、二燐酸アルミニウムで
    50〜70%、酸化珪素で20〜50%、三酸化クロム
    で0.5〜10%であることを特徴とする請求項1乃至
    3のいずれかに記載の低鉄損一方向性電磁鋼板。
  5. 【請求項5】 請求項1から4において、第一層が硼酸
    アルミニウム以外に鉄化合物を含み、第一層全体に占め
    る割合が重量比で硼酸アルミニウムが50%以上、Fe
    2 3 で換算した鉄化合物が硼酸アルミニウムに対して
    0.1〜20%存在することを特徴とする請求項1乃至
    4のいずれかに記載の低鉄損一方向性電磁鋼板。
  6. 【請求項6】 請求項1から5において、第一層の硼酸
    アルミニウムが結晶質として第一層全体に対して占める
    割合が重量比で50%以上ある請求項1乃至5のいずれ
    かに記載の低鉄損一方向性電磁鋼板。
  7. 【請求項7】 請求項1から6において、鋼板上に第一
    層として該組成となる塗布液を作製、塗布、乾燥し、4
    00〜1000℃にて焼き付けを行なった後、第二層と
    して該組成となる塗布液を作製、塗布、乾燥し、400
    〜1000℃にて焼き付けを行なうことを特徴とする請
    求項1乃至6のいずれかに記載の低鉄損一方向性電磁鋼
    板の製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項1から6において、鋼板上に第二
    層として該組成となる塗布液を作製、塗布、乾燥し、4
    00〜1000℃にて焼き付けを行なった後、第一層と
    して該組成となる塗布液を作製、塗布、乾燥し、400
    〜1000℃にて焼き付けを行なうことを特徴とする請
    求項1乃至6のいずれかに記載の低鉄損一方向性電磁鋼
    板の製造方法。
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