JP3162570B2 - 低鉄損一方向性珪素鋼板およびその製造方法 - Google Patents

低鉄損一方向性珪素鋼板およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、化学的に安定で、鋼板
に大きな張力を付与する被膜を表面に有することによ
り、鉄損が低減された一方向性珪素鋼板、およびその製
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一方向性珪素鋼板は、(110),〔0
01〕を主方位とする結晶組織を有し、磁気鉄芯材料と
して多用されており、特にエネルギーロスを少なくする
ために鉄損の小さい材料が求められている。一方向性珪
素鋼板の鉄損を低減する手段としては、仕上げ焼鈍後の
鋼板表面にレーザービームを照射して局部的な歪を与
え、それによって磁区を細分化する方法が特開昭58−
26405号公報に開示されている。また鉄芯加工後の
歪取り焼鈍(応力除去焼鈍)を施した後もその効果が消
失しない磁区細分化手段が、例えば特開昭62−861
75号公報に開示されている。
【0003】一方で、鉄および珪素を含有する鉄合金は
結晶磁気異方性が大きいため、外部張力を付加すると磁
区の細分化が起こり、鉄損の主要素である渦電流損失を
低下させることができる。したがって、5%以下の珪素
を含有する一方向性珪素鋼板の鉄損の低減には鋼板に張
力を付与することが有効であり、1.5kgf/mm2 程度ま
での張力付与によって効果的に鉄損が低減できることが
知られている。この張力は通常、表面に形成された被膜
によって付与される。
【0004】従来、一方向性珪素鋼板には、仕上げ焼鈍
工程で鋼板表面の酸化物と焼鈍分離剤とが反応して生成
するフォルステライトを主体とする1次被膜、および特
開昭48−39338号公報等に開示されたコロイド状
シリカとりん酸塩とを主体とするコーティング液を焼き
付けることによって生成する2次被膜の2層の被膜によ
って板厚0.23mmの場合で1.0kgf/mm2 程度の張力
が付与されている。したがって、これら現行被膜の場
合、より大きな張力付与による鉄損改善の余地は残され
ているものの、被膜を厚くすることによる付与張力の増
加は占積率の低下をもたらすため好ましくない。
【0005】また、一方向性珪素鋼板の鉄損を改善する
もうひとつの方法として、仕上げ焼鈍後の鋼板表面の凹
凸や表面近傍の内部酸化層を除去して鏡面仕上げを行
い、その表面に金属メッキを施す方法が特公昭52−2
4499号公報に、さらにその表面に張力被膜を形成す
る方法が例えば特公昭56−4150号公報、特開昭6
1−201732号公報、特公昭63−54767号公
報、特開平2−213483号公報等に開示されてい
る。これらの場合においても、被膜による鋼板への張力
付与の大きい方が鉄損改善効果が大きい。
【0006】これらのことから、密着性に優れ、薄くて
鋼板に大きな張力が付与できる被膜が望まれていた。こ
れに対して発明者らは、主成分としてほう酸アルミニウ
ム、あるいはほう酸アルミニウム結晶と非晶質酸化物と
が混在した被膜を表面に有する方向性電磁鋼板を提案し
てきた。しかしながら、これらの被膜においては、化学
的安定性が若干劣る場合があり、また特に鏡面仕上げを
行った鋼板に対しては、製造条件によっては被膜との界
面に酸化層が形成され、良好な特性の一方向性珪素鋼板
が得られない場合があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、これら従来
技術における問題点を解決し、化学的に安定で、鋼板に
大きな張力を付与する被膜を表面に有することにより、
鉄損が低減された一方向性珪素鋼板、およびその製造方
法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、鋼板最表面
に、ほう酸アルミニウム、およびほう珪酸ガラスを主成
分とする被膜を、仕上げ焼鈍が完了した鋼板表面に形成
してなる一方向性珪素鋼板を要旨とする。また、鋼板最
表面に、ほう酸アルミニウム、ほう酸鉄、およびほう珪
酸ガラスを主成分とする被膜を有してなる低鉄損一方向
性珪素鋼板を要旨とする。なかでも、ほう酸アルミニウ
ムがAlx y 3(x+y)/2(0.1≦(y/x)≦5)
なる化学式で表記される結晶質ほう酸アルミニウムであ
る上記被膜を形成した低鉄損一方向性珪素鋼板を要旨と
する。
【0009】さらにその製造方法として、ほう酸、酸化
アルミニウム前駆体化合物、酸化珪素前駆体化合物を含
有する懸濁液を、仕上げ焼鈍が完了した一方向性珪素鋼
板表面に塗布、500〜1350℃の温度で焼き付け、
酸化物被膜を形成せしめること、また、鉄化合物を加え
た懸濁液を用い、同様のプロセスによって酸化物被膜を
形成せしめることを特徴とする低鉄損一方向性珪素鋼板
の製造方法を要旨とする。また、上記鋼板の製造方法に
おいて、酸化アルミニウム前駆体化合物として酸化アル
ミニウム前駆体ゾル、酸化珪素前駆体化合物として酸化
珪素前駆体ゾルを用いることを特徴とする方法を要旨と
する。さらに酸化珪素前駆体ゾルとしてSiO2 ・nH
2 O、またはSiOp (OH)q なる化学式で表記され
るシリカゾル、および/またはコロイダルシリカ、なか
でも特に、アルキルシリケート、および/またはアルキ
ルシリケート加水分解物を用いる、鉄損の低い一方向性
珪素鋼板の製造方法を要旨とする。
【0010】
【作用】本発明の一方向性珪素鋼板は、最表面にほう酸
アルミニウム、およびほう珪酸ガラスを主成分とする被
膜を有している。従来より、電磁鋼板への張力付与には
熱膨張係数の小さい被膜材質を選択し、鋼板との熱膨張
係数差によって冷却時に生じる応力を利用していた。し
かしながら、熱膨張係数差だけではなく、被膜材質のヤ
ング率も鋼板への張力付与に影響を及ぼす因子であるこ
とが指摘されている。
【0011】本発明の被膜成分のうち、ほう酸アルミニ
ウムは前記要件を満たし、鋼板への大きな張力付与をも
たらしていると推定される。一般にほう酸アルミニウム
と呼ばれるAl2 3 −B2 3 系酸化物は9Al2
3 2 3 ,2Al2 3 ・B2 3 の2つの平衡
相化合物が存在し、鋼板への張力付与に効果的であるこ
とを見いだした。しかしながら、ほう酸アルミニウム
は、製造条件によっては前述の2つの平衡相のほかに両
者の中間組成、あるいはその近傍の組成を取る場合があ
る。これは、2つの平衡相が同じ結晶構造を持ち、格子
定数がほぼ同じであるためAl,Bの各イオンサイト間
で容易に置換が生じ、準安定相を形成するためであると
考えている。
【0012】このような準安定相を形成する組成比とし
て、Alx y 3(x+y)/2で表記した場合に0.1≦
(y/x)≦5の範囲であることを見い出し、このいず
れであっても全く問題がなく、効果的に張力が付与でき
ることを確認した。このうち、特に張力付与に効果的な
組成として、0.1≦(y/x)≦2が好ましく、より
好ましくは0.2≦(y/x)≦1の組成範囲である。
これらのほう酸アルミニウムは、通常、組成とはあまり
関係なく数nm〜数十nm以上の結晶子サイズとなる場合が
多く、大きな張力付与のためには結晶質であることが好
ましい。一方で、ほう酸アルミニウムが十分な結晶性を
有しておらず、非晶質に近い状態であった場合、鋼板へ
の付与張力は結晶質であった場合と比較して低下するも
のの、従来被膜と比較してはるかに大きな張力付与が可
能であるため、本発明の態様として特に支障なく用いら
れる。
【0013】本発明の一方向性珪素鋼板表面の被膜に
は、ほう珪酸ガラスも主成分として含有する。これは塗
布液中のほう酸と酸化珪素前駆体および/または鋼板成
分中の珪素とが反応して生成したものであるが、被膜中
においてはマトリックス様相として存在している場合が
多いと考えられ、ほう酸アルミニウム成分を主体とした
被膜に散見される微小気孔等を低減させている。この効
果により、焼き付け時に生じる界面酸化の問題を緩和し
ていると推定している。
【0014】ほう珪酸ガラスの主成分はほう素と珪素で
あるが、これ以外に他の成分が混入している場合であっ
ても一向に差し支えない。これらは、被膜中の他の成
分、また不純物等から不可避的に混入する場合、あるい
は塗布液中に意図的に添加する場合とがある。成分とし
ては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属元素
等が一般的であるが、他にもガラス形成酸化物元素、修
飾酸化物元素等が考えられる。なかでは、Feのように
ガラス中に混入することで被膜全体の化学的安定性を高
める効果を有する元素もあり、塗布液中に添加すること
で積極的に被膜の特性を改善することができる。
【0015】本発明の一方向性珪素鋼板表面の被膜中に
は、ほう酸アルミニウム、ほう珪酸ガラスを主成分とし
て含有しているが、ここでいう主成分とは、被膜全体に
対する体積割合にして50%以上を指している。より好
ましい含有率としては、同様に被膜全体に対する体積割
合として70%以上である。被膜中において、主成分以
外の成分については特に限定を受けるものではないが、
一般的にはアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属
等の結晶質化合物である。特に、鉄の結晶質化合物の含
有は被膜の化学的安定性を著しく高めることができる。
なかでも、ほう酸鉄(Fe3 BO5 )をほう酸アルミニ
ウム、ほう珪酸ガラスと同様に被膜中に主成分として含
有することで、鋼板への大きな張力付与、被膜の化学的
安定性、界面酸化抑制のいずれにも大きな効果を有する
良好な被膜が得られる。
【0016】被膜中の主成分であるほう酸アルミニウム
とほう珪酸ガラスとの含有割合は、より大きな被膜張力
が得られるという観点から、ほう酸アルミニウムが、ほ
う酸アルミニウムとほう珪酸ガラスとを合わせたものに
対する体積割合にして60%以上、好ましくは80%以
上である。また、ガラス成分が極端に少ないと前述の優
れた被膜特性が得られないため、好ましいガラス成分の
量として、ほう酸アルミニウムとほう珪酸ガラスとを合
わせたものに対する体積割合にして5%以上、好ましく
は10%以上である。また、ほう酸鉄を含有する場合に
おいては、3種の主成分がそれぞれ最低でも主成分全体
に対する体積割合で5%以上含有していることが好まし
く、さらに好ましくは10%以上である。
【0017】本発明の一方向性珪素鋼板の態様として、
鋼板最表面に上述の被膜を有しているが、被膜を形成し
ている母材鋼板については、2次再結晶が完了している
ものであれば特に制限を受けない。通常、母材として一
般的に用いられている鋼板は、仕上げ焼鈍(2次再結晶
焼鈍)時に形成されたフォルステライト質の1次被膜を
有する鋼板、1次被膜を酸洗等の方法によって除去し、
金属表面を露出させた鋼板、あるいはさらにその表面を
研磨等によって平坦化した鋼板、フォルステライト質被
膜が生成しない条件下で仕上げ焼鈍(2次再結晶焼鈍)
を行い、金属表面を露出させた鋼板、あるいはさらにそ
の表面を平坦化した鋼板等である。本発明の一方向性珪
素鋼板の被膜は、厚すぎる場合には占積率が低下するた
め目的に応じてできるだけ薄いものが良く、鋼板厚さに
対して5%以下の厚さが好ましい。より好ましくは2%
以下である。また張力付与の観点からは、極端に薄くて
は十分な効果が得られず、0.1μm以上が好ましい。
【0018】続いて以下に、本発明の一方向性珪素鋼板
を好適に製造する方法について述べる。ほう酸、酸化ア
ルミニウム前駆体化合物、酸化珪素前駆体化合物を含む
懸濁液を作製する。ほう酸はH3 BO3 で表されるオル
トほう酸が作業性、価格等の点から最も好ましいが、H
BO2 で表されるメタほう酸、B2 3 で表される酸化
ほう素、あるいはこれらの混合物も用いることができ
る。酸化アルミニウムはもとより、ベーマイトのような
Al2 3 ・mH2 Oで表記される酸化アルミニウムの
水和物、水酸化アルミニウム等を指す。
【0019】また硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム
をはじめとする各種のアルミニウム塩類も好適に用いら
れる。酸化珪素前駆体化合物も同様に焼き付け後に酸化
珪素となる化合物の総称であり、酸化珪素の水和物、酸
化水酸化珪素、各種珪素化合物等が好適に用いられる。
これらの原料を分散媒に分散させて懸濁液(スラリー)
を作製する。分散媒は水が最も好適であるが、他の工程
で特に支障がなければ有機溶媒、あるいはこれらの混合
物が使用できる。スラリーを作製した時点で原料中のあ
る種のものは溶解する可能性があるが、これは一向に差
し支えない。
【0020】こうして得たスラリーをロールコーター等
のコーター、ディップ法、スプレー吹き付け、あるいは
電気泳動等、従来公知の方法によって仕上げ焼鈍が完了
した一方向性珪素鋼板表面に塗布する。ここでいう仕上
げ焼鈍が完了した鋼板とは、:従来公知の方法で仕上
げ焼鈍を行って、表面にフォルステライト質の1次被膜
が形成された鋼板、:1次被膜および付随的に生成し
ている内部酸化層を酸に浸漬して除去した鋼板、:
で得た鋼板に水素中で平坦化焼鈍を施した鋼板、あるい
は化学研磨、電解研磨等の研磨を施した鋼板、:被膜
生成に対して不活性であるアルミナ粉末等、または塩化
物等の微量添加物を添加した従来公知の焼鈍分離剤を塗
布し、1次被膜を生成させない条件下で仕上げ焼鈍を行
った鋼板、等を指す。
【0021】塗布後の鋼板を乾燥後、500〜1350
℃で焼き付けることによって表面に酸化物被膜を形成す
る。焼き付け時の雰囲気は窒素等の不活性ガス雰囲気、
窒素−水素混合雰囲気等の還元性雰囲気が好ましく、空
気、あるいは酸素を含む雰囲気は鋼板を酸化させる可能
性があり好ましくない。雰囲気ガスの露点については特
に制限はない。焼き付け温度は500℃未満の場合、塗
布した前駆体が酸化物とならない場合があり、また焼き
付け温度が低いため十分な張力が発現せず好ましくな
い。一方、1350℃を超える場合、特に大きな不都合
はないものの経済的でなく、より好ましくは1250℃
以下である。
【0022】本発明のもうひとつの製造方法は、ほう
酸、酸化アルミニウム前駆体化合物、酸化珪素前駆体化
合物に鉄の化合物を含む懸濁液を塗布液として用いる方
法である。ここで使用する鉄の化合物は、焼き付け後に
酸化鉄となる化合物であれば特に支障なく用いることが
でき、例えば酸化鉄、Fe2 3 ・aH2 Oのような酸
化水酸化鉄、水酸化鉄はもとより、硝酸鉄、塩化鉄、硫
酸鉄のような各種の鉄の化合物も好適に用いることがで
きる。なかでも特に、分散媒に可溶性の鉄化合物、ある
いは分散媒に溶けない鉄化合物であっても分散後の粒子
径の細かい化合物粒子が特に好適に用いられる。好まし
い粒子径としては、1μm以下、より好ましくは0.5
μm以下である。塗布以後の工程は、前述のほう酸、酸
化アルミニウム前駆体化合物、酸化珪素前駆体化合物の
混合懸濁液を用いる、第1の製造方法と同様で差し支え
ない。
【0023】前述のスラリーのうち、酸化アルミニウム
前駆体、酸化珪素前駆体としていわゆるゾルとよばれる
微粒子分散系を用いることにより薄くて均一、かつ密着
性の良い被膜が得られる場合がある。これは表面に非金
属物質が存在せず、金属面上に直接被膜を形成するよう
な場合に特に顕著である。かかるときには上述の微粒子
分散系ゾル、あるいは可溶性成分を含んだゾルが好適に
用いられる。用いるゾルの粒子径としては、あまり細か
すぎると、乾燥時のひび割れ、剥離等が生じ易くなり、
所定の厚さの被膜形成が困難となるため、好ましくは1
0nm以上、より好ましくは15nm以上である。
【0024】塗布液にゾル溶液を用いる場合には、酸化
アルミニウム前駆体として上述のベーマイトゾル、およ
び/またはアルミナゾルとよばれているものが作業性、
あるいは価格の点から特に好適に用いられる。一方、酸
化珪素前駆体ゾルとしては種々のものが使用可能である
が、SiO2 ・nH2 O、またはSiOp (OH)q
る化学式で表記されるシリカゾル、および/またはコロ
イダルシリカがやはり作業性、価格の点から好適に用い
られる。なかでも、酸化珪素前駆体ゾルとしてSi(O
z 2z+14 なる化学式のアルキルシリケート、およ
び/またはその加水分解物が好適に用いられる。アルキ
ルシリケートは金属アルコキシドの1種であるが、加水
分解が比較的緩慢であり、前駆体として安定した性状が
得られる。
【0025】アルキルシリケートは通常、加水分解によ
って珪素の水酸化物、あるいは酸化珪素の水和物を形成
するが、ある種の被膜を形成する場合においては、アル
キルシリケートをそのまま用いるより、この加水分解物
を用いた方が好ましいケースが存在する。このような場
合には、加水分解後の前駆体ゾルが好適に用いられる。
これには、あらかじめ加水分解した後、他の成分と混
合する方法、他の成分と混合しつつ加水分解を並行さ
せ、必要に応じて熟成を加える、等いくつかの方法が考
えられるが、本発明ではこのいずれであっても特に支障
はない。
【0026】好ましいアルキルシリケート化合物として
は、なかでも加水分解速度の速い、炭素数zの少ないも
のであり、好ましくはz≦3程度であるが、z=1のメ
チルシリケートは加水分解によって生成するメチルアル
コールに有害性が存在するため、z=2のエチルシリケ
ートが特に好適に用いられる。酸化珪素、酸化アルミニ
ウムの前駆体ゾルの使用においても、前述のスラリート
同様に分散媒、特に水に分散させて使用することが可能
である。特に良好な分散性を得るために、酸、アルカリ
等の添加による塗布液のpH制御等はしばしば用いられ
る手法であり、本発明においても特に支障なく行うこと
ができる。また、鋼板への塗布性を改善するための極微
量の界面活性剤等の添加についても全く問題ない。以下
に本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はかか
る実施例にのみ限定されるものではない。
【0027】
【実施例】
実施例1 市販のほう酸試薬、酸化アルミニウム粉末(平均粒径:
0.4μm)、酸化珪素微粉末を表1に示した割合に秤
量し、これに蒸留水を加えてスラリーを作製した。これ
を、Siを3.2%含有する厚さ0.2mmの仕上げ焼鈍
が完了した一方向性珪素鋼板(フォルステライト質の1
次被膜あり)に片面4g/m2 となるように塗布、乾燥
後、H2 を3 vol%含有するN2 雰囲気中で1000
℃、5分間焼き付けることによって表面に酸化物被膜を
形成した。
【0028】化学分析、X線回折、電子顕微鏡観察等の
結果から、得られた被膜は、結晶質(2Al2 3 ・B
2 3 、または9Al2 3 2 3 )のほう酸ア
ルミニウム、ほう素と珪素を主成分とするガラス相を体
積割合で50%以上含有し、その他若干の未反応酸化珪
素も含んでいることがわかった。20mmφの円柱の周囲
に、その角度が180度となるように巻き付け試験を行
い、その剥離状況から評価した被膜の密着性は極めて良
好であった。被膜の化学的安定性は、被膜を形成した鋼
板を、そのまま100mlの沸騰蒸留水中に10分間浸漬
し、その前後の重量変化によって評価し、いずれの組成
も、50cm2 の鋼板あたり5mg未満の重量変化であっ
た。また、沸騰蒸留水中への被膜成分の溶け出しも、い
ずれの組成とも分析検出限界以下であった。片面の被膜
を除去し、板の曲がりから測定した鋼板への付与張力、
および磁気特性を表1に記した。表1の結果から、いず
れも著しく鉄損の低い一方向性珪素鋼板が得られている
ことがわかる。
【0029】
【表1】
【0030】実施例2 市販のほう酸試薬、ベーマイトゾル(平均粒径:100
nm)、コロイダルシリカ(平均粒径:15nm)を固形分
相当で表2に示した割合に混合し、これに必要に応じて
蒸留水を加えて混合ゾルを作製した。これを、Siを
3.2%含有し、酸化アルミニウムを焼鈍分離剤として
塗布し、2次再結晶と同時に鏡面化処理を施した厚さ
0.2mmの一方向性珪素鋼板に片面4g/m2 となるよ
うに塗布、乾燥後、H2 を10 vol%含有するN2 雰囲
気中で850℃、3分間焼き付けることによって表面に
酸化物被膜を形成した。
【0031】化学分析、X線回折、電子顕微鏡観察等の
結果から、得られた被膜は、結晶質(2Al2 3 ・B
2 3 、または9Al2 3 2 3 )のほう酸ア
ルミニウム、ほう素と珪素を主成分とするガラス相を体
積割合で50%以上含有していることがわかった。実施
例1と同様に評価した被膜の密着性、化学的安定性はい
ずれの組成とも極めて良好であった。鋼板への付与張
力、および磁気特性を表2に記した。表2の結果から、
いずれも著しく鉄損の低い一方向性珪素鋼板が得られて
いることがわかる。また、被膜を形成した鋼板の断面を
研磨し、SEMによって観察したところ、いずれの組成
とも被膜−鋼板界面に顕著な酸化層は観察されなかっ
た。
【0032】
【表2】
【0033】実施例3 市販のほう酸試薬を150℃で乾燥して作製したメタほ
う酸、ベーマイト粉末(平均粒径/50nm)、コロイダ
ルシリカ(平均粒径:15nm)、FeOOH粉末を、固
形分相当で表3に示した割合に混合し、これに蒸留水を
加えて混合ゾルを作製した。これを、Siを3.2%含
有する厚さ0.2mmの仕上げ焼鈍が完了した一方向性珪
素鋼板(フォルステライト質の1次被膜あり)に片面4
g/m2となるように塗布、乾燥後、H2 を1 vol%含
有するN2 雰囲気中で900℃、1分間焼き付けること
によって表面に酸化物被膜を形成した。
【0034】化学分析、X線回折、電子顕微鏡観察等の
結果から、得られた被膜は、結晶質(2Al2 3 ・B
2 3 、または9Al2 3 2 3 )のほう酸ア
ルミニウム、ほう素と珪素を主成分とするガラス相、ほ
う酸鉄(Fe3 BO5 )を体積割合で50%以上含有し
ていることがわかった。実施例1と同様に評価した被膜
の密着性、化学的安定性は極めて良好であった。片面の
被膜を除去し、板の曲がりから測定した鋼板への付与張
力、および磁気特性を表3に記した。表3の結果から、
いずれも著しく鉄損の低い一方向性珪素鋼板が得られて
いることがわかる。
【0035】
【表3】
【0036】実施例4 市販のほう酸試薬、ベーマイトゾル(平均粒径:50n
m)、エチルシリケートを、固形分相当で表4に示した
割合に混合し(ただしエチルシリケートは、最終的に得
られる酸化物換算)、これに微量の塩酸を滴下した蒸留
水を加えて混合ゾルを作製した。これを、Siを3.2
%含有し、酸化アルミニウムを焼鈍分離剤として塗布
し、2次再結晶と同時に鏡面化処理を施した厚さ0.2
mmの一方向性珪素鋼板に片面4g/m2 となるように塗
布、乾燥後、H2 を3 vol%含有するN2 雰囲気中で8
50℃、2分間焼き付けることによって表面に酸化物被
膜を形成した。
【0037】化学分析、X線回折、電子顕微鏡観察等の
結果から、得られた被膜は、結晶質(2Al2 3 ・B
2 3 、または9Al2 3 2 3 )のほう酸ア
ルミニウム、ほう素と珪素を主成分とするガラス相を体
積割合で50%以上含有することがわかった。20mmφ
の円柱の周囲に、実施例1と同様に評価した被膜の密着
性、化学的安定性は極めて良好であった。片面の被膜を
除去し、板の曲がりから測定した鋼板への付与張力、お
よび磁気特性を表4に記した。表4の結果から、いずれ
も著しく鉄損の低い一方向性珪素鋼板が得られているこ
とがわかる。また被膜−鋼板界面には、顕著な酸化層は
観察されなかった。
【0038】
【表4】
【0039】
【発明の効果】本発明により、特定の成分の被膜を有す
ることによって、化学的に安定で、かつその張力付与効
果によって鉄損が著しく改善された一方向性珪素鋼板、
およびその製造方法を提供する。特に、従来から用いら
れている1次被膜を有する鋼板、あるいは著しい低鉄損
化を目的とした鏡面化鋼板のいずれに対しても良好な特
性を示し、汎用性の観点からも工業的効果は甚大であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−65755(JP,A) 特開 平6−65754(JP,A) 特開 昭54−143737(JP,A) 特開 昭60−152681(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 22/00 - 22/86

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼板最表面に、ほう酸アルミニウム、お
    よびほう珪酸ガラスを主成分とする被膜を有してなる低
    鉄損一方向性珪素鋼板。
  2. 【請求項2】 鋼板最表面に、ほう酸アルミニウム、ほ
    う酸鉄、およびほう珪酸ガラスを主成分とする被膜を有
    してなる低鉄損一方向性珪素鋼板。
  3. 【請求項3】 ほう酸アルミニウムがAlx y
    3(x+y)/2(0.1≦(y/x)≦5)なる化学式で表記
    される結晶質ほう酸アルミニウムである請求項1または
    2に記載の低鉄損一方向性珪素鋼板。
  4. 【請求項4】 仕上げ焼鈍が完了した一方向性珪素鋼板
    表面に、ほう酸、酸化アルミニウム前駆体化合物、およ
    び酸化珪素前駆体化合物を含む懸濁液を塗布、乾燥後、
    500〜1350℃の温度で焼き付け、酸化物被膜を形
    成せしめる低鉄損一方向性珪素鋼板の製造方法。
  5. 【請求項5】 仕上げ焼鈍が完了した一方向性珪素鋼板
    表面に、ほう酸、酸化アルミニウム前駆体化合物、酸化
    珪素前駆体化合物、および鉄化合物を含む懸濁液を塗
    布、乾燥後、500〜1350℃の温度で焼き付け、酸
    化物被膜を形成せしめる低鉄損一方向性珪素鋼板の製造
    方法。
  6. 【請求項6】 酸化アルミニウム前駆体化合物が酸化ア
    ルミニウム前駆体ゾル、酸化珪素前駆体化合物が酸化珪
    素前駆体ゾルである請求項4または5に記載の低鉄損一
    方向性珪素鋼板の製造方法。
  7. 【請求項7】 酸化珪素前駆体ゾルが、SiO2 ・nH
    2 OまたはSiOp(OH)q なる化学式で表記される
    シリカゾル、および/またはコロイダルシリカである請
    求項4ないし6のいずれかに記載の低鉄損一方向性珪素
    鋼板の製造方法。
  8. 【請求項8】 酸化珪素前駆体ゾルが、アルキルシリケ
    ート、および/またはアルキルシリケート加水分解物で
    ある請求項4ないし7のいずれかに記載の低鉄損一方向
    性珪素鋼板の製造方法。
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