JP3178959B2 - 低鉄損一方向性珪素鋼板 - Google Patents
低鉄損一方向性珪素鋼板Info
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Description
【０００１】
【産業上の利用分野】本発明は、化学的に安定で、鋼板
に大きな張力を付与する被膜を表面に有することによ
り、鉄損が低減された一方向性珪素鋼板に関する。
に大きな張力を付与する被膜を表面に有することによ
り、鉄損が低減された一方向性珪素鋼板に関する。
【０００２】
【従来の技術】一方向性珪素鋼板は、（１１０），〔０
０１〕を主方位とする結晶組織を有し、磁気鉄芯材料と
して多用されており特にエネルギーロスを少なくするた
めに鉄損の小さい材料が求められている。一方向性珪素
鋼板の鉄損を低減する手段としては、仕上げ焼鈍後の鋼
板表面にレーザービームを照射して局部的な歪を与え、
それによって磁区を細分化する方法が特開昭５８−２６
４０５号公報に開示されている。また鉄芯加工後の歪取
り焼鈍（応力除去焼鈍）を施した後もその効果が消失し
ない磁区細分化手段が、例えば特開昭６２−８６１７５
号公報に開示されている。
０１〕を主方位とする結晶組織を有し、磁気鉄芯材料と
して多用されており特にエネルギーロスを少なくするた
めに鉄損の小さい材料が求められている。一方向性珪素
鋼板の鉄損を低減する手段としては、仕上げ焼鈍後の鋼
板表面にレーザービームを照射して局部的な歪を与え、
それによって磁区を細分化する方法が特開昭５８−２６
４０５号公報に開示されている。また鉄芯加工後の歪取
り焼鈍（応力除去焼鈍）を施した後もその効果が消失し
ない磁区細分化手段が、例えば特開昭６２−８６１７５
号公報に開示されている。
【０００３】一方で、鉄および珪素を含有する鉄合金は
結晶磁気異方性が大きいため、外部張力を付加すると磁
区の細分化が起こり、鉄損の主要素である渦電流損失を
低下させることができる。したがって、５％以下の珪素
を含有する一方向性珪素鋼板の鉄損の低減には鋼板に張
力を付与することが有効であり、１．５kgf/mm2 程度ま
での張力付与によって効果的に鉄損が低減できることが
知られている。この張力は通常、表面に形成された被膜
によって付与される。
結晶磁気異方性が大きいため、外部張力を付加すると磁
区の細分化が起こり、鉄損の主要素である渦電流損失を
低下させることができる。したがって、５％以下の珪素
を含有する一方向性珪素鋼板の鉄損の低減には鋼板に張
力を付与することが有効であり、１．５kgf/mm2 程度ま
での張力付与によって効果的に鉄損が低減できることが
知られている。この張力は通常、表面に形成された被膜
によって付与される。
【０００４】従来、一方向性珪素鋼板には、仕上げ焼鈍
工程で鋼板表面の酸化物と焼鈍分離剤とが反応して生成
するフォルステライトを主体とする１次被膜、および特
開昭４８−３９３３８号公報等に開示されたコロイド状
シリカとりん酸塩とを主体とするコーティング液を焼き
付けることによって生成する２次被膜の２層の被膜によ
って、板厚０．２３mmの場合で１．０kgf/mm2 程度の張
力が付与されている。したがって、これら現行被膜の場
合、より大きな張力付与による鉄損改善の余地は残され
ているものの、被膜を厚くすることによる付与張力の増
加は占積率の低下をもたらすため好ましくない。
工程で鋼板表面の酸化物と焼鈍分離剤とが反応して生成
するフォルステライトを主体とする１次被膜、および特
開昭４８−３９３３８号公報等に開示されたコロイド状
シリカとりん酸塩とを主体とするコーティング液を焼き
付けることによって生成する２次被膜の２層の被膜によ
って、板厚０．２３mmの場合で１．０kgf/mm2 程度の張
力が付与されている。したがって、これら現行被膜の場
合、より大きな張力付与による鉄損改善の余地は残され
ているものの、被膜を厚くすることによる付与張力の増
加は占積率の低下をもたらすため好ましくない。
【０００５】また、一方向性珪素鋼板の鉄損を改善する
もうひとつの方法として、仕上げ焼鈍後の鋼板表面の凹
凸や表面近傍の内部酸化層を除去して鏡面仕上げを行
い、その表面に金属メッキを施す方法が特公昭５２−２
４４９９号公報に、さらにその表面に張力被膜を形成す
る方法が例えば特公昭５６−４１５０号公報、特開昭６
１−２０１７３２号公報、特公昭６３−５４７６７号公
報、特開平２−２１３４８３号公報等に開示されてい
る。これらの場合においても、被膜による鋼板への張力
付与の大きい方が鉄損改善効果が大きい。
もうひとつの方法として、仕上げ焼鈍後の鋼板表面の凹
凸や表面近傍の内部酸化層を除去して鏡面仕上げを行
い、その表面に金属メッキを施す方法が特公昭５２−２
４４９９号公報に、さらにその表面に張力被膜を形成す
る方法が例えば特公昭５６−４１５０号公報、特開昭６
１−２０１７３２号公報、特公昭６３−５４７６７号公
報、特開平２−２１３４８３号公報等に開示されてい
る。これらの場合においても、被膜による鋼板への張力
付与の大きい方が鉄損改善効果が大きい。
【０００６】これらのことから、密着性に優れ、薄くて
鋼板に大きな張力が付与できる被膜が望まれていた。こ
れに対して発明者らは、主成分としてほう酸アルミニウ
ム、あるいはほう酸アルミニウム結晶と非晶質酸化物と
が混在した被膜を表面に有する方向性電磁鋼板を提案し
てきた。しかしながら、これらの被膜においては、化学
的安定性が若干劣る場合があり、製造条件によっては被
膜の吸湿性、あるいはこれに伴なう発錆の問題が発生す
るケースが散見されていた。
鋼板に大きな張力が付与できる被膜が望まれていた。こ
れに対して発明者らは、主成分としてほう酸アルミニウ
ム、あるいはほう酸アルミニウム結晶と非晶質酸化物と
が混在した被膜を表面に有する方向性電磁鋼板を提案し
てきた。しかしながら、これらの被膜においては、化学
的安定性が若干劣る場合があり、製造条件によっては被
膜の吸湿性、あるいはこれに伴なう発錆の問題が発生す
るケースが散見されていた。
【０００７】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、これら従来
技術における問題点を解決し、化学的、特に湿度に対し
て安定で、鋼板に大きな張力を付与する被膜を表面に有
することにより、鉄損が低減された一方向性珪素鋼板を
提供することを目的とする。
技術における問題点を解決し、化学的、特に湿度に対し
て安定で、鋼板に大きな張力を付与する被膜を表面に有
することにより、鉄損が低減された一方向性珪素鋼板を
提供することを目的とする。
【０００８】
【課題を解決するための手段】本発明は、Ａｌ x Ｂ y Ｏ
3(x+y)/2 （０．１≦（ｙ／ｘ）≦５）なる化学式で表さ
れる結晶質ほう酸アルミニウムを必須成分とし、りんを
成分として含有する非晶質相、および／またはりん酸ア
ルミニウムを含有する被膜を有してなる低鉄損一方向性
珪素鋼板を要旨とする。また、必須成分として含有する
ほう酸アルミニウムの含有量が、被膜全体に対する体積
割合で３０％以上９５％以下である被膜を有してなる低
鉄損一方向珪素鋼板を要旨とする。
3(x+y)/2 （０．１≦（ｙ／ｘ）≦５）なる化学式で表さ
れる結晶質ほう酸アルミニウムを必須成分とし、りんを
成分として含有する非晶質相、および／またはりん酸ア
ルミニウムを含有する被膜を有してなる低鉄損一方向性
珪素鋼板を要旨とする。また、必須成分として含有する
ほう酸アルミニウムの含有量が、被膜全体に対する体積
割合で３０％以上９５％以下である被膜を有してなる低
鉄損一方向珪素鋼板を要旨とする。
【０００９】
【作用】本発明の一方向性珪素鋼板は、仕上げ焼鈍が完
了した鋼板表面にほう酸アルミニウム、りんを成分とす
る非晶質相、および／またはりん酸アルミニウムを含有
する被膜を有するものである。ここでいう仕上げ焼鈍が
完了した鋼板とは、：従来公知の方法で仕上げ焼鈍を
行って、表面にフォルステライト質の１次被膜が形成さ
れた鋼板、：１次被膜および付随的に生成している内
部酸化層を酸に浸漬して除去した鋼板、：で得た鋼
板を水素中で平坦化焼鈍を施した鋼板、あるいは化学研
磨、電解研磨等の研磨を施した鋼板、：被膜生成に対
して不活性であるアルミナ粉末等、または塩化物等の微
量の添加物を添加した従来公知の焼鈍分離剤を塗布し、
１次被膜を生成させない条件下で仕上げ焼鈍を行った鋼
板、等を指す。
了した鋼板表面にほう酸アルミニウム、りんを成分とす
る非晶質相、および／またはりん酸アルミニウムを含有
する被膜を有するものである。ここでいう仕上げ焼鈍が
完了した鋼板とは、：従来公知の方法で仕上げ焼鈍を
行って、表面にフォルステライト質の１次被膜が形成さ
れた鋼板、：１次被膜および付随的に生成している内
部酸化層を酸に浸漬して除去した鋼板、：で得た鋼
板を水素中で平坦化焼鈍を施した鋼板、あるいは化学研
磨、電解研磨等の研磨を施した鋼板、：被膜生成に対
して不活性であるアルミナ粉末等、または塩化物等の微
量の添加物を添加した従来公知の焼鈍分離剤を塗布し、
１次被膜を生成させない条件下で仕上げ焼鈍を行った鋼
板、等を指す。
【００１０】従来より、電磁鋼板への張力付与には熱膨
張係数の小さい被膜材質を選択し、鋼板との熱膨張係数
差によって冷却時に生じる応力を利用していた。しかし
ながら、熱膨張係数差だけではなく、被膜材質のヤング
率も鋼板への張力付与に影響を及ぼす因子であることが
指摘されている。本発明の被膜成分のうち、ほう酸アル
ミニウムは前記要件を満たし、鋼板への大きな張力付与
をもたらすと考えられる。
張係数の小さい被膜材質を選択し、鋼板との熱膨張係数
差によって冷却時に生じる応力を利用していた。しかし
ながら、熱膨張係数差だけではなく、被膜材質のヤング
率も鋼板への張力付与に影響を及ぼす因子であることが
指摘されている。本発明の被膜成分のうち、ほう酸アル
ミニウムは前記要件を満たし、鋼板への大きな張力付与
をもたらすと考えられる。
【００１１】一般にほう酸アルミニウムと呼ばれるＡｌ
2 Ｏ3 −Ｂ2 Ｏ3 系酸化物には、組成比によって９Ａｌ
2 Ｏ3 ・２Ｂ2 Ｏ3 ，２Ａｌ2 Ｏ3 ・Ｂ2 Ｏ3 の２つの
平衡相化合物が知られている。また、焼き付け温度によ
っては前述の２つの平衡相の他に両者の中間組成、ある
いはその近傍の組成をとる場合がある。これは、２つの
平衡相が同じ結晶構造を持ち、格子定数がほぼ同じであ
るため、Ａｌ，Ｂの各イオンサイト間で容易に置換が生
じ、準安定相を形成するためであると考えている。この
ような準安定相を形成する組成比として、Ａｌx Ｂy Ｏ
3(x+y)/2で表記した場合に０．１≦（ｙ／ｘ）≦５の範
囲であることを見いだし、このいずれであっても効果的
に張力が付与できることを確認した。
2 Ｏ3 −Ｂ2 Ｏ3 系酸化物には、組成比によって９Ａｌ
2 Ｏ3 ・２Ｂ2 Ｏ3 ，２Ａｌ2 Ｏ3 ・Ｂ2 Ｏ3 の２つの
平衡相化合物が知られている。また、焼き付け温度によ
っては前述の２つの平衡相の他に両者の中間組成、ある
いはその近傍の組成をとる場合がある。これは、２つの
平衡相が同じ結晶構造を持ち、格子定数がほぼ同じであ
るため、Ａｌ，Ｂの各イオンサイト間で容易に置換が生
じ、準安定相を形成するためであると考えている。この
ような準安定相を形成する組成比として、Ａｌx Ｂy Ｏ
3(x+y)/2で表記した場合に０．１≦（ｙ／ｘ）≦５の範
囲であることを見いだし、このいずれであっても効果的
に張力が付与できることを確認した。
【００１２】このうち、特に張力付与に効果的な組成と
して、０．１≦（ｙ／ｘ）≦２が好ましく、より好まし
くは０．２≦（ｙ／ｘ）≦１の組成範囲である。これら
のほう酸アルミニウムは、通常、組成とはあまり関係な
く、数nm〜数十nm以上の結晶子サイズの結晶となる場合
が多く、大きな張力付与のためには結晶質であることが
好ましい。一方で、ほう酸アルミニウムが十分な結晶性
を有しておらず、非晶質に近い状態であった場合、鋼板
への張力付与は結晶質であった場合と比較して低下する
ものの、従来被膜と比較してはるかに大きな張力付与が
可能であるため、本発明の態様として特に支障なく用い
られる。
して、０．１≦（ｙ／ｘ）≦２が好ましく、より好まし
くは０．２≦（ｙ／ｘ）≦１の組成範囲である。これら
のほう酸アルミニウムは、通常、組成とはあまり関係な
く、数nm〜数十nm以上の結晶子サイズの結晶となる場合
が多く、大きな張力付与のためには結晶質であることが
好ましい。一方で、ほう酸アルミニウムが十分な結晶性
を有しておらず、非晶質に近い状態であった場合、鋼板
への張力付与は結晶質であった場合と比較して低下する
ものの、従来被膜と比較してはるかに大きな張力付与が
可能であるため、本発明の態様として特に支障なく用い
られる。
【００１３】ここで、本発明でいうところの結晶質酸化
物は、電子線回折像によりその構造が確認できるものを
指す。通常、非晶質からの電子線回折像は、散漫なハロ
ーパターンを示す。通常得られる結晶質ほう酸アルミニ
ウムは明瞭なリングパターンを示し、また一部回折斑点
も観察される。回折像がリングパターンとなるのは結晶
質酸化物のサイズが小さいためであるが、本発明におい
ては結晶子のサイズは特に制限を受けるものではない。
本発明の被膜中には、上述のほう酸アルミニウムの他
に、りんを成分として含有する非晶質相、および／また
はりん酸アルミニウムを含有する。ここで、りん酸アル
ミニウムは明瞭な結晶質であるが、りんを成分として含
有する非晶質相には、比較的結晶性の良くない化合物、
あるいはガラス状物質の両者を含んでいる。
物は、電子線回折像によりその構造が確認できるものを
指す。通常、非晶質からの電子線回折像は、散漫なハロ
ーパターンを示す。通常得られる結晶質ほう酸アルミニ
ウムは明瞭なリングパターンを示し、また一部回折斑点
も観察される。回折像がリングパターンとなるのは結晶
質酸化物のサイズが小さいためであるが、本発明におい
ては結晶子のサイズは特に制限を受けるものではない。
本発明の被膜中には、上述のほう酸アルミニウムの他
に、りんを成分として含有する非晶質相、および／また
はりん酸アルミニウムを含有する。ここで、りん酸アル
ミニウムは明瞭な結晶質であるが、りんを成分として含
有する非晶質相には、比較的結晶性の良くない化合物、
あるいはガラス状物質の両者を含んでいる。
【００１４】ほう酸アルミニウム系被膜においては、鋼
板への著しい張力の付与が可能であるが、被膜の吸湿
性、あるいはこれに伴なう発錆の問題が生じる可能性が
あり、これに対しては、りん成分の添加が極めて有効な
解決方法となる。このメカニズムは現在のところ明らか
ではないが、被膜の塗布、焼き付け工程において、りん
酸塩処理と同様の現象が起きていると考えている。特に
この表面処理の効果を大きくするためには、りん源とな
る化合物を、塗布原料中にりん酸、ないしりん酸塩の形
態で添加することが望ましい。りん酸には、オルトりん
酸、亜りん酸、メタりん酸、無水りん酸が存在するが、
このうちいずれであっても全く支障なく用いることがで
きる。
板への著しい張力の付与が可能であるが、被膜の吸湿
性、あるいはこれに伴なう発錆の問題が生じる可能性が
あり、これに対しては、りん成分の添加が極めて有効な
解決方法となる。このメカニズムは現在のところ明らか
ではないが、被膜の塗布、焼き付け工程において、りん
酸塩処理と同様の現象が起きていると考えている。特に
この表面処理の効果を大きくするためには、りん源とな
る化合物を、塗布原料中にりん酸、ないしりん酸塩の形
態で添加することが望ましい。りん酸には、オルトりん
酸、亜りん酸、メタりん酸、無水りん酸が存在するが、
このうちいずれであっても全く支障なく用いることがで
きる。
【００１５】りんを成分として含有する非晶質相に含ま
れる他の成分としては、まずほう素があげられる。ま
た、これに珪素を含んだ場合に、安定なガラス状の物質
を生成し、被膜の表面性状が著しく改善されるという知
見を得ている。これらの成分元素の存在割合は特に制限
を受けるものではなく、ほとんどあらゆる値とすること
ができ、必要とする特性に応じて適宜調整することが望
ましい。さらに、上記ガラス中に他の金属元素を含有さ
せると安定性等が著しく向上する場合がある。このよう
な金属元素としてＬｉ，Ｎａ，Ｋ，Ｓｒ，Ｂａ，Ｔｉ，
Ｖ，Ｃｒ，Ｍｎ，Ｆｅ，Ｎｉ，Ｃｏ，Ｃｕ，Ｚｎ，Ｓ
ｎ，Ｐｂ，Ｂｉ，Ｓｂ等があげられる。
れる他の成分としては、まずほう素があげられる。ま
た、これに珪素を含んだ場合に、安定なガラス状の物質
を生成し、被膜の表面性状が著しく改善されるという知
見を得ている。これらの成分元素の存在割合は特に制限
を受けるものではなく、ほとんどあらゆる値とすること
ができ、必要とする特性に応じて適宜調整することが望
ましい。さらに、上記ガラス中に他の金属元素を含有さ
せると安定性等が著しく向上する場合がある。このよう
な金属元素としてＬｉ，Ｎａ，Ｋ，Ｓｒ，Ｂａ，Ｔｉ，
Ｖ，Ｃｒ，Ｍｎ，Ｆｅ，Ｎｉ，Ｃｏ，Ｃｕ，Ｚｎ，Ｓ
ｎ，Ｐｂ，Ｂｉ，Ｓｂ等があげられる。
【００１６】一般的に、りん酸アルミニウムはＡｌ2 Ｏ
3 ・３Ｐ2 Ｏ5 ，Ａｌ2 Ｏ3 ・Ｐ2Ｏ5 のふたつの化合
物が良く知られている。本発明のりん酸アルミニウム
は、これらの化合物はもとより、これらの中間的な組成
の化合物、あるいは周辺の化合物であっても一向に差し
支えない。また特に結晶質に限定されるものでなく、非
晶質的な化合物、あるいはガラス状のものでも支障なく
用いることができる。
3 ・３Ｐ2 Ｏ5 ，Ａｌ2 Ｏ3 ・Ｐ2Ｏ5 のふたつの化合
物が良く知られている。本発明のりん酸アルミニウム
は、これらの化合物はもとより、これらの中間的な組成
の化合物、あるいは周辺の化合物であっても一向に差し
支えない。また特に結晶質に限定されるものでなく、非
晶質的な化合物、あるいはガラス状のものでも支障なく
用いることができる。
【００１７】被膜中のほう酸アルミニウムとりんを含有
する成分との割合は、ほう酸アルミニウムが被膜全体に
対する体積割合で３０％以上９５％以下が好ましく、よ
り好ましくは５０％以上９５％以下である。成分割合が
この範囲からはずれてほう酸アルミニウム成分が多い場
合、被膜の吸湿性に対して十分な効果が発揮されないこ
とに加えて、被膜の表面性状が劣化する傾向がある。一
方、りんを含む成分が多すぎる場合、相対的にほう酸ア
ルミニウム成分が減少することとなり、鋼板に十分な張
力が付与されない結果となる。
する成分との割合は、ほう酸アルミニウムが被膜全体に
対する体積割合で３０％以上９５％以下が好ましく、よ
り好ましくは５０％以上９５％以下である。成分割合が
この範囲からはずれてほう酸アルミニウム成分が多い場
合、被膜の吸湿性に対して十分な効果が発揮されないこ
とに加えて、被膜の表面性状が劣化する傾向がある。一
方、りんを含む成分が多すぎる場合、相対的にほう酸ア
ルミニウム成分が減少することとなり、鋼板に十分な張
力が付与されない結果となる。
【００１８】ある種の被膜においては、構成するほう酸
アルミニウムとりんを含む他の成分との割合を定量化す
ることが困難な場合があるが、本発明においては、Ｘ線
回折による定量分析、溶解法による定量化学分析に加え
て塗布液組成、焼き付け条件から生成量の推定を行うこ
とができる。また特に結晶質相の定量化に対しては、前
述の電子顕微鏡像、電子線回折による評価を併用するこ
とができる。
アルミニウムとりんを含む他の成分との割合を定量化す
ることが困難な場合があるが、本発明においては、Ｘ線
回折による定量分析、溶解法による定量化学分析に加え
て塗布液組成、焼き付け条件から生成量の推定を行うこ
とができる。また特に結晶質相の定量化に対しては、前
述の電子顕微鏡像、電子線回折による評価を併用するこ
とができる。
【００１９】本発明の低鉄損一方向性珪素鋼板の被膜
は、厚すぎる場合には占積率が低下するため目的に応じ
てできるだけ薄いものが良く、片面の被膜厚さが鋼板厚
さに対して５％以下が好ましい。より好ましくは２％以
下である。また張力付与の観点からは、極端に薄くては
十分な効果が得られず、０．１μｍ以上あることが好ま
しい。以下に本発明を実施例に基づいて説明するが、本
発明はかかる実施例にのみ限定されるものではない。
は、厚すぎる場合には占積率が低下するため目的に応じ
てできるだけ薄いものが良く、片面の被膜厚さが鋼板厚
さに対して５％以下が好ましい。より好ましくは２％以
下である。また張力付与の観点からは、極端に薄くては
十分な効果が得られず、０．１μｍ以上あることが好ま
しい。以下に本発明を実施例に基づいて説明するが、本
発明はかかる実施例にのみ限定されるものではない。
【００２０】
実施例１ 市販のほう酸試薬、酸化アルミニウム、りん酸、コロイ
ダルシリカを表１に示す割合で混合し、これに蒸留水を
加えて塗布液を作製した。これを、Ｓｉを３．２％含有
する厚さ０．２mmの仕上げ焼鈍が完了した一方向性珪素
鋼板（フォルステライト質の１次被膜あり）に片面４．
５ｇ／ｍ2 となるように塗布、乾燥させた後、Ｈ2 を１
０ vol％含有するＮ2 雰囲気中で９５０℃、５分間焼き
付けた。得られた被膜の表面性状、べたつきは極めて良
好であった。２０mmφの円柱にその角度が１８０度とな
るような巻き付け試験を行い、その剥離状況から評価し
た被膜の密着性はきわめて良好であった。
ダルシリカを表１に示す割合で混合し、これに蒸留水を
加えて塗布液を作製した。これを、Ｓｉを３．２％含有
する厚さ０．２mmの仕上げ焼鈍が完了した一方向性珪素
鋼板（フォルステライト質の１次被膜あり）に片面４．
５ｇ／ｍ2 となるように塗布、乾燥させた後、Ｈ2 を１
０ vol％含有するＮ2 雰囲気中で９５０℃、５分間焼き
付けた。得られた被膜の表面性状、べたつきは極めて良
好であった。２０mmφの円柱にその角度が１８０度とな
るような巻き付け試験を行い、その剥離状況から評価し
た被膜の密着性はきわめて良好であった。
【００２１】被膜の化学的安定性は、被膜を形成した鋼
板を、そのまま１００mlの沸騰蒸留水中に１０分間浸漬
し、その前後の重量変化によって評価し、いずれの組成
も、５０cm2 の鋼板あたり５mg未満の重量変化であっ
た。また、沸騰蒸留水中への被膜成分の溶け出しも、い
ずれの組成とも分析検出限界以下であった。錆発生試験
は、５０℃、相対湿度９８％の恒温恒湿雰囲気中に１５
０時間保持、目視と重量変化によって評価した。結果
は、いずれの組成とも顕著な発錆、重量増加は認められ
ず、極めて良好な結果であった。生成した被膜の構成
相、被膜中に占めるほう酸アルミニウムの割合、片面の
被膜を除去し、板の曲がりから測定した鋼板への付与張
力、鋼板の磁気特性を表１に記した。表１のいずれに対
しても従来材をしのぐ大きな張力が付与され、結果とし
て良好な磁気特性が実現していることがわかる。
板を、そのまま１００mlの沸騰蒸留水中に１０分間浸漬
し、その前後の重量変化によって評価し、いずれの組成
も、５０cm2 の鋼板あたり５mg未満の重量変化であっ
た。また、沸騰蒸留水中への被膜成分の溶け出しも、い
ずれの組成とも分析検出限界以下であった。錆発生試験
は、５０℃、相対湿度９８％の恒温恒湿雰囲気中に１５
０時間保持、目視と重量変化によって評価した。結果
は、いずれの組成とも顕著な発錆、重量増加は認められ
ず、極めて良好な結果であった。生成した被膜の構成
相、被膜中に占めるほう酸アルミニウムの割合、片面の
被膜を除去し、板の曲がりから測定した鋼板への付与張
力、鋼板の磁気特性を表１に記した。表１のいずれに対
しても従来材をしのぐ大きな張力が付与され、結果とし
て良好な磁気特性が実現していることがわかる。
【００２２】表１
【００２３】実施例２ 市販のほう酸試薬を１５０℃で乾燥して作製したメタほ
う酸、ベーマイトゾル、りん酸塩、テトラエトキシシラ
ンを表２に示すた割合で混合しこれに蒸留水を加えて塗
布液を作製した。これをＳｉを３．２％含有し、酸化ア
ルミニウムを焼鈍分離剤として塗布し、２次再結晶と同
時に鏡面化処理を施した厚さ０．２mmの一方向性珪素鋼
板に片面４ｇ／ｍ2 となるように塗布、乾燥させた後、
Ｈ2 を３vol％含有するＮ2 雰囲気中で８５０℃、１０
分間焼き付けた。
う酸、ベーマイトゾル、りん酸塩、テトラエトキシシラ
ンを表２に示すた割合で混合しこれに蒸留水を加えて塗
布液を作製した。これをＳｉを３．２％含有し、酸化ア
ルミニウムを焼鈍分離剤として塗布し、２次再結晶と同
時に鏡面化処理を施した厚さ０．２mmの一方向性珪素鋼
板に片面４ｇ／ｍ2 となるように塗布、乾燥させた後、
Ｈ2 を３vol％含有するＮ2 雰囲気中で８５０℃、１０
分間焼き付けた。
【００２４】得られた被膜の表面性状、べたつき、発錆
性は極めて良好であり、実施例１と同様に評価した被膜
の密着性、化学的安定性、発錆性は極めて良好であっ
た。生成した被膜の構成結晶相、被膜中に占めるほう酸
アルミニウムの割合、片面の被膜を除去し、板の曲がり
から測定した鋼板への付与張力、鋼板の磁気特性を表２
に記した。表２のいずれに対しても従来材をしのぐ大き
な張力が付与され、結果として良好な磁気特性が実現し
ていることがわかる。
性は極めて良好であり、実施例１と同様に評価した被膜
の密着性、化学的安定性、発錆性は極めて良好であっ
た。生成した被膜の構成結晶相、被膜中に占めるほう酸
アルミニウムの割合、片面の被膜を除去し、板の曲がり
から測定した鋼板への付与張力、鋼板の磁気特性を表２
に記した。表２のいずれに対しても従来材をしのぐ大き
な張力が付与され、結果として良好な磁気特性が実現し
ていることがわかる。
【００２５】
【表２】
【００２６】
【発明の効果】本発明により、特定の成分の被膜を有す
ることによって、化学的、特に湿度に対して安定で、被
膜のべたつきや発錆性に極めて優れ、かつその張力付与
効果によって鉄損が著しく改善された一方向性珪素鋼板
を提供することができる。特に、従来から用いられてい
る１次被膜を有する鋼板、あるいは著しい低鉄損化を目
的とした鏡面化鋼板のいずれに対しても良好な特性を示
し、汎用性の観点からも工業的効果は甚大である。
ることによって、化学的、特に湿度に対して安定で、被
膜のべたつきや発錆性に極めて優れ、かつその張力付与
効果によって鉄損が著しく改善された一方向性珪素鋼板
を提供することができる。特に、従来から用いられてい
る１次被膜を有する鋼板、あるいは著しい低鉄損化を目
的とした鏡面化鋼板のいずれに対しても良好な特性を示
し、汎用性の観点からも工業的効果は甚大である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭54−143737（ＪＰ，Ａ) 特開 平３−207868（ＪＰ，Ａ) 特公 昭42−27530（ＪＰ，Ｂ１) 特公 昭46−18603（ＪＰ，Ｂ１) (58)調査した分野(Int.Cl.7，ＤＢ名) C23C 22/00 - 22/86
Claims (2)
- 【請求項１】 Ａｌ x Ｂ y Ｏ 3(x+y)/2 （０．１≦（ｙ／
ｘ）≦５）なる化学式で表される結晶質ほう酸アルミニ
ウムを必須成分とし、りんを成分として含有する非晶質
相、および／またはりん酸アルミニウムを含有する被膜
を有してなる低鉄損一方向性珪素鋼板。 - 【請求項２】 ほう酸アルミニウムが、被膜全体に対す
る体積割合で３０％以上９５％以下である請求項１記載
の低鉄損一方向性珪素鋼板。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP07361594A JP3178959B2 (ja) | 1994-04-12 | 1994-04-12 | 低鉄損一方向性珪素鋼板 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP07361594A JP3178959B2 (ja) | 1994-04-12 | 1994-04-12 | 低鉄損一方向性珪素鋼板 |
Publications (2)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH07278831A JPH07278831A (ja) | 1995-10-24 |
| JP3178959B2 true JP3178959B2 (ja) | 2001-06-25 |
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ID=13523423
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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| JP07361594A Expired - Fee Related JP3178959B2 (ja) | 1994-04-12 | 1994-04-12 | 低鉄損一方向性珪素鋼板 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP3178959B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP3482374B2 (ja) * | 1999-09-14 | 2003-12-22 | 新日本製鐵株式会社 | 被膜特性に優れた方向性電磁鋼板およびその製造方法 |
| US20220145472A1 (en) * | 2019-03-25 | 2022-05-12 | Nippon Steel Corporation | Coating agent for forming grain-oriented electrical steel sheet coating and method for manufacturing grain-oriented electrical steel sheet |
-
1994
- 1994-04-12 JP JP07361594A patent/JP3178959B2/ja not_active Expired - Fee Related
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|---|---|
| JPH07278831A (ja) | 1995-10-24 |
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