JP2664335B2 - 酸化アルミニウム−酸化けい素系複合被膜を有する低鉄損一方向性珪素鋼板およびその製造方法 - Google Patents

酸化アルミニウム−酸化けい素系複合被膜を有する低鉄損一方向性珪素鋼板およびその製造方法

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JP2664335B2
JP2664335B2 JP6073612A JP7361294A JP2664335B2 JP 2664335 B2 JP2664335 B2 JP 2664335B2 JP 6073612 A JP6073612 A JP 6073612A JP 7361294 A JP7361294 A JP 7361294A JP 2664335 B2 JP2664335 B2 JP 2664335B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鋼板に大きな張力を付
与する被膜を表面に有することで、鉄損が低減された一
方向性珪素鋼板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一方向性珪素鋼板は、(110),〔0
01〕を主方位とする結晶組織を有し、磁気鉄芯材料と
して多用されており特にエネルギーロスを少なくするた
めに鉄損の小さい材料が求められている。一方向性珪素
鋼板の鉄損を低減する手段としては、仕上げ焼鈍後の鋼
板表面にレーザービームを照射して局部的な歪を与え、
それによって磁区を細分化する方法が特開昭58−26
405号公報に開示されている。また鉄芯加工後の歪取
り焼鈍(応力除去焼鈍)を施した後もその効果が消失し
ない磁区細分化手段が、例えば特開昭62−86175
号公報に開示されている。
【0003】一方で、鉄および珪素を含有する鉄合金は
結晶磁気異方性が大きいため、外部張力を付加すると磁
区の細分化が起こり、鉄損の主要素である渦電流損失を
低下させることができる。したがって、5%以下の珪素
を含有する一方向性珪素鋼板の鉄損の低減には鋼板に張
力を付与することが有効であり、1.5kgf/mm2 程度ま
での張力付与によって効果的に鉄損が低減できることが
知られている。この張力は通常、表面に形成された被膜
によって付与される。
【0004】従来、一方向性珪素鋼板には、仕上げ焼鈍
工程で鋼板表面の酸化物と焼鈍分離剤とが反応して生成
するフォルステライトを主体とする2次被膜、および特
開昭48−39338号公報等に開示されたコロイド状
シリカとりん酸塩とを主体とするコーティング液を焼き
付けることによって生成する2次被膜の2層の被膜によ
って1.0kgf/mm2 程度の張力が付与されている。した
がって、これら現行被膜の場合、より大きな張力付与に
よる鉄損改善の余地は残されているものの、被膜を厚く
することによる付与張力の増加は占積率の低下をもたら
すため好ましくない。
【0005】また、一方向性珪素鋼板の鉄損を改善する
もうひとつの方法として、仕上げ焼鈍後の鋼板表面の凹
凸や表面近傍の内部酸化層を除去して鏡面仕上げを行
い、その表面に金属メッキを施す方法が特公昭52−2
4499号公報に、さらに、その表面に張力被膜を形成
する方法が例えば特公昭56−4150号公報、特開昭
61−201732号公報、特公昭63−54767号
公報、特開平2−213488号公報等に開示されてい
る。これらの場合においても、被膜による鋼板への張力
付与の大きい方が鉄損改善効果が大きい。これらのこと
から、密着性に優れ、薄くて鋼板に大きな張力が付与で
きる被膜が望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、これら従来
技術における問題点を解決し、鋼板に大きな張力を付与
する被膜を表面に有することにより鉄損が低減された一
方向性珪素鋼板、およびその製造方法を提供することを
目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、表面に酸化
アルミニウム−酸化珪素系複合被膜を有する一方向性珪
素鋼板、酸化アルミニウム−酸化珪素系複合被膜が結
晶質ムライトを含有する一方向性珪素鋼板、表面に酸
化アルミニウム−酸化珪素−非晶質酸化物系複合被膜を
有する一方向性珪素鋼板、酸化アルミニウム−酸化珪
素−非晶質酸化物系複合被膜が、結晶質ムライト、およ
び/または珪素、ほう素、りんの少なくとも1種を成分
として含む非晶質相を含有する一方向性珪素鋼板を要旨
とする。
【0008】またその製造方法として、仕上げ焼鈍が完
了した鋼板表面に、酸化アルミニウム前駆体化合物、酸
化珪素前駆体化合物を含む懸濁液を塗布、乾燥後、50
0〜1350℃の温度で焼き付け、酸化物被膜を形成せ
しめることを要旨とする。さらに、酸化アルミニウム前
駆体化合物が酸化アルミニウム前駆体ゾル、酸化珪素前
駆体化合物が酸化珪素前駆体ゾルである製造方法を要旨
とする。また、仕上げ焼鈍が完了した鋼板表面に、酸化
アルミニウム前駆体化合物、酸化珪素前駆体化合物、ほ
う酸および/またはほう酸塩、りん酸および/またはり
ん酸塩を含む懸濁液を塗布、乾燥後、500〜1350
℃の温度で焼き付け、酸化物被膜を形成せしめることに
よる製造方法を要旨とする。さらに、酸化アルミニウム
前駆体化合物が酸化アルミニウム前駆体ゾル、酸化珪素
前駆体化合物が酸化珪素前駆体ゾルである製造方法を要
旨とする。
【0009】
【作用】以下に本発明を詳細に説明する。本発明の一方
向性珪素鋼板は、その表面に酸化アルミニウム−酸化珪
素系複合被膜を有している。従来より、珪素鋼板への張
力付与には熱膨張係数の小さい被膜材質を選択し、鋼板
との熱膨張係数差によって冷却時に生じる応力を利用し
ていた。しかしながら、熱膨張係数だけではなく、被膜
材質のヤング率も鋼板への張力付与に影響をおよぼす因
子であることが指摘されている。本発明の被膜構成成分
の役割を明確に規定することは不可能であるが、酸化ア
ルミニウム成分はヤング率が比較的大きく、また酸化珪
素成分は熱膨張係数を比較的小さくすることができるた
め、この両者の複合化によって鋼板に大きな張力が付与
されていると推察している。
【0010】酸化アルミニウムには、α−,γ−,δ
−,θ−等いくつかの結晶系が存在し、鋼板への張力付
与効果はそれぞれの結晶系において必ずしも同一ではな
いものの、本発明の酸化アルミニウムはこのいずれであ
っても差し支えない。また必ずしも良好な結晶性を有す
る結晶質である必要はなく、結晶性のあまり良くない非
晶質的なもの、あるいは結晶の前駆体となるような化合
物であっても構わない。酸化珪素も数種類の結晶系と非
晶質相が知られているが、このうち、シリカガラスとよ
ばれる非晶質相が熱膨張係数が比較的小さく、特に好適
に用いられる。結晶質SiO2 は非晶質相と比較すると
熱膨張係数は大きくなるものの、被膜の耐スティッキン
グ性等の観点から用いられる場合がある。
【0011】またこれらの被膜中に結晶質ムライトを含
有することでより大きな張力付与が可能になる場合があ
る。ムライトは、3Al2 3 ・2SiO2 の化学式で
表記される結晶であり、低熱膨張係数、高いヤング率と
いう性質によって鋼板に対して高い張力付与をもたらす
と推察される。ムライトには3:2組成を中心に固溶域
が存在することが知られているが、本発明の被膜中に存
在するムライトは定比組成、固溶体のいずれであっても
まったく支障なく用いることができる。
【0012】本発明の複合被膜中の酸化アルミニウムと
酸化珪素の存在割合は、比較的幅広い範囲とすることが
可能であり、いかなる割合とすることもできる。しかし
ながら複合被膜の特長を最大限に発揮させるためにはそ
れぞれの成分を最低でも被膜全体に対する重量割合で5
%、好ましくは10%以上含有させるのが良い。また、
結晶質ムライトの量もいかなる割合とすることもでき、
できるだけ多くの結晶質ムライトを含有させることでよ
り高い張力の付与が可能となるが、被膜の表面性状が悪
くなる傾向があるため、必要に応じて最適な量を決定す
ることが好ましい。結晶質ムライトの好ましい含有量と
しては、被膜全体に対する重量割合で90%以下、より
好ましくは80%以下であり、通常は、5〜75%程度
の範囲から選択される。
【0013】本発明のもうひとつの一方向性珪素鋼板表
面には、酸化アルミニウム−酸化珪素−非晶質酸化物系
複合被膜を有している。酸化アルミニウム成分、酸化珪
素成分の役割はすでに述べたとおりであるが、非晶質酸
化物成分の役割として、鋼板への張力付与にはそれほど
大きな効果はなく、表面平滑性、下地鋼板との密着性等
を大きく改善していると推察している。なかでも、珪
素、ほう素、りんの少なくとも1種を成分として含む非
晶質相がとりわけこの効果が顕著であることを見い出し
た。
【0014】特にガラス状物質を形成しているときに著
しく大きな効果が得られる。非晶質相中の珪素、ほう
素、りんの含有量は、それぞれの酸化物換算の合計で非
晶質相全体に対する重量割合で50%以上、好ましくは
70%以上である。また、非晶質相には、珪素、ほう
素、りん以外に微量の成分を含有していても一向に差し
支えない。可能性のある元素としては、被膜主成分であ
るAl、母材構成成分であるFe、1次被膜成分である
Mg,Ti,Mn,Sの他にLi,Na,K,Ca,S
r,Ba,V,Cr,Ni,Co,Cuをはじめとする
アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属元素、ある
いはSn,Pb,Bi,Sb等があげられる。
【0015】非晶質相全体としての含有量は特に制限は
ないが、あまり多すぎると鋼板への張力付与が十分でな
くなるため、被膜全体に対する重量割合で90%以下、
より好ましくは70%以下である。また少なすぎる場合
には、十分に平滑な被膜表面、良好な密着性が得られな
い場合があるため、被膜全体に対する重量割合で5%以
上、より好ましくは10%以上含有することが望まし
い。
【0016】本発明の一方向性珪素鋼板表面の被膜は、
厚すぎる場合には占積率が低下するため目的に応じてで
きるだけ薄いものが良く、ひとつの目安としては鋼板厚
さの5%以下である。より好ましくは、鋼板厚さの2%
以下である。また張力付与の観点からは、極端に薄くて
は十分な効果が得られず、0.1μm以上が好ましい。
【0017】以下に、本発明の一方向性珪素鋼板を好適
に製造する方法について述べる。ひとつは、仕上げ焼鈍
が完了した鋼板表面に、酸化アルミニウム前駆体化合
物、酸化珪素前駆体化合物を含む懸濁液を塗布、乾燥
後、500〜1350℃の温度で焼き付け、酸化物被膜
を形成することによる製造方法である。ここでいう仕上
げ焼鈍が完了した鋼板とは、:従来公知の方法によっ
て仕上げ焼鈍を行い、表面にフォルステライト質の1次
被膜が形成された鋼板、:1次被膜、および付随的に
生成している酸化層を酸に浸漬して除去した鋼板、:
で得た鋼板を水素中で平坦化焼鈍を行った鋼板、ある
いは化学研磨、電解研磨等の研磨を施した鋼板、:被
膜生成に対して不活性であるアルミナ粉末等、または塩
化物等の微量添加物を添加した従来公知の焼鈍分離剤を
塗布し、1次被膜を生成させない条件下で仕上げ焼鈍を
行った鋼板、等を指す。
【0018】酸化アルミニウム前駆体化合物は、焼き付
け後(熱処理)に酸化アルミニウムとなる化合物の総称
であり、酸化アルミニウムはもとより、べーマイトのよ
うなAl2 3 ・nH2 Oで表記される酸化アルミニウ
ムの水和物、水酸化アルミニウム、あるいは硝酸アルミ
ニウム、塩化アルミニウムをはじめとする各種のアルミ
ニウム塩等を指す。酸化珪素前駆体化合物も、同様に焼
き付け後に酸化珪素となる化合物の総称であり、酸化珪
素の水和物、酸化水酸化珪素、各種珪素化合物等が好適
に用いられる。
【0019】これらの原料を分散媒に分散させて懸濁液
(スラリー)を作製する。分散媒は作業性、コスト等の
点から水が最も好適であるが、他の工程で特に支障がな
ければ有機溶媒、あるいはこれらの混合物が使用でき
る。スラリーを作製した時点で原料のうちのある種のも
のは溶解する可能性があるが、これは一向に差し支えな
い。
【0020】こうして得たスラリーをロールコーター等
のコーター、ディップ法、スプレー吹き付け、あるいは
電気泳動等、従来公知の方法によって仕上げ焼鈍が完了
した一方向性珪素鋼板表面に塗布する。乾燥後、500
〜1350℃で焼き付けることによって表面に酸化物被
膜を形成する。焼き付け時の雰囲気は、窒素等の不活性
ガス雰囲気、窒素−水素混合雰囲気等の還元雰囲気が好
ましく、空気、あるいは酸素を含む雰囲気は鋼板を酸化
させる可能性があり、好ましくない。雰囲気ガスの露点
については特に制限はない。焼き付け温度が500℃未
満の場合、塗布した前駆体が酸化物とならない場合があ
り、また焼き付け温度が低いため十分な張力が発現せ
ず、好ましくない。一方、1350℃を超える場合、特
に大きな不都合はないものの経済的でなく、より好まし
くは1250℃以下である。
【0021】前述のスラリーのうち、酸化アルミニウム
前駆体、酸化珪素前駆体化合物として、いわゆるゾルと
よばれる微粒子分散系を用いることにより薄くて均一、
かつ密着性の良い被膜が得られる場合がある。これは表
面に非金属物質が存在せず、金属面上に直接被膜を形成
するような場合に特に顕著である。かかるときには上述
の微粒子分散系ゾル、あるいは可溶性成分を含んだゾル
が好適に用いられる。
【0022】塗布液としてゾル溶液を用いる場合には、
酸化アルミニウム前駆体化合物として上述のベーマイト
ゾル、および/またはアルミナゾルとよばれているもの
が作業性、あるいは価格の点から特に好適に用いられ
る。一方、酸化珪素前駆体ゾルとしては種々のものが使
用可能であるが、SiO2 ・nH2 O、またはSiOx
・(OH)y なる化学式で表記されるシリカゾル、およ
び/またはコロイダルシリカがやはり作業性、価格の点
から好適に用いられる。
【0023】なかでも、酸化珪素前駆体ゾルとしてSi
(OCz 2z+14 なる化学式のアルキルシリケート、
および/またはその加水分解物が好適に用いられる。ア
ルキルシリケートは金属アルコキシドの1種であるが、
加水分解が比較的緩慢であり、前駆体として安定した性
状が得られる。アルキルシリケートは通常、加水分解に
よって珪素の水酸化物、あるいは酸化珪素の水和物を形
成するが、ある種の被膜を形成する場合においてはアル
キルシリケートをそのまま用いるより、その加水分解物
を用いた方が好ましいケースが存在する。このような場
合には加水分解後の前駆体ゾルが好適に用いられる。こ
れには、あらかじめ加水分解した後、他の成分と混合
する方法、他の成分と混合しつつ加水分解を並行さ
せ、必要に応じて熟成を加える、等いくつかの方法が考
えられるが、本発明ではこのいずれであっても特に支障
はない。
【0024】好ましいアルキルシリケート化合物として
は、なかでも加水分解速度の速い、炭素数zの少ないも
のであり、好ましくはz≦3程度であるが、z=1のメ
チルシリケートは加水分解によって生成するメチルアル
コールに有害性が存在するため、z=2のエチルシリケ
ートが特に好適に用いられる。
【0025】酸化アルミニウム、酸化珪素の前駆体ゾル
の使用においても、前述のスラリーと同様に分散媒、特
に水に分散させて使用することが可能である。特に良好
な分散性を得るために、酸、アルカリ等の添加による塗
布液のpH制御等はしばしば用いられる手法であり、本
発明においても特に支障なく行うことができる。また、
鋼板への塗布性を改善するための極微量の界面活性剤等
の添加についてもまったく問題がない。
【0026】もうひとつの製造方法としては、仕上げ焼
鈍が完了した鋼板表面に酸化アルミニウム前駆体化合
物、酸化珪素前駆体化合物、ほう酸および/またはほう
酸塩、りん酸および/またはりん酸塩を含む懸濁液を塗
布、乾燥後、500〜1350℃の温度で焼き付け、酸
化物被膜を形成することによる製造方法である。ほう酸
および/またはほう酸塩としては、H3 BO3 で表わさ
れるオルトほう酸が価格等の点から最も好ましいがHB
2 で表わされるメタほう酸、B2 3で表わされる酸
化ほう素、あるいはこれらの混合物も用いることができ
る。また、ほう酸塩として、ほう酸リチウム、ほう酸ナ
トリウム等のほう酸アルカリ、ほう酸アルミニウム、ほ
う酸亜鉛、ほう酸バリウム、ほう酸鉛等が好適に用いら
れる。
【0027】りん酸および/またはりん酸塩としては、
りん酸、オルトりん酸が特に好適に用いられる。これ以
外にりん酸塩として、りん酸リチウム、りん酸ナトリウ
ム等のりん酸アルカリ、りん酸マグネシウム、りん酸カ
ルシウム等のアルカリ土類りん酸塩、りん酸アンモニウ
ム、りん酸アルミニウム、りん酸亜鉛、リン酸バリウ
ム、りん酸鉛、りん酸鉄、りん酸クロム等が好適に用い
られる。
【0028】第2の製造方法においても前述の第1の製
造方法と同様に、酸化アルミニウム前駆体、酸化珪素前
駆体化合物として、いわゆるゾルとよばれる微粒子分散
系を用いることにより薄くて均一、かつ密着性の良い被
膜が得られる場合がある。かかるときには上述の微粒子
分散系ゾル、あるいは可溶性成分を含んだゾルが好適に
用いられる。
【0029】ほう酸および/またはほう酸塩、りん酸お
よび/またはりん酸塩の配合量は、幅広い範囲から選択
することが可能であるが、高い張力付与という本被膜の
優れた特徴を損なわないためには、酸化物換算の合計量
で全固形分重量(酸化物換算)の50%以下、好ましく
は30%以下とするのが良い。以下に本発明を実施例を
用いて具体的に説明するが、本発明はかかる実施例にの
み限定されるものではない。
【0030】
【実施例】
実施例1 市販の酸化アルミニウム粉末(α−Al2 3 、平均粒
径:0.4μm)、酸化珪素粉末を表1に示した割合に
混合し、これに蒸留水を加えてスラリーを作製した。こ
れを、Siを3.2%含有する厚さ0.2mmの仕上げ焼
鈍が完了した一方向性珪素鋼板(フォルステライト質の
1次被膜あり)に片面4g/m2 となるように塗布、乾
燥後、H2 を3 vol%含有するN2 雰囲気中で800
℃、5分間焼き付けることによって表面に酸化物被膜を
形成した。
【0031】化学分析、X線回折、電子顕微鏡等の結果
から、得られた被膜は、α−Al23 とSiO2 系の
非晶質相を主体としていることがわかった。20mmφの
円柱の周囲に、その角度が180度となるように巻き付
け試験を行い、その剥離状況から評価した被膜の密着性
はきわめて良好であった。片面の被膜を除去し、板の曲
がりから測定した鋼板への付与張力、および磁気特性を
表1に記した。表1の結果から、いずれも著しく鉄損の
低い一方向性珪素鋼板が得られていることがわかる。ま
た表面に形成された被膜の化学的安定性もきわめて良好
であった。
【0032】
【表1】
【0033】実施例2 市販のベーマイト粉末(平均粒径:100nm)、コロイ
ダルシリカ(平均粒径:15nm)を固形分相当で表2に
示した割合に混合し、これに必要に応じて蒸留水を加え
て混合ゾルを作製した。これを、Siを3.2%含有
し、酸化アルミニウムを焼鈍分離剤として塗布し、2次
再結晶と同時に鏡面化処理を施した厚さ0.2mmの一方
向性珪素鋼板に片面4g/m2 となるように塗布、乾燥
後、H2 を10 vol%含有するN2 雰囲気中で1000
℃、10分間焼き付けることによって表面に酸化物被膜
を形成した。
【0034】化学分析、X線回折、電子顕微鏡等の結果
から測定した被膜の構成相を表2に記した。表中のいく
つかの組成では、ムライトの生成が確認された。実施例
1と同様に評価した被膜の密着性はきわめて良好であっ
た。片面の被膜を除去し、板の曲がりから測定した鋼板
への付与張力、および磁気特性を表2に併記した。表2
の結果から、いずれも著しく鉄損の低い一方向性珪素鋼
板が得られていることがわかる。また表面に形成された
被膜の化学的安定性もきわめて良好であった。
【0035】
【表2】
【0036】実施例3 市販のベーマイト粉末(平均粒径:100nm)、エチル
シリケート、ほう酸試薬を表3に示した割合に混合し、
これに蒸留水を加えて混合ゾルを作製した。これを、S
iを3.2%含有する厚さ0.2mmの仕上げ焼鈍が完了
した一方向性珪素鋼板(フォルステライト質の1次被膜
あり)に片面4g/m2 となるように塗布、乾燥後、H
2 を3 vol%含有するN2 雰囲気中で850℃、3分間
焼き付けることによって表面に酸化物被膜を形成した。
【0037】化学分析、X線回折、電子顕微鏡等の結果
から測定した被膜の構成相を表3に記した。ほう素を含
有する結晶質相が観察されないことより、ほう素成分は
非晶質相となって存在していることがわかる。実施例1
と同様にして評価した被膜の密着性はきわめて良好であ
った。片面の被膜を除去し、板の曲がりから測定した鋼
板への付与張力、および磁気特性を表3に併記した。表
3の結果から、いずれも著しく鉄損の低い一方向性珪素
鋼板が得られていることがわかる。また表面に形成され
た被膜の化学的安定性もきわめて良好であった。
【0038】
【表3】
【0039】実施例4 市販の酸化ベーマイト粉末(平均粒径:0.4μm)、
エチルシリケート、ほう酸試薬、りん酸を表4に示した
割合に混合し、これに蒸留水を加えてスラリーを作製し
た。これをSiを3.2%含有し、酸化アルミニウムを
焼鈍分離剤として塗布し、2次再結晶と同時に鏡面化処
理を施した厚さ0.2mmの一方向性珪素鋼板に片面4g
/m2 となるように塗布、乾燥後、H2 を5 vol%含有
するN2雰囲気中で900℃、10分間焼き付けること
によって表面に酸化物被膜を形成した。
【0040】化学分析、X線回折、電子顕微鏡等の結果
から測定した被膜の構成相を表4に記した。ほう素、り
んを含有する結晶質相が観察されないことより、ほう素
およびりん成分は非晶質相となって存在していることが
わかる。実施例1と同様にして評価した被膜の密着性は
きわめて良好であった。片面の被膜を除去し、板の曲が
りから測定した鋼板への付与張力、および磁気特性を表
4に併記した。表4の結果から、いずれも著しく鉄損の
低い一方向性珪素鋼板が得られていることがわかる。ま
た表面に形成された被膜の化学的安定性もきわめて良好
であった。
【0041】
【表4】
【0042】
【発明の効果】本発明により、特定成分の被膜を有し、
化学的に安定で、かつその張力付与効果によって鉄損が
著しく改善された一方向性珪素鋼板、およびその製造方
法を提供することができる。本発明は特に、従来から用
いられている1次被膜を有する鋼板、あるいは著しい低
鉄損化を目的とした鏡面化鋼板のいずれに対しても良好
な特性を示し、汎用性の観点からも工業的効果は甚大で
ある。

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面に酸化アルミニウム−酸化珪素系複
    合被膜を有する低鉄損一方向性珪素鋼板。
  2. 【請求項2】 酸化アルミニウム−酸化珪素系複合被膜
    が結晶質ムライトを含有する請求項1に記載の低鉄損一
    方向性珪素鋼板。
  3. 【請求項3】 表面に酸化アルミニウム−酸化珪素−非
    晶質酸化物系複合被膜を有する低鉄損一方向性珪素鋼
    板。
  4. 【請求項4】 酸化アルミニウム−酸化珪素−非晶質酸
    化物系複合被膜が、結晶質ムライト、および/または珪
    素、ほう素、りんの少なくとも1種を成分として含む非
    晶質相を含有する請求項3に記載の低鉄損一方向性珪素
    鋼板。
  5. 【請求項5】 仕上げ焼鈍が完了した一方向性珪素鋼板
    表面に、酸化アルミニウム前駆体化合物、酸化珪素前駆
    体化合物を含む懸濁液を塗布、乾燥後、500〜135
    0℃の温度で焼き付け、酸化物被膜を形成せしめる低鉄
    損一方向性珪素鋼板の製造方法。
  6. 【請求項6】 酸化アルミニウム前駆体化合物が酸化ア
    ルミニウム前駆体ゾル、酸化珪素前駆体化合物が酸化珪
    素前駆体ゾルである請求項5に記載の低鉄損一方向性珪
    素鋼板の製造方法。
  7. 【請求項7】 仕上げ焼鈍が完了した一方向性珪素鋼板
    表面に、酸化アルミニウム前駆体化合物、酸化珪素前駆
    体化合物、ほう酸および/またはほう酸塩、りん酸およ
    び/またはりん酸塩を含む懸濁液を塗布、乾燥後、50
    0〜1350℃の温度で焼き付け、酸化物被膜を形成せ
    しめる低鉄損一方向性珪素鋼板の製造方法。
  8. 【請求項8】 酸化アルミニウム前駆体化合物が酸化ア
    ルミニウム前駆体ゾル、酸化珪素前駆体化合物が酸化珪
    素前駆体ゾルである請求項7に記載の低鉄損一方向性珪
    素鋼板の製造方法。
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