JP5594044B2 - 有機樹脂被覆鋼材 - Google Patents

有機樹脂被覆鋼材 Download PDF

Info

Publication number
JP5594044B2
JP5594044B2 JP2010230532A JP2010230532A JP5594044B2 JP 5594044 B2 JP5594044 B2 JP 5594044B2 JP 2010230532 A JP2010230532 A JP 2010230532A JP 2010230532 A JP2010230532 A JP 2010230532A JP 5594044 B2 JP5594044 B2 JP 5594044B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
organic resin
chemical conversion
layer
steel material
conversion treatment
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2010230532A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2012081670A (ja
Inventor
隆生 山崎
佳幸 原田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2010230532A priority Critical patent/JP5594044B2/ja
Publication of JP2012081670A publication Critical patent/JP2012081670A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5594044B2 publication Critical patent/JP5594044B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Laminated Bodies (AREA)
  • Chemical Treatment Of Metals (AREA)
  • Other Surface Treatments For Metallic Materials (AREA)
  • Preventing Corrosion Or Incrustation Of Metals (AREA)

Description

本発明は、有機樹脂被覆鋼材に関する。更に詳しくは、本発明は、有機被覆の下地処理層を有する有機樹脂被覆鋼材に関する。
防食性能が重要な用途(例えば、海洋鋼構造物)に用いられる鋼材は、樹脂被覆によって防食することが広く行われている。通常は、耐食性や密着性を向上させるために鋼材の表面に化成処理を施し、その上に、樹脂被覆が行われている。樹脂で被覆された鋼材は、その樹脂被覆が剥離するまで防食性能を発揮するが、上記化成処理を行うことで、樹脂被覆の剥離が抑えられ、防食寿命を延長させることが可能となる。
この化成処理として、従来はクロメート処理が用いられてきたが、近年は環境対策からクロメートを用いない化成処理の開発が行われている。しかしながら、、海洋構造物に要求される耐食性、密着性、耐陰極剥離性などを、クロメート処理を用いた鋼材と同じレベルに到達させるのは容易ではなかった。このため、これらの性能を向上させるべく、過去に様々な試みがなされてきた。
例えば、特許文献1には、クロメート処理材に匹敵する被覆寿命を有するりん酸アルミ系ノンクロメート樹脂被覆鋼材が開示されている。
ところが、最近では、クロメートを超える鋼材の長寿命化が要請されるようになってきているため、更なる開発が望まれている。
特許公開2007−313885
本発明の目的は、従来技術における鋼材と比較して、更なる長寿命化が可能な有機樹脂被覆鋼材を提供することにある。
鋭意研究の結果、本発明者らは、(従来の樹脂種類・構成を大幅に変更しなくても)有機樹脂被覆鋼材を構成すべき「化成処理層」を適切に改良することにより、上記目的が達成可能であることを見出した。
本発明の有機樹脂被覆鋼材は上記発見に基づくものであり、より詳しくは、
(「クレーム1」の引き写し)
本発明において、有機樹脂被覆鋼材の長寿命化が可能な理由は、本発明者らの知見によれば、以下のように推定される。
すなわち、本発明者らの知見によれば、海洋鋼構造物の長寿命化を阻む問題は、干満帯に流木等の漂流物や船舶との衝突により樹脂被覆が「そぎとられる」ことに起因することが推定された。樹脂被覆がそぎとられると、鋼材が露出した場合はもちろん、鋼材が露出するまでに至らなくても、耐食性や皮膜耐久性が劣化するため、その部分から腐食や被覆剥離が早期に始まるからである。
他方、従来使用されて来たような、通常の耐衝撃試験、すなわち、水平に置いた試験片に、錘を垂直に落下・衝突せしめ、塗膜や被覆の割れ・剥離を観察する方法においては、被覆樹脂層には強い圧縮応力がかかり、樹脂が破壊される。しかしながら、このような従来の耐衝撃試験は、上記した海洋鋼構造物用鋼材の耐食性や皮膜耐久性の評価に関しては、「必ずしも適していない」ことを本発明者らは見出した。
本発明者らの知見によれば、実際に流木、漂流物、船舶等が、(評価すべき)鋼材に対して垂直に衝突することは稀で、むしろ「垂直以外」の角度を持って衝突する場合の方が多いと推定された。このような仮説に基づき、被覆樹脂には、圧縮応力に加え、大きなずれ応力が加わって起きる「こすれ破壊」が極めて重要であると、本発明者らは予測した。
この観点から、樹脂被覆の「耐こすれ破壊性」が弱いと、せっかく優れた密着性や防食性を有する化成処理を用いても、実際の「防食寿命」はむしろ低減すると本発明者らは考えた。よって、従来における、「通常の錘を垂直に落下させる」試験は、「耐こすれ破壊性」の評価試験としては、適切ではないと、本発明者らは考えた。
上記の考察に基づき、本発明者らは、後述の実施例に示すような、新たな「こすれ破壊試験法」を考案した。本発明者らが考案した「こすれ破壊試験法」によれば、後述するように、樹脂被覆の「耐こすれ破壊性」を適切に評価できることが見出された。この新たな「耐こすれ破壊性」による評価は、(従来の耐衝撃試験による評価と比較して)特に、樹脂被覆の被覆厚さが数mmにもなる場合は、その差が顕著に表れることが、本発明者らの実験により判明している。
本発明者らは、上記知見(新たな「こすれ破壊試験法」)に基づき、「こすれ破壊を起こしにくい樹脂被覆」に関して更に研究を進めたところ、更に、以下の知見を得た。
上記の新たな「こすれ破壊」試験によれば、有機樹脂層が破壊においては、有機樹脂の分子凝集力が、「こすれ破壊性」に重要な影響を与えることが見出された。
上記知見に基づき、更に鋭意研究を行った結果、本発明者らは、分子凝集力を増大させなくても、すなわち、従来の樹脂の種類・構成を大幅に変更しなくても、化成処理層の改良により、有機樹脂被覆鋼材の長寿命化が可能となり、樹脂層のこすれ破壊を改善できることを、本発明者らは発見したのである。
本発明の有機樹脂被覆鋼材は、優れた「耐こすれ破壊性」を有する。したがって、本発明の有機樹脂被覆鋼材は、「耐こすれ破壊性」が有効な用途(例えば、特に船舶交通や漂流物の多い海域用の海洋構造物用の鋼材)において、好適な長寿命化を達成することができる。
本発明の有機樹脂被覆鋼材は、以下の態様を有することができる。
[1]
鋼材表面に、鋼材側から順に、りん酸鉄化成処理層、りん酸アルミ系化成処理層、有機樹脂層が積層された有機樹脂被覆鋼材であって;
前記りん酸アルミ系化成処理層がP、Al、B、及び、MgあるいはCaから選らばれる金属Mを含み、
該りん酸アルミ系化成処理層の組成が、無水酸化物換算のモル比で、Al/P=0.2〜0.6、B/P=0.01〜0.1、MO/P=0.01〜0.2を与えるバインダーと、無機体質顔料とを含むことを特徴とする有機樹脂被覆鋼材。
[2]
前記りん酸鉄化成処理層の平均膜厚が0.1〜1μmである[1]に記載の有機樹脂被覆鋼材。
[3]
前記無機質顔料が、前記りん酸アルミ系化成処理層の乾燥皮膜に対して10〜50vol%添加されたものである[1]または[2]に記載の有機樹脂被覆鋼材。
[4]
前記有機樹脂層が、化成処理層の直上に形成されるプライマー層と、ウレタンエラストマー樹脂から成るトップ層から構成されることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の有機樹脂被覆鋼材。
[5]
前記プライマー層が、エポキシ樹脂から成る[4]に記載の有機樹脂被覆鋼材。
[6]
前記プライマー層の厚みが100〜500μmである[4]または[5]に記載の有機樹脂被覆鋼材。
[7]
前記トップ層の厚みが2〜4mmである[4]〜[6]のいずれかに記載の有機樹脂被覆鋼材。
[8]
前記りん酸アルミ化成処理層の厚さが5〜40μmであることを特徴とする[1]〜[7]のいずれかに記載の有機樹脂被覆鋼材。
[9]
前記金属MがMgであることを特徴とする[1]〜[8]のいずれか1項に記載の有機樹脂被覆鋼材。
[10]
前記りん酸アルミ系化成処理層中の無機体質顔料がアルミナであることを特徴とする[1]〜[9]のいずれか1項に記載の有機樹脂被覆鋼材。
(有機樹脂被覆鋼材)
本発明の有機樹脂被覆鋼材は、鋼材と、(該鋼材の表面上から順に)その上に配置されたりん酸鉄化成処理層と、その上に配置されたりん酸アルミ系化成処理層と、その上に配置された有機樹脂層とを、少なくとも含む。このように、本発明の有機樹脂被覆鋼材においては、化成処理層が「2層構造」になっている点が重要である。
(鋼種)
鋼種は特に限定されない。コストの点からは、SS400等の構造材用汎用鋼材である鋼種を用いることが好ましい。
(鋼材)
鋼材(すなわち、鋼種の形状)も、特に限定されない。形状の点からは、鋼管、鋼管矢板、鋼矢板、厚板等が例示できる。これら鋼材表面から錆、スケール、汚染物等を除去するため、サンドブラスト処理、グリッドブラスト処理、ショットブラスト処理等の下地処理行なって、清浄な金属表面を露出させておくことが、極めて好ましい。
(りん酸鉄化成処理層)
上記の鋼材表面上に配置されるべきりん酸鉄化成処理層(すなわち、りん酸鉄皮膜)は特に限定されない。耐こすれ破壊性の点からは、FePO・2HOとFe、不可避に混入する前述の添加物イオンの混合物から成る、緻密で薄い微結晶皮膜であることが好ましい。このような好適なりん酸鉄化成処理層は、例えば、市販のりん酸鉄用化成処理液を使用して得ることができる。りん酸鉄化成処理層の厚さは、通常は、せいぜい0.1〜0.4μm程度である。本発明においては、(例えば、基材表面がブラスト処理され、表面のデコボコが激しい態様においては)、成膜のバラつきを考慮し、皮膜厚さが0.1〜1μmであることが好ましい。この皮膜厚さは、更には、0.1〜0.5μm(特に0.2〜0.5μm)であることが好ましい。この皮膜厚さが0.1μmより薄いと、皮膜の均一性が失われ、発明の効果が低下する傾向がある。また皮膜厚さが1μm超では、皮膜の形成が困難になり易い傾向がある。
本発明において、上記のりん酸鉄化成処理層は、後述するりん酸アルミ化成処理層との相乗効果により、有機樹脂層のこすれ破壊性を充分に向上させることができる。
りん酸鉄処理以外のりん酸塩処理としては、りん酸亜鉛処理やりん酸マンガン処理などが知られ、りん酸鉄処理よりも広く用いられているが、これらは「耐こすれ破壊性」という点からは、いずれもりん酸鉄処理には劣る。
(りん酸アルミ系化成処理層)
上述したりん酸鉄化成処理層上に配置されるべきりん酸アルミ系化成処理層の構成は、特に限定されない。耐水密着性の点からは、りん酸アルミ系化成処理層は、バインダー相中に(後述するような)無機体質顔料が分散しているものであることが好ましい。無機体質顔料としてアルミナを用いた場合、バインダー相、顔料の固相、双方にアルミが含まれることとなる。このような態様においては、例えばEPMA(電子プローブマイクロアナライザ)で断面を観察すると、バインダーにはP(りん)が含まれているが、アルミナにはPが含まれていないので、両者の相を区別することは容易である。
りん酸アルミ系化成処理層の付着量は、初期密着性、耐水密着性の点からは、5〜40μmが好ましい。この付着量は、10〜30μm(特に15〜25μm)であることが、より好ましい。該付着量が5μm未満では、ブラスト表面を均一に濡らすことができずにムラが発生し、こすれ破壊性にもばらつきが生じる傾向がある。該付着量が40μmを超えると、こすれ破壊性が低下する傾向がある。
(酸化物組成式)
バインダー相の組成の説明に入る前に、組成表記に用いた「酸化物組成式」について説明する。酸化物組成式は、含水無機酸化物の場合、その組成と等しい酸化物と水の和で表すもので、セラミック・鉱物学の分野でよく用いられている。また、本願の「特許請求の範囲」では、各組成物をPに対するモル比で表現しているが、残部は、P、水(水素イオンと水酸化物イオンに分かれている場合も含む)、不可避の不純物酸化物である。
(バインダー)
バインダーの構成元素は、クロメート処理に匹敵する密着性・耐久性と低環境負荷を両立する元素の点からは、Al、P、B、M、O、H、であることが好ましい。これらの元素のうち、通常は、OとHは酸化物イオン、あるいは水酸化物イオンとして存在し(酸化物組成式では、通常は、併せてHOで表現されているが)、他の陽イオンと不定比例化合物を構成する。すなわち、本発明の化成処理バインダーは、通常は、もともと整数比で示されるような元素比率を有さない化合物である。上記の「酸化物表記」を用いた理由の一つも、ここにある。
(りん)
Pはりん酸塩として化成処理層の陰イオンの主成分をなし、リンは皮膜中でHPO 、HPO 2−、リン酸イオン、あるいはこのn量体(メタ燐酸イオン、ポリリン酸イオン)として存在し、アルミ(III)イオン、ホウ素(III)イオン、金属Mイオンをつなげる役目をしている。そしてIII 価ホウ素、金属Mイオンも、アルミと同様に、りん酸イオンと複雑な不定比例化合物を成している。
(アルミニウム)
Alは耐陰極剥離性・耐水密着性を向上させる主役であるが、通常は、Al(III)として存在する。本発明においては、モル比でAl/P=0.2〜0.6(更に好ましくは0.3〜0.5、特に好ましくは0.38〜0.41)である。本発明において、モル比でAl/P=0.2〜0.6の範囲では、リン酸イオンとアルミイオンの結合したネットワークに欠陥が(実質的に)存在せず、良好な成膜性と耐久性を示すことができる。このモル比が0.6を超えると、耐水密着性・造膜性が悪くなる傾向がある。他方、該モル比が0.2未満であると、耐陰極剥離性は充分なほど向上しない傾向がある。
本発明においては、結局、バインダーの主成分は、三価アルミ及びHPO 2−であり、若干のHPO 、三価ホウ素、Mの二価イオンを含んだ混成体であることが好ましく。そして、これらの存在モル比は、通常は整数比にはならない、不定比化合物である。本発明者らの推定によれば、りん酸アルミ系化成処理層中のリン酸アルミは、(イメージ的に位置づけるのであれば)AlPOとAl(HPO 2−の間に位置している。AlPOとAl(HPO 2−の関係(差)は、Al(HPO 2−からHPOを取り去ると、AlPOになるという関係である。正確な位置づけは、硬化時における脱水や、鉄素地との反応で微妙に変化する傾向がある。実施例たとえばNo.4〜9の場合のリン酸アルミの形態を単純な平均化学組成式で表せば、およそH1.2PO 1.8−になる。
(ホウ素)
Bは、皮膜の焼付け時の造膜性を向上させる性質を有する。本発明においては、モル比でB/P=0.01〜0.1が優れる。このモル比は、0.05〜0.1(更には0.08〜0.1)であることが更に好ましい。このモル比が規定値(すなわち、0.01)より少ないと造膜性が悪くなる傾向がある。他方、規定値(すなわち、0.1)よりも多く入れても効果は飽和し、更には向上しない傾向がある。Bは、通常はIII価ホウ素として存在し、Al(III)と同様に、りん酸イオンと複雑な不定比例化合物を成している。
(MgあるいはCa)
金属M(MgあるいはCa)は、無機イオン性皮膜を形成する際、皮膜を緻密にして造膜性を向上させ、下地密着力を高め、構造欠陥を減少させる効果を有する。本発明において、MO/P=0.01〜0.2が効果的である。このモル比は、0.05〜0.15(更には0.07〜0.12)であることが更に好ましい。この比(MO/P)が規定量(すなわち、0.01)より少ないと、前記効果が弱くなる傾向がある。他方、規定量(すなわち、0.2)より多いと密着性が低下し、また、皮膜がチョーキングを起こしたり、塗布液が急速にゲル化し、処理液の段階で製造が困難になる傾向がある。請求項2記載の樹脂被覆構成(すなわち、「有機樹脂層が、化成処理層の直上に形成されるエポキシ樹脂から成るプライマー層と、ウレタンエラストマー樹脂から成るトップ層より構成され、該プライマー層の厚みが100〜500μmであって、該トップ層の厚みが2〜4mm」である態様)の場合は、CaよりもMgの方が適している。
(無機体質顔料)
無機体質顔料は、リン酸アルミ化成処理皮膜の成膜性向上のために、必要に応じて添加しても良い。 耐水密着性の点からは、無機体質顔料を添加することが好ましい。りん酸アルミ化成処理液が酸性のため、酸に不溶であり、処理液によく分散するものであれば、特に制限されない。 分散性、塗布性の点からは、粒径が5〜15μmのアルミナ、チタニア、シリカ等を用いることが好ましい。これらの粒子の表面に、分散性・不溶性を向上させるための表面処理を、必要に応じて施すことができる。
無機体質顔料の添加量は、10〜50vol%( 乾燥硬化後塗膜 が基準)が好ましい。この添加量は、10〜20vol%(更には10〜16vol%)であることが更に好ましい。無機体質顔料の添加量が、10vol%より少ないと成膜性が向上し難い傾向がある。他方、該添加量が50vol%より大きいと、耐こすれ破壊性が悪くなり易い傾向がある。
(有機樹脂層)
上記のりん酸アルミ系化成処理層の上に配置されるべき有機樹脂層は、鋼材から水・酸素・電解質等の腐食因子を遮断し、鋼材の防食性を著しく向上させる機能を有する。有機樹脂層の厚さは、コストと耐久性の兼ね合いの点から、全体で1〜5mmが好ましい。この厚さは、更には1〜3mm(特に2〜3mm)が好ましい。
(海洋構造物用の有機樹脂層)
とりわけ、海洋構造物に用いる有機樹脂層は、密着性、耐食性、耐久性ともに非常に優れている必要がある。このため、通常は 有機樹脂層を2〜3層構造とし、化成処理層側に樹脂プライマー層として1〜2層、大気側には膜厚を厚くした保護層を設けることが一般的である。
また、鋼管矢板のように、突起や曲率の大きい鋼面が存在する場合、有機樹脂被覆は塗装法が適しているので、塗装法で製造できる望ましい樹脂構成を請求項2の態様(すなわち、有機樹脂層が、化成処理層の直上に形成されるエポキシ樹脂から成るプライマー層と、ウレタンエラストマー樹脂から成るトップ層より構成され、該プライマー層の厚みが100〜500μmであって、該トップ層の厚みが2〜4mmである態様)である。
(プライマー層)
プライマー層は、金属と樹脂層との密着性・接着面の耐水性を向上させるのが主な目的で、必要に応じて(本発明においては、金属とりん酸鉄化成処理層との間に)設けることができる。海洋構造物用の塗装樹脂であれば、エポキシ樹脂等が適している。この場合、エポキシ樹脂の膜厚は、100〜500μmが優れ、鋼材とトップ層を強固に接着させることができる。エポキシ樹脂の膜厚は、更には200〜500μm(特に300〜500μm)であることが好ましい。該膜厚が100μmより薄いと、腐食の起点となる塗装欠陥が多くなり、耐食性が劣化する傾向がある。他方、該膜厚が500μmより厚くても、プライマー層の接着効果が飽和する傾向がある。
(保護層)
保護層は、主に防食を担い、耐久性に優れ、電解質・水・酸素を遮断する樹脂層であり、必要に応じて、(最外層として)設けるのが好ましい。高耐久性、形成性、経済性の点からは、保護層は、ウレタン樹脂系、ポリオレフィン樹脂系、エポキシ樹脂系のものが好ましい。これらの変性物や、さらに硬化剤、無機顔料を好適に添加したものを、必要に応じて用いてもよい。
海洋構造物用の塗装樹脂(保護層用)であれば、ウレタンエラストマーが好適に使用可能である。該ウレタンエラストマー層は、膜厚2〜4mmが、耐こすれ破壊性、耐久性ともに両立させることが容易な膜厚範囲である。該膜厚が2mmより薄いと耐水性が劣る傾向がある。他方、膜厚が4mmより厚いと、耐こすれ破壊性が劣る傾向がある。
鋼材には、75×150×4mmの普通鋼を用い、表面をグリッドブラストで3aブラスト処理した。
(りん酸鉄処理)
この鋼材表面に、市販のりん酸鉄処理液(日本パーカーライジング社製、パルホス3454)をスプレー塗布・乾燥した。尚、噴霧量・処理時間によって皮膜厚さを変化させたが、1μm以上の皮膜を得ることはできなかったため、これを上限値とした。比較として、りん酸鉄処理を行わないサンプル(皮膜厚さ0μm)も用意した。また、リン酸鉄処理と異なるりん酸塩処理サンプル(比較用)として、りん酸亜鉛処理と同様に、日本パーカー製のエナレス20を推奨条件下でスプレー塗布し、作製した。
(りん酸アルミ系化成処理)
りん酸アルミ系化成処理には、酸化ホウ素1.5wt%含有の50mass%第一リン酸アルミニウム水溶液に対して、100wt%の水、1.8wt%の酸化マグネシウム、分散性を改善するために表面処理されたアルミナ顔料あるいはチタニア顔料を15wt%をそれぞれ添加・混合した溶液を用いた。この無機組成モル比率は、Al/P=0.4、B/P=0.05、MgO/P=0.2であり、無機体質顔料は乾燥皮膜中で16vol%を占めている。
比較用(組成)のサンプルは、各物質の混合wt%を調整して製造した。
化成処理構成の比較用には、りん酸鉄処理の代わりにりん酸亜鉛処理と施したサンプル、あるいは、発明品からりん酸鉄処理を除いたサンプル、りん酸アルミ化成処理を除いたサンプルをそれぞれ作製した。比較用(膜厚)のサンプルも同様に作製した。
調整したリン酸アルミ系化成処理液を刷毛でぬった。処理液を付着させる量を変化させて、りん酸アルミ化成処理皮膜の膜厚を変化させた(処理しないものは0μm)。塗布後、約80℃の温風で、 2分程度乾燥した。
皮膜厚さは、塗装断面のSEM及びEPMA観察によって求めた。まず、リン酸鉄処理を施した鋼材断面をSEM観察あるいは、EPMAのリン分布の観察から、化成処理皮膜の厚さを測定する。厚さはばらつくので、ランダムに選んだ10点を平均した。これらのりん酸鉄処理鋼材にりん酸アルミ化成処理を施した断面を、EPMAでアルミ分布を観察し、りん酸アルミ化成処理層の厚さを求めた。厚さにはバラつきがあるので、ランダムに選んだ10点を平均した。
(有機樹脂被覆)
有機樹脂被覆は、プライマーとして、エポキシ樹脂塗料を所定の膜厚になるように、スプレー塗布・硬化させ、その上にカオリンクレー微粉末含有2液硬化ウレタンエラストマーをスプレー塗装で、所定の厚さになるようにポリウレタン樹脂層を形成した。
プライマー塗装過程を省略してポリウレタンエラストマー3mmを被覆したサンプルも、比較用として作製した。
(評価方法)
評価方法(こすれ破壊試験)を以下に述べる。10kgの鉄球の下に、鉛直方向に対して30度の角度を持ってサンプルを置いて固定し、サンプル中央に鉄球を自由落下・衝突させる。落下高さを、最低20cmから、10cmづつ段階的に高くして自由落下させ、樹脂被覆が鉄球のこすれによって剥離する最小高さを記録した。ここでは、樹脂被覆の一部がサンプルから脱離したものがあれば剥離と判断した。
また、一般性能も併せて評価した。樹脂被覆の密着性は、JIS−K5600−5−7プルオフ法で評価し、30kg/cm2以上を合格(○)とした。耐水性は、75×150mmの75mm側のサンプルの一辺から1cm幅の樹脂をはぎ取って、ベルトサンダー等で研磨して鋼面を露出させ、それを50℃の3%塩化ナトリウム水溶液に浸漬し、半年後、取出した。剥離は樹脂被覆端部から奥へ進展するので、樹脂被覆端部の隙間にたがね刃をつっこみ、金槌で、はつりながら、樹脂被覆をはぎとった。金属面が露出した領域を剥離領域とし、端部からの距離をノギスで4点測定し、平均した。剥離10mm未満を○、10mm以上15mm未満を△とした。
上記により得られた結果を、下記の表1に示す。
Figure 0005594044
本発明の有機樹脂被覆鋼材は、海上の漂流物・船舶の衝突による樹脂被覆の脱離が低減し、鋼材はよく防食される。したがって、本発明の有機樹脂被覆鋼材は、海洋中に打設される鋼構造物基礎等に、特に好適に使用可能である。

Claims (9)

  1. 鋼材表面に、鋼材側から順に、りん酸鉄化成処理層、りん酸アルミ系化成処理層、有機樹脂層が積層された有機樹脂被覆鋼材であって;
    前記りん酸アルミ系化成処理層がP、Al、B、及び、MgあるいはCaから選らばれる金属Mを含み、
    該りん酸アルミ系化成処理層の組成が、無水酸化物換算のモル比で、Al/P=0.2〜0.6、B/P=0.01〜0.1、MO/P=0.01〜0.2を与えるバインダーと、無機体質顔料とを含み、
    前記無機質顔料が、前記りん酸アルミ系化成処理層の乾燥皮膜に対して10〜50vol%添加されたものであることを特徴とする有機樹脂被覆鋼材。
  2. 前記りん酸鉄化成処理層の平均膜厚が0.1〜1μmである請求項1に記載の有機樹脂被覆鋼材。
  3. 前記有機樹脂層が、化成処理層の直上に形成されるプライマー層と、ウレタンエラストマー樹脂から成るトップ層から構成されることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の有機樹脂被覆鋼材。
  4. 前記プライマー層が、エポキシ樹脂から成る請求項に記載の有機樹脂被覆鋼材。
  5. 前記プライマー層の厚みが100〜500μmである請求項3または4のいずれか1項に記載の有機樹脂被覆鋼材。
  6. 前記トップ層の厚みが2〜4mmである請求項3〜5のいずれか1項に記載の有機樹脂被覆鋼材。
  7. 前記りん酸アルミ化成処理層の厚さが5〜40μmであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の有機樹脂被覆鋼材。
  8. 前記金属MがMgであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の有機樹脂被覆鋼材。
  9. 前記りん酸アルミ系化成処理層中の無機体質顔料がアルミナであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の有機樹脂被覆鋼材。
JP2010230532A 2010-10-13 2010-10-13 有機樹脂被覆鋼材 Expired - Fee Related JP5594044B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010230532A JP5594044B2 (ja) 2010-10-13 2010-10-13 有機樹脂被覆鋼材

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010230532A JP5594044B2 (ja) 2010-10-13 2010-10-13 有機樹脂被覆鋼材

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2012081670A JP2012081670A (ja) 2012-04-26
JP5594044B2 true JP5594044B2 (ja) 2014-09-24

Family

ID=46241061

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010230532A Expired - Fee Related JP5594044B2 (ja) 2010-10-13 2010-10-13 有機樹脂被覆鋼材

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5594044B2 (ja)

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3324633B2 (ja) * 1996-04-09 2002-09-17 新日本製鐵株式会社 低鉄損一方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP4772735B2 (ja) * 2006-04-24 2011-09-14 新日本製鐵株式会社 有機樹脂被覆鋼材
JP4964699B2 (ja) * 2007-07-18 2012-07-04 新日本製鐵株式会社 有機樹脂被覆鋼材及びこれを用いた建造物

Also Published As

Publication number Publication date
JP2012081670A (ja) 2012-04-26

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5669859B2 (ja) 無機リン酸塩耐食コーティング
CN112236485A (zh) 包含一种或多种2d材料片的金属基材的腐蚀防护
TW201742895A (zh) 抗腐蝕複合層
CN113748170A (zh) 金属基底的腐蚀防护
WO2014020665A1 (ja) 塗料及び被覆鋼材
KR20140060237A (ko) 크롬-무함유 실리케이트-기재 세라믹 조성물
Bahremand et al. Epoxy coating anti-corrosion properties enhancement via the steel surface treatment by nanostructured samarium oxide-poly-dopamine film
JP5929867B2 (ja) ポリエチレン被覆鋼管
JP2007313885A (ja) 有機樹脂被覆鋼材
Ge et al. Anticorrosion performance of an eco-friendly coating system including an epoxy tie primer with aluminum tripolyphosphates and a polyurethane topcoat for marine aluminum alloy
EP1479736A1 (en) Corrosion inhibitive coatings
JP6745279B2 (ja) ポリリン酸アルミニウムおよび希土類でできた防食顔料
JP5594044B2 (ja) 有機樹脂被覆鋼材
JP4455712B2 (ja) 耐大気腐食性を有する被覆鋼
CN105038580A (zh) 一种自固化化学键合磷酸盐富锌涂料
WO2019069722A1 (ja) 塗料及び被覆鋼材
JP4964699B2 (ja) 有機樹脂被覆鋼材及びこれを用いた建造物
JP2013103196A (ja) 重防食被覆鋼材の製造方法
JPH0575026B2 (ja)
KR101695865B1 (ko) 수용성 녹 비활성화제 조성물 및 이를 포함하는 수용성 녹 비활성화제
JP5668584B2 (ja) 有機被覆鋼材
CN105017926A (zh) 一种用于钢结构的带锈涂装纳米复合含锌防腐涂料
JP6623543B2 (ja) 有機樹脂被覆鋼材
JP2005324543A (ja) 表面処理鋼材
CN214218616U (zh) 低渗透强附着氯化橡胶船用防锈漆漆层结构

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20130212

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20131010

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20131022

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20131218

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20140708

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20140721

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 5594044

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees