JPH0624611Y2 - 幅広シール部付金属ガスケット - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、金属ガスケットに関し、更に詳細には幅広の
シール部を設けた金属ガスケットに関するものである。

〔従来の技術〕

例えば内燃機関のシリンダブロックとシリンダヘッドと
の間に介装するシリンダヘッドガスケットや、吸・排気
ポートと吸・排気マニホールドとの間に取付けるガスケ
ットは、金属薄板を積層したものから成る金属積層ガス
ケットが使用されていることは周知である。

従来の金属積層ガスケットを、第10図〜第11図に示すシ
リンダヘッドガスケット１によって説明する。図におい
てシリンダヘッドガスケット１は、表面にシールする
穴、即ちシリンダ穴Hc、水穴Hw、オイル穴Ho、ボルト穴
Hbなどが開口しており、前記の穴のうち、最も大きい穴
であるシリンダ穴Hcのシールが最も重要である。そし
て、シリンダヘッドガスケット１の構造は、第11図に示
すとおり、例えば２枚の表面板２，４の間にビード６を
設けたビード板８を介装した構造をしている。

ビード６は、シールする穴、例えばシリンダ穴Hcの周囲
を囲んでビード板８の一部を一方にリング状に膨出させ
たものである。そして、前記ボルト穴Hbに挿通した図示
しないボルトによって、金属積層ガスケット１を両側か
ら図示しないシリンダヘッドとシリンダブロックとを締
め付けると、ビード６が圧縮される。その際のビード６
の弾性力による反力が、表面板２，４を介して前記シリ
ンダヘッド及びシリンダブロックに与える圧力でシリン
ダ穴Hcの周囲をシールするものである。

〔考案が解決しようとする課題〕

ところで、シリンダ穴Hcをシールする前記ビード６は、
表面板２，４及びビード板８の間に燃焼ガスが侵入し、
この部分から漏洩するという問題がある。

そこで、従来から一方の表面板をシール穴の周囲でもう
一方の表面板の上に折り返すことにより積層板の間にシ
ールする流体が侵入しないようにすることが行われてい
る。

また、積層板間にシールする流体を侵入させない新しい
手段として、本考案者は、第12図に示すガスケットを発
明し米国特許願第193,215号として特許出願している。
即ち第12図に示すガスケットは、シリンダ穴Hcの周囲で
金属板から成るシール板10を折り返し、折返し部14に膨
らみを持たせてフランジ部12を形成してシール部16と
し、該シール部16の圧縮高さを調節するために面圧調整
板18を積層したものである。第12図に示すガスケット１
は、シリンダ穴Hc側に積層面が露出しないので、前記燃
焼ガスがシール板10と面圧調整板18との間に燃焼ガスが
侵入することを防止することができる。

しかしながら、第12図の先行技術は、面圧を生じる折返
し部の幅が狭いので、アルミニウム合金製シリンダヘッ
ドなどに使用する場合には、前記折返し部が当たる部分
が変形し、シリンダヘッドに圧痕を生じるという問題が
あり、更に改善する必要が認められる。

ところで、実開昭59-47343号公報には、第12図に示した
シール部の外に、折返し部14の断面形状を円形状とした
り、更に、フランジ部12を設けた部位に別にビードを設
けたりした金属ガスケットが開示されている。しかしな
がら、これらの先行技術は、いずれも、折返し部及びビ
ードに生じる面圧発生幅が狭く、シール部全体の幅を広
げても、前記圧痕が生じるという欠点を克服することが
できない。したがって、圧痕が生じないように圧縮する
と、従来の金属ガスケットは、十分なシール性能を得る
ことができないという問題がある。

本考案は、以上の問題に着目して成されたものであり、
積層形ガスケットとしても板の間にシールする流体が侵
入することを防止でき、シール幅を広くしてシール圧に
よりシリンダヘッドなどのシール対象部材に変形を起す
ことなく高いシール性能を発揮できる金属ガスケットを
提供することを目的としている。

〔課題を解決するための手段〕

以上の目的を達成するための本考案の幅広シール部付金
属ガスケットの構成は、シール部を形成する金属板を、
シールする穴の周囲で内側に空間を空けて湾曲状に折り
返してフランジ部を形成し、該フランジ部と穴の周囲の
金属板とを重ね合わせ、該重ね合わせ部分の外周部付近
の金属板のいずれかを立ち上げてエンボス部を形成し、
該エンボス部の金属板と前記フランジ部の金属板とをほ
ぼ平行に配置したリング状のシール部を形成したもので
ある。

更に、前記エンボス部の中に、シールする穴の周囲を囲
むビードを設けた金属板を積層して本考案を実施するこ
とができる。

〔作用〕

前記シール部が圧縮されて変形すると、前記立上り部が
強くフランジ部を圧迫して相互の位置が固定されるの
で、前記立上り部と折り返し部の間の膨出した側、即ち
エンボス部の板が皺状に変形して２次的にビードを形成
する。この２次的ビードは、人為的に形成したビードと
異なり、シール部の幅より長いエンボス部が圧縮されて
生じるものであり、シール幅全体に面圧を生じるように
作用する。

したがって、立上り部及び折返し部に生じる反力と前記
２次ビードによる反力によって従来のビードより幅広、
例えば１〜５mmの幅にわたりより均一で高い面圧を発生
させることができる。

前記皺状の曲面を効果的に形成させるために予め曲がり
癖を設けておくことができる。

またシールする穴の周囲を囲むビードを設けたビード板
と前記シール板とを積層し、前記ビードを包むように、
前記シール板を折り返してリング状の袋部を設けること
により、前記ビードが発生する反力は適宜調整可能であ
るので、より安定な面圧を形成させることができる。

本考案の幅広シール部付金属ガスケットは、前記のシー
ル板、ビード板の外に、表面板、面圧調整板、その他の
中間板などを適宜積層することができる。また本考案の
金属ガスケットは、シリンダヘッドガスケットに有利に
適用できるが、その他のガスケットとしても当然使用す
ることができる。

〔実施例〕

以下添付の図面を対照して一実施例により本考案を具体
的に説明する。

第１図は、第１実施例の幅広シール部付金属ガスケット
（以下単にガスケットという）９を一部破断した部分斜
視図である。図において、シール板20をシリンダ穴Hcの
周囲で折り返してシール部16を形成している。このシー
ル部16は、フランジ部12の周縁21よりシリンダ穴Hc側
で、シール板20を折り返し方向と反対側に膨出させた立
上り部22を設けて、この立上り部22と折返し部14との間
にエンボス部24を形成している。なお本実施例の立上り
部22は、折返し部14側に傾斜した形状をしている。以上
によって、シリンダ穴Hcの周囲にフランジ部12とエンボ
ス部24とで偏平なリング状に形成したものであり、フラ
ンジ部12の周縁21はシール板20に重ね合わせてリング状
の袋部（中空部）26を形成している。面圧調整板18には
フランジ部12の外径より大きな径を有する開口部28を設
けてシール板20に積層し、フランジ部12が面圧調整板18
と重ならないようにしている。

シール板20にシール部16を形成する方法は、プレス手段
などの板金加工手段により、先ず立上り部22とそれに続
くエンボス部24とを形成し、次いでシリンダ穴Hcの周囲
を折り曲げて折返し部14を形成する。次いで前記折り曲
げた部分でフランジ部12を形成して周縁21をシール板20
に重ね合わせて袋部26を設けたシール部16を得ることが
できる。前記シール部16の形成手段は以上に限定されな
い。

次に第２図によって第１図に示すガスケット９のシール
動作を説明する。

第１図に示すガスケット９を、シリンダヘッド30及びシ
リンダブロック32との間に介装し、図示しないヘッドボ
ルトで締め付けると、折返し部14と立上り部22は圧縮さ
れ、立上り部22がフランジ部12を強く圧迫する。これに
よって、シリンダ穴Hcの周囲にリング状に皺がよるよう
に変形してビード同様に作用する皺状凹凸34が形成され
る。前記エンボス部24の圧縮によって、折返し部14、立
上り部22及び前記２次的に形成された皺状凹凸34によっ
てシリンダ穴Hcの周囲に幅が広く且つ高い面圧のシール
面を形成することができる。

以上の説明から理解されるように、エンボス部24には、
予め前記皺状凹凸34を形成し易くするためのビード誘発
用凹凸をリング状に設けることもできる。

第３図に示す第１実施例の変形例は、面圧調整板18をシ
ール板20より薄くした外は、第１実施例と同様に構成し
たものである。前記第１図の場合には、面圧調整板18が
シール板20と同様の厚さにしたので、シール部16が圧縮
された状態では、シール部16以外の板部分にも締め付け
力が作用するようになり締め付け力が分散する。これに
対して、第３図に示す変形例では、シール部16が圧縮さ
れた場合でも圧縮力をシール部16により集中させること
ができ、実施例１の場合より高い面圧を発生させること
ができる。

第４図は、第１実施例のガスケット９の変形例を示す断
面図である。本変形例は、前記第１図に示した立上り部
22の傾斜より緩くし、しかも両側に表面板２，４を取付
けたものである。立上り部22の傾斜を緩くしたことによ
り、圧縮される際に立上り部22に応力が集中することを
抑制して耐久性を向上させることができる。

また前記表面板２，４は、ガスケットの厚みを調整し、
シール部16が圧縮・変形する際の滑り性を改善し、耐久
性を向上させることができる。その場合に、第11図で説
明した従来のビードによるシールと異なり、第１図で説
明したように幅が広く、且つ高い面圧を得ることができ
るので、表面板２，４とシール板20との間に燃焼ガスが
侵入することを防止できる。

第５図は、第２実施例を示す断面図であり、フランジ部
12をエンボス部24と同じ側に形成したものである。第２
実施例に示すガスケット９も、第１実施例と同様に優れ
た性能を発揮する。

第６図に示す第３実施例のガスケット９は、表面板２を
シリンダ穴Hcの周囲で折り返して新たな折返し部14′を
作り、表面板４に重ね合わせてフランジ部12′を形成し
たものである。中間板28は、新たなフランジ部12′を形
成したことによる面圧の変化を防止する。第３実施例の
ガスケット９は、表面板２，４によって厚さを増すこと
ができ、しかも前記折返し部14′を設けることによりシ
ールする流体からシール部16を隔離することができる。
したがって、シール板20の材質の選定をより容易にす
る。

第７図に示す第４実施例のガスケット９は、中空部26内
にビード６を設けたビード板８を配置したものである。
この第４実施例のガスケット９は、エンボス部24を裏側
から補強してより安定で、しかも高い面圧を得ることが
できる。

第８図に示すガスケット９は、第７図に示したガスケッ
ト９を表面板２，４で覆ったものである。面圧調整板40
は、シール部16の圧縮高さを調節してシール部16の面圧
を調整するものである。

第９図に示す第５実施例のガスケット９は、立上り部22
をシール板20に対してほぼ直角に立ち上げるように設け
たものである。第５実施例の立上り部22を圧縮すると強
い反力が生じると共に、立上り部22がフランジ部12を圧
迫して接触位置を固定する力が増加する。以上のように
立上り部22の傾斜角を適宜に選定することにより、面
圧、耐久性などを幅広く調節することができる。

〔考案の効果〕

以上説明したように本考案の幅広シール部付金属ガスケ
ットは、シールする穴の周囲に形成したシール部は、エ
ンボス部がシール部の幅よりも長い弧状を成すので、圧
縮されると皺状に変形して２次的にビード状部が形成さ
れ、シール幅全体に面圧を生じる。したがって、部分的
に高い面圧発生のおそれが無くなり、アルミニウム合金
のように比較的柔らかい金属製の接合面に使用しても、
圧痕を生じることなく高いシール面圧を発生させること
ができる。

しかも、本考案のシール部は、金属板をプレス手段など
従来から使用される板金加工手段を利用して製造するこ
とができるので、コスト的に有利に供給することができ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の幅広シール部付金属ガスケットの第１
実施例を一部破断して示した部分斜視図、第２図は第１
図の幅広シール部付金属ガスケットの作用を説明する要
部断面図、第３図〜第４図は前記第１実施例の変形例、
第５図は第２実施例の要部断面図、第６図は前記第３実
施例の要部断面図、第７図は第４実施例の要部断面図、
第８図は第４実施例の変形例を示す要部断面図、第９図
は第５実施例の要部断面図、第10図は従来のシリンダヘ
ッドガスケットの部分平面図。第11図は第10図のXI-XI
線断面図、第12図は先行技術による金属ガスケットの要
部断面図である。 １…シリンダヘッドガスケット、６，34…ビード、８…
ビード板、９…ガスケット（幅広シール部付金属ガスケ
ット）、10,20…シール板、12,12′…フランジ部、14,1
4′…折返し部、16…シール部、21…周縁、22…立上り
部、24…エンボス部、26…中空部。

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】シール部を形成する金属板を、シールする
   穴の周囲で内側に空間を空けて湾曲状に折り返してフラ
   ンジ部を形成し、該フランジ部と穴の周囲の金属板とを
   重ね合わせ、該重ね合わせ部分の外周部付近の金属板の
   いずれかを立ち上げてエンボス部を形成し、該エンボス
   部の金属板と前記フランジ部の金属板とをほぼ平行に配
   置したリング状のシール部を形成した幅広シール部付金
   属ガスケット。
2. 【請求項２】シールする穴の周囲を囲むビードを設けた
   金属板から成るビード板と、前記エンボス部を形成する
   金属板を積層し、前記エンボス部の中にビードを形成
   し、該ビードで、前記エンボス部金属板の中間を支える
   ようにした第１項記載の幅広シール部付金属ガスケッ
   ト。