JPH0536133Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、複数ビード型金属積層ガスケツトに
関し、更に詳細には薄型としても高い密封性を得
ることのできる金属積層ガスケツトに関するもの
である。

〔従来の技術〕

例えばエンジンのシリンダヘツドガスケツト、
マニホールドガスケツト用に金属薄板を積層した
金属積層ガスケツトが使用されていることはよく
知られている。この金属積層ガスケツトの通常の
構成について、エンジンのシリンダヘツドガスケ
ツトによつて以下に説明する。

第６図の平面図に示すとおり、シリンダヘツド
用金属積層ガスケツト（以下単にガスケツトとい
う）１は、シリンダ穴Hcの周囲に配置した各種
の穴、即ち、締め付けボルト用ボルト穴Hb、冷
却水用穴Hw、潤滑油用穴Ho、プツシユロツド
用穴Hpなどが開けられており、第７図〜第９図
の断面図に示すようにそれぞれの機能を持つた複
数の金属板を積層することによつて構成されてい
る。

まず第７図について説明すると、図のガスケツ
ト１は、ビード板２、表面板４，６及び中板８で
構成されており、ビード板２に設けたビード１０
は、シリンダ穴Hcの周囲を囲むループ状に設け、
表面板４，６に接して配置されている。そしてそ
のシリンダ穴Hc側は、ビード１０に重ね合さる
まで一方の表面板６をもう一方の表面板４の上に
折り返している。以下該重ね合せ部分をフランジ
部１２という。

前記の折り返しによる湾曲部分（以下湾曲部と
いう）１４は、金属板２，４，８のシリンダ穴
Hc側積層端部を覆うことにより該部分から流体
（この場合は燃焼ガス）が漏洩することを防止す
る機能を持つ。なお図の中板８はガスケツト１を
締め付けた際のビード１０の面圧（圧縮高さ）調
整用の板である。

第８図は、前記湾曲部１４を設けない場合を示
したものである。このようにフランジ部１２を省
略することによりガスケツト１の厚さをより薄く
することができる。しかしながら、この場合に
は、金属板２，４，６の間からシールする流体
（この場合は燃焼ガス）が漏洩する危険がありこ
の部分にも高分子材料をコーテイングするなどの
対策が必要になる。

前記第７図に示すビード１０は、第８図に示す
ビード１０より大きく形成している。このように
ビード１０の大きさ及びビード板２の厚さを調整
することにより、更に面圧調整用の中板８を設け
るなどしてガスケツト１を締め付ける際のシール
力を調整することができる。しかしながら、これ
らの手段によりシール力を増加させることには限
度があるので、例えば第９図のように複数のビー
ドを設けてシール力を増加させることが行われて
いる。

第９図のガスケツト１は、実開昭61−105842号
として実用登録出願されたものであり、シリンダ
穴Hcの周囲に設けた前記フランジ部１２及び湾
曲部１４より離して配置した主ビード１０は、中
板８′を挟んで、それぞれ向きを反対にして配置
したものである。なお、表面板４にもビード１
０′を設け、フランジ部１２の部分でもシール性
能を発揮させるようにしている。

〔考案が解決しようとする課題〕

前記説明からも理解できるように、従来の金属
積層ガスケツトは、所期のシール性能を発揮させ
るために何層にも積層したガスケツトを使用する
傾向にある。

ところで、例えばシリンダヘツドガスケツトに
おいては、ガスケツトの厚さが増加するとエンジ
ンの燃焼室のデツドスペースが増加し圧縮率が低
下するという問題がある。したがつて高いシール
性能を有し、しかもガスケツトの厚さを薄いくす
ることができればエンジンを改良することなくエ
ンジンの性能を高めることができる。

本考案は、以上の問題に着目して成されたもの
であり、シールする穴の大きさ、形状の複雑さに
関係なく、より薄くしても高いシール性能を発揮
することのできるビード構造による複数ビード型
金属積層ガスケツトを提供することを目的として
いる。

〔課題を解決するための手段〕

以上の目的を達成するための本考案の複数ビー
ド型金属積層ガスケツトの構成は、第１ビード板
にシール用の穴を囲む内側ビードを設け、第２ビ
ード板に、内側ビードが嵌入する開口を設け、該
開口の周縁に近づけて、内側ビードと突出方向を
逆にした外側ビードを設け、前記開口の周縁を、
内側ビードの頂部付近に近接して配置するように
形成したものである。

前記内側ビードと開口とは、少なくとも前記内
側・外側ビードを圧縮する際に、互いに干渉する
ように、内側ビードと開口とを配置することがで
きる。

前記シール用の穴の形状は、円形以外の形状の
穴でもよい。

前記複数ビード構造は、通常は２個のビードで
構成するが、３個以上としてもよい。但し数が増
加するほど、同じビード高さに対しガスケツトを
締め付ける際の圧縮高さが減少する。

第１・第２ビード板の２枚の金属薄板でガスケ
ツトを構成することができ、しかも、各ビード板
は、前記したように前記各ビードの方向（頂部が
向く方向）が互い違いとなるように配置する。ま
た、所望により面圧調整用、即ち圧縮高さ調整用
の中板を配置することができる。

前記隣合う複数のビードは、締め付けない状態
で、少なくとも互いに近接するように配置する。
その間隔は、例えば通常の自動車用エンジンのシ
リンダヘツドガスケツトの場合、通常は内側のビ
ードに外側のビード端部が接する状態からほぼ５
mm程度の範囲の間隔を開けた状態とすることが好
ましい。また通常は、シールする穴に最も近い内
側のビードの高さに対し、その外側に配置するビ
ードの高さが、前記内側ビードの高さから該外側
ビードの板厚を差し引いた高さとほぼ等しくする
ことにより、ガスケツトの形状を整えることがで
きる。但し、ビードの高さはこれに限定されな
い。

〔作用〕

前記構成の複数のビードの構成は、面圧発生幅
を広くする。そして外側に配するビード板はシー
ルする流体に接しないから、使用材質に対する条
件、例えば耐蝕性、耐熱性などの条件を緩和する
ことができ、また異なる特性の条件に対しそれぞ
れに適合した材料を使い分けることができる。

また前記ガスケツトを締め付ける際に、前記外
側に配置するビードの開口縁部を内側のビードに
接触するように配置して互いに干渉させ、見掛け
弾性力を増大させて単に並列的にビードを配した
場合より高い面圧を発生させることができる。し
たがつてガスケツトの厚みに対してシール性能を
高くすることも可能である。

本考案の金属積層ガスケツトは、前記のとおり
薄型とするために表面板を設けない態様を含むも
のであるが、必要に応じ従来と同様にガスケツト
を覆う表面板を設けたり、シールする穴側のビー
ド板を覆うように表面板を折り返しフランジ部を
設けたり、別板で形成したグロメツトを設けたり
することができる。

〔実施例〕

以下添付の図面を対照してシリンダヘツドに適
用した一実施例により本考案を具体的に説明す
る。

第１図に示す第１実施例の金属積層ガスケツト
（以下ガスケツトと略称する）１は、例えばシリ
ンダ穴Hcと同様の穴からなる開口１６の周囲を
囲むビード１０₁を設けたビード板２₁と、前記ビ
ード１０₁の外側、且つ頂部１８₁側に接する位置
に端部を有する開口２０を有し、前記頂部１８₁
と反対側に頂部１８₂を配したビード１０₂を設け
たビード板２₂から成るものである。即ち、本考
案の第１ビード板を前記ビード板２₁で、第２ビ
ード板を前記前記ビード板２₂で、また、内側ビ
ードを前記ビード１０₁で、外側ビードを前記ビ
ード１０₂でそれぞれ構成した。

そしてガスケツト１は、ビード１０₂の高さｈ
とビード板２₂との和が、ビード１０₁の高さＨと
同様の高さとなるようにした。したがつてビード
板２₂はビード１０₁の面圧調整板として作用して
いる。

しかも第１実施例のガスケツト１は２枚の金属
板だけで構成しているので極めて薄く、しかもシ
ール幅を広くしてシール力を高めたガスケツトと
することができる。しかもビード板２₂は、ビー
ド１０₁の外側、即ちシリンダ穴Hcの半径方向に
配置されるので高温の燃焼ガスに接触しないの
で、ビード板２₂の熱によるへたりが防止される。
しかがつてより耐熱性の低い材料を使用すること
が可能となるので、材料の選択、価格の低減がよ
り容易になる。

更に第１図において、ガスケツト１を締め付け
る際にビード１０₁，１０₂が圧縮されて互いに接
近ないし接触させて、ビード１０₁の頂部１８₁付
近とビード板２₂の開口２０部分とを互いに干渉
させて圧縮・変形しにくくすることができる。こ
のようにすると、それぞれビード１０₁，１０₂を
単独で圧縮する場合より締め付けに対する反力を
大きくして、図示しないシリンダヘツド及びシリ
ンダブロツクに対する面圧を高めることができ
る。したがつて幅広でしかも面圧の高い高密封性
のシール性能を得ることができる。

第２図に示すガスケツト１は、第１図に示すガ
スケツト１に面圧をより低い値に調整する中板８
を用いた変形例である。

第３図に示すガスケツト１は、第２図に示すガ
スケツト１にフランジ部１２及び湾曲部１４を設
けた表面板６を用いた変形例である。本変形例の
フランジ部１２は、ビード１０₁及び１０₂の両方
を圧縮できるように配置し、またビード板２₁の
開口１６の端部（この場合はビード１０₁の端部
と一致している）が湾曲部１４に内接する構成を
している。なお本実施例ではビード板２₂を薄く
して面圧を低くするようにした。

かくしてガスケツト１を圧縮した際には、該湾
曲部１４とビード１０₁とが互いに干渉して、面
圧をより高めるように作用させ、またフランジ部
１２は、面圧を増加させる作用を有し、面圧調整
用中板８とは互いに協同して所定の面圧を得るこ
とができる。

第４図は、第３図に示した湾曲部１４に代えて
グロメツト２２を用い、同時に該グロメツト２２
によりフランジ部１２を形成した場合について示
す第２実施例の金属ガスケツト１である。即ち、
第３図の湾曲部１４は、シールする穴が小さく表
面板６を加工する際に材料板に亀裂を生じる危険
があるが、グロメツト２２は、別体により湾曲部
１４を形成するので材料の選定が容易になり、よ
り小さい穴にも適用することができる。なお、第
４図の表面板４とビード板２₁及び表面板６とビ
ード板２₂それぞれの間に配した中板２４は、中
板８による面圧調整を補う面圧調整板である。

第５図によつて、本考案の特徴的利用の一つを
示す第３実施例の金属積層ガスケツトを説明す
る。即ち高温高圧が作用するシリンダ穴Hcと低
温低圧が作用する冷却水用穴Hwとにまたがる部
分の構成を示したものである。なお、各実施例は
いずれもシリンダヘツド用金属積層ガスケツトで
あり、当然いずれの実施例も第５図に示した各穴
を有している。

図に示すように第３実施例の２枚のビード板２
_１，２₂は、それぞれ図示しないシリンダ穴Hc側
のビード１０c₁，１０c₂及び冷却水用穴Hw側の
ビード１０w₁，１０w₂を設けている。そして、
それぞれシリンダ穴Hc側はビード１０c₁を燃焼
ガスに接する位置に配置し、冷却水用穴Hw側は
ビード１０w₂を直接冷却水に接するように配置
している。

即ち、本考案の内側ビードを前記ビード１０
c₁、ビード１０w₂で、また、外側ビードを前記
ビード１０c₂、ビード１０w₁でそれぞれ構成し
た。

そして、ビード板２₁は高温に耐えるステンレ
ス鋼を使用した板であり、低温側のビード板２₂
は通常の鋼に、例えばNBR、ブタジエンゴムな
どの高分子材料をコーテイング２６を設けてい
る。そして高圧の燃焼ガスの主シール機能を担当
するビード板２₁の板厚より、低圧側をシールす
るビード板２₂は薄い板を使用し、該薄い板でよ
り高い面圧を得るようにビード１０w₂はより高
いビード高さとした。

以上第３実施例が示すように、本考案のガスケ
ツト１は、２枚の異なる材料特性を有するビード
板でそれぞれ適性の側の流体に接してシールする
ように構成することにより、材料選定幅をより広
くし、且つコスト低減をより容易にすることがで
きる。

〔考案の効果〕

以上説明したように本考案の複数ビード型金属
積層ガスケツトは、第１ビード板にシール用の穴
を囲む内側ビードを設け、第２ビード板に、内側
ビードが嵌入する開口と外側ビードとを設け、該
外側ビードは、前記開口の周縁に近づけて、内側
ビードと突出方向を逆にして形成し、前記開口の
周縁を、内側ビードの頂部付近に近接して配置す
るように構成したので次の効果を奏することがで
きる。

即ち、複数のビードを前記構成の配置とするこ
とにより、薄型のガスケツトでシール幅の広いガ
スケツトを提供することが可能である。

またシールする穴に対し外側に配置するビード
板はシールする流体に接しないから、使用材質に
対する条件、例えば耐蝕性、耐熱性などの条件に
より容易に適合し、且つコスト的に有利な材料選
定が可能であり、また同じガスケツトに異なる特
性の流体をシールする場合にそれぞれに適合した
材料の使い分けを可能にすることができる。

しかも複数のビードを互いに干渉させることに
よつて、幅広で、より均一、しかも高い面圧のシ
ール性能を得ることができるので、使用する２枚
の金属板から成る薄いガスケツトとしても高いシ
ール性能を発揮させることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は第１実施例による本考案の金属積層ガ
スケツトを一部破断して示した要部斜視図、第２
図、第３図はその変形例を示す要部断面図、第４
図は第２実施例による金属積層ガスケツトの要部
断面図、第５図は第３実施例による金属積層ガス
ケツトの要部断面図、第６図は従来のシリンダヘ
ツドガスケツト用金属積層ガスケツトの部分平面
図、第７図〜９図は従来の金属積層ガスケツトの
要部断面図である。 １……金属積層ガスケツト、２……ビード板、
２₁……第１ビード板、２₂……第２ビード板、１
０……ビード、１０₁……ビード（内側ビード）、
１０₂……ビード（外側ビード）、１０_c1……ビー
ド（内側ビード）、１０_c2……ビード（外側ビー
ド）、１０_w1……ビード（外側ビード）、１０_w2…
…ビード（内側ビード）、１６，２０……開口。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 １ 第１ビード板にシール用の穴を囲む内側ビー
   ドを設け、第２ビード板に、内側ビードが嵌入
   する開口と外側ビードとを設け、該外側ビード
   は、前記開口の周縁に近づけて、内側ビードと
   突出方向を逆にして形成し、前記開口の周縁
   を、内側ビードの頂部付近に近接して配置する
   ようにした複数ビード型金属積層ガスケツト。 ２ 少なくとも前記内側ビード及び外側ビードを
   圧縮する際に、第１ビード板に設けた内側ビー
   ドと、第２ビード板に設けた前記開口の周縁と
   が互いに干渉するように、内側ビードと開口と
   を配置した第１項記載の複数ビード型金属積層
   ガスケツト。