JPH0617204A - 軟磁性合金およびその製造方法ならびに磁心 - Google Patents

軟磁性合金およびその製造方法ならびに磁心

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JPH0617204A
JPH0617204A JP3360321A JP36032191A JPH0617204A JP H0617204 A JPH0617204 A JP H0617204A JP 3360321 A JP3360321 A JP 3360321A JP 36032191 A JP36032191 A JP 36032191A JP H0617204 A JPH0617204 A JP H0617204A
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 Feおよびガラス化元素と、Cuとを含有
し、結晶相を含む軟磁性合金を用い、整流平滑回路やノ
ーマルモードノイズフィルタなどのチョークコイル用あ
るいはトランス用の磁心を構成する。 【効果】 ギャップを設けなくても低透磁率を示し、不
飽和領域が広く、恒透磁率性の良好な磁心が得られるの
で、ギャップ形成による損失増大、磁気特性劣化、生産
性低下が防止される。この際、選択図に示されるよう
に、実用周波数帯域における透磁率の共振が防止でき
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、軟磁性合金およびその
製造方法と、チョークコイルやトランスなどに用いられ
る磁心とに関する。
【0002】
【従来の技術】スイッチング電源の出力平滑用の整流平
滑回路やノーマルモードノイズフィルタなどに用いられ
ているチョークコイルの磁心には、バイアス直流磁界に
重畳して交流磁界が印加されるので、このようなチョー
クコイル用の磁心には、B−H特性図において不飽和領
域が0〜25Oe程度と広いこと、すなわち透磁率が低く
B−Hループが寝ていることが要求される。透磁率が高
すぎると、印加磁界強度の僅かな変化で磁心が飽和する
ため、チョークコイルとしての性能が得られなくなる。
【0003】また、平滑用のチョークコイル等では、負
荷の変動等に対しても安定な直流重畳特性を示し、また
ノーマルモード用チョークコイル等、1次側では、商用
周波数に対して安定な特性を示すため、大電流(高磁
界)でも透磁率が低下せず、0〜25Oe程度において、
透磁率が一定に近く、恒透磁率性を示すことが必要であ
る。さらには、チョークコイルを小型化するために、磁
心材料には高飽和磁束密度が要求され、損失が少ないこ
とも重要である。
【0004】チョークコイル用磁心材料に適した高飽和
磁束密度の軟磁性材料として、Fe基非晶質合金が注目
されている。例えば、特開昭60−52557号公報に
は、Fe−Si−B合金にCuが添加された組成を有す
る低損失非晶質磁性合金が開示されている。この非晶質
磁性合金は、結晶化温度以下で熱処理されることによ
り、鉄損を減少することができるというものである。し
かし、同公報記載の非晶質磁性合金に施されているよう
な熱処理では、低透磁率を得ることはできず、不飽和領
域が狭く、20Oeではすでに飽和していまい、磁心とし
て使用できない。また、磁歪が高いため、磁心としたと
きのうなりが問題となる。
【0005】特開平64−39347号公報には、非晶
質合金に熱処理を施して微細結晶粒を形成したFe基軟
磁性合金が開示されている。同公報には、特に優れた磁
気特性を示す場合は結晶粒径が50nm以下であり、より
好ましくは2〜20nmの平均粒径を有する場合が多い旨
の記載がある。しかし、同公報に開示されている微細結
晶粒を有するFe基軟磁性合金は、チョークコイル用磁
心材料としては透磁率が高すぎ、不飽和領域が狭く、2
0Oeではすでに飽和していまい、不適当である。また、
このFe基軟磁性合金はCuに加え例えばNbなどが必
須元素として含有されるが、これらの合計含有率は4原
子%程度となるため、薄帯状の非晶質合金を製造するこ
とが困難である。
【0006】これらのように透磁率の高い軟磁性合金か
ら構成される磁心の透磁率を低下させるためには、通
常、カットコアとしたり磁心の一部にギャップを形成す
ることなどにより、磁心の径方向に磁路を横断するよう
にギャップを形成し、B−Hループを寝かせる方法が採
られている。例えば、軟磁性薄板を巻回した巻磁心にギ
ャップを設ける場合、樹脂含浸を行なった後、径方向に
切断してカットコアとし、カットコア同士を突き合わせ
て磁心を形成する。
【0007】しかし、巻磁心を切断する際に、切断面に
おいて薄板が変形して薄板同士が接触するため、使用時
に発熱し、損失が増大するという問題がある。また、樹
脂含浸により巻磁心には応力が発生するため、磁気特性
が劣化し、鉄損も増加するという問題が生じる。また、
ギャップ形成工程が加わるため、生産性が低くなってし
まう。また、磁歪により発生するうなりが、ギャップ部
において増幅されてしまう。
【0008】ギャップを形成せずに低透磁率の磁心を作
製する方法としては、例えば、特開昭57−16920
9号公報や特開昭63−24016号公報などに開示さ
れているように、非晶質合金を部分的に結晶化させる方
法がある。しかし、特開昭63−24016号公報に記
載されている合金は表面付近だけが結晶化しているた
め、合金に内部応力が生じ、磁気特性が悪化し鉄損が増
大してしまう。また、これらの公報に記載されている合
金組成では、低磁歪が得られず、磁心としたときのうな
りが問題となる。
【0009】なお、表面に酸化物層を形成することによ
り透磁率を減少させる等の提案もなされているが、この
場合も合金内部に応力が発生するため、保磁力が増大
し、やはり磁気特性の悪化や鉄損増大が生じてしまう。
また、これらでは、低い透磁率が実現しても、B−Hル
ープの原点の透磁率に対し、高磁界(大電流)印加時の
透磁率はそれよりきわめて小さくなってしまい、恒透磁
率性は実現しない。
【0010】さらに、上記のようなFe基非晶質軟磁性
合金は、重畳してマイナーループを画かせる実用周波数
帯域の100kHz 〜1MHz 程度において、磁歪にもとづ
く直流磁界重畳時に実効透磁率の共振を生じ、安定した
実効透磁率が得られないという問題がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、整流
平滑回路やノーマルモードノイズフィルタ等に用いられ
るチョークコイル用あるいはトランス用の磁心材料とし
て好ましい高飽和磁束密度かつ低透磁率を有し、不飽和
領域が広く、高印加磁界でも透磁率が変化せず、恒透磁
率性を示し、実効透磁率の共振を殆ど生じない軟磁性合
金と、この軟磁性合金の製造方法と、これらの軟磁性合
金を用いた低透磁率、恒透磁率かつ低損失の磁心とを提
供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(15)の本発明により達成される。 (1)Feおよびガラス化元素とCuとを含有し、結晶
相を含み、100kHzにおける透磁率が3000以下で
ある軟磁性合金。
【0013】(2)Feおよびガラス化元素とCuとを
含有し、結晶相を0.1〜100%含む軟磁性合金。
【0014】(3)100kHz における透磁率が300
0以下である上記(2)の軟磁性合金。
【0015】(4)下記式で表わされる原子比組成を有
する上記(1)〜(3)のいずれかの軟磁性合金。 [式] Fe100-x-y-z Cux Siyz (ただし、上記式において、 0.01≦x≦3、 0≦y≦20、 6≦z≦22および 18≦y+z≦30 である。)
【0016】(5)14≦z≦20および18≦y+z
≦29である上記(4)の軟磁性合金。
【0017】(6)y+z≦28である上記(5)の軟
磁性合金。
【0018】(7)y+z≧22.5である上記(5)
または(6)の軟磁性合金。
【0019】(8)B−Hループの原点での透磁率をμ
0 、25Oeでの透磁率をμ25としたとき、μ25/μ0
0.7である上記(1)ないし(7)のいずれかの記載
の軟磁性合金。
【0020】(9)磁歪定数が15×10-6 以下であ
る上記(1)〜(8)のいずれかの軟磁性合金。
【0021】(10)100kHz における透磁率が10
00以下である上記(1)〜(9)のいずれかの軟磁性
合金。
【0022】(11)前記結晶相の平均結晶粒径がが1
000nm以下である上記(1)〜(10)のいずれかの
軟磁性合金。
【0023】(12)合金溶湯を高速急冷した後、30
0〜520℃の温度で熱処理し、上記(1)〜(11)
のいずれかの軟磁性合金を得る軟磁性合金の製造方法。
【0024】(13)上記(1)ないし(11)のいず
れかの軟磁性合金または上記(12)の製造方法によっ
て得られた軟磁性合金を巻回または積層した磁心。
【0025】(14)径方向にギャップを有しない上記
(13)の磁心。
【0026】(15)チョークコイルまたはトランスに
用いられる上記(13)または(14)の磁心。
【0027】
【作用】本発明の軟磁性合金は、所定の組成のCuを含
有するアモルファス合金を熱処理し、アモルファス相の
一部ないし全部を結晶化することにより製造される。本
発明の軟磁性合金中の結晶相の含有率は0.1〜100
%、好ましくは10〜100%であり、この範囲の結晶
化により付与されたミクロ構造と所定組成によって、整
流平滑回路やノーマルモードノイズフィルタなどのチョ
ークコイル用あるいはトランス用磁心として適当な低透
磁率が得られ、また、恒透磁率性を示し、実用周波数帯
域における透磁率の共振を防止することができ、さらに
磁歪を低くすることができる。そして、本発明の軟磁性
合金を用いた磁心は、ギャップを設けなくても低透磁率
が得られるので、ギャップ形成による損失がなく、極め
て低損失の低透磁率恒透磁率の磁心が実現する。また、
ギャップを設ける必要がないため、磁気特性の劣化がな
く、生産性も高い。この際、直流磁界重畳によるマイナ
ーループ駆動を行なうので、損失も低い。
【0028】一般にアモルファス合金を熱処理して結晶
相の含有率を上記範囲内に制御することは極めて困難で
あるが、Cuを含有する合金を比較的低温で適当な時間
熱処理することにより、結晶相の含有率を上記範囲にお
いて精度よく制御することができる。
【0029】
【具体的構成】以下、本発明の具体的構成について詳細
に説明する。
【0030】本発明の軟磁性合金は、Feおよびガラス
化元素とCuとを含有し、全体が結晶相であるか、ある
いは結晶相を部分的に含み残部がアモルファス相である
合金である。
【0031】結晶相の含有率は0.1〜100%、好ま
しくは10〜100%である。結晶相の含有率が0.1
%未満であると、所定の透磁率が得られず不飽和領域の
広さが不十分となり、また、恒透磁率性が低下し、実効
透磁率の共振を防止する効果が不十分となる。
【0032】なお、本発明における結晶相の含有率は、
X線回折チャートを解析して下記のようにして求める。
すなわち、本発明の軟磁性合金の原料素材であるアモル
ファス合金のX線回折チャートには、アモルファス相の
存在を示すハローが現われている。このハロー高さをH
とする。一方、本発明の軟磁性合金は一部または全部が
結晶化している。一部結晶化のものでは、アモルファス
相の存在を示すハロー上に結晶相の存在を示すピークが
重なって現われる。このハローの下端からピークの上端
までの高さをPH とする。また、完全に結晶化させた結
晶質合金では、ハローが消失し、結晶相のピークが現わ
れる。このときには、このピークの高さをPとし、結晶
相の含有率を100%とする。一部結晶化した軟磁性合
金の結晶相の含有率は、これらの測定値を用いて (PH −H)×100/(P−H) [%] で算出される。
【0033】Cuは、結晶相の含有率を上記範囲内に制
御するために含有される。また、Cu添加により結晶化
させれば、微細結晶粒が形成されるので、透磁率が低下
すると同時に磁歪も減少する。
【0034】結晶相の含有率を上記範囲とするために
は、下記式で表わされる原子比組成を選択することが好
ましい。
【0035】[式] Fe100-x-y-z Cux Siyz
【0036】ただし、上記式において、 0.01≦x≦3、 0≦y≦20、 6≦z≦22および 18≦y+z≦30である。 この場合、 14≦z≦20および 18≦y+z≦29とすることが好ましい。
【0037】さらに、y+z≦28および/またはy+
z≦22.5とするとさらに好ましい結果を得る。
【0038】上記式において、Cuの含有率を表わすx
が0.01未満となると、結晶化の際の熱処理条件の制
御が難しくなり、結晶相の含有率を前記範囲とすること
が困難となる。また、xが0.3を超えると、原料素材
であるアモルファス合金を作製する際の急冷工程におい
て、合金を薄帯状とすることが困難となり、寸断された
片状の合金になってしまう。なお、xは0.1以上、特
に0.5以上が好ましい。また、xは1.5以下が好ま
しい。
【0039】本発明では、原料合金の溶湯を単ロール法
などの高速急冷法により急冷してアモルファス合金を製
造し、このアモルファス合金に熱処理を施すことにより
結晶相を形成する。SiおよびBは、合金をアモルファ
ス化するためのガラス化元素であり、Siの含有量を表
わすy、Bの含有量を表わすzおよびy+zが上記範囲
内であれば、低保磁力が得られるため鉄損が小さくな
り、また、高い恒透磁率性が得られ、さらに、磁歪が低
くなる。また、y、zおよびy+zが上記範囲を外れる
と、このような特性が得られにくくなる他、合金のアモ
ルファス化が困難となってくる。
【0040】SiおよびBの他、ガラス化元素として
C、Ge、P、Ga、Sb、In、BeおよびAsから
選ばれる元素の1種以上が含有されていてもよい。これ
らのガラス化元素は、SiおよびBと共にアモルファス
化を助長する作用を示し、また、キュリー温度および磁
歪の調整作用も有する。これらガラス化元素は、Siと
Bの含有量の合計の30%以下を置換するように含有さ
れることが好ましい。これらのうち特にCは、耐食性を
向上させ、かつアモルファス化を助長させる元素として
好ましい。
【0041】上記の各元素を除いた残部がFeである
が、必要に応じてFeの一部をCoおよび/またはNi
で置換してもよい。Coは飽和磁化を向上させる作用を
有する。Niは、アモルファス化を容易にし、また、飽
和磁化の調整を容易にする作用を有する。Feに対する
これらの元素の置換率は、50%以下、特に20%以下
とすることが好ましい。
【0042】なお、本発明の軟磁性合金には、上記各元
素の他に、Mn、VおよびCrから選択される1種以上
の元素が添加されていてもよい。Mn添加は結晶化を助
長し、V添加は透磁率調整に用いることができ、Crは
耐食性を向上させる。ただし、添加量が増すと結晶が微
細化して透磁率が高くなってしまうことがあるので、こ
れらの元素の合計添加量は3原子%以下、特に1原子%
以下とすることが好ましい。なお、これらの、あるいは
後述の添加元素が含有される場合でも、上記式における
Cu、SiおよびBの含有率範囲に変りはない。
【0043】また、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、M
oおよびWから選択される元素の1種以上が含有されて
いてもよい。ただし、これらの添加は透磁率を高くして
しまい、またその恒透磁率性を低下させる。また、結晶
相析出のための熱処理温度を高めてしまい、表面酸化さ
れやすくなり、この点でも特性を低下させる。このた
め、これらの元素の合計添加量は0.1原子%未満、特
に0〜0.008原子%、さらには0〜0.005原子
%とすることが好ましい。
【0044】以上に挙げた元素の他、本発明の軟磁性合
金には、Al、白金族元素、Sc、Y、希土類元素、A
u、Zn、SnおよびReから選択される1種以上の元
素が含有されていてもよい。これらの元素が含有される
場合、その含有量の合計は、上記式で表わされる組成に
対して10原子%以下、特に1原子%以下であることが
好ましい。
【0045】なお、本発明の軟磁性合金には、磁気特性
に悪影響を与えない限り、N、O、S等の不可避的不純
物が含有されていてもよい。
【0046】本発明の軟磁性合金に含まれる結晶相の平
均結晶粒径は、1000nm以下、特に100nm以下、さ
らには50nm以下、そして30nm以下であることが好ま
しい。また、0.5nm以上、特に1nm以上が好ましい。
結晶粒径が小さすぎると低透磁率や恒透磁率性が得られ
ず、結晶化が進み、粗大化すると保磁力が増加してしま
う。なお、結晶粒径は透過型電子顕微鏡(TEM)によ
り測定することができる。
【0047】以下、本発明の軟磁性合金の製造方法を説
明する。
【0048】本発明の軟磁性合金は、単ロール法、双ロ
ール法等の通常の液体急冷法によって製造されたアモル
ファス合金薄帯に、熱処理を施して一部を結晶化するこ
とにより製造される。
【0049】液体急冷法により製造されるアモルファス
合金薄帯の厚さは、好ましくは5〜100μm 、より好
ましくは5〜50μm 、さらに好ましくは15〜25μ
m とする。厚さが前記範囲を外れるアモルファス合金薄
帯は、製造が困難である。
【0050】合金薄帯の熱処理は、空気中、真空中、あ
るいは窒素、Ar等の雰囲気中で行なうことができる。
熱処理の温度および時間は、熱処理される合金の組成、
形状、寸法などによっても変わるが、熱処理温度は30
0〜520℃、特に400〜500℃であることが好ま
しく、熱処理時間は0.1〜100時間、特に1.5〜
10時間であることが好ましい。熱処理温度および熱処
理時間が上記範囲を外れると、所定の結晶化率を得るこ
とが困難となり、後述するような好ましい透磁率や、そ
の恒透磁率性や周波数特性、さらには磁歪定数を得られ
にくくなる。特に、熱処理温度が高すぎると、結晶化の
粗大化や、表面酸化が生じ、保磁力が高くなってしまい
軟磁性合金としての使用が不可能となってくる。本発明
では、520℃以下の熱処理温度とすることができるの
で、表面酸化による特性劣化がなく、低透磁率で、広い
不飽和領域をもち、恒透磁率性と、良好な周波数特性を
もつ合金が提供できる。
【0051】なお、この熱処理は、磁場中にて行なわれ
てもよい。
【0052】以下、本発明の軟磁性合金の好ましい適用
例である本発明の磁心について説明する。
【0053】本発明の磁心は、通常、チョークコイル用
の巻磁心に適用される。巻磁心は、軟磁性合金の薄帯を
巻回して形成される。
【0054】巻磁心の形状および寸法に特に制限はな
く、形状は、トロイダル状、レーストラック状等の各種
形状から目的に応じて選択すればよく、また、寸法は、
例えば、外径3〜1000mm程度、内径2〜500mm程
度、高さ1〜100mm程度である。
【0055】結晶相を形成するための熱処理は、合金薄
帯巻回後に行なうことが好ましい。この熱処理は合金薄
帯の歪除去を兼ねているので、巻回後に熱処理すれば歪
除去後に新たな歪が発生することがない。熱処理は、基
本的には不活性ガス雰囲気で実施することが好ましい
が、上記のとおり熱処理温度が比較的低いので、空気中
等の酸化性雰囲気にても可能である。
【0056】なお、本発明の軟磁性合金は、巻磁心の
他、積層磁心に適用することもできる。
【0057】本発明の磁心は、商用周波数〜1MHz の周
波数帯域で使用され、このうち直流磁界重畳でマイナー
ループを画かせるときには、通常、10kHz 〜1MHz の
周波数帯域で使用される。
【0058】また、本発明の磁心は下記のような磁気特
性が得られるので、特に平滑用、ノーマルモード用等の
チョークコイル用磁心に好適である。
【0059】バイアス磁界ゼロでの100kHz における
実効透磁率(測定磁界10mOe )としては、3000以
下、特に1000以下、さらには500以下の値が容易
に得られる。なお、実効透磁率は、通常、10以上、特
に20以上であることが好ましく、50〜300が最も
好適である。重畳の際のバイアス直流磁界の強度は、一
般に0〜100 Oe 、通常は0〜30 Oe である。
【0060】また、恒透磁率性としては、B−Hループ
の原点の透磁率をμ0 、25Oeでの透磁率をμ25とした
とき、μ25/μ0 は0.7以上、特に0.8以上、さら
には0.85以上、そして0.9以上が得られる。
【0061】そして、周波数特性としては、200kHz
の透磁率に対して、200kHz から50kHz および1MH
z までの透磁率は、それぞれ±25%、特に±15%以
内、さらには±10%以内の値を保つ。この際、このよ
うな平坦な周波数特性は、50Hz〜50kHz の間でも実
現する。
【0062】また、直流磁界重畳時の周波数特性、特に
共振を含んだ周波数特性について言えば、20Oeの直流
バイアス磁界、10mOe の測定磁界としたとき、500
kHzの実効透磁率をμ500 、10kHz 〜500kHz の共
振に基づく最小透磁率をμmin としたとき、(μ500
μmin )×100/μ500 は20%以下、特に15%以
下、さらには10%以下、そして8%以下にすることが
できる。
【0063】なお、角形比(Br /Bs )としては、3
0%以下、特に10%以下の値を得ることができる。飽
和磁束密度としては、10〜18kG、特に13〜16kG
の値が得られる。磁歪定数としては、15×10-6
下、特に10×10-6以下、さらには8×10-6以下、
そして5×10-6以下の値が得られる。このため共振は
前記のとおりきわめて少ない。
【0064】本発明の巻磁心は、径方向にギャップを設
けなくても上記のような低透磁率が得られるが、巻線等
を容易にするために必要に応じてギャップを設けてもよ
い。ギャップ付磁心とする場合、磁心をエポキシ樹脂等
の熱硬化性樹脂に含浸後、熱硬化して被覆を形成し、次
いで切断してU字、C字、I字、L字状等のカットコア
とし、同一の磁心から作られたカットコア同士、あるい
は異なる磁心から作られたカットコア同士を突き合わせ
て、ギャップ付き磁心を形成する。
【0065】また、本発明の巻磁心には、必要に応じて
隣り合う薄板の間に樹脂フィルム等の絶縁層が設けられ
てもよい。
【0066】本発明の巻磁心は、スイッチング電源の出
力平滑用チョークコイルや、ノーマルモードノイズフィ
ルタなどのノイズフィルタ用チョークコイルに好ましく
適用され、また、トランス用磁心にも好適である。トラ
ンス用磁心としては、鉄損が低くて透磁率が1000〜
3000程度であることが要求されるが、本発明の軟磁
性合金はこのような要求を容易に満足することができ
る。
【0067】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例を示し、本発明
をさらに詳細に説明する。
【0068】[実施例1]下記表1に示される組成を有
する合金溶湯を単ロール法により高速急冷し、アモルフ
ァス合金薄帯を作製した。なお、表1に示す組成におい
て、残部はFeである。
【0069】得られた各アモルファス合金薄帯を巻回
し、内径14mm、外径22mm、高さ10mmのトロイダル
形状の巻回体とした。
【0070】これらの巻回体にN2 ガス雰囲気中にて熱
処理を施し、巻磁心サンプルとした。熱処理条件を表1
に示す。
【0071】各サンプルについて、20 Oe の直流バイ
アス磁界を印加したときの透磁率の周波数特性(直流重
畳特性)を測定し、透磁率の共振の度合いを評価した。
なお、測定磁界は10mOe 、測定周波数範囲は10kHz
〜500kHz とし、透磁率の共振は (μ500 −μmin )×100/μ500 [%] により評価した。なお、μ500 は500kHz における実
効透磁率であり、μminは10kHz 〜500kHz におけ
る最小透磁率である。サンプルNo.101および10
4それぞれの透磁率の周波数特性を、図1に示す。
【0072】また、各サンプル合金の飽和磁束密度Bs
、磁歪定数λs また巻磁心の直流バイアス磁界ゼロの
100kHz における実効透磁率μe 、直流B−Hループ
での原点の実効透磁率(μ0 と25Oeでの実効透磁率μ
25との比(恒透磁率性)μ25/μ0 (%)、角形比SQ
を、表1、表2に示す。
【0073】また、各サンプル中の結晶相の含有率を、
X線回折を利用した前述の方法により算出した。結果を
表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】なお、図2に、サンプルNo. 107の合金
の薄帯中央部のTEM写真、図3に、その拡大TEM写
真を示す。また、図4にはサンプルNo. 101の合金に
おけるTEM写真を示す。これらから、サンプルNo. 1
07では、平均粒径50nm以下の微細な結晶が98%
(表1参照)生成していることがわかる。これに対し、
従来の比較サンプルNo. 101の合金では、それより粗
大な結晶が10%の含有率(表1参照)で偏析してい
る。
【0076】上記表1、図1〜図4に示される結果か
ら、本発明の効果が明らかである。すなわち、Cuを適
量含有させ、適当な熱処理を施すことにより、図2、図
3に示されるような所定の微細結晶相を含むミクロ構造
をもつ低透磁率の軟磁性合金が得られる。そして、この
ような軟磁性合金を巻回した本発明の巻磁心サンプル
は、高飽和磁束密度であり、かつギャップを設けなくて
もチョークコイル用磁心に必要とされる低い透磁率が得
られており、しかも不飽和領域が広く、高磁界でも電磁
率が低下せず、きわめて良好な恒透磁率性を示し、磁歪
も低く、しかも透磁率の共振が殆どなく、平坦な周波数
特性が得られている。一方、結晶相の含有率が本発明を
外れるサンプルでは、表1および図1に示されるように
透磁率の著しい共振が生じている。
【0077】なお、上記表1に示される各サンプルに、
Mn、VおよびCrから選択される1種以上の元素を
0.01原子%添加した場合でもほぼ同等の特性が得ら
れた。この際、Cr、V、Mnでは0.1原子%以上の
添加も許容できるものであったが、Ti、Zr、Hf、
Nb、Ta、MoおよびWの元素では、添加量が0.1
原子%以上となると、透磁率が増大してしまった。
【0078】[実施例2]原子比組成がFe71Cu1.5
Si1215.5である合金溶湯を単ロール法により高速急
冷し、アモルファス合金薄帯を作製した。このアモルフ
ァス合金薄帯を実施例1と同様に巻回し、N2 ガス雰囲
気中で熱処理を施した。熱処理時間は90分間とし、熱
処理温度を変えて複数の巻磁心サンプルを作製した。熱
処理温度と100kHz における実効透磁率μe との関係
を、図5に示す。また、熱処理温度と磁歪定数λs との
関係を図6に示す。
【0079】なお、比較のために、原子比組成がFe78
Si913の合金を用い、上記と同様にして熱処理温度
とμe との関係および熱処理温度とλs との関係を調べ
た。結果をそれぞれ図5および図6中に示す。
【0080】図5および図6に示される結果から、本発
明の軟磁性合金を製造するための好ましい熱処理温度範
囲が明らかである。なお、600℃を超える温度で熱処
理した場合、Fe71Cu1.5 Si1215.5合金の保磁力
は、約80 Oe 程度以上にまで増加した。
【0081】
【発明の効果】本発明の軟磁性合金は、高飽和磁束密度
を有し、また、磁歪が低く、しかも、低透磁率を有し、
不飽和領域が広く印加磁界が高くても透磁率が低下せ
ず、磁界に対し恒透磁率性を示し、また共振が小さく、
透磁率の周波数特性も良好である。このため、整流平滑
回路やノーマルモードノイズフィルタのチョークコイル
用磁心あるいはトランス用磁心に適用する場合に、ギャ
ップを設ける必要がない。このため、極めて低損失の低
透磁率磁心が実現し、また、高い生産性が得られる。
【0082】また、10kHz 〜1MHz の実用周波数帯域
において直流磁界重畳時に透磁率の共振が殆ど生じない
ので、設計通りの安定した性能が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】周波数fと実効透磁率μe との関係を表わすグ
ラフである。
【図2】図面代用写真であって、本発明の磁性合金の結
晶構造を示すTEM写真である。
【図3】図面代用写真であって、図2の拡大TEM写真
である。
【図4】図面代用写真であって、比較用の磁性合金の結
晶構造を示すTEM写真である。
【図5】熱処理温度と実効透磁率μe との関係を表わす
グラフである。
【図6】熱処理温度と磁歪定数λs との関係を表わすグ
ラフである。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成4年3月27日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項9
【補正方法】変更
【補正内容】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項10
【補正方法】変更
【補正内容】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項11
【補正方法】変更
【補正内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項12
【補正方法】変更
【補正内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項13
【補正方法】変更
【補正内容】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項14
【補正方法】変更
【補正内容】
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項15
【補正方法】変更
【補正内容】
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】発明の詳細な説明
【補正方法】変更
【補正内容】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、軟磁性合金およびその
製造方法と、チョークコイルやトランスなどに用いられ
る磁心とに関する。
【0002】
【従来の技術】スイッチング電源の出力平滑用の整流平
滑回路やノーマルモードノイズフィルタなどに用いられ
ているチョークコイルの磁心には、バイアス直流磁界に
重畳して交流磁界が印加されるので、このようなチョー
クコイル用の磁心には、B−H特性図において不飽和領
域が0〜25Oe程度と広いこと、すなわち透磁率が低
くB−Hループが寝ていることが要求される。透磁率が
高すぎると、印加磁界強度の僅かな変化で磁心が飽和す
るため、チョークコイルとしての性能が得られなくな
る。
【0003】また、平滑用のチョークコイル等では、負
荷の変動等に対しても安定な直流重畳特性を示し、また
ノーマルモード用チョークコイル等、1次側では、商用
周波数に対して安定な特性を示すため、大電流(高磁
界)でも透磁率が低下せず、0〜25Oe程度におい
て、透磁率が一定に近く、恒透磁率性を示すことが必要
である。さらには、チョークコイルを小型化するため
に、磁心材料には高飽和磁束密度が要求され、損失が少
ないことも重要である。
【0004】チョークコイル用磁心材料に適した高飽和
磁束密度の軟磁性材料として、Fe基非晶質合金が注目
されている。例えば、特開昭60−52557号公報に
は、Fe−Si−B合金にCuが添加された組成を有す
る低損失非晶質磁性合金が開示されている。この非晶質
磁性合金は、結晶化温度以下で熱処理されることによ
り、鉄損を減少することができるというものである。し
かし、同公報記載の非晶質磁性合金に施されているよう
な熱処理では、低透磁率を得ることはできず、不飽和領
域が狭く、20Oeではすでに飽和していまい、磁心と
して使用できない。また、磁歪が高いため、磁心とした
ときのうなりが問題となる。
【0005】特開平64−39347号公報には、非晶
質合金に熱処理を施して微細結晶粒を形成したFe基軟
磁性合金が開示されている。同公報には、特に優れた磁
気特性を示す場合は結晶粒径が50nm以下であり、よ
り好ましくは2〜20nmの平均粒径を有する場合が多
い旨の記載がある。しかし、同公報に開示されている微
細結晶粒を有するFe基軟磁性合金は、チョークコイル
用磁心材料としては透磁率が高すぎ、不飽和領域が狭
く、20Oeではすでに飽和していまい、不適当であ
る。また、このFe基軟磁性合金はCuに加え例えばN
bなどが必須元素として含有されるが、これらの合計含
有率は4原子%程度となるため、薄帯状の非晶質合金を
製造することが困難である。
【0006】これらのように透磁率の高い軟磁性合金か
ら構成される磁心の透磁率を低下させるためには、通
常、カットコアとしたり磁心の一部にギャップを形成す
ることなどにより、磁心の径方向に磁路を横断するよう
にギャップを形成し、B−Hループを寝かせる方法が採
られている。例えば、軟磁性薄板を巻回した巻磁心にギ
ャップを設ける場合、樹脂含浸を行なった後、径方向に
切断してカットコアとし、カットコア同士を突き合わせ
て磁心を形成する。
【0007】しかし、巻磁心を切断する際に、切断面に
おいて薄板が変形して薄板同士が接触するため、使用時
に発熱し、損失が増大するという問題がある。また、樹
脂含浸により巻磁心には応力が発生するため、磁気特性
が劣化し、鉄損も増加するという問題が生じる。また、
ギャップ形成工程が加わるため、生産性が低くなってし
まう。また、磁歪により発生するうなりが、ギャップ部
において増幅されてしまう。
【0008】ギャップを形成せずに低透磁率の磁心を作
製する方法としては、例えば、特開昭57−16920
9号公報や特開昭63−24016号公報などに開示さ
れているように、非晶質合金を部分的に結晶化させる方
法がある。しかし、特開昭63−24016号公報に記
載されている合金は表面付近だけが結晶化しているた
め、合金に内部応力が生じ、磁気特性が悪化し鉄損が増
大してしまう。また、これらの公報に記載されている合
金組成では、低磁歪が得られず、磁心としたときのうな
りが問題となる。
【0009】なお、表面に酸化物層を形成することによ
り透磁率を減少させる等の提案もなされているが、この
場合も合金内部に応力が発生するため、保磁力が増大
し、やはり磁気特性の悪化や鉄損増大が生じてしまう。
また、これらでは、低い透磁率が実現しても、B−Hル
ープの原点の透磁率に対し、高磁界(大電流)印加時の
透磁率はそれよりきわめて小さくなってしまい、恒透磁
率性は実現しない。
【0010】さらに、上記のようなFe基非晶質軟磁性
合金は、重畳してマイナーループを画かせる実用周波数
帯域の100kHz〜1MHz程度において、磁歪にも
とづく直流磁界重畳時に実効透磁率の共振を生じ、安定
した実効透磁率が得られないという問題がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、整流
平滑回路やノーマルモードノイズフィルタ等に用いられ
るチョークコイル用あるいはトランス用の磁心材料とし
て好ましい高飽和磁束密度かつ低透磁率を有し、不飽和
領域が広く、高印加磁界でも透磁率が変化せず、恒透磁
率性を示し、実効透磁率の共振を殆ど生じない軟磁性合
金と、この軟磁性合金の製造方法と、これらの軟磁性合
金を用いた低透磁率、恒透磁率かつ低損失の磁心とを提
供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(15)の本発明により達成される。 (1)Feおよびガラス化元素とCuとを含有し、結晶
相を含み、100kHzにおける透磁率が3000以下
である軟磁性合金。
【0013】(2)Feおよびガラス化元素とCuとを
含有し、結晶相を0.1〜100%含む軟磁性合金。
【0014】(3)100kHzにおける透磁率が30
00以下である上記(2)の軟磁性合金。
【0015】(4)下記式で表わされる原子比組成を有
する上記(1)〜(3)のいずれかの軟磁性合金。 [式] Fe100−x−y−zCuSi (ただし、上記式において、 0.01≦x≦3、 0≦y≦20、 6≦z≦22および 18≦y+z≦30 である。)
【0016】(5)14≦z≦20および18≦y+z
≦29である上記(4)の軟磁性合金。
【0017】(6)y+z≦28である上記(5)の軟
磁性合金。
【0018】(7)y+z≧22.5である上記(5)
または(6)の軟磁性合金。
【0019】(8)B−Hループの原点での透磁率をμ
、25Oeでの透磁率をμ25としたとき、μ25
μ≧0.7である上記(1)ないし(7)のいずれか
の記載の軟磁性合金。
【0020】(9)100kHzにおける透磁率が10
00以下である上記(1)〜(8)のいずれかの軟磁性
合金。
【0021】(10)前記結晶相の平均結晶粒径が10
00nm以下である上記(1)〜(9)のいずれかの軟
磁性合金。
【0022】(11)合金溶湯を高速急冷した後、30
0〜520℃の温度で熱処理し、上記(1)〜(10)
のいずれかの軟磁性合金を得る軟磁性合金の製造方法。
【0023】(12)上記(1)ないし(10)のいず
れかの軟磁性合金または上記(11)の製造方法によっ
て得られた軟磁性合金を巻回または積層した磁心。
【0024】(13)径方向にギャップを有しない上記
(12)の磁心。
【0025】(14)チョークコイルまたはトランスに
用いられる上記(12)または(13)の磁心。
【0026】(15)20Oeの直流バイアス磁界で1
0mOeの測定磁界で、500kHzの実効透磁率をμ
500、10〜500kHzの共振に基づく最小透磁率
をμminとしたとき、(μ500−μmin)×10
0/μ500が20%以下である上記12ないし14の
いずれかの磁心。
【0027】
【作用】本発明の軟磁性合金は、所定の組成のCuを含
有するアモルファス合金を熱処理し、アモルファス相の
一部ないし全部を結晶化することにより製造される。本
発明の軟磁性合金中の結晶相の含有率は0.1〜100
%、好ましくは10〜100%であり、この範囲の結晶
化により付与されたミクロ構造と所定組成によって、整
流平滑回路やノーマルモードノイズフィルタなどのチョ
ークコイル用あるいはトランス用磁心として適当な低透
磁率が得られ、また、恒透磁率性を示し、実用周波数帯
域における透磁率の共振を防止することができる。また
磁歪も低くすることができる。そして、本発明の軟磁性
合金を用いた磁心は、ギャップを設けなくても低透磁率
が得られるので、ギャップ形成による損失がなく、極め
て低損失の低透磁率恒透磁率の磁心が実現する。また、
ギャップを設ける必要がないため、磁気特性の劣化がな
く、生産性も高い。この際、直流磁界重畳によるマイナ
ーループ駆動を行なうので、損失も低い。
【0028】一般にアモルファス合金を熱処理して結晶
相の含有率を上記範囲内に制御することは極めて困難で
あるが、Cuを含有する合金を比較的低温で適当な時間
熱処理することにより、結晶相の含有率を上記範囲にお
いて精度よく制御することができる。なお、米国特許
4,812,181号には、Fe−Si−Bアモルファ
ス合金を410℃以上で10時間以上熱処理して、主に
表面を結晶化して磁化曲線を平坦化する旨が記載されて
いるが、このものでは共振を防止することができず、ま
た、熱処理にも長時間を要する。
【0029】
【具体的構成】以下、本発明の具体的構成について詳細
に説明する。
【0030】本発明の軟磁性合金は、Feおよびガラス
化元素とCuとを含有し、全体が結晶相であるか、ある
いは結晶相を部分的に含み残部がアモルファス相である
合金である。
【0031】結晶相の含有率は0.1〜100%、好ま
しくは10〜100%である。結晶相の含有率が0.1
%未満であると、所定の透磁率が得られず不飽和領域の
広さが不十分となり、また、恒透磁率性が低下し、実効
透磁率の共振を防止する効果が不十分となる。
【0032】なお、本発明における結晶相の含有率は、
X線回折チャートを解析して下記のようにして求める。
すなわち、本発明の軟磁性合金の原料素材であるアモル
ファス合金のX線回折チャートには、アモルファス相の
存在を示すハローが現われている。このハロー高さをH
とする。一方、本発明の軟磁性合金は一部または全部が
結晶化している。一部結晶化のものでは、アモルファス
相の存在を示すハロー上に結晶相の存在を示すピークが
重なって現われる。このハローの下端からピークの上端
までの高さをPとする。また、完全に結晶化させた結
晶質合金では、ハローが消失し、結晶相のピークが現わ
れる。このときには、このピークの高さをPとし、結晶
相の含有率を100%とする。一部結晶化した軟磁性合
金の結晶相の含有率は、これらの測定値を用いて (P−H)×100/(P−H) [%] で算出される。
【0033】Cuは、結晶相の含有率を上記範囲内に制
御するために含有される。また、Cu添加により結晶化
させれば、微細結晶粒が形成されるので、透磁率が低下
すると同時に磁歪も減少する。
【0034】結晶相の含有率を上記範囲とするために
は、下記式で表わされる原子比組成を選択することが好
ましい。
【0035】[式] Fe100−x−y−zCuSi
【0036】ただし、上記式において、 0.01≦x≦3、 0≦y≦20、 6≦z≦22および 18≦y+z≦30である。 この場合、 14≦z≦20および 18≦y+z≦29とすることが好ましい。
【0037】さらに、y+z≦28および/またはy+
z≦22.5とするとさらに好ましい結果を得る。
【0038】上記式において、Cuの含有率を表わすx
が0.01未満となると、結晶化の際の熱処理条件の制
御が難しくなり、結晶相の含有率を前記範囲とすること
が困難となる。また、xが0.3を超えると、原料素材
であるアモルファス合金を作製する際の急冷工程におい
て、合金を薄帯状とすることが困難となり、寸断された
片状の合金になってしまう。なお、xは0.1以上、特
に0.5以上が好ましい。また、xは1.5以下が好ま
しい。
【0039】本発明では、原料合金の溶湯を単ロール法
などの高速急冷法により急冷してアモルファス合金を製
造し、このアモルファス合金に熱処理を施すことにより
結晶相を形成する。SiおよびBは、合金をアモルファ
ス化するためのガラス化元素であり、Siの含有量を表
わすy、Bの含有量を表わすzおよびy+zが上記範囲
内であれば、低保磁力が得られるため鉄損が小さくな
り、また、高い恒透磁率性が得られ、磁歪も低くなる。
また、y、zおよびy+zが上記範囲を外れると、この
ような特性が得られにくくなる他、合金のアモルファス
化が困難となってくる。
【0040】SiおよびBの他、ガラス化元素として
C、Ge、P、Ga、Sb、In、BeおよびAsから
選ばれる元素の1種以上が含有されていてもよい。これ
らのガラス化元素は、SiおよびBと共にアモルファス
化を助長する作用を示し、また、キュリー温度および磁
歪の調整作用も有する。これらガラス化元素は、Siと
Bの含有量の合計の30%以下を置換するように含有さ
れることが好ましい。これらのうち特にCは、耐食性を
向上させ、かつアモルファス化を助長させる元素として
好ましい。
【0041】上記の各元素を除いた残部がFeである
が、必要に応じてFeの一部をCoおよび/またはNi
で置換してもよい。Coは飽和磁化を向上させる作用を
有する。Niは、アモルファス化を容易にし、また、飽
和磁化の調整を容易にする作用を有する。Feに対する
これらの元素の置換率は、50%以下、特に20%以下
とすることが好ましい。
【0042】なお、本発明の軟磁性合金には、上記各元
素の他に、Mn、VおよびCrから選択される1種以上
の元素が添加されていてもよい。Mn添加は結晶化を助
長し、V添加は透磁率調整に用いることができ、Crは
耐食性を向上させる。ただし、添加量が増すと結晶が微
細化して透磁率が高くなってしまうことがあるので、こ
れらの元素の合計添加量は3原子%以下、特に1原子%
以下とすることが好ましい。なお、これらの、あるいは
後述の添加元素が含有される場合でも、上記式における
Cu、SiおよびBの含有率範囲に変りはない。
【0043】また、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、M
oおよびWから選択される元素の1種以上が含有されて
いてもよい。ただし、これらの添加は透磁率を高くして
しまい、またその恒透磁率性を低下させる。また、結晶
相析出のための熱処理温度を高めてしまい、表面酸化さ
れやすくなり、この点でも特性を低下させる。このた
め、これらの元素の合計添加量は0.1原子%未満、特
に0〜0.008原子%、さらには0〜0.005原子
%とすることが好ましい。
【0044】以上に挙げた元素の他、本発明の軟磁性合
金には、A1、白金族元素、Sc、Y、希土類元素、A
u、Zn、SnおよびReから選択される1種以上の元
素が含有されていてもよい。これらの元素が含有される
場合、その含有量の合計は、上記式で表わされる組成に
対して10原子%以下、特に1原子%以下であることが
好ましい。
【0045】なお、本発明の軟磁性合金には、磁気特性
に悪影響を与えない限り、N、O、S等の不可避的不純
物が含有されていてもよい。
【0046】本発明の軟磁性合金に含まれる結晶相の平
均結晶粒径は、1000nm以下、特に100nm以
下、さらには50nm以下、そして30nm以下である
ことが好ましい。また、0.5nm以上、特に1nm以
上が好ましい。結晶粒径が小さすぎると低透磁率や垣透
磁率性が得られず、結晶化が進み、粗大化すると保磁力
が増加してしまう。なお、結晶粒径は透過型電子顕微鏡
(TEM)により測定することができる。
【0047】以下、本発明の軟磁性合金の製造方法を説
明する。
【0048】本発明の軟磁性合金は、単ロール法、双ロ
ール法等の通常の液体急冷法によって製造されたアモル
ファス合金薄帯に、熱処理を施して一部を結晶化するこ
とにより製造される。
【0049】液体急冷法により製造されるアモルファス
合金薄帯の厚さは、好ましくは5〜100μm、より好
ましくは5〜50μm、さらに好ましくは15〜25μ
mとする。厚さが前記範囲を外れるアモルファス合金薄
帯は、製造が困難である。
【0050】合金薄帯の熱処理は、空気中、真空中、あ
るいは窒素、Ar等の雰囲気中で行なうことができる。
熱処理の温度および時間は、熱処理される合金の組成、
形状、寸法などによっても変わるが、熱処理温度は30
0〜520℃、特に400〜500℃であることが好ま
しく、熱処理時間は0.1〜100時間、特に1.5〜
10時間であることが好ましい。熱処理温度および熱処
理時間が上記範囲を外れると、所定の結晶化率を得るこ
とが困難となり、後述するような好ましい透磁率や、そ
の恒透磁率性や周波数特性、さらには磁歪定数を得られ
にくくなってくる。特に、熱処理温度が高すぎると、結
晶化の粗大化や、表面酸化が生じ、保磁力が高に、熱処
理温度が高すぎると、結晶化の粗大化や、表面酸化が生
じ、保磁力が高くなってしまい軟磁性合金としての使用
が不可能となってくる。本発明では、520℃以下の熱
処理温度とすることができるので、表面酸化による特性
劣化がなく、低透磁率で、広い不飽和領域をもち、恒透
磁率性と、良好な周波数特性をもつ合金が提供できる。
この場合、米国特許第4,812,181号のFe−S
i−B系と比較して、熱処理時間は半分以下となり、8
時間以下、特に5時間以内とすることができ、量産上も
きわめて好ましい。
【0051】なお、この熱処理は、磁場中にて行なわれ
てもよい。
【0052】以下、本発明の軟磁性合金の好ましい適用
例である本発明の磁心について説明する。
【0053】本発明の磁心は、通常、チョークコイル用
の巻磁心に適用される。巻磁心は、軟磁性合金の薄帯を
巻回して形成される。
【0054】巻磁心の形状および寸法に特に制限はな
く、形状は、トロイダル状、レーストラック状等の各種
形状から目的に応じて選択すればよく、また、寸法は、
例えば、外径3〜1000mm程度、内径2〜500m
m程度、高さ1〜100mm程度である。
【0055】結晶相を形成するための熱処理は、合金薄
帯巻回後に行なうことが好ましい。この熱処理は合金薄
帯の歪除去を兼ねているので、巻回後に熱処理すれば歪
除去後に新たな歪が発生することがない。熱処理は、基
本的には不活性ガス雰囲気で実施することが好ましい
が、上記のとおり熱処理温度が比較的低いので、空気中
等の酸化性雰囲気にても可能である。
【0056】なお、本発明の軟磁性合金は、巻磁心の
他、積層磁心に適用することもできる。
【0057】本発明の磁心は、商用周波数〜1MHzの
周波数帯域で使用され、このうち直流磁界重畳でマイナ
ーループを画かせるときには、通常、10kHz〜1M
Hzの周波数帯域で使用される。
【0058】また、本発明の磁心は下記のような磁気特
性が得られるので、特に平滑用、ノーマルモード用等の
チョークコイル用磁心に好適である。
【0059】バイアス磁界ゼロでの100kHzにおけ
る実効透磁率(測定磁界10mOe)としては、300
0以下、特に1000以下、さらには500以下の値が
容易に得られる。なお、実効透磁率は、通常、10以
上、特に20以上であることが好ましく、50〜300
が最も好適である。重畳の際のバイアス直流磁界の強度
は、一般に0〜100Oe、通常は0〜30Oeであ
る。
【0060】また、恒透磁率性としては、B−Hループ
の原点の透磁率をμ、25Oeでの透磁率をμ25
したとき、μ25/μは0.7以上、特に0.8以
上、さらには0.85以上、そして0.9以上が得られ
る。
【0061】そして、周波数特性としては、200kH
zの透磁率に対して、200kHzから500kHzお
よび1MHzまでの透磁率は、それぞれ±25%、特に
±15%以内、さらには±10%以内の値を保つ。この
際、このような平坦な周波数特性は、50Hz〜50k
Hzの間でも実現する。
【0062】また、直流磁界重畳時の周波数特性、特に
共振を含んだ周波数特性について言えば、20Oeの直
流バイアス磁界、10mOeの測定磁界としたとき、5
00kHzの実効透磁率をμ500、10kHz〜50
0kHzの共振に基づく最小透磁率をμminとしたと
き、(μ500−μmin)×100/μ500は20
%以下、特に15%以下、さらには10%以下、そして
8%以下にすることができる。
【0063】なお、角形比(Br/Bs)としては、3
0%以下、特に10%以下の値を得ることができる。飽
和磁束密度としては、10〜18kG、特に13〜16
kGの値が得られる。磁歪定数としては、35×10
−6以下、特に20×10−6以下の値が得られる。そ
して共振は前記のとおりきわめて少ない。
【0064】本発明の巻磁心は、径方向にギャップを設
けなくても上記のような低透磁率が得られるが、巻線等
を容易にするために必要に応じてギャップを設けてもよ
い。ギャップ付磁心とする場合、磁心をエポキシ樹脂等
の熱硬化性樹脂に含浸後、熱硬化して被覆を形成し、次
いで切断してU字、C字、I字、L字状等のカットコア
とし、同一の磁心から作られたカットコア同士、あるい
は異なる磁心から作られたカットコア同士を突き合わせ
て、ギャップ付き磁心を形成する。
【0065】また、本発明の巻磁心には、必要に応じて
隣り合う薄板の間に樹脂フィルム等の絶縁層が設けられ
てもよい。
【0066】本発明の巻磁心は、スイッチング電源の出
力平滑用チョークコイルや、ノーマルモードノイズフィ
ルタなどのノイズフィルタ用チョークコイルに好ましく
適用され、また、トランス用磁心にも好適である。トラ
ンス用磁心としては、鉄損が低くて透磁率が1000〜
3000程度であることが要求されるが、本発明の軟磁
性合金はこのような要求を容易に満足することができ
る。
【0067】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例を示し、本発明
をさらに詳細に説明する。
【0068】[実施例1]下記表1に示される組成を有
する合金溶湯を単ロール法により高速急冷し、アモルフ
ァス合金薄帯を作製した。なお、表1に示す組成におい
て、残部はFeである。
【0069】得られた各アモルファス合金薄帯を巻回
し、内径14mm、外径22mm、高さ10mmのトロ
イダル形状の巻回体とした。
【0070】これらの巻回体にNガス雰囲気中にて熱
処理を施し、巻磁心サンプルとした。熱処理条件を表1
に示す。この場合、サンプルNo.1(比較)が米国特
許第4,812,181号のFe−Si−Bアモルファ
ス合金に同明細書記載の熱処理を施したサンプル、サン
プルNo.103(比較)が特開平64−39347号
の組成および熱処理のサンプル、サンプルNo.104
〜107が本発明のサンプル、サンプルNo.102
(比較)が熱処理による結晶化が不足したサンプルであ
る。
【0071】各サンプルについて、20Oeの直流バイ
アス磁界を印加したときの透磁率の周波数特性(直流重
畳特性)を測定し、透磁率の共振の度合いを評価した。
なお、測定磁界は10mOe、測定周波数範囲は10k
Hz〜500kHzとし、透磁率の共振は (μ500=μmin)×100/μ500 [%] により評価した。なお、μ500■は500kHzにおけ
る実効透磁率であり、μminは10kHz〜500k
Hzにおける最小透磁率である。サンプルNo.101
および104それぞれの透磁率の周波数特性を、図1に
示す。
【0072】また、各サンプル合金の飽和磁束密度B
s、また巻磁心の直流バイアス磁界ゼロの100kHz
における実効透磁率μe、直流B−Hループでの原点の
実効透磁率(μと25Oeでの実効透磁率μ25との
比(恒透磁率性)μ25/μ(%)、角形比SQを、
表1、表2に示す。
【0073】また、各サンプル中の結晶相の含有率を、
X線回折を利用した前述の方法により算出した。結果を
表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】なお、図2に、サンプルNo.107の合
金の薄帯中央部のTEM写真、図3に、その拡大TEM
写真を示す。また、図4にはサンプルNo.101の合
金におけるTEM写真を示す。これらから、サンプルN
o.107では、平均粒径50nm以下の微細な結晶が
98%(表1参照)生成していることがわかる。これに
対し、従来の比較サンプルNo.101の合金では、そ
れより粗大な結晶が10%の含有率(表1参照)で偏析
している。
【0076】上記表1、図1〜図4に示される結果か
ら、本発明の効果が明らかである。すなわち、Cuを適
量含有させ、適当な熱処理を施すことにより、図2、図
3に示されるような所定の微細結晶相を含むミクロ構造
をもつ低透磁率の軟磁性合金が得られる。そして、この
ような軟磁性合金を巻回した本発明の巻磁心サンプル
は、高飽和磁束密度であり、かつギャップを設けなくて
もチョークコイル用磁心に必要とされる低い透磁率が得
られており、しかも不飽和領域が広く、高磁界でも電磁
率が低下せず、きわめて良好な恒透磁率性を示し、しか
も透磁率の共振が殆どなく、平坦な周波数特性が得られ
ている。一方、結晶相の含有率や組成が本発明を外れる
サンプルでは、表1および図1に示されるように透磁率
の著しい共振が生じている。
【0077】なお、上記表1に示される各サンプルに、
Mn、VおよびCrから選択される1種以上の元素を
0.01原子%添加した場合でもほぼ同等の特性が得ら
れた。この際、Cr、V、Mnでは0.1原子%以上の
添加も許容できるものであったが、Ti、Zr、Hf、
Nb、Ta、MoおよびWの元素では、添加量が0.1
原子%以上となると、透磁率が増大してしまった。さら
に、本発明のサンプルは熱処理時間も短いことがわか
る。
【0078】[実施例2]原子比組成がFe71Cu
1.5Si1215.5である合金溶湯を単ロール法
により高速急冷し、アモルファス合金薄帯を作製した。
このアモルファス合金薄帯を実施例1と同様に巻回し、
ガス雰囲気中で熱処理を施した。熱処理時間は90
分間とし、熱処理温度を変えて複数の巻磁心サンプルを
作製した。熱処理温度と100kHzにおける実効透磁
率μeとの関係を、図5に示す。なお、比較のために、
原子比組成がFe78Si13の合金を用い、上記
と同様にして熱処理温度とμeとの関係を調べた。結果
をそれぞれ図5中に示す。
【0079】図5に示される結果から、本発明の軟磁性
合金を製造するための好ましい熱処理温度範囲が明らか
である。なお、600℃を超える温度で熱処理した場
合、Fe71Cu1.5Si1215.5合金の保磁
力は、約80Oe程度以上にまで増加した。
【0080】
【発明の効果】本発明の軟磁性合金は、高飽和磁束密度
を有し、また、低透磁率を有し、不飽和領域が広く印加
磁界が高くても透磁率が低下せず、磁界に対し恒透磁率
性を示し、また共振が小さく、透磁率の周波数特性も良
好である。このため、整流平滑回路やノーマルモードノ
イズフィルタのチョークコイル用磁心あるいはトランス
用磁心に適用する場合に、ギャップを設ける必要がな
い。このため、極めて低損失の低透磁率磁心が実現し、
また、高い生産性が得られる。
【0081】また、10kHz〜1MHzの実用周波数
帯域において直流磁界重畳時に透磁率の共振が殆ど生じ
ないので、設計通りの安定した性能が得られる。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0074
【補正方法】変更
【補正内容】
【0074】
【表1】
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図6
【補正方法】削除
【手続補正11】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図6
【補正方法】削除

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Feおよびガラス化元素とCuとを含有
    し、結晶相を含み、100kHz における透磁率が300
    0以下である軟磁性合金。
  2. 【請求項2】 Feおよびガラス化元素とCuとを含有
    し、結晶相を0.1〜100%含む軟磁性合金。
  3. 【請求項3】 100kHz における透磁率が3000以
    下である請求項2の軟磁性合金。
  4. 【請求項4】 下記式で表わされる原子比組成を有する
    請求項1〜3のいずれかの軟磁性合金。 [式] Fe100-x-y-z Cux Siyz (ただし、上記式において、 0.01≦x≦3、 0≦y≦20、 6≦z≦22および 18≦y+z≦30 である。)
  5. 【請求項5】 14≦z≦20および18≦y+z≦2
    9である請求項4の軟磁性合金。
  6. 【請求項6】 y+z≦28である請求項5の軟磁性合
    金。
  7. 【請求項7】 y+z≧22.5である請求項5または
    6の軟磁性合金。
  8. 【請求項8】 B−Hループの原点での透磁率をμ0
    25Oeでの透磁率をμ25としたとき、μ25/μ0 ≧0.
    7である請求項1ないし7のいずれかの記載の軟磁性合
    金。
  9. 【請求項9】 磁歪定数が15×10-6 以下である請
    求項1〜8のいずれかの軟磁性合金。
  10. 【請求項10】 100kHz における透磁率が1000
    以下である請求項1〜9のいずれかの軟磁性合金。
  11. 【請求項11】 前記結晶相の平均結晶粒径がが100
    0nm以下である請求項1〜10のいずれかの軟磁性合
    金。
  12. 【請求項12】 合金溶湯を高速急冷した後、300〜
    520℃の温度で熱処理し、請求項1〜11のいずれか
    の軟磁性合金を得る軟磁性合金の製造方法。
  13. 【請求項13】 請求項1ないし11のいずれかの軟磁
    性合金または請求項12の製造方法によって得られた軟
    磁性合金を巻回または積層した磁心。
  14. 【請求項14】 径方向にギャップを有しない請求項1
    3の磁心。
  15. 【請求項15】 チョークコイルまたはトランスに用い
    られる請求項13または14の磁心。
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