JP2667402B2 - Fe基軟磁性合金 - Google Patents
Fe基軟磁性合金Info
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Description
【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は、優れた磁気特性を有し、磁気特性の安定性
に優れたFe基軟磁性合金、特に組織の大半が超微細な結
晶粒からなるFe基軟磁性合金に関する。 〔従来の技術〕 従来、高周波トランス、磁気ヘッド、可飽和リアクト
ル、チョークコイル等の磁心材料として、うず電流損が
少ない等の利点を有するフェライトが主に用いられてい
た。しかしフェライトは飽和磁束密度が低く、温度特性
も悪いため、高周波トランスやチョークコイルに用いる
場合磁心を小形化することが困難であるという欠点があ
った。 近年、従来の磁心材料に対抗するものとして高い飽和
磁束密度を有する非晶質磁性合金が有望視されており、
種々の組成のものが開発されている。非晶質合金は主と
してFe系とCo系に大別され、Fe系の非晶質合金は材料コ
ストがCo系に比べ安くつくという利点がある反面一般的
に高周波においてCo系非晶質合金よりコア損失が大き
く、透磁率も低いという問題がある。これに対しCo系の
非晶質合金は高周波のコア損失が小さく、透磁率も高い
がコア損失や透磁率の経時変化が大きい。さらに高価な
Coを主原料とするため価格的な不利は免れない。 このような状況下でFe基非晶質磁性合金について種々
の提案がなされた。 特公昭60−17019号は、74〜84原子%のFeと、8〜24
原料%のBと、16原子%以下のSi及び3原子%以下のC
の内の少なくとも1つ、とからなる組成を有し、その構
造の少なくとも85%が非晶質金属素地の形を有し、かつ
非晶質金属素地の全体にわたって不連続に分布された合
金成分の結晶質粒子群の析出物を有しており、結晶質粒
子群は0.05〜1μmの平均粒度及び1〜10μmの平均粒
子間距離を有しており、粒子群は全体の0.01〜0.3の平
均容積分率を占めていることを特徴とする鉄基含硼素磁
性非晶質合金を開示している。この合金の結晶質粒子群
は磁壁のピンニング点として作用する不連続な分布のα
−(Fe,Si)粒子群であるとされている。 また特開昭60−52557号はFeaCubBcSid(ただし75≦a
≦85、0<b≦1.5、10≦c≦20、d≦10かつc+d≦3
0)からなる低損失非晶質磁性合金を開示している。こ
の非晶質磁性合金は結晶化温度以下でかつキュリー温度
以上で熱処理される。 〔発明が解決しようとする問題点〕 特公昭60−17019号のFe基軟磁性合金は不連続な結晶
粒子群の存在によりコア損失が減少しているが、これで
もコア損失は依然大きく、透磁率もCo基非晶質合金並の
特性は得られず、高周波トランスやチョークの磁心用材
料としては満足でない。 一方、特開昭60−52557号のFe基非晶質合金はCuを含
有しているためにコア損失が著しく低下しているが、上
記結晶質粒子含有Fe基非晶質合金と同様に満足ではな
い。さらにコア損失の経時変化、透磁率等に関しても十
分ではないという問題がある。また、磁歪が大きく磁気
特性のばらつきも大きく、キュリー温度がFe−Si−Al合
金やFe−Si合金より低く磁気特性の安定性も劣る。 従って、本発明の目的はコア損失、コア損失の経時変
化、透磁率その他の磁気特性の安定性に優れた新規なFe
基軟磁性合金を提供することである。 〔問題点を解決するための手段〕 上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者等はFeと非
晶質形成元素を基本成分とする合金にCuと、Nb,W,Ta,Z
r,Hf,To,Moから選ばれる少なくとも一種の元素とを複合
添加することにより、非晶質合金の適当な熱処理によ
り、組織の大半が微細結晶粒からなるとともに優れた磁
気特性を有するFe基軟磁性合金が得られることを発見
し、更に検討を進めた結果Li,Mg,Ca,Sr,Ba,Ag,Cd,Pb,B
i,N,O,S,Se,Te等から選ばれる少なくとも1種の元素を
添加することにより、磁気特性の安定性が向上すること
を見出し本発明に想到した。 すなわち本発明は、Cuを0.1〜3原子%、M′を0.1〜
30原子%(M′はNb,W,Ta,Zr,Hf,TiおよびMoからなる群
から選ばれた少なくとも1種の元素)、Yを2原子%以
下(YはLi,Mg,Ca,Sr,Ba,Ag,Cd,Pb,Bi,N,O,S,SeおよびT
eからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素)、B 2
〜25原子% Si 30原子%以下 X 20原子%以下(Xは
C,Ge,P,Ga,Sb,In,BeおよびAsからなる群から選ばれた少
なくとも1種の元素)の1種または2種以上(2種以上
の場合合計で14〜35原子%)、残部Feからなる組成を有
し、組織の少なくとも50%が微細な結晶粒からなり、前
記結晶粒の最大寸法で測定した粒径の平均が1000Å以下
の平均粒径を有するFe基軟磁性合金である。 また本発明は、Cuを0.1〜3原子%、M′を0.1〜30原
子%(M′はNb,W,Ta,Zr,Hf,TiおよびMoからなる群から
選ばれた少なくとも1種の元素)、Yを2原子%以下
(YはLi,Mg,Ca,Sr,Ba,Ag,Cd,Pb,Bi,N,O,S,SeおよびTe
からなる群から選ばれた少なくとも1種の元素)、B 2
〜25原子% Si 30原子%以下 X 20原子%以下(Xは
C,Ge,P,Ga,Sb,In,BeおよびAsからなる群から選ばれた少
なくとも1種の元素)の1種または2種以上(2種以上
の場合合計で14〜35原子%)、残部FeおよびFeの50原子
%未満をM(MはCoおよび/またはNi)で置換した組成
を有し、組織の少なくとも50%が微細な結晶粒からな
り、前記結晶粒の最大寸法で測定した粒径の平均が1000
Å以下の平均粒径を有するFe基軟磁性合金である。 さらに本発明は、Cuを0.1〜3原子%、M′を0.1〜30
原子%(M′はNb,W,Ta,Zr,Hf,TiおよびMoからなる群か
ら選ばれた少なくとも1種の元素)、Yを2原子%以下
(YはLi,Mg,Ca,Sr,Ba,Ag,Cd,Pb,Bi,N,O,S,SeおよびTe
からなる群から選ばれた少なくとも1種の元素)、B 2
〜25原子% Si 30原子%以下 X 20原子%以下(Xは
C,Ge,P,Ga,Sb,In,BeおよびAsからなる群から選ばれた少
なくとも1種の元素)の1種または2種以上(2種以上
の場合合計で14〜35原子%)、M″を10原子%以下
(M″はV,Cr,Mn,Al,白金属元素,Sc,Y,希土類元素,Au,Z
n,SnおよびReからなる群から選ばれた少なくとも1種の
元素)、残部Feからなる組成を有し、組織の少なくとも
50%が微細な結晶粒からなり、前記結晶粒の最大寸法で
測定した粒径の平均が1000Å以下の平均粒径を有するFe
基軟磁性合金である。 またさらに本発明は、Cuを0.1〜3原子%、M′を0.1
〜30原子%(M′はNb,W,Ta,Zr,Hf,TiおよびMoからなる
群から選ばれた少なくとも1種の元素)、Yを2原子%
以下(YはLi,Mg,Ca,Sr,Ba,Ag,Cd,Pb,Bi,N,O,S,Seおよ
びTeからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素)、
B 2〜25原子%、Si 30原子%以下 X 20原子%以下(X
はC,Ge,P,Ga,Sb,In,BeおよびAsからなる群から選ばれた
少なくとも1種の元素)の1種または2種以上(2種以
上の場合合計で14〜35原子%)、M″を10原子%以下
(M″はV,Cr,Mn,Al,白金属元素,Sc,Y,希土類元素,Au,Z
n,SnおよびReからなる群から選ばれた少なくとも1種の
元素)、残部FeおよびFeの50原子%未満をM(MはCoお
よび/またはNi)で置換した組成を有し、組織の少なく
とも50%が微細な結晶粒からなり、前記結晶粒の最大寸
法で測定した粒径の平均が1000Å以下の平均粒径を有す
るFe基軟磁性合金である。 本発明において、Cuは必須元素であり、その含有量は
0.1〜3原子%の範囲である。0.1原子%より少ないとCu
添加によるコア損失低下、透磁率上昇の効果がほとんど
なく、一方3原子%より多いとコア損失が未添加のもの
よりかえって大きくなることがあり透磁率も劣化する。
また本発明において特に好ましいCuの含有量は0.5〜2
原子%であり、この範囲ではコア損失が特に小さく、透
磁率も高いものが得られる。 本発明の鉄基軟磁性合金は、前記組成の非晶質合金を
溶湯から急冷することにより得る工程、あるいはスパッ
ター法、蒸着法等の気相急冷法による得る工程と、これ
を加熱し微細な結晶粒を形成する熱処理工程に依って通
常得ることができる。 Cuによるコア損失低下、透磁率上昇作用の原因は明ら
かではないが次のように考えられる。 CuとFeの相互作用パラメータは正であり、固溶度が低
くく分離する傾向があるため非晶質状態の合金を加熱す
るとFe原子同志またはCu原子またはCu原子同志が寄り集
まり、クラスターを形成し組成ゆらぎが生じる。このた
め部分的に結晶化しやすい領域が多数でき、そこを核と
した微細な結晶粒が生成される。この結晶はFeを主成分
とするものであり、FeとCuの固溶度はほとんどないため
結晶化によりCuは微細結晶粒の周囲にはき出され、結晶
粒周辺のCu濃度が高くなる。このため結晶粒は成長しに
くいと考えられる。 Cu添加により結晶核が多数できることと、結晶粒が成
長しにくいため結晶粒微細化が起こると考えられるが、
この作用はNb,Ta,W,Mo,Zr,Hf,Ti等の存在により特に著
しく強められると考えられる。 Nb,Ta,W,Mo,Zr,Hf,Ti等が存在しない場合は結晶粒は
あまり微細化されず軟磁気特性も悪い。 また本発明はFeを主成分とする微細結晶相が生ずるた
めFe基非晶質合金に比べ磁歪が小さくなっており、磁歪
が小さくなることにより、内部応力−歪による磁気異方
性が小さくなることも軟磁気特性が改善される理由の1
つと考えられる。 Guを添加しない場合は結晶粒は微細化されにくく、化
合物相が形成しやすいため結晶化により磁気特性は劣化
する。 Si,B及びXは合金の微細化および磁歪調整に有用な元
素である。本発明の合金は、好ましくは、一旦Si,B等の
添加効果により非晶質合金とした後で、熱処理により微
細結晶粒を形成することにより得られる。Si含有量を30
原子%以下とする理由は、Si含有量が30原子%を超える
と軟磁気特性が劣化し好ましくないためである。Bの含
有量の限定理由は、B含有量が2原子%未満では均一な
結晶粒組織が得にくく軟磁気特性が劣化し好ましくな
く、25原子%を超えると磁気特性の良好な熱処理条件で
は磁歪が大きくなってしまい好ましくないためである。
またXの含有量は20原子%以下が望ましい。これは、20
原子%を超えると軟磁気特性が著しく劣化するためであ
るが、より好ましくは10原子%以下である。Si,BとXの
うち2種以上を含有する場合はその総和量が14原子%未
満では非晶質化が困難になり磁気特性が劣化し好ましく
なく、一方35原子%を超えると飽和磁束密度の著しい低
下および軟磁気特性の劣化があり好ましくないので、S
i,BとXのうち2種以上を含有する場合のその総和量は1
4〜35原子%とする。より好ましいSi含有量は10〜25原
子%、B含有量は3〜12原子%、Si,BとXのうち2種以
上を含有する場合のより好ましいその総和量は18〜28原
子%であり、この範囲では−5×10-6〜+5×10-6の範
囲の飽和磁歪で軟磁気特性に優れた合金が得られやす
い。 特に好ましいSi含有量は11〜24原子%、B含有量は3
〜9原子%、Si,BとXのうち2種以上を含有する場合の
特に好ましいその総和量は18〜27原子%であり、この範
囲では−1.5×10-6〜+1.5×10-6の範囲の飽和磁歪の合
金が得られやすい。 本発明において、M′はCuとの複合添加により析出す
る結晶粒を微細化する作用を有するものであり、Nb,W,T
a,Zr,Hf,TiおよびMoからなる群から選ばれた少なくとも
1種の元素である。Nb等は合金の結晶化温度を上昇させ
る作用を有するが、クラスターを形成し結晶化温度を低
下させる作用を有するCuとの相互作用により結晶粒の成
長を抑え、析出する結晶粒が微細化するものと考えられ
る。M′の含有量は0.1〜30原子%の範囲が望ましい。
M′の含有量が0.1原子%未満では軟磁気特性が十分で
はなく、30原子%を超えると飽和磁束密度の著しい低下
を招くためである。好ましいM′の含有量の範囲は2〜
8原子%であり、この範囲で特に優れた軟磁気特性が得
られる。 M″は耐食性の改善、磁気特性の改善、又は磁歪調整
効果が得られる。M″が10原子%を越えると飽和磁束密
度低下が著しく好ましくない。 Yは磁気特性の安定性を増す効果を有するものである
が、2原子%を越えると軟磁気特性が劣化し好ましくな
い。 より好ましいYの添加量は0.5原子%以下である。 残部は不純物を除いて実質的にFeが主体であるが、Fe
の一部は成分M(Coおよび/またはNi)により置換され
てもよい。Mの置換量はFeの50原子%未満であるが、好
ましくは30原子%以下である。Mの置換量が30原子%を
超えると、コア損失が増加する場合があるためである。
より好ましくは、10原子%以下である。 本発明合金はbcc構造の鉄固溶体を主体とする合金で
あるが、非晶質相やFe2B,Fe3B,Nb等の遷移金属の化合物
Fe3Si規則相等を含む場合もある。これらの相は磁気特
性を劣化させる場合がある。特にFe2B等の化合物相は軟
磁気特性を劣化させやすい。したがってこれらの相はで
きるだけ存在しない方が望ましい。 本発明合金は1000Å以下の粒径の超微細な均一に分布
した結晶粒からなるが、特に優れた軟磁性を示す合金の
場合はその粒径が500Å以下であり、より好ましくは20
〜200Åの平均粒径を有する場合が多い。 この結晶粒はα−Fe固溶体を主体とするものでSiやB
等が固溶していると考えられる。合金組織のうち微細結
晶粒の周囲の部分は主に非晶質である。なお微細結晶粒
の割合が実質的に100%になっても本発明に係るFe基軟
磁性合金は十分に優れた磁気特性を示す。 本発明の鉄基軟磁性合金は、単ロール法、双ロール
法、遠心急冷法等により非晶質薄帯を作製後熱処理を行
ない微細な結晶粒を形成する方法、蒸着法、スパッター
法やイオンプレーティング等により非晶質膜を作製後熱
処理し結晶化させる方法、アトマイズ法やキャビテーシ
ョン法により非晶質粉を得た後熱処理し結晶化させる方
法や回転液中紡糸法やガラス被覆紡糸法により、非晶質
線を得た後熱処理し結晶化させる方法等いろろな方法で
作製することができる。したがって、本発明合金は粉
末、線、薄帯、膜などいろいろな形状のものができ、圧
接等を行なえばバルク体も得ることができる。 本合金を得る際行われる熱処理は内部歪を小さくする
ことと、微細結晶粒組織とし軟磁気特性を向上させると
ともに磁歪を小さくする目的で行われる。 熱処理は通常真空中または水素ガス、窒素ガス、アル
ゴンガス等の不活性ガス雰囲気中において行なわれる。
しかし場合によっては大気中で行っても良い。 熱処理温度及び時間は非晶質合金リボンからなる磁心
の形状、サイズ、組成により異なるが一般的に450℃〜7
00℃で5分から24時間程度が望ましい。 熱処理の際の昇温や冷却の条件は状況に応じて任意に
変えることができる。また同一温度または異なる温度で
複数回にわけ熱処理を行ったり、多段の熱処理パターン
で熱処理を行なうこともできる。更には、本合金は熱処
理を直流あるいは交流の磁場中で行なうこともできる。
磁場中熱処理により本合金に磁気異方性を生じさせるこ
とができる。本合金からなる磁心の磁路方向に磁場を印
加し熱処理した場合は、B−Hカーブの角形性が良いも
のが得られ、可飽和リアクトル、磁気スイッチ、パルス
圧縮用コア、スパイク電圧防止用リアクトル等に好適な
特性が得られ、一方磁路と直角方向に磁場を印加し熱処
理した場合は、B−Hカーブが傾斜し、低角形比で恒透
磁率性に優れた特性が得られ、トランスやノイズフィル
ター、チョークコイル等に好適となる。 磁場は熱処理の間中かける必要はなく、合金のキュリ
ー温度Tcより低い温度でればどの時期でも良い。本発明
合金のキュリー温度は非晶質の場合より主相のキュリー
温度が上昇しており、非晶質合金のキュリー温度より高
い温度でも磁場中熱処理が適用できる。また回転磁場中
熱処理を行ない軟磁気特性を更に改善することもでき
る。また、熱処理の際合金に電流を流したり、高周波磁
界を印加し合金を発熱させることにより合金を熱処理す
ることもできる。 また応力下で熱処理し磁気特性を調整することもでき
る。特に本発明の合金は低磁歪の特徴を有するため、合
金表面に絶縁層を形成したり、含浸やコーティングを行
っても磁気特性の劣化が小さい特徴があり、優れた特性
のモールドコアやカットコア、コーティングコア、磁気
ヘッド等を作製できる。 〔実施例〕 本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明する
が、本発明はこれらに限定されるものではない。 実施例1 原子%でCu1%,Si16.5%,B6%,Nb3%,Ca0.1%及び残
部実質的にFeからなる組成の溶湯から、単ロール法によ
り幅5mm、厚さ18μmのリボンを作製した。このリボン
のX線回折を行ったところ非晶質合金に典型的なハロー
パターンが得られた。得られた結果を第1表に示す。こ
の非晶質合金の結晶化温度は(示差熱量計)DSCにより1
0℃/minの昇温速度で測定したところ52℃であった。 次にこの合金リボンを用い外径19mm、内径15mmの巻磁
心を形成し、窒素ガス雰囲気中550℃で1時間熱処理を
行った。 熱処理後の合金のX線回折パターンを第2図(a)、
組織の模式図を第2図(b)に示す。 熱処理後の組織の大部分が微細なbcc Fe固溶体からな
ることがわかった。結晶粒径は約100Åである。 CuとNbを複合、添加した本発明の合金の結晶粒の形は
球状に近く、平均粒径は約100Åと著しく微細化されて
いる。Cuを添加しない場合は結晶粒は大きくなり、微細
化されにくく軟磁気特性も悪い。 次に熱処理を行った巻磁心をベーク製のコアケースに
入れ、磁気特性を測定した。 その結果、Bs=12kG、Br/Bs=61%、Hc=0.0140e 1kH
zにおける実効透磁率μe1k=68000、周波数100kHz、Bm
2kGにおけるコア損失W2/100k=260kW/m3の特性が得られ
た。BsはCo基アモルファス磁心より高く、実効透磁率μ
e1k、コア損失W2/100KはCo基アモルファス磁心に匹敵
する優れた値を示す。 またこの合金の飽和磁歪λsは+1.3×10-6、キュリ
ー温度Tcは560℃であった。 次にこの合金の100kHzにおける実効透磁率μe1kの温
度変化を測定し、25℃における値μ25と100℃における
値μ100の比μ100/μ25を求めた。 比較のためCaを添加しないFe73.5Cu1Si16.5B6Nb3合金
の値も求めた。得られた結果を第1表に示す。 Caを添加した方がμ100/μ25が1に近く温度特性が優
れている。 実施例2 第2表に示す組成の厚さ20μm、幅5mmの非晶質合金
を単ロール法により作製した。 次にこの合金を外径19mm、内径15mmに巻回し、結晶化
温度以上の温度で無磁場中熱処理を行った。 熱処理後の合金の組織は実施例1とほぼ同様であっ
た。 次にこの磁心の100kHzにおける実効透磁率μe100Kの
温度依存性を測定し、25℃における値μ25と100℃にお
ける値μ100の比μ100/μ25を求めた。得られた結果を
第2表に示す。 第2表からもわかるように本発明合金のμ100/μ25は
1に近く温度特性が改善されており、磁気特性の安定性
に優れている。 実施例3 第3表に示す組成の厚さ18μm、幅10mmの非晶質合金
を単ロール法により作製した。 次に、この合金を外径19mm、内径15mmに巻回し、結晶
化温度で無磁場中熱処理を行った。熱処理後の合金の組
織は実施例1とほぼ同様であった。 次にこの磁心の100kHzにおける実効透磁率μe100Kの
温度依存性を測定し、25℃における実効透磁率μ25と10
0℃における実効透磁率μ100の比μ100/μ25を求めた。
得られた結果を第3表に示す。 本発明合金はμ100/μ25が1に近く実効透磁率の温度
係数が小さく、磁気特性の安定性に優れている。 〔発明の効果〕 本発明によれば、超微細結晶粒組織からなるFe基軟磁
性合金の磁気特性の安定性を改善できるためその効果は
著しい。
に優れたFe基軟磁性合金、特に組織の大半が超微細な結
晶粒からなるFe基軟磁性合金に関する。 〔従来の技術〕 従来、高周波トランス、磁気ヘッド、可飽和リアクト
ル、チョークコイル等の磁心材料として、うず電流損が
少ない等の利点を有するフェライトが主に用いられてい
た。しかしフェライトは飽和磁束密度が低く、温度特性
も悪いため、高周波トランスやチョークコイルに用いる
場合磁心を小形化することが困難であるという欠点があ
った。 近年、従来の磁心材料に対抗するものとして高い飽和
磁束密度を有する非晶質磁性合金が有望視されており、
種々の組成のものが開発されている。非晶質合金は主と
してFe系とCo系に大別され、Fe系の非晶質合金は材料コ
ストがCo系に比べ安くつくという利点がある反面一般的
に高周波においてCo系非晶質合金よりコア損失が大き
く、透磁率も低いという問題がある。これに対しCo系の
非晶質合金は高周波のコア損失が小さく、透磁率も高い
がコア損失や透磁率の経時変化が大きい。さらに高価な
Coを主原料とするため価格的な不利は免れない。 このような状況下でFe基非晶質磁性合金について種々
の提案がなされた。 特公昭60−17019号は、74〜84原子%のFeと、8〜24
原料%のBと、16原子%以下のSi及び3原子%以下のC
の内の少なくとも1つ、とからなる組成を有し、その構
造の少なくとも85%が非晶質金属素地の形を有し、かつ
非晶質金属素地の全体にわたって不連続に分布された合
金成分の結晶質粒子群の析出物を有しており、結晶質粒
子群は0.05〜1μmの平均粒度及び1〜10μmの平均粒
子間距離を有しており、粒子群は全体の0.01〜0.3の平
均容積分率を占めていることを特徴とする鉄基含硼素磁
性非晶質合金を開示している。この合金の結晶質粒子群
は磁壁のピンニング点として作用する不連続な分布のα
−(Fe,Si)粒子群であるとされている。 また特開昭60−52557号はFeaCubBcSid(ただし75≦a
≦85、0<b≦1.5、10≦c≦20、d≦10かつc+d≦3
0)からなる低損失非晶質磁性合金を開示している。こ
の非晶質磁性合金は結晶化温度以下でかつキュリー温度
以上で熱処理される。 〔発明が解決しようとする問題点〕 特公昭60−17019号のFe基軟磁性合金は不連続な結晶
粒子群の存在によりコア損失が減少しているが、これで
もコア損失は依然大きく、透磁率もCo基非晶質合金並の
特性は得られず、高周波トランスやチョークの磁心用材
料としては満足でない。 一方、特開昭60−52557号のFe基非晶質合金はCuを含
有しているためにコア損失が著しく低下しているが、上
記結晶質粒子含有Fe基非晶質合金と同様に満足ではな
い。さらにコア損失の経時変化、透磁率等に関しても十
分ではないという問題がある。また、磁歪が大きく磁気
特性のばらつきも大きく、キュリー温度がFe−Si−Al合
金やFe−Si合金より低く磁気特性の安定性も劣る。 従って、本発明の目的はコア損失、コア損失の経時変
化、透磁率その他の磁気特性の安定性に優れた新規なFe
基軟磁性合金を提供することである。 〔問題点を解決するための手段〕 上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者等はFeと非
晶質形成元素を基本成分とする合金にCuと、Nb,W,Ta,Z
r,Hf,To,Moから選ばれる少なくとも一種の元素とを複合
添加することにより、非晶質合金の適当な熱処理によ
り、組織の大半が微細結晶粒からなるとともに優れた磁
気特性を有するFe基軟磁性合金が得られることを発見
し、更に検討を進めた結果Li,Mg,Ca,Sr,Ba,Ag,Cd,Pb,B
i,N,O,S,Se,Te等から選ばれる少なくとも1種の元素を
添加することにより、磁気特性の安定性が向上すること
を見出し本発明に想到した。 すなわち本発明は、Cuを0.1〜3原子%、M′を0.1〜
30原子%(M′はNb,W,Ta,Zr,Hf,TiおよびMoからなる群
から選ばれた少なくとも1種の元素)、Yを2原子%以
下(YはLi,Mg,Ca,Sr,Ba,Ag,Cd,Pb,Bi,N,O,S,SeおよびT
eからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素)、B 2
〜25原子% Si 30原子%以下 X 20原子%以下(Xは
C,Ge,P,Ga,Sb,In,BeおよびAsからなる群から選ばれた少
なくとも1種の元素)の1種または2種以上(2種以上
の場合合計で14〜35原子%)、残部Feからなる組成を有
し、組織の少なくとも50%が微細な結晶粒からなり、前
記結晶粒の最大寸法で測定した粒径の平均が1000Å以下
の平均粒径を有するFe基軟磁性合金である。 また本発明は、Cuを0.1〜3原子%、M′を0.1〜30原
子%(M′はNb,W,Ta,Zr,Hf,TiおよびMoからなる群から
選ばれた少なくとも1種の元素)、Yを2原子%以下
(YはLi,Mg,Ca,Sr,Ba,Ag,Cd,Pb,Bi,N,O,S,SeおよびTe
からなる群から選ばれた少なくとも1種の元素)、B 2
〜25原子% Si 30原子%以下 X 20原子%以下(Xは
C,Ge,P,Ga,Sb,In,BeおよびAsからなる群から選ばれた少
なくとも1種の元素)の1種または2種以上(2種以上
の場合合計で14〜35原子%)、残部FeおよびFeの50原子
%未満をM(MはCoおよび/またはNi)で置換した組成
を有し、組織の少なくとも50%が微細な結晶粒からな
り、前記結晶粒の最大寸法で測定した粒径の平均が1000
Å以下の平均粒径を有するFe基軟磁性合金である。 さらに本発明は、Cuを0.1〜3原子%、M′を0.1〜30
原子%(M′はNb,W,Ta,Zr,Hf,TiおよびMoからなる群か
ら選ばれた少なくとも1種の元素)、Yを2原子%以下
(YはLi,Mg,Ca,Sr,Ba,Ag,Cd,Pb,Bi,N,O,S,SeおよびTe
からなる群から選ばれた少なくとも1種の元素)、B 2
〜25原子% Si 30原子%以下 X 20原子%以下(Xは
C,Ge,P,Ga,Sb,In,BeおよびAsからなる群から選ばれた少
なくとも1種の元素)の1種または2種以上(2種以上
の場合合計で14〜35原子%)、M″を10原子%以下
(M″はV,Cr,Mn,Al,白金属元素,Sc,Y,希土類元素,Au,Z
n,SnおよびReからなる群から選ばれた少なくとも1種の
元素)、残部Feからなる組成を有し、組織の少なくとも
50%が微細な結晶粒からなり、前記結晶粒の最大寸法で
測定した粒径の平均が1000Å以下の平均粒径を有するFe
基軟磁性合金である。 またさらに本発明は、Cuを0.1〜3原子%、M′を0.1
〜30原子%(M′はNb,W,Ta,Zr,Hf,TiおよびMoからなる
群から選ばれた少なくとも1種の元素)、Yを2原子%
以下(YはLi,Mg,Ca,Sr,Ba,Ag,Cd,Pb,Bi,N,O,S,Seおよ
びTeからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素)、
B 2〜25原子%、Si 30原子%以下 X 20原子%以下(X
はC,Ge,P,Ga,Sb,In,BeおよびAsからなる群から選ばれた
少なくとも1種の元素)の1種または2種以上(2種以
上の場合合計で14〜35原子%)、M″を10原子%以下
(M″はV,Cr,Mn,Al,白金属元素,Sc,Y,希土類元素,Au,Z
n,SnおよびReからなる群から選ばれた少なくとも1種の
元素)、残部FeおよびFeの50原子%未満をM(MはCoお
よび/またはNi)で置換した組成を有し、組織の少なく
とも50%が微細な結晶粒からなり、前記結晶粒の最大寸
法で測定した粒径の平均が1000Å以下の平均粒径を有す
るFe基軟磁性合金である。 本発明において、Cuは必須元素であり、その含有量は
0.1〜3原子%の範囲である。0.1原子%より少ないとCu
添加によるコア損失低下、透磁率上昇の効果がほとんど
なく、一方3原子%より多いとコア損失が未添加のもの
よりかえって大きくなることがあり透磁率も劣化する。
また本発明において特に好ましいCuの含有量は0.5〜2
原子%であり、この範囲ではコア損失が特に小さく、透
磁率も高いものが得られる。 本発明の鉄基軟磁性合金は、前記組成の非晶質合金を
溶湯から急冷することにより得る工程、あるいはスパッ
ター法、蒸着法等の気相急冷法による得る工程と、これ
を加熱し微細な結晶粒を形成する熱処理工程に依って通
常得ることができる。 Cuによるコア損失低下、透磁率上昇作用の原因は明ら
かではないが次のように考えられる。 CuとFeの相互作用パラメータは正であり、固溶度が低
くく分離する傾向があるため非晶質状態の合金を加熱す
るとFe原子同志またはCu原子またはCu原子同志が寄り集
まり、クラスターを形成し組成ゆらぎが生じる。このた
め部分的に結晶化しやすい領域が多数でき、そこを核と
した微細な結晶粒が生成される。この結晶はFeを主成分
とするものであり、FeとCuの固溶度はほとんどないため
結晶化によりCuは微細結晶粒の周囲にはき出され、結晶
粒周辺のCu濃度が高くなる。このため結晶粒は成長しに
くいと考えられる。 Cu添加により結晶核が多数できることと、結晶粒が成
長しにくいため結晶粒微細化が起こると考えられるが、
この作用はNb,Ta,W,Mo,Zr,Hf,Ti等の存在により特に著
しく強められると考えられる。 Nb,Ta,W,Mo,Zr,Hf,Ti等が存在しない場合は結晶粒は
あまり微細化されず軟磁気特性も悪い。 また本発明はFeを主成分とする微細結晶相が生ずるた
めFe基非晶質合金に比べ磁歪が小さくなっており、磁歪
が小さくなることにより、内部応力−歪による磁気異方
性が小さくなることも軟磁気特性が改善される理由の1
つと考えられる。 Guを添加しない場合は結晶粒は微細化されにくく、化
合物相が形成しやすいため結晶化により磁気特性は劣化
する。 Si,B及びXは合金の微細化および磁歪調整に有用な元
素である。本発明の合金は、好ましくは、一旦Si,B等の
添加効果により非晶質合金とした後で、熱処理により微
細結晶粒を形成することにより得られる。Si含有量を30
原子%以下とする理由は、Si含有量が30原子%を超える
と軟磁気特性が劣化し好ましくないためである。Bの含
有量の限定理由は、B含有量が2原子%未満では均一な
結晶粒組織が得にくく軟磁気特性が劣化し好ましくな
く、25原子%を超えると磁気特性の良好な熱処理条件で
は磁歪が大きくなってしまい好ましくないためである。
またXの含有量は20原子%以下が望ましい。これは、20
原子%を超えると軟磁気特性が著しく劣化するためであ
るが、より好ましくは10原子%以下である。Si,BとXの
うち2種以上を含有する場合はその総和量が14原子%未
満では非晶質化が困難になり磁気特性が劣化し好ましく
なく、一方35原子%を超えると飽和磁束密度の著しい低
下および軟磁気特性の劣化があり好ましくないので、S
i,BとXのうち2種以上を含有する場合のその総和量は1
4〜35原子%とする。より好ましいSi含有量は10〜25原
子%、B含有量は3〜12原子%、Si,BとXのうち2種以
上を含有する場合のより好ましいその総和量は18〜28原
子%であり、この範囲では−5×10-6〜+5×10-6の範
囲の飽和磁歪で軟磁気特性に優れた合金が得られやす
い。 特に好ましいSi含有量は11〜24原子%、B含有量は3
〜9原子%、Si,BとXのうち2種以上を含有する場合の
特に好ましいその総和量は18〜27原子%であり、この範
囲では−1.5×10-6〜+1.5×10-6の範囲の飽和磁歪の合
金が得られやすい。 本発明において、M′はCuとの複合添加により析出す
る結晶粒を微細化する作用を有するものであり、Nb,W,T
a,Zr,Hf,TiおよびMoからなる群から選ばれた少なくとも
1種の元素である。Nb等は合金の結晶化温度を上昇させ
る作用を有するが、クラスターを形成し結晶化温度を低
下させる作用を有するCuとの相互作用により結晶粒の成
長を抑え、析出する結晶粒が微細化するものと考えられ
る。M′の含有量は0.1〜30原子%の範囲が望ましい。
M′の含有量が0.1原子%未満では軟磁気特性が十分で
はなく、30原子%を超えると飽和磁束密度の著しい低下
を招くためである。好ましいM′の含有量の範囲は2〜
8原子%であり、この範囲で特に優れた軟磁気特性が得
られる。 M″は耐食性の改善、磁気特性の改善、又は磁歪調整
効果が得られる。M″が10原子%を越えると飽和磁束密
度低下が著しく好ましくない。 Yは磁気特性の安定性を増す効果を有するものである
が、2原子%を越えると軟磁気特性が劣化し好ましくな
い。 より好ましいYの添加量は0.5原子%以下である。 残部は不純物を除いて実質的にFeが主体であるが、Fe
の一部は成分M(Coおよび/またはNi)により置換され
てもよい。Mの置換量はFeの50原子%未満であるが、好
ましくは30原子%以下である。Mの置換量が30原子%を
超えると、コア損失が増加する場合があるためである。
より好ましくは、10原子%以下である。 本発明合金はbcc構造の鉄固溶体を主体とする合金で
あるが、非晶質相やFe2B,Fe3B,Nb等の遷移金属の化合物
Fe3Si規則相等を含む場合もある。これらの相は磁気特
性を劣化させる場合がある。特にFe2B等の化合物相は軟
磁気特性を劣化させやすい。したがってこれらの相はで
きるだけ存在しない方が望ましい。 本発明合金は1000Å以下の粒径の超微細な均一に分布
した結晶粒からなるが、特に優れた軟磁性を示す合金の
場合はその粒径が500Å以下であり、より好ましくは20
〜200Åの平均粒径を有する場合が多い。 この結晶粒はα−Fe固溶体を主体とするものでSiやB
等が固溶していると考えられる。合金組織のうち微細結
晶粒の周囲の部分は主に非晶質である。なお微細結晶粒
の割合が実質的に100%になっても本発明に係るFe基軟
磁性合金は十分に優れた磁気特性を示す。 本発明の鉄基軟磁性合金は、単ロール法、双ロール
法、遠心急冷法等により非晶質薄帯を作製後熱処理を行
ない微細な結晶粒を形成する方法、蒸着法、スパッター
法やイオンプレーティング等により非晶質膜を作製後熱
処理し結晶化させる方法、アトマイズ法やキャビテーシ
ョン法により非晶質粉を得た後熱処理し結晶化させる方
法や回転液中紡糸法やガラス被覆紡糸法により、非晶質
線を得た後熱処理し結晶化させる方法等いろろな方法で
作製することができる。したがって、本発明合金は粉
末、線、薄帯、膜などいろいろな形状のものができ、圧
接等を行なえばバルク体も得ることができる。 本合金を得る際行われる熱処理は内部歪を小さくする
ことと、微細結晶粒組織とし軟磁気特性を向上させると
ともに磁歪を小さくする目的で行われる。 熱処理は通常真空中または水素ガス、窒素ガス、アル
ゴンガス等の不活性ガス雰囲気中において行なわれる。
しかし場合によっては大気中で行っても良い。 熱処理温度及び時間は非晶質合金リボンからなる磁心
の形状、サイズ、組成により異なるが一般的に450℃〜7
00℃で5分から24時間程度が望ましい。 熱処理の際の昇温や冷却の条件は状況に応じて任意に
変えることができる。また同一温度または異なる温度で
複数回にわけ熱処理を行ったり、多段の熱処理パターン
で熱処理を行なうこともできる。更には、本合金は熱処
理を直流あるいは交流の磁場中で行なうこともできる。
磁場中熱処理により本合金に磁気異方性を生じさせるこ
とができる。本合金からなる磁心の磁路方向に磁場を印
加し熱処理した場合は、B−Hカーブの角形性が良いも
のが得られ、可飽和リアクトル、磁気スイッチ、パルス
圧縮用コア、スパイク電圧防止用リアクトル等に好適な
特性が得られ、一方磁路と直角方向に磁場を印加し熱処
理した場合は、B−Hカーブが傾斜し、低角形比で恒透
磁率性に優れた特性が得られ、トランスやノイズフィル
ター、チョークコイル等に好適となる。 磁場は熱処理の間中かける必要はなく、合金のキュリ
ー温度Tcより低い温度でればどの時期でも良い。本発明
合金のキュリー温度は非晶質の場合より主相のキュリー
温度が上昇しており、非晶質合金のキュリー温度より高
い温度でも磁場中熱処理が適用できる。また回転磁場中
熱処理を行ない軟磁気特性を更に改善することもでき
る。また、熱処理の際合金に電流を流したり、高周波磁
界を印加し合金を発熱させることにより合金を熱処理す
ることもできる。 また応力下で熱処理し磁気特性を調整することもでき
る。特に本発明の合金は低磁歪の特徴を有するため、合
金表面に絶縁層を形成したり、含浸やコーティングを行
っても磁気特性の劣化が小さい特徴があり、優れた特性
のモールドコアやカットコア、コーティングコア、磁気
ヘッド等を作製できる。 〔実施例〕 本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明する
が、本発明はこれらに限定されるものではない。 実施例1 原子%でCu1%,Si16.5%,B6%,Nb3%,Ca0.1%及び残
部実質的にFeからなる組成の溶湯から、単ロール法によ
り幅5mm、厚さ18μmのリボンを作製した。このリボン
のX線回折を行ったところ非晶質合金に典型的なハロー
パターンが得られた。得られた結果を第1表に示す。こ
の非晶質合金の結晶化温度は(示差熱量計)DSCにより1
0℃/minの昇温速度で測定したところ52℃であった。 次にこの合金リボンを用い外径19mm、内径15mmの巻磁
心を形成し、窒素ガス雰囲気中550℃で1時間熱処理を
行った。 熱処理後の合金のX線回折パターンを第2図(a)、
組織の模式図を第2図(b)に示す。 熱処理後の組織の大部分が微細なbcc Fe固溶体からな
ることがわかった。結晶粒径は約100Åである。 CuとNbを複合、添加した本発明の合金の結晶粒の形は
球状に近く、平均粒径は約100Åと著しく微細化されて
いる。Cuを添加しない場合は結晶粒は大きくなり、微細
化されにくく軟磁気特性も悪い。 次に熱処理を行った巻磁心をベーク製のコアケースに
入れ、磁気特性を測定した。 その結果、Bs=12kG、Br/Bs=61%、Hc=0.0140e 1kH
zにおける実効透磁率μe1k=68000、周波数100kHz、Bm
2kGにおけるコア損失W2/100k=260kW/m3の特性が得られ
た。BsはCo基アモルファス磁心より高く、実効透磁率μ
e1k、コア損失W2/100KはCo基アモルファス磁心に匹敵
する優れた値を示す。 またこの合金の飽和磁歪λsは+1.3×10-6、キュリ
ー温度Tcは560℃であった。 次にこの合金の100kHzにおける実効透磁率μe1kの温
度変化を測定し、25℃における値μ25と100℃における
値μ100の比μ100/μ25を求めた。 比較のためCaを添加しないFe73.5Cu1Si16.5B6Nb3合金
の値も求めた。得られた結果を第1表に示す。 Caを添加した方がμ100/μ25が1に近く温度特性が優
れている。 実施例2 第2表に示す組成の厚さ20μm、幅5mmの非晶質合金
を単ロール法により作製した。 次にこの合金を外径19mm、内径15mmに巻回し、結晶化
温度以上の温度で無磁場中熱処理を行った。 熱処理後の合金の組織は実施例1とほぼ同様であっ
た。 次にこの磁心の100kHzにおける実効透磁率μe100Kの
温度依存性を測定し、25℃における値μ25と100℃にお
ける値μ100の比μ100/μ25を求めた。得られた結果を
第2表に示す。 第2表からもわかるように本発明合金のμ100/μ25は
1に近く温度特性が改善されており、磁気特性の安定性
に優れている。 実施例3 第3表に示す組成の厚さ18μm、幅10mmの非晶質合金
を単ロール法により作製した。 次に、この合金を外径19mm、内径15mmに巻回し、結晶
化温度で無磁場中熱処理を行った。熱処理後の合金の組
織は実施例1とほぼ同様であった。 次にこの磁心の100kHzにおける実効透磁率μe100Kの
温度依存性を測定し、25℃における実効透磁率μ25と10
0℃における実効透磁率μ100の比μ100/μ25を求めた。
得られた結果を第3表に示す。 本発明合金はμ100/μ25が1に近く実効透磁率の温度
係数が小さく、磁気特性の安定性に優れている。 〔発明の効果〕 本発明によれば、超微細結晶粒組織からなるFe基軟磁
性合金の磁気特性の安定性を改善できるためその効果は
著しい。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明合金を製造する中間段階で作製される合
金のX線回折パターン、第2図(a)は本発明合金のX
線回折パターン、第2図(b)は透過電子顕微鏡で観察
した組織の模式図を示した図である。
金のX線回折パターン、第2図(a)は本発明合金のX
線回折パターン、第2図(b)は透過電子顕微鏡で観察
した組織の模式図を示した図である。
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 1.Cuを0.1〜3原子%、M′を0.1〜30原子%(M′は
Nb,W,Ta,Zr,Hf,TiおよびMoからなる群から選ばれた少な
くとも1種の元素)、Yを2原子%以下(YはLi,Mg,C
a,Sr,Ba,Ag,Cd,Pb,Bi,N,O,S,SeおよびTeからなる群から
選ばれた少なくとも1種の元素)、B 2〜25原子% Si
30原子%以下 X 20原子%以下(XはC,Ge,P,Ga,Sb,In,
BeおよびAsからなる群から選ばれた少なくとも1種の元
素)の1種または2種以上(2種以上の場合合計で14〜
35原子%)、残部Feからなる組成を有し、組織の少なく
とも50%が微細な結晶粒からなり、前記結晶粒の最大寸
法で測定した粒径の平均が1000Å以下の平均粒径を有す
ることを特徴とするFe基軟磁性合金。 2.Cuを0.1〜3原子%、M′を0.1〜30原子%(M′は
Nb,W,Ta,Zr,Hf,TiおよびMoからなる群から選ばれた少な
くとも1種の元素)、Yを2原子%以下(YはLi,Mg,C
a,Sr,Ba,Ag,Cd,Pb,Bi,N,O,S,SeおよびTeからなる群から
選ばれた少なくとも1種の元素)、B 2〜25原子% Si
30原子%以下 X 20原子%以下(XはC,Ge,P,Ga,Sb,In,
BeおよびAsからなる群から選ばれた少なくとも1種の元
素)の1種または2種以上(2種以上の場合合計で14〜
35原子%)、残部FeおよびFeの50原子%未満をM(Mは
Coおよび/またはNi)で置換した組成を有し、組織の少
なくとも50%が微細な結晶粒からなり、前記結晶粒の最
大寸法で測定した粒径の平均が1000Å以下の平均粒径を
有することを特徴とするFe基軟磁性合金。 3.Cuを0.1〜3原子%、M′を0.1〜30原子%(M′は
Nb,W,Ta,Zr,Hf,TiおよびMoからなる群から選ばれた少な
くとも1種の元素)、Yを2原子%以下(YはLi,Mg,C
a,Sr,Ba,Ag,Cd,Pb,Bi,N,O,S,SeおよびTeからなる群から
選ばれた少なくとも1種の元素)、B 2〜25原子% Si
30原子%以下 X 20原子%以下(XはC,Ge,P,Ga,Sb,In,
BeおよびAsからなる群から選ばれた少なくとも1種の元
素)の1種または2種以上(2種以上の場合合計で14〜
35原子%)、M″を10原子%以下(M″はV,Cr,Mn,Al,
白金属元素,Sc,Y,希土類元素,Au,Zn,SnおよびReからな
る群から選ばれた少なくとも1種の元素)、残部Feから
なる組成を有し、組織の少なくとも50%が微細な結晶粒
からなり、前記結晶性の最大寸法で測定した粒径の平均
が1000Å以下の平均粒径を有することを特徴とするFe基
軟磁性合金。 4.Cuを0.1〜3原子%、M′を0.1〜30原子%(M′は
Nb,W,Ta,Zr,Hf,TiおよびMoからなる群から選ばれた少な
くとも1種の元素)、Yを2原子%以下(YはLi,Mg,C
a,Sr,Ba,Ag,Cd,Pb,Bi,N,O,S,SeおよびTeからなる群から
選ばれた少なくとも1種の元素)、B 2〜25原子% Si
30原子%以下 X 20原子%以下(XはC,Ge,P,Ga,Sb,In,
BeおよびAsからなる群から選ばれた少なくとも1種の元
素)の1種または2種以上(2種以上の場合合計で14〜
35原子%)、M″を10原子%以下(M″はV,Cr,Mn,Al,
白金属元素,Sc,Y,希土類元素,Au,Zn,SnおよびReからな
る群から選ばれた少なくとも1種の元素)、残部Feおよ
びFeの50原子%未満をM(MはCoおよび/またはNi)で
置換した組成を有し、組織の少なくとも50%が微細な結
晶粒からなり、前記結晶粒の最大寸法で測定した粒径の
平均が1000Å以下の平均粒径を有することを特徴とする
Fe基軟磁性合金。 5.M′がNbである特許請求の範囲第1項記載のFe基軟
磁性合金。
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JP62196651A JP2667402B2 (ja) | 1987-08-06 | 1987-08-06 | Fe基軟磁性合金 |
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JP62196651A JP2667402B2 (ja) | 1987-08-06 | 1987-08-06 | Fe基軟磁性合金 |
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