JPH0754108A - 恒透磁率性を有する磁性合金とその製造方法、およびそれを用いた磁心 - Google Patents

恒透磁率性を有する磁性合金とその製造方法、およびそれを用いた磁心

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JPH0754108A
JPH0754108A JP5197125A JP19712593A JPH0754108A JP H0754108 A JPH0754108 A JP H0754108A JP 5197125 A JP5197125 A JP 5197125A JP 19712593 A JP19712593 A JP 19712593A JP H0754108 A JPH0754108 A JP H0754108A
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Takao Sawa
孝雄 沢
Takamichi Inaba
隆道 稲葉
Yumiko Takahashi
由美子 高橋
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    • H01F1/153Amorphous metallic alloys, e.g. glassy metals
    • H01F1/15308Amorphous metallic alloys, e.g. glassy metals based on Fe/Ni

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Abstract

(57)【要約】 【目的】 高周波域において高飽和磁束密度および低損
失を示し、かつ優れた直流重畳特性が得られる、恒透磁
率性を有する磁性合金および磁心を提供する。 【構成】 一般式: Ta Mb M′c M″d Xe X′f (T
はFe、CoおよびNiから選ばれる元素、 MはCu、Ag、Au、
ZnおよびSnから選ばれる元素、 M′はTi、Zr、Hf、 V、
NbおよびTaから選ばれる元素、 M″はCr、Mo、 W、Mn、
AlおよびGaから選ばれる元素、 Xは Bおよび Pから選ば
れる元素、 X′はSi、 Cおよび Nから選ばれる元素、 a
+b+c+d+e+f=100(at.%)、 0≦ b≦ 5、 3≦ c≦18、 0≦
d≦10、 1≦ e≦15、 0≦ f≦10)で組成が実質的に表
され、平均結晶粒径が 5nm〜50nmの主相と、 T元素、
M′元素および X元素から選ばれる少なくとも 2種を構
成元素とし、平均結晶粒径が 1nm〜20nmの副相とを有す
る磁性合金である。磁心は、上記磁性合金薄帯の巻回体
または積層体を具備する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、恒透磁率性を有する磁
性合金とその製造方法、およびそれを用いた恒透磁率性
を有する磁心に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、スイッチングレギュレータ等の高
周波域で使用される磁心には、パーマロイ、フェライト
等の結晶質材料が主に用いられてきた。しかし、パーマ
ロイは比抵抗が小さいため、高周波域での鉄損が大きい
という欠点を有していた。また、フェライトは高周波域
での損失は小さいものの、磁束密度もせいぜい 5000Gと
小さいため、大きな動作磁束密度で使用すると飽和に近
くなり、その結果として鉄損が増大する。近時、スイッ
チングレギュレータに使用される平滑チョークコイル、
コモンモードチョークコイル、電源トランス等には、形
状の小形化が望まれているが、この場合動作磁束密度の
増大が必要となるため、フェライトの損失増大は実用上
大きな問題となる。
【0003】そこで、結晶構造を持たないアモルファス
磁性合金が、高透磁率、低保磁力等の優れた軟磁気特性
を示すことから注目を集め、一部実用化されている。こ
のアモルファス磁性合金は、Fe、Co、Ni等を基本とし、
これにアモルファス化元素として P、 B、Si、 C、Al、
Ge等を添加したものである。しかし、これらアモルファ
ス磁性合金の全てが高周波域で鉄損が小さいというわけ
ではない。
【0004】例えば、Fe基アモルファス合金は、安価
で、50Hz〜60Hzの低周波域ではケイ素鋼の約 1/4という
非常に小さい鉄損を示すが、 10kHz〜 50kHzという高周
波域にあっては鉄損が著しく大きくなり、とてもスイッ
チングレギュレータ等の高周波域での使用に適合するも
のではない。これを改善するために、Feの一部をNb、M
o、Cr等の非磁性金属で置換することにより低磁歪化
し、低鉄損、高透磁率を図っているが十分とは言えな
い。また、例えば樹脂モールド時の樹脂の硬化収縮等に
よる磁気特性の劣化が比較的大きいため、高周波域で用
いられる軟磁性材料として十分な特性を得られるには至
っていない。
【0005】一方、 Fe-Si-B系にCuをNb等と共に添加し
た合金溶湯を、超急冷して一旦アモルファス状態とした
後、その結晶化温度以上の温度で熱処理を施し、平均粒
径が10nm程度の微細な結晶粒を析出させることによっ
て、優れた軟磁気特性が得られることが知られている
(例えば EPO-0271657参照)。このような微細結晶粒を
有するFe基軟磁性合金の磁気特性は、例えば直流保磁力
5mOe 、比透磁率105 (1kHz) であり、また高周波域に
おいても低損失を示す。また、 Fe-Zr-B合金を超急冷し
て一旦アモルファス状態とした後、熱処理を施して微細
結晶粒のbcc-Fe相を析出させることにより、比透磁率48
000(1kHz) が得られたことが報告されている(鈴木他、
J.Appl.Phys.,Vol.70,6232(1991))。
【0006】上述したような微細結晶粒を有する軟磁性
合金は、高透磁率が必要とされるような用途には適する
ものの、優れた直流重畳特性が要求されるような用途、
例えばチョークコイルやトランス等として使用する場合
には、低磁場で容易に飽和状態に達してしまうことか
ら、そのままでは使用することができない。
【0007】このような場合には、上記Fe基軟磁性合金
の薄帯を巻回する等によって作製した磁心に、磁気的な
ギャップを形成する必要がある。このため、樹脂含浸、
キュアおよびギャップ形成のための切断等の工程が必要
となるため、磁心の製造工程が非常に複雑となり、製造
コストが大幅に増大してしまうという問題があった。ま
た、ギャップを形成することによって、トランス等とし
て使用する際の温度上昇が大きくなり、例えば電源効率
を低下させたり、また漏れ磁束の発生に伴ってノイズが
増大する等、特性上の劣化をも招いていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、微細
結晶粒を有する軟磁性合金は、高周波域において低損失
が得られるものの、チョークコイルやトランス等のよう
に、優れた直流重畳特性が要求されるような用途には直
接的には適さないため、磁気的なギャップを形成するこ
とにより対応していた。しかし、ギャップの形成は、製
造コストの増大を招くのみならず、特性上の劣化をも招
くという問題があった。
【0009】このようなことから、高周波域において高
飽和磁束密度および低損失が得られ、かつギャップを形
成することなく、優れた直流重畳特性が得られる、チョ
ークコイルや高周波トランス等に適した磁性合金の出現
が強く望まれていた。
【0010】本発明は、このような課題に対処するため
になされたもので、高周波域において高飽和磁束密度お
よび低損失を示し、かつ優れた直流重畳特性が得られ
る、恒透磁率性を有する磁性合金およびその製造方法を
提供することを目的としており、また他の目的は、切断
等によりギャップを形成することなく、優れた直流重畳
特性が要求されるチョークコイルやトランス等として使
用することが可能な恒透磁率性を有する磁心を提供する
ことにある。
【0011】
【課題を解決するための手段および作用】本発明の恒透
磁率性を有する磁性合金は、 一般式: Ta Mb M′c M″d Xe X′f ……(1) (式中、 TはFe、CoおよびNiから選ばれる少なくとも 1
種の元素を、 MはCu、Ag、Au、ZnおよびSnから選ばれる
少なくとも 1種の元素を、 M′はTi、Zr、Hf、 V、Nbお
よびTaから選ばれる少なくとも 1種の元素を、 M″はC
r、Mo、 W、Mn、AlおよびGaから選ばれる少なくとも 1
種の元素を、 Xは Bおよび Pから選ばれる少なくとも 1
種の元素を、 X′はSi Cおよび Nから選ばれる少なくと
も 1種の元素を示し、 a、 b、 c、 d、 eおよび fは a
+b+c+d+e+f=100(at.%)、 0≦ b≦ 5、3≦ c≦18、 0≦
d≦10、 1≦ e≦15、 0≦ f≦10をそれぞれ満足する数
を示す) で組成が実質的に表される磁性合金であっ
て、前記 T元素を構成元素として含み、平均結晶粒径が
5nm〜50nmの範囲の主相と、前記 T元素、 M′元素およ
びX元素から選ばれる少なくとも 2種を構成元素とし、
平均結晶粒径が 1nm〜20nmの範囲の副相とを有すること
を特徴としている。
【0012】また、本発明の恒透磁率性を有する磁性合
金の製造方法は、上記 (1)式で表される組成を満足する
合金溶湯を超急冷してアモルファス化する工程と、この
アモルファス化した合金に、その合金の第2結晶化温度
に対して-100℃〜 +50℃の範囲の温度で熱処理を施し、
前記 T元素を構成元素とする主相と、前記 T元素、M′
元素および X元素から選ばれる少なくとも 2種を構成元
素とする副相とを有する微細結晶粒を、面積比で 50%以
上析出させる工程とを具備することを特徴としている。
【0013】さらに、本発明の恒透磁率性を有する磁心
は、上記恒透磁率性を有する磁性合金からなる薄帯の巻
回体または積層体を具備することを特徴としている。
【0014】本発明の磁性合金は、上記 (1)式で表され
る組成を有するものである。以下に、その組成限定理由
について説明する。M元素は、結晶粒の粗大化を防ぐと
共に、鉄損の改善に有効な元素である。本発明の磁性合
金において、 M元素は必ずしも添加しなければならない
元素ではないが、鉄損を改善する上で添加することが好
ましい。ただし、その量が 5at.%を超えると、磁気特性
の劣化を生じるため、 M元素の添加量は 5at.%以下とす
る。好ましくは 3at.%以下である。また、 M元素の中で
も、特にCuおよびAuが軟磁気特性改善のために好まし
い。
【0015】また、 M′元素は、超急冷によるアモルフ
ァス化および結晶粒径の均一化に有効であると共に、磁
歪および磁気異方性を低減させて軟磁気特性の改善、さ
らには温度変化に対する磁気特性の改善に有効な元素で
ある。また、 M′元素は、後に詳述する副相の構成成分
となり得る元素であり、この副相の出現により保磁力が
適度に大きくなって、優れた直流重畳特性が得られる。
M′元素の添加量があまり少ないと上記効果が得られ
ず、逆に多すぎると飽和磁束密度が低下するため、 M′
元素の添加量の 3〜18at.%の範囲とする。好ましくは 5
〜15at.%の範囲である。また、 M′元素の中でも、特に
Zr、Hf、Nb、Taが好ましい。
【0016】M″元素は、 M′元素と同様に結晶粒径の
均一化に有効であると共に、磁歪および磁気異方性を低
減させて軟磁気特性の改善、さらには温度変化に対する
磁気特性の改善に有効な元素である。ただし、その量が
あまり多いと、アモルファス化がなされず、さらに飽和
磁束密度が低くなるため、 M″元素の添加量は10at.%以
下の範囲とする。好ましくは 0.1〜 8at.%の範囲であ
る。また、 M″元素としての各元素は、上記した効果と
共に、Mnは耐脆化性の向上、Cr、Mo、 Wは耐食性および
表面性の向上、Al、Gaは結晶粒の微細化に有効で、これ
により磁歪、軟磁気特性の改善等の効果を有している。
【0017】X元素は、薄帯製造時における合金のアモ
ルファス化に必須の元素であり、結晶化温度の改善に効
果を示し、しかも熱処理後の結晶析出における粗大化抑
制の効果をもたらす。また、直流重畳特性の改善に効果
を示す副相の構成成分となり得る元素である。このよう
な X元素の添加量は 1〜15at.%の範囲とする。 X元素の
添加量が 1at.%未満では、析出した結晶粒が大きくなり
すぎ、磁気特性が極めて悪くなり、また15at.%を超える
と、飽和磁束密度が低下する。 X元素のより好ましい添
加範囲は 2〜14at.%である。特に、 Bは合金のアモルフ
ァス化効果が顕著であるため、アモルファス合金を得た
後の微細結晶粒の析出による磁気特性の改善に有効であ
り、好ましいものである。
【0018】また、 X′元素は、 X元素と同様に薄帯製
造時における合金のアモルファス化を助長する元素であ
る。ただし、 X′元素の添加量が10at.%を超えると、超
急冷効果が小さくなり、μm レベルの比較的粗大な結晶
粒が析出し易くなるため、良好な軟磁気特性が得られな
くなる。
【0019】本発明の磁性合金の主相構成元素となる T
元素は、Fe、CoおよびNiから選ばれる少なくとも 1種の
元素であればよいが、特にFeを用いることが好ましい。
また、 T元素において、Feを主成分とする場合には、Co
およびNiの量は20at.%以下とすることが好ましい。
【0020】そして、本発明の磁性合金は、上述した
(1)式の組成を満足する合金溶湯を超急冷し、アモルフ
ァス状態の例えば長尺薄帯とした後、熱処理を施して微
細結晶粒を析出させ、所望の磁気特性を得るものであ
る。ここで、析出させる結晶粒としては、 T元素を構成
元素とする主相以外に、 T元素、 M′元素および X元素
から選ばれる少なくとも 2種を構成元素とする副相、例
えばそれらの化合物からなる相を析出させるものとす
る。このような副相を積極的に析出させることにより、
磁性を担う主相が微細化されると共に、保磁力が適度に
増大する。磁性合金の保磁力は、直流重畳特性の観点か
ら 0.5Oe 以上とすることが好ましい。さらに好ましく
は 1Oe 以上であり、また軟磁気特性の点から10Oe 以
下とすることが好ましい。
【0021】これらによって、優れた直流重畳特性が得
られ、かつ低損失化が達成される。すなわち、本発明の
磁性合金は、高周波域における損失が少なく、かつ直流
重畳特性に優れた、換言すれば恒透磁率性に優れたもの
となる。このような直流重畳特性は、例えは磁心を作製
する場合に、磁気ギャップを設けることなく得ることが
できる。
【0022】上記した主相の平均結晶粒径は 5〜50nmの
範囲とする。主相の平均結晶粒径が5nm未満の場合に
は、直流重畳特性が劣化し、また50nmを超えると、鉄損
が増大する。特に、主相がbcc-Fe相である場合に低損失
が得られる。主相のより好ましい平均結晶粒径は 8〜40
nmの範囲である。また副相は、上記したように T元素、
M′元素および X元素から選ばれる少なくとも 2種を構
成元素とするものであり、具体的な析出相は合金組成に
より異なるが、 Tと M′、 Tと X、 M′と X、 Tと M′
と Xの組合せのいずれかとなる。これらの内でも、特に
Tと M′、 M′とXの組合せが好ましい。このような副
相の平均結晶粒径は 1nm〜20nmの範囲とする。副相の平
均結晶粒径が 1nm未満の場合には、主相の結晶粒の粗大
化により磁気特性が劣化し、また20nmを超えると、磁壁
移動の際のピンニングサイトが大きすぎるため、保磁力
が容易に20Oe 以上となる。副相のより好ましい平均結
晶粒径は 2〜15nmの範囲である。
【0023】なお、本発明の磁性合金において、 M元素
を用いた場合には、上記した主相と副相以外に M元素も
析出することがある。このような M元素の析出も、主相
の微細化に効果を示す。
【0024】ここで、微細結晶粒の平均結晶粒径の測定
法について述べる。一般に、 1個の結晶は単結晶と見な
せる複数の結晶子からなる。しかし、本発明の磁性合金
における結晶粒のように、微細な結晶構造を有する場合
には、 1個の結晶が単結晶であると考えられるため、結
晶子の大きさがそのまま粒子径となる。結晶子の大きさ
は、一般にX線回折法により測定される。しかし、結晶
子が微細になると、得られる回折プロファイルの幅が拡
がり、その幅の取扱いによっては測定誤差が増大するお
それがある。一般に結晶子の大きさDと回折プロファイ
ルの幅βとの関係は、下記のScherrerの式で与えられ
る。
【0025】D=(K・λ)/(β cosθ) ここで、λはX線の波長、θはBragg angle 、Kは比例
定数である。本発明における微細結晶粒の平均結晶粒径
は、上記のX線回折法により、同一試料について10回以
上測定して得た結晶子の大きさの測定値を、算術平均し
た値を指すものとする。また、透過型電子顕微鏡により
結晶粒を観察し、結晶粒の最も大きな径を各々50個測定
して、その平均値から求めることもできる。
【0026】本発明の恒透磁率性を有する磁性合金は、
例えば以下のようにして得ることができる。すなわち、
上述した (1)式の組成を満足する合金溶湯を、例えば液
体急冷法により超急冷し、アモルファス状態の長尺薄帯
を得た後、その合金の第2結晶化温度に対して-100℃〜
+50℃の範囲の温度で熱処理を施す。このような熱処理
により、主相とアモルファス相以外に、 T元素、 M′元
素および X元素から選ばれる少なくとも 2種を構成元素
とする副相が少なくとも一部に析出する。ここで、上記
した合金の第2結晶化温度Tx2は、熱分析装置例えば示
差走査熱量計を用いて、10℃/分の割合で昇温して得ら
れる 2番目の発熱ピークに基く温度を示すものとする。
具体的には、図1に示すDSC曲線を例として説明する
と、変化のない温度域から延長した線aと、第2の発熱
ピークの勾配の最も大きい温度点からの接線bとの交点
の温度を、第2結晶化温度Tx2と定義する。
【0027】上記した熱処理温度が(Tx2-100)℃より
低いと、副相の析出が不十分となり、結果として直流重
畳特性が悪くなる。また、(Tx2 +50)℃より高いと、
透磁率が低くなりすぎ、インダクタとしての機能が得ら
れない。このような温度による熱処理時間は、その温度
に応じて、 1分〜 100時間の範囲から適宜設定すること
が好ましい。また、これら熱処理は、微細結晶粒が面積
比で 50%以上析出するように設定する。微細結晶粒が少
ないと、すなわちアモルファス相が多すぎると、鉄損と
磁歪が大きくなり、磁心とした場合に不都合が生じる。
【0028】また、本発明の磁心は、例えば以下のよう
にして作製される。まず、上記した組成に予め調合した
合金を溶融した後、高速移動する冷却体上に射出して、
アモルファス状態あるいは一部に結晶質を含む長尺薄帯
を作製する。この薄帯を所定の内径、外径および高さと
なるように、巻回または積層することによって磁心を成
形する。なお、成形前に薄帯表面に金属アルコキシド等
による絶縁処理を施してもよい。また、磁心の端末は、
レーザー処理、溶接等の熱的付与により止めてもよい
し、テープ接着により止めてもよい。この後、上述した
条件で熱処理を行い、所定の磁気特性を得る。この際、
熱処理の雰囲気は、窒素中やAr中等の不活性雰囲気中、
真空中、大気中のいずれでもよい。
【0029】本発明の磁心は、高周波用途の磁心に有効
であり、特に高周波トランス、コモンモードチョークコ
イル、ノーマルモードチョークコイル、平滑チョークコ
イル等に有効である。
【0030】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。
【0031】実施例1、比較例1〜5 Fe89Cu1 Zr6 B4 なる合金を溶融し、その溶湯を単ロー
ル法で超急冷して、幅10mm、板厚13μm のアモルファス
薄帯とした。この実施例の合金の結晶化過程を図1に示
す。図1は、示差走査熱量計を用いて、10℃/分の割合
で昇温した際に得られたDSC曲線である。同図から、
通常言われている結晶化温度(Tx1)は510℃であり、
第2結晶化温度Tx2は 750℃であることが分かる。
【0032】次に、上記したアモルファス薄帯を巻回し
て、外径21mm、内径14mmの磁心形状に成形した後、 700
℃((Tx2 -50)℃)で 4時間、窒素雰囲気中で熱処理
を行った。なお、薄帯の終端はスポット溶接により端末
止めを行った。
【0033】このようにして得た磁性薄帯についてX線
回折を行い、その結果から微細結晶粒の構成相を判定し
たところ、bcc-Fe相からなる主相以外に、副相としてFe
2 Zr相が析出していることを確認した。また、Scherrer
の式からそれらの平均結晶粒径を求めたところ、bcc-Fe
相からなる主相の平均結晶粒径は21nmであり、かつFe2
Zr相からなる副相の平均結晶粒径は 6nmであった。ま
た、磁性薄帯中の微細結晶粒の面積比は 90%であった。
【0034】また、本発明との比較として、上記アモル
ファス薄帯を実施例と同一形状に成形したものを、第1
結晶化温度Tx1以下の 460℃で 1時間(比較例1)、 6
40℃((Tx2-110)℃)で 1時間(比較例2)熱処理
し、それぞれ磁心を作製した。さらには、上記比較例
1、2による磁心を、それぞれエポキシ樹脂で含浸し、
キュアした後、ダイアモンドカッタで磁心を切断し、μ
=300となるようにギャップ長を調整した磁心をそれぞれ
作製した(比較例3、4)。
【0035】次に、上記実施例および比較例による各磁
心の直流磁気特性を測定したところ、表1に示すよう
に、実施例1の磁心では保磁力が 2.3Oe であったのに
対し、比較例1、2ではそれぞれ0.08Oe 、 0.045Oe
と小さく、また樹脂含浸し切断した比較例3、4の磁心
は読み取れなかった。また、LCRメータを用いて透磁
率を測定したところ、表1に示すように、1kHz、2mOe
の条件で、実施例1の磁心は 280であり、比較例1、2
の磁心はそれぞれ4300、 42000であった。なお、磁気的
なギャップを形成した比較例3、4の磁心は、上記した
通り 300となるようにしてある。さらに、高周波損失を
U関数計を用いて、100kHz、 2kGの条件で評価したとこ
ろ、実施例1の磁心と比較例2、4の磁心はいずれも低
損失が得られたが、比較例1、3の磁心は大きな値を示
した。
【0036】
【表1】 また、これら各磁心の直流重畳特性を評価したところ、
図2に示すように、実施例1による磁心は、磁気的なギ
ャップを形成した比較例3、4の磁心と同様に、良好な
結果が得られた。これらに対して、比較例1、2の各磁
心は、直流重畳特性に劣り、チョークコイルやトランス
等として使用し得るものではないことが明らかである。
【0037】これらのことから、本発明の磁性合金を用
いることにより、簡単なプロセスで(低コストで)、低
損失と優れた直流重畳特性が得られる磁心を作製できる
ことが明らかである。
【0038】実施例2 実施例1と同様に、表2および表3に組成を示した各合
金を、単ロール法によりそれぞれ幅10mm、板厚15μm の
アモルファス薄帯とした後、それぞれ実施例1と同一の
磁心形状に成形した。この後、表2および表3に示すよ
うに、それぞれの合金の第2結晶化温度に対する各温度
で、それぞれの設定時間により窒素雰囲気中で熱処理
し、それぞれ磁心を作製した。
【0039】これら各磁心の透磁率、保磁力、鉄損(100
kHz,2kG)および直流重畳特性を実施例1と同様な方法で
評価した。それらの結果を各磁性薄帯の各相の平均結晶
粒径と共に、表2および表3に示す。本発明による各磁
心は、いずれも低損失と優れた直流重畳特性を有するこ
とが分かる。
【0040】なお、熱処理条件は、示差走査熱量計を用
いて、10℃/分の昇温温度で測定したそれぞれの第2結
晶化温度に対する温度で示している。また、直流重畳特
性は、直流磁場零の時の透磁率の値に対して半分になっ
た時の磁場の値として示している。
【0041】
【表2】
【表3】 実施例3 実施例1と同様に、Fe88Cu1 Hf7 B4 なる合金を単ロー
ル法により、幅 5mm、板厚13μm のアモルファス薄帯と
した後、外径21mm、内径16mmの磁心形状に巻回成形し
た。この後、上記合金の第2結晶化温度Tx2に対して -
30℃の温度で、窒素と酸素との混合ガス(体積比で、 N
2 :O2 =9:1)中にて 3時間熱処理し、磁心を作製した。
この磁心の磁気特性を、実施例1と同様にして評価した
ところ、直流保磁力は 3.5Oe 、透磁率は 290、鉄損(1
00kHz,2kG)は890mW/ccであった。
【0042】この磁心をスイッチング電源のトランスと
して用い、温度上昇を測定した。また比較例として、Fe
77Si9 B14で組成が表されるアモルファス合金薄帯を用
いて、同一磁心形状のカットコアを作製し、このカット
コアについても実施例と同様にして温度上昇を測定し
た。その結果、上記実施例による磁心の温度上昇は30℃
であったのに対し、比較例によるカットコアでは78℃も
上昇し、電源効率でも2.5%の差が生じた。
【0043】実施例4 実施例3で用いたFe88Cu1 Hf7 B4 合金によるアモルフ
ァス薄帯を、外径21mm、内径16mmの磁心形状に巻回成形
した後、 700℃× 4時間の条件で、窒素雰囲気中にて熱
処理し、磁心を作製した。
【0044】また、本発明との比較として、上記実施例
と同一組成のアモルファス薄帯を同一寸法に巻回した
後、 550℃× 2時間の条件で、窒素雰囲気中にて熱処理
した。得られた磁心の磁気特性は、直流保磁力が0.05O
e であり、鉄損(100kHz,2kG)は800mW/ccであった。次
に、この磁心をエポキシ樹脂で含浸し、キュアした後、
ダイアモンドカッタで磁心を切断してギャップを形成し
た。
【0045】これら実施例による磁心と比較例による磁
心(カットコア)を、フォワード型スィッチング電源の
出力チョークコイルとして用いて、それぞれ出力ノイズ
を評価した。その結果、実施例による磁心を用いた場合
には、出力ノイズは15mVp-pであったのに対し、比較例
による磁心を用いた場合には32mVp-p であった。このよ
うに、本発明の磁心を用いることにより、出力ノイズの
低減が図れることが明らかである。
【0046】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の磁性合金
によれば、高周波域において高飽和磁束密度および低損
失が得られると共に、優れた直流重畳特性が再現性よく
得られる。よって、このような磁性合金を用いることに
より、切断等により磁気的なギャップを形成することな
く、高周波用のチョークコイルやトランス等に適した、
安価な磁心を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例による磁性合金の示差走査
熱量計(10℃/分で昇温)による結晶化過程を示す図で
ある。
【図2】 本発明の実施例および比較例による磁心の直
流重畳特性の測定結果を示す図である。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式: Ta Mb M′c M″d Xe X′
    f (式中、 TはFe、CoおよびNiから選ばれる少なくとも 1
    種の元素を、 MはCu、Ag、Au、ZnおよびSnから選ばれる
    少なくとも 1種の元素を、 M′はTi、Zr、Hf、 V、Nbお
    よびTaから選ばれる少なくとも 1種の元素を、 M″はC
    r、Mo、 W、Mn、AlおよびGaから選ばれる少なくとも 1
    種の元素を、 Xは Bおよび Pから選ばれる少なくとも 1
    種の元素を、 X′はSi、 Cおよび Nから選ばれる少なく
    とも 1種の元素を示し、 a、 b、 c、 d、 eおよび fは
    a+b+c+d+e+f=100(at.%)、 0≦ b≦ 5、 3≦ c≦18、 0
    ≦ d≦10、 1≦ e≦15、 0≦ f≦10をそれぞれ満足する
    数を示す)で組成が実質的に表される磁性合金であっ
    て、 前記 T元素を構成元素として含み、平均結晶粒径が 5nm
    〜50nmの範囲の主相と、前記 T元素、 M′元素および X
    元素から選ばれる少なくとも 2種を構成元素とし、平均
    結晶粒径が 1nm〜20nmの範囲の副相とを有することを特
    徴とする恒透磁率性を有する磁性合金。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の恒透磁率性を有する磁性
    合金において、 前記磁性合金は、直流保磁力が 0.5Oe 以上であること
    を特徴とする恒透磁率性を有する磁性合金。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の恒透磁率性を有する磁性
    合金において、 前記主相は、bcc-Fe相であることを特徴とする恒透磁率
    性を有する磁性合金。
  4. 【請求項4】 請求項1記載の恒透磁率性を有する磁性
    合金の製造方法であって、 前記一般式で表される組成を満足する合金溶湯を超急冷
    してアモルファス化する工程と、 前記アモルファス化した合金に、その合金の第2結晶化
    温度に対して-100℃〜+50℃の範囲の温度で熱処理を施
    し、前記 T元素を構成元素とする主相と、前記T元素、
    M′元素および X元素から選ばれる少なくとも 2種を構
    成元素とする副相とを有する微細結晶粒を、面積比で 5
    0%以上析出させる工程とを具備することを特徴とする恒
    透磁率性を有する磁性合金の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項1記載の恒透磁率性を有する磁性
    合金からなる薄帯の巻回体または積層体を具備すること
    を特徴とする恒透磁率性を有する磁心。
JP5197125A 1993-08-09 1993-08-09 恒透磁率性を有する磁性合金とその製造方法、およびそれを用いた磁心 Withdrawn JPH0754108A (ja)

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