JP2008150637A - 磁性合金、アモルファス合金薄帯、および磁性部品 - Google Patents

磁性合金、アモルファス合金薄帯、および磁性部品 Download PDF

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Abstract

【課題】 高飽和磁束密度が1.7T以上である高飽和磁束密度低保磁力の磁性合金、およびそれを作るためのアモルファス合金薄帯、およびその磁性合金を用いた磁性部品を提供することである。
【解決手段】 組成式:Fe100-x-yAuB(但し、原子%で、0.1≦x≦3.0、10≦y≦20)、もしくは、組成式:Fe100-x-y-zAuBX(但し、XはSi,S,C,P,Al,Ge,Gaからなる1種以上の元素であり、原子%で、0.1≦x≦3.0、10≦y≦20、0<z≦10.0、10<y+z≦24)により表され、組織の少なくとも一部が結晶粒径60nm以下(0を含まず)の結晶粒であり、かつ飽和磁束密度が1.7T以上であることを特徴とする高飽和磁束密度低保磁力の磁性合金。
【選択図】図1

Description

各種トランス、各種リアクトル、ノイズ対策、レーザ電源、加速器用パルスパワー磁性部品、各種モータ、各種発電機等に用いられる高飽和磁束密度低保磁力の磁性材料と、およびそれを製造するためのアモルファス合金薄帯、前記磁性材料を用いた磁性部品に関する。
各種トランス、各種リアクトル、ノイズ対策、レーザ電源、加速器用パルスパワー磁性部品、各種モータ、各種発電機等に用いられる高飽和磁束密度低保磁力の磁性材料としては珪素鋼、フェライト、アモルファス合金やFe基ナノ結晶合金材料等が知られている。
珪素鋼板は、材料が安価で磁束密度が高いが、高周波の用途に対しては磁心損失が大きいという問題がある。作製方法上、アモルファス薄帯並に薄く加工することは極めて難しく、渦電流損失が大きいため、これに伴う損失が大きく不利であった。また、フェライト材料は飽和磁束密度が低く、温度特性が悪い問題があり、動作磁束密度が大きいハイパワーの用途にはフェライトが磁気的に飽和しやすく不向きであった。
また、Co基アモルファス合金は、飽和磁束密度が実用的な材料では1T以下と低く、熱的に不安定である問題がある。このため、ハイパワーの用途に使用した場合、部品が大きくなる問題や経時変化のために磁心損失が増加する問題がある。
また、特許文献1に記載されているようなFe基アモルファス軟磁性合金は、良好な角形性や低い保磁力を有し、非常に優れた軟磁気特性を示すが、その反面、飽和磁束密度が1.65Tと低く、更なる向上が求められている。しかし、Fe基アモルファス合金系においては、飽和磁束密度は、原子間距離と配位数およびFe濃度との兼ね合いで決定し、1.65Tがほぼ物理的上限値となっている。また、Fe基アモルファス合金は、磁歪が大きく応力により特性が劣化する問題や、可聴周波数帯の電流が重畳するような用途では騒音が大きいという問題がある。さらに、従来のFe基アモルファス軟磁性合金において、Feを他の磁性元素Co等で大幅に置換した場合は飽和磁束密度の増加も認められるが、これらの元素の含有量(重量%)をなるべく少量にすることが望まれる。これらの問題から、特許文献2に記載されるような、ナノ結晶を持つ軟磁性材料が開発され、様々な用途に使用されている。
また、高透磁率かつ高飽和磁束密度の軟磁性成形体として、特許文献3に記載されるような技術も開示された。
特開平5−140703号公報((0006)〜(0010)) 特許平1−156451号公報(第2頁右上欄19行目〜右下欄6行目) 特開2006−40906号公報((0040)〜(0041))
上記の軟磁性材料では飽和磁束密度が1.7Tに達していないが、それ以上の飽和磁束密度を持つ磁性合金が要求されている。
本発明の目的は、高飽和磁束密度が1.7T以上である高飽和磁束密度低保磁力の磁性合金、およびそれを作るためのアモルファス合金薄帯、およびその磁性合金を用いた磁性部品を提供することである。
本発明では、Feを高濃度に含む合金で、軟磁性と飽和磁束密度BSが1.7T以上を両立させることを目的に、Fe-Bの2元系およびFe−B−Siの3元系を中心に微細結晶材料の開発を試みたものである。具体的には、アモルファス相を主相とする薄帯が得られるFe濃度88(原子%)以下の組成の合金に、Feと非固溶であるAuを添加することにより、微細結晶の核を与え、更に熱処理によって微細結晶を析出させ、結晶粒成長により微細結晶材料を得る。合金作製の初期段階でアモルファス相中に10nmを切る粒径の極微細な結晶および結晶の核を形成することで、熱処理後均質な微細結晶粒を得ることができる。一方、Feが低濃度の場合には同様の視点の開発もなされているが、それらの発明は完全なアモルファス合金薄帯を作製しアモルファス相中に熱処理により微結晶組織を析出させることを主眼にしている点で本発明とは本質的に異なる。本発明の軟磁性微細結晶合金はBが1.7T以上になることが特徴であり、これを満たすには、組織全体がbccFeの微細結晶となった場合、少なくともFe濃度が約75(原子%)以上、重量%で約90%以上が必要である。
上記の検討により発明された本発明の高飽和磁束密度低保磁力の磁性合金は、組成式:Fe100-x-yAuB(但し、原子%で、0.1≦x≦3.0、10≦y≦20)により表され、組織の少なくとも一部が結晶粒径60nm以下(0を含まず)の結晶粒であり、かつ飽和磁束密度が1.7T以上であることを特徴とする。
また、第2の本発明の磁性合金は、組成式:Fe100-x-y-zAuBX(但し、XはSi,S,C,P,Al,Ge,Ga,Beからなる1種以上の元素であり、原子%で、0.1≦x≦3.0、10≦y≦20、0<z≦10.0、10<y+z≦24)により表され、組織の少なくとも一部が結晶粒径60nm以下(0を含まず)の結晶粒であり、かつ飽和磁束密度が1.7T以上であることを特徴とする。
Siを添加することで、結晶磁気異方性の大きいFe-Bが析出開始する温度を高くできるため、熱処理温度を高温にできるようになる。高温の熱処理を施すことで微結晶相の割合が増え、BSが増加し、B-H曲線の角形性が改善される。また、試料表面の変質、変色を抑える効果がある。
上記の組成の範囲内で、0.1≦x≦3.0、12≦y≦17、0<z≦7、13≦y+z≦20で表される領域では、軟磁気特性も特に優れるため、軟磁性材料として有望である。
さらに、上記組成の範囲内で、0.1≦x≦3.0、12≦y≦15、0<z≦5、14≦y+z≦19で表される領域では、比較的高い飽和磁束密度であり、軟磁性材料としてさらに有望である。
さらに、上記組成の範囲内で、0.1≦x≦3.0、12≦y≦15、0<z≦4、14≦y+z≦17で表される領域では、特に高い磁束密度が得られ好ましい。
本発明の軟磁性微結晶合金において、均質な微細組織を得るためには、原材料を溶解後、液体急冷法によって合金薄帯を作製した時点でアモルファス相を主相とするアモルファス相中に極微細な10nm未満の結晶粒(結晶核)が分散した組織が得られることが重要である。その後、結晶化温度以上の温度範囲で熱処理を施し、結晶粒径60nm以下の体心立方構造の結晶粒が非晶質母相中に体積分率で30%以上分散した組織からなることが好ましく、軟磁気特性に優れ、かつ、1.7T以上の高飽和磁束密度を満たす軟磁性微結晶合金が得られる。ナノ結晶粒相が体積分率で30%以上を占めることにより飽和磁束密度Bsはアモルファス単相の状態と比べて10%程度増加させることができる。さらに体積分率で50%以上を占めることにより、Bsは15%程度増加させることができる。
結晶粒の体積比は、線分法、すなわち顕微鏡組織中に任意の直線を想定しそのテストラインの長さをLt、結晶相により占められる線の長さLcを測定し、結晶粒により占められる線の長さの割合LL=Lc/Ltを算出することにより求められる。ここで、結晶粒の体積比VV=LLである。
本発明合金と同組成のアモルファス合金では、比較的大きな磁歪が現れるが、体心立方構造のFeでは、磁歪もはるかに小さい。組織の多くの部分がbccFeを主体とする微細結晶粒からなる本発明合金は磁歪がアモルファス合金よりも低く騒音低減の観点からも有望である。
Au量xは0.1≦x≦3.0とする。3.0%を超えると液体急冷時にアモルファス相を主相とする薄帯を得るのが極めて困難になり、軟磁気特性も急激に悪化する。さらに好ましいAu量は1.0≦x≦2.0である。Auの一部を、Au量に対して3.0原子%以下の範囲で、Agで置換することができる。また、B量yは10≦y≦20とする。B量が10%未満であるとアモルファス相を主相とする薄帯を得るのが極めて困難となり、また20%を超えると飽和磁束密度が1.7T未満となる。さらに好ましいAu量x、B量yは1.0≦x≦1.7、12≦y≦17、さらには、1.2≦x≦1.6、14≦y≦17であり、このAu量、B量とすることで保磁力が12A/m以下の高飽和磁束密度低保磁力の軟磁性微結晶合金が得られる。
本発明では熱処理前の段階で、合金の主たる成分がアモルファス相でない場合、低い保磁力は得られない。Bはアモルファスの形成を促進するために不可欠な元素であり、Si,S,C,P,Al,Ge,Gaは形成能の向上に寄与する。Bの濃度yは10≦y≦20であり、Fe含有量の制約を満たしつつ、アモルファス相が安定に得られる組成範囲である。
Feの一部をFeとAuに共に固溶するCoで置換した場合、アモルファス相の形成能が高くなり、Auの含有量を増加させることが可能である。Au含有量が増加することで、結晶組織の微細化が促進され軟磁気特性が改善される。また、Coを置換した場合には飽和磁束密度が増加する。Coを多く置換すると、軟磁気特性が劣化するため、置換量は50%未満、好ましくは30%未満、より好ましくは10%未満が適当である。
Feの一部をNi、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、白金族元素、Ag、Zn、In、Sn、As、Sb、Bi、Y、N、O及び希土類元素のいずれかの元素で置換した場合、これらの元素はFe濃度の高い微細結晶粒の生成を助け軟磁気特性の改善に寄与したり、磁気特性を調整する効果を有する。一方、本発明合金における実質的な磁性の担い手はFeであるため、Feの含有量を高く保つ必要があるが、これら、原子量の大きい元素を含有することは、単位重量あたりのFeの含有量が低下することになる。特に、置換する元素がNb,Zrの場合、置換量は5%未満程度、より好ましくは2%未満が適当であり、置換する元素がTa,Hfの場合、置換量は2.5%未満、より好ましくは1.2%未満が適当である。また、Mnを置換する場合は飽和磁束密度の低下がおこるため、置換量は5%未満が妥当であり、より好ましくは2%未満である。
但し、特に高い飽和磁束密度を得るためには、これらの元素の総量が1.8原子%以下とすることが好ましい。また、総量が1.0原子%以下とすることがさらに好ましい。
具体的な製造方法は、前記組成の溶湯を単ロール法等の急冷技術によって100℃/sec以上の冷却速度で急冷し、一旦アモルファス相を主相とする合金を作製後、これを加工し、結晶化温度近傍の温度で熱処理を施し、平均粒系が60nm以下の微結晶組織を形成することによって得られる。熱処理前のアモルファス相は結晶相を含んでいても良い。単ロール法等の急冷技術による薄帯の作製および熱処理は大気中または、Ar、He、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素の雰囲気中あるいは減圧下で行う。磁界中熱処理により、誘導磁気異方性によって軟磁気特性を改善することができる。この場合、誘導磁気異方性を付与するには、熱処理中、一定時間、磁界を印加し、磁界中熱処理を行う。8kA/m以上の磁界を定常的に印加する方法であれば、印加する磁界は、直流、交流、繰り返しのパルス磁界のいずれでも良い。磁界中熱処理は200℃以上の温度領域で通常20分以上印加する。昇温中、一定温度に保持中および冷却中も磁界を印加した方が、軟磁気特性の向上につながる。また、回転磁界中で磁界中熱処理することもできる。薄帯に張力を印加あるいは加圧しながら応力下で熱処理し磁気特性を調整することもできる。
熱処理は大気中、真空中、Ar、窒素等の不活性ガス中で行うことができるが、特に不活性ガス中で行うことが望ましい。熱処理の際、最高到達温度は結晶化温度からそれよりも70℃程度高い温度領域が望ましい。熱処理の保持時間を1時間以上とする場合、組成によるが350℃から440℃の範囲が最適である。一定温度で保持する時間は量産性の観点から通常は24時間以下であり、好ましくは4時間以下である。熱処理の平均昇温速度は0.1℃/minから200℃/minが好ましく、より好ましくは0.1℃/minから100℃/minであり、保磁力の増加を抑制できる。熱処理は1段階でなく、多段階、複数回行っても良い。さらに、合金に直接電流を流して、ジュール熱によって熱処理を施すこと、応力下で熱処理することも可能である。
以上のようなプロセスを経て本発明の合金を作製することにより、飽和磁束密度が1.7T以上、保磁力が24 A/m以下の磁性材料を得ることが容易になる。
また、保磁力を小さくし、低磁界での磁束密度を向上させ、かつヒステリシス損失を減少させるための熱処理技術として、Feを75原子%以上有し、アモルファス相を主相とする合金薄帯に、最高温度が430℃以上、最高温度での保持時間が1h未満で、かつ最大昇温速度が100℃/min以上である熱処理を施し、組織の少なくとも一部が結晶粒径60nm以下(0を含まず)の結晶粒を有するようにすることが好ましい。
組成式がFe100-x-yAuB(但し、原子%で、0.1≦x≦3.0、10≦y≦20)により表される合金薄帯、若しくは、組成式がFe100-x-y-zAuBX(但し、XはSi,S,C,P,Al,Ge,Ga,Beからなる1種以上の元素であり、原子%で、0.1≦x≦3.0、10≦y≦20、0<z≦10.0、10<y+z≦24)により表される合金薄帯を用いることができる。
また、350℃の熱処理温度を超える際の昇温速度が100℃/min以上であることが好ましい。
本発明合金に対する熱処理は、微細結晶組織を析出させることを目的としている。温度と時間の2つのパラメータを調整することにより、核生成および結晶粒成長が制御できる。そのため、高温中の熱処理であっても、非常に短時間であれば結晶粒成長を抑制できるうえ、保磁力が小さくなり、低磁界での磁束密度が向上し、ヒステリシス損失も減少するという効果が得られる。所望される磁気特性により、前記の低温長時間の熱処理と、この高温短時間の熱処理とを適宜使い分けることができるが、この高温短時間の熱処理の方が、一般的に必要とされる磁気特性を得やすく、好適である。
保持温度は430℃以上が好ましい。430℃未満であると、保持時間を適宜調整しても上記の効果が得られにくい。化合物が析出する温度(TX2)に対し、TX2−50℃以上とすることが好ましい。
また保持時間が1時間以上であると、上記の効果が得られにくく、かつ処理時間が長くなり、生産性が悪い。好ましい保持時間は30分以内であり、20分以内であり15分以内である。
最大昇温速度は100℃/min以上とすることが好ましい。また、平均昇温速度が100℃/min以上とすることがさらに好ましい。
また、この熱処理による製造方法は、高温域での熱処理速度が特性に大きな影響を与えるため、熱処理温度が300℃を超える際の昇温速度が100℃/min以上であることが好ましく、350℃を超える際の昇温速度が100℃/min以上であることがなお好ましい。
また、昇温速度の制御や様々な温度で一定時間保持する数段階の熱処理等によって、核生成を制御することも可能である。また、結晶化温度よりも低い温度で一定時間保持し、核生成に十分な時間を与えた後、結晶化温度よりも高い温度で1h未満保持する熱処理により結晶粒成長を行えば、結晶粒同士が互いの成長を抑制しあうため、均質で微細な結晶組織が得られる。例えば、250℃程度の熱処理を1h以上行い、その後、高温短時間、例えば熱処理温度が300℃を超える際の昇温速度が100℃/min以上の条件で熱処理を行えば、上記の製造方法と同じ効果を得ることができる。
本発明の軟磁性微結晶合金は、必要に応じてSiO、MgO、Al等の粉末あるいは膜で合金薄帯表面を被覆する、化成処理により表面処理し絶縁層を形成する、アノード酸化処理により表面に酸化物絶縁層を形成し層間絶縁を行う、等の処理を行うとより好ましい結果が得られる。これは特に層間を渡る高周波における渦電流の影響を低減し、高周波における磁心損失を改善する効果があるためである。この効果は表面状態が良好でかつ広幅の薄帯から構成された磁心に使用した場合に特に著しい。更に、本発明合金から磁心を作製する際に必要に応じて含浸やコーティング等を行うことも可能である。本発明合金は高周波の用途として特にパルス状電流が流れるような応用に最も性能を発揮するが、センサや低周波の磁性部品の用途にも使用可能である。特に、磁気飽和が問題となる用途に優れた特性を発揮でき、ハイパワーのパワーエレクトロニクスの用途に特に適する。
使用時に磁化する方向とほぼ垂直な方向に磁界を印加しながら熱処理した本発明合金は、従来の高飽和磁束密度の材料よりも低い磁心損失が得られる。更に本発明合金は薄膜や粉末でも優れた特性を得ることができる。
本発の軟磁性微結晶合金の少なくとも一部または全部には平均粒径60nm以下の結晶粒が形成している。前記結晶粒は組織の30%以上の割合であることが望ましく、より好ましくは50%以上、特に好ましくは60%以上である。特に望ましい平均結晶粒径は2nmから30nmであり、この範囲において特に低い保磁力および磁心損失が得られる。
前述の本発明合金中に形成する微結晶粒は主にFeを主体とする体心立方構造(bcc)の結晶相であり、Si,B,Al,GeやZr等が固溶しても良い。また、規則格子を含んでも良い。前記結晶相以外の残部は主にアモルファス相であるが、実質的に結晶相だけからなる合金も本発明に含まれる。一部にAuを含む面心立方構造の相(fcc相)も存在する場合がある。
また、アモルファス相が結晶粒の周囲に存在する場合、抵抗率が高くなり、結晶粒成長の抑制により、結晶粒が微細化されており軟磁気特性が改善されるためより好ましい結果が得られる。
本発明合金において化合物相が存在しない場合により低い磁心損失を示すが化合物相を一部に含んでも良い。
もう一つの本発明は、前記高飽和磁束密度低損失の軟磁性微結晶合金から構成されていることを特徴とする磁性部品である。前記本発明の軟磁性微結晶合金により磁性部品を構成することにより、アノードリアクトルなどの大電流用の各種リアクトル、アクティブフィルタ用チョ−クコイル、平滑チョークコイル、各種トランス、磁気シールド、電磁シールド材料などのノイズ対策部品、レーザ電源、加速器用パルスパワー磁性部品、モータ、発電機等に好適な高性能あるいは小型の磁性部品を実現することができる。
本発明によれば、大電流用の各種リアクトル、アクティブフィルタ用チョ−クコイル、平滑チョークコイル、各種トランス、電磁シールド材料などのノイズ対策部品、レーザ電源、加速器用パルスパワー磁性部品、モータ、発電機等に用いられる高飽和磁束密度で特に低い磁心損失を示す高飽和磁束密度低損失の軟磁性微結晶合金およびそれを用いた高性能磁性部品を実現することができるため、その効果は著しいものがある。
また、本発明の磁性合金へ、高温短時間の熱処理を施すことにより、結晶粒成長を抑制できるうえ、保磁力が小さくなり、低磁界での磁束密度が向上し、ヒステリシス損失も減少するという効果が得られる。一般的に必要とされる高い磁気特性が得られ、好適である。
以下本発明を実施例にしたがって説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
Fe81.65Au1.35B14Si3 (原子%)の合金溶湯を単ロール法により急冷し、幅5mm厚さ21μmのアモルファス合金薄帯を得た。TEM観察の結果、薄帯中には10nm未満の微細な結晶粒が析出していた。DSC測定の結果、353℃からブロードな発熱ピークが生じ、この付近の温度以上では結晶化が進行すると考えられる。
昇温速度50℃/minで、410℃×1時間の条件で熱処理したこの合金のX線回折パターンを図1に示す。bcc-Fe固溶体の回折パターンが観測されるが、熱処理温度T=410℃の(3,1,0)のピークの半値幅より、結晶粒の平均粒径は、約23nmと見積もられた。また、ナノ結晶粒相が非晶質母相中に分散していた。これらの試料を長さ12cmの単板状に加工し、B-HトレーサーによりB-H曲線を測定した。直流B-Hループの一例を図2に示す。熱処理温度Tが410℃で飽和磁束密度Bsは1.75T、角形比は76%、保磁力Hcは6.0A/mであり、高飽和磁束密度で低保磁力の合金が実現できることが分った。
(実施例2)
様々な組成のFe-Au-B系、Fe-Au-B-Si系の合金溶湯を単ロール法により急冷し、幅5mm厚さ19〜25μmのアモルファス合金薄帯を得た。
これらの、単板状試料をB-Hトレーサーで評価した。表1にこれらの試料を410〜420℃、無磁場中で熱処理したときの諸データを記す。いずれの組成も飽和磁束密度Bsが高く、最大透磁率 μmが高く、20kHz, 0.2Tにおける鉄損Pcmが低く軟磁気特性が良好である。これらの磁性合金は、いずれも組織の少なくとも一部が結晶粒径60nm以下の結晶粒を含むものであった。また、ナノ結晶粒相が非晶質母相中に体積分率で50%以上を占めていた。本発明合金は、従来のFe基アモルファス合金やFe基ナノ結晶合金よりもBsが高く、保磁力、最大透磁率ともに実用可能な特性を示す。特に鉄損は6.5mass%電磁鋼板の鉄損の90W/kgよりも著しく、低く交流励磁で使用されるトランスやチョークコイルなどの鉄心材料に適することが分る。
Figure 2008150637
(実施例3)
Febal.Au1.25B13Si3(原子%)の組成を有する合金溶湯を単ロール法により急冷し、幅10mm厚さ20.3μmの合金薄帯を得た。X線回折および透過電子顕微鏡による観察の結果、この合金薄帯はアモルファスマトリックス中に10nm未満の微細な体心立方構造の結晶粒が主として分散していることが確認された。次にこの合金薄帯を巻いて巻磁心を作製後、410℃で1時間熱処理を行った。熱処理した巻磁心をフェノール樹脂製のコアケースに入れ、磁気特性を測定した。飽和磁束密度Bsは1.75T、保磁力Hcは7.4A/mであった。1kHzにおける交流比初透磁率μ1k測定した結果、μ1k=7600が得られた。この合金はアモルファスマトリックス中に約55%結晶粒径24nmの結晶粒を含む組織を有していた。
次にこの巻磁心に複数の巻線を行い高周波トランスを作製した。トランスの20kHz、0.2Tにおける鉄損Pcmを測定した結果、Pcm=4.2W/kgの特性が得られた。6.5mass%Si電磁鋼板を用いたトランスの鉄損Pcmは90W/kgであり、従来の電磁鋼板を用いた高周波トランスよりも著しく低損失であることが確認された。
合金のX線回折パターンの一例を示した図である。 本発明の磁性合金の直流B-Hループを示した図である。

Claims (10)

  1. 組成式:Fe100-x-yAuB(但し、原子%で、0.1≦x≦3.0、10≦y≦20)により表され、組織の少なくとも一部が結晶粒径60nm以下(0を含まず)の結晶相であり、かつ飽和磁束密度が1.7T以上であることを特徴とする高飽和磁束密度低保磁力の磁性合金。
  2. 組成式:Fe100-x-y-zAuBX(但し、XはSi,S,C,P,Al,Ge,Ga, Beからなる1種以上の元素であり、原子%で、0.1≦x≦3.0、10≦y≦20、0<z≦10.0、10<y+z≦24)により表され、組織の少なくとも一部が結晶粒径60nm以下(0を含まず)の結晶相であり、かつ飽和磁束密度が1.7T以上であることを特徴とする高飽和磁束密度低保磁力の磁性合金。
  3. 前記Xは、Si,Pからなる1種以上の元素であることを特徴とする請求項2に記載の磁性合金。
  4. 前記Au量xは、1.0≦x≦2.0であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の磁性合金。
  5. 前記磁性合金は、Fe量に対して、その50原子%未満のCo、及び/又は、その5原子%未満のNi、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、白金族元素、Ag、Zn、In、Sn、As、Sb、Bi、Y、N、O及び希土類元素から選ばれた少なくとも一種以上の元素を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の磁性合金。
  6. 最大透磁率が20000以上であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の磁性合金。
  7. 請求項1乃至6のいずれかの磁性合金を用いたことを特徴とする磁性部品。
  8. 組成式:Fe100-x-yAuB(但し、原子%で、0.1≦x≦3.0、10≦y≦20)により表されることを特徴とするアモルファス合金薄帯。
  9. 組成式:Fe100-x-y-zAuBX(但し、XはSi,S,C,P,Al,Ge,Ga,Beからなる1種以上の元素であり、原子%で、0.1≦x≦3.0、10≦y≦20、0<z≦10.0、10<y+z≦24)により表されることを特徴とするアモルファス合金薄帯。
  10. 前記アモルファス合金薄帯は、Fe量に対して、その50原子%未満のCo、及び/又は、その5原子%未満のNi、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、白金族元素、Ag、Zn、In、Sn、As、Sb、Bi、Y、N、O及び希土類元素から選ばれた少なくとも一種以上の元素を含むことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載のアモルファス合金薄帯。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2017096644A (ja) * 2015-11-18 2017-06-01 富士電機機器制御株式会社 電流検知装置及びこれを使用した漏電遮断器

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