JPH06132076A - 鋼球の空中浮揚高周波焼入方法およびその装置 - Google Patents

鋼球の空中浮揚高周波焼入方法およびその装置

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JPH06132076A
JPH06132076A JP3163849A JP16384991A JPH06132076A JP H06132076 A JPH06132076 A JP H06132076A JP 3163849 A JP3163849 A JP 3163849A JP 16384991 A JP16384991 A JP 16384991A JP H06132076 A JPH06132076 A JP H06132076A
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cooling
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 鋼球の表面に均一な焼入硬化層を得るための
高周波焼入する方法およびその装置である。 【構成】 鋼球(5)を高周波加熱コイル(8)のほぼ
中央部(21)に相当する金属製円筒体(7)内で予備
加熱し、その後、該鋼球を、前記円筒体の上端面位置
(23)で該鋼球と前記加熱コイルとの間に発生する電
磁力により空中浮揚,自転させながら、均一に高周波加
熱し、次いで該鋼球を冷却手段(3)により急速冷却し
て、該鋼球の表面に均一な焼入硬化層を形成させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鋼球を空中に浮揚して
高周波加熱し、その表面を均一に焼入れするための方法
およびその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の鋼球表面の高周波焼入れは、図1
3(A),(B)および図14に示す方法によって行わ
れていた。まず、図13(A),(B)に示す方法は、
内部を水冷できる銅パルプを用いて、焼入すべき鋼球1
01の直径に合わせて複数巻きの螺旋状高周波誘導加熱
コイル102を構成し、このコイル102内に鋼球10
1をセラミックス製載置台103により配置し、コイル
102に図示しない高周波電源より電力を供給して、鋼
球101の表面を所要焼入温度まで高周波誘導加熱す
る。しかる後コイル102の周辺に配置された図示しな
い冷却環より焼入冷却液を噴射し、鋼球101の表面を
急速冷却することにより、焼入するようにしたものであ
る。
【0003】また、図14に示す方法は、鋼球101に
あらかじめ設けられたセンタ穴101aに、上下センタ
104を挿入して鋼球101を保持し、鋼球101に対
して斜め方向に単巻き、または鋼球101の直径に応じ
た複数巻きの加熱コイル105を配置し、鋼球101に
回転を与えながら、その表面を前記と同様に所要焼入温
度まで高周波誘導加熱する。しかる後、コイル105の
周辺に配置された図示しない冷却環より焼入冷却液を噴
射し、鋼球101の表面を急速冷却することにより、焼
入するようにしたものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図13
(A)に示す方法では、鋼球101は加熱コイル102
に最も近い部分が最も深く加熱され、加熱コイル102
から遠ざかるにしたがって、浅く加熱される。特に、セ
ラミックス製載置台103と接触している部分は、被加
熱物から載置台103へ熱伝導があるため、最も浅く加
熱される。
【0005】前記鋼球101を前記状態に加熱した後に
冷却しているため、得られた焼入硬化層パターンは同図
の斜線で示すように、コイル102に最も近接している
部分が最も深くなり、加熱コイル102から最も遠い上
下面は浅くなる。特に載置台103に接触している下面
部分は最も浅くなる。
【0006】従って、この焼入方法では、回転加熱や回
転冷却も不可能で、前記鋼球101の表面を均一に加熱
できず、そのため該鋼球101の表面に均一な焼入硬化
層を得ることができないという問題点があった。また、
図13(B)に示す方法でも、前記方法に比べると硬化
層の不均一差は少なくなるものの、均一な焼入硬化層パ
ターンは得られない。
【0007】他方、図14に示す方法は、前記図13
(A),(B)による方法に比べて、鋼球101により
均一な焼入硬化層パターンを得ることができるが、上下
センタ104により鋼球101が保持されているため、
センタ穴101aの近傍は浅い焼入硬化層になる。ま
た、この方法では、鋼球101の表面にあらかじめセン
タ穴101a加工を必要とするため、鋼球101の使用
目的によっては、センタ穴101a加工ができないもの
は、図13(A),(B)の方法を採らざるを得ない。
【0008】前記いずれの方法でも、鋼球101の表面
に均一な焼入硬化層を形成することができないという問
題点があった。このため、焼入れに伴う鋼球101の変
形量も、不均一な硬化層パターンに伴い大きくなる。
【0009】本発明はかかる点に鑑みなされてもので、
その目的は前記問題点を解消し、鋼球の表面に均一な焼
入硬化層が得られ、かつ効率よく高周波焼入することが
できる方法および装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
の本発明の構成は、次のとおりである。 (1)鋼球の高周波焼入れに際し、 a.半径方向に沿って放射状に延びる複数のスリットが
形成された金属製円筒体の外周を取り囲むように螺旋状
の高周波誘導加熱コイルを配設すると共に、前記円筒体
及び高周波誘導加熱コイルの軸線を垂直方向に配設し、
前記円筒体の中空部内であってかつ前記高周波誘導加熱
コイルの中央位置に、前記鋼球を鋼球載置手段により配
置し、 b.該加熱コイルに高周波電源装置から高周波電力を供
給して、前記鋼球を予備加熱し、 c.予備加熱後、該鋼球を前記加熱コイルの中央位置か
ら上方位置まで、前記鋼球載置手段により移動させるこ
とにより、前記鋼球に上方に向かう電磁力を作用せしめ
て、前記鋼球を前記円筒体の中空部内の空間に浮揚さ
せ、 d.次に、前記加熱コイルへ供給する電力を調整して、
該鋼球の中心が前記円筒体の上端面位置より上方に位置
し、かつ前記鋼球最下点が前記円筒体の上端面から逸脱
しない範囲の空中に浮揚させることにより、前記鋼球を
水平方向の軸線を中心に自転させながら均一誘導加熱さ
せ、 e.前記鋼球の表面が所要焼入温度に達した後、前記加
熱コイルに供給する電力を止めて、前記鋼球を自然落下
させると共に、下方に配設された鋼球受け手段により前
記鋼球を受け、 f.該鋼球受け手段で受けた位置で、冷却手段により前
記鋼球の全表面を均一に焼入冷却することを特徴とする
鋼球の空中浮揚高周波焼入方法。
【0011】(2) a.半径方向に沿って放射状に延びる複数のスリットが
形成され、かつその軸線を垂直方向に配設された金属製
円筒体と、 b.該円筒体の外周を取り囲むように配設される螺旋状
の高周波誘導加熱コイルと、 c.該加熱コイルに、高周波電力を供給する高周波電源
装置と、 d.前記鋼球を前記円筒体の中空部であってかつ前記加
熱コイルの中央および上方位置に配設するため、該鋼球
を載置する鋼球載置手段と、 e.該鋼球載置手段を上下方向などに移動させるための
移動手段と、 f.加熱された後、自然落下する前記鋼球を受けるため
の鋼球受け手段と、 g.該鋼球受け手段で受けた位置で、前記鋼球の表面を
冷却する冷却手段とから成る。
【0012】そして、前記鋼球を前記鋼球載置手段と移
動手段により、前記加熱コイルの中央位置に配置して、
予備加熱した後、該鋼球を前記加熱コイルの上方位置ま
で移動させることにより、前記鋼球に上方に向う電磁力
を作用せしめて、前記鋼球を前記円筒体の中空部内の空
間に浮揚させ、次に前記加熱コイルへ供給する高周波電
力を調整して、前記鋼球を水平方向の軸線を中心に自転
させながら均一誘導加熱させ、前記鋼球の表面が所要焼
入温度に達した後、前記加熱コイルに供給する電力を止
めて、前記鋼球を自然落下させると共に、下方に配設さ
れた前記鋼球受け手段により前記鋼球を受け、ここで、
前記冷却手段により、前記鋼球の全表面を均一に焼入冷
却することを特徴とする鋼球の空中浮揚高周波焼入装置
である。
【0013】(3)前記鋼球載置手段がセラミックス系
電気的絶縁材から構成されていることを特徴とする。
【0014】(4)前記冷却手段は、前記鋼球に向って
冷却液を噴射する冷却装置であることを特徴とする。
【0015】(5)前記冷却手段が上部冷却部と下部冷
却部とからなり、該上部冷却部は前記金属製円筒体の上
方に配設され、前記下部冷却部は前記鋼球受け手段と一
体的に構成され、かつ前記円筒体の内部下方に配設され
ることを特徴とする。
【0016】
【作用】本発明は以上のように構成されているので、前
記鋼球を加熱コイルのほぼ中央位置に相当する金属製円
筒体内で予備加熱し、その後、該鋼球を、前記円筒体の
上端面位置で該鋼球と前記加熱コイルとの間に発生する
電磁力により空中浮揚し、水平軸を中心に自転せなが
ら、均一に高周波加熱する。次いで該鋼球を冷却手段に
より、急速冷却するので、該鋼球の表面に均一な焼入硬
化層を形成させることができる。
【0017】
【実施例】以下、図面に基づいて本発明の好適な実施例
を例示的に詳しく説明する。
【0018】図1ないし図5は、本発明の一実施例を示
す鋼球の空中浮揚高周波焼入装置で、図1は本装置の構
成を示す概念図、図2は高周波加熱部の平面図、図3は
同加熱部の縦断面図、図4は冷却部の縦断面図、図5は
鋼球受け具の斜視図である。
【0019】図1において、前記高周波焼入装置1は、
高周波加熱部2、冷却部3および被加熱体移送部4とか
ら構成されている。5は鋼球である。
【0020】前記高周波加熱部2は図2に示すように、
半径方向に沿って放射状に延びる複数のスリット6が形
成された(例えば、銅)金属製円筒体7と、該円筒体7
の外周を取り囲むように配置された螺旋状の高周波誘導
加熱する加熱コイル8と、これに電力を供給する高周波
電源装置9とから構成されている。
【0021】前記円筒体7は、下端部において、複数の
スリット6間の各セグメント7aが結合(電気的には、
一部絶縁)された構造になっており、各セグメント7a
を冷却するため、その内部に冷却水通路7bが形成さ
れ、この冷却水通路7bの一端は、導水パイプ10に、
他端は排水パイプ11に接続されている。
【0022】前記加熱コイル8も同様に、コイル8自体
を冷却するため、導水パイプ12および排水パイプ13
にそれぞれ接続されると共に、導線を介して、前記高周
波電源装置9に接続されている。
【0023】そして、前記円筒体7と該円筒体7の外周
を囲むように配置された前記加熱コイル8とは、その軸
線を垂直方向に一致させ、その高さ方向の関係は、円筒
体7の上端面と加熱コイル8の上端面が同一の高さにな
るように配置されている。
【0024】前記冷却部3は、冷却槽14、冷却液噴射
環15および鋼球受け具16から構成されさている。図
4に示すように、冷却液噴射環15は、前記冷却液槽1
4内に設置され、その内周面には多数の冷却液噴射穴1
5aが設けられ、この穴15aより、図示しないポンプ
を介して、所定圧力、流量の焼入冷却液17が噴射され
る。
【0025】冷却液槽14は、焼入れすべき鋼球5が大
径で、鋼球5の表面積が大きい場合、冷却液槽14に冷
却液17を満たし、鋼球5を侵漬冷却するか、または侵
漬冷却と噴射冷却を併用する場合に用いる。
【0026】前記鋼球受け具16は、加熱が終了した鋼
球5が、冷却焼入のため、加熱位置たら落下してきたと
き、これを受けるためのものであり、前記冷却液噴射環
15内のほぼ中心部の所定位置に配置されている。
【0027】この鋼球受け具16は、図5に示すよう
に、金属細線または金属製網により構成されている。こ
れは、焼入冷却時に、鋼球5表面全体を均一に冷却する
ためである。従って、なるべく網目を大きくした細線を
用い、鋼球5との接触面積が極力小さくなるようにして
いる。
【0028】被加熱体移送部4は、図1に示すように、
鋼球載置台18、昇降移送装置19および水平移送装置
20より構成されている。前記鋼球載置台18は、高周
波誘導加熱の影響を避けるため、セラミックス材より構
成され、鋼球載置部分は互に直角方向にV字形に溝加工
され、鋼球5を安定載置できる形状となっている。
【0029】前記鋼球載置台18に連結されている昇降
移送装置19は、前記円筒体7内へ鋼球5を挿入し、前
記加熱コイル8の中央位置である予備加熱位置21で停
止させる。この位置21で予備加熱後、浮揚加熱開始位
置22まで上昇させ、浮揚加熱の開始と同時に、下方向
へ移動し、前記円筒体7の外の所定位置で停止する機構
になっている。
【0030】前記昇降移送装置19に連結されている前
記水平移送装置20は、浮揚加熱の開始と同時に、前記
円筒体7内より下降し、円筒体7の外で停止した前記鋼
球載置台18を前記昇降移送装置19と共に、水平方向
に移動する。そして、浮揚加熱後、自然落下する鋼球5
と該鋼球載置台18とが、互に干渉しない位置に停止さ
せる。
【0031】前記高周波焼入装置1の動作説明をする前
に、鋼球5の空中浮揚加熱について説明する。図1にお
いて、鋼球5を前記円筒体7および加熱コイル8の上端
面23付近の前記浮揚加熱開始位置22に配置し、該加
熱コイル8に高周波電流Joを供給する。
【0032】今、該高周波電流Jo が図示の方向の流れ
に伴い、該高周波電流Jo によって磁束φが前記円筒体
7を中心に発生する。こ磁束φは鋼球5を貫通,作用
し、該鋼球5の表面に図示の方向に高周波誘導電流Je
が流れる。この高周波誘導電流Je により、該鋼球5の
表面はジュール加熱される。
【0033】他方、該鋼球5の表面に流れる誘導電流J
e と、その表面付近の磁束(磁束密度Bの磁束)との相
互作用により、その表面に電磁力Fが発生する。この電
磁力Fは誘導電流Je と磁束密度Bとの積に比例し、そ
の方向は、フレミング左手の法則により、図示の方向に
なる。
【0034】この電磁力Fは、前記円筒体7の軸心に向
う力Fc と、該鋼球5を浮揚する力Fu とに分力され
る。この浮揚力Fu が、該鋼球5の表面全体にわたって
発生し、該鋼球5を浮揚するのである。これによって該
鋼球5は空中で浮揚されながら加熱されることになる。
【0035】さらに、前記浮揚した該鋼球5が水平軸を
中心に自転を生じるのは、次のような作用によるものと
推察される。すなわち、鋼球5には高周波誘導加熱コイ
ル8の最上の巻回部分から最も大きな電磁力を受けるの
であるが、加熱コイル8は螺旋状でありその最上の巻回
部は水平面に対して傾斜している。そのため、前記巻回
部の最上部側に隣接する鋼球5の表面に流れる誘導電流
及びその表面に作用する磁束密度が、その表面の反対側
表面(前記巻回部の最下部分に対応する鋼球5の表面)
に比べて大きくなるため、前記表面に生じる電磁力は反
対側表面よりも常に大きくなる。その結果、該鋼球5は
その水平軸を中心に自転されながら、高周波誘導加熱さ
れる。
【0036】なお、該鋼球5の中心が前記円筒体7の上
端面位置23より下方にある場合には自転を生じない。
これは、円筒体7のスリット6に生じている磁束集中の
影響により、鋼球5を円筒体7の中空部内に保持する保
持力が作用しているからであると推察される。また、鋼
球5の最下点24を前記上端面位置23より上方に浮揚
させると、この鋼球5は浮揚状態が維持されることなく
円筒体7からこぼれ落ちてしまう。これは、円筒体7の
外部における磁束分布が均一でないために円筒体7の上
方位置に保持され得ないからであると推察される。
【0037】次に、図6ないし図9により、前記高周波
焼入装置1の動作を説明する。図6は加熱工程における
高周波加熱部2内の鋼球の位置を示す図、図7ないし図
9は加熱工程における鋼球の加熱状態を斜線で示す図で
ある。
【0038】 まず、焼入すべき鋼球5を、前記被加
熱体移送部4の鋼球載置台18上に載置し、同移送部4
の水平移送装置20および昇降移送装置19により、図
6(A)に示すように前記加熱コイル8のほぼ中央位置
に相当する前記円筒体7内の所定の予備加熱位置21で
停止させる。
【0039】 次に、高周波電源装置9から高周波電
力を、前記加熱コイル8に供給し、鋼球5の主として垂
直軸の周表面を深く所要温度まで所要時間予備加熱す
る。このときの鋼球5の加熱状態の断面を図7の斜線で
示す。
【0040】 予備加熱後、前記加熱コイル8へ電力
を供給しつつ、図6(B)に示すように、前記移送部4
の鋼球載置台18により、前記鋼球5のほぼ中心が、前
記加熱コイル8の上端面23、すなわち前記円筒体7の
上端面付近の浮揚加熱開始位置22まで上昇させて、前
記電磁力により鋼球5を空中に浮揚させる。
【0041】 次に、この浮揚加熱開始位置22で、
前記高周波電源装置9の出力を調整して、前記電磁力に
より該鋼球5が、そのほぼ中心が前記円筒体7の上端面
23位置から、前記鋼球5の最下点24が前記円筒体7
の上端面23から逸脱しない範囲の空中で浮揚させる。
【0042】それと同時に、前記鋼球載置台18を、前
記昇降移送装置19および水平移送装置20により、前
記円筒体7の外に退避させる。この状況を図6(C)に
示す。
【0043】 前記空中浮揚した鋼球5は、図6
(D)に示すように、前記円筒体7に対してその水平軸
25を中心に自転しながら、主として水平軸の周表面が
深く高周波誘導加熱される。このときの浮揚加熱のみに
おける鋼球5の加熱状態の断面を図8の斜線で示す。
【0044】 前記浮揚加熱を所要時間行ない鋼球5
の表面が所要焼入温度に達し、鋼球5の全表面の加熱状
態の断面が図9の斜線で示すように均一になると、前記
加熱コイル8への高周波電力の供給を停止する。該電力
を停止して鋼球5に作用する電磁力を消失させることに
より、鋼球5を垂直方向に自然落下させる。
【0045】 自然落下した加熱鋼球5は、冷却部3
を構成する冷却液噴射環15内に配置されている粗い金
網状の鋼球受け具16上に捕持される。同時に、前記冷
却液噴射環15の内周面に設けられた多数の噴射穴15
aより、所要圧力、流量で焼入冷却液を、前記鋼球5に
向って噴射させ、該鋼球5の表面を急速冷却する。そし
て焼入作業を終了する。
【0046】次に、本発明の鋼球の空中浮揚高周波焼入
装置の他の実施例として、前記冷却部3と異なった冷却
部30について説明する。図10は使用中の冷却部30
の断面図を示す。該冷却部30は、上部冷却液噴射装置
31、下部冷却液噴射装置32および鋼球受け具33か
ら構成される。前記、下部冷却液噴射装置32の上面に
は、図11の斜視図に示すように、粗い金網状の鋼球受
け具33が取り付けられており、前記上、下部噴射装置
31,32は上下方向に移送可能に、図示しない昇降装
置に連結されている。
【0047】前記上、下部噴射装置31,32は、対向
するほぼ平面上に多数の冷却液噴射穴が設けられてお
り、冷却液は、図示しないポンプにより、所定圧力、流
量で、前記加熱された鋼球5に対し上下方向から噴射さ
れる。
【0048】前記上、下部噴射装置31,32の焼入冷
却時における配置は、前記鋼球5の加熱が終了すると同
時に、上部噴射装置31は図示しない昇降装置により、
前記るつぼ7の上方から移動し所定の位置に停止する。
下部噴射装置32は図示しない昇降装置により、前記る
つぼ7に挿入され、前記鋼球受け具33で自然落下する
鋼球5を浮揚位置近傍で捕持して、所定の位置に停止
し、前記上、下噴射装置31,32から、同時に冷却液
を鋼球5に向けて噴射させ急速冷却する。そして鋼球5
の焼入れを完了する。
【0049】なお、前記下部噴射装置32は、冷却終了
後は、前工程で使用する鋼球載置台18と互に干渉しな
い位置に退避させておく。
【0050】前記実施例における具体的な試験例とその
結果は、下記のとおりである。 試験例: (1) 鋼球の材質:S45C (2) 鋼球の寸法:外径43mm (3) 高周波誘導加熱コイルの内径:70mm (4) 円筒体の内径:46mm 外径:65mm スリット幅:1mm セグメント数:8個 (5) 焼入条件 (a) 予備加熱条件 (イ)周波数:10kHz (ロ)出 力:20kW (ハ)加熱時間:6秒 (b) 浮揚加熱(本加熱)条件 (イ)周波数:10kHz (ロ)出 力:35kW (ハ)加熱時間:5秒 (c) 冷却条件 (イ)冷却液:ユーコンクエンチャントA10% (ロ)液 温:30℃ (ハ)圧 力:5kg/cm2 (ニ)流 量:80 l/min
【0051】前記試験例における結果は図12のとおり
であり、鋼球の水平方向部分の断面および垂直方向部分
の断面における焼入硬さの分布に示すように、鋼球の表
面にほぼ均一な焼入硬化層が形成されていることがわか
る。
【0052】なお、本発明の技術は前記実施例における
技術に限定されるものではなく、同様な機能を果す他の
態様の手段によってもよく、また本発明の技術は前記構
成の範囲内において種々の変更,付加が可能である。例
えば、被焼入体として鋼球に限らず鋼合金球,鉄系球な
どにも本発明を適用できる。
【0053】
【発明の効果】以上の説明から明かなように本発明の鋼
球の空中浮揚高周波焼入方法およびその装置によれば、
まず該鋼球を加熱コイルのほぼ中央部に相当する金属製
円筒体内に配置して予備加熱し、その後、該鋼球を前記
円筒体の上端面位置に配置し、前記加熱コイルへ供給す
る高周波電力を調整して、前記鋼球と該加熱コイルとの
間に発生する電磁力により空中浮揚させ、かつその水平
軸を中心に自転させながら該鋼球を高周波加熱し、次に
該鋼球を冷却手段により冷却するようにしたので、予備
加熱による加熱領域と浮揚,自転状態の下での高周波誘
導加熱による加熱領域が重畳される結果、鋼球の全表面
を均一に加熱パターンにすることができ、これを冷却す
ることにより、該鋼球の表面に均一な焼入硬化層が得ら
れる。そして、効率よく高周波焼入することができる。
【0054】また、本発明の焼入方法及び装置によれ
ば、作業効率の大幅な向上、製品コストの低減、品質の
向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す鋼球の空中浮揚高周波
焼入装置の構成概念図である。
【図2】図1の中の高周波加熱部の平面図である。
【図3】図2の高周波加熱部の縦断面図である。
【図4】図1のなかの冷却部の縦断面図である。
【図5】鋼球受け具の斜視図である。
【図6】加熱工程における高周波加熱部内の鋼球の位置
図で、(A)は予備加熱位置、(B)は浮揚加熱開始位
置まで移送配置、(C)浮揚加熱開始位置、(D)浮揚
加熱位置を示す。
【図7】予備加熱における鋼球の加熱状態(斜線)を示
す断面図で、(A)は縦断面図、(B)は横断面図であ
る。
【図8】浮揚加熱における鋼球の加熱状態(斜線)を示
す断面図で、(A)は縦断面図、(B)は横断面図であ
る。
【図9】浮揚加熱後における鋼球の加熱状態(斜線)を
示す断面図で、(A)は縦断面図、(B)は横断面図で
ある。
【図10】本発明の他の実施例における使用中の冷却部
の縦断面図である。
【図11】図10の冷却部の下部冷却液噴射装置の斜視
図である。
【図12】試験結果としての鋼球の焼入硬さの分布図で
ある。
【図13】従来の鋼球表面の高周波焼入説明図で、
(A)は円筒状の加熱コイルによる鋼球の加熱状態(斜
線)を示す図、(B)は球状加熱コイルによる鋼球の加
熱状態(斜線)を示す図である。
【図14】従来の他の鋼球表面の高周波焼入説明図で、
鋼球の加熱状態(斜線)を示す図である。
【符号の説明】
3 冷却部 5 鋼球 6 スリット 7 金属製円筒体 8 加熱コイル 9 高周波電源装置 15 冷却液噴射環 16 鋼球受け具 17 冷却液 18 鋼球載置台 21 予備加熱位置 22 浮揚加熱開始位置 31 上部冷却液噴射装置 32 下部冷却液噴射装置 33 鋼球受け具

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼球の高周波焼入れに際し、 a.半径方向に沿って放射状に延びる複数のスリットが
    形成された金属製円筒体の外周を取り囲むように螺旋状
    の高周波誘導加熱コイルを配設すると共に、前記円筒体
    及び高周波誘導加熱コイルの軸線を垂直方向に配設し、
    前記円筒体の中空部内であってかつ前記高周波誘導加熱
    コイルの中央位置に、前記鋼球を鋼球載置手段により配
    置し、 b.該加熱コイルに高周波電源装置から高周波電力を供
    給して、前記鋼球を予備加熱し、 c.予備加熱後、該鋼球を前記加熱コイルの中央位置か
    ら上方位置まで、前記鋼球載置手段により移動させるこ
    とにより、前記鋼球に上方に向かう電磁力を作用せしめ
    て、前記鋼球を前記円筒体の中空部内の空間に浮揚さ
    せ、 d.次に、前記加熱コイルへ供給する電力を調整して、
    該鋼球の中心が前記円筒体の上端面位置より上方に位置
    し、かつ前記鋼球最下点が前記円筒体の上端面から逸脱
    しない範囲の空中に浮揚させることにより、前記鋼球を
    水平方向の軸線を中心に自転させながら均一誘導加熱さ
    せ、 e.前記鋼球の表面が所要焼入温度に達した後、前記加
    熱コイルに供給する電力を止めて、前記鋼球を自然落下
    させると共に、下方に配設された鋼球受け手段により前
    記鋼球を受け、 f.該鋼球受け手段で受けた位置で、冷却手段により前
    記鋼球の全表面を均一に焼入冷却することを特徴とする
    鋼球の空中浮揚高周波焼入方法。
  2. 【請求項2】a.半径方向に沿って放射状に延びる複数
    のスリットが形成され、かつその軸線を垂直方向に配設
    された金属製円筒体と、 b.該円筒体の外周を取り囲むように配設される螺旋状
    の高周波誘導加熱コイルと、 c.該加熱コイルに、高周波電力を供給する高周波電源
    装置と、 d.前記鋼球を前記円筒体の中空部であってかつ前記加
    熱コイルの中央および上方位置に配設するため、該鋼球
    を載置する鋼球載置手段と、 e.該鋼球載置手段を上下方向などに移動させるための
    移動手段と、 f.加熱された後、自然落下する前記鋼球を受けるため
    の鋼球受け手段と、 g.該鋼球受け手段で受けた位置で、前記鋼球の表面を
    冷却する冷却手段とから成り、前記鋼球を前記鋼球載置
    手段と移動手段により、前記加熱コイルの中央位置に配
    置して、予備加熱した後、該鋼球を前記加熱コイルの上
    方位置まで移動させることにより、前記鋼球に上方に向
    う電磁力を作用せしめて、前記鋼球を前記円筒体の中空
    部内の空間に浮揚させ、次に前記加熱コイルへ供給する
    高周波電力を調整して、前記鋼球を水平方向の軸線を中
    心に自転させながら均一誘導加熱させ、前記鋼球の表面
    が所要焼入温度に達した後、前記加熱コイルに供給する
    電力を止めて、前記鋼球を自然落下させると共に、下方
    に配設された前記鋼球受け手段により前記鋼球を受け、
    ここで、前記冷却手段により、前記鋼球の全表面を均一
    に焼入冷却することを特徴とする鋼球の空中浮揚高周波
    焼入装置。
  3. 【請求項3】 前記鋼球載置手段がセラミックス系の電
    気的絶縁材から構成されていることを特徴とする請求項
    2の鋼球の空中浮揚高周波焼入装置。
  4. 【請求項4】 前記冷却手段は、前記鋼球に向って冷却
    液を噴射する冷却装置であることを特徴とする請求項2
    の鋼球の空中浮揚高周波焼入装置。
  5. 【請求項5】 前記冷却手段が上部冷却部と下部冷却部
    とからなり、該上部冷却部は前記金属製円筒体の上方に
    配設され、前記下部冷却部は前記鋼球受け手段と一体的
    に構成され、かつ前記円筒体の内部下方に配設されるこ
    とを特徴とする請求項2の鋼球の空中浮揚高周波焼入装
    置。
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