JPH0585291A - エアーバツグの製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【構成】 筒形状布帛１の開口部を左右に折り込んで重
なり部を接合した四角形の側面と四角形の四面との六面
体箱型袋体であって、上記四角形の四面のうち１面にイ
ンフレーター取付部５を設けることにより、各周辺部に
は接合部がない構造のエアーバッグの製造方法。 【効果】 従来のエアーバッグは円形もしくは四角形の
２枚の布帛を重ねて周辺部に接合したものであるため、
内圧により接合部にかかる力は強く、接合部での破損が
問題となる。そのため高強力高重量の布の使用が不可欠
であった。本発明のエアーバッグの製造方法で得られる
エアーバッグは、接合部が周辺部には無く、面の一部分
となっているため接合力は強い。そのため低強力軽量布
の使用が可能となり柔軟かつ収納性も良好なエアーバッ
グが得られる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は自動車等高速移動体の衝
突時、乗員を危険から保護するためのエアーバッグの製
造方法に関する。さらに詳しくは、筒形状織物からな
り、折り畳み重なり部を接合することにより箱型袋体と
した軽量、かつ、収納性が良好なエアーバッグを簡単に
製造できる方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、エアーバッグは円形状又は四角形
状に裁断した２枚の布地の外周部をミシン縫製、あるい
は、接着剤接着によって接合して袋形状を形成するか、
円形状に一重部と二重部を織成することによって袋形状
を形成する方法が用いられている。

【０００３】これら従来の方法で得られるエアーバッグ
の最大の問題点は、自動車などの衝突時にガス発生装置
であるインフレーターが作動して、発生したガスの圧に
よりエアーバッグが瞬時に展張したとき、エアーバッグ
に加わる内圧によりエアーバッグの周辺部に位置する接
合部分に剥離力がかかり、この部分からのバーストのお
それがあることであった。

【０００４】また、特開昭５０−８６０４２号公報には
箱型形状のエアーバッグが開示されているが、これは２
枚の生地よりなるもので、各生地の角部において生地の
内面同士が重なり合うようにして接合されたものであっ
て上記と同様、接合部には剥離力がかかるために、バー
ストの問題は解消されないものである。そのためエアー
バッグは、信頼性、安全性の面より用いる布帛強力を過
剰に大きくする必要があり、また、接合部の補強や目ど
め処理などで製造工程も複雑となり、エアーバッグとし
て高重量、嵩高となって収納面からも問題となってい
た。

【０００５】上記のような問題を解決するため、接合部
分からのバーストのおそれがないエアーバッグ、即ち、
周辺部に接合部がなく、剥離力がかからないエアーバッ
グの開発が切望されていた。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、周辺
部分にバーストのおそれがなく、軽量かつ、収納性が良
好で簡単に製造できるエアーバッグの製造方法を提供し
ようとするものである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、筒形状
布帛の両方の開口辺部が左右対称に折り込まれて形成し
た台形状部の台形底辺部において、布帛の内面と外面が
相互に重なり合って接合されており、さらに該重なり接
合部の三角形状部が折り畳まれて上記台形状部に接合し
た側面を有する六面体の箱型袋体であり、かつ、上記台
形底辺部の重なり接合部よりなる側面以外の面にインフ
レーター取りつけ部を有することを特徴とするエアーバ
ッグの製造方法、である。

【０００８】本発明において布帛とは、織布、編布、不
織布、あるいは、これらの複合体など、繊維糸条からな
る平面シートをいうが、エアーバッグの耐圧性やバッグ
製造工程中の扱い易さなどから織布が好ましい。織布は
繊維糸条のマルチフィラメントヤーン、加工糸、テープ
ヤーン、スプリットヤーン、あるいは、これらの複合糸
からなる平織、バスケット織、格子織、朱子織、綾織等
の織布である。

【０００９】また本発明に用いる繊維糸条の材料は、ナ
イロン６、６６、４６などのポリアミド繊維、ポリパラ
フェニレンテトラミド繊維などのアラミド繊維、ポリア
ルキレンテレフタレートなどのポリエステル繊維、全芳
香族ポリエステル繊維、ビニロン繊維などが挙げられ
る。本発明に用いる布帛はエアーバッグの排気方式に応
じて、基布排気方式であれば糸使いデニール、織密度、
目付などの調整により所要の通気性を有せしめるか、部
分不通気性化加工を行なったものが好ましい。また、ベ
ントホール排気方式であれば完全不通気性化加工を行な
ったものが好ましい。

【００１０】不通気性化加工は布帛の少なくとも片面に
クロロプレンゴム、シリコンゴム、難燃性アクリルゴ
ム、難燃性ウレタン樹脂などの難燃性エラストマーによ
るコーティング、トッピング、ラミネートなどの被覆加
工であるが、特に難燃化が要求されないときには、ＳＢ
Ｒ、ＮＢＲ．ＮＲ．ウレタンなどのエラストマー加工で
もよい。

【００１１】また、部分不通気性化加工は上記難燃性エ
ラストマーあるいは非難燃性エラストマーによる部分コ
ーティング、あるいはエアーバッグのドライバー側のみ
のコーティングなどの被覆加工が好ましい。また、基布
排気方式であっても必要に応じて難燃化加工を施すこと
が好ましい。

【００１２】本発明の製造方法は、接合部を重ね合わせ
て接着することが必要である。本発明に用いる筒形状布
帛は、筒織物、あるいは、一枚の長方形の布帛の短辺部
を相互に重ね合わせ接合したものである。筒形状布帛の
開口部の外周ならびに長さは、エアーバッグの大きさ、
容量に応じて適宜選定すればよいが通常外周は１００〜
２００ｃｍ程度、また、幅は５０〜１５０ｃｍ程度が好
ましい。

【００１３】本発明のエアーバッグの製造方法は、筒形
状布帛の開口部の辺部を内側に左右対称に折り込むもの
である。この折り込み部の形状は台形状となる。折り込
み量は台形底辺の長さが上記開口部の外周の１／２より
多くすることが好ましい。これにより台形底辺部におい
て、布帛の内面と外面が相互に重なり合う。即ち、折り
込み部の辺が次に折り込んだ折り込み部の辺と相互に重
なり合うだけの量を折り込むのである。この重なり合う
量は接合部の強力あるいは作業性などから重ね代として
１〜６ｃｍ程度が好ましい。従って、本発明のエアーバ
ッグの製造方法の、折り畳み量は開口部外周の１／２プ
ラス０．５〜３ｃｍ程度となる。本発明のエアーバッグ
の製造方法は布帛の内面と外面の重なり合い部を相互に
接合する。それによって長六角形状の閉口部が形成され
る。

【００１４】本発明のエアーバッグ製造方法は、この長
六角形の閉口部の三角形状部を更に折り畳んで前記台形
状部に接合する。これによって長六角形状の閉口部は、
長四角形状の閉口部となる。本発明では前記筒形状布帛
の他方の開口部についても同様に折り込み接合して長四
角形状の閉口部を形成する。

【００１５】かくして得られた袋体は六面体箱型とな
る。そして得られたエアーバッグの接合部に加わる力は
剪断力となる。本発明において筒形状布帛の開口部の折
り込みによる台形底辺部の重ね合わせ部ならびに、これ
により得られる長六角形状閉口部の三角形状部の接合方
法は超音波ウエルダー、高周波ウエルダーなどによる溶
着接合、ゴム系あるいは樹脂系接着剤による接着接合、
ホットメルト系接着剤による熱接着接合、これらとミシ
ン縫製との併用接合などが用いられるが、重ね代を面で
接合することが肝要である。特に、接着剤接合、ホット
メルト剤接着接合などの接着接合が効果的で比較的容易
に行ないえるため好ましい。しかし、布帛の糸間に接着
剤が浸透しすぎると好ましくない。この場合、接着剤は
あらかじめ布帛の折り込みによる重なり合い部となる位
置に付与しておいてもよく、また、折り込みの都度、そ
の部分に接着剤を付与してもよい。

【００１６】なお、溶着接合の場合は、接合が他の部分
にまで及ばないよう、溶着しない材料によるセパレータ
ーなどを併用することが好ましい。本発明のエアーバッ
グの製造方法は筒形状布帛の左右開口部が折り込みによ
る重なり合い部の接合によって得られるものであり、そ
の形状は六面体箱型の袋体となる。そして接合部は周辺
部にはなく、接合は全て重ね合わせによるものであるか
ら、力のかかり方は面でうける剪断力となり接合強力の
極めて高いものとなるのである。

【００１７】なお、インフレーターの取りつけ部は箱型
袋体の台形底辺部以外の面の四面のいづれかに設ける
が、好ましくは筒形状に接合した面がよい（図１参
照）。また、取付部の形成は、あらかじめインフレータ
ーと同寸法の切欠部や切り込み部を形成しておくか、重
ね合わせ後に取付部を形成してもよい。本発明の製造方
法は、従来のような高強力高重量の織物を使用しなくて
もバーストなどのおそれがないエアーバッグを製造する
ことができる。また、軽量、かつ、収納性の面でも良好
なものが得られ、従来のような複雑な製造工程を経ず、
簡単な製造方法である。

【００１８】

【実施例】以下、実施例により詳細に説明する。

【００１９】

【実施例１】４２０デニールのナイロン６６糸よりなる
経、緯糸密度４６本／インチの平織物（幅７４ｃｍ）の
片面にクロロプレンゴムをコーティングした（固型分塗
布量５０ｇ／ｍ² ）。この布帛を長さ方向に１６４ｃｍ
カットして幅７４ｃｍ長さ１６４ｃｍの長方形布帛を得
た。これを縦６０ｃｍ横２０ｃｍ長さ６０ｃｍの組立式
枠に巻きつけ、重なり部（重なり代４ｃｍ）を２０μｍ
厚のホットメルトフィルム（共重合ナイロン、ＭＰ１２
０℃）で熱接着（１８０℃）し周長１６０ｃｍの筒形状
布帛とした。

【００２０】この筒形状布帛の一方の開口部を枠の縦に
沿って左右とも１２ｃｍ内側に折り曲げて形成された台
形状底辺部を同様に接着した（台形底辺の長さ８４ｃ
ｍ、重なり代４ｃｍ）。上下に生じた台形の傾部で形成
された三角形を内側に折り畳んで同様に接合した。他方
の開口部についても同様に折り曲げ接合した。得られた
箱型袋体は縦、横、長さが２０ｃｍ、６０ｃｍ、５０ｃ
ｍの大きさである。この箱形袋体の長さ方向の重ね接合
部の中央に直径９ｃｍの切り込みを入れ、インフレータ
ー取りつけ部としエアーバッグとした。なお、枠は分
解、取りつけ部より抜きとった。得られたエアーバッグ
は空気充填（内圧０．０１ｋｇ／ｃｍ² 時）の内容積が
約６０リットルである。また、重量は２８０ｇ／ｍ² で
軽量柔軟であり、コンパクトに折り畳むことができ収納
性は良好である。

【００２１】得られたエアーバッグの接合部にかかる力
は剪断力となり、布帛強力とほぼ同じ６７ｋｇ／１ｃｍ
幅であった。このエアーバッグの内部にゴム風船を入
れ、風船の中に空気を内圧２．２ｋｇ／ｃｍ² まで充填
したがエアーバッグは破裂や損傷は全く起らなかった。
かくしてなる本発明の製造方法によって得られるエアー
バッグは一枚の筒形状布帛の折り畳みによる重なり部分
を接合してなるものであるから、接合部での力のかかり
方は剪断力となり、接合部の強力は非常に強いものとな
る。

【００２２】また、本発明の製造方法は、一枚の筒形状
布帛の折り畳み重ね接合によるものであるため、接合部
の特別な補強あるいは目どめなどは必要としない。その
ため製造工程も極めて単純であり、簡単に製造できる方
法である。さらに、本発明のエアーバッグの製造方法は
筒織物あるいは四角形の布帛を用いるものであるから従
来の円形バッグの如き材料ロスは全く発生しないため、
コスト面でも極めて有利となる。

【００２３】

【比較例１】実施例１と同じ長さ１６４ｃｍの布帛（幅
５４ｃｍ）を縫製し筒形状とした。その両方の開口部に
縦、横６４ｃｍ、２４ｃｍの同じ布帛を縫代各２ｃｍと
して周縁部を縫製し、実施例１と同じ箱型袋体を作成
し、インフレーター取りつけのための切欠部を設けエア
ーバッグとした。

【００２４】この縫製部の引張り試験による強力（剥離
強力）は３５ｋｇ／ｃｍであった。このエアーバッグを
実施例１と同様にしてゴム風船を入れ空気を充填したと
ころ１．２ｋｇ／ｃｍ² で縫製部が破壊した。

【００２５】

【発明の効果】本発明の製造方法によって得られるエア
ーバッグはガス圧により展張したときにエアーバッグの
縁部には接合部が位置しないため、布帛の強力がそのま
まエアーバッグの耐圧強力となるものである。また、本
発明で得られるエアーバッグは、布帛の低目付化、低デ
ニール化が可能となり、軽量、柔軟、低嵩高性で収納性
良好なエアーバッグとなる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のエアーバッグの製造方法によって得ら
れる、エアーバッグの一例を示す斜視図。

【図２】本発明のエアーバッグの製造方法の順序を示
す、一枚の布帛の端部を重ね合わせて接合した、筒形状
布帛の斜視図。

【図３】図２の状態に次いで、筒形状布帛の片側の一方
の開口辺部を折り込んだ状態を示す斜視図。

【図４】図３の状態に次いで、左右対称に折り込んだ状
態を示す斜視図。

【図５】図４の状態から三角形状部を折り畳み、台形状
部に接合した状態を示す斜視図。

【符号の説明】

１．筒形状布帛 ２．筒形状布帛の開口辺部の一端を折り込んだ台形底辺
部 ３．２と対称に折り込んだ台形底辺部 ４．三角形状部 ５．インフレーター取りつけ部

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 筒形状布帛の両方の開口辺部が左右対称
   に折り込まれて形成した台形状部の台形底辺部におい
   て、布帛の内面と外面とが相互に重なり合って接合され
   ており、さらに該重なり接合部の三角形状部が折り畳ま
   れて上記台形状部に接合した側面を有する六面体の箱型
   袋体であり、かつ、上記台形底辺部の重なり接合部以外
   の面のいづれかの面にインフレーター取りつけ部を有す
   ることを特徴とするエアーバッグの製造方法。