JPH0559860B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

＜産業上の利用分野＞ 本発明は、コンデンサー及び電歪素子の材料と
して用いられ、焼結温度が低く、しかも高誘電率
である誘電磁器組成物に関する。 ＜従来技術＞ 電子部品の小型化、高周波化及び高信頼化に対
応するコンデンサーとして、積層型セラミツクコ
ンデンサーが知られている。 従来の前記積層型セラミツクコンデンサーは、
チタン酸バリウム等の高誘電体磁器組成物を薄く
シート状にしたものに、Pt、Pd−Pt等の高温安
定性の良い貴金属ペーストを印刷して電極とし、
このシートを多数層積み重ねて、しかる後に焼結
し、さらに前記磁器層（コンデンサ素体）の各電
極を電気的並列に接続し得るように、外部電極を
設けて構成される。 ＜発明が解決しようとする問題点＞ ところで、前記した電子部品の小型化に対応す
るためには、コンデンサ素体の積層数は、できる
だけ少ないことが望ましい。このため、コンデン
サ素体の静電容量を大きくするために、前記磁器
組成物の誘電率はできるだけ高いことが要求され
る。 また、積層型セラミツクコンデンサーの形成に
際して、前記したように従来の磁器組成物を用い
た場合には1300℃以上の高温で焼結しなければな
らず、電極は高温安定性の良い貴金属ペーストが
必要であり、高価なものとなつている。そこで、
低温焼結が可能となれば、Ni、Co、Fe等の廉価
な導電性材料で電極を形成することができる。こ
のため、1100℃以下の低温で焼結することが可能
なコンデンサ材料が望まれている。 また電歪素子としても、その歪量を増すために
高誘電率であり、しかも前記と同様の課題から低
温焼結が可能な材料が望まれている。 このほか、前記した積層型のコンデンサ、電歪
素子に限定されず、高誘電率で、低焼結温度の誘
電磁器組成物は、種々の理由によつて期待される
ところである。 本発明は、かかる要請に対応し、高誘電率を有
し、しかも低温焼結が可能な誘電磁器組成物の提
供を目的とするものである。 ＜問題点を解決するための手段＞ 第一の発明は、ニツケル・ニオブ酸鉛、チタン
酸鉛、リチウム・鉄・タングステン酸鉛の三成分
からなる磁器組成物であつて、 その組成式を ｘ［Pb（Ni_1/3Nb_2/3O₃］・ｙ［PbTiO₃］・ｚ［Pb
（Li_1/4Fe_1/4W_1/2）O₃］ （ただしｘ＋ｙ＋ｚ＝1.00） であらわしたとき、これら三成分の状態図におい
て、 ｘ＝0.83、ｙ＝0.15、ｚ＝0.02の点ａ ｘ＝0.65、ｙ＝0.15、ｚ＝0.20の点ｂ ｘ＝0.40、ｙ＝0.30、ｚ＝0.30の点ｃ ｘ＝0.40、ｙ＝0.42、ｚ＝0.18の点ｄ ｘ＝0.56、ｙ＝0.42、ｚ＝0.02の点ｅ を順次結んだ多角形ａ，ｂ，ｃ，ｄ，ｅの組成範
囲内にある誘電磁器組成物である。 また第二の発明は、前記組成物を基本組成と
し、該組成物に二酸化マンガンが添加されてなる
誘電磁器組成物である。 ＜第一発明の実施例＞ ● 試料 出発原料として高純度のPbO、NiCO₃、
Nb₂O₅、TiO₂、Fe₂O₃、WO₃、Li₂CO₃を用い、
第一表及び添付図面中に打点される試料Ａ〜Ｗ
の組成が得られるように秤量し、これをアルミ
ナのポツトミルで乾式による一次粉砕及び混合
を施した後、大気中800〜830℃で２時間仮焼す
る。さらにこの仮焼物に適量の有機バインダと
水を加え、再びポツトミルを用い、16時間の二
次粉砕及び混合を施した後、噴霧乾燥によつて
造粒する。この整粒された原料粉末を1000Kg／
cm²のプレス圧で30mmφ×１mmｔの円板状に成形
する。次にこの成形体を700℃下で２時間、バ
インダー抜きを行つた後、大気中850〜1200℃
で２時間焼成する。最後に、この焼成体の表裏
面に、銀電極を720℃で焼付け、誘電体試料と
する。 ● 第一の発明についての結果 前記手段により試料を形成し、各試料の特性
を調べた結果、その配合組成に対応して第一表
のようになつた。 なお、表の誘電率ε及び誘電損失tanδは、周
波数1KHz、1Vrms、25℃の条件で測定した。
また比抵抗は、直流500Vを１分間印加して測
定した絶縁抵抗と、試料の焼成後の寸法により
算出した。

【表】 前表により明らかなように、添付の状態図で示
される本発明の範囲内の誘電磁器組成物（試料Ａ
〜Ｏ）は誘電率εが大きく、しかも焼結温度が低
い。 ＜第一の発明の限定理由＞ 第一の発明の組成は、焼成温度が1100℃以下で
あり、誘電率εが2000以上であるとともに、誘電
損失tanδが５％以下である条件を満たす範囲によ
つて限定されるものである。 従つて、各成分は前記した実験により次の理由
で範囲限定される。 (イ) Pb（Ni_1/3Nb_2/3）O₃(x)を0.40〜0.83にした理由 ｘが0.40未満では試料Ｑ、Ｒ、Ｓ、Ｔのよう
に誘電率が200未満で、かつ誘電損失tanδが５
％を越えることとなつて前記条件を満たさず、
また0.83を越えると、試料Ｕのように焼成温度
が高く、前記条件を満たさない。 (ロ) PbTiO₃(y)を0.15〜0.42にした理由 ｙが0.15未満では試料Ｕ、Ｗのように焼成温
度が高く、前記条件を満たさず、また0.42を越
えると、試料Ｐ、Ｑ、Ｔのように誘電率ε及び
誘電損失tanδが前記条件を満たさない。 (ハ) Pb（Li_1/4Fe_1/4W_1/2）O₃(z)を0.02〜0.30にした
理由 Ｚが0.02未満では試料Ｖのように焼成温度が
高く、前記条件を満たさず、また0.30を越える
と、試料Ｒのように誘電損失tanδが悪く、前記
条件を満たさない。 ＜第二の発明の実施例＞ ● 試料 出発原料として高純度のPbO、NiCO₃、
Nb₂O₅TiO₂、Fe₂O₃、WO₃、Li₂CO₃、MnO₂を
用い、これを第二表の試料MG、MC、MH₁〜
MH₅の組成になるように所定量秤量し、前述
の実施例と同じ工程及び条件で製作したものを
誘電体試料とした。 ここで試料MG、MI、Ｍは、夫々前記した
試料Ｇ、Ｉ、Ｃと同一組成の材料に、MnO₂を
0.1重量％添加したものであり、MH₁〜MH₅
は、前記した試料Ｈに夫々所定重量％のMnO₂
を添加したものである。 ● 第二の発明についての結果 各特性を調べた結果、その配合組成に対応し
て次の第二表のようになつた。

【表】 前表により明らかなように、二酸化マンガンの
添加により、誘電損失tanδが顕著に低下した。ま
た焼結温度は、二酸化マンガンを添加しない場合
と同じく、低いことが示された。誘電率は二酸化
マンガンを添加しない場合に比して若干低下する
が、いずれも2000以上の高誘電率であつた。 ＜発明の効果＞ 第一の発明にかかる誘電磁器組成物は、前記実
験例で明らかにしたように、焼結温度が低く、か
つ誘電率εが大である。 また第二の発明は、前記組成物の特性に重畳し
て、低い誘電損失tanδを生じるものである。 このため、コンデンサーや電歪素子の材料とし
て極めて有用である。

【図面の簡単な説明】

添付図面は、三成分の状態図を示す。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ ニツケル・ニオブ酸鉛、チタン酸鉛、リチウ
   ム・鉄・タングステン酸鉛の三成分からなる磁器
   組成物であつて、 その組成式を ｘ［Pb（Ni_1/3Nb_2/3）O₃］・ｙ［PbTiO₃］・ｚ［
   Pb（Li_1/4Fe_1/4W_1/2）O₃］ （ただしｘ＋ｙ＋ｚ＝1.00） であらわしたとき、これら三成分の状態図におい
   て、 ｘ＝0.83、ｙ＝0.15、ｚ＝0.02の点ａ ｘ＝0.65、ｙ＝0.15、ｚ＝0.20の点ｂ ｘ＝0.40、ｙ＝0.30、ｚ＝0.30の点ｃ ｘ＝0.40、ｙ＝0.42、ｚ＝0.18の点ｄ ｘ＝0.56、ｙ＝0.42、ｚ＝0.02の点ｅ を順次結んだ多角形ａ，ｂ，ｃ，ｄ，ｅの組成範
   囲内にある誘電磁器組成物。 ２ ニツケル・ニオブ酸鉛、チタン酸鉛、リチウ
   ム・鉄・タングステン酸鉛の三成分からなる磁器
   組成物であつて、 その組成式を ｘ［Pb（Ni_1/3Nb_2/3）O₃］・ｙ［PbTiO₃］・ｚ［
   Pb（Li_1/4Fe_1/4W_1/2）O₃］ （ただしｘ＋ｙ＋ｚ＝1.00） であらわしたとき、これら三成分の状態図におい
   て、 ｘ＝0.83、ｙ＝0.15、ｚ＝0.02の点ａ ｘ＝0.65、ｙ＝0.15、ｚ＝0.20の点ｂ ｘ＝0.40、ｙ＝0.30、ｚ＝0.30の点ｃ ｘ＝0.40、ｙ＝0.42、ｚ＝0.18の点ｄ ｘ＝0.56、ｙ＝0.42、ｚ＝0.02の点ｅ を順次結んだ多角形ａ，ｂ，ｃ，ｄ，ｅの組成範
   囲内の基本組成物に、二酸化マンガンが添加され
   てなる誘電磁器組成物。