JPH0532997Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 【産業上の利用分野】

この考案は、高倍率エツチング処理が施された
いわゆるダブルアノード型の電解コンデンサに関
する。

【従来の技術】

ダブルアノード型電解コンデンサは、ストロボ
発光装置などの発光電流を流すために用いられ、
急速な充放電に適しかつカメラやストロボ発光装
置の内部に設置されるため、その実装体積などと
の関係から、一般の電解コンデンサに比較して単
位体積当りの静電容量を大きくして小型化ととも
に、大容量化を実現している。 一般的なアルミニウム電解コンデンサでは、各
１枚の陽極側の電極箔と陰極側の電極箔との間に
セパレータ紙を介在させて円筒状に巻回して形成
されているが、各電極箔には、静電容量を増加さ
せるために電気化学的エツチング処理によつて表
面積を拡大している。 しかし、高度なエツチング処理は電極箔の機械
的強度を低下させるので、その心材層を残す程度
のエツチング処理が行われており、このようなエ
ツチング処理では、単位体積当りの静電容量に限
界を生じる。 このため、ダブルアノード型電解コンデンサで
は、第３図に示すように、２枚の陽極側の電極箔
２，４を重ね合わせるとともに、陽極側の電極箔
２，４の非対面側にセパレータ紙６，８を介在さ
せて陰極側の電極箔１０を重ね合わせ、第４図に
示すように、円筒状に巻回した電解コンデンサ素
子を用いている。 そして、陽極側の電極箔２，４には、エツチン
グピツト１２が貫通するいわゆるトンネルエツチ
ングと称される高倍率のエツチング処理を施し、
その表面積の拡大を図つている。 このような電解コンデンサでは、２枚の陽極側
の電極箔２，４を重ね合わせ、高倍率のエツチン
グ処理と相俟つて、陽極面積の増大と体積効率の
増加によつて、通常の電解コンデンサに比較して
CV積が３割程度大きくなり、小型・大容量化が
図れるなどの利点がある。

【考案が解決しようとする課題】

しかしながら、このようなダブルアノード型の
電解コンデンサでは、陽極側の電極箔２，４の折
り曲げ、引つ張りなどの加工処理に対して機械的
強度は高度なエツチング処理のため低下し、巻回
に際して折れや亀裂を生じ易い欠点がある。 特に、電解コンデンサ素子の巻回開始端部で
は、その曲率半径が小さいため、陽極側の電極箔
２，４は折り曲げを強いられることになり、巻回
中心部には折れや亀裂などの破損状態を生じ、電
気的な短絡などの不都合を招来する。 また、ダブルアノード型では２枚の陽極側の電
極箔２，４が、第４図に示すように、同時に巻回
を開始することになるので、１巻回の後、次の巻
回部が再び到来する際に、その巻回開始端部によ
る段差が生じ、２周目の陽極側の電極箔２，４が
急な角度で折り曲げられることになる。陰極側の
電極箔１０でおよびセパレータ紙６，８が存在す
るので、若干は緩和される傾向にあるが、これら
の厚さに対して比較的厚い２枚の陽極側の電極箔
２，４の存在で折り曲げ角度が大きく、陽極側の
電極箔２，４には亀裂や折れなどの破損状態を惹
起する。 そこで、この考案は、このような陽極側の電極
箔の巻回開始端部による段差で陽極側の電極箔に
生じるストレスを緩和し、電極箔の折れや亀裂な
どの損傷を防止した電解コンデンサを提供するこ
とを目的とする。

【課題を解決するための手段】

すなわち、この考案の電解コンデンサは、第１
及び第２の陽極側の電極箔２２，２４と陰極側の
電極箔３０との間にセパレータ紙２６，２８を介
在させて円筒状に巻回した電解コンデンサ素子２
０を用いた電解コンデンサであつて、前記電解コ
ンデンサ素子の中心部に前記セパレータ紙を円筒
状に巻き込み、このセパレータ紙の周面に前記第
１の陽極側の電極箔の巻回開始端部を設置し、こ
の巻回開始端部から１mm以上の僅かに変位した前
記第１の陽極側の電極箔の周面の位置に前記第２
の陽極側の電極箔の巻回開始端部を設置して前記
第１及び第２の陽極側の電極箔を重ね合わせて巻
回してなるものである。

【作用】

したがつて、この考案は、各陽極側の電極箔の
巻回開始端部を１mm以上の僅かの変位長を以て変
位させることにより、巻回開始部での段差の発生
を緩和させ、その段差による陽極側の電極箔に作
用するストレスを低減させている。

【実施例】

以下、この考案の実施例を図面を参照して詳細
に説明する。 第１図および第２図はこの考案の電解コンデン
サの実施例を示している。 第１図において、電解コンデンサ素子２０は、
第１及び第２の陽極側の電極箔２２，２４を重ね
合わせ、これら陽極側の電極箔２２，２４の非対
面側にセパレータ紙２６，２８を介在させて陰極
側の電極箔３０を設置したものを円筒状に巻回し
たものである。 電解コンデンサ素子２０は、第２図に示すよう
に、その中心部にセパレータ紙２６，２８を円筒
状に巻き込み、各セパレータ紙２６，２８の周面
に陽極側の電極箔２２の巻回開始端部を設置し、
この巻回開始端部から１mm以上の僅かの変位長Ｄ
を以て陽極側の電極箔２４の巻回開始端部を設置
し、変位長Ｄだけ巻回開始端部を変位させて重ね
合わせた各陽極側の電極箔２２，２４を巻回した
ものである。 この場合、陰極側の電極箔３０の巻回開始端部
も、陽極側の電極箔２２，２４の巻回開始端部の
位置から１mm以上の僅かな距離だけ変位させ、両
者の位置が一致しないように配慮する。 なお、陽極側の電極箔２２，２４、陰極側の電
極箔３０にはそれぞれ電極用タブ３２，３４を取
り付け、電解コンデンサ素子２０の内部には電解
液を含浸する。 以上のように構成すれば、陽極側の電極箔２
２，２４の巻回開始端部を１mm以上の僅かの変位
長Ｄだけ変位させることにより、その端部に陽極
側の電極箔２２，２４が重ねて巻かれる場合、陽
極側の電極箔２２，２４が緩やかな曲線となり、
急激な角度で曲げられることがないので、巻回処
理で生じるストレスを軽減でき、トンネルエツチ
ングなどの高度なエツチング処理を施したものを
用いても、巻回で生じる折れや亀裂などの破損状
態が防止される。 製造上においても、陽極側の電極箔２２，２４
の巻回処理やその取り扱いが容易になり、製造効
率が高められる。 なお、実施例ではエツチングピツトが箔の表裏
面に貫通する高倍率のエツチング処理を施した陽
極側の電極箔を用いる場合について説明したが、
この考案はエツチングピツトを貫通させない場合
にも適用できる。 また、実施例では２枚の陽極側の電極箔を用い
る場合について説明したが、３枚以上の複数枚の
陽極側の電極箔を用いてもよい。

【考案の効果】

以上説明したように、この考案によれば、電解
コンデンサ素子の中心部にセパレータ紙を円筒状
に巻き込み、その周面に第１の陽極側の電極箔の
巻回開始端部を設置し、この巻回開始端部から１
mm以上の僅かに変位した第１の陽極側の電極箔の
周面部の位置に第２の陽極側の電極箔の巻回開始
端部を設置して第１及び第２の陽極側の電極箔を
重ね合わせて巻回したので、１mm以上の僅かの変
位長を以て巻回開始端部を変位させて第１及び第
２の陽極側の電極箔を重ね合わせたことにより、
段差の発生が緩和されて陽極側の電極箔に対する
ストレスを軽減でき、電極箔の折れや亀裂などの
破損を防止でき、漏れ電流の増加や短絡事故など
が抑制でき、安定した電気的特性を得ることがで
きる。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの考案の電解コンデンサの実施例を
示す分解斜視図、第２図は第１図に示した電解コ
ンデンサの一部切欠断面図、第３図は従来の電解
コンデンサ素子の電極箔構造を示す切欠断面図、
第４図は電解コンデンサ素子の一部切欠断面図で
ある。 ２０……電解コンデンサ素子、２２……第１の
陽極側の電極箔、２４……第２の陽極側の電極
箔、２６，２８……セパレータ紙、３０……陰極
側の電極箔、Ｄ……変位長。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 第１及び第２の陽極側の電極箔と陰極側の電極
   箔との間にセパレータ紙を介在させて円筒状に巻
   回した電解コンデンサ素子を用いた電解コンデン
   サであつて、 前記電解コンデンサ素子の中心部に前記セパレ
   ータ紙を円筒状に巻き込み、このセパレータ紙の
   周面に前記第１の陽極側の電極箔の巻回開始端部
   を設置し、この巻回開始端部から１mm以上の僅か
   に変位した前記第１の陽極側の電極箔の周面の位
   置に前記第２の陽極側の電極箔の巻回開始端部を
   設置して前記第１及び第２の陽極側の電極箔を重
   ね合わせて巻回してなることを特徴とする電解コ
   ンデンサ。